JP5704873B2 - 定着方法 - Google Patents
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Description
このローラ定着方式において、高速化に対応すべくニップ幅を拡大するためには、各ローラのローラ径を大きくしなければならず、定着装置が大型化するとともに、熱容量が増大ひいては消費電力の増大、ウォームアップ時間が増加してしまうのが特徴である。
このフィルム加熱方式の定着装置は、ニップ部Nを加熱する加熱体24を備えた加熱定着ユニット20と、弾性層12を有する加圧ローラ10とから構成され、不図示の加圧手段により加熱定着ユニット20に加圧ローラ10を圧接させてニップ部Nを形成している。加熱定着ユニット20は、定着フィルム21、ヒータホルダ22、温度検知素子(サーミスタ)23、加熱体24から構成されている。
加圧ローラ10は、不図示の駆動装置により矢印の方向に所定の周速度で回転駆動される。これにより、圧接して形成されたニップ部Nにおいて、加圧ローラ10と定着フィルム21との間に摩擦力が発生し、定着フィルム21は加熱体24表面と密着摺動しつつ、加圧ローラ10に対して従動回転する。
基層21aの厚さは、金属製の電鋳ベルトの場合には厚さが20〜70μm程度、耐熱樹脂の場合には30〜80μm程度である。弾性層21bは、基層21a上に形成された厚さ150〜350μm程度のシリコンゴム層である。また、離型層21cは、弾性層21b上にコーティング等によって形成された厚さ約10〜20μm程度のPFA、PTFEなどのフッ素樹脂、あるいは、弾性層21b上に厚さ約30μm程度の低硬度のフッ素ゴムなどである。フッ素ゴムとしては、2元フッ化ビニリデン系ゴム、3元フッ化ビニリデン系ゴム、テトラフルオロエチレン−プロピレン系ゴム、フルオロホスファゼン系ゴム等があげられ、単独あるいは2種類以上ブレンドして用いられる。
ヒータホルダ22は、液晶ポリマー、フェノール樹脂、PPS、PEEK等の耐熱性と、摺動性を具備した耐熱性樹脂により形成されている。
素樹脂等がコートされている。
また、加熱体24と定着フィルム21の摩擦抵抗を低減するために、定着フィルム21の内面に耐熱性のあるフッ素系グリース等の潤滑剤が塗布されている。
加熱体24の発熱量の制御は、定着フィルム21の裏面に設けられたサーミスタ23により検知される温度情報を元に、所定の定着フィルム21の目標温度が維持されるように加熱体24への通電量を制御することで実現される。
また、異常過熱時の電流遮断部として機能するサーモスイッチ29を有する。サーモスイッチ29は、加熱体24の裏面側で、長手方向の略中央部に所定の圧で押し当てられている。
トナーTは、少なくとも着色剤と、結着樹脂と、ワックスとからなるものである。トナーにワックスを含有させることにより、定着フィルム21の表面にワックスを供給することができ、良好な離型性が確保できる。
このようなフィルム加熱方式の定着装置においては、定着フィルム21が低熱容量であるため、従来の接触加熱方式である熱ローラ方式の装置に比べ省電力化及びウェイトタイム短縮化(クイックスタート)が可能である。また、多量のカラートナーが使用される定着装置の場合でも、定着フィルム21のシリコンゴムなどによる弾性層により、定着フィルムがトナー層の凹凸に追従して接触することで、記録材Pの表層のトナーは均一に溶融し、良好な画像が得られる。なお、関連する従来例が開示された文献としては、特許文献1がある。
図10(a)に示すように、従来の加熱方法は、トナー像Tを担持した記録材Pの表面(トナー像担持面、画像形成面)からの加熱だけではない。すなわち、加圧ローラ10がウォームアップ時及び紙間で定着フィルムにより加熱され蓄熱されることで、加圧ローラ10の接触により、記録材Pの裏面からも加熱が行われる。
、このフィルム加熱方式では、定着フィルム21の温度が加圧ローラの温度よりも高いので、熱量Q3>熱量Q4となり、記録材Pの表面と裏面に温度差ΔTが生じる。ΔTは定着フィルム21の高熱伝導化や加圧ローラ10の断熱化により、大きくすることができる。
このような場合、従来の定着工程では、記録材Pの凸部のトナーは、加熱された定着フィルムと記録材Pの両方に挟まれて接触し、定着フィルムと記録材Pの両方から過度に熱と圧が加わり、過度に溶け広がり、記録材の繊維の透けが生じることが懸念される。
一方、凹部のトナーは、定着フィルムが記録材P表面上の凹凸に追従することができず、定着フィルムに加圧されず、熱が伝わり難く、溶け広がり難い。トナーの溶融が不足すると隣接したトナー同士が凝集し、記録材Pの地肌の見える面積が大きくなることが懸念される。
この様に、従来のフィルム加熱方式では、記録材の凸部と凹部のトナーで溶融状態の差が大きくなってしまう場合があり、このような場合には、記録材の表面の凹凸により濃度ムラが発生することが懸念される。
本発明は上記したような事情に鑑みてなされたものであり、記録材の表面の凹凸に起因する濃度ムラの発生を防止することを目的とする。
断熱層を有する加圧回転体と、表面にフッ素樹脂の離型層を有し、前記加圧回転体と互いに圧接してニップ部を形成する定着フィルムと、前記定着フィルムを加熱するヒータと、を有し、記録材のうち未定着トナー像が形成された表面が前記定着フィルムに対向するように前記ニップ部で記録材を挟持搬送させて記録材上に形成された未定着トナー像を記録材に定着する定着装置、を用いた定着方法において、
前記断熱層により前記加圧回転体が断熱されることで、前記ニップ部で挟持搬送される記録材の表面と裏面との間に生じる温度差であって、前記ニップ部のうちの記録材搬送方向下流端部における記録材の表面と裏面との温度差をΔT[℃]とし、
トナーのフローテスター1/2法溶融温度をT1/2[℃]とし、
記録材の所定部位が前記ニップ部を通過する時間をt[sec]とした場合、
ΔT≧−202t+(T1/2−67)
が成り立つように定着することを特徴とする。
図1は、実施例1に係る像加熱装置の一例として、フィルム加熱方式の定着装置の概略構成を示す断面図である。
図1に示す定着装置の構成としては、図9に示した従来構成のものと同様であるため、図1に示す定着装置の各構成部材においては説明の便宜上、図9と同一の符号を用いている。本実施例においては、図9に示した従来のものに対して、材質等の実質的な構成が異なる部材についてのみ説明する。
本実施例の定着装置の構成は、図9に示した従来構成のものと比べて、加圧回転体としての加圧ローラ10、及び、加熱回転体としての加熱定着ユニット20と加圧ローラ10との当接圧力に特徴がある。
本実施例では、定着フィルム21の表面のMD−1硬度が66°であり、定着フィルムの層構成は、表層が厚さ12μmのフッ素樹脂のコーティング、弾性層が厚さ300μmのシリコンゴム層、基層が厚さ30μmのSUSの電鋳で形成されている。また、本実施例の定着フィルム21の外径は、24 mmのものを用いた。なお、MD−1硬度の測定は、高分子計器(株)製のマイクロゴム硬度計MD−1タイプA(以下、MD−1硬度計)を用いた。MD−1タイプAは、JIS K 6301で規定されているJIS−A硬度の近似値が得られるものである。
弾性層12は、断熱効果を持たせるためシリコンゴムを発泡させ形成されたスポンジゴム層、あるいはシリコンゴム層内に中空のフィラーを分散させ、硬化物内に気泡部分を持たせ、断熱作用を高めた気泡ゴム層などがある。
離型層13は、断熱性が高いものであればよい。例えば、パーフルオロアルコキシ樹脂(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン樹脂(FEP)等の多孔質フッ素系樹脂、あるいはGLSラテックスコーティングを施したものであってもよい。また、離型層13はチューブを被覆させたものでも、表面を塗料でコートしたものであってもよい。
また、加圧ローラ10の硬度は、アスカーC硬度計1kg荷重で、50度以下が好ましく、本実施例の加圧ローラ10のアスカーC硬度は、35度(°)である。この様に加圧ローラの硬度を小さくし、加熱定着ユニット20と加圧ローラとの加圧力を弱くすることで、ピーク圧力の低い、幅の広いニップ部Nを形成することができる。ここで、ニップ部Nは、加熱定着ユニット20と加圧ローラ10とが互いに圧接することで形成されている。
本実施例においては、不図示の押圧力手段によって、加熱定着ユニット20に加圧ローラ10を加圧力10kgf(98N)で押圧している。それにより、ニップ部Nの幅は約11mmである。
図3(a)に、本実施例におけるニップ部Nの圧力分布を実線で、平均圧力を点線で示す。尚、このニップ内における圧力分布についてニッタ株式会社製の圧力分布測定システムPINCHを用いて測定を行った。点線で示す平均圧力は、実線で示す圧力分布の平均値である。本実施例のニップ部Nは、ピーク圧力が0.75kgf/cm2(7.35N/cm2)で、平均圧力が0.5kgf/cm2(4.9N/cm2)である。
感光ドラム1は矢印の方向に回転駆動され、まず、その表面は帯電装置としての帯電ローラ2によって一様に帯電される。次に、レーザスキャナ3より、画像情報に応じてON/OFF制御されたレーザビームLによる走査露光が施され、感光ドラム1上に静電潜像が形成される。この静電潜像は、現像装置4によりトナー(現像剤)を用いて現像、可視化される。
可視化されたトナー像(現像剤像)は、転写装置としての転写ローラ5により、所定のタイミングで搬送された記録材P上に感光ドラム1上より転写される。
このトナー像が転写された記録材Pは、加熱定着ユニット20と加圧ローラ10で構成される定着装置へと搬送され、永久画像として定着される。このとき、記録材Pのうちトナー像が形成された表面(像担持面、トナー担持面)が、加熱定着ユニット20に対向するように、ニップ部Nで記録材Pが挟持搬送されて、加熱定着ユニット20により記録材上に形成されたトナー像が加熱される。一方、感光ドラム1上に残存する転写残りの残留トナーは、クリーニング装置6により感光ドラム1表面より除去される。
実施例2の定着装置は、実施例1から、加圧ローラ10、及び、加熱定着ユニット20と加圧ローラ10との当接圧力を変更したものである。その他の構成については、実施例1の定着装置と同じ構成である。
本実施例においては、不図示の押圧力手段によって、加熱定着ユニット20に加圧ローラ10を加圧力15kgf(147N)で押圧している。それにより、ニップ部Nの幅は約10mmである。
本実施例においても実施例1と同様にニップ部Nの圧力分布の測定を行なった。
図3(b)に、本実施例におけるニップ部Nの圧力分布を実線で、平均圧力を点線で示す。本実施例のニップ部Nは、ピーク圧力が1.0kgf/cm2(9.8N/cm2)で、平均圧力が0.7kgf/cm2(6.86N/cm2)である。
比較例の定着装置の構成は、図9の従来技術で説明した構成である。また、本比較例の定着装置は、実施例1のものと比べて、加圧ローラ10、及び、加熱定着ユニット20と加圧ローラ10との当接圧力のみを変更したものである。その他の構成については、実施例1の定着装置と同じ構成である。
本比較例において、不図示の押圧力手段によって、加熱定着ユニット20に加圧ローラ10を加圧力25kgf(245N)で押圧している。それにより、ニップ部Nの幅は約9.5mmである。
本比較例においても実施例1と同様にニップ部Nの圧力分布の測定を行なった。
図3(c)に、比較例におけるニップ部Nの圧力分布を実線で、平均圧力を点線で示す。本比較例のニップ部Nは、ピーク圧力が1.5kgf/cm2(14.7N/cm2)で、平均圧力が1.15kgf/cm2(11.3N/cm2)である。
実施例と比較例の定着装置で、同等の定着性になる定着プロセス条件を選定し、その定着プロセス条件で、実施例のベタ画像の濃度ムラが比較例と比べて改善するか実験した。実施例1、実施例2及び比較例の各定着装置で、異なる搬送速度(90、180、240mm/sec)で、トナー画像サンプルを定着し、定着性が良好になる定着温度を選定した。
その後、その定着プロセス条件で濃度ムラ評価を行った。この実験例で用いたトナーは、ヒューレットパッカード社製のA4カラーレーザプリンタ(CP3525dn)のブラックトナーAで、記録材Pは坪量75g/m2の比較的表面の粗いLetterサイズの普通紙(XEROX Business4200)を用いた。
未定着のトナー画像サンプルは、ヒューレットパッカード社製のA4カラーレーザプリンタ(CP3525dn)を用いて、のり量が0.45±0.01mg/cm2
になるように作成した。
定着温度の選定は、こすり定着性試験の結果が約5%になるようにしている。ここで言う定着温度とは、定着フィルム21の裏面に設けられたサーミスタ23により検知され、維持されている定着フィルム21の目標温度である。
本実験例における定着画像のこすり定着性試験は、得られた画像をシルボン紙(クリーニングペーパ)で、往復5回、約200g荷重でこすり、画像のはがれを反射濃度の低下率(%)を算出した。定着性試験において、画像の反射濃度の低下率が10%以下であれば、定着性は良好である。また、低下率が20%を超えてしまうと、ユーザが画像を使用している時に、文字やハーフトーン画像が剥がれ、手や衣服やほかの紙が汚れるといった問題が発生するため、好ましくない。定着画像の濃度評価には、X−Rite(X−Rite社製)を使用した。
定着性の良好な定着プロセス条件と、その時の濃度ムラ評価結果を表1、表2、表3に示す。表1は実施例1の定着プロセス条件と実験結果で、表2は実施例2のもので、表3は比較例のものである。上記の定着プロセス条件で以下のトナー画像の濃度ムラ評価を行った。トナー画像の濃度ムラの評価は目視で行った。その結果を下記の表1、表2、表3に示す。
〔評価基準〕
〇:濃度ムラがなく、極めて良好
△:濃度ムラの発生が僅かにあるが、許容可能
×:濃度ムラが目立つ
これは、比較例では、記録材の凸部のトナーは、過度に溶け広がりやすくなり、記録材の繊維の透けが生じやすくなる。一方、記録材の凹部のトナーは、溶融不足により、トナー同士が凝集している。それにより、記録材の凸部と凹部のトナーで、溶融状態の差が大きくなり、濃度ムラが発生した。
度差を大きくしているからである。
実施例1、実施例2及び比較例の各定着装置で、使用するトナーをヒューレットパッカード社製のA4カラーレーザプリンタ(4700dn)のブラックトナーBに変えて、トナーAの濃度ムラ評価と同様に定着性及び濃度ムラ評価を行った。トナーBは、トナーAと比べて溶融温度が高くなっている。このトナーを用いた時の実験結果を下記の表4、表5、表6に示す。
実施例1、実施例2及び比較例の各定着装置で、使用するトナーを試作したブラックトナーCに変えて、トナーAの濃度ムラ評価と同様に定着性及び濃度ムラ評価を行った。トナーCは、トナーAと粒径及び比重はほぼ同等で、トナーAと比べて溶融温度が低くなっている。このトナーCを用いた時の実験結果を下記の表7、表8、表9に示す。
実施例1、実施例2及び比較例の各定着装置で、実験例1で濃度ムラ評価を行なった定着プロセス条件で、記録材の表面と裏面の温度差の測定を行なった。その結果を図6に示
す。
図4にニップ部通過時における、時間に対する記録材Pの温度プロファイルを示す。図4(a)は実施例の温度プロファイルで、図4(b)は比較例の温度プロファイルである。
温度プロファイルの測定は、次のようにして行った。温度検知部に熱容量が小さい熱電対(例えば、安立計器(株)製K型熱電対線径50μm)を記録材Pの表面と裏面に貼り付け、その記録材Pを上記温度制御した定着装置のニップ部Nで挟持搬送させた。そして、そのときの熱電対から電位差信号を日置電機(株)製メモリハイコーダ(8842)にて測定した。図4(a)に示すように、ニップ部通過時における、時間に対する温度変化の様子を測定することができる。記録材Pとしては、坪量75g/m2の比較的表面の粗いLetterサイズの普通紙(XEROX Business4200)を用いた。
定着装置に記録材Pが搬送されると、記録材Pの表面と裏面の温度は、ニップ部Nで加熱されて上昇する。弾性層12により加圧ローラ10が断熱されることで、定着フィルム21の温度は、加圧ローラよりも高温となっており、記録材Pの表面温度は、記録材Pの裏面温度よりも高くなり、温度差ΔTが生じる。ここで、温度差ΔTは、ニップ部Nのうちの記録材搬送方向下流端部(ニップ出口)における記録材の表面と裏面との温度差である。実施例の加圧ローラ10は、断熱化を高めているため、定着フィルムによる加熱の影響が少なく、蓄熱されない。そのため、ウォームアップ時間及び紙間が変化しても、温度差ΔTは一定値が保たれる。
比較例の加圧ローラの弾性層は、実施例の加圧ローラのものよりも断熱化されていないので、記録材の裏面が加熱されやすくなり、記録材Pの表面温度と裏面温度の差ΔTが、実施例と比べて小さくなる。
実験例1で説明してきたように、こすり定着性試験が良好になる定着プロセス条件において、ニップ部中の通過時間tが長いほど定着温度を低下させることができ、記録材Pの表面と裏面の温度もニップ部中の通過時間tの増加にともない減少する。その結果、記録材Pの表面と裏面の温度差ΔTもニップ部中の通過時間tの増加に伴い減少する。ここで、ニップ部中の通過時間tは、記録材Pの所定部位(例えば先端)がニップ部Nを通過する時間である。
また、こすり定着性試験が良好になる定着プロセス条件において、トナーの溶融温度が低いほど、定着温度を低下させることができ、記録材Pの表面と裏面の温度差ΔTもトナーの溶融温度の低下に伴い減少する。
ΔT=−αt+(T1/2−β)・・・(1)
となるように設定した。
ここで、T1/2は、トナーのフローテスター1/2法溶融温度である。また、αとβは、定着装置の構成に特有な値になる。
図5にフローテスター昇温法における流動曲線と1/2法溶融温度の模式図を示す。
定荷重押出し式細管式レオメーター、所謂フローテスターによる具体的な測定方法を以下に示す。
フローテスターCFT−500(株式会社島津製作所製)を用いて1cm3の試料を、50℃にて7分間保温した後、4℃/minの速度で昇温させながら、荷重10kg/cm2でダイの細孔1mmから押し出すようにし測定を行った。
図5では、フローテスターのトナー測定時に得られる流動曲線を、横軸に温度、縦軸にピストンストロークをとり模式的に示している。図中に、本発明で定義する軟化温度Ts、流出開始温度Tfb、流出開始温度Tfbと流出終了温度Teとの中点である1/2法溶融温度T1/2を示している。
従来から、フローテスターでの昇温法において、この1/2法溶融温度は、プリンタや複写機に使用されるトナーの温度特性として利用されている。
トナーA、トナーB及びトナーCのT1/2を測定した結果、トナーAのT1/2は、116℃であり、トナーBのT1/2は、119℃であり、トナーCのT1/2は、112℃であった。
図6(a)は、実施例1、実施例2及び比較例において、トナーAの定着プロセス条件で測定した温度差ΔTとニップ部中の通過時間tとの関係を表すグラフである。
図6(a)の実線は、実施例2の△印のプロットの近似式で、ΔT=−202t+49となる。ここで、前記式(1)ΔT=−αt+(T1/2−β)と比較すると、トナーAのT1/2は116℃なので、ΔT=−202t+(T1/2−67)となり、α=−202、β=−67であった。
また、実施例2は、濃度ムラの発生が僅かにあるが、許容可能であることから、温度差ΔTが[−202t+(T1/2−67)]℃以上になれば、濃度ムラが良好になり、ΔT≧−202t+(T1/2−67)が成り立つ。
図6(b)の実線は、実施例2の△印のプロットの近似式で、ΔT=−202t+53となる。ここで、前記式(1)ΔT=−αt+(T1/2−β)と比較すると、トナーBのT1/2は119℃なので、ΔT=−202t+(T1/2−67)となり、図6(a)で求めたα、βと等しくなった。トナーBについても同様に、濃度ムラが良好になる条件として、ΔT≧−202t+(T1/2−67)が成り立つ。
図6(c)の実線は、実施例2の△印のプロットの近似式で、ΔT=−202t+45となる。ここで、前記式(1)ΔT=−αt+(T1/2−β)と比較すると、トナーCのT1/2は112℃なので、ΔT=−202t+(T1/2−67)となり、図6(a)及び図6(b)で求めたα、βと等しくなった。トナーCについても同様に、濃度ムラが良好になる条件として、ΔT≧−202t+(T1/2−67)が成り立つ。
〔通紙時のヒータ消費電力測定〕
上記の搬送速度240mm/secの定着条件で、実施例1と比較例の通紙時のヒータ
消費電力を比較した。
室温23℃、湿度60%に保たれた実験室内で、定着装置の電源がオンになって20秒後に30枚/分で連続通紙し、連続通紙時のヒータの平均消費電力を電力計(HIOKI3332POWE HiTESTER)を用いて測定した。使用した記録材は、坪量75g/m2の比較的表面の粗いLetterサイズの普通紙(ゼロックス社製)である。
同様にトナーBの定着プロセス条件で評価した結果、定着温度212℃の実施例1では連続通紙中の消費電力が、488Wであったのに対して、定着温度190℃の比較例の消費電力は、564Wであった。すなわち、実施例1の定着装置は、比較例の定着装置と比べて、76W低く抑えられている。
さらに、記録材の表面(トナー担持面)側から積極的に熱供給することで、トナーを溶融させ、記録材のトナー担持面近傍の層のみを温め、記録材の裏面(トナー担持面に対して裏側の面)への熱供給を低減することができる。これにより、無駄な熱供給を抑え、省エネルギー性を向上させることができる。
このとき、加圧ローラ10の弾性層12の熱伝導率が、0.15W/m・K以下であることが好ましい。また、加圧ローラ10のアスカーC硬度が、50°以下で、ニップ部N内の平均圧力が、0.3kgf/cm2(2.94N/cm2)以上、0.8kgf/cm2(7.84N/cm2)以下(0.3〜0.8kgf/cm2)の範囲にあることが好ましい。また、加圧ローラ10の断熱層がスポンジで構成されていると好ましい。
図2(a)に示すように、本発明における加熱方法の特徴は、トナー像Tを担持した記録材Pの表面から積極的に加熱し、加圧ローラ10の断熱化により記録材Pの裏面からの加熱を減少させていることである。この加熱方法の定着工程で記録材Pとトナー像Tの受ける熱量は、定着フィルム21から記録材Pの表面への熱量Q1と加圧ローラ10から記録材Pの裏面への熱量Q2になる。
また、ニップ部Nの平均圧力を、従来の定着工程と比べて小さくし、記録材Pの凸部のトナーにかかる加圧力を弱くすることで、記録材の凸部のトナーは、過度な熱と圧がかからず、適度に溶け広がり、記録材Pの繊維の透けをより効果的に防止することができる。
ルム21と接触しないが、記録材Pのトナー担時面側から積極的に熱供給することにより、凹部のトナーも溶融変形が進む。
図2で説明した様に、本発明を適用することで、記録材の凸部と凹部のトナーにおいては、溶融状態の差が小さくなり、記録材Pの表面の凹凸により発生する濃度ムラが防止される。
また、本発明により、記録材Pのトナー担時面側から積極的に熱供給し、トナーを溶融させ、記録材Pのトナー担持面近傍の層のみを温め、記録材層中のうち加熱が必要無い層への熱供給を低減することができる。これにより、無駄な熱供給を抑えることができ、省エネルギー性に優れた像加熱装置を提供することが可能となる。
本構成の定着ローラ25は、φ14mmのSUS製の芯金に、厚さ5mmのシリコンスポンジゴム層からなる弾性層を設けた外径φ24mmの弾性ローラである。このときのアスカーC硬度は9.8N(1kgf)加重時で、約40°である。
熱ローラ26は、肉厚1mm、外径φ14mmのアルミニウム製の中空円筒体である。この熱ローラ26は、熱ローラ26の外周面(表面)の一部を定着フィルム21の内周面(内面)と接触させ、その接触領域からハロゲンヒータ27による熱を定着フィルム21に伝達して、定着フィルム21を加熱する構成である。
本構成のベルト定着装置における加圧力分布も、実施例1と同様に図3(a)の実線に示す分布を得る。
図8に示す定着装置においても、ニップ部N通過時における記録材の表面と裏面の温度は、実施例1と同様に図4(a)に示す温度プロファイルになり、濃度ムラの発生を防止する効果がある。
また、本発明に係る像加熱装置は、上述した定着装置として機能する場合の例に限るものではなく、記録材上に定着されたトナー像に光沢を出すための装置として適用することも可能である。
Claims (4)
- 断熱層を有する加圧回転体と、表面にフッ素樹脂の離型層を有し、前記加圧回転体と互いに圧接してニップ部を形成する定着フィルムと、前記定着フィルムを加熱するヒータと、を有し、記録材のうち未定着トナー像が形成された表面が前記定着フィルムに対向するように前記ニップ部で記録材を挟持搬送させて記録材上に形成された未定着トナー像を記録材に定着する定着装置、を用いた定着方法において、
前記断熱層により前記加圧回転体が断熱されることで、前記ニップ部で挟持搬送される記録材の表面と裏面との間に生じる温度差であって、前記ニップ部のうちの記録材搬送方向下流端部における記録材の表面と裏面との温度差をΔT[℃]とし、
トナーのフローテスター1/2法溶融温度をT1/2[℃]とし、
記録材の所定部位が前記ニップ部を通過する時間をt[sec]とした場合、
ΔT≧−202t+(T1/2−67)
が成り立つように定着することを特徴とする定着方法。 - 前記断熱層の熱伝導率は、0.15W/m・K以下であることを特徴とする請求項1に記載の定着方法。
- 前記加圧回転体のアスカーC硬度は50度以下で、前記ニップ部における平均圧力は0.3〜0.8kgf/cm2となるように構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の定着方法。
- 前記断熱層は、スポンジで構成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の定着方法。
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