JP5711990B2 - 圧電応用機器 - Google Patents

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Description

本発明は、圧電材料に関し、具体的には、鉛を含まない圧電材料の改良技術に関する。
圧電材料としては、PZT(PbTiO−PbZrO)組成系セラミックスがよく知られている。PZTは、電気機械結合係数や圧電定数などの圧電特性に優れ、このPZTは、センサー、ブザー、超音波モーター、フィルターなどに広く使用されている。
ところで、近年では、環境に対する要請から工業製品の「鉛フリー」化が急務となっている。現時点でのEU ROHS指令などでは、圧電材料については、除外項目となってはいるものの、当然、PZTも最終的に工業製品に使用されるため、圧電材料も、鉛(Pb)が含まれているPZTから、鉛を含まない他の圧電材料に置換していく必要がある。
そして、鉛を含まない圧電材料(非鉛圧電材料)としては、KNa(1−x)NbOの化学式で表される化合物(KNN)がある。なお、KNNを用いた圧電材料については、以下の特許文献1に記載されている。当該特許文献1では、KNNにおけるxの値が0.02≦x≦0.5で、そのKNNにFeとCoの少なくともいずれかを添加した圧電材料について記載されている。また、圧電材料に関する一般的な技術については、以下の非特許文献1に詳しく記載されている。
特公昭56−12031号公報
FDK株式会社、"圧電セラミックス(技術資料)"、[online]、[平成23年1月11日検索]、インターネット<URL:http://www.fdk.co.jp/cyber-j/pdf/BZ-TEJ001.pdf>
上記特許文献1に開示されているKNN系圧電材料は非鉛圧電材料として期待されているが、焼結させるための温度の帯域が狭い、という問題がある。すなわち、原材料をセラミックスからなる圧電材料に焼結させるときの焼成温度を厳密に管理する必要があり、生産性を向上させることが難しい、という問題がある。言い換えれば、焼成温度を極めて厳密に管理しないと、特性に大きなバラツキが生じ、高い信頼性を得ることができない。したがって、従来のKNN系圧電材料、およびそれを用いた製品(たとえば、圧電ブザーなど)のコストダウンが難しい。
そこで、本発明は、環境に優しく、圧電特性に優れるとともに、高い生産性を達成し、コストダウンが期待できるKNN系圧電材料を提供することを目的としている。その他の目的については、以下の記載で明らかにする。
そして、上記目的を達成するための本発明は、焼結体からなる圧電材料を用いた圧電応用機器であって、前記圧電材料は一般式KNa(1−x)Nb0で表されるともに0.02≦x≦0.5である化合物に、ZnOを最も多く含むZn系ガラスと、Feとが添加されてなり、少なくとも当該圧電材料に接する部材には銅が含まれていないことを特徴とする圧電応用機器としている。当該圧電応用機器は、プレート状の前記圧電材料の一方の面に銅を含まない電極板が貼り付けられているとともに、他方の面に振動板を兼ねる電極板が貼り付けられてなる圧電振動板であってもよい。圧電振動板としては、圧電ブザー、センサー、振動子などがある。
より好ましくは、前記圧電材料を、前記Zn系ガラスと前記Feが、ともに0wt%よりも多く、1.0wt%以下の質量比で添加されているものとすることであり、現実的には、前記Zn系ガラスと前記Feが、ともに0.05wt%以上の質量比で添加されているものとすることである。
本発明の圧電材料は、環境に優しく、圧電特性と生産性とに優れ、高い信頼性を有しているとともに、安価に提供することが可能となる。
圧電材料の製造方法を説明するための工程図である。 KNNにガラスが添加された圧電材料の焼成温度と焼成密度との関係を示す図である。 KNNにガラスが添加された圧電材料の焼成温度と比誘電率との関係を示す図である。 KNNにガラスが添加された圧電材料の焼成温度と電気機械結合係数との関係を示す図である。 KNNにガラスが添加された圧電材料の焼成温度と誘電損失との関係を示す図である。 本発明の実施例、従来例、比較例に係る圧電材料の焼成温度と焼成密度との関係を示す図である。 本発明の実施例、従来例、および比較例に係る圧電材料の焼成温度と比誘電率との関係を示す図である。 本発明の実施例、従来例、および比較例に係る圧電材料の焼成温度と電気機械結合係数との関係を示す図である。 本発明の実施例、従来例、および比較例に係る圧電材料の焼成温度と誘電損失との関係を示す図である。 本発明の実施例と比較例とに係る圧電材料の添加剤の添加量と焼成密度との関係を示す図である。 本発明の実施例と比較例とに係る圧電材料の添加剤の添加量と比誘電率との関係を示す図である。 本発明の実施例と比較例とに係る圧電材料の添加剤の添加量と電気機械結合係数との関係を示す図である。 本発明の実施例と比較例とに係る圧電材料の添加剤の添加量と誘電損失との関係を示す図である。 本発明の実施例に係る圧電材料と銅を含んだ振動板とを用いた従来ブザーと、本発明の実施例に係る圧電材料と銅を含まない振動板とを用いた実施例ブザーとにおける、高温高湿度試験前後での音響特性を示す図である。 上記高温高湿度試験後の従来ブザーと上記実施例ブザーの外観を示す図である。
===KNN系圧電材料===
上述したように、KNN(一般式:KNa(1−x)Nb0)は、鉛を含まず、環境性能に優れた圧電材料の母材として期待されている。本発明者は、圧電性の発現起源となる母材としてこのKNNを採用したKNN系圧電材料について、さらなる特性の改善や生産性の向上を達成するべく、研究を重ねてきた。そして、その研究過程で、KNN単体や、上記特許文献1に記載の圧電材料には、焼結させるための温度(焼成温度)の範囲が狭い、という問題があることを知見した。
また、KNN系圧電材料には、耐湿性が低い、という問題があることも知見した。この耐湿性の問題については、ガラスを添加することで圧電性能を維持しつつ、実用に耐えうるKNN系圧電材料を発明し、これを特許出願した(特願2010−57734:以下、先発明)。つぎに本発明者は、先発明に至る過程で得た知見に基づいて、KNN系圧電材料における焼成温度範囲に関する問題を解決することを検討した。その結果、特定のガラスを添加したKNN系圧電材料では、焼成温度が広くなる、ということを知見した。具体的には、従来のKNN系圧電材料は、特定の焼成温度で焼結させることで、最も高い焼成密度を得ることができ、その特定の温度以外では、焼成密度が激減する。一方、特定のガラスを添加したKNN系圧電材料では、最も高い焼成密度が広い焼成温度範囲で安定して得られる、ということを知見した。
しかしながら、これまでの知見では、焼成密度については、焼成温度範囲を拡大できることが分かったが、圧電特性については、特定の焼成温度以外で焼結させないと、良好な特性が得られない、ということも分かった。すなわち、ガラスを添加することで、焼結に必要な焼成温度の範囲を拡大できたとしても、ガラスを含めた添加剤の種類を注意深く選択しないとKNN本来の圧電性能を阻害してしまい、結局、生産性を向上させることができない、ということが判明した。そこで本発明者は、先発明に至る過程、および先発明後の研究過程における様々な知見、考察、実験などに基づいて鋭意研究を重ね、その結果、本発明に想到した。以下では、本発明の実施例に係る圧電材料について、その作製手順や各種物性について説明する。
===圧電材料の作製手順===
本発明の実施例における圧電材料は、圧電物質であるKNNに添加物を加えて焼結することで得られる。図1に、本実施例を含め、各種組成の異なる圧電材料の作製手順を示した。まず、圧電材料の母材となるKNNの原料と、サンプルに応じた各種添加物とを所定量秤量して配合し(s1)、ボールミル中に、その原料と溶媒となるアルコール(エタノールなど)を入れて湿式混合する(s2)。それによって、圧電材料を構成する全原料が混合されるとともに粉体状に粉砕される。
なお、KNNにおけるカリウム(K)とナトリウム(Na)の組成比については、上記特許文献1により実績のある0.02≦x≦0.5の範囲から所定の値(例えば、x=0.2)を採用した。以下では、特別な断りがなければ、「KNN」は、このxが所定値のKNNを指すこととする。なお,xの値によって特性が変化することも考えたが、実際には、添加物の種類や量が同じであれば、KNNにおけるxの範囲が当該範囲内である限り、ほぼ同様な圧電材料が得られるものと考えられる。
添加物については、圧電材料を構成する全材料中において所定の質量割合(wt%)となるように加える。例示した作製手順では、この時点(s2)で圧電材料を構成する全原料が混合された状態となる。そして、添加物としては、先発明によって実績のあるガラスと、上記特許文献1に記載のFeを採用した。これは、焼成密度に関しては、特定のガラスを添加することによって焼成温度範囲を広げられることが事前の研究によって判明しており、その焼成温度範囲において、圧電特性を維持することを考えたからである。すなわち、KNNにおけるxの値を含め、ガラス以外の添加剤についても上記特許文献1に記載の添加剤を検討することが妥当であると判断した。また、Feは、より安価で入手が容易であり、生産性の向上という観点からも最適である。
次に、上記混合物を大気中にて800℃〜900℃の温度で仮焼成する(s3)。さらに、仮焼成後の混合物にバインダーとしてポリビニルアルコール(PVA)水溶液を加えて混合し、粉末状となるように造粒し(s4)、その造粒された粉末を所定の形状に成型する(s5)。ここでは1〜2mm厚の円板状に成型する。そして、この成型物を所定温度下(例えば、300℃〜500℃程度)に置いて、バインダーを除去したのち、大気中で900℃〜1200℃の温度で1h焼成し(s6,s7)、圧電セラミックスを得る。
最後に、圧電セラミックスを適当な大きさに加工するとともに、加工後の圧電セラミックスの両面に銀(Ag)電極を焼き付け(s8,s9)、120℃のシリコンオイル中において、4Kv/mmの電界で分極処理を施し、圧電材料とした(s10)。
===ガラスの選別===
上述した手順により、添加物の有無、添加物の種類、添加物の添加量などに応じて複数種類の圧電材料をサンプルとして作製した。まず、添加するガラスによる焼成温度範囲の拡大について検討した。ここでは、Biが最多成分(主成分)として含まれるビスマス系ガラス(以下、Bi系ガラス)と、ZnOが主成分として含まれている亜鉛系ガラス(以下、Zn系ガラス)について検討した。なお、これらのガラスは、工業用途として一般に市販されているものである。参考までに、以下に、各ガラスの組成を示した。
・Bi系ガラス
Bi:60mol%、B:30mol%、CuO:7mol%、SiO:3mol%
・Zn系ガラス
ZnO:45mol%、MgO:27mol%、B:25mol%、SiO:3mol%
<ガラスの種類による特性>
Feを含まない圧電材料のサンプルとして、主成分にBi系ガラスを添加して作製した圧電材料と、主成分にZn系ガラスを添加して作製した圧電材料とを作製し、各サンプルにおける焼結温度と各種物性との関係を調べた。なお、ガラスの添加量は、図1における手順s4におけるKNNの粉体とガラスとを合わせた全原材料の質量を100wt%としたときの質量割合で、0.5wt%とした。
図2〜図5に上記関係を示すグラフを示した。図2〜図5は、それぞれ、焼成温度T(℃)と焼成密度ρ(g/cc)との関係、焼成温度Tと比誘電率ε33 /εとの関係、焼成温度Tと電気機械結合係数Kr(%)、および焼成温度Tと誘電損失tanδE(%)を示すグラフである。そして、図2により、Zn系ガラスを添加したサンプルの方が、広い焼成温度範囲で焼結できることが分かった。すなわち、Zn系ガラスを添加したサンプルでは、焼成密度ρの特性曲線1が広い温度範囲で一定となっているのに対し、Bi系ガラスを添加したサンプルでは、焼成密度ρの特性曲線2に明らかな極値(ピーク)が存在し、焼成温度範囲が極めて狭いことが確認できた。そして、Bi系ガラスを添加したサンプルでは、1050℃未満では焼結不全となり、図3〜図5に示した各グラフに示した特性曲線(4,6,8)のように、物性値を測定することができなかった。一方、Zn系ガラスを添加したサンプルでは、各グラフに示したように、その特性曲線(3,5,7)は広い温度範囲で大きく変化することがなかった。少なくとも、急峻なピーク特性は見られなかった。
また、Bi系ガラスを添加したサンプルでは、1100℃の焼成温度で焼結しているのに対し、Zn系ガラスを添加したサンプルでは、低い温度(950℃〜1050℃)で焼結していることが分かる。したがって、Zn系ガラスを添加したサンプルでは、焼成温度の範囲が広く、かつ温度自体も低く、Zn系ガラスを添加したKNN系圧電材料では、生産性の向上が期待できる。
===Feの添加===
上述したように、KNNとZn系ガラスとを含む圧電材料では、焼成密度については、その焼成温度範囲が拡大し、生産性を極めて高くできる可能性がある。しかし、広い焼成温度範囲で高い圧電性能が維持できなければ、あるいは、広い焼成温度範囲で高い焼成密度が得られるのと引き替えに圧電性能が劣化してしまえば、実用にはならない。そこで、上述した理由からFeに着目し、Zn系ガラスとともにFeをKNNに添加したところ、広い焼成温度範囲で、高い焼成密度を維持しつつ、圧電性能の劣化を抑止できることが判明した。具体的には、KNN単体からなる圧電材料(従来例)、Zn系ガラスが0.5wt%添加されたKNN系圧電材料(比較例1)、Feが0.5wt%添加されたKNN系圧電材料(比較例2)、Zn系ガラスとFeとがともに0.5wt%添加されたKNN系圧電材料(実施例)をサンプルとして作製し、各サンプルにおける焼成温度と各種物性との関係を調べた結果、Feを添加することが圧電性能の劣化抑止に効果的であることが判明した。
図6〜図9に、それぞれ、焼成温度Tと焼成密度ρとの関係、焼成温度Tと比誘電率ε33 /εとの関係、焼成温度Tと電気機械結合係数Krとの関係、および焼成温度Tと誘電損失tanδEとの関係を示した。まず、図6に示したグラフから、Zn系ガラスを添加していない、KNN単体の従来例、およびKNNにFeのみを添加した比較例2では、焼成密度曲線(12,14)に明らかなピークが見られ、圧電性能の劣化を抑止する以前に、高い焼成密度を得るために焼成時の温度管理を厳密に行う必要があり、生産性を向上させることが難しい、ということが分かった。
一方、Zn系ガラスを添加した実施例、および比較例1では、焼成密度曲線(11,13)にピークがなく、とくに、実施例における焼成密度曲線11を見ると、1000℃未満の低温側で焼成密度が漸減するものの、1000℃以上の高温側では、ほぼ一定の焼成密度を維持することが確認できた。しかも、その密度自体が高い値をとっていることも分かる。
一方、図7〜図9に示したグラフを見ると、図6に示した焼成温度特性とは異なる特性が示されていることが分かる。すなわち、Feを添加していない従来例と比較例1では、その特性曲線(16,17,20,21,24,25)に明らかなピークが1100℃近辺の高温側に見られた。一方、Feを添加した比較例2と実施例では、特性曲線(15,18,19,22,23,26)における変動幅が小さくなることが分かった。とくに、実施例では、特性の安定性がさらに向上するとともに、その特性自体も向上することが分かった。すなわち、KNNにZn系ガラス、またはFeを単体で添加しても特性を大きく改善することはできないが、双方をKNNに添加することで、特性を大きく改善できる、ということが確認できた。KNNとZn系ガラスとFeとを含む圧電材料は、1000℃〜1100℃の焼成温度でほぼ一定の物性を示し、焼成時の温度管理を厳密にする必要が無く、生産性を向上させることができる、ということが分かった。
そして、以上の図6〜図9により、KNNにZn系ガラスとFeを添加することによって広い焼成温度範囲で、高い焼成密度ρと高い圧電性能を維持できることがわかった。そして、その理由としては、例えば、Zn系ガラスを添加することで焼結が促進され、KNNの結晶粒径の成長を助長し、さらに、Feがその結晶粒の内部に入り込むことで圧電特性の低下を抑える、というメカニズムが考えられる。
===Zn系ガラスとFeの添加量===
図6〜図9に示した実施例のサンプルでは、Zn系ガラス、およびFeの添加量を、ともに0.5wt%としていた。しかし、添加量に最適値があれば、さらに性能に優れた圧電材料を得ることが可能となるし、高い圧電性能が広い添加量数値範囲で維持できることが確認されれば、添加剤の添加量についても厳密に制御する必要が無く、さらに生産性を向上させることが期待できる。そこで、Zn系ガラス、およびFeの添加量の最適値について検討した。
図10〜図13に、比較例1、比較例2、および実施例について、それぞれのサンプルにおける添加剤の添加量と各種物性との関係をグラフにして示した。なお、図10〜図13に示したグラフは、それぞれ、添加量a(wt%)と、焼成密度ρ、比誘電率ε33 /ε、電気機械結合係数Kr、および誘電損失tanδEとの関係を示している。なお、添加量は、現実的で、製造工程においても管理し易い3.0wt%を上限としている。もちろん、それ以上に添加することも可能である。一方、添加量の下限については、現実的に生産可能な最小の添加量が0.05%程度であり、ここでも、0.05%を下限としている。また、焼成温度は、図6に示した焼成密度ρについての特性曲線(11〜14)に基づいて、各圧電材料が確実に焼結する1100℃とした。
まず図10より、Feを添加した実施例と比較例2における焼成密度の特性曲線(31,33)では、添加量が0.5wt%の前後で焼成密度が緩やかに劣化していく傾向が見られ、Zn系ガラスのみを添加した比較例1の特性曲線32では、1.0wt%未満の添加量では、焼成密度が徐々に減少していき、1.0wt%以上では、焼成密度がほとんど低下することなく、高い焼成密度を維持した。
次に、図11〜図13に示した圧電特性曲線(34〜42)を見ると、実施例を含め、どのサンプルも、総じて、添加量が1.0%を超えると特性が緩やかに劣化していく傾向が見られた。したがって、Zn系ガラスとFeの最適添加量の上限は1.0%である、と言える。しかし、1.0wt%以上でも、急激に特性が劣化する、という傾向が見られないことも確かであり、1.0wt%よりも多量に添加しても大きな問題はない、と言える。
また、下限値については、比較例1と比較例2では、図11〜図13に示した特性曲線(35,36,38,39,41,42)の傾向から、0.5wt%未満で徐々に特性が劣化している傾向が見られた。そして、本発明の実施例に係る圧電材料については、図10に示した焼成密度ρ以外では、Zn系ガラスとFeの双方が添加されていれば、その添加量がゼロに近くても特性が劣化する傾向が見られない。すなわち、実施例では、Zn系ガラスとFeの添加量を、ともに0wt%よりも多く、かつ1.0wt%以下とすることが好ましい、と言える。より現実的には、0.05wt%以上1.0wt%以下となる。
===応用例==
本発明の圧電材料は、圧電ブザーや超音波モーターなどの圧電応用機器に適用することができる。ところで、KNNには、アルカリ金属であるKとNaとが含まれるため、圧電応用機器において、圧電材料に接触する部位にCu(銅)が含まれていると、酸化還元反応により、その部位が錆びる(腐食する)可能性がある。そこで、KNNとZn系ガラスとFeとを含んだ圧電材料を圧電応用製品に適用する際に留意すべき点を確認しておく必要がある。
上記留意点を確認するために、KNNとZn系ガラスとFeとを含んだ圧電材料を用いて圧電ブザーを作製し、Cuに対する影響を調べた。周知のごとく、圧電ブザーは、プレート状の圧電材料を電極板と金属製の振動板とで挟持した構造であり、振動板は、電極板も兼ねる。この振動板は、普通、真鍮製であり、CuとZnとからなる。そこで、振動板を真鍮製とした圧電ブザー(従来ブザー)と、Cuを含まないステンレス製の振動板を用いた圧電ブザー(実施例ブザー)とを作製し、これらのブザーを高温高湿度下(例えば、80℃、80%)で240時間連続鳴動させる試験を行い、その試験前後における音響特性を調べた。また、圧電材料としては、KNNにZn系ガラスとFeがそれぞれ0.5wt%添加されたものを使用した。
従来ブザーと実施例ブザーについて、試験前後における周波数と音圧との関係を図14に示した。当該図14に示したように、従来ブザーでは、試験前の音響特性曲線53と試験後の音響特性曲線54とが大きく乖離している。一方、実施例ブザーでは、試験前後の音響特性曲線(51,52)の軌跡がほとんど同じであり、試験前後で特性が変化しない、ということが確認できた。また、図15の(A)と(B)に、それぞれ、試験後の実施例ブザー100aと従来ブザー100bの写真を示した。この図15に示したように、各ブザー(100a,100b)は、円板状に形成された本発明の実施例に係る圧電材料101のそれぞれの面に電極板(102a,102b)と振動板(103a,103b)を貼り付けた構造であり、振動周波数に応じた電圧を圧電材料101の両面に印加して鳴動させるために電極板(102a,102b)と振動板(103a,103b)には、それぞれリード線104が半田105によって接続さている。そして、試験後の状態を観察すると、実施例ブザー100aでは、試験前後で外観上の変化がほとんどなかったが、従来ブザー100bでは、振動板103bが腐食していた。したがって、本実施例の圧電材料を用いた圧電応用機器では、少なくとも圧電材料と接触する電極やリード線などの部材には、銅が含まれていないことが望ましい。
この発明は、圧電ブザーや超音波モーターなどの圧電性を利用した機器や、フィルターなどの圧電性を利用した素子に利用することができる。
1〜8 ガラスを添加したKNNの焼成温度と各種物性値との関係を示す特性曲線
11〜26 各種圧電材料における焼成温度と各種物性値との関係を示す特性曲線
31〜42 各種圧電材料における添加物の添加量と各種物性値との関係を示す特性曲線
100a,100b 圧電ブザー、101 圧電材料、102a,102b 電極板、
103a,103b 振動板、104 リード線、105 半田

Claims (4)

  1. 焼結体からなる圧電材料を用いた圧電応用機器であって、前記圧電材料は一般式KNa(1−x)Nb0で表されるともに0.02≦x≦0.5である化合物に、ZnOを最も多く含むZn系ガラスと、Feとが添加されてなり、少なくとも当該圧電材料に接する部材には銅が含まれていないことを特徴とする圧電応用機器。
  2. 請求項1において、プレート状の前記圧電材料の一方の面に銅を含まない電極板が貼り付けられているとともに、他方の面に振動板を兼ねる電極板が貼り付けられて、圧電ブザー、センサー、振動子などの圧電振動板として機能することを特徴とする圧電応用機器。
  3. 請求項1または2において、前記圧電材料は、前記Zn系ガラスと前記Feがともに0wt%よりも多く1.0wt%以下の質量比で添加されていることを特徴とする圧電応用機器。
  4. 請求項3において、前記Zn系ガラスと前記Feは、ともに0.05wt%以上の質量比で添加されていることを特徴とする圧電応用機器。
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