JP4540647B2 - 内燃機関のスタータモータ取付構造 - Google Patents

内燃機関のスタータモータ取付構造 Download PDF

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Description

本発明は、内燃機関のクランクケースとミッションケースが一体的に形成されたユニットケースにスタータモータを取付ける構造に関する。
この種のユニットケースを備える内燃機関の従来例としては、特許文献1に開示された自動二輪車用内燃機関の例がある。
特開2001−115933号公報
同特許文献1における内燃機関のクランクケースとミッションケースが一体的に形成されたユニットケースは、上下割りに構成され、クランク室内のクランク軸およびミッション室内のミッション軸であるメイン軸とカウンタ軸の3軸が、前後にクランク軸,メイン軸,カウンタ軸の順にユニットケースの水平割り面に挟まれるようにして軸支される前後幅の長い構造である。
そして、クランクケースの前側部分から前傾してシリンダブロックが突出しており、上壁の後側部分に前後一対の取付ボスが突設され、スタータモータの前後に突設された支持腕が、前後一対の取付ボスに締結されて、スタータモータが取り付けられている。
クランク軸,メイン軸,カウンタ軸が、ユニットケースの水平割り面に前後に並んで配設されているので、ユニットケースは前後幅が大きく、ミッション室の前後に並んだメイン軸とカウンタ軸のギヤ群を収容するために、特別ミッションケースの上壁を上方に隆起させる必要がないので、シリンダブロック後方のユニットケースの上壁の上方空間が広く、クランクケースの後側部分に取付けられたスタータモータのミッションケースの上壁との干渉を考慮する必要がない。
このようにユニットケースの前後幅が大きければ、ユニットケースの上にスタータモータを取り付けることが容易であるが、メイン軸またはカウンタ軸のいずれかを上方に移動してクランク軸,メイン軸,カウンタ軸の3軸を互いに近づけてユニットケースの前後幅を短縮して内燃機関の小型化を図った場合、シリンダブロック後方のユニットケースの上壁の上方空間が狭くなるとともに、メイン軸とカウンタ軸のいずれかが上方に移動することでギヤ群を収容するミッションケースの上壁が上方に隆起し、スタータモータの取付けスペースも制限され、高い取付け剛性でユニットケースに取付けることが容易でない。
本発明は、かかる点に鑑みなされたもので、その目的とする処は、内燃機関の小型化を図りつつ、高い取付け剛性でスタータモータをユニットケースに取付けることができる内燃機関のスタータモータ取付構造を供する点にある。
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、クランク機構を収容するクランクケースと変速機構を収容するミッションケースが前後に一体的に形成されるユニットケースの上部にスタータモータが取り付けられる内燃機関のスタータモータ取付構造において、前記クランクケースから前傾して突出したシリンダブロックの後側傾斜面に前側取付ボスが形成され、前記ミッションケースの上壁が前記変速機構のカウンタ軸より高く配置されたメイン軸を収容すべく上方に隆起した隆起部の前側壁面に後側取付ボスが形成され、前記前側取付ボスと前記後側取付ボスが互いにクランク軸方向にオフセットしており、 前記スタータモータから延出した前側ブラケットと後側ブラケットが、それぞれ前記前側取付ボスと前記後側取付ボスに締結され、前記後側取付ボスが、前記クランクケース内のクランク室と前記ミッションケース内のミッション室とを仕切る仕切り壁の上方への延長部に形成される内燃機関のスタータモータ取付構造とした。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の内燃機関のスタータモータ取付構造において、前記前側取付ボスは、シリンダ中心軸からクランク軸方向にオフセットした位置に形成されることを特徴とする。
請求項3記載の発明は、請求項1または請求項2記載の内燃機関のスタータモータ取付構造において、前記ミッションケース内の前記メイン軸に配列される径の異なる複数のギヤからなるギヤ群が、前記ミッションケースの上壁の隆起部内に収容され、前記後側取付ボスが、前記ギヤ群のうち小径ギヤに対向する位置に形成されることを特徴とする。
請求項1記載の内燃機関のスタータモータ取付構造によれば、ミッションケースの上壁がカウンタ軸より高く配置されたメイン軸を収容すべく上方に隆起した隆起部を有する構造で、クランク軸とメイン軸とカウンタ軸を互いに近づけ内燃機関の小型化が図られているにも拘わらず、クランクケースから前傾して突出したシリンダブロックの後側傾斜面に形成された前側取付ボスと、ミッションケースの上壁が上方に隆起した隆起部の前側壁面に形成された後側取付ボスとが、互いにクランク軸方向にオフセットしているので、前側取付ボスと後側取付ボスとの距離を長く構成することができ、この適当に離れた前側取付ボスと後側取付ボスに、スタータモータから延出した前側ブラケットと後側ブラケットが締結されるため、高い取付け剛性が確保され、内燃機関の振動がスタータモータに与える振動加速度の影響を低減し、スタータモータの耐久性の向上を図ることができる。
ミッションケースの隆起部の前側壁面に形成される後側取付ボスが、ミッションケースの中でも剛性の高いクランク室とミッション室とを仕切る仕切り壁の上方への延長部に形成されるので、後側取付ボス自体の剛性を高くすることができる。
請求項2記載の内燃機関のスタータモータ取付構造によれば、前側取付ボスを、シリンダ中心軸からクランク軸方向にオフセットした位置に形成することで、シリンダヘッドを締結するスタッドボルト等が配置される剛性が高い箇所に前側取付ボスが形成されるので、前側取付ボス自体の剛性を高くできるとともに、シリンダボアを避けてより前方位置すなわち後側取付ボスから可及的に前方に離して前側取付ボスを形成可能で、前側取付ボスと後側取付ボスとの距離をより大きく構成してより高い取付け剛性を確保することができる。
請求項3記載の内燃機関のスタータモータ取付構造によれば、メイン軸に配列される径の異なる複数のギヤからなるギヤ群を収容するミッションケースの上壁の隆起部の前側壁面に形成される後側取付ボスが、ギヤ群のうち小径ギヤに対向する位置に形成されるので、該小径ギヤに近づけてより後方位置すなわち前側取付ボスから可及的に後方に離して後側取付ボスを形成可能で、前側取付ボスと後側取付ボスとの距離を一層長く構成してより高い取付け剛性を確保することができる。
以下、本発明に係る一実施の形態について図1ないし図7に基づいて説明する。
本実施の形態に係る内燃機関Eは、4つのシリンダを直列に配置した直列4気筒の水冷式4ストローク内燃機関であり、自動二輪車にクランク軸10を左右方向に指向させて横置きに搭載される。
なお、本明細書において、車両前進方向を前方、その反対方向を後方とし、前進方向である前方を見て左手方向を左方、右手方向を右方と決めておく。
該内燃機関Eの左側面図を図1に示す。
該内燃機関Eは、クランク軸10を収容するクランク室Cを形成するクランクケース11cと変速機構60を収容するミッション室Mを形成するミッションケース11mとが前後に一体的に形成されてユニットケース11を構成している。
ユニットケース11自体は、上側ユニットケース11Uと下側ユニットケース11Lの上下割りに構成されている。
上側クランクケース11cの上部には4つのシリンダボア12cを直列に配列して一体に成形されたシリンダブロック部12が幾らか前方に傾いて上方に延出形成され、同シリンダブロック部12の上にシリンダヘッド13が重ねられ、シリンダヘッド13の上にはシリンダヘッドカバー14が被せられる。
一方、下側ユニットケース11Lの下にはオイルパン15が取り付けられる。
シリンダブロック部12の4つのシリンダのシリンダボア12cにピストン30が往復摺動可能に嵌合され、同ピストン30はコンロッド31を介してクランク軸10に連結される。
シリンダヘッド13には、シリンダボア12c毎に、ピストン30に対向して形成される燃焼室32と、燃焼室32に開口して1対の吸気弁35により開閉される吸気ポート33が後方へ延出し、1対の排気弁36により開閉される排気ポート34が前方に延出し、さらに燃焼室32に臨む点火プラグ37が装着される。
なお、吸気ポート33の上流側吸気通路管33bにはスロットルボディ33aが連結されて、その上流に図示しないが、吸気管が連結され、排気ポート34の下流側開口には排気管が連結される。
各吸気弁35および各排気弁36は、シリンダヘッド13に回転可能に軸支される吸気カム軸38および排気カム軸39によりクランク軸10の回転に同期して開閉駆動される。
そのために、各カム軸38,39は、右端部にカムスプロケット38s,39sが嵌着され、クランク軸10の右端部近傍に嵌着される駆動スプロケット10sとカムスプロケット38s,39sの間にタイミングチェーン40が掛け渡され(図2参照)、クランク軸10の半分の回転速度で回転駆動される。
クランク軸10は、上下のクランクケース11c,11cに主軸受20を介して挟まれて回転自在に軸支され、図2に示すように、クランク軸10の右側部分には、上記嵌着された駆動スプロケット10sよりさらに右側端部に始動用被動ギヤ57が一方向クラッチ58を介して軸支されている。
クランクケース11cの左側壁を貫通したクランク軸10の左端部に、図2に示すように、交流発電機47のアウタロータ47rが嵌着され、交流発電機47に左方から被せられる発電機カバー48に交流発電機47の発電コイルを備えたインナステータ47sが支持されてアウタロータ47r内に配置される。
クランクケース11cのクランク軸10を収容するクランク室Cと仕切り壁21により仕切られて後方にミッション室Mがミッションケース11mに形成されている(図2,図6参照)。
ミッション室Mに収容される変速機構60は、常時噛合い式の歯車変速機であり、クランク軸10の後方で斜め上方位置にメイン軸61が上側ミッションケース11mの左右軸受部62a,62aに軸受62,62を介して回転自在に軸支され、クランク軸10の後方で上下のミッションケース11m,11mの割り面に形成された半円弧状の軸受部66a,66aに挟まれてカウンタ軸65が軸受66,66を介して回転自在に軸支される。
クランク軸10とその略水平後方位置に配置されたカウンタ軸65との間の上方にメイン軸61が配置され、クランク軸10とメイン軸61とカウンタ軸65が左右水平方向に指向して互いに平行であり、側面視で鋭角三角形の頂点位置にあってコンパクトにまとめられてユニットケース11の小型化が図られている。
ミッション室M内のメイン軸61には1速から6速までの変速比の6個の変速ギヤm1〜m6が軸支され、同変速ギヤm1〜m6に対応してカウンタ軸65には変速ギヤn1〜n6が軸支され、対応する変速ギヤどうしが噛合している。
図2を参照して、最も変速比の大きい1速ギヤm1,n1どうしの噛合が、ミッション室Mの右側壁に沿った最も右側に配置され、2速ギヤm2,n2どうしの噛合が、ミッション室Mの左側壁に沿った最も左側に配置され、この1速ギヤm1,n1と2速ギヤm2,n2の間に、3速ギヤm3,n3,4速ギヤm4,n4,5速ギヤm5,n5,6速ギヤm6,n6の各噛合が配置されている。
このうちメイン軸61上の3速ギヤm3と4速ギヤm4が一体となってメイン軸61にスプライン嵌合されシフタとなって軸方向に移動して左右の6速ギヤm6と5速ギヤm5に選択的に着脱可能であり、カウンタ軸65上の5速ギヤn5と6速ギヤn6がそれぞれカウンタ軸66にスプライン嵌合されシフタとなって軸方向に移動して各々左右の変速ギヤに着脱可能である。
このシフタとなるメイン軸61上の一体の3速ギヤm3と4速ギヤm4およびカウンタ軸65上の5速ギヤn5と6速ギヤn6を変速操作機構によって移動して変速がなされる。
変速操作機構は、図1および図5を参照して、メイン軸61の後方にシフトフォーク軸70が、上側ミッションケース11mの左右軸受部71,71に両端を嵌着して支持されており、同シフトフォーク軸70の上方にシフトドラム75が、上側ミッションケース11mの左右軸受部76a,76aに軸受76,76を介して回転自在に軸支されている。
また、シフトドラム75の前方の若干斜め上方にはシフトスピンドル77が、上側ミッションケース11mの左右軸受部78a,78aに軸受78を介して回転自在に軸支されている。
図2を参照して、シフトドラム75の外周面に形成された3条のシフト溝に、シフトフォーク軸70に摺動自在に支持されたシフトフォーク70a,70b,70cの各シフトピンが嵌合しており、シフトドラム75の回動によりシフト溝にガイドされて軸方向に移動するシフトフォーク70aがメイン軸61上の3速ギヤm3と4速ギヤm4を移動させ、シフトフォーク70b,70cがカウンタ軸65上の5速ギヤn5と6速ギヤn6をそれぞれ移動させて有効に動力伝達する変速ギヤの組を変更する。
なお、シフトドラム75は、シフトスピンドル77の所要角度の回転がリンク機構79を介して伝達されて回動する。
メイン軸61のミッション室Mから突出した右端部には多板式の摩擦クラッチ64が設けられ、同摩擦クラッチ64の大径のクラッチアウタ64oに共に回転するように支持されるプライマリドリブンギヤ63bとクランク軸10の最も右側のクランクウエブに形成されたプライマリドライブギヤ63aが噛合して1次減速機構が構成されている。
摩擦クラッチ64の出力側であるクラッチインナ64iがメイン軸61にスプライン嵌合しており、よってクランク軸10の回転が1次減速機構63a,63bおよび摩擦クラッチ54を介してメイン軸51に伝達される。
このメイン軸61の右端の大径の摩擦クラッチ64とクランク軸10の右端の一方向クラッチ54を右側から覆って右ケースカバー22が被せられる。
メイン軸61の回転は、前記したように変速ギヤm1〜m6と変速ギヤn1〜n6の噛合いを介してカウンタ軸65に伝達される。
カウンタ軸65は、出力軸でもあり、ユニットケース11を左方に貫通して外部に突出させた左端部に出力スプロケット67が嵌着され、図示しない後輪の被動スプロケットとの間に伝動チェーン68が掛け渡され2次減速機構が構成され、この2次減速機構を介して動力が後輪に伝達される。
変速機構60および大径の摩擦クラッチ64は、以上のように構成されているので、これらを上方から覆う上側ユニットケース11Uは、後側ミッションケース11mの上壁がメイン軸61に軸支された変速ギヤm1〜m6およびシフトドラム75を覆うべく上方に隆起した隆起部11aを形成している(図5参照)。
したがって、図5に示すように、前傾したシリンダブロック部12の後側傾斜面12sと隆起部11aの前側壁面11sが、概ねV字状になっている。
そして、上側ユニットケース11Uの右側は、大径の摩擦クラッチ64と後記するスタータモータ50による駆動を伝達する始動減速ギヤ機構54を収容すべく左側壁11cを伴って上方に大きく張り出した拡張部11bを形成している(図5参照)。
なお、拡張部11bの右側は、右ケースカバー22で覆われる。
したがって、図5および図6に示すように、上側ユニットケース11Uの右側の拡張部11bの左側壁11cの左側には、前後をシリンダブロック部12の後側傾斜面12sと隆起部11aの前側壁面11sにより略V字状をなすV字状空間Sが形成されて、同V字状空間Sにスタータモータ50が配設される。
拡張部11bの左側壁11cには、スタータモータ50の駆動軸50aが挿入される円孔11dが穿設され、シリンダブロック部12の後側傾斜面12sには前側取付ボス12fが形成され、隆起部11aの前側壁面11sには後側取付ボス11rが形成されている。
上側ユニットケース11Uの上面図である図3を参照して、左右方向に直列に並んだ4つのシリンダボア12cのうち左から2番目のシリンダボア12cの後方の後側傾斜面12sであって、同左から2番目のシリンダボア12cのシリンダ中心軸X−X´からクランク軸方向右側にオフセットした位置に、前側取付ボス12fが形成されている。
一方、後側取付ボス11rは、隆起部11aの前側壁面11sであって、前記2番目のシリンダボア12cのシリンダ中心軸X−X´からクランク軸方向左側に形成されている(図3参照)。
したがって、前側取付ボス12fと後側取付ボス11rは、互いにクランク軸方向にオフセットしている(図3参照)。
そして、前側取付ボス12fの取付座面と後側取付ボス11rの取付座面は、図1および図6に示すように、ユニットケース11の割り面と平行な同じ高さ位置にある。
この前側取付ボス12fと後側取付ボス11rに、スタータモータ50が取り付けられる。
スタータモータ50は、略円筒状をした本体部50aを図3に示すように上側ユニットケース11Uの上に配置した姿勢で、その右端面から軸受円筒部50bが突出し、同軸受円筒部50bからモータ駆動軸51が突出している(図7参照)。
本体部50aの左端部には取付部材52が装着されており、同取付部材52は、その下部前側から前方に前側ブラケット52fが延出し、下部後側から左方に後側ブラケット52rが延出している(図3,図7参照)。
該スタータモータ50は、上側ユニットケース11Uの右側の拡張部11bの左側壁11cの左側のシリンダブロック部12の後側傾斜面12sと隆起部11aの前側壁面11sにより形成されたV字状空間Sにおいて、左側壁11cに穿設された円孔11dにモータ駆動軸51を挿入して本体右端面から突出した軸受円筒部50bを円孔11dに嵌合し、本体左端の取付部材52の前方に延出した前側ブラケット52fを前側取付ボス12fの取付座面に載せボルト53fで締結し、左方に延出した後側ブラケット52rを後側取付ボス11rの取付座面に載せボルト53rで締結し、上側ユニットケース11Uの上に図3に示すように取り付ける。
したがって、スタータモータ50は、右端軸受円筒部50bを拡張部11bの左側壁11cの円孔11dに嵌合し、左端取付部材52を前側取付ボス12fと後側取付ボス11rに締結してシリンダブロック部12の後側傾斜面12sと隆起部11aの前側壁面11sにより形成されたV字状空間Sに架設されるように取り付けられる。
スタータモータ50のモータ駆動軸51は、拡張部11bの左側壁11cの円孔11dに挿入され、モータ駆動軸51の先端部に形成された駆動ギヤが始動減速ギヤ機構54を介して前記クランク軸10の始動用被動ギヤ57にギヤ連結されている。
したがって、スタータモータ50が駆動されモータ駆動軸51が回転すると、始動減速ギヤ機構54を介して始動用被動ギヤ57に伝達され、始動用被動ギヤ57の回転は一方向クラッチ58を介してクランク軸10に伝達されて強制的なクランク軸10の回転により内燃機関Eが始動される。
以上のような内燃機関Eにおいて、上側ユニットケース11Uのミッションケース11mの隆起部11aの内面すなわちミッション室Mの天井面には、図4および図5を参照して、シフトフォーク軸70の右端を嵌着して支持する左右軸受部71,71に潤滑用突部72,72が下方に突出形成されている。
この右側の潤滑用突部72は、ミッション室M内のカウンタ軸65に軸支された最も右側の1速ギヤn1の上方に形成されている。
図5に図示するように、シフトフォーク軸70の右側軸受部71は、メイン軸61に軸支される最も右側の1速ギヤm1に沿った円弧状の天井面73の後側の下方へ垂れ下がった下端部位にあり、同下端部位の右側軸受部71の下面が円弧面71aをなし、円弧面71aの最下部がさらに下方へ突出して潤滑用突部72が形成されている。
シフトフォーク軸70の右側軸受部71は、潤滑用突部72の前側が円弧状の天井面73に連続する前半の円弧面71aをなし、潤滑用突部72の後側も後半の円弧面71aをなしている。
シフトフォーク軸70の左側軸受部71も同様の形状で、左側潤滑用突部72も同じように左側軸受部71から下方へ突出形成されている。
また、ミッション室Mの天井面には、図4および図5を参照して、メイン軸61の鉛直上方部位より後方に若干偏った位置に軸方向(左右方向)に指向してリブ74が下方へ突出形成されている。
このリブ74はメイン軸61に軸支される変速ギヤm1,m3〜m6の上方に形成されており、軸方向数箇所にさらに下方に突出した突起部74aが形成されていて、特に潤滑油の供給が薄くなりがちな箇所に潤滑油を滴下して潤滑を強化している。
メイン軸61およびカウンタ軸65は、軸中心に中空の潤滑油路61a,65aが形成されており、この潤滑油路61a,65aの処々の油孔から径方向に潤滑油が吐出しており、同潤滑油はメイン軸61およびカウンタ軸65にスプライン嵌合するシフタギヤの軸方向の移動の潤滑を行うとともに、ミッション室内の変速ギヤ群m1〜m6,n1〜n6の回転により跳ね上げられ、跳ね上げられた潤滑油がミッション室Mの天井面に付着し変速ギヤ群m1〜m6,n1〜n6の上に滴下して変速ギヤ群m1〜m6,n1〜n6の噛合いを潤滑する。
本ユニットケース構造は、上下割りの略水平な割り面にクランク軸10とカウンタ軸65を挟んで回転自在に軸支し、クランク軸10とカウンタ軸65の間の上方であってカウンタ軸65の上方で若干前方位置にメイン軸61を回転自在に軸支する前後幅を短縮した構造であり、図5に示す左側面視で、メイン軸61はクランク軸10の回転が1次減速機構63a,63bを介して伝達されて時計回り(図5に矢印で示す)に回転し、カウンタ軸65は変速ギヤ群m1〜m6,n1〜n6の噛合いにより反時計回り(図5に矢印で示す)に回転する。
本ユニットケース構造における上側ユニットケース11Uのミッションケース11mの内面(ミッション室Mの天井面)には、メイン軸61の鉛直上方部位より後方に偏った位置に軸方向に指向してリブ74が下方に突出形成されているので、メイン軸61に軸支される変速ギヤm1〜m6の時計回りの回転により跳ね上げられた潤滑油が、メイン軸61の鉛直上方部位より後方に偏った位置に形成されたリブ74によって一度受け止められて同リブ74より変速ギヤm1〜m6の下方に回転する部分(メイン軸61とカウンタ軸65の各変速ギヤ群m1〜m6,n1〜n6が噛合う直前)に滴下され、変速ギヤ群m1〜m6,n1〜n6の噛合い部分に効率良く送られ、該噛合い部分を潤滑する。
そして、最も変速比の大きい組み合わせである第1変速ギヤm1,n1のうち上方に位置するメイン軸61に軸支された第1変速ギヤm1は円弧状の天井面73で囲まれており、下方に位置するカウンタ軸65に軸支された第1変速ギヤn1の上方にはシフトフォーク軸70の右側軸受部71が垂下しており、右側軸受部71の円弧面71aには潤滑用突部72が下方へ突出形成されている。
また、2番目に変速比の大きい組み合わせである第2変速ギヤm2,n2の第2変速ギヤm2も同様に円弧状の天井面73で囲まれており、下方に位置するカウンタ軸65に軸支された第2変速ギヤn2の上方にはシフトフォーク軸70の左側軸受部71が垂下しており、左側軸受部71の円弧面71aには潤滑用突部72が下方へ突出形成されている。
シフトフォーク軸70は、両変速ギヤ群m1〜m6,n1〜n6に最も近い変速比選択手段であり、したがってシフトフォーク軸70を支持する両側軸受部71,71はそれぞれ第1変速ギヤn1,第2変速ギヤn2に近く、軸受部71,71の円弧面71a,71aに下方へ突出形成された潤滑用突部72,72はそれぞれ第1変速ギヤn1,第2変速ギヤn2の上方の近接した位置にある。
したがって、特にメイン軸61に軸支された第1変速ギヤm1,第2変速ギヤm2の回転により跳ね上げられ、円弧状の天井面73,73に付着した潤滑油が、後側天井面73,73を伝わって軸受部71,71の前半円弧面71a,71aに連続して伝わり潤滑用突部72,72に至り、潤滑用突部72,72から直下の(カウンタ軸65に軸支された)第1変速ギヤn1,第2変速ギヤn2の上に滴下される。
また、第1変速ギヤn1,第2変速ギヤn2の回転により跳ね上げられた潤滑油は軸受部71,71の後半円弧面71a,71aに付着して後半円弧面71a,71aを伝わって潤滑用突部72,72から直下の第1変速ギヤn1,第2変速ギヤn2の上に滴下される。
以上のように、本ユニットケース構造は、上下割りの略水平な割り面に配置されたクランク軸10とカウンタ軸65との間の上方にメイン軸61が配置されて前後幅を短縮し内燃機関Eの小型化を図った構造であり、同構造の上側ユニットケース11Uにおいて、第1変速ギヤn1および第2変速ギヤn2の上方にそれぞれ潤滑用突部72,72を有し、同潤滑用突部72,72の前後の円弧面71a,71aを伝わってきた潤滑油が、潤滑用突部72,72から直下の第1変速ギヤm1,n1の噛合い部に向かって回転する第1変速ギヤn1の上部および第2変速ギヤm2,n2の噛合い部に向かって回転する第2変速ギヤn2の上部に滴下されるので、潤滑油は効率良く滴下され変速比が大きい第1変速ギヤm1,n1の噛合い部に特に潤滑油が供給され、負荷が大きく掛かる第1変速ギヤm1,n1および第2変速ギヤm2,n2の噛合い部を積極的に潤滑することができ、適切な潤滑性能を確保できる。
また、メイン軸61に軸支された変速ギヤ群m1〜m6の回転により跳ね上げられた潤滑油をリブ74によって一度受けてリブ74より同変速ギヤ群m1〜m6の変速ギヤ群m1〜m6,n1〜n6の噛合い部に向かう上部に滴下して同噛合い部に供給し、さらに変速ギヤm1,m2およびカウンタ軸65に軸支された変速ギヤn1,n2の回転により飛散して天井面に付着した潤滑油を潤滑用突部72,72に集約して変速ギヤn1,n2上に滴下することができるため、多段的に互いに噛み合う両変速ギヤ群の潤滑を効率良く行うことができる。
上記したように、クランク軸10とカウンタ軸65との間の上方にメイン軸61が配置されてミッションケース11sがメイン軸61の変速ギヤ群m1〜m6を収納すべく隆起して前後幅を短縮した構造の上側ユニットケース11Uの上に、前記したようにスタータモータ50が取り付けられる。
内燃機関Eの小型化を図るべく前後幅を短縮した上側ユニットケース11Uのシリンダブロック部12の後側傾斜面12sと隆起部11aの前側壁面11sにより形成された狭いV字状空間Sに、スタータモータ50は架設される。
すなわち、スタータモータ50は、右端軸受円筒部50bが拡張部11bの左側壁11cの円孔11dに嵌合され、左端取付部材52の前側ブラケット52fがシリンダブロック部12の後側傾斜面12sに形成された前側取付ボス12fに締結され、後側ブラケット52rが隆起部11aの前側壁面11sに形成された後側取付ボス11rに締結されて上側ユニットケース11Uに取り付けられる。
スタータモータ50の左端取付部材52が取り付けられるシリンダブロック部12の後側傾斜面12sに形成された前側取付ボス12fと隆起部11aの前側壁面11sに形成された後側取付ボス11rは、図3に示すように、シリンダ中心軸X−X´に対して右方と左方にあって互いにクランク軸方向(左右方向)にオフセットしているので、スタータモータ50が取り付けられるV字状空間Sが狭くても前側取付ボス12fと後側取付ボス11rの距離を大きく確保することができる。
この内燃機関の小型が図られて狭く区画されたV字状空間Sにおいて、適当に大きく離れて構成された前側取付ボス12fと後側取付ボス11rに、スタータモータ50の取付部材52から延出した前側ブラケット52fと後側ブラケット52rがそれぞれ締結されるため、高い取付け剛性が確保され、内燃機関の振動がスタータモータ50に与える振動加速度の影響を低減し、スタータモータ50の耐久性の向上を図ることができる。
また、前側取付ボス12fは、シリンダ中心軸X−X´に対してクランク軸方向右側にオフセットした位置に形成されているので、シリンダボア12c,12c間の連結部であってシリンダブロック部12にシリンダヘッド13を締結するスタッドボルト等が配置される剛性が最も高い箇所に前側取付ボス12fが形成されるため、前側取付ボス12f自体の剛性を高くできる。
さらに、シリンダボア12cを避けてより前方位置すなわち後側取付ボス11rから可及的に前方に離して前側取付ボス12fを形成可能で、前側取付ボス12fと後側取付ボス11rとの距離をより大きく構成してより高い取付け剛性を確保することができる。
図3に示すように、後側取付ボス11rは、ミッションケース11mの隆起部11aの前側壁面11sであって最も左側に形成されており、同箇所はミッション室M内のメイン軸61に軸支された変速ギヤ群m1〜m6のうち最も左側の第2変速ギヤm2の略前方位置にある。
第2変速ギヤm2,n2の噛合いは変速比が大きく、よって第2変速ギヤm2の径は小さいため、後側取付ボス11rを小径の第2変速ギヤm2に近づけてより後方位置すなわち前側取付ボス12fから可及的に後方に離して後側取付ボス11rを形成可能で、前側取付ボス12fと後側取付ボス11rとの距離を一層長く構成してより高い取付け剛性を確保することができる。
なお、メイン軸61および変速ギヤm1〜m6の組付け時は、上側ユニットケース11Uのミッションケース11mの右側側壁の軸受開口から挿入して右側から組付けるため、最も左側の変速ギヤm2より径の大きい変速ギヤm6等が、第2変速ギヤm2の略前方位置にある後側取付ボス11rと干渉することはない。
また、図6に図示するように、後側取付ボス11rは、上側ユニットケース11Uのクランク室Cとミッション室Mとを仕切る仕切り壁21の上方への延長部に形成されるので、後側取付ボス11r自体の剛性を高くすることができ、内燃機関の振動のスタータモータ50への影響をより低減し、スタータモータ50の耐久性の向上を図ることができる。
本発明の一実施の形態に係る内燃機関の左側面図である。 同内燃機関の展開断面図である。 上側ユニットケースの上面図である。 同下面図である。 図3のV−V線断面図である。 図3のVI−VI線断面図である。 スタータモータの上面図である。
符号の説明
C…クランク室、E…内燃機関、M…ミッション室、
m1〜m6,n1〜n6…変速ギヤ群、
10…クランク軸、11…ユニットケース、11L…下側ユニットケース、11U…上側ユニットケース、11a…隆起部、11c…クランクケース、11m…ミッションケース、11r…後側取付ボス、12…シリンダブロック部、11a…隆起部、11s…前側壁面、12f…前側取付ボス、21…仕切り壁、
50…スタータモータ、51…モータ駆動軸、52…取付部材、52f…前側ブラケット、52r…後側ブラケット、53f,53r…ボルト、54…始動減速ギヤ機構、57…始動用被動ギヤ、58…一方向クラッチ、60…変速機構、61…メイン軸、65…カウンタ軸。

Claims (3)

  1. クランク機構を収容するクランクケースと変速機構を収容するミッションケースが前後に一体的に形成されるユニットケースの上部にスタータモータが取り付けられる内燃機関のスタータモータ取付構造において、
    前記クランクケースから前傾して突出したシリンダブロックの後側傾斜面に前側取付ボスが形成され、
    前記ミッションケースの上壁が前記変速機構のカウンタ軸より高く配置されたメイン軸を収容すべく上方に隆起した隆起部の前側壁面に後側取付ボスが形成され、
    前記前側取付ボスと前記後側取付ボスが互いにクランク軸方向にオフセットしており、 前記スタータモータから延出した前側ブラケットと後側ブラケットが、それぞれ前記前側取付ボスと前記後側取付ボスに締結され、
    前記後側取付ボスが、前記クランクケース内のクランク室と前記ミッションケース内のミッション室とを仕切る仕切り壁の上方への延長部に形成されることを特徴とする内燃機関のスタータモータ取付構造。
  2. 前記前側取付ボスは、シリンダ中心軸からクランク軸方向にオフセットした位置に形成されることを特徴とする請求項1記載の内燃機関のスタータモータ取付構造。
  3. 前記ミッションケース内の前記メイン軸に配列される径の異なる複数のギヤからなるギヤ群が、前記ミッションケースの上壁の隆起部内に収容され、
    前記後側取付ボスが、前記ギヤ群のうち小径ギヤに対向する位置に形成されることを特徴とする請求項1または請求項2記載の内燃機関のスタータモータ取付構造。
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