JP2898229B2 - 磁石、その製造方法およびボンディッド磁石 - Google Patents
磁石、その製造方法およびボンディッド磁石Info
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Description
ディッド磁石とに関する。
系磁石やNd−Fe−B系磁石が実用化されているが、
近年、新規な希土類磁石の開発が盛んに行なわれてい
る。
固溶したSm−Fe−N系の希土類窒化磁石が提案され
ており、Sm2 Fe17N2.3 付近の組成で、4πIs =
15.4kG、Tc =470℃、HA =14Tの基本物性
が得られること、Znをバインダとするメタルボンディ
ッド磁石として10.5MGOeの(BH)max が得られるこ
と、また、Sm2 Fe17金属間化合物へのNの導入によ
り、キュリー温度が大幅に向上して熱安定性が改良され
たことが報告されている(Paper No.S1.3 at theSixth
International Symposium on Magnetic Anisotropy and
Coercivity inRare Earth-Transition Metal Alloys,P
ittsburgh,PA,October 25,1990.(Proceedings Book:Car
negie Mellon University,Mellon Institute,Pittsburg
h,PA 15213,USA) )。
いる磁石粒子は、ほぼ単結晶粒子となる程度の粒径を有
するものであり、その保磁力発生機構はニュークリエー
ションタイプである。このため、磁気特性が粒子の表面
状態の影響を受け易い。すなわち、粉砕時の機械的衝撃
や粒子の酸化等により磁石粒子表面には欠陥が生じ、こ
の欠陥により磁壁が発生するが、ニュークリエーション
タイプの磁石では結晶粒内に磁壁のピンニングサイトが
ないため容易に磁壁移動が起こるので、保磁力が劣化し
易い。
−16102号公報では、2相分離型のRe−Fe−N
−H−M系磁石を提案している。Reは希土類元素であ
り、Mは、Li、Na、K、Mg、Ca、Sr、Ba、
Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、
Mn、Pd、Cu、Ag、Zn、B、Al、Ga、I
n、C、Si、Ge、Sn、Pb、Biの元素およびこ
れらの元素ならびに希土類元素の酸化物、フッ化物、炭
化物、窒化物、水素化物、炭酸塩、硫酸塩、ケイ酸塩、
塩化物、硝酸塩のうち少なくとも1種である。同公報で
は、M添加によりSm−Co系やNd−Fe−B系でみ
られるような2相分離型の微構造を形成させ、これによ
り、焼結磁石やボンディッド磁石のようなバルク磁石と
したときにも粉体のときと同様な高い磁気特性を引き出
すことを目的としている。具体的には、粒子境界部にM
の含有量が多い相を有し、粒子中心部にはMの含有量が
少ないか、または、Mを含有しない相を有する2相分離
型のバルク磁石を製造している。同公報では、溶解法や
液体急冷法などによって母合金を製造し、母合金を粗粉
砕した後、窒化水素化し、さらに微粉砕して、焼結磁石
またはボンディッド磁石としている。Mの添加は、微粉
砕の直前に行なうことが特に有効であるとされている。
が、ボンディッド磁石に適用できる旨の記述もある。同
公報の実施例では、Sm8.9 Fe75.4N15.5H0.2 合金
粉末(粒径20〜38μm )にZnを8モル%添加して
回転ボールミルで微粉砕した後、430℃で1.5時間
焼鈍して、Sm8.2 Fe69.5N14.3H0.05Zn8.0 組成
の微粉体とし、この微粉体を用いて圧縮粉体成形ボンデ
ィッド磁石を作製している。同公報ではボンディッド磁
石作製の際にこのような微粉体を用いるため、酸化の影
響により安定した磁石特性を得ることが難しく、また、
磁石の高密度化も難しいという問題がある。また、Sm
とFeとの比率は化学量論組成であるSm2 Fe17(1
0.5原子%Sm)にほぼ等しくSmを多量に使用する
ため、低コスト化が難しい。
るためには、高価な希土類元素の含有量を低減すること
が有効であるが、希土類元素量を減らすと、特にSm/
(Sm+Fe)を10原子%以下とした場合には、α−
Fe相の析出が多くなって保磁力が著しく低くなってし
まうため、磁石としての安定性が不十分となる。
カニカルアロイ法を用いて作製した希土類元素量が7原
子%と少ないSm−Fe系合金を窒化した磁石が報告さ
れている。この磁石は、Sm2 Fe17Nx 相とα−Fe
相とからなるものであり、保磁力は約3.9 kOeと低
い。メカニカルアロイ法では酸化が生じやすいため、希
土類元素のような酸化しやすい金属を扱う工法としては
工業的に採用しにくい。
で、しかも高保磁力、高角形比、高最大エネルギー積の
磁石を提供することである。
(1)〜(7)のいずれかの構成により達成される。 (1)R(Rは希土類元素の1種以上であり、R中のS
m比率は50原子%以上である)、T(TはFe、また
はFeおよびCoである)、NおよびM(Mは、Zrで
あるか、Zrの一部をTi、V、Cr、Nb、Hf、T
a、Mo、W、Al、CおよびPから選択される少なく
とも1種の元素で置換したものである)を含有し、Rを
4〜8原子%、Nを12原子%超、20原子%以下、M
を2〜10原子%含有し、残部が実質的にTであり、
R、TおよびNを主体とし、TbCu7型、Th2Zn
17型およびTh2Ni17型から選択される少なくと
も1種の結晶相を含む硬質磁性相と、bcc構造のT相
からなる軟質磁性相とを有し、軟質磁性相の平均結晶粒
径が5〜60nmであり、軟質磁性相の割合が10〜6
0体積%である磁石。 (2)R(Rは希土類元素の1種以上であり、R中のS
m比率は50原子%以上である)、T(TはFe、また
はFeおよびCoである)、NおよびM(Mは、Zrで
あるか、Zrの一部をTi、V、Cr、Nb、Hf、T
a、Mo、W、Al、CおよびPから選択される少なく
とも1種の元素で置換したものである)を含有し、Rを
4〜8原子%、Nを10〜20原子%、Mを2〜10原
子%含有し、残部が実質的にTであり、R、TおよびN
を主体とし、TbCu7型、Th2Zn17型およびT
h2Ni17型から選択される少なくとも1種の結晶相
を含む硬質磁性相と、bcc構造のT相からなる軟質磁
性相とを有し、軟質磁性相の平均結晶粒径が5〜45n
mであり、軟質磁性相の割合が10〜60体積%である
磁石。 (3)R(Rは希土類元素の1種以上であり、R中のS
m比率は50原子%以上である)、T(TはFe、また
はFeおよびCoである)、NおよびM(Mは、Zrで
あるか、Zrの一部をTi、V、Cr、Nb、Hf、T
a、Mo、W、Al、CおよびPから選択される少なく
とも1種の元素で置換したものである)を含有し、Rを
4〜8原子%、Nを10〜20原子%、Mを2〜10原
子%含有し、残部が実質的にTであり、R、TおよびN
を主体とし、TbCu7型、Th2Zn17型およびT
h2Ni17型から選択される少なくとも1種の結晶相
を含む硬質磁性相と、bcc構造のT相からなる軟質磁
性相とを有し、軟質磁性相の平均結晶粒径が5〜60n
mであり、軟質磁性相の割合が10〜60体積%である
磁石を製造するに際し、液体急冷法により製造した急冷
合金に、窒化処理を施す磁石の製造方法。 (4)窒化処理を施す前の急冷合金に、組織構造制御の
ための熱処理を施す上記(3)の磁石の製造方法。 (5)水素を含む雰囲気中で組織構造制御のための熱処
理を施した後、急冷合金中の水素を放出させることによ
り、TbCu7型、Th2Zn17型およびTh2Ni
17型から選択される少なくとも1種の結晶相とbcc
構造のT相とを析出させ、次いで、窒化処理を施す上記
(4)の磁石の製造方法。 (6)組織構造制御のための熱処理を施す前の急冷合金
が、TbCu7型の結晶相を有する上記(5)の磁石の
製造方法。 (7)上記(1)または(2)の磁石の粉末とバインダ
とを含有するボンディッド磁石。
希土類元素含有量が少なくなるとα−Fe相が多量に析
出して高保磁力が得られなくなっていたが、本発明の磁
石では、Smを主体とするRの含有量を少なくした上で
元素Mを上記所定量添加し、さらにN量を上記範囲(1
0〜20原子%)とすることにより、上述した微細な組
織構造を出現させて高保磁力を得ることができ、かつ角
形比が高くなって最大エネルギー積が向上する。この場
合の角形比とは、Hk / iHc を意味する。なお、 iH
c は保磁力であり、Hk は、磁気ヒステリシスループの
第2象限において磁束密度が残留磁束密度の90%にな
るときの外部磁界強度である。Hk が低いと高い最大エ
ネルギー積が得られない。Hk / iHc は、磁石性能の
指標となるものであり、磁気ヒステリシスループの第2
象限における角張りの度合いを表わす。iHc が同等で
あってもHk / iHc が大きいほど磁石中のミクロ的な
保磁力の分布がシャープとなるため、着磁が容易とな
り、かつ着磁ばらつきも少なくなり、また、最大エネル
ギー積が高くなる。そして、磁石使用時の外部からの減
磁界や自己減磁界の変化に対する磁化の安定性が良好と
なり、磁石を含む磁気回路の性能が安定したものとな
る。本発明の磁石ではHk / iHc として15%以上が
容易に得られ、18%以上、さらには20%以上とする
こともできる。なお、Hk / iHc は、通常、45%程
度以下である。また、Hk としては、1kOe 以上が容易
に得られ、1.5kOe 以上、さらには2kOe 以上とする
こともできる。なお、Hk は、通常、4kOe 程度以下で
ある。また、ボンディッド磁石とした場合には、20〜
50%程度の高いHk / iHc を得ることが可能であ
る。
を減らした上で高保磁力、高角形比および高い最大エネ
ルギー積を得ることができるので、低価格で高性能な磁
石が実現する。
には、焼鈍後のα−Fe相の結晶粒径が20〜55nmで
あった旨の記述があるが、同文献記載の磁石は本発明で
用いる元素Mを含まず、メカニカルアロイ法によりα−
Fe相を形成している。このため、α−Fe相の結晶粒
径が小さいにもかかわらず高保磁力が得られていないと
考えられる。
報には、本発明で用いる元素Mを使った実施例もある
が、いずれも焼結磁石であり、しかも、磁石の組織構造
も本発明とは異なる。また、希土類元素の比率が化学量
論組成とほぼ等しいため、低コスト化が難しい。
は、「Sm−Fe−Co−V系窒化化合物とそのボンデ
ィッド磁石の磁気特性」についての報告が記載されてい
る。このボンディッド磁石は、以下の工程を経て作製さ
れている。まず、Sm2 (Fe0.9 Co0.1 )17-xVx
(x=0〜2.0)合金を溶解鋳造し、溶体化処理後、
ジョークラッシャーで30μm 程度まで粉砕する。次い
で窒化処理を行なった後、ジェットミルにより3〜5μ
m 程度に微粉砕する。次いで、エポキシ樹脂のバインダ
と混合して磁界中で圧縮成形し、ボンディッド磁石とす
る。
n17型の結晶構造となり、x=1.5ではTbCu7 型
の結晶構造となっている。溶体化処理後の粉末のX線回
折チャートでは、すべての組成においてα−(Fe,C
o)のピークは認められないが、常圧での窒化処理後に
は、α−(Fe,Co)のピークが認められ、xが大き
くなるにしたがってこのピークが小さくなり、x=1.
5ではα−(Fe,Co)のピークは認められない。こ
のことから、同報告ではV置換がα−(Fe,Co)の
析出を抑える効果があるとしている。x=1.5で窒化
処理温度を600℃としたとき、微粉砕後の粉末の保磁
力Hcjが256kA/m(約3.2 kOe)となっているが、
この保磁力は磁石材料としては十分とはいえない。同報
告では、TbCu7 型相を利用してはいるが、R含有量
が化学量論組成と同じであって、しかも高保磁力は得ら
れておらず、本発明のように微細なbcc構造T相を析
出させて保磁力を向上させる技術思想はみられない。
を用い、TbCu7 型相を利用して、22 kOeを超える
保磁力を得たことが報告されている。しかし、同報告で
用いている合金の組成はSm15Fe85であり、化学量論
組成であるSm2 Fe17よりもSm過剰であり、かつ元
素Mを含んでいない。すなわち、同報告には、R含有量
を少なくし、かつ元素Mを添加することにより、安価で
高性能な窒化磁石を得るという本発明の技術思想はみら
れない。
式R1x R2y Az M100-x-y-z (ただし、R1は希土
類元素から選ばれる少なくとも1種の元素、R2は原子
半径が0.156〜0.174nmである元素から選ばれ
る少なくとも1種の元素、Aは、H、C、NおよびPか
ら選ばれる少なくとも1種の元素、MはFeおよびCo
から選ばれる少なくとも1種の元素を示し、x、y、z
は原子%でそれぞれx≧2、y≧0.01、4≦x+y
≦20、0≦z≦20を示す)にて表わされ、主相がT
bCu7 型結晶構造を有し、かつ前記主相中に占める前
記Mが前記主相中のAを除くすべての元素の総量の90
原子%以上である磁性材料が記載されている。また、M
の総量の20原子%以下がT(TはSi、Ti、Al、
Ga、V、Ta、Mo、Nb、Cr、W、MnおよびN
iから選ばれる少なくとも1種の元素)で置換され得る
旨が記載されている。
主相を有する点では本発明の磁石に類似するが、同公報
には、この主相とα−Fe相等の軟質磁性相とを併存さ
せるという本発明の技術思想はみられず、α−Fe相の
増加に伴なって保磁力が著しく低下する旨の記載がある
だけである。また、同公報記載の磁性材料は、主相中の
Fe+Coの比率が90原子%以上と高いが、この比率
は本発明における好ましい範囲を上回る。また、同公報
記載の実施例のうち窒化磁石のものでは、希土類元素が
Sm主体となっておらず、NdやPrが主体となってい
る。また、窒化磁石の実施例では窒素量が本発明に比べ
少なくなっている。同公報記載の実施例ではボンディッ
ド磁石を作製しているが、このものの磁気特性は、本発
明の実施例のボンディッド磁石よりも著しく低い。
の基礎出願の出願後に公開されたものである。同公報に
は、一般式Rx Az Coy Fe100-x-y-z (ただし、R
は希土類元素の群から選ばれる少なくとも1種の元素、
Aは、H、N、CおよびPの群から選ばれる少なくとも
1種の元素、x、y、zは原子%でそれぞれ4≦x≦2
0、0.01≦y≦20、z≦20を示す)にて表わさ
れ、主相がTbCu7型結晶構造を有し、かつ前記主相
中のFeおよびCoが前記主相中のAを除くすべての元
素の総量の90原子%以上である磁性材料が記載されて
いる。また、FeがM元素(MはTi、Cr、V、M
o、W、Mn、Ag、Cu、Zn、Nb、Ta、Ni、
Sn、Ga、Alの群から選ばれる少なくとも1種の元
素)で一部置換され得る旨が記載されている。
主相を有する点では本発明の磁石に類似するが、同公報
には、この主相とα−Fe相等の軟質磁性相とを併存さ
せるという本発明の技術思想はみられず、Zrを添加す
る旨の記述もない。また、同公報記載の実施例のうち窒
化磁石のものでは、窒素含有量が本発明に比べ少なくな
っている。また、同公報記載の磁性材料は、主相中のF
e+Coの比率が90原子%以上と高いが、この比率は
本発明における好ましい範囲を上回る。同公報記載の実
施例ではボンディッド磁石を作製しているが、このもの
の磁気特性は、本発明の実施例のボンディッド磁石より
も著しく低い。
の基礎出願の出願後に公開されたものである。同公報に
は、原子%で、Y、ランタニド元素の1種または2種以
上の希土類金属(R)2〜7%、N1〜15%、残部F
eからなり、少なくとも硬磁性の希土類化合物相と軟磁
性の鉄相との2相の金属組織を有し、かつ前記相のそれ
ぞれが500nm以下の結晶粒サイズを有する粉末状の希
土類磁石材料が記載されており、また、Feの一部をZ
rで置換し得ること、希土類化合物相がTh2Zn
17型、ThMn12型またはTbCu7 型の結晶構造をも
つことが記載されている。
性相とを有する点で本発明の磁石に類似しているが、軟
磁性相の結晶粒サイズの上限は500nmであり、本発
明に比べ大きい。同公報において軟磁性相の具体的サイ
ズが記載されているのは、実施例3だけである。実施例
3の磁石材料の軟磁性相のサイズは10〜50nmであ
り、本発明範囲と重なる。しかし、この磁石材料の組成
はNd3.1Fe86.0Ti7.8N3.1であり、
SmおよびZrを含まず、また、N量が本発明範囲を下
回る。しかも、この磁石材料の硬磁性相はThMn12
であり、本発明の磁石とは全く異なる。この他の実施例
では、軟磁性相の具体的サイズの記述はなく、しかも、
Zrを添加した実施例はない。また、すべての実施例に
おいてN量は6原子%以下となっており、本発明範囲を
下回る。同公報には、これらの実施例の磁石材料が極め
て高い磁気特性を示した旨の記述があるが、本発明者ら
の実験によれば、これらの磁石材料では高特性は得られ
ず、特に、角形比が不十分となる。
の基礎出願の出願後に公開されたものである。同公報に
は、成分組成がRx Fe100-(x+y+z) My Az で表わさ
れ、平均粉末粒径が10〜200μm であり、前記Rは
Y、ランタニド元素の1種または2種以上の希土類金属
からなり、前記Mは、V、Ti、Moの1種または2種
以上からなり、前記AはN、Cの1種または2種からな
り、前記x、y、zは原子百分率で下記の範囲5≦x≦
15、1≦y≦20、1≦z≦25である希土類磁石材
料が記載されている。同公報には磁石材料にZrを添加
する旨の記載はなく、また、軟質磁性相についての記載
もない。結晶粒サイズについては、急冷薄帯の結晶粒が
50〜100nm程度であった旨の記述があるだけであ
る。
基礎出願の出願後に公開されたものである。同公報に
は、一般式R1x R2y Az Cou Fe100-x-y-z-u
(ただし、R1は希土類元素から選ばれる少なくとも1
種の元素、R2は原子半径が0.156〜0.174nm
である元素から選ばれる少なくとも1種の元素、Aは、
C、NおよびPから選ばれる少なくとも1種の元素を示
し、x、y、z、uは原子%でそれぞれ2≦x、0≦
y、4≦x+y≦20、0≦z≦20、0.01≦y+
uを示す)にて表され、主相がTbCu7 型結晶構造を
有し、かつα−Fe相または(FeCo)相のX線主回
折ピーク強度が主相のそれの0.01〜5倍である永久
磁石が記載されている。そして、R2として、Sc、Z
rおよびHfの群から選ばれる少なくとも1種の元素が
例示されている。
およびα−Fe相を有し、両相の交換結合により磁気特
性を向上させる点では本発明の磁石に類似する。しか
し、同公報にはα−Fe相の比率の記載はない。α−F
e相と主相とのX線主回折ピーク強度の比は、両者の体
積比率と完全に相関するわけではなく、例えばα−Fe
相の結晶粒径や結晶化度などによって変動するため、同
公報記載の永久磁石中におけるα−Fe相の体積比率は
不明である。同公報実施例の銅ロールによる急速冷却
(周速度40m/s )を利用したボンディッド磁石(表
3)およびメカニカルアロイイングを利用したボンディ
ッド磁石(表4)のいずれにおいても、Zr量およびN
量が本発明範囲を下回っていることから、前述した角形
比Hk / iHcが低くなり、そのために最大エネルギー
積が低くなると考えられる。実際、表3および表4で
は、本発明の実施例に比べ最大エネルギー積が著しく低
く、また、残留磁束密度も低くなっている。
の基礎出願の出願後に公開されたものである。同公報に
は、一般式R1x R2y Az Cou Fe100-x-y-z-u
(ただし、R1は希土類元素から選ばれる少なくとも1
種の元素、R2はZr、HfおよびScから選ばれる少
なくとも1種の元素、Aは、C、NおよびPから選ばれ
る少なくとも1種の元素を示し、x、y、z、uは原子
%でそれぞれ2≦x、4≦x+y≦20、0≦z≦2
0、0≦u≦70を示す)にて表され、主相がTbCu
7 型結晶構造を有し、かつCuKα線を用いたX線回折
パターン(角分解能0.02°以下)におけるTbCu
7 型相の主反射強度をIp とし、α−Fe相の主反射強
度をIFeとしたとき、TbCu7 型相の主反射強度の半
値幅が0.8°以下で、IFe/(IFe+Ip )が0.4
以下である磁性合金を含む永久磁石が記載されている。
主相およびα−Fe相を有する点では本発明の磁石に類
似する。しかし、同公報にはα−Fe相の比率の記載は
なく、上記のように、X線回折における主反射強度の比
IFe/(IFe+Ip )からは、両相の体積比率を求める
ことはできない。同公報の実施例では、N量が本発明範
囲を下回っていることから、前述した角形比Hk / iH
c が低くなり、そのために最大エネルギー積が低くなる
と考えられる。また、同公報実施例の銅ロールによる急
速冷却(周速度40m/s )を利用したボンディッド磁石
では、本発明の実施例に比べ残留磁束密度が低くなって
いる。
Mを含み、主相である硬質磁性相と微細な軟質磁性相と
を含む複合組織を有する。
六方晶系のTbCu7 型、菱面体晶系のTh2 Zn17型
および六方晶系のTh2 Ni17型から選択される少なく
とも1種の結晶構造をもち、これらの結晶構造に窒素が
侵入した構造である。硬質磁性相は、通常、TbCu7
型結晶相またはTh2 Zn17型結晶相またはこれらの2
相が混在した構成となるが、Smよりも重希土類側の希
土類元素を含む場合には、Th2 Ni17型結晶相が存在
することもある。Rは主としてThサイトおよびTbサ
イトに、Tは主としてZnサイト、NiサイトおよびC
uサイトに存在すると考えられるが、Tの一部がThサ
イトおよびTbサイトに存在する場合もある。Mは、元
素によっても異なるが、主としてZnサイト、Niサイ
トおよびCuサイトに存在すると考えられるが、Thサ
イトおよびTbサイトに存在する場合もある。また、M
は、軟質磁性相であるbcc構造T相に入ることもあ
る。
T+M)は、好ましくは90%未満であり、より好まし
くは75〜87%である。T/(R+T+M)が小さす
ぎると飽和磁化および残留磁束密度が低くなり、大きす
ぎると最大エネルギー積が低くなる。
質的にα−Fe相であるか、α−Fe相のFeの一部が
Co、M、R等で置換されたものであると考えられる。
粒径が5〜60nmであるとき高保磁力が得られる。磁石
中には、結晶磁気異方性が高い硬質磁性相と飽和磁化が
高い軟質磁性相とが存在し、軟質磁性相が微細であるた
め両相の界面が多くなって交換異方性が生じ、高保磁力
が得られると考えられる。軟質磁性相の平均結晶粒径が
小さすぎると飽和磁化が低くなってしまい、大きすぎる
と保磁力および角形性が低くなってしまう。なお、軟質
磁性相の平均結晶粒径は、好ましくは5〜40nmであ
り、また、硬質磁性相の結晶構造がTbCu7 型である
とき、より高性能な磁石となる。
電子顕微鏡により確認することができる。軟質磁性相の
平均結晶粒径は、磁石断面の画像解析により算出する。
まず、磁石断面の測定対象領域中に含まれている軟質磁
性相について、結晶粒の数nおよび各結晶粒の断面積の
合計Sを、画像解析により算出する。そして、軟質磁性
相の結晶粒1個あたりの平均断面積S/nを算出し、面
積がS/nである円の直径Dを平均結晶粒径とする。す
なわち、平均結晶粒径Dは、 式 π(D/2)2 =S/n から求める。なお、測定対象領域は、nが50以上とな
るように設定することが好ましい。
5〜500nm、より好ましくは5〜100nmである。硬
質磁性相の平均結晶粒径が小さすぎる場合には結晶性が
不十分であり、高保磁力が得られにくい。一方、硬質磁
性相の平均結晶粒径が大きすぎると、窒化処理に要する
時間が長くなる傾向がある。硬質磁性相の平均結晶粒径
は、軟質磁性相の平均結晶粒径と同様にして算出する。
〜60体積%、好ましくは10〜36体積%である。軟
質磁性相の割合が低すぎても高すぎても良好な磁石特性
が得られなくなり、特に最大エネルギー積が低くなる。
軟質磁性相の割合は、磁石断面の透過型電子顕微鏡写真
を用いて、いわゆる面積分析法により求める。この場
合、断面積比が体積比となる。
石の組成限定理由を説明する。
〜7原子%である。Nの含有量は10〜20原子%、好
ましくは12〜18原子%、より好ましくは15原子%
超18原子%以下、さらに好ましくは15.5〜18原
子%である。Mの含有量は2〜10原子%、好ましくは
2.5〜5原子%である。そして、残部が実質的にTで
ある。
なる。一方、Rの含有量が多すぎるとbcc構造T相の
量が少なくなって磁石特性が低くなり、また、高価なR
を多量に使用することになるため、安価な磁石が得られ
なくなる。Sm以外のRとしては、Y、La、Ce、P
r、Nd、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、T
m、Yb、Lu等の1種以上を用いることができる。本
発明の磁石の硬質磁性相は、Th2 Zn17型、Th2 N
i17型、TbCu7 型の結晶構造に窒素が侵入した構成
であり、このような硬質磁性相ではRがSmであるとき
に最も高い結晶磁気異方性を示す。Smの比率が低いと
結晶磁気異方性が低下し保磁力も低下するため、R中の
Sm比率は50原子%以上、好ましくは70原子%以上
とする。
上昇、保磁力の向上、角形比の向上、飽和磁化の向上お
よび最大エネルギー積の向上が不十分となり、N含有量
が多すぎると、残留磁束密度が低下する傾向を示すと共
に角形比が低くなって最大エネルギー積も低くなる。N
含有量はガス分析法などにより測定することができる。
するために添加される。元素Mが含まれないと、合金製
造時に軟質磁性相の粗大な結晶粒が析出するため、最終
的に軟質磁性相の平均結晶粒径が比較的小さくなったと
しても、高保磁力が得られなくなる。Mの含有量が少な
すぎると、軟質磁性相の平均結晶粒径が小さい磁石が得
られにくくなる。一方、Mの含有量が多すぎると、飽和
磁化が低くなってしまう。Mは、Zrであるか、Zrの
一部をTi、V、Cr、Nb、Hf、Ta、Mo、W、
Al、CおよびPから選択される少なくとも1種の元素
で置換したものである。Zrを置換する元素としては、
Al、CおよびPの少なくとも1種が好ましく、特にA
lが好ましい。本発明においてZrを必須とするのは、
組織構造制御に特に有効であり、また、角形比向上に有
効だからである。また、Alは、急冷合金の窒化を容易
にする効果も示すため、Al添加により、窒化処理に要
する時間を短縮することができる。なお、磁石中のZr
含有量は、好ましくは2〜4.5原子%、より好ましく
は3〜4.5原子%である。これは、MとしてZrだけ
を用いる場合でも他の元素と併用する場合でも同様であ
る。Zr含有量が少ないと高保磁力と高角形比とが共に
は得られず、また、Zr含有量が多すぎると飽和磁化お
よび残留磁束密度が低くなってしまう。
る。Tは、Feであるか、あるいはFeおよびCoであ
る。Coの添加は特性を向上させるが、T中のCoの比
率は50原子%以下であることが好ましい。Coの比率
が50原子%を超えると残留磁束密度が低くなってしま
う。
TbCu7 型結晶相を含む場合、Cu−Kα線を用いた
X線回折におけるTbCu7 型結晶相の最大ピークの強
度をIH 、軟質磁性相の最大ピークの強度をIS とした
とき、IS /IH は、好ましくは0.4〜2.0、より
好ましくは0.7〜1.8である。IS /IH が0.4
〜2.0であれば高い角形比を示し、IS /IH が0.
7〜1.8であればさらに高い角形比が得られる。IS
/IH が小さすぎても大きすぎても、最大エネルギー積
が低くなる傾向となる。
織構造制御のための熱処理を施して微細なbcc構造T
相を析出させる場合、熱処理前の急冷合金のIS /IH
は、好ましくは0.4以下、より好ましくは0.25以
下である。このように、急冷直後のIS /IH を小さく
し、熱処理によりIS /IH を増大させる、すなわち熱
処理によりbcc構造T相の析出を促す構成とすること
により、微細なbcc構造T相を組織中に分散させるこ
とが容易となり、高い磁石特性が容易に実現する。
あるとき、Cu−Kα線を用いたX線回折におけるTb
Cu7 型結晶相の最大ピークは、2θ=42.00〜4
2.50°の範囲にあることが好ましい。最大ピークの
位置が前記範囲から外れると、高特性を得ることが難し
くなる。具体的には、最大ピークの位置が2θ=42.
00°未満であると、残留磁束密度が低下する傾向を示
し、2θ=42.50°を超えていると、キュリー温度
の上昇、保磁力の向上、角形比の向上、飽和磁化の向上
および最大エネルギー積の向上が不十分となる。
適した方法を説明する。
合金を液体急冷法により製造し、この急冷合金に窒化処
理を施して磁石化する。
る溶湯状合金を急速に冷却することにより急冷合金を得
る。用いる液体急冷法は特に限定されず、単ロール法、
双ロール法、アトマイズ法等の各種方法から適宜選択す
ればよいが、量産性が高く、急冷条件の再現性が良好で
あることから、通常、単ロール法を用いることが好まし
い。単ロール法を用いる場合の急冷条件は特に限定され
ず、好ましい組織構造が得られるように、合金の組成な
どに応じて適宜設定すればよいが、通常、CuまたはC
u合金の冷却ロールを用い、ロール周速は、好ましくは
10m/s 以上、より好ましくは30m/s 以上、さらに好
ましくは45m/s 以上、特に好ましくは55m/s 以上、
最も好ましくは65m/s 以上とする。ロール周速を適当
な値とすることにより、急冷合金が微結晶状態または非
晶質状態に近くなり、その後の熱処理により任意の結晶
粒径が実現可能となり、窒化も容易となる。このため、
高保磁力、高残留磁束密度、高角形比、高最大エネルギ
ー積の磁石が得られる。なお、ロール周速は、通常、1
20m/s 以下とすることが好ましい。ロール周速が速す
ぎると、溶湯状合金とロール周面との接触が悪くなって
熱移動が効果的に行なわれなくなる。このため、実効冷
却速度は遅くなってしまう。単ロール法により得られる
急冷合金は、通常、薄帯状である。薄帯の厚さは特に限
定されないが、好ましくは8〜200μm 、より好まし
くは10〜60μm である。厚さが8μm 未満の薄帯は
作製することが困難であり、厚すぎる薄帯では、十分な
冷却速度を得ることが困難である。
は微細な複合組織である多結晶であるか、実質的にアモ
ルファス相であることが好ましい。急冷合金が多結晶で
ある場合、TbCu7 型、Th2 Zn17型およびTh2
Ni17型のうちいずれか、またはこれらの2種以上の結
晶相を含み、通常、さらにbcc構造のT相を含むが、
アモルファス相を含むこともある。bcc構造のT相の
割合が低いか、実質的にT相が含まれない場合には、他
の結晶相は実質的にTbCu7 型である。
相を含む複合組織構造とするために、通常、急冷合金に
組織構造制御のための熱処理を施す。この熱処理におけ
る処理温度は、好ましくは400〜800℃、より好ま
しくは600〜800℃であり、処理時間は処理温度に
もよるが、通常、0.1〜300時間程度とする。この
熱処理は、不活性ガス雰囲気等の非酸化性雰囲気、還元
性雰囲気、真空中等で行なうことが好ましい。この熱処
理により、微細なbcc構造T相が析出し、また、Tb
Cu7 型、Th2 Zn17型およびTh2 Ni17型の少な
くとも1種の結晶相が析出することもある。
を含む雰囲気中で施すことも好ましい。この熱処理で
は、急冷合金に水素を吸蔵させることにより、R、Tお
よびMを含む結晶を、bcc構造T相とR水素化物相と
に分解する。このときの処理温度は、好ましくは350
〜950℃、より好ましくは500〜800℃とし、処
理時間は、好ましくは0.1〜10時間、より好ましく
は0.5〜5時間とする。雰囲気中の水素ガスの圧力
は、0.1〜10気圧、特に0.5〜2気圧とすること
が好ましい。このときの雰囲気は、水素ガスだけに限ら
ず、水素ガスと不活性ガスとの混合雰囲気であってもよ
い。この場合の不活性ガスとしては、例えばHeまたは
Ar、あるいはこれらの混合ガスなどを用いることがで
きる。なお、分解温度まで昇温する前に、80〜300
℃、特に200〜250℃にて、0.1〜1時間、特に
0.25〜0.5時間程度水素を吸蔵させることによ
り、その後の分解反応が十分かつ迅速に進行する。
し、急冷合金から水素を放出させる。水素放出により、
Th2 Zn17型およびTh2 Ni17型の少なくとも1種
の結晶相と微細なbcc構造T相とを含む複合組織が形
成され、TbCu7 型結晶相が形成されることもある。
このときの処理温度は、好ましくは300〜900℃、
より好ましくは450〜850℃とし、処理時間は、好
ましくは0.05〜5時間、より好ましくは0.25〜
3時間とする。処理時の圧力は、好ましくは1×10-2
Torr以下、より好ましくは1×10-3Torr以下とする。
水素放出のための熱処理は、水素吸蔵のための熱処理後
に、降温せずに続いて行なうことが好ましい。これによ
り高い生産性が得られる。
bcc構造T相の割合が低いか、bcc構造T相が実質
的に含まれていない急冷合金に対して特に有効である。
に窒化処理を施す。窒化処理では、窒素ガス雰囲気中で
急冷合金に熱処理を施す。この処理により、TbCu7
型、Th2 Zn17型、Th2 Ni17型の結晶中に窒素原
子が侵入して侵入型の固溶体が形成され、硬質磁性相と
なる。窒化処理の際の処理温度は、好ましくは350〜
700℃、より好ましくは350〜600℃であり、処
理時間は、好ましくは0.1〜300時間である。窒素
ガスの圧力は、0.1気圧程度以上とすることが好まし
い。なお、窒化処理に高圧窒素ガスを用いたり、窒素ガ
ス+水素ガスを用いたり、アンモニアガスを用いたりす
ることもできる。
の急冷合金を粉砕した後に施すが、均一な窒化が可能で
あれば、急冷合金を粉砕しないで窒化処理を施してもよ
い。
帯状や粒状等のいずれであってもよい。ボンディッド磁
石等の磁石製品に適用する場合には、所定の粒径にまで
粉砕して磁石粒子とする。
子の平均粒子径は、通常、10μm以上とすることが好
ましいが、十分な耐酸化性を得るためには、平均粒子径
を好ましくは30μm 以上、より好ましくは50μm 以
上、さらに好ましくは70μm 以上とすることがよい。
また、この程度の粒子径とすることにより、高密度のボ
ンディッド磁石とすることができる。平均粒子径の上限
は特にないが、通常、1000μm 程度以下であり、好
ましくは250μm 以下である。なお、この場合の平均
粒子径とは、篩別により求められた重量平均粒子径D50
を意味する。重量平均粒子径D50は、径の小さな粒子か
ら重量を加算していって、その合計重量が全粒子の合計
重量の50%となったときの粒子径である。
で結合して作製される。本発明の磁石は、プレス成形を
用いるコンプレッションボンディッド磁石、あるいは射
出成形を用いるインジェクションボンディッド磁石のい
ずれにも適用することができる。バインダとしては、各
種樹脂を用いることが好ましいが、金属バインダを用い
てメタルボンディッド磁石とすることもできる。樹脂バ
インダの種類は特に限定されず、エポキシ樹脂やナイロ
ン等の各種熱硬化性樹脂や各種熱可塑性樹脂から目的に
応じて適宜選択すればよい。金属バインダの種類も特に
限定されない。また、磁石粒子に対するバインダの含有
比率や成形時の圧力等の各種条件にも特に制限はなく、
通常の範囲から適当に選択すればよい。ただし、結晶粒
の粗大化を防ぐために、高温の熱処理が必要な方法は避
けることが好ましい。
をさらに詳細に説明する。
1に示される磁石粉末を作製した。
し、各インゴットを小片に砕いた。得られた小片を石英
ノズルに入れて高周波誘導加熱により溶解して溶湯状と
し、単ロール法により急冷して、厚さ約30μm 、幅5
mmの薄帯状の急冷合金とした。冷却ロールにはBe−C
uロールを用い、その周速度は50m/s とした。X線回
折および透過型電子顕微鏡による観察の結果、急冷合金
は、TbCu7 型結晶相とbcc構造α−Fe相とを含
む多結晶複合組織であり、さらにアモルファス相も含む
ものであることが確認された。
織構造制御のための熱処理を施した。熱処理は、720
℃にて0.5〜1.5時間行なった。熱処理後にX線
(Cu−Kα線)回折および透過型電子顕微鏡による観
察を行なったところ、TbCu7 型結晶相とbcc構造
α−Fe相とを含む多結晶複合組織となっており、アモ
ルファス相は実質的に消失していた。磁石粉末No. 10
2に用いた急冷合金の熱処理後のX線回折チャートを図
1の最上段に示す。
の径まで粉砕し、1気圧の窒素ガス雰囲気中で450℃
にて窒化処理を施し、磁石粉末とした。各磁石粉末の窒
化処理時間を表1に示す。窒化処理後の磁石粉末No. 1
02のX線回折チャートを図1に示す。なお、参考のた
めに、窒化処理時間を10時間、15時間、20時間と
したときのX線回折チャートを図1に併記する。
ているが、窒化処理によりTbCu7 型結晶相のピーク
の低角度側へのシフトが認められる。したがって、窒素
原子が結晶格子に侵入型に固溶して、結晶格子の膨張が
生じていることがわかる。
前)のIS /IH と、窒化処理後のIS /IH とを示
す。また、窒化処理後にTbCu7 型結晶相の最大ピー
クの位置を調べ、この最大ピークが2θ=42.00〜
42.50°の範囲にある場合を○とし、この範囲から
外れている場合を×とした。
より組織観察を行ない、α−Fe相の平均結晶粒径およ
び磁石粉末中のα−Fe相の比率を求めた。結果を表1
に示す。磁石粉末No. 102の透過型電子顕微鏡写真
を、図2に示す。図2では、濃度の高い結晶粒がα−F
e相である。
(Br)、保磁力( iHc )、角形比(Hk / iHc
)、最大エネルギー積{(BH)m}を測定した。結
果を表1に示す。
明らかである。すなわち、元素Mを含み、α−Fe相の
平均結晶粒径が所定範囲にある本発明の磁石粉末では、
R含有量が少なくても高保磁力が得られている。これに
対し、Mを含まない磁石粉末No. 109では、保磁力が
極めて小さくなっている。
必須とすることによる効果が明らかである。すなわち、
Zr以外の元素を単独で添加した場合、角形比が不十分
であり、最大エネルギー積が著しく低くなっている。ま
た、N含有量が本発明範囲を下回る場合にも、角形比が
低く、最大エネルギー積が著しく低くなることがわか
る。このように角形比Hk / iHc が15%を下回る
と、磁石使用時の外部からの減磁界や自己減磁界のわず
かな変化によって磁化が大きく変化してしまい、磁石を
含む磁気回路の性能が安定しなくなる。
窒化には60時間程度が必要であったが、本発明におけ
る組成域では窒化に要する時間が1/3程度以下まで短
縮されることがわかる。そして、Al添加により、窒化
処理時間をさらに短縮できることがわかる。
−Fe結晶の粒径が比較的揃っていた。これに対し、磁
石粉末No. 109では粗大なα−Fe結晶粒が多数認め
られ、粒径分布が広くなっていた。上記各磁石粉末にお
いて、主相であるTbCu7型結晶相の平均結晶粒径
は、約10〜100nmであった。また、透過型電子顕微
鏡により主相中のT濃度T/(R+T+M)を調べたと
ころ、80〜85%の範囲にあった。
による比較>表2に示す組成の磁石粉末を作製した。作
製条件は、組織構造制御のための熱処理を700〜75
0℃にて0.5〜1時間行ない、熱処理後に約80μm
以下の径まで粉砕し、窒化処理を表中に示す時間行なっ
た以外は、実施例1の各磁石粉末と同様とした。
様な測定を行なった。結果を表2に示す。
質磁性相の比率が10体積%以上のとき、特に高い残留
磁束密度および最大エネルギー積が得られ、角形比も高
くなることがわかる。
るTbCu7 型結晶相の平均結晶粒径は、約10〜10
0nmであった。また、透過型電子顕微鏡により主相中の
T濃度T/(R+T+M)を調べたところ、80〜85
%の範囲にあった。
表3に示す組成の磁石粉末を作製した。作製条件は、実
施例2の各磁石粉末と同様とした。
様な測定を行なった。結果を表3に示す。
上のとき、高特性が得られることがわかる。
るTbCu7 型結晶相の平均結晶粒径は、約10〜10
0nmであった。また、透過型電子顕微鏡により主相中の
T濃度T/(R+T+M)を調べたところ、80〜85
%の範囲にあった。
示す組成の磁石粉末を作製した。作製条件は、実施例2
の各磁石粉末と同様としたが、窒化処理条件は、処理温
度450〜480℃、処理時間1〜20時間の範囲内に
おいて変更した。
様な測定を行なった。結果を表4に示す。
特に12〜18原子%、さらに15原子%超18原子%
以下のとき、高特性、特に高角形比および高最大エネル
ギー積が得られることがわかる。
るTbCu7 型結晶相の平均結晶粒径は、約10〜10
0nmであった。また、透過型電子顕微鏡により主相中の
T濃度T/(R+T+M)を調べたところ、80〜85
%の範囲にあった。
に示す組成の磁石粉末を作製した。作製条件は、実施例
2の各磁石粉末と同様とした。
様な測定を行なった。結果を表5に示す。
高特性が得られることがわかる。
るTbCu7 型結晶相の平均結晶粒径は、約10〜10
0nmであった。また、透過型電子顕微鏡により主相中の
T濃度T/(R+T+M)を調べたところ、80〜85
%の範囲にあった。
比較>表6に示す組成の磁石粉末を作製した。作製条件
は、実施例2の各磁石粉末と同様としたが、冷却ロール
の周速度は5〜80m/s の範囲、組織構造制御のための
熱処理条件は、処理温度700〜750℃の範囲、処理
時間0.5〜5時間の範囲において変更した。
様な測定を行なった。結果を表6に示す。
0nm、特に5〜40nmのとき、高特性が得られることが
わかる。
るTbCu7 型結晶相の平均結晶粒径は、約10〜10
0nmであった。また、透過型電子顕微鏡により主相中の
T濃度T/(R+T+M)を調べたところ、80〜85
%の範囲にあった。
1と同様にして、表7に示す磁石粉末No. 701を作製
した。また、比較のために、液体急冷法に替えて溶解鋳
造法を利用し、鋳造後に1100℃で16時間の溶体化
処理を施した以外は磁石粉末No. 701と同様にして、
磁石粉末No. 702を作製した。これらの磁石粉末につ
いて、実施例1と同様な観察および測定を行なった。結
果を表7に示す。
大なα−Fe結晶粒が析出して、高保磁力が得られない
ことがわかる。
であるTbCu7 型結晶相の平均結晶粒径は、約10〜
100nmであった。また、透過型電子顕微鏡により主相
中のT濃度T/(R+T+M)を調べたところ、80〜
85%の範囲にあった。
比較>表8に示す磁石粉末を作製した。まず、実施例1
と同様にして急冷合金を作製した。ただし、冷却ロール
の周速度は40m/s とした。急冷合金の結晶相はTbC
u7 型であり、α−Fe相は実質的に認められなかっ
た。急冷合金を1気圧の水素ガス雰囲気中において70
0℃で1時間熱処理し、次いで真空中において700℃
で1時間加熱することにより脱水素処理を行なった。脱
水素処理後にX線回折を行なったところ、主としてTh
2 Zn17型の結晶相とα−Fe相との生成が認められ
た。脱水素処理後、実施例1と同様にして粉砕して窒化
処理を施し、磁石粉末とした。これらの磁石粉末につい
て、実施例1と同様な観察および測定を行なった。結果
を表8に示す。
を析出させることにより、高保磁力の磁石粉末が得られ
ることがわかる。
るTh2 Zn17型結晶相の平均結晶粒径は、約10〜1
00nmであった。また、透過型電子顕微鏡により主相中
のT濃度T/(R+T+M)を調べたところ、80〜8
5%の範囲にあった。
に示す組成の磁石粉末を作製した。作製条件は、実施例
2の各磁石粉末と同様とした。
様な測定を行なった。結果を表9に示す。
合でも、高特性が得られることがわかる。
るTbCu7 型結晶相の平均結晶粒径は、約10〜10
0nmであった。また、透過型電子顕微鏡により主相中の
T濃度T/(R+T+M)を調べたところ、80〜85
%の範囲にあった。
実施例で作製した磁石粉末から表10に示す組成のもの
を選択し、また、平均粒子径の比較的小さな磁石粉末も
作製し、これらをそれぞれエポキシ樹脂と混合した後、
プレス成形し、さらに硬化のための熱処理を施してコン
プレッションボンディッド磁石とした。エポキシ樹脂は
磁石粉末100重量部に対し2〜3重量部とした。プレ
ス成形時の圧力保持時間は10秒間とし、印加圧力は1
0000kgf/cm2 とした。また、樹脂硬化のための熱処
理は、150℃にて1時間行なった。これらのボンディ
ッド磁石について、実施例1と同様に磁気特性を測定し
た。結果を表10に示す。
性のものであるが、11〜13MGOe超と極めて高い最大
エネルギー積を示すことがわかる。また、磁石粉末の平
均粒子径を40μm 程度と小径にした場合、Nd−Fe
−B系ボンディッド磁石では十分な磁石特性が得られな
いが、本発明では小径の磁石粉末を用いた場合でも高特
性のボンディッド磁石が得られるので、本発明の磁石粉
末は特に薄物磁石の製造に好適である。
用いて作製したボンディッド磁石でも、用いた磁石粉末
の磁気特性に応じた磁気特性が得られた。
較>冷却ロールの周速度を変えて磁石粉末を作製し、こ
れらの磁気特性を調べた。急冷後の熱処理は、600〜
750℃、1〜2時間の範囲から冷却速度に応じて最適
な条件を選択し、窒化処理は450℃で10時間行な
い、その他の条件は組成を含め磁石粉末No. 110と同
じとした。結果を図3に示す。
以上のときに特に良好な磁気特性が得られることがわか
り、保磁力については周速度が速いほど高くなることが
わかる。
である。
合金のX線回折チャートおよび窒化処理後の急冷合金の
X線回折チャートである。
粉末の透過型電子顕微鏡写真である。
すグラフである。
Claims (7)
- 【請求項1】 R(Rは希土類元素の1種以上であり、
R中のSm比率は50原子%以上である)、T(TはF
e、またはFeおよびCoである)、NおよびM(M
は、Zrであるか、Zrの一部をTi、V、Cr、N
b、Hf、Ta、Mo、W、Al、CおよびPから選択
される少なくとも1種の元素で置換したものである)を
含有し、Rを4〜8原子%、Nを12原子%超、20原
子%以下、Mを2〜10原子%含有し、残部が実質的に
Tであり、 R、TおよびNを主体とし、TbCu7型、Th2zn
17型およびTh2Ni17型から選択される少なくと
も1種の結晶相を含む硬質磁性相と、bcc構造のT相
からなる軟質磁性相とを有し、軟質磁性相の平均結晶粒
径が5〜60nmであり、軟質磁性相の割合が10〜6
0体積%である磁石。 - 【請求項2】 R(Rは希土類元素の1種以上であり、
R中のSm比率は50原子%以上である)、T(TはF
e、またはFeおよびCoである)、NおよびM(M
は、Zrであるか、Zrの一部をTi、V、Cr、N
b、Hf、Ta、Mo、W、Al、CおよびPから選択
される少なくとも1種の元素で置換したものである)を
含有し、Rを4〜8原子%、Nを10〜20原子%、M
を2〜10原子%含有し、残部が実質的にTであり、 R、TおよびNを主体とし、TbCu7型、Th2zn
17型およびTh2Ni17型から選択される少なくと
も1種の結晶相を含む硬質磁性相と、bcc構造のT相
からなる軟質磁性相とを有し、軟質磁性相の平均結晶粒
径が5〜45nmであり、軟質磁性相の割合が10〜6
0体積%である磁石。 - 【請求項3】 R(Rは希土類元素の1種以上であり、
R中のSm比率は50原子%以上である)、T(TはF
e、またはFeおよびCoである)、NおよびM(M
は、Zrであるか、Zrの一部をTi、V、Cr、N
b、Hf、Ta、Mo、W、Al、CおよびPから選択
される少なくとも1種の元素で置換したものである)を
含有し、Rを4〜8原子%、Nを10〜20原子%、M
を2〜10原子%含有し、残部が実質的にTであり、 R、TおよびNを主体とし、TbCu7型、Th2Zn
17型およびTh2Ni17型から選択される少なくと
も1種の結晶相を含む硬質磁性相と、bcc構造のT相
からなる軟質磁性相とを有し、軟質磁性相の平均結晶粒
径が5〜60nmであり、軟質磁性相の割合が10〜6
0体積%である磁石を製造するに際し、 液体急冷法により製造した急冷合金に、窒化処理を施す
磁石の製造方法。 - 【請求項4】 窒化処理を施す前の急冷合金に、組織構
造制御のための熱処理を施す請求項3の磁石の製造方
法。 - 【請求項5】 水素を含む雰囲気中で組織構造制御のた
めの熱処理を施した後、急冷合金中の水素を放出させる
ことにより、TbCu7型、Th2Zn17型およびT
h2Ni17型から選択される少なくとも1種の結晶相
とbcc構造のT相とを析出させ、次いで、窒化処理を
施す請求項4の磁石の製造方法。 - 【請求項6】 組織構造制御のための熱処理を施す前の
急冷合金が、TbCu7型の結晶相を有する請求項5の
磁石の製造方法。 - 【請求項7】 請求項1または2の磁石の粉末とバイン
ダとを含有するボンディッド磁石。
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