JP2017166018A - ネオジム−鉄−ボロン系合金 - Google Patents
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Abstract
【課題】希土類量を低減したネオジム−鉄−ボロン系合金であって、保磁力に優れたネオジム−鉄−ボロン系合金を提供することを目的とする。【解決手段】平均粒径が1nmより大きく、50nm以下のNd2Fe14B型結晶構造をもつネオジム−鉄−ボロン系化合物の結晶粒子、および、平均粒径が10nmより大きく、50nm以下のα−Fe合金の結晶粒子を含有する複合組織で構成される多結晶合金であって、ネオジム−鉄−ボロン系化合物の結晶粒子のc軸の格子定数が1.206nm以上であって、1.218nmよりも小さいことを特徴とする、ネオジム−鉄−ボロン系合金を提供する。また、前記ネオジム−鉄−ボロン系合金の薄帯ないしは鱗片状粉末の形態を有する永久磁石材料を提供する。【選択図】なし
Description
本発明は、ネオジム−鉄−ボロン系合金、ネオジム−鉄−ボロン系合金の製造方法、および、永久磁石材料に関する。
Nd2Fe14Bを主相とするNd−Fe−B系磁石は、最も高い磁気特性を有する永久磁石であり、現在、ハイブリッド自動車等の駆動モーターや風力発電をはじめ、工業的に広く応用されている。しかし、主要な構成元素の1つである希土類元素、中でも、耐熱性の確保に重要な重希土類における資源リスクを抱えている。
このリスクを回避する方法として、化学量論組成であるNd2Fe14B(Nd:Fe:B=11.76:82.35:5.88(原子比))よりもFeリッチな組成を有し、ハード磁性相とソフト磁性相とを組み合わせた複合組織から構成される「ナノコンポジット磁石」と称される技術(特許文献1〜3、非特許文献1参照)の採用が検討されている。
しかしながら、ナノコンポジット磁石で高保磁力を実現するためには、数10nmのオーダーでの微細な組織制御が必須であり、Nd−Fe−B系永久磁石を代替するには至っておらず、依然として希土類元素の使用量を低減した新規の磁石合金が求められている。
E.F. Knellerら, IEEE Trans. Magn. 27 (1991) 3588.
上記従来技術の問題に鑑み、本発明の一側面では、希土類量が化学量論量よりも少ないネオジム−鉄−ボロン系合金において、保磁力に優れた前記合金を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明の一側面では、平均粒径が1nmより大きく、50nm以下のNd2Fe14B型結晶構造をもつネオジム−鉄−ボロン系化合物の結晶粒子、および、平均粒径が10nmより大きく、50nm以下のα−Fe合金の結晶粒子を含有する複合組織で構成される多結晶合金であって、前記ネオジム−鉄−ボロン系化合物の結晶粒子のc軸の格子定数が1.206nm以上であって、1.218nmよりも小さいことを特徴とするネオジム−鉄−ボロン系合金を提供する。
本発明の一側面によれば、希土類量が化学量論量よりも少ないネオジム−鉄−ボロン系合金において、保磁力に優れた前記合金を提供することができる。
以下、本発明を実施するための形態について説明するが、本発明は、下記の実施形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、下記の実施形態に種々の変形及び置換を加えることができる。
[ネオジム−鉄−ボロン系合金]
(構成例)
本実施形態のネオジム−鉄−ボロン系合金の構成例について、以下に説明する。
(構成例)
本実施形態のネオジム−鉄−ボロン系合金の構成例について、以下に説明する。
本実施形態の構成例のネオジム−鉄−ボロン系合金は、平均粒径が1nmより大きく、50nm以下のNd2Fe14B型結晶構造をもつネオジム−鉄−ボロン系化合物の結晶粒子、および、平均粒径が10nmより大きく、50nm以下のα−Fe合金の結晶粒子を含有する複合組織で構成される多結晶合金であり、ネオジム−鉄−ボロン系化合物の結晶粒子のc軸の格子定数が1.206nm以上であって、1.218nmよりも小さい。
本発明の発明者らは、永久磁石合金の1つであるネオジム−鉄−ボロン系合金において、化学量論組成よりも希土類元素含有量を低減した合金において、保磁力に優れた前記合金を開発するため鋭意研究を行った。一般的に、ネオジム−鉄−ボロン系合金に対して、希土類元素含有量を減らすと、保磁力が大幅に減少する。しかしながら、研究の結果、微量の添加元素を加えることによって、主相となるNd2Fe14B結晶の格子を収縮させ、かつ、結晶粒子の平均粒径を微細に制御できれば、保磁力に優れたネオジム−鉄−ボロン系合金が得られることを見出し、本発明を完成させた。
以下、具体的に本実施形態の構成例のネオジム−鉄−ボロン系合金について説明する。
例えば、本実施形態のネオジム−鉄−ボロン系合金の組成式は、RxQyMzFe100−x−y−zで表すことができる。上記組成式のうち、Rは、Y、Ce、Nd、Pr、Gd、Dy、Tb、Ho、ErからNdを含む1種以上の希土類元素であり、Qは、BまたはCからBを含む1種以上の元素であり、Mは、Co、Al、Si、Ti、V、Cr、Mn、Ni、Cu、Zn、Ga、Zr、Nb、Mo、Ag、Hf、Ta、W、Pt、Au、Pbの1種以上の金属元素を示す。また、6原子%≦x≦10原子%、4≦原子%y≦15原子%、2原子%≦z≦10原子%とすることができる。特に、x、y、zは8原子%≦x≦10原子%、8原子%≦y≦12原子%、2原子%≦z≦5原子%とすることが好ましく、8.5原子%≦x≦9.5原子%、8.5原子%≦y≦11.0原子%、2.5原子%≦z≦4.5原子%とすることがより好ましい。
前記合金の組成は、例えば、誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法、蛍光エックス線分析法等の手法を用いて決定することができる。
好ましい実施形態のネオジム−鉄−ボロン系合金においては、Nd2Fe14B型結晶構造のネオジム−鉄−ボロン系化合物、および立方晶構造のα−Fe合金の結晶粒子が同一の組織内に混在するものである。ここで、Nd2Fe14B型結晶構造をもつネオジム−鉄−ボロン系化合物の結晶粒子の内部には、添加元素Mを内包することができる。
本実施形態のネオジム−鉄−ボロン系合金は、Fe、Q(Qは、BまたはBおよびCを含む1種以上の元素)、R(Ndを含む1種以上の希土類元素)、M(1種以上の金属元素)を含有する純金属や合金の原料を、所定の組成になるように秤量して、これらを融点以上に加熱することで、融解しながら混合し、目指す組成の合金とする。融解して合金化する手法としては、アーク溶解あるいは高周波溶解がある。続いて、この合金を再度融解したのちに非常に高速に急冷を伴って凝固させる。急冷凝固の手段としては、例えば、ストリップキャスティング法やジェットキャスティング法がある。このような手法によって作製したネオジム−鉄−ボロン系合金は、一般的に薄帯ないし鱗片状粉末の形態を有する。
このような手法によって、アモルファス相や極めて微細な結晶粒から構成される合金を作製する。
さらに、前記合金を熱処理することにより、Nd2Fe14B型結晶構造をもつネオジム−鉄−ボロン系化合物の結晶粒子と、α−Fe合金の結晶粒子を含有する複合組織が形成させる。
熱処理は、前記合金が酸素あるいは窒素等の元素に対して、非常に活性であり、これらの元素との反応を避けるため、Ar等の不活性ガス雰囲気中、あるいは、2×10−2Pa以下、好ましくは、5×10−3Pa以下の真空中において行い、その昇温速度は100℃毎分以上であり、好ましくは、120℃毎分以上である。
このような速い昇温速度の熱処理は、赤外集光方式の加熱炉によって達成することができる。また、予め所望の熱処理温度に保持された熱処理炉内に試料を導入する方法によっても可能である。
このようにして形成した多結晶の複合組織において、本実施形態のネオジム−鉄−ボロン系合金に含まれるα−Fe合金の結晶粒子の平均粒径は、10nmより大きく、かつ50nm以下である。また、本実施形態のネオジム−鉄−ボロン系合金に含まれるNd2Fe14B型結晶構造をもつネオジム−鉄−ボロン系化合物の結晶粒子の平均粒径は、1nmより大きく、50nm以下である。
結晶粒子の平均粒径は、ネオジム−鉄−ボロン系合金の透過電子顕微鏡や走査電子顕微鏡による断面組織像から切片法や面積計量法を用いて計測することができる。
前記のように本実施形態に結晶粒子の平均粒径の下限値があるのは、本実施形態のネオジム−鉄−ボロン系合金に含まれるNd2Fe14B型結晶構造をもつネオジム−鉄−ボロン系化合物の結晶粒子の平均粒径が1nm以下である、又は、α−Fe合金の結晶粒子の平均粒径が10nm以下であると、結晶粒子は、超常磁性となり、強磁性特性を有さなくなるためである。
前記のように本実施形態に結晶粒子の粒径の上限値があるのは、本実施形態のネオジム−鉄−ボロン系合金に含まれるNd2Fe14B型結晶構造をもつネオジム−鉄−ボロン系化合物の結晶粒子、又は、α−Fe合金の結晶粒子の平均粒径が50nmを超えると、保磁力の低下が顕著になるためである。
磁石材料では、保磁力に優れると同時に、残留磁化も優れていることが要請される。前記合金に含まれるα−Fe合金の結晶粒子の平均粒径が粗大化し、α−Fe合金の保磁力の低下が顕著となった場合、前記合金が低い印加磁場で磁化反転を開始することで、ヒステリシス曲線に屈曲が生じる。この結果、飽和磁化に対する残留磁化の比(残留磁化比)の低下が顕著となり、磁石材料として不適となる。
前記に加え、本実施形態のネオジム−鉄−ボロン系合金に含まれるネオジム−鉄−ボロン系化合物の結晶粒子のc軸の格子定数は、1.206nm以上であって、1.218nmよりも小さい。ネオジム−鉄−ボロン系化合物の結晶粒子のc軸の格子定数が1.206nm未満であると、結晶粒子の作製が困難である。また、ネオジム−鉄−ボロン系化合物の結晶粒子のc軸の格子定数が1.218nm以上であると、保磁力の低下が顕著となる。
ネオジム−鉄−ボロン系合金に含まれるNd2Fe14B型結晶構造をもつネオジム−鉄−ボロン系化合物の結晶粒子の格子定数は、X線を用いたθ−2θ測定法によって得られる回折ピークから得られる面間隔により求めることができる。
前記X線回折の測定条件は、特に限定されず、一般的な手法を用いることができる。以下に、代表的な測定条件を示す。
管球の線源には、Co−Kα線を用いて、管電圧を45kV、管電流を40mAとする。このとき、2θの測定範囲は、15°から80°までとする。
ネオジム−鉄−ボロン系化合物の格子定数は、粉末回折パターン(一例として、American Society for Testing and Materials (ASTM) インターナショナル PDFデータの01−079−1995)の中で、比較的相対強度が高く、かつ、互いに十分に分離できるピークが多く含まれる2θが40°から60°の範囲に含まれる複数の回折ピークを用いて、決定を行うことができる。
以下に、具体的な実施例を挙げて説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
比較例1〜6、実施例1〜8として、作製条件の異なる薄帯の形態を有するネオジム−鉄−ボロン系合金を作製し、評価を行った。
[比較例1]
比較例1として、American Society for Testing and Materials (ASTM) インターナショナル PDFデータの01−079−1995に示されるNd2Fe14B相の格子定数を表1に示す。
比較例1として、American Society for Testing and Materials (ASTM) インターナショナル PDFデータの01−079−1995に示されるNd2Fe14B相の格子定数を表1に示す。
[比較例2]
Nd9原子%、B10原子%、残部Feの合金組成になるよう配合した原料を、75kPaに保持したAr雰囲気中にて、アーク溶解させることによって、母合金を得た。
Nd9原子%、B10原子%、残部Feの合金組成になるよう配合した原料を、75kPaに保持したAr雰囲気中にて、アーク溶解させることによって、母合金を得た。
ジェットキャスティング法を用いて、上記母合金から急冷合金薄帯を作製した。具体的には、石英坩堝内で高周波誘導加熱により上記母合金を溶解し、ロール表面速度が毎秒50mにて回転する純銅製冷却ロール上に供給し、合金溶湯を急冷することで、合金薄帯を得た。
得られた合金の組成をICP発光分光分析法により評価したところ、Nd9.1原子%、B10.1原子%、残部Feであった。
その後、得られた合金薄帯を赤外集光方式の加熱炉(以下、赤外集光熱処理装置)において、3×10−3Pa以下の真空中で毎分130℃の速度で昇温し、650℃で5分間保持を行った後、炉冷することで、比較例2の合金薄帯を得た。
得られた合金薄帯をX線回折により評価したところ、Nd2Fe14B型結晶構造をもつネオジム−鉄−ボロン系化合物の結晶粒子、および、α−Fe合金の結晶粒子を含有する多結晶の複合組織であることが確認された。この合金薄帯の磁気特性、平均粒径、格子定数を測定し、結果を表1にまとめた。
比較例2の合金薄帯の保磁力は0.26Tであった。また、比較例2の合金薄帯の残留磁化比は、0.33であった。比較例2のNd2Fe14B型結晶構造をもつネオジム−鉄−ボロン系化合物の結晶粒子の平均粒径は30.4nmであり、α−Fe合金の結晶粒子の平均粒径は29.5nmであった。X線回折の結果、比較例2のNd2Fe14B型結晶構造をもつネオジム−鉄−ボロン系化合物の結晶粒子は、a軸の格子定数が0.879nm、c軸の格子定数が1.218nmとなり、比較例1と同等のものが得られた。
[実施例1、2および比較例3]
Nd9原子%、B10原子%、Ti4原子%、残部Feの合金組成になるよう配合した原料を、75kPaに保持したAr雰囲気中にて、アーク溶解させることによって、母合金を得た。
Nd9原子%、B10原子%、Ti4原子%、残部Feの合金組成になるよう配合した原料を、75kPaに保持したAr雰囲気中にて、アーク溶解させることによって、母合金を得た。
得られた合金の組成をICP発光分光分析法により評価したところ、Nd9.2原子%、B8.9原子%、Ti4.1原子%、残部Feであった。
ジェットキャスティング法を用いて、上記母合金から急冷合金薄帯を作製した。具体的には、石英坩堝内で高周波誘導加熱により上記母合金を溶解し、ロール表面速度が毎秒50mにて回転する純銅製冷却ロール上に供給し、合金溶湯を急冷することで、合金薄帯を得た。
その後、得られた合金薄帯を赤外集光熱処理装置において、3×10−3Pa以下の真空中で毎分130℃の速度で昇温し、650℃、750℃および850℃で5分間保持を行った後、炉冷することで、実施例1、2および比較例3の合金薄帯を得た。
得られた合金薄帯をX線回折により評価したところ、いずれもNd2Fe14B型結晶構造をもつネオジム−鉄−ボロン系化合物の結晶粒子、および、α−Fe合金の結晶粒子を含有する多結晶の複合組織であることが確認された。この合金薄帯の磁気特性、平均粒径、格子定数を測定し、結果を表1にまとめた。
表1に示すように、Tiを4原子%添加した実施例1および2の合金薄帯の保磁力は、それぞれ0.84Tおよび0.72T、残留磁化比は、それぞれ0.53、0.44であり、比較例2の合金薄帯と比較して、残留磁化比を低下させることなく、著しく高い保磁力が得られた。実施例1および2のNd2Fe14B型結晶構造をもつネオジム−鉄−ボロン系化合物の結晶粒子の平均粒径は、それぞれ28.9nmおよび38.5nmであり、α−Fe合金の結晶粒子の平均粒径は、それぞれ29.0nmおよび38.1nmであった。また、実施例1および2のNd2Fe14B型結晶構造をもつネオジム−鉄−ボロン系化合物のc軸の格子定数は、それぞれ1.212nmおよび1.216nmであった。
実施例1および2と同じ組成であっても、850℃で熱処理した比較例3の合金薄帯では、比較例2の合金薄帯と比べて、保磁力はわずかに増加するものの、残留磁化比は減少し、磁気特性が向上したとは言い難い。比較例3のNd2Fe14B型結晶構造をもつネオジム−鉄−ボロン系化合物の結晶粒子、および、α−Fe合金の結晶粒子の平均粒径は、ともに50nm以上であり、Nd2Fe14B型結晶構造をもつネオジム−鉄−ボロン系化合物の結晶粒子のc軸の格子定数も1.219nmであった。
以上の結果から、ネオジム−鉄−ボロン系化合物の結晶粒子の平均粒径が1nmより大きく、50nm以下であること、α−Fe合金の結晶粒子の平均粒径が10nmより大きく、50nm以下であること、ネオジム−鉄−ボロン系化合物の結晶粒子のc軸の格子定数が1.206nm以上であって、1.218nmよりも小さいことを兼備することで、残留磁化比の低下なく、保磁力に優れたネオジム−鉄−ボロン系合金が得られることが判明した。
[実施例3、4および比較例4]
Nd9原子%、B10原子%、Ti3原子%、残部Feの合金組成になるよう配合した原料を、75kPaに保持したAr雰囲気中にて、アーク溶解させることによって、母合金を得た。
Nd9原子%、B10原子%、Ti3原子%、残部Feの合金組成になるよう配合した原料を、75kPaに保持したAr雰囲気中にて、アーク溶解させることによって、母合金を得た。
得られた合金の組成をICP発光分光分析法により評価したところ、Nd9.1原子%、B8.9原子%、Ti2.9原子%、残部Feであった。
ジェットキャスティング法を用いて、上記母合金から急冷合金薄帯を作製した。具体的な作製条件は実施例1と同様である。
その後、得られた合金薄帯を赤外集光熱処理装置において、3×10−3Pa以下の真空中で毎分130℃の速度で昇温し、650℃、750℃および850℃で5分間保持を行った後、炉冷することで、実施例3、4および比較例4の合金薄帯を得た。
得られた合金薄帯をX線回折により評価したところ、Nd2Fe14B型結晶構造をもつネオジム−鉄−ボロン系化合物の結晶粒子、および、α−Fe合金の結晶粒子を含有する多結晶の複合組織であることが確認された。この合金薄帯の磁気特性、平均粒径、格子定数を測定し、結果を表1にまとめた。
表1に示すように、Tiを3原子%添加した実施例3および4の合金薄帯の保磁力は、それぞれ0.54Tおよび0.63Tであった。このとき、実施例3および4の合金薄帯の残留磁化比は、ともに0.46であった。つまり、比較例2の合金薄帯と比較して、残留磁化比を落とすことなく高い保磁力が得られた。
この時、実施例3および4のNd2Fe14B型結晶構造をもつネオジム−鉄−ボロン系化合物の結晶粒子の平均粒径は、それぞれ32.3nmおよび45.0nmであり、α−Fe合金の結晶粒子の平均粒径は、それぞれ32.1nmおよび42.9nmであった。また、実施例3および4のNd2Fe14B型結晶構造をもつネオジム−鉄−ボロン系化合物のc軸の格子定数は、それぞれ1.210nmおよび1.216nmであった。
実施例3および4と同じ組成であっても、850℃で熱処理した比較例4の合金薄帯では、保磁力がわずかに増加するものの、残留磁化比は減少した。比較例4のNd2Fe14B型結晶構造をもつネオジム−鉄−ボロン系化合物の結晶粒子、および、α−Fe合金の結晶粒子の平均粒径は、ともに50nm以上であり、Nd2Fe14B型結晶構造をもつネオジム−鉄−ボロン系化合物の結晶粒子のc軸の格子定数は、1.218nmであった。
以上の結果から、添加元素Mがある特定の組成範囲において、ネオジム−鉄−ボロン系化合物の結晶粒子の平均粒径が1nmより大きく、50nm以下であること、α−Fe合金の結晶粒子の平均粒径が10nmより大きく、50nm以下であること、ネオジム−鉄−ボロン系化合物の結晶粒子のc軸の格子定数が1.206nm以上であって、1.218nmよりも小さいことを兼備することで、残留磁化比の低下なく、保磁力に優れたネオジム−鉄−ボロン系合金が得られることが判明した。
[実施例5、6および比較例5]
Nd9原子%、B10原子%、Zr4原子%、残部Feの合金組成になるよう配合した原料を、75kPaに保持したAr雰囲気中にて、アーク溶解させることによって、母合金を得た。
Nd9原子%、B10原子%、Zr4原子%、残部Feの合金組成になるよう配合した原料を、75kPaに保持したAr雰囲気中にて、アーク溶解させることによって、母合金を得た。
ジェットキャスティング法を用いて、上記母合金から急冷合金薄帯を作製した。具体的な作製条件は実施例1と同様である。
その後、得られた合金薄帯を赤外集光熱処理装置において、3×10−3Pa以下の真空中で毎分130℃の速度で昇温し、650℃、750℃および900℃で5分間保持を行った後、炉冷することで、実施例5、6および比較例5の合金薄帯を得た。
得られた合金薄帯をX線回折により評価したところ、Nd2Fe14B型結晶構造をもつネオジム−鉄−ボロン系化合物の結晶粒子、α−Fe合金の結晶粒子、および、ZrB2の結晶粒子を含有する多結晶の複合組織であることが確認された。この合金薄帯の磁気特性、平均粒径、格子定数を測定し、結果を表1にまとめた。
表1に示すように、Zrを4原子%添加した実施例5および6の合金薄帯の保磁力は、それぞれ0.74Tおよび0.83Tであり、比較例2の合金薄帯と比較して、著しく高い保磁力が得られた。このとき、実施例5および6の合金薄帯の残留磁化比は、それぞれ0.52および0.50であり、比較例2の合金薄帯と比較して高い値を示した。実施例5および6のNd2Fe14B型結晶構造をもつネオジム−鉄−ボロン系化合物の結晶粒子の平均粒径は、それぞれ26.9nmおよび37.9nmであり、α−Fe合金の結晶粒子の平均粒径は、それぞれ29.2nmおよび38.0nmであった。また、実施例5および6のNd2Fe14B型結晶構造をもつネオジム−鉄−ボロン系化合物のc軸の格子定数は、それぞれ1.210nmおよび1.213nmであった。
実施例5および6と同じ組成であって、900℃で熱処理した比較例5の合金薄帯では、保磁力は増加したものの、残留磁化比は減少した。比較例5のNd2Fe14B型結晶構造をもつネオジム−鉄−ボロン系化合物の結晶粒子のc軸の格子定数は、1.214nmであり、比較例1および2よりも小さいが、Nd2Fe14B型結晶構造をもつネオジム−鉄−ボロン系化合物の結晶粒子、および、α−Fe合金の結晶粒子の平均粒径は、ともに50nm以上となった。
以上の結果から、添加元素MをZrとした場合において、ネオジム−鉄−ボロン系化合物の結晶粒子の平均粒径が1nmより大きく、50nm以下であること、α−Fe合金の結晶粒子の平均粒径が10nmより大きく、50nm以下であること、ネオジム−鉄−ボロン系化合物の結晶粒子のc軸の格子定数が1.206nm以上であって、1.218nmよりも小さいことを兼備することで、残留磁化比の低下なく、保磁力に優れたネオジム−鉄−ボロン系合金が得られることが判明した。
[実施例7]
Nd9原子%、B10原子%、V4原子%、残部Feの合金組成になるよう配合した原料を、75kPaに保持したAr雰囲気中にてアーク溶解させることによって、母合金を得た。
Nd9原子%、B10原子%、V4原子%、残部Feの合金組成になるよう配合した原料を、75kPaに保持したAr雰囲気中にてアーク溶解させることによって、母合金を得た。
ジェットキャスティング法を用いて、上記母合金から急冷合金薄帯を作製した。具体的な作製条件は実施例1と同様である。
その後、得られた合金薄帯を赤外集光熱処理装置において、3×10−3Pa以下の真空中で毎分130℃の速度で昇温し、750℃で5分間保持を行った後、炉冷することで実施例7の合金薄帯を得た。
得られた合金薄帯をX線回折により評価したところ、Nd2Fe14B型結晶構造をもつネオジム−鉄−ボロン系化合物の結晶粒子、および、α−Fe合金の結晶粒子を含有する多結晶の複合組織であることが確認された。この合金薄帯の磁気特性、平均粒径、格子定数を測定し、結果を表1にまとめた。
表1に示すように、Vを4原子%添加した実施例7の合金薄帯の保磁力は、0.77Tであり、比較例2の合金薄帯と比較して、著しく高い保磁力が得られた。この時、実施例7の合金薄帯の残留磁化比は0.48であり、比較例2の合金薄帯と比較して、高い残留磁化比が得られた。また、実施例7のNd2Fe14B型結晶構造をもつネオジム−鉄−ボロン系化合物の結晶粒子の平均粒径は30.2nmであり、α−Fe合金の結晶粒子の平均粒径は、30.9nmであった。また、実施例7のNd2Fe14B型結晶構造をもつネオジム−鉄−ボロン系化合物の結晶粒子のc軸の格子定数は、1.214nmであった。
以上のことから、添加元素MをVとした場合においても、ネオジム−鉄−ボロン系化合物の結晶粒子の平均粒径が1nmより大きく、50nm以下であること、α−Fe合金の結晶粒子の平均粒径が10nmより大きく、50nm以下であること、ネオジム−鉄−ボロン系化合物の結晶粒子のc軸の格子定数が1.206nm以上であって、1.218nmよりも小さいことを兼備することにより、保磁力、残留磁化比ともに優れたネオジム−鉄−ボロン系合金が得られることが判明した。
[実施例8]
Nd9原子%、B10原子%、Co2原子%、Ti2原子%、残部Feの合金組成になるよう配合した原料を、75kPaに保持したAr雰囲気中にて、アーク溶解させることによって、母合金を得た。
Nd9原子%、B10原子%、Co2原子%、Ti2原子%、残部Feの合金組成になるよう配合した原料を、75kPaに保持したAr雰囲気中にて、アーク溶解させることによって、母合金を得た。
ジェットキャスティング法を用いて、上記母合金から急冷合金薄帯を作製した。具体的な作製条件は実施例1と同様である。
その後、得られた合金薄帯を赤外集光熱処理装置において、3×10−3Pa以下の真空中で毎分130℃の速度で昇温し、700℃で5分間保持を行った後、炉冷することで、実施例8の合金薄帯を得た。
得られた合金薄帯をX線回折により評価したところ、Nd2Fe14B型結晶構造をもつネオジム−鉄−ボロン系化合物の結晶粒子、および、α−Fe合金の結晶粒子を含有する多結晶の複合組織であることが確認された。この合金薄帯の磁気特性、平均粒径、格子定数を測定し、結果を表1にまとめた。
表1に示すように、Tiを2原子%、Coを2原子%添加した実施例8の合金薄帯の保磁力は、0.80Tであり、比較例2の合金薄帯と比較して、著しく高い保磁力を発揮した。このとき、実施例8の合金薄帯の残留磁化比は、0.51であり、比較例2の合金薄帯と比較して、高い残留磁化比が得られた。実施例8のNd2Fe14B型結晶構造をもつネオジム−鉄−ボロン系化合物の結晶粒子の平均粒径は29.2nmであり、α−Fe合金の結晶粒子の平均粒径は、29.4nmであった。また、実施例8のNd2Fe14B型結晶構造をもつネオジム−鉄−ボロン系化合物の結晶粒子のc軸の格子定数は、1.215nmであった。
以上のことから、添加元素Mとして、複数の元素を選択した場合においても、ネオジム−鉄−ボロン系化合物の結晶粒子の平均粒径が1nmより大きく、50nm以下であること、α−Fe合金の結晶粒子の平均粒径が10nmより大きく、50nm以下であること、ネオジム−鉄−ボロン系化合物の結晶粒子のc軸の格子定数が1.206nm以上であって、1.218nmよりも小さいことを兼備することにより、残留磁化比の低下なく、保磁力に優れたネオジム−鉄−ボロン系合金が得られることが判明した。
Claims (3)
- 平均粒径が1nmより大きく、50nm以下のNd2Fe14B型結晶構造をもつネオジム−鉄−ボロン系化合物の結晶粒子、および、平均粒径が10nmより大きく、50nm以下のα−Fe合金の結晶粒子を含有する複合組織で構成される多結晶合金であって、
前記ネオジム−鉄−ボロン系化合物の結晶粒子のc軸の格子定数が1.206nm以上であって、1.218nmよりも小さいことを特徴とするネオジム−鉄−ボロン系合金。 - 請求項1に記載のネオジム−鉄−ボロン系合金を含むことを特徴とする永久磁石材料。
- 請求項1に記載のネオジム−鉄−ボロン系合金を製造する方法であって、
ネオジム−鉄−ボロン系合金を超急冷法によって薄帯ないし鱗片状粉末の形態を有する合金とし、
さらに毎分100℃以上の速度により昇温する熱処理を施すことを特徴とするネオジム−鉄−ボロン系合金の製造方法。
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CN112011717A (zh) * | 2020-08-26 | 2020-12-01 | 北京科技大学 | 一种高强度低膨胀复合材料及制备方法 |
CN114678180A (zh) * | 2022-03-21 | 2022-06-28 | 电子科技大学 | 具有低场旋转磁热效应的多晶HoB2合金及其制备方法 |
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