JP5711064B2 - バランサ付き内燃機関 - Google Patents
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Description
そこで、バランサ付き内燃機関において、内燃機関の形態によらず、バランサ機構のバランサ駆動ギヤとバランサ従動ギヤの噛み合い部の位置合わせマークの合致を容易に確認できるものが望まれていた。
また、クランクケースが左右に分割される構造ではないので、ギヤの噛み合い部分をクランクケースの反対側から正面視して位置合わせマークの合致を確認することが困難な上下割り構造のクランクケースにおいて、バランサ駆動ギヤとバランサ従動ギヤの噛み合い部分を正面視して、位置合わせマークの合致を確認することができる。
そして、貫通孔を、クランクケースの分割面から離れた閉じた孔とすることができ、分割面に貫通孔を設けた場合のような切欠き状とならないので、クランクケースの剛性が確保される。
また、一方の壁部に設けられたクランク軸支持孔とバランサ軸のバランサ軸支持孔とは、分割面に対し垂直方向に見て重ならない位置に離して配置され、貫通孔が、分割面に対し垂直方向に見てバランサ軸支持孔と重ならない位置で、上下方向に長い長円の形成されたので、貫通孔の開口を大きく形成して確認を行い易くしながら、バランサ軸支持孔との間隔が近くなることを抑制してクランクケースの剛性を確保できる。
なお、本明細書の説明および特許請求の範囲における前後左右上下等の向きは、本実施形態に係るバランサ付き内燃機関を自動二輪車等の小型車両に搭載した状態での車両の向きに従うものとする。
また、図中矢印FRは車両前方を、LHは車両左方を、RHは車両右方を、UPは車両上方を、それぞれ示す。
本実施形態に係る内燃機関1は、そのクランク軸2を、搭載される車両である図示しない自動二輪車の車幅方向、すなわち左右方向に配向させて自動二輪車に搭載された、水冷直列2気筒の4ストロークサイクル内燃機関である。
一方、下側クランクケース10Bの下にはオイルパン14が取り付けられる。
直列2気筒の内燃機関1であるので、クランク軸2は3つのジャーナル部20を有し、上側クランクケース10Aと下側クランクケース10Bの上下それぞれ3つのジャーナル壁15A、15Bによりクランク軸2は回転自在に支持される。
上側クランクケース10Aと下側クランクケース10Bの各3つのジャーナル壁15A、15Bのそれぞれにおいて、クランク軸2を挟持する3つのクランク軸支持孔2H(図3、図9参照)を形成する半円弧部を挟む前後に、それぞれスタッドボルト(本発明の「締結ボルト」)17(図1参照)が下方から真っ直ぐ上方へ、下側クランクケース10Bを貫通して上側クランクケース10Aの長尺の雌ねじ孔18(図9参照)に螺入して緊締している。
なお、上側クランクケース10Aと下側クランクケース10Bは、上記のスタッドボルト17だけでなく、所要箇所に複数のボルト19により締結される(図4参照)。
なお、吸気ポート33の上流側開口33aにはスロットルボディ37が連結されて、その上流に図示しない吸気管を介してエアクリーナが連結される。
排気ポート35の下流側開口35aには、図示しない排気管を介してマフラが連結される。
そのために、各カム軸38、39には、右端部にカムスプロケット38a、39aが嵌着され、クランク軸2の右端部近傍に嵌着される駆動スプロケット23と、カムスプロケット38a、39aとの間にカムチェーン40が掛け渡され(図2、図4参照)、クランク軸2の半分の回転速度で回転駆動される。
カムチェーンテンショナ43は、シリンダブロック11の右端部の後面から後方へ突出したテンショナホルダ11cに取り付けられる。
交流発電機45に左方から、発電機カバー46Lが被せられ、左端側ジャーナル壁15AL、15BLに取り付けられる。交流発電機45の発電コイルを備えたインナステータ45bが、発電機カバー46Lの内側に支持されてアウタロータ45a内に配置される。
変速機5は、常時噛合い式のギヤ変速機であり、クランク軸2の後方で斜め上方位置に(図1参照)変速機5のメイン軸50が、上側クランクケース10Aにおいて、一対の壁部をなす左端側ジャーナル壁15ALと右端側ジャーナル壁15ARに、左軸受51L、右軸受51Rを介して回転自在に軸支される。
本実施形態において、左軸受51Lはニードルベアリング、右軸受51Rはボールベアリングである。
本実施形態において、左軸受53Lはボールベアリング、右軸受53Rはニードルベアリングである。
シフトフォーク57はその他端側が、変速ギヤ群50g、52gにおいてシフタとなるギヤ5aと係合しており、シフトフォーク57によってシフタとなるギヤ5aの移動が行われて、以上のシフトスピンドル54、シフトドラム55、シフトフォーク57等によって構成される変速操作機構による変速がなされる。
摩擦クラッチ60の出力側であるクラッチインナ60bは、メイン軸50にスプライン嵌合しており、よってクランク軸2の回転が1次減速機構24、61および摩擦クラッチ60を介してメイン軸50に伝達される。
カウンタ軸52は、出力軸でもあり、クランクケース10を左方に貫通して外部に突出させた左端部に出力スプロケット62が嵌着され、図示しない後輪の被動スプロケットとの間に伝動チェーン63が掛け渡され2次減速機構が構成され、2次減速機構を介して動力が後輪に伝達される。
内燃機関1を始動するスタータモータ66(図1参照)は、図9に上側クランクケース10Aにおけるスタータモータ取付け孔66Hを示すように、クランクケース10の中央上面位置に取り付けられている。
なお、図9に示されるように、上側クランクケース10Aの左側外面には減速ギヤスピンドル取付け孔67Hの周囲およびそれから上下前後に向かって放射状に設けられた補強リブ68が設けられている。
図1の図示切断面において図示奥側に図示しないオイルポンプが、図示手前側に図示しないウォータポンプが、設けられている。
ウォータポンプは、図示しない各冷却水管路、ラジエータ、サーモスタット等の所定の機器を介して、シリンダブロック11、シリンダヘッド12内の水冷ジャケット29に冷却水を循環させて、内燃機関1の冷却を行う。
バランサ軸70は、クランク軸2の後方の一対の壁部をなす左端側ジャーナル壁(本発明における「一方の壁部」)15ALと右端側ジャーナル壁15ARに、左軸受71L、右軸受71Rを介して回転自在に軸支される。
本実施形態において、左軸受71Lと右軸受71Rは、ともにボールベアリングである。
また、側面視で、バランサ軸70は、クランク軸2とメイン軸50との間で、それらを結ぶ線より上方に配設されている。
なお、バランサ駆動ギヤ74のピッチ円74aの径D1は、バランサ従動ギヤ72のピッチ円72aの径D2と同一である。
すなわち、バランサ従動ギヤ72は、ギヤ軸方向にメインギヤ91およびサブギヤ92の2分割構造とされ、メインギヤ91とギヤ幅の狭いサブギヤ92とが、互いに軸方向に重ね合わされて、ともに他方のギヤであるバランサ駆動ギヤ74と噛み合わせられる。
メインギヤ91は、バランサ軸70にキー70cによって固定支持され、一方、サブギヤ92は、メインギヤ91のボス91a上へ遊転可能に嵌装されている。
メインギヤ91とサブギヤ92は、同径、同ピッチのギヤであり、共にバランサ駆動ギヤ74の同じ歯間に噛合うが、両ギヤの間には付勢部材93が介装され、両ギヤが互いに逆向き方向に回動付勢される。
一方、メインギヤ91の歯の前面側にはバックラッシュが発生しようとするが、サブギヤ92は、付勢部材93によってメインギヤ91と逆方向に回動付勢されているので、メインギヤ91の歯の前面側の、バランサ駆動ギヤ74の前位の歯の後面側を、サブギヤ92の歯の前面が押接してバックラッシュを実質的に解消する。
なお、本実施形態においては、図2に示されるように、プライマリドライブギヤ24においてもセラシ機構が備えられている。プライマリドライブギヤ24は、バランサ従動ギヤ72とは逆に駆動側ギヤであるが、セラシ機構の機能は同様である。
組み立てに際しては、バランサ駆動ギヤ74の並んだ2枚の歯の側面の駆動側噛み合いマーク78の間に、バランサ従動ギヤ72の1枚の歯の側面の従動側噛み合いマーク79が位置して噛み合わされた状態で、クランク軸2とバランサ軸70とが、上側クランクケース10Aに組み込まれる。
その状態で、クランク軸2とバランサ軸70とが所定の位相関係となることは上述したとおりである。
すなわち、その状態の位置合わせマーク80に対峙する左端側ジャーナル壁15ALにおける、バランサ駆動ギヤ74とバランサ従動ギヤ72のピッチ円74a、72a上の両方の側面に共に臨む位置に、左端側ジャーナル壁15ALを貫通する貫通孔81が設けられている。
すなわち、クランクケース10の一対の壁部をなす左端側ジャーナル壁15ALと右端側ジャーナル壁15ARの間にバランサ駆動ギヤ74とバランサ従動ギヤ72が配置されていても、位置合わせマーク80と対峙する左端側ジャーナル壁15ALに、位置合わせマーク80を確認する貫通孔81が、バランサ駆動ギヤ74とバランサ従動ギヤ72のピッチ円74a、72a上の両方の側面に共に臨む位置に配置されているので、貫通孔81を通して正面からバランサ駆動ギヤ74とバランサ従動ギヤ72の両ギヤのタイミング(所定の位相関係)を合せるための位置合わせマーク80の合致を容易に確認できる。したがって、バランサ機構7の組付けが容易となり、組み立ての正確さ、コスト低減に資するものとなっている。
したがって、クランク軸2とバランサ軸70との中間に位置する貫通孔81は、分割面10aから離れた閉じた孔とすることができ、分割面10aに貫通孔を設けた場合のような切欠き状とならないので、クランクケース10の剛性が確保されている。
そのため、雌ネジの加工時に、切り粉を容易に取り除けるので、加工が容易となるほか、スタッドボルト17の螺合緊締により雌ネジ孔18周辺に作用する応力集中を低減することができ、クランクケース10の強度向上が図られている。なお、その目的のため、前方の雌ネジ孔18の先端も別の貫通孔に貫通させている。
また、貫通孔81は、上側クランクケース10Aの鋳造時に、鋳抜きにより型成形されており、鋳抜き成形することで、機械加工が省けて加工工数が低減される。
そこで、図3に示されるように、バランサ軸70は、右軸端部70bを、クランクケース10の一対の壁部のうちの右側の壁部となる右端側ジャーナル壁15ARのバランサ軸右支持孔70HRに遊貫させた状態で、左側の壁部となる左端側ジャーナル壁15ALのバランサ軸左支持孔70HLに左軸端部70aを左軸受71Lを介して支持させた後、バランサ軸右支持孔70HRに右側から、右軸受71Rをバランサ軸70の右軸端部70bを挿通させて嵌装することで、バランサ軸70の右軸端部70bを右端側ジャーナル壁15ARに支持させている。
したがって、それぞれの右軸受71R、51Rは、右側の壁部である右端側ジャーナル壁15ARに右側から嵌入固定されてはいるが、内燃機関1の運転の振動等による万一の脱落を防止する必要があり、右端側ジャーナル壁15ARの右面に軸受規制部材100が取り付けられている。
そのため、メイン軸50の右軸受51Rの軸受規制部材100を、個別に設けることなく兼用できて、部品点数の削減が可能となる。
そのため、シフトフォーク支持軸56の抜け止め手段を個別に設けることなく、軸受規制部材100で兼用できて、部品点数の削減が可能となる。
本実施形態においても変速機5のメイン軸50には、その左右軸受51L、51Rや変速ギヤ群50g等の潤滑のため、オイル給油手段としてオイルポンプからオイルが供給される油路50cが軸内に設けられている。
すなわち、図10に示されるように、バランサ軸右支持孔70HRに、二点鎖線で示すようにバランサ軸70の右軸受71Rが嵌入された状態で、右軸受71Rの軸中心よりも下方の外周71Raの外側の右端側ジャーナル壁15ARの右面に、外周71Raに沿って一定の高さに台状に隆起して形成されたオイル受け部110が備えられている。
また、前述のように、右軸受71Rの外輪部71Rbの側面には、右軸受71Rの脱落を抑制する軸受規制部材100が備えられている。
また、右端側ジャーナル壁15ARの右面には、バランサ軸70の上方と下方、およびメイン軸50の前後に、上記順で、板状の軸受規制部材100の締結手段のボス部111A、111B、111C、111Dが形成されており、各ボス部に軸受規制部材100がその取付け孔102(図11参照)を挿通させたボルト101(図4参照)で締結されることで、オイル受け部110の右面上に固定されている。
また、軸受規制部材100は、オイル受け部110よりバランサ軸70の右軸受71Rの軸中心に向けて延出して、右軸受71Rの外周71Ra寄り側面に沿うように形成されているので、オイル貯留部115の容量が増し、右軸受71Rへのオイル供給がより好ましく行われる。
そして、オイル受け部110が、右軸受71Rの外周71Raに沿って上方に向けて凹部をなす円弧状に形成されているから、オイル貯留部115として溜めるオイル量を増大することができる。
したがって、右軸受71Rの外輪部71Rbより軸受の軸中心側に延出する中心側延出部100dによって、オイルが積極的に右軸受71Rのボール転動部71Rcの摺動箇所へ供給され、潤滑がより好ましく行われる。
バランサ軸70の上方のボス部111Aが、右軸受71Rの軸中心の直上Aにある場合には、オイル受け部110へのオイル流入が阻害されることが生じるおそれがあるが、本実施形態では、そのような不具合が抑制され、安定した潤滑が図られる。
軸受規制部材100がバランサ軸70の周りに環状に形成された場合は、オイルが環状部の周りを伝わって流下してしまい、オイル受け部110内に入り難くなるおそれがあるが、本実施形態では、軸受規制部材100の上方の部分100aと下方の部分100bの間の部分が切欠かれて切欠き部100cが形成されたので、切欠き部100cからオイルがオイル受け部110に流入し易くなり、安定した潤滑が図られる。
例えば、バランサ付き内燃機関は、上記実施形態の水冷直列2気筒の4ストロークサイクル内燃機関に限定されず、請求項1の構成を備える多様な内燃機関でよく、車両搭載の場合は自動二輪車に限定されず、また、車両搭載用内燃機関に限定されない。
Claims (7)
- 一対の壁部(15AL,15BL:15AR,15BR)を有するクランクケース(10)と、
前記一対の壁部(15AL,15BL:15AR,15BR)によって回転自在に軸支されて、バランサ駆動ギヤ(74)が一体的に設けられたクランク軸(2)と、
前記一対の壁部(15AL:15AR)によって回転自在に軸支されて、バランサ従動ギヤ(72)が一体的に設けられたバランサ軸(70)とを備えたバランサ付き内燃機関(1)において、
前記クランクケース(10)が、前記クランク軸(2)を中心に分割面(10a)で上下に分割される構造を備え、前記バランサ軸(70)は、前記分割面(10a)から離れて上側クランクケース(10A)または下側クランクケース(10B)のいずれかに軸支され、
前記バランサ駆動ギヤ(74)とバランサ従動ギヤ(72)が前記一対の壁部(15AL,15BL:15AR,15BR)の間に配置されるとともに、両ギヤ(74,72)の同方向の側面に設けられる一組のマーク(78,79)からなる位置合わせマーク(80)が、バランサ駆動ギヤ(74)およびバランサ従動ギヤ(72)のピッチ円(74a,72a)寄りに配置され、
前記位置合わせマーク(80)と対峙する側の一方の前記壁部(15AL)における、前記バランサ駆動ギヤ(74)とバランサ従動ギヤ(72)のピッチ円(74a,72a)上の両方の側面に共に臨む位置に、前記一方の壁部(15AL)を貫通する貫通孔(81)が、同貫通孔(81)を通して前記位置合わせマーク(80)を前記一方の壁部(15AL)の外側から目視可能となるように設けられ、
前記一方の壁部(15AL)に設けられたクランク軸支持孔(2HL)と前記バランサ軸(70)のバランサ軸支持孔(70HL)とは、前記分割面(10a)に対し垂直方向に見て重ならない位置に離して配置され、
前記貫通孔(81)が、前記分割面(10a)に対し垂直方向に見て前記バランサ軸支持孔(70HL)と重ならない位置で、上下方向に長い長円に形成されたことを特徴とするバランサ付き内燃機関。 - 前記バランサ駆動ギヤ(74)のピッチ円径(D1)と前記バランサ従動ギヤ(72)のピッチ円径(D2)が、同一であることを特徴とする請求項1記載のバランサ付き内燃機関。
- 前記上側クランクケース(10A)と下側クランクケース(10B)を締結する締結ボルト(17)の雌ネジ孔(18)の先端が、前記貫通孔(81)に貫通していることを特徴とする請求項2記載のバランサ付き内燃機関。
- 前記貫通孔(81)は、前記バランサ駆動ギヤ(74)とバランサ従動ギヤ(72)のピッチ円(74a,72a)の周方向に沿って長い長円であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか記載のバランサ付き内燃機関。
- 前記貫通孔(81)の外周は、リブ(81a)によって囲まれていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか記載のバランサ付き内燃機関。
- 前記貫通孔(81)の外周を囲むリブ(81a)が、その周囲で前記一方の壁部(15AL)の上下方向に延びる縦リブ(68a)に接続していることを特徴とする請求項5記載のバランサ付き内燃機関。
- 前記貫通孔(81)は、鋳抜きにより型成形されたことを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか記載のバランサ付き内燃機関。
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