JP4320701B2 - 永久磁石合金及びボンド磁石 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明はTbCu7型硬質磁性相を主相とする、新規で高い磁気特性の希土類−Fe−B系永久磁石合金、特にR−Fe−Co−M−B系永久磁石合金(但し、RはYを含む少なくとも1種の希土類元素であって、Rに占めるSmの比率が70原子%以上であり、MはNb、Ti、Zr、Hf、V、Mo、Cr、及びMnからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素である)、及び前記永久磁石合金をバインダーで結着してなる新規で高性能のボンド磁石に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より希土類磁石材料としてSm−Co系磁石材料、Nd−Fe−B系磁石材料あるいはSm−Fe−N系磁石材料が知られている。Sm−Co系磁石材料は温度による磁気特性の変化は少ないが、等方性磁石材料としては最大エネルギー積(BH)maxがNd−Fe−B系磁石材料よりも小さいので実用性が低い。Nd−Fe−B系磁石材料は高い磁気特性を有し、希土類ボンド磁石の主流となっているが温度による磁気特性の変化がSm−Co系磁石材料よりも大きいという欠点をもっている。Sm−Fe−N系磁石材料はNd−Fe−B系磁石材料に近い磁気特性を有し、また温度変化に対する磁気特性の変化がNd−Fe−B系よりも小さいというメリットをもっている。
しかし、これら従来の希土類磁石材料に対する更なる高性能化の要求は益々過酷になってきており、今日得られている磁気特性はほぼ上限値に達しつつあると思われる。このような状況に鑑み、新規で高性能の希土類磁石材料が求められていた。
【0003】
特許文献1:特開平9−74006号公報(対応USP5716462)の実施例1には以下の開示がある。まず下記組成に対応する合金溶湯を周速40m/sで回転する冷却用銅製単ロール上に噴出させて急冷し、Sm7.35Zr2.45Co26.5B1.88Febal.(B/Sm=0.26)の組成の合金薄帯を得た。次に急冷した合金薄帯に真空雰囲気中で720℃で15分間の熱処理を施した。熱処理後の合金薄帯をX線回折した結果、TbCu7相(主相)及び微小なα−Feの回折ピークが観察された。次に熱処理後の合金薄帯を乳鉢を用いて粒径100μm以下に粉砕した。次にこの磁性材料粉末にエポキシ樹脂を2質量%添加して混合し、次いで784MPaの圧力で圧縮成形した。次に成形体に150℃で2.5時間のキュア処理を施した。得られたボンド磁石の室温における磁気特性を測定した結果、残留磁束密度Br、HcJ及び(BH)maxはそれぞれ0.75T,210kA/m及び64kJ/m3であった。
また特許文献1の実施例2に以下の開示がある。前記真空雰囲気中で720℃で15分間熱処理を施した後の合金薄帯を32μm以下に粉砕した。次に1気圧の窒素ガス雰囲気中、440℃で65時間の窒化処理(熱処理)を施し、Sm6.76Zr2.25Co24.35B1.70N8.12Febal.(B/Sm=0.25)の組成の窒化磁粉を得た。この窒化磁粉のうちの粒径3.8μm以下の微細な粉末を5体積%以下まで除去した。この磁性材料粉末にエポキシ樹脂を2質量%添加して混合し、次いで784MPaの圧力で圧縮成形した。次に成形体に150℃で2.5時間のキュア処理を施した。得られたボンド磁石の室温における磁気特性を測定した結果、Br、HcJ及び(BH)maxはそれぞれ0.75T,560kA/m及び81kJ/m3であった。
特許文献1に記載の実施例1、2の対比から、前記磁性材料粉末は窒化処理を施したときに最も磁気特性が高くなる合金組成を選択しているのがわかる。しかし、本発明の永久磁石合金の組成を選択し、もって液体急冷して得られた合金薄帯を窒素を実質的に含まない非酸化性雰囲気中で熱処理した場合に、実質的にTbCu7型硬質磁性相(主相)及び平均結晶粒径が5nm未満の微結晶及び/または非晶質相からなる新規でかつ高い磁気特性の永久磁石合金が得られることは発見されていない。更に本発明の永久磁石合金におけるB/R量範囲を選択すると磁気特性が顕著に向上することは開示されていない。また本発明の永久磁石合金におけるN含有量範囲を選択することが磁気特性を高めるために重要であるがこれについての開示は無い。
【0004】
特許文献2:国際公開番号WO99/50857の請求項18には、
一般式:R1 XR2 YBZT100−X−Y−Z(式中、R1は希土類元素から選ばれる少なくとも1種の元素を、R2はZr、Hf、及びScから選ばれる少なくとも1種の元素を、TはFe及びCoから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、X、Y及びZはそれぞれ2原子%≦X,0.01原子%≦Y,4≦X+Y≦20原子%,0≦Z≦10原子%を満足する数である)で表される組成を有し、かつTbCu7型結晶相を主相とする急冷合金が開示されている。しかしこの急冷合金は次工程で窒化処理が施されて所定の磁気特性が付与される点で本発明の永久磁石合金とは異なる。即ち、特許文献2には、本発明の永久磁石合金の特徴である、TbCu7型硬質磁性相(主相)及び平均結晶粒径が5nm未満の微結晶及び/または非晶質相からなるミクロ組織を得ること、B/R量を0.30≦B/R≦2.5にすること、あるいは窒素含有量を0.1原子%未満にすることについて開示が無い。
【0005】
特許文献3:特開平10−172817(対応USP5968289)の請求項1には、
一般式:R1xR2yAZOuBvM100−x−y−z−u−v(但し、式中R1は少なくとも一種の希土類元素(Yを含む)、R2はZr、Hf及びScから選ばれる少なくとも一種の元素、AはH、N、C及びPから選ばれる少なくとも一種の元素、MはFe及びCoの少なくとも1つの元素、x、y、z、u及びvは原子%でそれぞれ2≦x,0.01≦y,4≦x+y≦20,0.001≦z≦10,0.01≦u≦2,0<v≦10を示す、にて表され、主相がTbCu7型結晶構造を有する永久磁石材料が開示されている。しかし特許文献3には、本発明の永久磁石合金の特徴である、特有のミクロ組織、あるいはB/R量を0.30≦B/R≦2.5にすること等についての開示は無い。
【0006】
【特許文献1】
特開平9−74006号公報(対応USP5716462)
【特許文献2】
国際公開番号WO99/50857
【特許文献3】
特開平10−172817号公報(対応USP5968289)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、最近の希土類磁石材料に対する過酷な磁気特性の高性能化に適合できる新規でかつ高性能の希土類永久磁石合金、及びそれを用いた高性能のボンド磁石を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決した本発明の永久磁石合金は、一般式:RxFe100−x−y−z−w−uCoyMwBzNu(但し、RはYを含む希土類元素から選ばれる少なくとも1種の希土類元素であって、Rに占めるSmの比率が70原子%以上であり、MはNb、Ti、Zr、Hf、V、Mo、Cr及びMnからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素であり、x、y、z、w及びuはそれぞれ原子%であり、4≦x≦11,0≦y≦30,4≦z≦11,0≦w≦8及び0.0001<u<0.1)で表される組成を有し、TbCu7型硬質磁性相(主相)及び平均結晶粒径が5nm未満の微結晶及び/または非晶質相から実質的になることを特徴とする。この永久磁石合金は高い磁気特性を得られるので実用性が高い。
また前記永久磁石合金のM元素の含有量(w)が0.5≦w≦8であり、かつTbCu7型硬質磁性相(主相)のM元素の濃度よりも平均結晶粒径が5nm未満の微結晶及び/または非晶質相のM元素の濃度が高い場合に高い磁気特性を得られる。
また前記永久磁石合金が、一般式:RxFe100−x−y−z−w−v−uCoyMwBzAvNu(但し、RはYを含む希土類元素から選ばれる少なくとも1種の希土類元素であって、Rに占めるSmの比率が70原子%以上であり、MはNb、Ti、Zr、Hf、V、Mo、Cr及びMnからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素であり、AはAl及び/またはSiであり、x、y、z、w、v及びuはそれぞれ原子%であり、4≦x≦11,0≦y≦30,4≦z≦11,0.5≦w≦8,0<v≦2,及び0.0001<u<0.1)で表される場合も工業生産性に富む。
【0009】
【0010】
前記本発明の永久磁石合金は、窒素を実質的に含まない非酸化性雰囲気中で熱処理された平均厚み30μm超の合金薄帯であり、TbCu7型硬質磁性相(主相)の平均結晶粒径が5〜80nmであり、室温の保磁力HcJが238.7kA/m以上のものである。このようにかなり厚くかつ高い磁気特性を有する合金薄帯なのでボンド磁石用の磁粉として適している。
【0011】
本発明のボンド磁石は、一般式:RxFe100−x−y−z−w−uCoyMwBzNu(但し、RはYを含む希土類元素から選ばれる少なくとも1種の希土類元素であって、Rに占めるSmの比率が70原子%以上であり、MはNb、Ti、Zr、Hf、V、Mo、Cr及びMnからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素であり、x、y、z、w及びuはそれぞれ原子%であり、4≦x≦11,0≦y≦30,4≦z≦11,0≦w≦8及び0.0001<u<0.1)で表される組成を有し、TbCu7型硬質磁性相(主相)及び平均結晶粒径が5nm未満の微結晶及び/または非晶質相から実質的になる永久磁石合金をバインダーで結着したことを特徴とする。
【0012】
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の永久磁石合金の組成限定理由を以下に説明する。
RはYを含む少なくとも1種の希土類元素であり、Rに占めるSmの比率は70原子%以上とする。RにはSm以外に、Y、La、Ce、Pr、Nd、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuからなる群から選ばれた希土類元素の少なくとも1種を含むことが許容される。Rに占めるSmの比率は90原子%以上とするのが好ましく、Sm以外の不可避的希土類成分を除いてSmとするのが特に好ましい。例えば後述の図8に示すように、Smの一部をDyで置換する場合、Rに占めるSm比率が70原子%未満、即ちDyが30原子%以上含まれるときはHcJが大きく低下して実用に供するのが困難になる。
Rの含有量(x)は4≦x≦11であり、好ましくは5≦x≦9であり、より好ましくは5.5≦x≦8である。xが4未満ではTbCu7型結晶(硬質磁性相)が析出しなくなり、α−(Fe,Co)が析出するのでHcJは大きく低下する。xが11より大きい場合はSm2(Fe,Co)14B1が析出してHcJは大きく低下する。
Feの含有量は68〜92原子%とする。Feの含有量が92原子%超ではTbCu7型硬質磁性相が減少し、相対的にα−(Fe,Co)の析出が顕著になるのでHcJは大きく低下する。
Feの一部をCoで置換するとHcJ及び飽和磁束密度が向上し、またキュリー温度が上昇するという効果を得られる。本発明の永久磁石合金はCo含有量(y)が0であっても室温の保磁力はHcJ≧238.7kA/mになるのでyの下限値を0原子%とした。yの上限値は30原子%とした。yが30原子%超ではHcJ及び飽和磁束密度が大きく低下する。即ちCo含有量は0≦y≦30であり、好ましくは1≦y≦25であり、より好ましくは5≦y≦25である。また、FeまたはCo含有量の一部を10原子%以下のNiで置換すると耐食性を向上することができる。
MはNb、Ti、Zr、V、Hf、Ta、Cr及びMnからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素である。そのうちNb、Ti、VまたはZrが好ましく、Nbが特に好ましい。M元素は溶湯急冷時の非晶質相形成能を高め、また熱処理時において析出したTbCu7相の安定化に寄与する。即ちSm2(Fe,Co)14B1相への転移を抑制してHcJを高める効果を有する。後述の実施例13に示すように、本発明の永久磁石合金におけるM元素は析出した結晶相または残留する非晶質相に固溶するのがわかっている。M元素の含有量(w)は0≦w≦8であり、好ましくは0.5≦w≦6であり、より好ましくは2≦w≦5である。本発明の永久磁石合金はw=0でも室温の保磁力はHcJ≧238.7kA/mになるが、実用性の観点からHcJを極力高める必要があり、wを前記特定含有量範囲にするのがよい。wが8原子%超ではBr、(BH)maxが大きく低下する。
M元素の一部をGa、Ta、W、Sb、In及びBiからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素で0原子%超2原子%以下置換すると耐食性あるいは機械的性質が向上する場合がある。
Bを所定量含有するとき非晶質相の形成能及び残留性が顕著に高くなるので本発明の永久磁石合金においてBは必須元素である。B含有量(z)が4原子%より少ないと急冷時における非晶質相の生成が困難になり、例えば液体急冷法(単ロール法)を適用した場合冷却ロール(銅合金製)の周速を30m/s超にしないと急冷後の合金薄帯の非晶質化が不十分になる。更に重要なことは急冷合金薄帯を窒素を実質的に含まない非酸化性雰囲気中で熱処理したときに平均結晶粒径が5nm未満の微結晶及び/または非晶質相が消滅してしまうという問題を生じる。またTbCu7型結晶粒が粗大化し、α−(Fe,Co)の析出が起こりHcJが大きく低下する。zが11原子%超ではTbCu7相が生成せず、Sm2(Fe,Co)23B3などの軟磁性の結晶が析出して硬質磁性が得られない。したがってB含有量は4≦z≦11であり、5≦z≦10.5とするのが好ましく、6≦z≦10とするのがより好ましい。
B/Rは平均結晶粒径5nm未満の微結晶及び/または非晶質相、並びにTbCu7相の存在のしやすさを示すパラメータである。B/Rは0.30〜2.5であり、0.4〜2.0とするのが好ましく0.45〜1.5とするのが更に好ましい。B/Rが0.30未満及び2.5超ではいずれも室温のHcJが238.7kA/m未満になり実用性に乏しい。かつ前記微結晶及び/または非晶質相とTbCu7相との共存が困難になる。
N含有量(u)は0.0001原子%超0.1原子%未満であり、0.0003〜0.01原子%とするのがよく、0.0006〜0.08原子%とするのが更に好ましい。工業生産上uを0.0001原子%未満にするのは困難であり、0.1原子%超ではHcJが大きく低下する。
【0014】
Al、Siはるつぼからの混入が避けられない元素である。アルミナ(Al2O3)るつぼ、あるいは石英(SiO2)るつぼを用いた場合、溶湯中のR成分がるつぼを構成するAlまたはSiを還元する。その結果AlまたはSiが溶湯に混入し、もって最終的に得られる合金薄帯に混入する。従ってAi、Siの混入による影響を明らかにすることは工業生産上重要である。本発明の永久磁石合金において、Al及び/またはSi含有量は0原子%超2原子%以下であり、0.1〜1.5原子%とするのが好ましい。Al及び/またはSi含有量が2原子%超ではHcJが顕著に低下し、混入量を0とするのは工業生産上困難である。
本発明の永久磁石合金においてはAl、Si以外にC、O、P、S及びH等の不可避的不純物元素の混入はある程度許容できるが、混入量はこれら不純物元素の合計含有量で2原子%以下(0を含まず)に抑えるのが好ましい。
【0015】
本発明の永久磁石合金のミクロ組織について以下に説明する。
本発明の永久磁石合金において「実質的にTbCu7型硬質磁性相(主相)及び平均結晶粒径が5nm未満の微結晶及び/または非晶質相からなる」とはTbCu7型結晶(硬質磁性相)を主相とするが一部ThMn12型、Th2Zn17型、Th2Ni17型結晶あるいはα−(Fe,Co)結晶が含まれることを許容するのをいう。α−(Fe,Co)結晶を除き、これらはいずれもCaCu5型基本構造のRサイトをFe、Coなど遷移金属のダンベル(2原子のペア)で置換し、その置換比率及び置換位置の長距離秩序度(置換パタン)により互いに変換され得るため、互いに混在し得る。
本発明の永久磁石合金において存在する非晶質相は軟磁性相である。またR及びB含有量が小さい場合はα−(Fe,Co)相(軟磁性相)が析出する。また硬質磁性相であっても平均結晶粒径が5nm未満になると結晶粒間の交換結合が大きくなるために軟磁性的に振舞うようになる。
本発明の永久磁石合金におけるTbCu7型結晶(主相)の平均結晶粒径は5〜80nmであり、8〜40nmとするのが好ましく、10〜20nmとするのが更に好ましい。TbCu7型結晶の平均結晶粒径を5nm未満にするのは事実上困難であり、80nm超ではHcJが大きく低下して実用に供するのが困難になる。TbCu7型結晶の平均結晶粒径は透過型電子顕微鏡(TEM)により本発明の永久磁石合金の断面組織を観察し、撮影した断面写真から求めることができる。具体的には断面写真の測定対象視野内のTbCu7型結晶粒の個数をn個(n=50程度)とし、n個の結晶粒の断面積の総計をsとして結晶粒1個あたりの平均断面積(s/n)を算出する。そして面積が(s/n)の円の直径を平均結晶粒径(D)と定義した。
即ち、数1から算出することができる。
【0016】
【数1】
【0017】
メカニズムは明らかではないが、平均結晶粒径が5nm未満の微結晶及び/または非晶質相が主相のTbCu7型結晶と共存するときに高い磁気特性を得られるのがわかった。更に平均結晶粒径が好ましくは3nm以下、より好ましくは2nm以下の微結晶及び/または非晶質相が主相のTbCu7型結晶と共存するときにHcJが向上する傾向が認められた。
平均結晶粒径が5nm未満の微結晶及び/または非晶質相の同定、及び微結晶部分の平均結晶粒径は、後述の実施例13に例示するように、ナノ電子回折における照射ビームのスポット径を1〜5nmに変化させて得られるナノ電子回折パタンを解析することにより求めることができる。
【0018】
本発明の永久磁石合金の製造条件について以下に説明する。
まずアーク溶解または高周波溶解などにより所定組成のインゴットを製造する。インゴットの溶解工程はSmの蒸発を考慮してアルゴンガス雰囲気で行うのが好ましい。次にインゴットを小片にし、高周波誘導加熱等により溶融する。得られた溶湯の急冷方法としては単ロール法の他に双ロール法、スプラット急冷法、回転ディスク法、またはガスアトマイズ法などがある。特に限定されないが単ロール法が実用性が高い。
単ロール法により溶湯を急冷する場合について以下に説明する。冷却ロール(銅合金製)の周速と溶湯の急冷凝固速度はほぼ比例する。特に限定されないが、冷却ロールの周速は5〜30m/sにするのが好ましく、10〜20m/sにするのがより好ましい。即ち、TbCu7型Sm−Fe−N系窒化磁石材料用の急冷薄帯を単ロール法により製造する場合の冷却ロールの周速(40〜75m/s)に比べて遅い液体急冷速度で十分であり工業生産性に優れている。これは本発明の永久磁石合金が高いB含有量、及び必要に応じて相応のM元素を含有するので急冷薄帯が非晶質化されやすいことによる。通常冷却ロールの周速が30m/s超では急冷薄帯の厚みが30μm未満になり、次いで熱処理し、粉砕して得られるボンド磁石用磁粉の圧縮性が悪くなる。この磁粉を用いて製造されるボンド磁石は後述の比較例1に示すように密度が低くなり、(BH)maxが低下する。
【0019】
次に、急冷薄帯を結晶化するために熱処理を施す。熱処理雰囲気は窒素を実質的に含まない非酸化性雰囲気で行う必要がある。「窒素を実質的に含まない」とは窒素を不純物として含む程度は許容できることをいう。実用上アルゴンガス雰囲気がよいが、ヘリウムガスあるいは真空雰囲気でも熱処理は可能である。なお本発明の永久磁石合金の主要元素であるSmは蒸気圧が高いので、熱処理時間が長い場合は急冷薄帯表面から深さ方向の2〜3μmの部分にわたってSm欠乏層、即ちFe(Co)リッチな軟磁性層が形成される傾向が顕著になる。この軟磁性層の体積比率が多いほど、即ち熱処理に供する合金薄帯の厚みが薄いほど、内部の正常なSm濃度部分に対する表面部分の軟磁性層の体積比率が相対的に増すので減磁曲線にクニックが現れ、角型性が低下するという問題を招く。しかし本発明の永久磁石合金は厚み30μm超でも高い磁気特性を有しかつ減磁曲線の良好な角型性を有する点で従来のものより優れている。Smの蒸散を抑えるために、Sm供給源となる合金とともに窒素ガスを実質的に含まない不活性ガス雰囲気中で熱処理するのが好ましい。あるいは熱処理用容器に急冷薄帯を嵩密度高く充填し、熱処理するのが有効である。
熱処理温度は550〜750℃が好ましく、600〜700℃がより好ましい。熱処理温度が550℃より低い場合、非晶質相からのTbCu7型結晶の析出が不十分になりHcJが非常に低くなる。熱処理温度が750℃超ではTbCu7型結晶粒が粗大化するか、あるいはR2Fe14B1型結晶またはThMn12型結晶が析出して磁気特性が大きく低下する。熱処理保持時間は熱処理保持温度にも依るが1分〜50時間であり、30分〜30時間とするのが好ましい。
【0020】
本発明のボンド磁石について以下に説明する。
本発明のボンド磁石用磁粉として、上記熱処理後の合金薄帯をそのまま用いるか、あるいは粉砕して所定粒径分布に調整した合金粉末を用いることができる。粉砕方法は特に限定されず、例えばバンタムミル、ピンミル、ボールミル、またはジェットミルなどの各種粉砕装置を用いることができる。粉砕は酸化防止のためアルゴンまたは窒素などの不活性ガス雰囲気で行う。
特に限定されないがボンド磁石用磁粉の平均粒径(Sympatec社製レーザー回折型粒径分布測定装置;HEROS/RODOSシステムにより測定)は5〜200μmであり、10〜150μmとするのが好ましい。平均粒径が5μm未満では磁粉の圧縮性が大きく低下し、かつ酸化が顕著になるのでボンド磁石の(BH)maxが大きく低下する。平均粒径が200μm超では高い密度のボンド磁石を得られるが表面粗さが悪化して磁気ギャップの厳しい用途への適用が困難な場合がある。
【0021】
本発明のボンド磁石は前記熱処理後の永久磁石合金、あるいはその粉砕磁粉をバインダーにより結合したものである。バインダーとして熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、ゴム材料、あるいは低融点合金などを用いることができる。これらのうち熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、またはゴム材料の実用性が高い。
次に前記永久磁石合金、あるいはその粉砕磁粉とバインダーとを所定比率で混合し、次いでボンド磁石を成形する。次に成形体に必要に応じて応力緩和のための熱処理あるいはキュア処理を施す。これらの熱処理は大気中または不活性ガス雰囲気で50〜250℃で0.5〜10時間行うのが好ましい。
特に限定されないが、前記熱処理後の永久磁石合金、あるいはその粉砕磁粉とバインダーとの混合重量比率は、80:20〜99:1であり、90:10〜98.5:1.5とするのが好ましい。バインダーに対する前記熱処理後の永久磁石合金、あるいはその粉砕磁粉の混合重量比率が80未満ではボンド磁石の磁気特性が大きく低下し、99超では要求されるボンド磁石の強度等を満足するのが困難になる。
本発明のボンド磁石の成形方法として圧縮成形法、射出成形法、押出成形法、あるいはカレンダーロール成形法などが挙げられる。圧縮成形による場合、バインダーとして熱硬化性樹脂が適している。液状エポキシ樹脂は安価で取り扱いが容易であり、かつ良好な耐熱性を示すので特に好ましい。
本発明のボンド磁石の耐食性を向上するために公知の表面処理を施すのが好ましい。特に限定されないが、例えばエポキシ樹脂を平均膜厚で5〜30μmコーティングすると耐食性が向上する。
【0022】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、それら実施例により本発明が限定されるものではない。
【0023】
(実施例1)
M=Nbとし、B含有量と磁気特性の関係を調べた。サマリウムメタル片、電解鉄片、コバルトメタル片、ニオブメタル片、及びクリスタルボロン片をそれぞれ所定量秤量し、これらをアルゴンガス減圧雰囲気中でアーク溶解してB及びCo含有量の異なる複数のボタン状インゴットを作製した。但し、Smは溶解時の蒸散が激しいため5質量%増しで秤量し、かつアーク溶解工程では均質化を図るために1回の溶解・凝固毎に裏返し、合計4回の溶解・凝固を行った。次にこれらのインゴットを解砕して得られた解砕片のうち所定組成の8.5gを石英管ノズル(直径1cm、ノズル径0.8mm)に入れた。次に単ロール型液体急冷装置(日新技研(株)製、型式:NEV−A1型)にセットし、石英管ノズルと冷却ロール(銅合金製、直径20cm)のギャップを0.2mmに調整した。次にチャンバー内をアルゴンガス減圧雰囲気(80kPa)とし、石英管中のインゴット片を高周波溶解して溶湯にした。次にアルゴンガス圧力105kPaを溶湯に印加(差圧25kPa)して周速16m/sで回転する冷却ロール上に溶湯を噴出させ、幅1〜2mm、平均厚さ47μmの合金薄帯を作製した。得られた急冷後の合金薄帯の組成はICP分析の結果、Sm6.6Febal.CoyNb2.7Si0.15BxN0.001(y=12.2,16.4原子%,x=0〜15.5原子%)の組成式で表されるのがわかった。
次にこれらの合金薄帯を3cm程度の長さに切断した後、ニオブ箔及びSUS箔で包み、次いでアルゴンガス雰囲気の管状炉に入炉して熱処理を行った。熱処理の加熱条件はy=12.2原子%の合金薄帯で640℃で2.5時間、y=16.4原子%の合金薄帯で640℃で1.5時間とした。熱処理後の合金薄帯を6mmの長さに切断して得られた合金薄帯片4〜5本(約10mg)を粘着シート上に縦4mm×横6mmの大きさに並べた。この縦4mm×横6mmのものを2枚積層して試料にした。次に試料を振動試料型磁力計(東英工業(株)製、型式:VSM−5)にセットし、室温(20℃)で着磁磁場1.6MA/mを印加して磁気特性を測定した。また熱処理後の合金薄帯の密度をガス置換式密度計((株)島津製作所製、型式:Accupyc1330)により測定した。図1にB含有量と室温のHcJ、Br及び(BH)maxの関係を示す。また図1に(B/Sm)と室温のHcJ、Br及び(BH)maxの関係を示す。
図1の結果からSm6.6Febal.CoyNb2.7Si0.15BxN0.001(y=12.2,16.4原子%、x=0〜15.5原子%)の組成式で表される合金薄帯はB含有量(x)が4〜11原子%のときに238.7kA/m以上のHcJを得られ、B含有量が5〜10原子%のときに318.3kA/m以上のHcJを得られるのがわかった。またこれらのB含有量範囲において、Co含有量(y)=12.2原子%の試料ではBr=0.78〜0.87T及び(BH)max=63.7〜103.5kJ/m3が得られ、y=16.4原子%の試料ではBr=0.93〜1.01T及び(BH)max=95.5〜119.4kJ/m3が得られた。またB含有量が7〜10原子%の範囲において477.5kA/m以上のHcJを得られるのがわかる。また(B/Sm)=0.45〜1.7のときに238.7kA/m以上のHcJを得られるのがわかる。
Co含有量=16.4原子%の熱処理後の合金薄帯からB含有量(x)=0,2.8,8.1,12.8,及び15.0原子%のものをサンプリングし、乳鉢にて粉砕しX線回折用試料とした。理学電機(株)製のX線回折装置(型式:RINT2500、Cukα線を使用)によりX線回折を行った結果を図2に示す。図2より、B含有量=8.1原子%の試料はTbCu7相単相になっているのがわかる。B含有量=2.8原子%の試料ではTbCu7構造に対応した回折ピークの他にα−(Fe,Co)が析出していた。B含有量=15.0原子%の試料では主相はTbCu7型構造ではなく、軟磁性相であるSm2(Fe,Co)23B3が析出しているのがわかった。B含有量=12.8原子%の試料ではTbCu7型結晶構造及びSm2(Fe,Co)23B3相と異なる相(図中矢印で示したSm3(Fe,Co)62B14相)が現れている。即ち図2のいずれの試料においてもSm2(Fe,Co)14B1相は観察されなかった。
【0024】
(実施例2)
M=Zrとし、B含有量と磁気特性の関係を調べた。Sm、Fe、Co、Zr、B、及びSiを所定量秤量しアーク溶解を行い、B含有量の異なる複数のインゴットを作製した。これらのインゴットの小片を高周波溶解し、次いで溶湯を周速12m/sで回転する単ロール型液体急冷装置の冷却ロール(銅合金製)上に噴出させて幅1〜2mm、平均厚さ50〜60μmの合金薄帯を作製した。急冷後の合金薄帯の組成はICP分析の結果、Sm5.9Febal.Co23.9Zr2.0Si0.45BxN0.001(x=0〜12.2原子%)の組成式で表されるのがわかった。これらの合金薄帯をアルゴンガス雰囲気の炉に入炉し、700℃で20分の熱処理を施した。熱処理後の合金薄帯に対し、以降は実施例1と同様の処理を施し室温の磁気特性を測定した。図3にこれら合金薄帯のB含有量とHcJ、Br及び(BH)maxの関係を示す。また図3に(B/Sm)とHcJ、Br及び(BH)maxの関係を示す。図3よりB含有量が6原子%以上で238.7kA/m以上のHcJを得られるのがわかる。また(B/Sm)=1.0〜1.9のときに238.7kA/m以上のHcJを得られるのがわかる。
前記熱処理後の合金薄帯のうち、HcJ=342.2kA/mの合金薄帯を乳鉢にて粉砕し、X線回折用試料とした。X線回折(Cukα線を使用)の結果、図4の上側に示すようにTbCu7相のみでなく、α−(Fe,Co)の回折ピークが観測された。これは実施例1の合金薄帯よりもSm含有量が少なく、かつ熱処理保持温度が実施例1の640℃よりも高いために熱処理時にα−(Fe,Co)が析出したものである。即ち、熱処理時のSmの蒸散により薄帯表面部からその深さ方向2〜3μmの部分全域にFeCo層が形成されていた。図4の下側にFeCo層が形成された熱処理後の合金薄帯のX線回折図形を示す。
【0025】
(実施例3)
実施例2と同じインゴットを溶解し、次いで溶湯をそれぞれ周速(Vs)12m/s及び8m/sで回転する単ロール型液体急冷装置の冷却ロール(銅合金製)上に噴出させて、組成がSm5.8Febal.Co23.7Zr2.0Si0.43B10.2N0 0.002にて表される幅1〜2mm、平均厚さ55μm及び70μmの急冷薄帯を作製した。この薄帯をアルゴンガス雰囲気で700℃で10分熱処理し、以降は実施例1と同様にして室温の磁気特性を測定した。その結果、Vs=12m/sの条件で急冷し、熱処理した合金薄帯では図5に示すように減磁曲線に折れ曲がりが見られた。これに対してVs=8m/sの条件で急冷し、熱処理した合金薄帯では図5に示すように減磁曲線の折れ曲がりは解消され、HcJ=326.3kA/m、Br=0.95T、及び(BH)max=86.0kJ/m3が得られた。これはVs=8m/sの条件で急冷し、熱処理した合金薄帯ではBの一部がZrホウ化物として消費され、熱処理時における軟磁性相の析出が抑えられ、減磁曲線の折れ曲がりが解消された効果である。
次にSm、Fe、Co、Zr、Ti、及びBを秤量、溶解してインゴットを作製した。次に溶解し、次いで単ロール法により溶湯をVs=16m/sで回転する冷却ロール(銅合金製)上に噴出させ、組成Sm6.0Febal.Co24.1Zr2.0Ti1.2Si0.17B10.2N0.001で表される急冷薄帯(平均厚さ43μm)を得た。次に725℃で10分の熱処理を行い、以降は実施例1と同様にして熱処理後の合金薄帯の室温の磁気特性を測定した。この合金薄帯は図5に示すように減磁曲線の折れ曲がりは見られず、HcJ=374.0kA/m、Br=0.88T、及び(BH)max=78.0kJ/m3が得られた。これはTiの添加によりBの一部がTiホウ化物として消費されて熱処理時における軟磁性相の析出が抑えられた効果が反映されている。
【0026】
(実施例4)
Sm含有量と磁気特性の関係を調査した。Sm、Fe、Co、Nb及びBを所定量秤量し、アルゴンガス減圧雰囲気下でアーク溶解してSm含有量の異なる2つのインゴットを作製した。2つのインゴットの各小片の配合比率を変化させて単ロール型液体急冷装置の石英管ノズルに装入し、以降は実施例1と同様にして溶湯を急冷してSm含有量の異なる複数の合金薄帯を作製した。冷却ロールの周速は18m/sとした。ICP分析によりこれらの合金薄帯の組成は、SmxFebal.Co16.3Nb2.7Si0.15B8.1N0.001(x=3.8〜11.7)で表され、平均厚さは33〜48μmであった。次にアルゴンガス雰囲気で640℃で1.5時間の熱処理を施し、以降は実施例1と同様にして室温の磁気特性を測定した。測定結果を図6に示す。またx=3.8及び11.7原子%の熱処理後の合金薄帯をそれぞれ乳鉢で粉砕し、X線回折(Cukα線を使用)に供した。図7に結果を示す。
図6から、Sm含有量が5原子%以上の範囲においてHcJを発現し、Sm含有量が5.5〜7原子%の領域で397.9kA/m超の高いHcJが得られた。Sm含有量が5.5原子%より減少するとHcJは急減し238.7〜318.3kA/mになるが、Brは増加し1.0T超になる。Sm含有量が6原子%近傍ではHcJ及びBrがともに高く、(BH)maxは111.4〜127.4kJ/m3という高い値が得られた。また(B/Sm)=0.9〜1.5のときに238.7kA/m以上のHcJを得られるのがわかる。図7から、x=11.7原子%のHcJ=159.2kA/m程度の熱処理後の合金薄帯はSm2(Fe,Co)14B1型結晶からなるのがわかった。またx=3.8の熱処理後の合金薄帯はα−(Fe,Co)の析出が著しく、かつ残存する結晶相はTbCu7型とは異なっていた。
【0027】
(実施例5)
Rに占めるSm比率と磁気特性の関係について調べた。まずSm、Pr、Fe、Co、Zr、B及びSiを原料とし、Rに占めるSm/Pr比率を変化させたインゴットを作製した。次にこれらインゴット片をそれぞれ石英管ノズルに入れて高周波溶解し、溶湯を単ロール法(周速12m/s、銅合金製ロール)、により急冷して合金薄帯を作製した。次にアルゴンガス雰囲気で700℃で20分の熱処理を施し、以降は実施例1と同様にして室温の磁気特性を測定した。これらの合金薄帯は、(Sm1−rPrr)5.8Febal.Co24.8Zr2.1Si0.5B8.5N0.001(r=0,0.18,0.35,0.69,1.0)で表される組成であり、平均厚さは37〜51μmであった。
次にSm、Gd、Dy、Fe、Co、Nb、B、及びSiを原料とし、Smの一部をGdまたはDyで置換した合金薄帯試料を作製した。但し単ロール法による冷却ロールの周速は16m/s(銅合金製ロールを使用)であり、急冷薄帯の熱処理条件はアルゴンガス雰囲気中で660℃で40分(Dy置換の試料)、及び680℃で10分(Gd置換の試料)とした。熱処理後の合金薄帯の組成は、ほぼ
(Sm1−rRr)6.8Febal.Co12.2Nb2.4Si0.7B8.2N0.002(r=0,0.12,0.23、0.35;R=GdまたはDy)で表され、平均厚さは40〜50μmであった。熱処理後は以降実施例1と同様にして処理し、合金薄帯の室温の磁気特性を測定した。
図8にSmの一部をPr、GdまたはDyで置換した比率rとHcJとの関係を示す。図8よりSmの一部をPr、GdまたはDyで置換するとHcJが単調に減少するのがわかる。r=0.2〜0.3でHcJは約79.6kA/m減少した。なおr=0.9〜1.0でHcJが238.7kA/m以上になり、実用に供し得るのがわかった。
次に前記と同様にしてSmの一部をY、La、Ce、Nd、Eu、Tb、Ho、Er、Tm、YbまたはLuでそれぞれ置換する検討を行った。その結果、いずれの検討でも、Smを他の希土類元素で一部置換すると置換率の増加とともにHcJが減少するのがわかった。
以上からSm以外の希土類元素の含有量はRのうちの30原子%以下が許容され、好ましくは不可避的な希土類成分の含有程度にすべきなのがわかった。
【0028】
(実施例6)
Co含有量と磁気特性の関係を調査した。Sm、Fe、Co、Nb、Zr、B、及びSiを原料として、Co含有量の異なる、下記3組の合金薄帯(Nb添加合金、Zr添加合金)を作製した。これらの合金薄帯の平均厚みは37〜62μmであった。
(1)Sm5.6Febal.CoxZr2.1B8.5Si0.5N0.001(x=0〜49)
(2)Sm6.4Febal.CoxNb2.7B8.1Si0.1N0.002(x=12〜41)
(3)Sm6.4Febal.CoxNb2.7B8.1Si0.5N0.001(x=0〜8)
冷却ロール(銅合金製)の周速及び熱処理条件(アルゴンガス雰囲気)は、(1)の場合で12m/s及び700℃で20分(但しx=0の合金薄帯では600℃で60分)、(2)の場合で18m/s及び640℃で90分、(3)の場合で18m/s及び680℃で10分、とした。熱処理後の合金薄帯はいずれも以降は実施例1と同様にして室温の磁気特性を測定した。測定結果を図9に示す。
図9から、Coを所定量含有するときHcJ、Br及び(BH)maxが向上するのがわかる。特にNb及びCoを複合添加した(2)、(3)組成の場合Co含有量が5〜25原子%のときに477.5kA/m以上の高いHcJと0.8〜0.95Tという高いBrが得られ、Co含有量が16〜24原子%のときに120kJ/m3に達する高い(BH)maxが得られた。
なおCo含有量が30原子%超ではBrは高いがHcJの低下が大きくなり、もって(BH)maxの低下が大きくなる。(1)組成の場合Co含有量が30原子%超でHcJは238.7kA/mを下回り、(2)組成の場合Co含有量が35〜38原子%で238.7kA/mを下回るのがわかる。
【0029】
(実施例7)
M元素の含有量と磁気特性の関係を調査した。Sm、Fe、Co、B、Si、及びM元素(MはNb、Ti、Zr、Hf、V、Mo、Cr及びMnからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素)を所定量含有する合金薄帯を作製し、評価した。具体的には表1のNo.1〜16に記載の合金薄帯組成、冷却ロールの周速、及び熱処理条件を採用した以外は実施例1と同様にして液体急冷し、熱処理を行い、合金薄帯の室温の磁気特性を測定した。またM元素を含まない合金薄帯(表1のNo.17に記載の合金薄帯組成、冷却ロールの周速、及び熱処理条件を採用した以外は実施例1と同様にして製造)を作製し、室温の磁気特性を測定した。表1に磁気特性の測定結果を示す。
【0030】
【表1】
【0031】
表1から、M元素を含まないNo.17の場合にHcJ=286.5kA/m及びBr=0.96Tが得られたが減磁曲線の角型性がやや悪く(BH)max=74.8kJ/m3であった。M元素を所定量含有するNo.1〜16ではHcJ、(BH)maxが向上しているのがわかる。次にNo.1〜6の比較からM=Nbを選択したNo.1の場合に最もHcJが高くなるのがわかる。次にNo.7〜10の比較から(Zr+V)の複合添加を行ったNo.7で397.9kA/m超のHcJが得られた。No.11、12から(Zr+V+Ti)または(Zr+V+Nb)を複合添加した場合に397.9kA/m超のHcJを得られるのがわかる。No.13〜16から(Nb+Mo)、(Nb+V)、(Nb+Ti)または(Nb+Zr)複合添加した合金薄帯で477.5kA/m超のHcJを得られるのがわかる。
【0032】
(実施例8)
Si、Al含有量と磁気特性の関係を調査した。
下記組成の合金薄帯(平均厚さ43、48μm)を作製した。合金薄帯の製造条件は、液体急冷のロール周速:16m/s、及び熱処理条件をアルゴンガス雰囲気で680℃で10分とした以外は実施例1と同様とした。また実施例1と同様にして合金薄帯の磁気特性を測定した。
Sm6.5Febal.Nb2.7B8.2SivN0.001(v=0.1,0.9)
図10にこれらの減磁曲線を示す。Si含有量が比較的多いv=0.9の場合に減磁曲線の角型が改善されるのがわかる。
次にSm6.4Febal.Co12.1Nb2.7B8.2AvN0.001(A=SiまたはAlであり、v=0〜3)の組成の合金薄帯(平均厚さ43〜55μm)を作製した。合金薄帯の製造条件は、液体急冷のロール周速:16m/s、及び熱処理条件をアルゴンガス雰囲気で640℃で1.5時間とした以外は実施例1と同様とした。また実施例1と同様にして合金薄帯の磁気特性を測定した。磁気特性の測定結果を図11に示す。図11からSiまたはAl含有量が2原子%超でHcJが大きく低下するのでSiまたはAl含有量は2原子%以下(0を含まず)に留めるべきなのがわかった。またAl含有量が増加するとBrが大きく低下するのがわかった。
【0033】
(実施例9)
熱処理条件と磁気特性の関係を調査した。
Sm6.4Febal.Co12.4Nb2.7B8.1Si0.5N0.001の組成の合金薄帯(平均厚さ46μm)を作製した。合金薄帯の液体急冷条件は、ロール周速を16m/sとした以外は実施例1と同様とした。次に得られた急冷薄帯をアルゴンガス雰囲気で熱処理温度をそれぞれ620℃、640℃、660℃及び680℃とし、熱処理時間を変化させて熱処理を行った。熱処理後の合金薄帯の磁気特性を実施例1と同様にして測定した。図12に熱処理時間及び熱処理温度と合金薄帯のHcJとの関係を示す。
図12から、低温側でかつ長時間の熱処理条件を採用するとHcJが高くなるのがわかる。例えば680℃で10分の熱処理を施した場合のHcJの最大値は517.3kA/mであるのに対し、640℃で150分の熱処理を施した場合のHcJは596.9kA/mであった。いずれの熱処理温度においても最適加熱保持時間を超えた熱処理を行うとHcJが急減するのがわかった。なお図12の横軸の熱処理時間の目盛は対数表示のためややわかりにくいが、例えば680℃での熱処理時間に対するHcJの変化に比べて、640℃での熱処理時間に対するHcJの変化は非常に緩やかなのがわかる。
次に上記急冷薄帯を680℃で1時間熱処理してほぼ軟磁性化した合金薄帯を粉末にし、X線回折(Cukα線を使用)を行った。図13にX線回折結果を示す。図13から、主相であったTbCu7型結晶が680℃で1時間熱処理したことによりR2(Fe,Co)14B1型結晶とα−(Fe,Co)結晶に変化したのがわかる。この現象は所定の熱処理温度に対し最適熱処理時間を超えて熱処理を施した場合、あるいは所定の熱処理時間に対し最適熱処理温度より高い温度で熱処理を施した場合にも共通して観察された。
【0034】
(実施例10)(温度係数α、β及びキュリー温度Tc)
Sm6.2Febal.CoxNb2.7Si0.7B8.3N0.001(x=0〜12)の組成を有する合金薄帯(平均厚さ約46μm)を作製した。合金薄帯の製造条件は、アルゴンガス雰囲気中で急冷薄帯を680℃で10分熱処理した以外は実施例1と同様とした。熱処理後の合金薄帯について、VSMによりBrの温度係数α、HcJの温度係数β、及びキュリー温度Tcを測定した。α、βは25〜100℃に昇温した場合の1℃あたりの変化率であり、次式で定義される。
【0035】
【数2】
【0036】
熱処理後の合金薄帯のCo含有量とTcとの関係を図14に示す。前記合金薄帯のCo含有量とα及びβとの関係を図15に示す。図14から、Co含有量の増加とともにTcはほぼ直線的に増加し、Co含有量が10原子%以上の場合に500℃程度の高い値となるのがわかる。図15から、Co含有量の増加とともにα及びβが改善されるのがわかる。Co含有量が12原子%でα=−0.05%/℃、β=−0.33%/℃という優れた値が得られた。ちなみにCo含有量が4原子%超では、Nd−Fe−B系ボンド磁石用磁粉(Magnequench社製、商品名:MQP−B材)の温度係数(α=−0.12%/℃、β=−0.4%/℃)よりも小さくなり、本発明の永久磁石合金が優れた温度特性を有するのがわかる。
【0037】
(実施例11)
液体急冷法(単ロール法)による冷却ロールの周速と合金薄帯の平均厚さ及び磁気特性との関係を調査した。
Sm6.2Febal.Co16.4Nb2.7B8.1Si0.15N0.001の組成を有する合金薄帯を作製した。前記合金組成、冷却ロールの周速(Vs):4〜41m/s、及びアルゴンガス雰囲気での熱処理条件を640℃で90分とした以外は実施例1と同様の合金薄帯の製造条件にした。また実施例1と同様にして磁気特性を測定した。得られた合金薄帯の平均厚みをマイクロメータにて測定し、Vsと合金薄帯の平均厚み及び磁気特性との関係を調べた。調査結果を図16、17に示す。
図16から、ロール周速:12〜18m/sの条件で得られた急冷薄帯の平均厚さは40〜60μm程度であるのがわかる。この急冷薄帯の厚さは、従来のSm−Fe−N系磁石用の急冷薄帯と比較してほぼ2〜3倍の厚みに相当する。Sm−Fe−N系磁石用急冷薄帯を単ロール法により作製する場合は40〜75m/sという非常に速いロール周速で急冷し、極力薄い薄帯を得るのが好ましい。これは続いて窒化処理を行うために合金薄帯の厚みが薄い方が好都合だからであり、本発明のようにかなり厚い合金薄帯が好ましいのとは対照的である。
図17から、ロール周速8〜30m/sにおいて高いBr及び(BH)maxを得られるのがわかった。但し、ロール周速が20m/s超では(BH)maxが次第に減少する傾向が認められた。これは合金薄帯が薄いほど熱処理時に形成される表面のFeに富んだ軟磁性層の影響が無視できなくなり減磁曲線の角型性が低下することによる。ロール周速4m/sで磁気特性が大きく低下した主因はSm2(Fe,Co)14B1及びα−(Fe,Co)が析出したことによる。
【0038】
(実施例12)
Sm6.4Febal.Co12.6Nb2.7B8.3Si0.15N0.001で表される組成のインゴット、及び合金薄帯(平均厚さ48μm)を作製した。合金薄帯の液体急冷工程以降の製造条件は、熱処理条件をアルゴンガス雰囲気で640℃で160分とした以外は実施例1と同じにした。前記インゴット、急冷後及び熱処理後の合金薄帯のX線回折図形(Cukα線を使用)をそれぞれ図18に示す。
図18から、インゴットはSm2(Fe,Co)14B1相とα−(Fe,Co)相が構成相であるのがわかる。熱処理後の合金薄帯ではTbCu7型結晶の回折ピークが観察された。また急冷後の薄帯は完全な非晶質とはならず、回折図形は非晶質相を表すハローに重なり、回折角2θ=42〜43°に微小な突起が見られ、結晶相が微量析出しているのがわかった。
【0039】
(実施例13)
実施例12と同じ急冷薄帯をアルゴンガス雰囲気で640℃で10分、及び640℃で160分の条件でそれぞれ熱処理して合金薄帯を作製した。急冷薄帯及び熱処理後の合金薄帯のTEM観察を行った。TEM観察には電解放射型透過電子顕微鏡((株)日立製作所製、型式:FE−2100)を使用した。
図19に急冷後の薄帯のTEM写真を示す。図21に640℃で10分熱処理した後の合金薄帯のTEM写真を示す。図23に640℃で160分熱処理した後の合金薄帯のTEM写真を示す。図19の位置1、2でそれぞれナノ電子回折を行った結果を図20に示す。図21の位置3、4でそれぞれナノ電子回折を行った結果を図22に示す。図23の位置5、6でそれぞれナノ電子回折を行った結果を図24に示す。これらのナノ電子回折は対象視野部分にスポット径2nmの電子ビームを照射することにより行った。
図19、20より、急冷薄帯はほぼ非晶質構造(位置2)になっているが、直径が20nm程度の微結晶(位置1)が点在するのがわかった。この事実は実施例12のX線回折結果に一致する。
図21、22から、640℃で10分熱処理した合金薄帯では直径10〜50nm程度のTbCu7型結晶(位置3)が析出し結晶化が進行しているのがわかった。
図23、24から、640℃で160分熱処理した合金薄帯ではTbCu7型結晶(位置5)が多数析出していたが粗大粒子は観察されず、結晶粒成長が抑えられているのがわかった。
図22の位置4、及び図24の位置6の電子回折パタンはそれぞれランダム方位を有する複数の微結晶粒の存在を示す証拠である。即ち、位置4及び6はそれぞれ照射径2nmの条件で得られたナノ電子回折パタンであり、位置4及び6は平均結晶粒径が2nm未満の微結晶及び/または非晶質相からなるのがわかった。
表2に上記3試料におけるTbCu7型結晶相と非晶質相、あるいはTbCu7型結晶相と平均結晶粒径が2nm未満の微結晶及び/または非晶質相の組成を分析した結果を示す。組成分析は上記TEMにより行った。表2から、急冷後薄帯では非晶質相に比べて結晶相のNb含有量が高いのがわかる。これに対し熱処理後の合金薄帯ではTbCu7型結晶相に比べて平均結晶粒径が2nm未満の微結晶及び/または非晶質相のNb含有量が高いのがわかる。特に640℃で160分の熱処理をした合金薄帯では平均結晶粒径が2nm未満の微結晶及び/または非晶質相にNbが濃縮する現象が顕著であった。
他の実施例の本発明の永久磁石合金においても、熱処理後の合金薄帯にはTbCu7型結晶相と平均結晶粒径が5nm未満の微結晶及び/または非晶質相とが混在し、かつTbCu7型結晶相に比べて平均結晶粒径が5nm未満の微結晶及び/または非晶質相にM元素が濃縮する傾向が認められた。
ナノ電子回折等により本発明の永久磁石合金における平均結晶粒径が5nm未満の微結晶及び/または非晶質相の含有体積比率は0体積%を超えて50体積%未満であり、実用性が高いのは前記含有体積比率が5〜40体積%の場合であるのがわかった。
【0040】
【表2】
【0041】
図25は640℃、160分の熱処理を施した前記熱処理後薄帯の断面をTEMにより低倍率で撮影した写真であり、図23に対応する。図25中左下に、対象視野部分にスポット径5μmの電子ビームを照射して得られた制限視野電子回折パタンを示す。
図25のTEM写真からTbCu7型結晶粒を73個(=n)任意に選び出し、TbCu7型結晶粒の総面積を求めた。具体的には透明なシートをTEM写真に重ね、指定した結晶粒に相当する部分を切り取り、切り取ったシート重量を測定することにより換算して求めた。その結果、上記73個のTbCu7型結晶粒の合計の断面積(s)は32400nm2であった。したがって、式(1)から算出した平均結晶粒径(D)は23.8nmであった。
【0042】
(実施例14)
単ロール法により銅合金製冷却ロールの周速を8,16,28及び40m/sとして、それぞれSm6.2Febal.Co16.4Nb2.7B8.1Si0.15N0.001で表される組成の急冷薄帯を作製した。次にアルゴンガス雰囲気で640℃で90分の熱処理を施し、次いでそれぞれ乳鉢で粉末状にし125μmアンダーに篩い分けした。得られた各磁粉のそれぞれに対しアセトン適量と表面処理剤(シラン系カップリング剤)を磁粉に対し0.25質量%相当添加して混合した。次に各混合粉97.8重量部とエポキシ樹脂と硬化剤(DDS)との混合物(重量比率でエポキシ樹脂:DDS=4:1)2.2重量部とを混合した。次に混合物を140℃で1.5時間乾燥させた後、再度125μmアンダーに篩い分けしてボンド磁石用の成形原料(コンパウンド)とした。次にこの成形原料99.9重量部とステアリン酸カルシウム0.1重量部とを混合し、次いで室温で784MPaの圧力で圧縮成形した。次に成形体に170℃で2時間の熱硬化処理を施し本発明のボンド磁石を得た。
表3のNo.51〜54に得られた等方性ボンド磁石の密度と室温の磁気特性を示す。表3から、合金薄帯の厚みが大きい場合、即ち冷却ロールの周速が遅い条件で急冷し、次いで熱処理した合金薄帯を用いて作製したボンド磁石の密度が6.1Mg/m3以上になり、かつ高い(BH)maxを得られるのがわかる。
【0043】
(比較例1)
単ロール法により銅合金製冷却ロールの周速を40m/sとして、Sm7.35Febal.Co26.5Zr2.5B1.9N0.001(B含有量が本発明外)で表される組成の急冷薄帯を作製した。以降は実施例14と同様にして熱処理、磁粉作製、コンパウンド作製、圧縮成形、及び熱硬化処理を行い、比較例のボンド磁石を得た。このボンド磁石の密度及び室温の磁気特性を表3のNo.61に示す。表3よりHcJ及び(BH)maxが低く実用性に乏しいのがわかる。
【0044】
【表3】
【0045】
実施例13と同様にその他の各実施例の熱処理後の合金薄帯の断面のTEM写真を撮影し評価した結果、いずれの場合も主相のTbCu7型結晶粒の平均結晶粒径が5〜80nmの範囲内に入っているのがわかった。
【0046】
【発明の効果】
本発明によれば、最近の希土類磁石材料に対する過酷な磁気特性の高性能化に適合できる新規でかつ高性能の希土類永久磁石合金、及びボンド磁石を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 B含有量、(B/Sm)と磁気特性の関係の一例を示す図である。
【図2】 熱処理後の合金薄帯のX線回折図形の一例を示す図である。
【図3】 B含有量、(B/Sm)と磁気特性の関係の他の例を示す図である。
【図4】 熱処理後の合金薄帯の表面のX線回折図形、及び粉末試料のX線回折図形を示す。
【図5】 減磁曲線の一例を示す図である。
【図6】 Sm含有量、(B/Sm)と磁気特性の関係の一例を示す図である。
【図7】 HcJの低い熱処理後の合金薄帯粉末のX線回折図形である。
【図8】 RをSm以外の希土類元素で置換した場合の磁気特性の一例を示す図である。
【図9】 Co含有量と磁気特性の関係の一例を示す図である。
【図10】 減磁曲線の他の例を示す図である。
【図11】 Si、Al含有量と磁気特性の関係の一例を示す図である。
【図12】 熱処理条件とHcJの関係の一例を示す図である。
【図13】 不適切な条件で熱処理した合金薄帯の粉末X線回折図形である。
【図14】 Co含有量とキュリー温度の関係の一例を示す図である。
【図15】 Co含有量と温度係数α、βの関係の一例を示す図である。
【図16】 冷却ロールの周速と合金薄帯の平均厚さの関係の一例を示す図である。
【図17】 冷却ロールの周速と熱処理後の合金薄帯の磁気特性との関係の一例を示す図である。
【図18】 インゴット、急冷後の合金薄帯、及び熱処理後の合金薄帯のX線回折図形である。
【図19】 急冷後の合金薄帯の断面をTEMにより撮影した金属組織写真である。
【図20】 図19の位置1、2に対応するナノ電子回折パタンである。
【図21】 熱処理後の合金薄帯の断面をTEMにより撮影した金属組織写真の一例である。
【図22】 図21の位置3、4に対応するナノ電子回折パタンである。
【図23】 熱処理後の合金薄帯の断面をTEMにより撮影した金属組織写真の他の一例である。
【図24】 図23の位置5、6に対応するナノ電子回折パタンである。
【図25】 図23に対応するTEMにより撮影した低倍率の金属組織写真である。
Claims (5)
- 一般式:RxFe100−x−y−z−w−uCoyMwBzNu(但し、RはYを含む希土類元素から選ばれる少なくとも1種の希土類元素であって、Rに占めるSmの比率が70原子%以上であり、MはNb、Ti、Zr、Hf、V、Mo、Cr及びMnからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素であり、x、y、z、w及びuはそれぞれ原子%であり、4≦x≦11,0≦y≦30,4≦z≦11,0≦w≦8及び0.0001<u<0.1)で表される組成を有し、TbCu7型硬質磁性相(主相)及び平均結晶粒径が5nm未満の微結晶及び/または非晶質相から実質的になることを特徴とする永久磁石合金。
- 請求項1に記載の永久磁石合金において、前記永久磁石合金のM元素の含有量(w)が0.5≦w≦8であり、かつTbCu7型硬質磁性相(主相)のM元素の濃度よりも平均結晶粒径が5nm未満の微結晶及び/または非晶質相のM元素の濃度が高いことを特徴とする永久磁石合金。
- 請求項1又は2に記載の永久磁石合金において、前記永久磁石合金が、一般式:RxFe100−x−y−z−w−v−uCoyMwBzAvNu(但し、AはAl及び/またはSiであり、x、y、z、w、v及びuはそれぞれ原子%であり、4≦x≦11,0≦y≦30,4≦z≦11,0.5≦w≦8,0<v≦2及び0.0001<u<0.1)で表される組成を有することを特徴とする永久磁石合金。
- 請求項1乃至3のいずれかに記載の永久磁石合金において、前記永久磁石合金は窒素を実質的に含まない非酸化性雰囲気中で熱処理された平均厚み30μm超の合金薄帯であって、TbCu7型硬質磁性相(主相)の平均結晶粒径が5〜80nmであり、室温の保磁力HcJが238.7kA/m以上であることを特徴とする永久磁石合金。
- 一般式:RxFe100−x−y−z−w−uCoyMwBzNu(但し、RはYを含む希土類元素から選ばれる少なくとも1種の希土類元素であって、Rに占めるSmの比率が70原子%以上であり、MはNb、Ti、Zr、Hf、V、Mo、Cr及びMnからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素であり、x、y、z、w及びuはそれぞれ原子%であり、4≦x≦11,0≦y≦30,4≦z≦11,0≦w≦8及び0.0001<u<0.1)で表される組成を有し、TbCu7型硬質磁性相(主相)及び平均結晶粒径が5nm未満の微結晶及び/または非晶質相から実質的になる永久磁石合金をバインダーで結着したことを特徴とするボンド磁石。
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