JP6175889B2 - 永久磁石およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、稀少なジスプロシウム(Dy)などの重希土類元素に依ることなく、永久磁石(特に希土類磁石)の高温域における保磁力の劣化を抑制できる耐熱性に優れた永久磁石とその製造方法に関する。
非常に高い磁気特性を発揮する希土類磁石(特にNd−Fe−B系磁石)は、機器の小型化や高性能化または環境負荷の低減等に寄与するため、多用されるようになった。もっとも、希土類磁石をより有効に活用するためには、その高温域における磁気特性(特に保磁力)の向上が必要となる。この方策として、これまでは主に、磁性結晶粒(NdFe14Bなどの結晶粒)の表面(粒界)へ、高異方性磁界のDyなどの重希土類元素を極薄く拡散させることがなされてきた。このような手法は、低温域(室温域)の保磁力(初期保磁力)を予め高めておくことにより、高温域における保磁力の減少分を補うものであり、昇温に伴う保磁力の減少自体を抑制するものではない。
ところで、Dyなどの稀少元素の利用には資源リスクがあるため、最近ではDy等に依らない希土類磁石の高温域における保磁力の向上(いわゆる耐熱性の向上)が求められており、種々の研究開発がなされている。これに関連する記載が、例えば、下記の文献にある。
特開2010−263093号公報
特許文献1は、熱膨張率が異なる主相と第二相とからなるコアシェル構造の永久磁石材料を提案している。例えば、Fe基の主相(具体的にはSmFe17)がシェル側で、コア側の第二相(例えばPtFe)よりも熱膨張率が大きい場合(逆にいえば、第二相の熱膨張率が主相の熱膨張率よりも小さい場合)、それらの熱膨張率差によって主相には第二相から引張応力が加えられ、主相の結晶格子が拡大して、主相の交換相互作用の増大が引き起こされる結果、主相における交換相互作用が増補されて、永久磁石材料のキュリー温度が上昇する旨が特許文献1に記載されている(特許文献1の請求項1、[0007]、[0015]、図1、図5等)。
もっとも特許文献1は、そのような永久磁石材料のキュリー温度が上昇する旨は述べているが、高温域における保磁力(耐熱性)については実質的に言及していない。
本発明は、このような事情に鑑みて為されたものである。すなわち、高温域における保磁力の劣化を抑制できる新たな構造の永久磁石(特に希土類磁石)と、その製造方法を提供することを目的とする。
本発明者はこの課題を解決すべく鋭意研究し、試行錯誤を重ねた結果、永久磁石を構成する磁性結晶粒(主相)の格子定数が昇温により変化することが、高温域で保磁力が劣化する大きな要因であると考えた。そして、磁性結晶粒の結晶面に異種金属等を被覆して、その格子定数の温度変化を抑制することを着想し、これにより高温域における保磁力の劣化を実際に抑制できることを確認した。この成果を発展させることにより、以降に述べるような本発明を完成するに至った。
《永久磁石》
(1)本発明の永久磁石は、希土類元素(R)と鉄(Fe)とホウ素(B)の正方晶金属間化合物(RFe14B)の結晶粒である磁性結晶粒と、該磁性結晶粒の少なくとも一部の結晶面である特定結晶面を直接被覆する被覆層とからなる永久磁石であって、
前記特定結晶面は、前記磁性結晶粒の磁化容易軸(c軸)に垂直な面(c面)を含み、
前記被覆層は、銅(Cu)および/またはアルミニウム(Al)の結晶体からなることを特徴とする。
(2)本発明の永久磁石によれば、稀少なDyなどの重希土類元素等を用いるまでもなく、昇温に伴う保磁力の低下を抑制でき、高温域においても高い保磁力を得ること可能となる。本発明の永久磁石が、このような優れた特性を発揮するメカニズムは必ずしも定かではないが、現状では次のように考えられる。
そもそも永久磁石の保磁力は、その異方性磁界に左右され、異方性磁界は結晶磁気異方性エネルギー(単に「結晶磁気異方性」という。)に対応している。この結晶磁気異方性は、永久磁石を構成する結晶(磁性結晶粒)の構造に依存しており、結晶構造は原子組成、結晶型、格子定数等により定まる。
ここで永久磁石の原子組成(例えばNdFe14B)および結晶型(例えば正方晶)は、一旦定まると、通常の使用温度域内では基本的に変化しない。これに対して、結晶の格子定数は、通常、温度に応じて変化する。つまり、温度変化に応じて、結晶を構成する原子間の相関距離、ひいては、その結晶中の電子の分布状態が変化することになる。これに対応して永久磁石の保磁力も温度に応じて変化し、一般的に高温になるほど保磁力が劣化すると考えられる。
ところで本発明の永久磁石では、磁性結晶粒の特定結晶面に、その熱膨張係数(特定熱膨張係数)が負のときはそれよりも大きく、特定熱膨張係数が正のときはそれよりも小さい熱膨張係数を有する金属または金属化合物の結晶体からなる被覆層が形成されている。これにより、磁性結晶粒の特定結晶面は、その温度変化(昇温)に伴う伸縮が被覆層によって抑制される。この結果、本発明に係る磁性結晶粒は、温度が変化しても格子定数の変化さらには異方性磁界の変化が抑制され、ひいては永久磁石の昇温に伴う保磁力の劣化も抑制されるようになったと考えられる。
(3)被覆層は、磁性結晶粒の一つの結晶面を被覆するものでもよいし、異なる複数の結晶面を被覆するものでもよいし、磁性結晶粒の全面を被覆するものでもよい。もっとも、磁性結晶粒は、結晶面によって熱膨張係数が異り得る。例えば、RFe14B結晶の場合なら、磁化容易軸方向(c軸方向)に平行な結晶面(a面)の熱膨張係数は正であるが、c軸に垂直な結晶面(c面)の熱膨張係数は負となる。従って、磁性結晶粒の格子定数の変化を可能な限り抑制するには、各結晶面毎に好適な熱膨張係数を有する結晶体からなる被覆層を設けることが好ましい。
しかし、微細な磁性結晶粒の結晶面毎に異なる被覆層を形成することは容易ではない。そこで、格子定数の変化を効果的に抑制できる磁性結晶粒の代表的な結晶面のみに被覆層を形成するか、または磁性結晶粒の全面に同じ被覆層を形成することが現実的である。前者の場合を考えると、例えば、急冷凝固法により生成されたRFe14B結晶は、最表面にc面が多く現れ、通常、その最表面にあるc面から磁区が反転する。従って、そのようなc面のみに被覆層を形成するだけでも十分に保磁力の劣化を抑制し得る。後者の場合を考えると、例えば、磁性結晶粒が特定熱膨張係数の異なる少なくとも第一特定結晶面と第二特定結晶面を有するときに、第一特定結晶面における熱膨張係数である第一特定熱膨張係数と第二特定結晶面における熱膨張係数である第二特定熱膨張係数との中間値である中間熱膨張係数を有する結晶体からなる被覆層により、第一特定結晶面および第二特定結晶面を被覆すると、効率的に磁性結晶粒の格子定数の変化を抑制できる。
(4)さらに本発明の永久磁石は、磁性結晶粒が上述したRFe14B結晶からなる希土類磁石に限らず、その他の希土類磁石(例えばSmFe17磁石、SmCo17磁石)やフェライト磁石などにまで拡張して考えることが可能である。すなわち本発明は、磁性結晶粒と、該磁性結晶粒の少なくとも一部の結晶面である特定結晶面を被覆する被覆層と、を有する永久磁石であって、前記被覆層は、前記磁性結晶粒の特定結晶面における熱膨張係数である特定熱膨張係数が負のときは該特定熱膨張係数よりも大きく、該特定熱膨張係数が正のときは該特定熱膨張係数よりも小さい熱膨張係数を有する金属または金属化合物の結晶体からなることを特徴とする永久磁石として把握することもできる。
《永久磁石の製造方法》
さらに本発明は、上述した永久磁石としてのみならず、その製造方法としても把握できる。すなわち、本発明は、磁性結晶粒からなる磁性層を形成する磁性層形成工程と、該磁性層の少なくとも一部の結晶面である特定結晶面を被覆する被覆層を形成する被覆層形成工程とを備え、上述した永久磁石が得られることを特徴とする永久磁石の製造方法としても把握できる。
《その他》
特に断らない限り本明細書でいう「x〜y」は下限値xおよび上限値yを含む。本明細書に記載した種々の数値または数値範囲に含まれる任意の数値を新たな下限値または上限値として「a〜b」のような範囲を新設し得る。
NdFe14B結晶に係る温度と格子定数の関係を示すグラフである。 NdFe14B結晶に係る温度と異方性磁界の関係を示すグラフである。 本発明に係る磁性結晶粒(NdFe14B結晶)と被覆層を示す模式図である。 磁性層上(NdFe14B結晶のc面上)にTa被覆層(50nm)を形成した試料に係るDF−STEM像である。 そのTa被覆層の厚さを150nmとした試料に係るDF−STEM像である。 各試料を用いて測定した温度と保磁力の関係を示すグラフである。 被覆層の形成に用いた被覆材料の熱膨張係数とその被覆材料からなる被覆層を有する試料に係る保磁力の温度係数との関係を示すグラフである。
本明細書で説明する内容は、本発明の永久磁石のみならず、その製造方法にも該当し得る。製造方法に関する構成要素は、プロダクトバイプロセスクレームとして理解すれば物に関する構成要素ともなり得る。上述した本発明の構成要素に、本明細書中から任意に選択した一つまたは二つ以上の構成要素を付加し得る。いずれの実施形態が最良であるか否かは、対象、要求性能等によって異なる。
《磁性結晶粒》
本発明の永久磁石は、正方晶金属間化合物(RFe14B)の磁性結晶粒からなる場合が代表的である。ここで、希土類元素(R)には、Sc、Y、ランタノイドを含む。ランタノイドは、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuなどがある。本発明に係るRは、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、TmおよびYbの少なくとも1種以上、特にコストや磁気特性の観点からPr、NdまたはSmの一種以上であると好ましい。
本発明では、磁性結晶粒の格子定数の変化を被覆層によって直接的に抑制する観点から、磁性結晶粒と被覆層の間にはRリッチ相や被覆層とは異なる粒界相等が実質的に存在しないことが好ましい。そこで磁性結晶粒がRFe14B結晶からなる場合なら、磁性結晶粒は全体を100原子%(以下単に%で表す。)としたときに、R:11〜12.5%さらには11.4〜12.3%、B:5〜7%さらには5.5〜6.5%、残部:Feという化学量論的(ストイキメトリ)な組成範囲内にあると好ましい。なお、磁性結晶粒の表面(粒界面)にRリッチ相や拡散等による種々の粒界相が存在するとしても、一般的に、それらは非常に薄いアモルファス層からなり、本発明に係る被覆層による作用に対して実質的な影響を及ぼすものではないし、その被覆層と同様な作用を生じるものでもない。
本発明に係る磁性結晶粒は、温度変化に応じて格子定数が変化し、それが永久磁石の保磁力に影響するものであれば、その組成や結晶構造は必ずしも問わない。従って、上述したNdFe14B等の希土類磁石合金以外に、SmFe17等のような三元系希土類磁石合金からなる場合でも、SmCo、SmCo17、PrCo等のような二元系希土類磁石合金からなる場合でも、さらにはフェライト(酸化鉄)系合金からなる場合でもよい。
なお、磁性結晶粒は、上述したような主元素以外に、改質元素や不可避不純物を含有し得る。改質元素には、例えば、希土類磁石の耐熱性を向上させるCo、La、保磁力などの磁気特性の向上に有効なGa、Nb、Al、Si、Ti、V、Cr、Mn、Ni、Cu、Ge、Zr、Mo、In、Sn、Hf、Ta、WまたはPbの少なくとも1種以上がある。これら改質元素の組合せは任意であるが、その含有量は通常微量である。また不可避不純物として、例えば、Ca、Na、K、O、N、C、H、Ar等がある。
《被覆層》
本発明に係る被覆層は、金属または金属化合物(金属間化合物を含む)の結晶体からなる。被覆層は、磁性結晶粒の特定結晶面における熱膨張(格子定数の変化)を抑制する熱膨張係数を有する限り、具体的な組成や結晶構造等は問わない。被覆層を構成する金属は純金属でも合金でもよい。また、金属化合物は酸化物、窒化物、ホウ化物、炭化物などでもよく、金属からなる結晶体を酸化、窒化、ホウ化、炭化してできたものでもよい。
これらの金属または金属化合物は、磁性結晶粒の特定熱膨張係数に応じた適切なものが選択されると好ましい。例えば、そのような金属として、Ta、Ti、Cr、Mo、V、Zn、Ga、Y、Zr、Nb、Hf、W、Al、Cu、Mn、Ag、Au、Pt、Ru、Snなどがある。
具体的にいうと、磁性結晶粒がRFe14B(特にNdFe14B)からなる場合、その磁化容易軸(c軸)に垂直なc面における熱膨張係数は約−0.8×10−6/Kであることがわかっている。従って、そのc面を被覆する金属(または金属化合物)には、少なくとも熱膨張係数が、その特定熱膨張係数よりも大きなもの、さらには正となるものを用いればよく、特に熱膨張係数が5×10−6/K 以上のものを用いると、永久磁石の高温域における保磁力の劣化を効果的に抑制できる。この観点から、磁性結晶粒がRFe14Bからなる場合、熱膨張係数が5×10−6/K 以上となるTa、Cu、Al、CrまたはMoの少なくとも一種以上の純金属を被覆層に用いると好ましい。
被覆層は、格子定数の温度変化を有効に規制するために、単に所望の熱膨張係数を有するのみならず、被覆層全体として所望の剛性を有すると好ましい。被覆層の剛性は、被覆層を構成する結晶体のヤング率が高く、被覆層の層厚が大きいほど大きくなるが、断面二次モーメントの計算式からわかるように、被覆層の剛性の大小はその層厚の大小による影響の方が大きい。そこで被覆層は、層厚が5nm以上、25nm以上、50nm以上、70nm以上さらには100nm以上であると好ましい。この際、同様な観点から、磁性結晶粒は、特定結晶面に垂直な方向(例えば、RFe14B結晶のc軸方向)の大きさ(厚さ)が50〜10000nm、100〜600nmさらには200〜400nmであると好ましい。50nm以下では比表面積が大きくなり逆磁区が生成しやすくなり磁気特性が低下し得る。また10000nm以上では磁壁移動が容易になり磁気特性が低下し得る。さらにいえば、その磁性結晶粒の厚さ(特定結晶面に垂直な方向の長さ)に対する被覆層の厚さの比率(層厚比)は、0.1〜2、0.4〜1.7さらには0.6〜1.4であると好ましい。層厚比が過小では、被覆層が相対的に薄くなり、被覆層による格子定数の規制が不十分となる。逆に層厚比が過大では、被覆層が相対的に厚くなり、磁性結晶粒の体積割合が減少して永久磁石の磁気特性が低下し得る。なお、磁性結晶粒は、独立した粒状(粉末状)でも、薄膜状(または箔状)でもよい。被覆層の層厚や磁性結晶粒の大きさ(または厚さ)は、永久磁石を走査透過電子顕微鏡(STEM)により観察して得られた断面の厚さから求められる。厚さや大きさの変動幅が大きい場合は、任意に抽出した5点の測定値の相加平均値を採用すればよい。
《永久磁石の製造方法》
本発明の永久磁石は、その製造方法を問わないが、上述したように例えば、磁性結晶粒からなる磁性層を形成する磁性層形成工程と、その磁性層の特定結晶面を被覆する被覆層を形成する被覆層形成工程とにより得ることができる。
(1)磁性層形成工程
磁性層形成工程は、磁性結晶粒の生成に必要な元素を含む磁性金属あるいは磁性合金等をターゲット原料としたスパッタリングなどにより行うことができる。なお、磁性層が形成される基材の材質や形態は基本的には問わない。もっとも、磁性層の結晶成長に適した基材を用いると、エピタキシャル成長により結晶方位が特定方向に揃った配向度の大きな磁性結晶粒を得ることができる。ちなみにエピタキシャル成長には、基材側(または下地層)の結晶と磁性層の結晶との格子定数がほぼ等しく、両者の熱膨張係数が近接しているほど好ましい。
磁性結晶粒がRFe14B結晶からなる場合、基材として、酸化マグネシウム(MgO)の単結晶からなるMgO単結晶基材、W、Mo、Cu、Siの単結晶基材などがある。この場合、基材の積層面に垂直な方向を磁性層の磁化容易軸(c軸)の方向とすると、その積層面はミラー指数でいう(001)面となる。
また、基材自体の結晶構造とは別に、基材の表面上に磁性層の配向結晶面と整合的な結晶構造を有する下地層を形成しておいてもよい(下地層形成工程)。このような下地層には、シード層やバッファ層がある。シード層とはバッファ層の結晶成長を促進させる層であり、バッファ層とは磁性層の形成を促進する土台となる層である。 磁性結晶粒がRFe14B結晶からなる場合、下地材として、Mo、Ta、W、Ti、Cr、V、Nbなどが好適である。なお、下地層もスパッタリングにより形成可能である。
(2)被覆層形成工程
被覆層形成工程も磁性層形成工程と同様に、上述したスパッタリング等により行うことができる。この際のターゲット原料には、前述した一種以上の金属や金属化合物を用いることができる。この際、前述した層厚比と同様に、磁性層の厚さは被覆層の厚さに対して0.1〜1.5さらには0.2〜0.8とすると好ましい。
本発明の製造方法は、さらに、被覆層の酸化等を抑止する保護層を被覆層上に形成する保護層形成工程を備えてもよい。特に被覆層が酸化され易いAl等からなる場合に保護層形成工程を行うと好ましい。この保護層形成工程も、前述したスパッタリングにより行える。そのターゲットには、Cr、Ag、Au、Pd、Pt、Mo、Cu、Ti、Ta、Ru、V、Hf、W、Irなどの単体、合金または化合物などを用いることができる。このスパッタリングは通常、室温域で行えば足りる。
《永久磁石》
本発明の永久磁石は、その用途を問わないが、例えば、高温域で使用される機器に用いられると好ましい。例えば、本発明の永久磁石は、電動機のロータまたはステータなどに用いることができる。
NdFe14B結晶粒(磁性結晶粒)のc面(磁化容易軸に垂直な面)に種々の金属または金属化合物からなる被覆層を形成した試料に基づき、本発明をより具体的に説明する。
《格子定数と異方性磁界》
先ず、NdFe14B結晶粒の磁化容易軸(c軸)に平行な方向(a面上)の格子定数(格子定数cという。)とc軸に垂直な方向(c面上)の格子定数(格子定数aという。)が温度に応じて変化する様子を図1Aに示した。また、NdFe14B結晶粒の異方性磁界が温度に応じて変化する様子を図1Bに示した。なお、図1Aと図1B(両図を併せて単に「図1」という。)に示したグラフは、それぞれ、Journal of Applied Physics, 59, 873(1986)とSoviet Physics. Solid State, 27, 987(1985)から得た。
図1から明らかなように、格子定数aは温度に対してほぼ単調減少しており、NdFe14B結晶粒は温度の上昇と共にc軸方向に垂直な方向(c面方向)に収縮することがわかる。一方、格子定数cは温度に対してほぼ単調増加しており、NdFe14B結晶粒は温度の上昇と共にc軸方向へ伸長することがわかる。そして、これら格子定数の変化に呼応するように、NdFe14B結晶粒の異方性磁界も温度に対してほぼ単調減少しており、高温になるほど異方性磁界が低下することがわかる。このような格子定数や異方性磁界の温度特性が、NdFe14B結晶粒からなる永久磁石の保磁力の温度特性となって現れていると考えられる。
そこでNdFe14B結晶粒の場合、c面にある格子定数aまたはa面にある格子定数cの伸縮を規制する向きへ熱応力を及ぼす被覆層を設けることが考えられる。この様子を図2に示した。つまり、昇温と共に格子定数aが収縮するc面(特定結晶面)上には、c面における熱膨張係数(特定熱膨張係数)よりも大きい熱膨張係数を有する被覆層aを形成する。一方、昇温と共に格子定数cが伸長するa面(特定結晶面)上には、a面における熱膨張係数(特定熱膨張係数)よりも小さい熱膨張係数を有する被覆層cを設ける。
《試料の製造》
上述した被覆層による効果を確認するために、NdFe14B結晶粒上のc面上に種々の金属または金属化合物からなる被覆層aを形成した試料を製造した。なお、被覆層aを形成した試料により効果が確認できれば、温度に対する格子定数の変化がより大きいa面上に被覆層cを形成する場合にも効果があるといい得る。具体的には、各試料を次のようにして製造した。
(1)下地層形成工程
MgO単結晶基板(以下単に「基板」という。)を用意した。MgO単結晶基板は、(001)面が基板面になるように加工し、表面粗度を小さくするため研磨を行ったものであるTaは、NdFe14B結晶(単位は原子%、以下同様)の配向面(c面)と格子整合性の高いb.c.c.材料である。この基板の(001)面上に、Taからなる下地層をスパッタリングにより形成した(下地層形成工程)。このTa下地層の厚さは約10nmとした。
なお、本実施例でいうスパッタリングは、特に断らない限り、マグネトロンスパッタ法に基づき、積層(成膜)前の到達真空度を5x10−8Pa以下、製膜形状をφ8mmとして行った。また、各層(膜)の厚さは、積層速度と積層時間の積から算出した。ちなみに積層速度は、本実施例では0.4〜1Å/sとした。
(2)磁性層形成工程
650℃に加熱した基板に対して上述したスパッタリングを行い、厚さ100nmの磁性層を形成した。ターゲットには、Nd、Fe、Fe8020(組成は原子%)を用い、3元同時スパッタによりNdFe14Bの化学量論組成であるFe−11.8%Nd−5.9%B(組成は原子%、以下同様)からなる磁性層を形成した。
(3)被覆層形成工程
磁性層を形成した基板を室温(23℃)まで冷却し、その室温域で、表1に示す種々の被覆材料をターゲットにして、磁性層上に種々の被覆層を形成した。なお、被覆材料にAlを用いた場合、その被覆層上に酸化防止のための保護層となるTa層を、上述したスパッタリングを室温域で行うことにより形成した(保護層形成工程)。この保護層の材質および厚さも表1に併せて示した。
《比較試料の製造》
(1)NdFe14Bの化学量論組成よりもNdおよびBがリッチなFe−15%Nd−15%Bに組成を制御して、上述したスパッタリングにより、Ta下地層上に磁性層を形成した。この表面上にも酸化防止のための保護層となるCr層を形成した。こうして比較試料である試料C11を得た。
(2)比較試料11の磁性層に対してNd−Cuを拡散(浸透)させた比較試料も製造した。この処理は特開2011−61038号公報の記載に沿って行った。拡散材であるNd−Cuは磁性層全体を100質量%として5%とした。この処理後の表面上にも酸化防止のための保護層を形成した。いずれの層も上述したスパッタリングにより形成した。但し、保護層を構成する金属および層厚は、表1に示すように種々変更した。こうして比較試料であるC21〜C23を得た。
《試料の観察》
表1に示した各試料の断面をSTEMにより観察した。その代表例として、試料11(Ta被覆層:50nm)と試料15(Ta被覆層:150nm)に係る暗視野(DF:Dark Field)像を、それぞれ図3Aと図3Bに示した。これらから、磁性層(NdFe14B結晶粒)の表面(c面)がTaにより直接被覆されていることがわかる。なお、被覆層はXRD解析によって結晶であることを確認している。
《試料の測定》
表1に示した各試料について、23℃(室温)〜200℃の間で、種々の温度における保磁力を超伝導量子干渉型磁束計(SQUID)および振動試料型磁力計(VSM)により測定した。その代表例として、試料23、試料C11および試料C23について、保磁力が昇温と共に変化する様子(保磁力の温度特性)を図4に示した。
また各試料について、23℃(T)における保磁力(H)および200℃(T)における保磁力(H)と、これらに基づき算出した保磁力の温度係数(%/℃)とを表1に併せて示した。なお、表1に示した温度係数(α)は、温度変化量(ΔT=T−T)に対する保磁力変化量(ΔH=H−H)の割合(ΔH/ΔT)を、初期の保磁力(H)に対する百分率で示したもの(α=100×(ΔH/ΔT)/H)である。
《評価》
(1)図4および表1から次のことがわかる。先ず、試料23と試料C11を比較すると、両者とも初期(室温)の保磁力はほぼ同様であるが、高温域における保磁力の劣化具合は両者間で明らかに相違している。つまり、被覆層が形成された試料23では、保磁力の劣化が十分に抑制されている。これは試料C11の温度係数が−0.44(%/℃)であるのに対して、試料23の温度係数が−0.30(%/℃)となっていることからも明らかである。
次に試料C23を観ると、Nd−Cuが磁性結晶粒の粒界に拡散することにより、初期の保磁力が非常に高くなることがわかる。これにより、結果的に高温域でも全体的に試料23よりも保磁力が高くなっている。しかし、200℃における保磁力を観ると、結局、試料C23も試料23と同程度にまで低下している。換言すれば、試料C23は初期の保磁力が非常に高いものの、昇温に伴う保磁力の劣化が急激であり、いわゆる耐熱性が非常に悪い。温度係数で観ると、試料C23の温度係数は−0.47(%/℃)となっており、これは試料23の温度係数である−0.30(%/℃)よりも遙かに劣化しており、さらには試料C11の温度係数よりも低下している。
これらから、磁性層上(磁性結晶粒の結晶面上)に被覆層を形成することにより、仮に初期の保磁力が高くなくとも、その保磁力が高温域まで安定的に維持され、結局は耐熱性に優れた永久磁石が得られることがわかった。
なお、試料C11の場合、いわゆるNdリッチ相が磁性層の表面に極薄く存在することがわかっている。また、試料C21〜C23の場合も、拡散したNd−Cuが磁性層の表面(結晶粒界)に極薄く存在することがわかっている。これらのNdリッチ相やNd−Cu層は、非常に薄い非晶質層であるため、これらの層によってNdFe14B結晶面が規制されることは実質的にあり得ないと考えられる。
(2)試料を製造する際に用いた被覆材料(金属)の熱膨張係数(線膨張係数)を表1に併せて示した。また被覆材料の熱膨張係数と試料の温度係数の関係も図5に示した。図5中の数字は、表1に示した試料No.である。図5から、NdFe14B結晶粒のc面上に被覆層を形成する場合であれば、被覆材料の熱膨張係数が5×10−6/K以上、8×10−6/K以上さらには10×10−6/K以上であると、温度係数の劣化を有効に抑制でき、高温域でも保磁力の低下が少ない耐熱性に優れた永久磁石が得られることがわかる。

Claims (8)

  1. 希土類元素(R)と鉄(Fe)とホウ素(B)の正方晶金属間化合物(RFe14B)の結晶粒である磁性結晶粒と、
    該磁性結晶粒の少なくとも一部の結晶面である特定結晶面を直接被覆する被覆層と、
    からなる永久磁石であって、
    前記特定結晶面は、前記磁性結晶粒の磁化容易軸(c軸)に垂直な面(c面)を含み、
    前記被覆層は、銅(Cu)および/またはアルミニウム(Al)の結晶体からなることを特徴とする永久磁石。
  2. 前記磁性結晶粒は、全体を100原子%(以下単に%で表す。)としたときに、R:11〜12.5%、B:5〜7%、残部:Feからなる請求項1に記載の永久磁石。
  3. 前記磁性結晶粒の特定結晶面に垂直な方向厚さに対する前記被覆層の層厚の比率である層厚比が0.1〜2である請求項1または2に記載の永久磁石。
  4. 前記被覆層は、層厚が5nm以上である請求項1〜3のいずれかに記載の永久磁石。
  5. 前記磁性結晶粒は、特定結晶面に垂直な方向厚さが50〜10000nmである請求項1〜4のいずれかに記載の永久磁石。
  6. さらに、前記被覆層上に形成された保護層を有する請求項1〜5のいずれかに記載の永久磁石。
  7. 前記被覆層は、Ta層またはCr層である請求項6に記載の永久磁石。
  8. 磁性結晶粒からなる磁性層を形成する磁性層形成工程と、
    該磁性層の少なくとも一部の結晶面である特定結晶面を被覆する被覆層を形成する被覆層形成工程とを備え、
    請求項1〜7に記載の永久磁石が得られることを特徴とする永久磁石の製造方法。
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