以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。以下に示す実施の形態においては、同一のまたは共通する部分について図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
なお、本発明の実施の形態および実験における「光沢度」とは、「JIS−Z8741−1983方法2」に基づき、入射角75°にてグロスメーター「VG 2000」(日本電色工業株式会社製)により測定した値で表わされるものである。
図1は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置の概略図である。図2は、図1に示す画像形成装置の制御構成を示すブロック図である。図1および図2を参照して、本実施の形態に係る画像形成装置1および画像形成方法について説明する。
図1に示すように、画像形成装置1は、現像装置10と、像担持体20と、中間転写体30と、バックアップ部材40と、定着部としての加圧加熱手段50および非接触加熱手段60と、制御部70(図1において不図示)とを備える。
図2に示すように、画像形成装置1は、操作パネル80、メモリ83および光沢度検知部84をさらに備える。
操作パネル80は、各種情報をユーザに通知する表示部81、および、各種ユーザ操作を受付ける入力部82を含む。より具体的には、操作パネル80は、入力部の機能として、テンキーを含む各種入力キー群、およびタッチセンサなどを含むとともに、表示部の機能として、タッチセンサと一体化した液晶表示部、およびLED(Light Emitting Diode)などからなる各種インジケータを含む。
メモリ83は、各種処理を実行するためのプログラムが予め格納された記憶媒体であり、制御部70は、83から入力された情報に基づいて画像形成装置1を制御する。
光沢度検知部84は、画像形成装置1の搬送経路上に設けられ、搬送される記録媒体の光沢度を測定する。光沢度検知部84は、発光部と受光部を備えており、搬送されたトナー像が形成されていない記録媒体90表面の光沢度を測定する。光沢度検知部84の測定値と、「JIS−Z8741−1983方法2」に基づき、入射角75°にてグロスメーター「VG 2000」(日本電色工業株式会社製)により測定した測定値との対応関係は、制御部70に記憶されており、制御部70は、記録媒体90の光沢度を算出し、これを所定の閾値と比較することにより高光沢および低光沢のいずれの記録媒体であるか判断することができる。
制御部70は、光沢度検知部84から入力された検知情報に基づき加圧加熱手段50および非接触加熱手段60の動作を制御する。より具体的には、制御部70は、加圧加熱手段50に含まれる圧接離隔機構53および非接触加熱手段60に含まれる非接触加熱ヒーター61の動作を制御する。
なお、本実施の形態においては、光沢度検知部84が光沢度情報を検知する専用の取得部として機能する場合を例示して説明したが、光沢度検知部84は必須の構成ではなく、画像形成装置の各種操作を行う操作パネル80が、光沢度情報を取得する取得部として機能してもよい。この場合、ユーザが画像形成装置1の操作パネル80から記録媒体供給部に収容している記録媒体90の種類、斤量の情報を入力する際に、光沢度の数値あるいは高光沢/低光沢の情報を直接入力するように構成することにより、制御部70は、入力値に基づいて光沢度情報を取得することもできる。また、記録媒体90の種類が「グロス紙」、「コート紙」であれば高光沢、「普通紙」、「上質紙」であれば低光沢というように、記録媒体の種類に関する情報を予め高光沢または低光沢にグループ分けしてこれをメモリ83に記憶させる構成とすることにより、制御部70は、入力された記録媒体90の種類に関する情報に基づいて、高光沢および低光沢のいずれの記録媒体であるか判断するようにしてもよい。
図1に示すように、現像装置10は、帯電装置(不図示)により一様に帯電された像担持体20が露光装置(不図示)によって露光されることにより形成される静電潜像を、トナー粒子とキャリア液を含む液体現像剤を用いて現像する。この結果、像担持体20の表面には静電潜像の形状に対応したトナー像が形成される。このように現像装置10は現像手段として機能する。なお、現像装置10は、AR10方向に回転しながら液体現像剤を像担持体20の表面に塗布する。
液体現像剤に含まれるキャリア液としては、絶縁性の溶媒を採用することができる。液体現像剤に用いられるトナー粒子としては、主として樹脂材料と、着色のための顔料または染料とによって構成される。樹脂材料は、顔料または染料をその樹脂材料中に均一に分散させる機能と、トナー像が記録媒体90に定着される際のバインダーとしての機能とを有する。
液体現像剤中におけるトナー粒子の体積平均粒子径は、0.1μm以上5μm以下であることが好ましい。液体現像剤中におけるトナー粒子の体積平均粒子径が0.1μm以上である場合には、トナー粒子は、静電潜像を現像しやすくなる。また、液体現像剤中におけるトナー粒子の体積平均粒子径が5μm以下である場合には、トナー像の品質が向上する。
液体現像剤の重量に対するトナー粒子の重量の割合(トナー濃度)は、10%以上50%以下であることが好ましい。液体現像剤の重量に対するトナー粒子の重量の割合が10%以上である場合には、トナー粒子の沈降が生じにくく、長期保管時においてトナー粒子が経時的に高いい安定性を有し、また、所望の画像濃度を得るために必要な液体現像剤の量を低減することができる。これにより、トナー像を定着させる際に多くのキャリア液を乾燥させる必要がなくなり、キャリア液から多くの蒸気が発生することを防止できる。液体現像剤の重量に対するトナー粒子の重量の割合が50%以下である場合には、液体現像剤の粘度が適切な値となり、製造時における取扱いが良好となる。
像担持体20は円筒状であり、その表面には像担持体層(不図示)が形成される。像担持体20は矢印AR20方向に回転する。
中間転写体30は、像担持体20と接触しながらAR30方向に回転する。像担持体20と中間転写体30との接触部(ニップ部)において、像担持体20の表面上のトナー像は、像担持体20から中間転写体30に転写される。
バックアップ部材40は、中間転写体30と対向するように配置され、AR40方向に回転する。記録媒体供給部(不図示)から1枚ずつ搬送された記録媒体90がバックアップ部材40と中間転写体30との間の接触部(ニップ部)を通過することにより、トナー像は中間転写体30から記録媒体90上に転写される。これにより記録媒体上にトナー像91が形成される。このように、中間転写体30およびバックアップ部材40は、像担持体20上に形成されたトナー像を記録媒体90上に転写する転写手段に相当する。なお、トナー像91が転写された記録媒体90は、非接触加熱手段60に向かって搬送される(矢印AR90参照)。
非接触加熱手段60は、加圧加熱手段50よりも記録媒体90の搬送方向(矢印AR90方向)の上流側に配置される。非接触加熱手段60は、非接触加熱ヒーター61、断熱カバー62、搬送部67を含む。非接触加熱手段60は、後述する低光沢度の記録媒体を用いる場合において、低光沢度の記録媒体上に転写されたトナー像を定着させることができる。
非接触加熱ヒーター61は、記録媒体90の記録面(トナー像91が転写された面)側に配置され、記録媒体90および記録媒体90上に転写されたトナー像91に接触することなくこれらを加熱することができる。なお、非接触加熱ヒーター61で加熱する前のトナー像91のトナー濃度は、トナー濃度が低い場合、現像および転写によりキャリア液が絞られる事により、30%以上50%以下である。転写以降は非接触加熱ヒーター61等での加熱により、キャリア液が蒸発することでトナー濃度は上昇してゆき、最終的には100%に近いトナー濃度になる。
非接触加熱ヒーター61の加熱面の温度は、制御部70によって所望の温度(たとえば200℃〜700℃)に設定される。制御部70は、記録媒体の光沢度の違いによって、当該加熱面の温度を適宜設定することができる。当該加熱面の温度は、光沢度の高い記録媒体に画像を形成する場合には、たとえば200℃〜600℃に設定され、光沢度の低い記録媒体に画像を形成する場合には、たとえば300℃〜700℃に設定される。
非接触加熱ヒーター61としては、記録媒体上に転写された黒トナーと、それ以外の部分(たとえば、記録媒体上に転写されたイエロー、マゼンタ、シアンタ等の各色のトナーまたは、トナーが転写されていない非画像形成部)との光吸収の差を考慮して、セラミックヒーター等の遠赤外線を放射するものを採用することができる。
断熱カバー62は、非接触加熱ヒーター61に対して記録媒体90の搬送経路側とは反対側から非接触加熱ヒーター61を覆うように設けられる。断熱カバー62によって、非接触加熱ヒーター61の周辺の温度が高温の状態で保持され、非接触加熱ヒーター61の加熱効率を向上させることが可能となる。断熱カバー62の材質としては、セラミックファイバー等の、高い断熱性および高い耐熱性を有するものを採用することができる。なお、断熱カバー62は、必ずしも設けられている必要はなく、これが不要な場合にはその設置が省略可能である。
非接触加熱ヒーター61の周辺には、ファンおよびダクト等によって構成されるエアフロー手段(不図示)が設けられてもよい。非接触加熱ヒーター61と記録媒体90との間においてトナー像91から揮発したキャリア液(蒸気)は、エアフロー手段によって、非接触加熱ヒーター61の周辺から外部に排気される。このように構成すれば、キャリア液の揮発量が増加した場合であっても、非接触加熱ヒーター61の周辺における揮発したキャリア液の蒸気圧を飽和蒸気圧以下に効果的に下げることが可能となる。
なお、本実施の形態における非接触加熱ヒーター61は、トナー像91が転写された記録面側から記録媒体90を加熱するように構成されたものであるが、その反対側の面側から記録媒体90を加熱するように構成されたものであってもよい。
搬送部67は、非接触加熱ヒーター61に対向して配置され、駆動ローラー63、従動ローラー64、サクションベルト65および吸引ファン66を含む。非接触加熱手段60に搬送された記録媒体は、搬送部67によって加圧加熱手段50側に向けてさらに搬送される。
サクションベルト65は、シリコーンゴムなどの耐熱性の高い部材を用いて環状に構成されており、記録媒体90の搬送方向(矢印AR90方向)に互いに離隔して配置される駆動ローラー63および従動ローラー64に巻きかけられる。駆動ローラー63および従動ローラー64は、アルミ等の金属製のローラーからそれぞれ構成される。駆動ローラー63は回転駆動され、駆動ローラー63の回転に伴って、サクションベルト65は矢印AR65方向に回転する。従動ローラー64は、サクションベルト65を介して従動回転される。
駆動ローラー63の回転速度は、サクションベルト65の表面が所望の速度で移動するように制御される。駆動ローラー63および従動ローラー64の記録媒体90の搬送方向における位置関係は、上流側に駆動ローラー63が配置され、下流側に従動ローラー64が配置されていてもよいし、逆に上流側に従動ローラー64が配置され、下流側に駆動ローラー63が配置されていてもよい。
サクションベルト65の内側には、吸引ファン66が設けられる。吸引ファン66は、サクションベルト65に形成されている複数の吸引孔65Tを介して記録媒体90を吸引する。これにより、記録媒体90は、サクションベルト65の表面に吸着されつつ下流側へ搬送される。
加圧加熱手段50は、非接触加熱手段60よりも記録媒体90の搬送方向(矢印AR90方向)の下流側に配置され、記録媒体90の搬送経路を挟んで対向するように配置された定着ローラー51および加圧ローラー52を含む。加圧加熱手段50は、後述する高光沢度の記録媒体を用いる場合において、高光沢度の記録媒体上に転写されたトナー像を定着させることができる。なお、加圧加熱手段50としては、上述のごとくローラー型に限定されず、ベルト型であってもよい。
定着ローラー51および加圧ローラー52は、各々の両端側が軸受部材(不図示)によって回動自在に支持されている。定着ローラー51および加圧ローラー52は、カムまたはバネなどを有する圧接離隔機構53によって、記録媒体90の搬送経路において圧接可能となるように支持されている。圧接離隔機構53は、圧接/離隔手段として機能する。
制御部70は、上述の圧接離隔機構53を制御し、定着ローラー51および加圧ローラー52が互いに離隔して配置された状態(離隔状態)と、記録媒体90の搬送経路においてこれらが圧接されるように付勢されて配置された状態(圧接状態)とに切り換える。定着ローラー51および加圧ローラー52が記録媒体90の搬送経路において圧接されて配置された状態においては、定着ローラー51および加圧ローラー52の間には圧接ニップ部が形成される。この状態において、加圧ローラー52は、制御部70によって矢印AR52方向に所定の周速度で回転駆動され、定着ローラー51は、圧接ニップ部を通して加圧ローラー52から圧接摩擦力を受ける。これにより、定着ローラー51は、矢印AR51方向に従動回転する。なお、定着ローラー51が回転駆動されて、加圧ローラー52が従動回転するように構成されてもよい。
両面印刷を行なう場合においては、記録媒体90の搬送経路から定着ローラー51および加圧ローラー52の双方が退避するように制御されることで、上述した定着ローラー51と加圧ローラー52とが離隔して配置された状態が実現できる。また、片面印刷を行なう場合においては、記録媒体90の記録面側に位置する定着ローラー51のみが記録媒体90の搬送経路から退避するように制御されることで、上述した定着ローラー51と加圧ローラー52とが離隔して配置された状態を実現してもよい。
ここで、本実施の形態における画像形成装置1にあっては、記録媒体90の光沢度が高光沢である場合に、当該記録媒体90が非接触加熱手段60によって加熱された後に加圧加熱手段50によって加圧加熱され、記録媒体90の光沢度が低光沢である場合に、当該記録媒体90が非接触加熱手段60によって加熱された後に加圧加熱手段50によって加圧加熱されることなく加圧加熱手段50を通過するように構成されたものであるが、その切り替えが、上述した制御部70による加圧加熱手段50の状態の切り換えによって実現される。なお、その印刷の具体的な態様については、後述することとする。
定着ローラー51は、ヒーターランプ51H(ハロゲンランプ)を内蔵する。定着ローラー51の表面温度は、制御部70によって所定の温度(たとえば120℃〜200℃)に設定されている。
加圧ローラー52は、ヒーターランプ52H(ハロゲンランプ)を内蔵する。加圧ローラー52の表面温度は、制御部70によって所定の温度(たとえば120℃〜200℃)に設定されている。
定着ローラー51および加圧ローラー52は、アルミなどの熱伝導率の高い中空の金属製芯金(厚さ0.5mm〜5mm)と、ニップ幅を確保するために金属製芯金の外周に設けられた弾性層(厚さ0.5mm〜3mm)と、表面の離型性を高めるために弾性層の外周に設けられた離型層(厚さ10μm〜50μm)とを有する。弾性層としては、たとえばシリコーンゴムが用いられる。離型層としては、PTFE(polytetrafluoroethylene)またはPFA(perfluoroalkoxy polymer)などのフッ素系樹脂が用いられる。
図3は、図1に示す画像形成装置が光沢度の高い記録媒体上にトナー像を定着させる際の動作を説明するための概略図である。図3を参照して、画像形成装置1が光沢度の高い記録媒体上にトナー像を定着させる際の動作を説明する。
図3に示すように、光沢度の高い記録媒体として、たとえばコート紙90Aを用いる場合においては、制御部70は、定着ローラー51および加圧ローラー52が所定の圧力で記録媒体90の搬送経路において圧接されて配置されるように上述の圧接離隔機構53を制御する。この場合において、コート紙90A上に転写されたトナー像91Aは、非接触加熱手段60および加圧加熱手段50によってコート紙90A上に定着する。
まず、トナー粒子およびキャリア液を含むトナー像91Aが転写されたコート紙90Aは、非接触加熱手段60を通過する。非接触加熱手段60は、主として非接触加熱ヒーター61からの輻射により、コート紙90A上のトナー像91A(トナー粒子およびキャリア液)およびコート紙90Aを加熱する。この際、トナー像91A中に含まれるキャリア液は、非接触加熱手段60によって加熱されることで一部が揮発し、その量が低減されたトナー像92Aがコート紙90A上に形成される。
次に、コート紙90Aが加圧加熱手段50に到達し、トナー像92Aおよびコート紙90Aは、定着ローラー51および加圧ローラー52によって加圧および加熱される。この際、トナー像92Aに含有されるトナー粒子の溶融が促進され、溶融されたトナー粒子が一体化されることにより、コート紙90A上に画像93Aが形成される。
ここで、非接触加熱後(定着完了前)のトナー像92A中のキャリア液は、上記加熱および加圧によって、トナー像92Aの表面に析出した後、定着ローラー51により除去されたり、圧接ニップ部の出口において揮発したり、コート紙90Aの内部に向かって浸透したり、トナー像92A内に残留したりする。キャリア液存在下にあっては、トナー像92Aの表面(トナー像92Aと定着ローラー51との間の界面)に存在していたキャリア液の履歴、およびまたは、圧接ニップ部においてトナー像92Aの内部からトナー像の表面に析出したキャリア液の履歴などが影響し、トナー像92Aから最終的に記録媒体90上に形成された画像93Aの光沢度(平滑性)が決定される。
一般的に、コート紙90Aの光沢度は70程度であることから、定着後の画像93Aの光沢度とコート紙90Aの光沢度との差から観察者が感じる違和感をなくすために、定着後の画像93Aの光沢度は、60以上80以下であることが好ましい。
このようにコート紙90Aを用いる場合には、光沢度の高い画像93Aを得る必要が生じるために、加圧加熱手段50においては、トナー像92Aに含まれるトナー粒子の溶融を促進させ、トナー像表面を平滑化させなければならず、定着ローラー51および加圧ローラー52の表面温度は、非接触加熱ヒーター61の加熱面における設定温度よりも高くする必要がある。そのため、加圧加熱手段50によって加圧加熱された後のコート紙90Aの温度T2[℃]は、非接触加熱手段60によって加熱された後のコート紙90Aの温度T1[℃]よりも高くなる。したがって、本実施の形態における画像形成装置1は、下記式(1)を満たすことになる。
T1<T2 ・・・式(1)
図4は、図1に示す画像形成装置が光沢度の低い記録媒体上にトナー像を定着させる際の動作を説明するための概略図である。図4を参照して、画像形成装置1が光沢度の低い記録媒体上にトナー像を定着させる際の動作について説明する。
図4に示すように、光沢度の低い記録媒体として、たとえば上質紙90Bを用いる場合においては、制御部70は、定着ローラー51および加圧ローラー52が上質紙90Bの搬送経路から互いに離隔した状態で配置されるように上述の圧接離隔機構53を制御する。この場合においては、上質紙90B上に転写されたトナー像91Bは、非接触加熱手段60によって上質紙90B上に定着する。
まず、トナー粒子およびキャリア液を含むトナー像91Bが転写された上質紙90Bは、非接触加熱手段60を通過する。非接触加熱手段60は、主として非接触加熱ヒーター61からの輻射により、上質紙90B上のトナー像91B(トナー粒子およびキャリア液)および上質紙90Bを加熱する。この際、トナー像91Bに含まれるトナー粒子が溶融し、キャリア液はその大部分が揮発する。これにより、上質紙90B上に画像92Bが形成される。そして、上質紙90Bは、互いに離隔して配置された定着ローラー51および加圧ローラー52に加圧加熱されることなくこれらの間を通過する。
一般的に、上質紙90Bの光沢度は5程度であることから、定着後の画像92Bの光沢度と上質紙90Bの光沢度の差から観察者が感じる違和感をなくすために、定着後の画像92Bの光沢度は、15以下であることが好ましい。
上質紙90Bを用いる場合は、非接触加熱手段60のみで画像92Bを上質紙90B上に形成するため、画像92Bの定着強度を確保するために、コート紙90Aを用いる場合と比較して、非接触加熱手段60の設定温度を高くする必要がある。そのため、上質紙90Bが非接触加熱手段60によって加熱されて非接触加熱手段60を通過した直後の上質紙90Bの温度T3[℃]は、コート紙90Aが非接触加熱手段60によって加熱されて非接触加熱手段60を通過した直後のコート紙90Aの温度T1[℃]よりも高くなる。したがって、本実施の形態における画像形成装置1は、下記式(2)を満たすことになる。
T1<T3 ・・・式(2)
なお、上記式(2)を充足するための方法として、上記においては、コート紙90Aを用いる場合と比較して、上質紙90Bを用いる場合において非接触加熱手段60の設定温度を高くする場合を例示したが、これに限定されず、たとえば非接触加熱手段60の駆動ローラー63の回転速度を遅くし、上質紙90Bに伝達される熱量がコート紙90Aに伝達される熱量よりも大きくなるようにしてもよい。また、非接触加熱手段60を複数設け、上質紙90Bを用いる場合には、全ての非接触加熱ヒーター61を駆動させ、コート紙90Aを用いる場合には、少なくとも1つの非接触加熱ヒーター61を停止させるように複数の非接触加熱手段60の動作を制御してもよい。また、非接触加熱ヒーター61を移動可能に支持した構成とし、上質紙90Bを用いる場合には、コート紙90Aを用いる場合と比較して、上質紙90Bと非接触加熱ヒーター61との距離がコート紙90Aと非接触加熱ヒーター61との距離よりも狭くなるように制御部70が非接触加熱ヒーター61の動作を制御するようにしてもよい。さらには、これらを相互に組み合わせることとしてもよい。
一方で、上質紙90Bを用いる場合は、非接触加熱手段60のみで画像92Bを上質紙90B上に形成するため、非接触加熱手段60を通過した直後において上質紙90B上のキャリア液がほぼ全て揮発されている必要がある。他方、コート紙90Aにおいては、溶融したトナー粒子が定着ローラー51に付着し、画像ノイズ(オフセット現象)が発生するのを防止するために、非接触加熱手段60を通過した直後においてコート紙90A上に所定量のキャリア液が残存している必要がある。そのため、上質紙90Bが非接触加熱手段60によって加熱された後におけるトナー濃度Tc2[重量%]は、コート紙90Aが非接触加熱手段60によって加熱された後におけるトナー濃度Tc1[重量%]よりも高い必要がある。したがって、本実施の形態における画像形成装置1は、下記式(3)を満たすことになる。
Tc1<Tc2 ・・・式(3)
なお、トナー濃度Tc[重量%]は、非接触加熱手段60を通過した直後のトナー像中に含まれるトナー重量をトナー重量および記録媒体上のキャリア液重量の総和で除算した値で規定される。
図5は、図1に示す画像形成装置の定着動作を示すフロー図である。図5を参照して、上述した定着動作を総括して説明する。
図5に示すように、ステップ(S1)において、制御部70は、画像形成命令を受け付ける。これにより、記録媒体供給部(不図示)から記録媒体が搬送される。次に、ステップ(S2)において、取得手段としての光沢度検知部84は、搬送経路において搬送される記録媒体の光沢度を検知する。検知された記録媒体の光沢度情報は、制御部70に入力される。
続いて、ステップ(S3)において、制御部70は、入力された当該光沢度情報に基づき、記録媒体の光沢度情報が高光沢であるか否かを判断する。記録媒体の光沢度情報が高光沢である場合(ステップ3;YES)には、制御部70は、ステップ(S4)を実行する。一方、記録媒体の光沢度情報が低光沢である場合(ステップ3;NO)には、制御部70は、ステップ(S9)を実行する。
次に、ステップ(S4)において、制御部70は、圧接離隔機構53の動作を制御し、記録媒体の搬送経路で加熱部材としての定着ローラー51と加圧部材としての加圧ローラー52とが圧接されるように付勢された状態(圧接状態)に設定する。続いて、ステップ(S5)において、制御部70は、非接触加熱手段60における非接触加熱ヒーター61の加熱面の温度を所望の温度1に設定する。
次に、ステップ(S6)において、制御部70は、現像手段としての現像装置10によって像担持体20にトナー像を現像する。また、制御部70は、像担持体20に現像されたトナー像を中間転写体に転写させ、中間転写体30とバックアップ部材40との接触部に記録媒体を通過させることにより、記録媒体上にトナー像を転写させる。
続いて、ステップ(S7)において、制御部70は、定着部に搬送された記録媒体を非接触加熱手段60によって加熱する。続いて、ステップ(S8)において、制御部70は、定着ローラー51と加圧ローラー52が圧接されることによって形成される圧接ニップ部に記録媒体を通過させることにより、加圧加熱手段50にて記録媒体を加圧および加熱する。
一方、記録媒体の光沢度情報が低光沢である場合には、ステップ(S9)において、制御部70は、圧接離隔機構53の動作を制御し、定着ローラー51と加圧ローラー52とが記録媒体の搬送経路から離隔して非接触となる離隔状態に設定する。
続いて、ステップ(S10)において、制御部70は、非接触加熱手段60における非接触加熱ヒーター61の加熱面の温度を所望の温度2に設定する。ここで、上述の温度1と温度2は、温度1<温度2の関係を有する。
次に、ステップ(S11)において、制御部70は、ステップ(S6)と同様の方法で記録媒体上にトナー像を転写させる。
続いて、ステップ(S12)において、制御部70は、定着部に搬送された記録媒体が非接触加熱手段60によって加熱された後に、離隔状態の加圧加熱手段50を通過するように、非接触加熱手段60および加圧加熱手段50の動作を制御する。
なお、本実施の形態においては、上記のような定着動作のフローを例示して説明したが、この順に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、ステップの順序を変更することが可能である。たとえば、ステップ(S4)とステップ(S5)の順序が入れ替わってもよいし、ステップ(S9)とステップ(S10)の順序が入れ替わってもよい。
以上において説明した本実施の形態における画像形成装置1および画像形成方法にあっては、上記式(1)ないし(3)を充足するように制御部70が非接触加熱手段60と加圧加熱手段50とを制御することにより、光沢度の異なる複数の記録媒体を用いる場合であっても、記録媒体自体の光沢度と記録媒体上に定着した画像の光沢度との差を所望の許容範囲に抑えることが可能となり、これにより記録媒体上の画像品質を向上させることができる。
(検証実験1)
次に、光沢度の高い記録媒体を用いる場合において、非接触加熱手段60および加圧加熱手段50を用いて記録媒体上に形成された画像の光沢度が所望の許容範囲に収まるか否かを検証した検証実験1について説明する。
本検証実験においては、トナー粒子の体積平均粒子径を2μmとし、現像装置10で使用する際の液体現像剤の重量に対するトナー粒子の重量の割合を30重量%とした。このとき、非接触加熱手段60によって加熱された後における記録媒体90上のトナー像のトナー濃度Tc1については、54重量%または72重量%となるように調整した。
また、記録媒体90としてはコート紙90Aを用い、トナーとしてはトナーAを用い、キャリア液としてはIP2028(出光興産株式会社製)を用い、トナー像を加圧する際の圧力Pは500KPaとした。ここで、トナーAとは、ポリエステル樹脂で平均粒子径が2μmである。
上記条件のもと、加圧加熱後(定着後)の記録媒体温度T2が125℃、140℃、155℃となるように調整した場合において、加圧加熱後(定着後)の画像の光沢度を測定した。
図6は、検証実験1の結果を示す図であり、具体的には、光沢度の高い記録媒体を用いて定着完了前のトナー濃度を変化させた場合における定着後の画像の光沢度と定着後の記録媒体温度との関係を示す図である。
図6に示すように、非接触加熱後(定着完了前)のトナー濃度Tc1が54重量%、72重量%のいずれの場合においても、記録媒体自体の光沢度と記録媒体上に定着した画像の光沢度との差を所望の許容範囲に収めることができることが確認された。
また、トナー濃度Tc1が72重量%である場合は、トナー濃度Tc1が54重量%である場合と比較して、全体的に定着後の画像の光沢度が高くなった。したがって、コート紙90A上に形成される画像93Aの光沢度は、非接触加熱手段60の通過後でありかつ加圧加熱手段50の通過前におけるコート紙90A上のトナー像92A中のトナー濃度Tc1[重量%]に影響され、トナー濃度Tc1[重量%]を適正に制御することにより記録媒体自体の光沢度と記録媒体上に定着した画像の光沢度との差を所望の許容範囲に収めることができることがわかった。
(検証実験2)
次に、光沢度の低い記録媒体を用いる場合において、非接触加熱手段60のみを用いて記録媒体上に形成された画像の光沢度が所望の許容範囲に収まるか否かを検証した検証実験2について説明する。
具体的には、非接触加熱手段60のみにより低光沢の記録媒体上にトナー像を定着させた場合に形成された画像の光沢度と、非接触加熱手段60および加圧加熱手段50の両方により低光沢の記録媒体上にトナー像を定着させた場合に形成された画像の光沢度とを比較した。
本検証実験においては、トナー粒子の体積平均粒子径を2μmとし、現像装置10で使用する際の液体現像剤の重量に対するトナー粒子の重量の割合を30重量%とした。このとき、記録媒体90としては上質紙90Bを用い、トナーとしては上述のトナーAを用い、キャリア液としてはIP2028を用い、トナー像を加圧する際の圧力は500KPaとした。
上記条件のもと、非接触加熱後または加圧加熱後の記録媒体温度が100℃、110℃、120℃、130℃となるように調整した場合において、定着後の画像の光沢度を測定した。
図7は、検証実験2の結果を示す図であり、具体的には、光沢度の低い記録媒体にトナー像を定着させる際に、非接触加熱手段60のみを用いた場合と非接触加熱手段60と加圧加熱手段50との両方を用いた場合とにおける定着後の画像の光沢度と定着後の記録媒体温度との関係を示す図である。
図7に示すように、光沢度の低い記録媒体を用いる場合において、非接触加熱手段60のみで加熱することにより、記録媒体自体の光沢度と記録媒体上に定着した画像の光沢度との差を所望の許容範囲に収めることができることが確認された。
具体的には、非接触加熱手段60によりトナー像を定着させた場合は、全体的に定着後の画像の光沢度が低くなり、違和感が生じない所望の光沢度の範囲(光沢度が15以下)に定着後の画像の光沢度が収まる結果となった。また、所望の定着強度を確保可能な温度にまでトナー粒子を溶融させた場合(定着後の記録媒体温度が120℃以上)であっても、トナー像表面が平坦化されることがないため、記録媒体自体の光沢度(平滑性)と記録媒体90上に最終的に形成された画像の光沢度との差は小さく、当該光沢度の差を所望の許容範囲内に収めることができた。
一方、非接触加熱手段60および加圧加熱手段50によりトナー像を定着させた場合は、全体的に定着後の画像の光沢度が高くなり、定着後の記録媒体温度が100℃近傍以上で違和感が生じない所望の光沢度の範囲(光沢度が15以下)から定着後の画像の光沢度が逸脱する結果となった。特に、所望の定着強度を確保可能な温度にまでトナー粒子を溶融させた場合(定着後の記録媒体温度が120℃以上)にあっては、画像の光沢度が高くなりすぎ、記録媒体自体の光沢度(平滑性)と記録媒体上に最終的に形成された画像の光沢度との差が大きくなった。
以上において説明した検証実験1および2の結果に基づけは、本実施の形態における画像形成装置1とすることにより、記録媒体の光沢度の違いに対応して、上述した式(1)ないし(3)を満たしつつ加圧加熱手段50による定着動作の有無を切り替えることで、記録媒体自体の光沢度と記録媒体上に定着した画像の光沢度との差を所望の許容範囲に抑えることができ、これにより記録媒体上の画像品質を向上させることができることが実験的にも確認されたと言える。
上述の検証実験1のように、高光沢の記録媒体を用いる場合においては、加圧加熱後(定着後)の画像の光沢度は、非接触加熱後(定着完了前)のトナー像のトナー濃度Tc1[重量%]に大きく影響される。一方、一般的に光沢度に対するトナー濃度Tc1[重量%]は、定着後の記録媒体温度T2[℃]、トナー像を加圧する際の圧力(定着圧力)P[KPa]、キャリア液の揮発性、トナー溶融温度Tm[℃]、トナー溶融温度η[Pa・S]に影響される。
そこで、トナー濃度Tc1[重量%]と上述した各パラメータとの関係を導くべく、高光沢の記録媒体を用いて、以下の実験1から実験5をさらに行なった。なお、各実験において、トナー粒子の体積平均粒子径を2μmとし、現像装置10で使用する際の液体現像剤の重量に対するトナー粒子の重量の割合を30重量%とした。
実験1は、定着後記録媒体温度と定着完了前トナー濃度Tcをパラメータとして光沢度を評価する事で、定着後記録媒体温度に対する光沢度確保のための定着完了前トナー濃度Tc下限値を導き出す。
実験2は、実験1とは定着圧力を変更し、光沢度確保のための定着完了前トナー濃度Tc下限値に対する定着圧力の関係性を算出する。
実験3は、実験1、2にて使用のキャリア液とは揮発性が異なるキャリア液を使用し、光沢度確保のための定着完了前トナー濃度Tc下限値に対するキャリア液揮発性の関係性を算出する。
実験4は、実験1、2にて使用のトナーとは溶融温度の異なるトナーを使用し、光沢度確保のための定着完了前トナー濃度Tc下限値に対するトナー溶融温度の関係性を算出する。
実験5は、実験1、2にて使用のトナーとは溶融粘度の異なるトナーを使用し、光沢度確保のための定着完了前トナー濃度Tc下限値に対するトナー溶融粘度の関係性を算出する。以下、詳細に説明する。
(実験1)
まず、非接触加熱後(定着完了前)のトナー像のトナー濃度Tc1[重量%]と定着後の記録媒体温度T2[℃]との関係を導くために、実験1を行なった。図8は、実験1の結果を示す図であり、図9は、実験1の条件および結果を示す図である。
図9に示すように、実験1における画像の定着条件は、記録媒体90としてコート紙90Aを用い、トナーとしては上述のトナーAを用い、キャリア液としてはIP2028を用い、トナー像を加圧する際の圧力(定着圧力)Pは400KPaとした。また、定着後の記録媒体温度T2が125℃または140℃となるように調整した。
上記定着条件のもと、図9に示すように定着完了前のトナー濃度Tc1[重量%]が条件1から条件8に示す値となるように画像形成を行ない、これら条件1から条件8における定着後の画像の光沢度を測定した。
この結果、条件1から条件8において図9に示すような光沢度が得られ、特に、図8に示すように、条件4および条件8において記録媒体自体の光沢度と記録媒体上に定着した画像の光沢度との差を所望の許容範囲に抑えることができた。
また、実験1の結果から、定着完了前のトナー濃度Tc1[重量%]と画像の光沢度との関係は、定着後の記録媒体温度T2が等しい場合に図8に示すような直線関係にあることがわかった。図8より、記録媒体自体の光沢度と記録媒体上に定着した画像の光沢度との差を所望の許容範囲に抑えることできるトナー濃度Tc1[重量%]の下限(画像の光沢度が60となる場合のトナー濃度の値)Tc(min)(P=400)[重量%]を算出したところ、定着後の記録媒体温度T2が125℃の場合は、98.0重量%であり、定着後の記録媒体温度が140℃の場合は、81.0重量%であった。
図10は、図8に示す実験1の結果から考察される関係式を表わすグラフである。上記の結果により、図10に示すように、Tc(min)(y)[重量%]と定着後の記録媒体温度T2(x)[℃]との関係は、以下の式(A)で近似されることがわかった。
y=−1.133x+239.667 ・・・式(A)
(実験2)
次に、非接触加熱後(定着完了前)のトナー像のトナー濃度Tc1[重量%]とトナー像を加圧する際の圧力(定着圧力)P[KPa]との関係を導くために、実験2を行なった。図11は、実験2の結果を示す図であり、図12は、実験2の条件および結果を示す図である。
図12に示すように、実験2における画像の定着条件は、実験1と比較した場合にトナー像を加圧する際の圧力Pが相違する。具体的には、記録媒体90としてコート紙90Aを用い、トナーとしては上述のトナーAを用い、キャリア液としてはIP2028を用い、トナー像を加圧する際の圧力(定着圧力)Pは500KPaとした。また、定着後の記録媒体温度T2が125℃または140℃となるように調整した。
上記定着条件のもと、図12に示すように定着完了前のトナー濃度Tc[重量%]が条件9から条件17に示す値となるように画像形成を行い、これら条件9から条件17における定着後の画像の光沢度を測定した。
この結果、比較例9から条件17において図12に示すような光沢度が得られ、特に、図11に示すように、条件11ないし条件13および条件17において記録媒体自体の光沢度と記録媒体上に定着した画像の光沢度との差を所望の許容範囲に抑えることができた。
また、実験2の結果から定着完了前のトナー濃度Tc1[重量%]と画像の光沢度の関係は、定着後の記録媒体温度T2が等しい場合に図11に示すような直線関係にあることがわかった。図11より、記録媒体自体の光沢度と記録媒体上に定着した画像の光沢度との差を所望の許容範囲に抑えることできるトナー濃度Tc1[重量%]の下限(画像の光沢度が60となる場合のトナー濃度の値)Tc(min)(P=500)[重量%]を算出したところ、定着後の記録媒体温度T2が125℃の場合は、81.0重量%であり、定着後の記録媒体温度T2が140℃の場合は、61.0重量%であった。
図13は、図8に示す実験1の結果および図11に示す実験2の結果から考察される関係式を表わすグラフである。実験1と実験2の結果から、定着後の記録媒体温度T2が125℃または140℃となる場合において、記録媒体自体と画像との光沢度との差を所望の許容範囲内に収めることができる定着完了前のトナー濃度の下限値Tc(min)[重量%]とトナー像を加圧する際の圧力P[KPa]との直線関係が図13に示すような関係にあるとの結果を得た。
図13に示すように、定着後の記録媒体温度T2が125℃となる場合においては、記録媒体自体と画像の光沢度の差を所望の許容範囲内に収めることができる定着完了前のトナー濃度の下限値Tc(min)(T2=125)(y)[重量%]とトナー像を加圧する際の圧力P(x)[KPa]との関係は、以下の式(B)の近似式で表わされることがわかった。
y=−0.17x+166.0 ・・・式(B)
また、定着後の記録媒体温度T2が140℃となる場合においては、記録媒体自体と画像の光沢度の差を所望の許容範囲内に収めることができる定着完了前のトナー濃度の下限値Tc(min)(T2=140)(y)[重量%]とトナー像を加圧する際の圧力P(x)[KPa]との関係は、以下の式(C)の近似式で表わされることがわかった。
y=−0.200x+161.0 ・・・式(C)
換言すると、定着後の記録媒体温度T2が125℃または140℃の場合においてトナー像を加圧する際の圧力Pを任意の値とする場合におけるTc(min)の値は、トナー像を加圧する際の圧力Pが400KPa時のTc(min)(P=400)の値を基準とした場合に、下記の式(D)で表わされることがわかった。
Tc(min)=Tc(min)(P=400)+(式(B)または式(C)に示す傾き)×(P−400) ・・・式(D)
図14は、図13に示す関係式における傾きと定着後の記録媒体温度との関係を示す図である。図13に示す結果から定着後の記録媒体の任意の温度における上述の近似式に示される傾き(Tc(min)傾き)(y)と定着後の記録媒体温度T2(x)との関係は、図14に示すような直線関係となり、以下の式(E)で近似されることがわかった。
y=−0.002x+0.08 ・・・式(E)
したがって、上述の式(D)における(式(B)または式(C)に示す傾き)を式(E)に置換することで、定着後の記録媒体温度T2と定着圧力Pとを加味して、記録媒体自体と画像の光沢度の差を所望の許容範囲内に収めることができる定着完了前のトナー濃度の下限値Tc(min)を算出することが可能となる。
これらの結果、定着完了前のトナー濃度Tc1が以下の式(F)を充足することによって、記録媒体自体の光沢度と記録媒体上に定着した画像の光沢度との差を所望の許容範囲に抑えることでき、これにより記録媒体上の画像品質を向上させることができる。
Tc1≧−1.133×T2+239.667+(−0.002×T2+0.08)×(P−400) ・・・式(F)
(実験3)
次に、非接触加熱後(定着完了前)のトナー像のトナー濃度Tc1[重量%]とキャリア液揮発性との関係を導くために、実験3を行なった。ここで、キャリア液揮発性は、キャリア液を構成する分子の炭素数の中心値Cに影響される。図15は、実験3の結果を示す図であり、図16は、実験3の条件および結果を示す図である。
図16に示すように、実験3における画像の定着条件は、実験1と比較した場合に定着完了前のトナー濃度Tc1が相違し、主として、キャリア液の種類が相違する。記録媒体90としてコート紙90Aを用い、トナーとしては上述のトナーAを用い、キャリア液としてはIsopar−L(エクソンモービル社製)を用い、トナー像を加圧する際の圧力Pは400KPaとした。また、定着後の記録媒体温度T2が125℃または140℃となるように調整した。また、キャリア液IP2028とキャリア液Isopar−Lとは、キャリア液を構成する分子の炭素数の中心値Cが相違し、キャリア液IP2028を構成する分子の炭素数の中心値Cは16であり、キャリア液Isopar−Lを構成する分子の炭素数の中心値Cは12である。
上記定着条件のもと、図16に示すように定着完了前のトナー濃度Tc1[重量%]が条件18から条件26に示す値となるように画像形成を行い、これら条件18から条件26における定着後の画像の光沢度を測定した。
この結果、条件18から条件26において図16に示すような光沢度が得られ、特に、図15に示すように、条件20から条件22および条件26において記録媒体自体の光沢度と記録媒体上に定着した画像の光沢度との差を所望の許容範囲に抑えることができた。
また、実験3の結果から、定着完了前のトナー濃度Tc1[重量%]と画像の光沢度との関係は、定着後の記録媒体温度T2が等しい場合に図15に示すような直線関係にあることがわかった。図15より、記録媒体自体の光沢度と記録媒体上に定着した画像の光沢度との差を所望の許容範囲に抑えることできるトナー濃度Tc[重量%]の下限(画像の光沢度が60となる場合のトナー濃度の値)Tc(min)(C=12)を算出したところ、定着後の記録媒体温度T2が125℃の場合は、85.0重量%であり、定着後の記録媒体温度T2が140℃の場合は、65.0重量%であった。
図17は、図8に示す実験1の結果および図15に示す実験3の結果から考察される関係式を表わすグラフである。実験1と実験3の結果から、定着後の記録媒体温度が125℃または140℃となる場合において、記録媒体自体と画像との光沢度の差を所望の許容範囲内に収めることができる定着完了前のトナー濃度の下限値Tc(min)とキャリア液を構成する分子の炭素数の中心値Cとの直線関係が図17に示すような関係にあるとの結果を得た。
図17に示すように、定着後の記録媒体温度T2が125℃となる場合においては、記録媒体自体と画像との光沢度の差を所望の許容範囲内に収めることができる定着完了前のトナー濃度の下限値Tc(min)(T2=125)(y)[重量%]とキャリア液を構成する分子の炭素数の中心値C(x)との関係は、以下の式(G)の近似式で表わされることがわかった。
y=3.25x+46.0 ・・・式(G)
また、定着後の記録媒体温度T2が140℃となる場合においては、記録媒体自体と画像との光沢度の差を所望の許容範囲内に収めることができる定着完了前のトナー濃度の下限値Tc(min)(T2=140)(y)[重量%]とキャリア液を構成する分子の炭素数の中心値C(x)との関係は以下の式(H)の近似式で表わされることがわかった。
y=4.00x+17.0 ・・・式(H)
換言すると、定着後の記録媒体温度T2が125℃または140℃の場合においてキャリア液を構成する分子の炭素数の中心値Cを任意の値とする場合におけるTc(min)の値は、キャリア液を構成する分子の炭素数の中心値Cが16である時のTc(min)(C=16)の値を基準とした場合に、下記の式(I)で表わされることがわかった。
Tc(min)=Tc(min)(C=16)+(式(G)または式(H)に示す傾き)×(C−16) 式・・・(I)
図18は、図17に示す関係式における傾きと定着後の記録媒体温度との関係を示す図である。図17に示す結果から定着後の記録媒体の任意の温度における上述の近似式に示される傾き(Tc(min)傾き)(y)と定着後の記録媒体温度T2(x)との関係は、図18に示すような直線関係となり、以下の式(J)で近似されることがわかった。
y=0.05x−3 ・・・式(J)
したがって、上述の式(I)における(式(G)または式(H)に示す傾き)を式(J)に置換することで、定着後の記録媒体温度T2とキャリア液を構成する分子の炭素数の中心値Cを加味して、記録媒体自体と画像との光沢度の差を所望の許容範囲内に収めることができる定着完了前のトナー濃度の下限値Tc(min)を算出することが可能となる。
さらには、実験2に基づく定着圧力Pと定着完了前のトナー濃度Tc1との関係を考慮し、定着完了前のトナー濃度Tc1が以下の式(K)を充足することで、記録媒体自体の光沢度と記録媒体上に定着した画像の光沢度との差を所望の許容範囲に抑えることでき、これにより記録媒体上の画像品質を向上させることができる。
Tc1≧−1.133×T2+239.667+(−0.002×T2+0.08)×(P−400)+(0.05×T2−3)×(C−16) ・・・式(K)
(実験4)
次に、非接触加熱後(定着完了前)のトナー像のトナー濃度Tc1[重量%]とトナーの溶融温度Tm[℃]との関係を導くために、実験4を行なった。図19は、実験4の結果を示す図であり、図20は、実験4の条件および結果を示す図である。
図20に示すように、実験4における画像の定着条件は、実験1と比較した場合に定着完了前のトナー濃度Tc1が相違し、主として、トナーの種類が相違する。記録媒体90としてコート紙90Aを用い、トナーとしてはトナーBを用い、キャリア液としてはIP2028を用い、トナー像を加圧する際の圧力Pは400KPaとした。また、定着後の記録媒体温度が125℃または140℃となるように調整した。ここで、トナーBとは、ポリエステル樹脂で平均粒子径が2μmである。
また、トナーAとトナーBとは、トナーの溶融性が相違し、トナーの溶融粘度はほぼ同等である。トナーの溶融温度Tm[℃]は、1/2法を用いてフローテスター(島津製作所、CFT−500)で測定し、この場合において、トナーAの溶融温度Tm(A)は143℃であり、トナーBの溶融温度Tm(B)は137℃である。
上記定着条件のもと、図20に示すような定着完了前のトナー濃度Tc1[重量%]が条件27から条件35に示す値となるように画像形成を行ない、これら条件27から条件35における定着後の画像の光沢度を測定した。
この結果、条件27から条件35において図20に示すような光沢度が得られ、特に、図19に示すように、条件29から条件31および条件35において記録媒体自体の光沢度と記録媒体上に定着した画像の光沢度との差を所望の許容範囲に抑えることができた。
また、実験4の結果から、定着完了前のトナー濃度Tc1[重量%]と画像の光沢度との関係は、定着後の記録媒体温度T2が等しい場合に図19に示すような直線関係にあるとの結果を得た。図19より、記録媒体自体の光沢度と記録媒体上に定着した画像の光沢度との差を所望の許容範囲に抑えることできるトナー濃度Tc[重量%]の下限(画像の光沢度が60となる場合のトナー濃度の値)Tc(min)(B)を算出したところ、定着後の記録媒体温度T2が125℃の場合は、83重量%であり、定着後の記録媒体温度T2が140℃の場合は、66.5重量%であることがわかった。
図21は、図8に示す実験1の結果および図19に示す実験4の結果から考察される関係式を表わすグラフである。実験1と実験4の結果から、定着後の記録媒体温度T2が125℃または140℃となる場合において、記録媒体自体と画像との光沢度の差を所望の許容範囲内に収めることができる定着完了前のトナー濃度の下限値Tc(min)と1/2法を用いてフローテスターで測定した場合におけるトナーの溶融温度Tm[℃]との直線関係が図21に示すような関係にあるとの結果を得た。
図21に示すように、定着後の記録媒体温度T2が125℃となる場合においては、記録媒体自体と画像との光沢度の差を所望の許容範囲内に収めることができる定着完了前のトナー濃度の下限値Tc(min)(T2=125)(y)[重量%]とトナーの溶融温度Tm(x)[℃]との関係は、以下の式(L)の近似式で表わされることがわかった。
y=2.500x−259.500 ・・・式(L)
また、定着後の記録媒体温度T2が140℃となる場合においては、記録媒体自体と画像の光沢度の差を所望の許容範囲内に収めることができる定着完了前のトナー濃度の下限値Tc(min)(T2=140)(y)[重量%]とトナーの溶融温度Tm(x)[℃]との関係は、以下の式(M)の近似式で表わされることがわかった。
y=2.583x−288.417 ・・・式(M)
換言すると、定着後の記録媒体温度T2が125℃または140℃の場合においてトナーの溶融温度Tm[℃]を任意の値とする場合におけるTc(min)の値は、トナーの溶融温度Tm[℃]が143℃である時のTc(min)(Tm=143)の値を基準とした場合に、下記の式(N)で表わされることがわかった。
Tc(min)=Tc(min)(Tm=143)+(式(L)または式(M)に示す傾き)×(Tm−143) ・・・式(N)
図22は、図21に示す関係式における傾きと定着後の記録媒体温度との関係を示す図である。図21に示す結果から定着後の記録媒体の任意の温度における上述の近似式に示される傾き(Tc(min))(y)と定着後の記録媒体温度T2(x)との関係は、図22に示すような直線関係となり、以下の式(O)で近似されることがわかった。
y=0.0055x+1.8083 ・・・式(O)
したがって、上述の式(N)における(式(L)または式(M)に示す傾き)を式(O)に置換することで、定着後の記録媒体温度T2と1/2法を用いてフローテスターで測定した場合におけるトナーの溶融温度Tm[℃]とを加味して、記録媒体自体と画像との光沢度の差を所望の許容範囲内に収めることができる定着完了前のトナー濃度の下限値Tc(min)を算出することが可能となる。
さらには、実験1の考察結果、実験2に基づく定着圧力Pと定着完了前のトナー濃度Tc1との関係および実験3に基づくキャリア液を構成する分子の炭素数の中心値Cと定着完了前のトナー濃度Tc1との関係を考慮した結果、定着完了前のトナー濃度Tc1が以下の式(P)を充足することによって、記録媒体自体の光沢度と記録媒体上に定着した画像の光沢度との差を所望の許容範囲に抑えることでき、これにより記録媒体上の画像品質を向上させることができる。
Tc1≧−1.133×T2+239.667+(−0.002×T2+0.08)×(P−400)+(0.05×T2−3)×(C−16)+(0.0055×T2+1.8083)×(Tm−143) ・・・式(P)
(実験5)
次に、非接触加熱後(定着完了前)のトナー像のトナー濃度Tc1[重量%]とトナー溶融温度η[Pa・S]との関係を導くために、実験5を行なった。図23は、実験5の結果を示す図である。図24は、実験5の条件および結果を示す図である。
図24に示すように、実験5における画像の定着条件は、実験1と比較した場合に定着完了前のトナー濃度Tc1が相違し、主として、トナーの種類が相違する。記録媒体90としてコート紙90Aを用い、トナーとしてはトナーCを用い、キャリア液としてはIP2028を用い、トナー像を加圧する際の圧力Pは500KPaとした。また、定着後の記録媒体温度が125℃または140℃となるように調整した。ここで、トナーCとは、ポリエステル樹脂で平均粒子径が2μmである。
また、トナーAとトナーCとは、トナーの溶融性およびトナーの溶融粘度が相違する。トナーの溶融温度Tm[℃]およびトナーの溶融粘度η[Pa・S]は、1/2法を用いてフローテスター(島津製作所、CFT−500)で測定した。この場合において、トナーAの溶融温度Tm(A)は143℃であり、トナーAの溶融粘度η(A)は200Pa・Sであり、トナーCの溶融温度Tm(C)は150℃であり、トナーCの溶融粘度η(B)は、300Pa・Sである。
上記定着条件のもと、図24に示すように定着完了前のトナー濃度Tc1[重量%]が条件36から条件43に示す値となるように画像形成を行ない、これら条件36から条件43における定着後の画像の光沢度を上述で規定した所定の測定方法を用いて測定した。
この結果、条件36から条件43において図24に示すような光沢度が得られ、特に、図23に示すように、条件39および条件43において記録媒体自体の光沢度と記録媒体上に定着した画像の光沢度との差を所望の許容範囲に抑えることができた。
また、実験5の結果から、定着完了前のトナー濃度Tc1[重量%]と画像の光沢度との関係は、定着後の記録媒体温度T2が等しい場合に、図23に示すような直線関係にあるとの結果を得た。
図23より、記録媒体自体の光沢度と記録媒体上に定着した画像の光沢度との差を所望の許容範囲に抑えることできるトナー濃度Tc[重量%]の下限(画像の光沢度が60となる場合のトナー濃度の値)Tc(min)を算出したところ、定着後の記録媒体温度T2が125℃の場合は、100.0重量%であり、定着後の記録媒体温度T2が140℃の場合は、80.8重量%であることがわかった。
ここで、トナーCの溶融温度がトナーAの溶融温度と異なることから、上述のごとく溶融温度Tmの関係を加味して、下記の式(Oa)を用いて、記録媒体自体の光沢度と記録媒体上に定着した画像の光沢度との差を所望の許容範囲に抑えることできるトナー濃度Tc1の下限(画像の光沢度が60となる場合のトナー濃度の値)Tc(min)の補正を行なった。
(0.0055×T2+1.8083)×(Tm−143) ・・・式(Oa)
この結果、定着圧力Pが500KPa、トナー溶融粘度ηが300Pa・Sとなる場合において、Tc(min)の値は、定着後の記録媒体温度T2が125℃の場合は、式(Oa)を差し引いた補正値は82.5重量%(=100.0−17.47)になり、定着後の記録媒体温度T2が140℃の場合は、同補正値は62.8重量%(=80.8−18.05)になった。
図25は、図11に示す実験2の結果および図23に示す実験5の式(Oa)を用いた補正後の結果から考察される関係式を表わすグラフである。実験2の結果および実験5の補正後の結果から、定着後の記録媒体温度T2が125℃または140℃となる場合において、記録媒体自体と画像の光沢度の差を所望の許容範囲内に収めることができる定着完了前のトナー濃度の下限値Tc(min)と1/2法を用いてフローテスターで測定した場合におけるトナーの溶融粘度η[Pa・S]との関係が図25に示すような直線関係にあるとの結果を得た。
図25に示すように、定着後の記録媒体温度T2が125℃となる場合においては、記録媒体自体と画像との光沢度の差を所望の許容範囲内に収めることができる定着完了前のトナー濃度の下限値Tc(min)(T2=125)(y)[重量%]とトナーの溶融粘度η(x)[Pa・S]との関係は、以下の式(Q)の近似式で表わされることがわかった。
y=0.015x+77.941 ・・・式(Q)
また、定着後の記録媒体温度T2が140℃となる場合においては、記録媒体自体と画像の光沢度の差を所望の許容範囲内に収めることができる定着完了前のトナー濃度の下限値Tc(min)(T2=140)(y)[重量%]とトナーの溶融粘度η(x)[Pa・S]との関係は、以下の式(R)の近似式で表わされることがわかった。
y=0.018x+57.496 ・・・式(R)
換言すると、定着後の記録媒体の温度T2が125℃または140℃の場合においてトナーの溶融粘度η[Pa・S]を任意の値とする場合におけるTc(min)の値は、トナーの溶融粘度η[Pa・S]が200Pa・Sである時のTc(min)(η=200)の値を基準とした場合に、下記の式(S)で表わされることがわかった。
Tc(min)=Tc(min)(η=200)+(式(Q)または式(R)に示す傾き)×(η−200) ・・・式(S)
図26は、図25に示す関係式における傾きと定着後の記録媒体温度との関係を示す図である。図25に示す結果から定着後の記録媒体の任意の温度における上述の近似式に示される傾き(Tc(min))(y)と定着後の記録媒体温度T2(x)との関係は、図26に示すような直線関係となり、以下の式(T)で近似されることがわかった。
y=0.0002x−0.01 ・・・式(T)
したがって、上述の式(S)における(式(Q)または式(R)に示す傾き)を式(T)に置換することで、定着後の記録媒体温度T2と1/2法を用いてフローテスターで測定した場合におけるトナーの溶融粘度η[Pa・S]とを加味して、記録媒体自体と画像の光沢度の差を所望の許容範囲内に収めることができる定着完了前のトナー濃度の下限値Tc(min)を算出することが可能となる。
さらには、実験1の考察結果、実験2に基づく定着圧力Pと定着完了前のトナー濃度Tc1との関係、実験3に基づくキャリア液を構成する分子の炭素数の中心値Cと定着完了前のトナー濃度Tc1との関係および実験4に基づくトナーの溶融温度Tmとトナー濃度Tc1との関係を考慮した結果、定着完了前のトナー濃度Tc1が下記の式(4)を充足することによって、記録媒体自体の光沢度と記録媒体上に定着した画像の光沢度との差を所望の許容範囲に抑えることでき、これにより記録媒体上の画像品質を向上させることができる。
Tc1≧−1.133×T2+239.667+(−0.002×T2+0.08)×(P−400)+(0.05×T2−3)×(C−16)+(0.0055×T2+1.8083)×(Tm−143)+(0.0002×T2−0.01)×(ηー200) ・・・式(4)
したがって、本実施の形態における画像形成装置1にあっては、記録媒体の光沢度が高光沢である場合において、上記構成を具備するとともに、上記式(1)ないし(3)に加え上記式(4)を充足しつつ非接触加熱手段60および加圧加熱手段50を用いて記録媒体上にトナー像を定着させることによって、より確実に記録媒体自体の光沢度と記録媒体上に定着した画像の光沢度との差を所望の許容範囲に抑えることでき、これにより記録媒体上の画像品質をさらに向上させることができる。
また、本実施の形態における画像形成装置1における画像形成方法にあっては、上記構成を具備するとともに、上記式(1)ないし(3)に加え上記式(4)を充足しつつ非接触加熱手段60および加圧加熱手段50を制御することにより、より確実に記録媒体自体の光沢度と記録媒体上に定着した画像の光沢度との差を所望の許容範囲に抑えることでき、これにより記録媒体上の画像品質をさらに向上させることができる。
なお、本発明の実施の形態における定着後の記録媒体温度T2については、定着ローラー51および加圧ローラー52との間に形成される圧接ニップ部を記録媒体90が通過する際の定着ニップ時間、定着時における定着ローラー51および加圧ローラー52の温度、記録媒体の種類(厚さ)、環境温度等によって決定されるため、予め実験等により求められたこれらパラメータを制御することで定着後において所定の記録媒体温度T2を得ることができる。
また、本発明の実施の形態における定着完了前のトナー濃度Tc1は、非接触加熱手段60における非接触加熱ヒーター61の設定温度、非接触加熱ヒーター61の加熱時間、非接触加熱ヒーター61と記録媒体の距離、記録媒体の種類(厚さ)、環境温度等によって決定されるため、予め実験等により求められたこれらパラメータを制御することで定着完了前における所定のトナー濃度Tc1を得ることができる。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。