複写機、プリンタ、ファクシミリ、或いはこれらを機能的に組み合わせた複合機等の画像形成装置においては、用紙等の記録材上に担持されたトナー像を定着させる定着装置を有している。一般に、定着装置は、ヒータ等の加熱源からの輻射熱で加熱される定着部材と、その定着部材に当接することにより定着ニップ部を形成する加圧部材と、を有する。
電子写真方式を利用した画像形成装置の画像形成プロセスは、感光体ドラム等の像担持体の表面に静電潜像を形成し、像担持体上の静電潜像を現像剤であるトナー等によって現像して可視像化する。さらに、現像されたトナー像は、転写装置により記録材に転写してトナー像を担持させ、定着ニップ部において定着部材と加圧部材との加熱・加圧によりトナーを加熱・溶融することによって記録材上に定着する。
定着部材には、加圧部材としての対向ローラ又は対向ベルト若しくはこれらの組み合わせにより構成した定着回転体を対向して配置しており、記録紙を挟みこみ、熱及び圧力を加え、上記トナー像を記録紙上に定着する。
このような定着装置として、フィルム加熱方式を採用したものがある。具体的には、加熱源としてのセラミックヒータと加圧部材としての加圧ローラとの間に耐熱性フィルムを挟ませて定着ニップ部を形成し、この定着ニップ部の耐熱性フィルムと加圧ローラとの間に画像定着すべき未定着トナー画像を担持した記録材を導入し、耐熱性フィルムと一緒にニップ搬送することで、定着ニップ部においてセラミックヒータの熱が耐熱性フィルムを介して記録材に与えられるとともに、加圧ローラの加圧力にて未定着トナー画像を記録材に定着させている。
このような耐熱性フィルムを用いた定着装置では、セラミックヒータ及び耐熱性フィルムとして低熱容量の部材を用いてオンデマンドタイプの装置を構成することができる。この際、セラミックヒータは、画像形成装置の画像形成実行時のみ通電して所定の定着温度に発熱させた状態にすればよい。これにより、画像形成装置の電源オンから画像形成実行可能状態までの待ち時間が短く、クイックスタート性を確保することができるばかりでなく、待機時の消費電力も小さくすることができる等の省電力化に利点がある。
しかしながら、このような定着装置では、耐熱性フィルムの耐久性を確保することが困難であるうえ、定着温度を安定して確保することが困難であるといった問題が生じていた。
すなわち、熱源であるセラミックヒータと耐熱性フィルムの内面との摺動による耐磨耗性が不十分であり、長時間運転すると連続摩擦を繰り返す面が荒れて摩擦抵抗が増大し、耐熱性フィルムの走行が不安定、若しくは定着装置の駆動トルクが増大する等の現象が生じるという問題があった。
その結果、画像を形成する記録材のスリップが生じ画像ずれが発生する可能性があった。また、加圧ローラを回転させる駆動ギヤに加わる応力が増大してしまい、駆動ギヤの破損を引き起こすという、不具合が発生する。
また、定着装置として、加圧ベルト方式を採用したものもある。具体的には、表面が弾性変形する回転可能な加熱定着ローラと、この加熱定着ローラに接触したまま走行可能なエンドレスベルトと、このエンドレスベルトの内側に非回転状態で配置してエンドレスベルトを加熱定着ローラに圧接させ、エンドレスベルトと加熱定着ローラとの間に記録材が通過する定着ニップ部を形成するとともに、加熱定着ローラの表面を弾性変形させる加圧パッドとを有している。
このような定着方式によれば、定着ニップ部における記録材の接触面積を広げることで熱伝導効率を大幅に向上させ、エネルギー消費を抑制すると同時に小型化を実現することが可能となる。
しかしながら、フィルム加熱方式の定着装置では、エンドレスベルトを定着ニップ部で局所的に加熱しているため、エンドレスベルトが定着ニップ部の入口付近においてベルト温度が最も低くなるため、特に、高速回転を行うと定着不良が発生し易いという問題があった。
一方、エンドレスベルトの内面と加熱定着ローラとの摺動性の問題を改善するために加熱定着ローラの表層に低摩擦特性を有するシート状摺動材としてPTFEを含浸させたガラス繊維シート(例えば、PTFE含浸ガラスクロス)を用いることが考えられる。
しかしながら、このような加圧ベルト方式の定着装置では、加熱定着ローラの熱容量が大きく、定着温度に達するまでの昇温時間が長くなるため、ウォームアップに必要な時間が長いという新たな問題が発生する。
そこで、上述したこれらの問題を解決するために、図5に示すような定着装置が提案されている(特許文献1参照)。
図5に示した定着装置1は、無端ベルト2の内部にパイプ状の金属熱伝導体3を配置して、無端ベルト2の回動移動をガイド可能に固定するとともに、金属熱伝導体3の内部に配置した加熱源4により金属熱伝導体3を介して無端ベルト2を加熱する。
また、無端ベルト2を介して金属熱伝導体3に接してニップ部Nを形成する加圧ローラ5を配置し、この加圧ローラ5の回転に連れ回りするようにして無端ベルト2を周方向に回動移動させる。加圧ローラ5は、芯金である金属ローラ6の外周に弾性層7を設け、定着ニップ部Nの範囲を広く確保している。
このような構成により、定着装置1を構成する無端ベルト2の全体を温めることを可能とし、加熱待機時から定着温度に達して定着可能とする昇温時間を短縮することができ、かつ高速回転時の熱量不足をも解消することが可能となっている。
以下、添付の図面に基づき、本発明の実施の形態について説明する。なお、本発明の実施の形態を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材や構成部品等の構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。
まず、図1を参照して、本発明の実施の一形態に係る画像形成装置の全体構成及び動作について説明する。
図1に示す画像形成装置1は、電子写真方式のカラーレーザープリンタであり、その装置本体2の下部には引き出し方式のシート状の記録材Pを収納した給紙トレイ3を配置している。なお、記録材Pには、普通紙以外に、厚紙、はがき、封筒、薄紙、塗工紙(コート紙やアート紙等)、トレーシングペーパ、OHPシート等が含まれる。また、図示しないが、手差し給紙機構が設けてあってもよい。
給紙トレイ3の上方には、最上位の記録材Pを搬出する給紙コロ4を配置しており、この給紙コロ4から装置本体2の上面に形成した排紙トレイ5に至る上向きの搬送経路6を形成している。なお、搬送経路5は、装置本体2の内部に配置した複数のリブ等によって形成されているが、ここでは、その詳細な説明は省略する。
給紙コロ4から排紙トレイ5に至る搬送経路6には、給紙プロセス順に、レジストローラ7、二次転写部8、定着装置9、記録材Pを排紙トレイ5に排出する排紙ローラ10を配置している。
レジストローラ7は、搬送タイミングを計って記録材Pを二次転写部8へ搬送するタイミングローラとして機能する。
一方、給紙トレイ3と排紙トレイ5との間には、作像部11を配置している。作像部11は、下段に露光装置12、中段に作像ユニット13及び転写ユニット14、上段にボトル収容部15を配置している。
露光装置12は、図示しない光源、ポリゴンミラー12a、f−θレンズ12b、複数の反射ミラー12c等を有し、画像データに基づいてレーザー光Lを照射するようになっている。
作像ユニット13は、カラー画像の色分解成分に対応するイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の異なる色の現像剤を収容している4つの作像装置16Y,16M,16C,16Kを有する。なお、各作像装置16Y,16M,16C,16Kは、現像材の色が異なる以外は同様の構成となっている。したがって、以下の説明においては、各色の意味を示すY,M,C,Kの符号を省略し、1つの作像装置16として説明する。
具体的に、各作像装置16は、潜像担持体としてのドラム状の感光体17と、この感光体17の周囲に、作像プロセス順に、帯電装置18、露光装置12(レーザー光L)、現像装置19、クリーニング装置20、図示しない除電装置、等を有する。
帯電装置18は感光体17の表面を帯電し、現像装置19は感光体17の表面にトナーを供給し、クリーニング装置20は感光体17の表面をクリーニングする。
また、転写ユニット14は、中間転写体としての中間転写ベルト21と、一次転写手段としての4つの一次転写ローラ22と、二次転写部8の二次転写バックアップローラ23と、テンションローラ24と、ベルトクリーニング装置25を有する。
中間転写ベルト21は、無端状のベルトであり、二次転写バックアップローラ23とテンションローラ24とによって張架されている。ここでは、二次転写バックアップローラ23が回転駆動することによって、中間転写ベルト21は図の矢印で示す方向に周回走行(回転)するようになっている。
4つの一次転写ローラ22は、それぞれ、各感光体17との間で中間転写ベルト21を挟み込んで一次転写ニップを形成している。また、各一次転写ローラ22には、図示しない電源が接続されており、所定の直流電圧(DC)及び/又は交流電圧(AC)が各一次転写ローラ22に印加されるようになっている。
ベルトクリーニング装置25は、中間転写ベルト21に当接するように配設されたクリーニングブラシ25aと、先端が中間転写ベルト21にカウンタ方向に当接するクリーニングブレード25bとを有する。中間転写ベルト21に付着した紙粉や残トナー等はクリーニングブラシ25aとクリーニングブレード25bとで除去した後に、回収スパイラル25cによって図1の奥行き方向に移送され、ベルトクリーニング装置25から伸びた図示しない廃トナー移送ホース等によって廃棄される。
ボトル収容部15は、各色の現像材として補給用のトナーを収容する4つのトナーボトル15Y,15M,15C,15Kを着脱可能、すなわち、交換可能に配置している。なお、詳細には図示しないが、各トナーボトル15Y,15M,15C,15Kから、各現像装置19に補給用のトナーを補給するための補給路を設けている。
二次転写部8は、二次転写バックアップローラ23との間で中間転写ベルト21を挟み込んで記録材Pをニップ搬送する二次転写ニップ部を形成している。また、一次転写ローラ22と同様に、二次転写部8にも図示しない電源が接続されており、所定の直流電圧(DC)と交流電圧(AC)の少なくとも何れか一方が印加されるようになっている。
続いて、本実施形態に係るプリンタの基本的動作について説明する。作像動作が開始されると、各作像装置16Y,16M,16C,16Kにおける各感光体17が図示しない駆動装置によって図の時計回り方向に回転駆動され、各感光体17の表面が帯電装置18によって所定の極性に一様に帯電される。帯電された各感光体17の表面には、露光装置12からレーザー光Lがそれぞれ照射されて、各感光体17の表面に静電潜像が形成される。このとき、各感光体17に露光する画像情報は所望のフルカラー画像をイエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの色情報に分解した単色の画像情報である。このように各感光体17上に形成された静電潜像に、各現像装置19によってトナーが供給されることにより、静電潜像はトナー像として顕像化(可視像化)される。
また、作像動作が開始されると、二次転写バックアップローラ23が図の反時計回りに回転駆動し、中間転写ベルト21を図の矢印で示す方向に周回走行させる。また、各一次転写ローラ22に、トナーの帯電極性と逆極性の定電圧又は定電流制御された電圧が印加されることによって、各一次転写ローラ22と各感光体17との間の一次転写ニップにおいて転写電界が形成される。
その後、各感光体17の回転に伴い、感光体17上の各色のトナー像が一次転写ニップに達したときに、上記一次転写ニップにおいて形成された転写電界によって、各感光体17上のトナー像が中間転写ベルト21上に順次重ね合わせて転写される。かくして、中間転写ベルト21の表面にフルカラーのトナー像が担持される。また、中間転写ベルト21に転写しきれなかった各感光体17上のトナーは、クリーニング装置20によって除去される。そして、各感光体17の表面が図示しない除電装置によって除電され、表面電位が初期化される。
一方、装置本体2の下部では、給紙ローラ11が回転駆動を開始し、給紙トレイ3から記録材Pが搬送経路6に送り出される。搬送経路6に送り出された記録材Pは、レジストローラ12によって搬送が一旦停止される。
その後、所定のタイミングでレジストローラ12の回転駆動を開始し、中間転写ベルト21のトナー像が二次転写部8に達するタイミングに合わせて、記録材Pを二次転写部8へ搬送する。このとき、二次転写部8には、中間転写ベルト21上のトナー像のトナー帯電極性と逆極性の転写電圧が印加されており、これにより、二次転写部8に転写電界が形成されている。そして、この転写電界によって、中間転写ベルト21上のトナー像が記録材P上に一括して転写される。また、このとき記録材Pに転写しきれなかった中間転写ベルト21上の残留トナーは、ベルトクリーニング装置25によって除去され、除去されたトナーは図示しない廃トナー収容器へと搬送され回収される。
その後、記録材Pは定着装置9へと搬送され、定着装置9によって記録材P上のトナー像が当該記録材Pに定着される。そして、記録材Pは、排紙ローラ13によって装置外へ排出され、排紙トレイ14にストックされる。
以上の説明は、記録材上にフルカラー画像を形成するときの画像形成動作であるが、4つの作像装置16Y,16M,16C,16Kのいずれか1つを使用して単色画像を形成したり、2つ又は3つの作像部を使用して、2色又は3色の画像を形成したりすることも可能である。
図2及び図3は、本実施形態の定着装置9の断面図である。図2及び図3に示すように、定着装置9は、定着部材としての定着ベルト26と、定着ベルト26の外周面に当接する加圧部材としての加圧ローラ27と、を有する。定着ベルト26の内部には、ハロゲンヒータ28と、定着ベルト26の内周側から加圧ローラ27に当接して定着ニップ部Nを形成するニップ部形成部材29と、加圧ステー30と、反射部材31と、遮蔽部材32と、を有する。
定着ベルト26は、薄肉で可撓性を有する無端状のベルト部材(フィルムも含む)で構成されている。詳しくは、定着ベルト26は、ニッケルもしくはSUS等の金属材料又はポリイミド(PI)などの樹脂材料で形成された内周側の基材と、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)又はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などで形成された外周側の離型層によって構成されている。また、基材と離型層との間に、シリコーンゴム、発泡性シリコーンゴム、又はフッ素ゴム等のゴム材料で形成された弾性層を介在させてもよい。
また、弾性層が無い場合は、熱容量が小さくなり定着性が向上するが、未定着トナーを押しつぶして定着させるときに定着ベルト26の表面の微小な凹凸が画像に転写されて画像のベタ部に光沢ムラが生じる可能性がある。これを防止するには、厚さ80μm以上の弾性層を設けることが望ましい。厚さ80μm以上の弾性層を設けることで、弾性層の弾性変形により微小な凹凸を吸収することができるので、光沢ムラの発生を回避することができるようになる。
本実施形態では、定着ベルト26の低熱容量化を図るために、定着ベルト26を薄くかつ小径化している。具体的には、定着ベルト26を構成する基材、弾性層、離型層のそれぞれの厚さを、20〜50μm、80〜300μm、3〜50μmの範囲に設定し、全体としての厚さを1mm以下に設定している。また、定着ベルト26の直径は、20〜40mmに設定している。さらに低熱容量化を図るためには、望ましくは、定着ベルト26全体の厚さを0.2mm以下にするのがよく、さらに望ましくは、0.16mm以下の厚さとするのがよい。また、定着ベルト26の直径は、30mm以下とするのが望ましい。
加圧ローラ27は、芯金27aと、芯金27aの表面に設けられた発泡性シリコーンゴム、シリコーンゴム、又はフッ素ゴム等から成る弾性層27bと、弾性層27の表面に設けられたPFA又はPTFE等から成る離型層27cによって構成されている。加圧ローラ27は、後述する切り替え機構60によって定着ベルト26側へ加圧され、定着ベルト26を介してニップ部形成部材29に当接している。この加圧ローラ27と定着ベルト26とが圧接する箇所では、加圧ローラ27の弾性層27bが押しつぶされることで、所定の幅の定着ニップ部Nが形成されている。なお、定着ベルト26と加圧ローラ27は、互いに圧接する場合に限らず、加圧を行わず単に接触させるだけの構成とすることも可能である。
また、加圧ローラ27は、装置本体2に設けられた図示しない定着モータ等の駆動源によって回転駆動するように構成されている。加圧ローラ27が回転駆動すると、その駆動力が定着ニップ部Nで定着ベルト26に伝達され、定着ベルト26が従動回転するようになっている。
本実施形態では、加圧ローラ27を中空のローラとしているが、中実のローラであってもよい。また、中空の加圧ローラ27とした場合、その内部にハロゲンヒータ等の加熱源を配設してもよい。また、弾性層27bはソリッドゴムでもよいが、加圧ローラ27の内部に加熱源が無い場合は、スポンジゴムを用いてもよい。スポンジゴムの方が、断熱性が高まり定着ベルト26の熱が奪われにくくなるのでより望ましい。
ハロゲンヒータ28は、定着ベルト26の内周側で、かつ、定着ニップ部Nの記録材搬送方向の上流側に配設されている。ハロゲンヒータ28は、装置本体2に設けられた電源部により出力制御されて発熱するように構成されており、その出力制御は、図示しない温度センサによる定着ベルト26の表面温度の検知結果に基づいて行われる。このようなヒータ28の出力制御によって、定着ベルト26の定着温度を所望の温度に設定できるようになっている。なお、定着ベルト26の温度を検知する温度センサの代わりに、加圧ローラ27の温度を検知する温度センサを設け、その温度センサで検知した温度により、定着ベルト26の温度を予測するようにしてもよい。
本実施形態では、ハロゲンヒータ28は2本設けられているが、装置本体2で使用する記録材Pのサイズ等に応じて、ハロゲンヒータ28の本数を1本又は3本以上としてもよい。また、定着ベルト26を加熱する加熱源として、ハロゲンヒータ以外に、IH、抵抗発熱体、又はカーボンヒータ等を用いることも可能である。
ニップ部形成部材29は、ベースパッド部29aと、ベースパッド部29aの定着ベルト26と対向する面に設けられた低摩擦性の摺動シート部29bとを有する。ベースパッド部29aは、定着ベルト26の軸方向又は加圧ローラ27の軸方向に渡って長手状に配設されている。ベースパッド部29aが加圧ローラ27の加圧力を受けることで、定着ニップ部Nの形状が決まる。本実施形態では、定着ニップ部Nの形状が平坦状であるが、凹形状やその他の形状としてもよい。摺動シート部29bは、定着ベルト26が回転する際の摺動摩擦を低減するために設けられている。なお、ベースパッド部29a自体が低摩擦性の部材で形成されている場合は、摺動シート部29bを有しない構成としてもよい。
ベースパッド部29aは、耐熱温度200℃以上の耐熱性材料で構成されている。かかる構成により、トナー定着温度域で熱によるニップ部形成部材29の変形を防止し、安定した定着ニップ部Nの状態を確保して、出力画質の安定化を図っている。また、ベースパッド部29aは、強度確保のために相応の剛性が求められる。以上の条件を満たすベースパッド部29aの材料としては、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などの樹脂を用いることが可能である。この他、金属やセラミックでベースパッド部29aを形成することもできる。
また、ベースパッド部29aは、加圧ステー30によって固定支持されている。これにより、加圧ローラ27による圧力でニップ部形成部材29に撓みが生じるのを防止し、加圧ローラ27の軸方向に渡って均一なニップ幅が得られるようにしている。加圧ステー30は、ニップ部形成部材29の撓み防止機能を満足するために、ステンレスや鉄等の機械的強度が高い金属材料で形成することが望ましい。
反射部材31は、ハロゲンヒータ28と対向するように加圧ステー30に固定支持されている。この反射部材31によって、ハロゲンヒータ28からの輻射熱を定着ベルト26へ反射することで、熱が加圧ステー30等に伝達されるのを抑制し、定着ベルト26を効率良く加熱すると共に省エネルギー化を図っている。反射部材31の材料としては、アルミニウムやステンレス等が用いられる。特に、アルミニウム製の基材に輻射率の低い(反射率の高い)銀を蒸着したものを用いた場合、定着ベルト26の加熱効率を向上させることが可能である。
遮蔽部材32は、記録材Pが定着ベルト26に密着した状態でハロゲンヒータ28にまで移動し、記録材Pに転写されたトナー像が溶け、記録材Pが定着ベルト26に貼り付いて剥がれなくなった場合、遮蔽部材32がハロゲンヒータ28を覆う動作をする。これにより、ハロゲンヒータ28及び加圧ステー30から定着ベルト26への輻射熱を低減し、記録材Pが定着ベルト26に密着した状態での記録材Pの焦げ付きを防止する。
具体的には、遮蔽部材32は、厚さ0.1mm〜1.0mmの金属板を、定着ベルト26の内周面に沿った円弧状の断面形状に形成して構成されている。また、遮蔽部材32は、定着ベルト26とハロゲンヒータ28との間を周方向に移動可能となっている。例えば、図2に示すように、ハロゲンヒータ28と対向してハロゲンヒータ28に直接加熱される加熱位置と、図3に示すように、定着ベルト26とハロゲンヒータ28との間に介在してハロゲンヒータ28に直接加熱されない非加熱位置とに移動する。
通常時等の熱遮蔽の必要がない場合は、図2に示すように、遮蔽部材32を非加熱位置側に移動させ、遮蔽部材32の全体を反射部材31や加圧ステー30の裏側へ退避させることが可能となっている。一方、熱遮蔽する必要がある場合は、図3に示すように、遮蔽部材32を加熱位置側の一箇所もしくは複数箇所に設定された遮蔽位置に配設する。このように遮蔽部材32を回転させることで、定着ベルト26の加熱位置の面積を変更して、ハロゲンヒータ28から定着ベルト26に照射される輻射熱の熱量を調整するようになっている。遮蔽部材32は耐熱性を要するため、その素材には、アルミニウム、鉄、ステンレス等の金属材料、又はセラミックを用いることが好ましい。
図4は、本実施形態の定着装置9の斜視図である。図4に示すように、定着ベルト26の両端部の内周には、それぞれベルト保持部材としてのフランジ部材33が挿入されており、定着ベルト26はこのフランジ部材33によって回転可能に保持されている。また、各フランジ部材33、ハロゲンヒータ28及び加圧ステー30は、定着装置9の図示しない一対の側板に固定支持されている。
一方、定着装置9よりも下流側において、搬送経路6を形成するように記録紙Pの表面側と裏面側とに対向する搬送板40,41には、分離板40A,41Aを配置している。定着ベルト26側の搬送版40に配置した分離板40Aは金属性で定着ベルト26の表面と非接触に配置している。また、加圧ローラ27側の搬送板41に配置した分離板41Aは樹脂製で加圧ローラ27の表面と非接触に配置している。
従来、定着ベルト26側には高精度且つ高価な金属製の分離板40Aを配置し、加圧ローラ27側には安価な樹脂製の分離板41Aが用いられてきた。定着ベルト26側は常にトナー像の載った記録材Pを分離搬送する必要があるため、高精度な分離部材が要求される。一方、加圧ローラ27側は両面印刷時のみであり、また一度定着された後のトナー像であるため、トナーの粘着性も低下している。そのため、安価な樹脂性の分離板41Aが用いられてきた。
しかしながら、両面印刷時の第1面において面積率の高い画像が印刷され、第2面において面積率の低い画像が印刷されるような両面印刷時においては、しばしば加圧ローラ27側の巻き付きジャムが発生することがある。
この巻き付きジャムが発生した場合、装置本体2の駆動を瞬時に停止し、加圧ローラ27の逆転動作を行うことで、巻き付いた記録材Pを容易に取り除くようにしている。ところが、加圧ローラ27を逆転動作させ、加圧ローラ27に巻き付いた記録材Pが除去可能な位置まで移動したとき、例えば、記録材Pの中央部の折れ曲がりにより定着ベルト26に接触すると、ハロゲンヒータ28の対向位置まで移動して停止することとなる。
このような場合、ハロゲンヒータ28の対向位置付近では、停止直後は非常に高温となっており、記録材Pに転写されたトナー像が溶け、記録材Pが定着ベルト26に貼り付いて剥がれなくなり、記録材Pの焦げが問題となる。
そこで、図3に示すように、記録材Pが定着ベルト26に貼り付いて剥がれなくなった場合、遮蔽部材32がハロゲンヒータ28を覆う動作をすることで、ハロゲンヒータ28及び加圧ステー30から定着ベルト26への輻射熱を低減し、記録材Pが定着ベルト26に密着した状態での記録材Pの焦げ付きを抑制することができる。
遮蔽部材32は、図3に示すように、ハロゲンヒータ28と定着ベルト26との間にあり、それぞれ接触しないように構成されている。逆転動作時には、ハロゲンヒータ28の加熱領域を覆うように動作する。加熱領域を覆うことでハロゲンヒータ28や加圧ステー30からの輻射熱が低減し、定着ベルト26の急峻な温度上昇(オーバーシュート)によるキンク(kink:よじれ)や記録材Pが定着ベルト26に密着した状態での記録材Pの焦げ付きを抑制することができる。
この際、遮蔽部材32は、加熱領域を全て覆うよう動作するように構成するのが好ましく、さらに、逆転動作が終了するまで加熱領域を覆う位置で停止するのがより好ましい。これにより、逆転動作時に加熱領域が一部開放されている場合のオーバーシュートによるキンクやハロゲンヒータ28や加圧ステー30からの輻射熱による記録材Pの焦げを防止できる。
また、ジャム発生時の逆転動作時に、遮蔽部材32によって加熱領域の全てを覆うようにすれば、ハロゲンヒータ28及び加圧ステー30からの輻射熱による定着ベルト26の温度上昇を抑制することができる。
すなわち、遮蔽部材32で加熱領域の全てを覆うことにより、ジャム発生による逆転動作字に、ハロゲンヒータ28及び加圧ステー30から定着ベルト26への輻射熱は低減され、加熱領域が一部空くことによる局所的な定着ベルト26への加熱がなくなる。このため、定着ベルト26の急峻な温度上昇(オーバーシュート)によるキンクや記録材Pが定着ベルト26に密着した状態での記録材Pの焦げを防止できる。
さらに、ジャム発生時の逆転動作が終了するまでのハロゲンヒータ28及び加圧ステー30からの輻射熱による定着ベルト26の温度上昇を抑制することにより、定着ベルト26の急峻な温度上昇(オーバーシュート)によるキンクや記録材Pが定着ベルト26に密着した状態での記録材Pの焦げを防止できる。
なお、より確実にオーバーシュートによるキンクやヒータやステーからの輻射熱による記録材Pの焦げを防止するために、遮蔽部材32が加熱領域を覆う位置にいる期間は逆転動作が完了しても継続してもよい。
また、連続通紙時に遮蔽部材32が加熱位置にあった場合、遮蔽部材32が直接加熱されることとなる。このため、逆転動作時には、高温となった遮蔽部材32の輻射熱により結果的に定着ベルト26が高温になってしまうということも想定される。そのため、逆転動作時の遮蔽部材32が動作する条件としては、連続通紙時に加熱領域外にあるときのみとするのが好ましい。
すなわち、連続通紙時には、遮蔽部材32はハロゲンヒータ28の加熱領域の範囲外に位置していれば、遮蔽部材32は加熱されないため、逆転動作時の遮蔽部材32から定着ベルト26への伝熱による定着ベルト26の急峻な温度上昇を防止することができる。
逆に、連続通紙時に遮蔽部材32が加熱領域にない場合、遮蔽部材32が加熱されないため、遮蔽部材32がハロゲンヒータ28を覆う動作をした場合であっても、定着ベルト26の温度が急峻に上がることを抑制することができる。
遮蔽部材32は、ハロゲンヒータ28からの輻射熱を吸収し易い条件、例えば、材質、肉厚、色、形状、配置等で構成している。例えば、遮蔽部材32の材質としては、ハロゲンヒータ28に近接配置することになるため熱による変形がしにくい金属板で構成するのが好ましい。また、遮蔽部材32の色としては、ハロゲンヒータ28と対向する箇所を、輻射熱を吸収し易い黒色にするのが好ましい。また、ハロゲンヒータ28と遮蔽部材32との距離は周方向で最も同一になるように構成することで、遮蔽部材32の熱による変形防止とハロゲンヒータ28及び加圧ステー30から定着ベルト26への輻射熱を低減する。
このように、ジャム発生時の逆転動作時に、遮蔽部材32が輻射熱を吸収し易い構成とすることでハロゲンヒータ28及びステーから定着ベルト26への輻射熱を低減することができる。
すなわち、遮蔽部材32が輻射熱を吸収し易い構成とすることにより、ジャム発生時の逆転動作に、遮蔽部材32がハロゲンヒータ28を覆う動作をした場合、ハロゲンヒータ28及び加圧ステー30からの輻射熱が遮蔽部材32に吸収され、定着ベルト26の急峻な温度上昇(オーバーシュート)によるキンクや記録材Pが定着ベルト26に密着した状態での記録材Pの焦げを防止できる。
このように、本発明の定着装置9にあっては、回転可能な定着ベルト26と、定着ベルト26を加熱するハロゲンヒータ28と、定着ベルト26の外周面に当接して定着ニップ部Nを形成する加圧ローラ27と、定着ベルト26とハロゲンヒータ28との間で移動することにより定着ベルト26のハロゲンヒータ28に加熱される加熱領域の面積を変更可能な遮蔽部材32と、を備え、定着ベルト26は、記録材の搬送方向に対して正逆転可能とされ、遮蔽部材32は、定着ベルト26の内周に沿って移動することによりハロゲンヒータ28による定着ベルト26への加熱領域を変化させるとともに、定着ベルト26が逆転回転しているときにハロゲンヒータ28による加熱領域が減少する方向に移動することにより、定着ベルト26の熱効率を向上し、省電化及び昇温時間の短縮化をより一層向上しつつ、定着ニップ部Nにおける記録材Pの定着ベルト26への貼り付きを抑制することができる。
以上説明したように、本発明に係る定着装置は、定着部材の熱効率を向上し、省電化及び昇温時間の短縮化をより一層向上しつつ、定着ニップ部における記録材の定着部材への貼り付きを抑制することができるという効果を有し、熱定着方式の定着装置を用いた画像形成装置全般に有用である。