JP2005055470A - 無端状定着ベルト及び定着装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】弾性層を有する定着ベルトにおいて、高耐久化と高画質化を両立する定着ベルトを提供することを目的とする。
【解決手段】定着ベルトは、ベース層側に高耐熱・高硬度の弾性層、表層側に低耐熱・低硬度の弾性層とする複層耐熱弾性層を有することで、弾性層の熱的劣化及び機械的劣化を防止させる高耐久化と、画像の平滑均一性及びドット再現性を向上させる高画質化を両立する。
【選択図】 図1
【解決手段】定着ベルトは、ベース層側に高耐熱・高硬度の弾性層、表層側に低耐熱・低硬度の弾性層とする複層耐熱弾性層を有することで、弾性層の熱的劣化及び機械的劣化を防止させる高耐久化と、画像の平滑均一性及びドット再現性を向上させる高画質化を両立する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真方式等の画像形成装置(複写機、ファクシミリ、プリンタ)において、記録材上に転写された未定着トナー像を加熱及び加圧し、トナー像を記録材に定着させる無端状定着ベルト、及び無端状定着ベルトを用いた定着装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
定着装置は、一般的に、記録材に担持させた未定着画像を記録材に定着せしめる定着装置、未定着画像を記録材に仮に定着せしめる仮定着装置、及び定着画像を担持した記録材の表面性を改質する表面改質装置として実用に供されている。
【0003】
便宜上、複写機・プリンタ等の画像形成装置に具備させる、トナー画像を記録材に加熱、加圧して定着させる定着装置を例にして説明する。
【0004】
画像形成装置において、電子写真プロセス・静電記録プロセス・磁気記録プロセス等の適宜の画像形成プロセス手段部で、記録材(転写材シート・エレクトロファックスシート・静電記録紙・OHPシート・印刷用紙・フォーマット紙・封筒等)に転写方式あるいは直接方式にて形成担持させた画像情報の未定着画像(未定着トナー画像)を、記録材に永久固着画像として加熱・加圧定着させる定着装置としては熱ローラ方式の定着装置が広く用いられている。
【0005】
従来、一般的に用いられていた熱ローラ方式の定着装置は、加熱源としてのハロゲンヒータ等を内包した加熱体としての定着ローラと、これに圧接させた加圧体としての加圧ローラを基本構成とし、このローラ対を回転させて、ローラ対の圧接ニップ(以下、定着ニップ)部に未定着画像を担持した記録材を挿通し、定着ローラからの熱と定着ニップ部の加圧力によって、未定着画像を記録材に永久定着させるものである。
【0006】
また、ウォームアップ時間を短縮できるようにしたベルト方式の定着装置が提案されている。
【0007】
このベルト方式の定着装置は、例えば弾性ローラと、加熱源としてのハロゲンヒータ等を内包した加熱ローラに張架された無端状定着ベルトを配置し、この定着ベルトを介して弾性ローラと加圧ローラとを圧接させ、この定着ニップ部に未定着画像を担持した記録材を挿通し、定着ベルトからの熱と定着ニップ部の加圧力によって、未定着画像を記録材に永久定着させるものである。
【0008】
この定着ベルト方式の定着装置は、薄層で低熱容量の定着ベルトを加熱ローラによって加熱するため、急速に定着ベルトを加熱することができるので、ウォームアップ時間を短縮でき、さらにウォームアップ時間が短縮できるために、定着装置を省エネルギー化できる利点を持つ。
【0009】
熱ローラ方式の定着装置は、白黒画像形成装置はもちろん、フルカラー画像形成装置の定着装置にも用いられている。但し、フルカラー画像は、モノカラー画像に比べて記録材上のトナー層が厚く、トナーの付着量も多いことから、定着ニップ部の搬送方向長さ(定着ニップ幅)をできる限り広く確保し、定着工程時において、記録材上に形成された未定着トナー像を可能な限り低温で長時間加熱して、記録材上に定着することが望ましい。
【0010】
また、記録材の光沢や記録材としてOHPにおける透光色再現性を確保するため、フルカラー用定着装置は、トナー面を均一に溶融して平滑化し、高光沢に仕上げるべく、定着ローラ及び加圧ローラ双方に高平滑ないし鏡面な耐熱弾性層を設けた熱ローラ方式の定着装置が主流となっている。これは、耐熱弾性層を設けない定着ローラは、定着ローラの剛性によって、記録材表面の凹凸やトナー層表面の凹凸に追従できないため、微小な定着ムラが発生し、トナー層表面を平滑化できずに部分的に凹部が発生する。この凹部で光が乱反射することで、記録材の光沢の低下や光沢ムラ、OHPの透光色再現性の低下が発生してしまうためである。
【0011】
さらに、耐熱弾性層を設けない定着ローラは、定着ローラの剛性と加圧力によってトナーが押し潰され、記録材上において、未定着トナー画像に比べて、定着トナー画像の面積が広がるために、画像の解像度(ドット再現性)が低下するという問題があった。一方、耐熱弾性層を設ける定着ローラは、定着ローラの剛性が緩和され、トナーが押し潰されて、トナー画像が広がることによる解像度の低下を防止できる利点を持つ。
【0012】
ところが、フルカラー用の熱ローラ方式の定着装置において、広い定着ニップ幅を確保するためには、定着ローラの大径化、定着ローラの耐熱弾性層の厚肉化、加圧力増大化等の手法があるが、定着ローラを大径化した場合には、定着装置ひいては画像形成装置全体の大型化を招く問題がある。一方、耐熱弾性層の厚みを厚くした場合には、ハロゲンヒータ等の加熱源から定着ローラ表層への熱伝導の低下による熱供給速度の低下によって、定着ローラ表面温度が低下して、未定着トナーが記録材上に固着できない定着不良が発生するため、プリント速度が低下して、高スループット(単位時間当たりのプリント枚数)追従性が低下する等の問題がある。さらに、加圧力を大きくした場合には、トナーを押し潰す作用が大きくなるので、解像度低下の増大等の問題がある。
【0013】
フルカラー用定着装置において、定着装置の小型化を図り、かつ、高速化(高スループット化)、高画質化(高解像度化)を実現するには、定着ニップ幅を拡大しつつ熱の供給速度を低下させないで、適度な加圧力とすることが重要な課題であるが、熱ローラ方式におけるニップ幅の拡大手法としては、上述したローラの大径化及び耐熱弾性層の厚肉化、加圧力の増大化しかないことから、当該課題に応えるには限界があった。
【0014】
そこで、上述したような熱ローラ方式による限界を打破すべく、例えば前述した定着ベルトを加圧ローラに圧接させて定着ニップ部を形成する定着ベルト方式の定着装置が特開平4−324476号公報等で提案されている。
【0015】
定着ベルト方式の定着装置は、弾性ローラを低硬度化することで、熱ローラ方式に比べて、広い定着ニップ幅を容易に確保することができる。また、薄層で低熱容量の定着ベルトを加熱ローラによって加熱するため、急速に定着ベルトを加熱し、熱供給速度を低下させずに記録材を加熱することができるので、ウォームアップ時間を短縮でき、小型でかつ高速化が可能になるという利点がある。
【0016】
【特許文献1】
特開平4−324476号公報
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
画像形成装置の定着装置に上述した定着ベルト方式を採用するにあたって、良好なフルカラー画像を得るためには、上述した熱ローラ方式の定着装置と同様に、定着ベルトに耐熱弾性層を設けることが必要となる。
【0018】
しかしながら、定着ベルトの耐熱弾性層は、ベース層としてのNiやSUS等の金属や、PI(ポリイミド)等の耐熱性樹脂、そしてトップ層としてのフッ素系樹脂等の耐熱離型性樹脂と比較して、耐熱温度が低く、耐久によって耐熱弾性層の硬度が低下する等、劣化し易いという耐久性の問題があった。
【0019】
定着ベルトの耐熱弾性層は、上述したように、トナー面を均一に溶融して平滑化し、高光沢に仕上げ、トナーつぶれによる解像度低下を防止するため、低硬度が望ましい。しかし、耐熱弾性層を低硬度化すると、さらに耐熱性が低下するために、熱的劣化による硬度低下の劣化を引き起こし易くなる。
【0020】
また、定着ベルトの耐熱弾性層の耐久による劣化は、定着ベルトが複数のローラや部材に張架され、曲率変化による繰り返し応力が発生することによる機械的劣化が熱的劣化を助長するために、定着ローラの耐熱弾性層の耐久による劣化に比べて、大きいことことが判明した。
【0021】
そこで本発明は、上述した従来技術に伴う課題を解決するため、定着ベルト方式の定着装置において、記録材の光沢やOHPにおける透光色再現性を確保し、トナーつぶれによる画像の解像度の低下を防止すると同時に、定着ベルトの耐熱弾性層の熱的劣化及び機械的劣化を防止して、定着ベルトの耐久性を確保し、高耐久(高寿命)かつ高画質の定着ベルト、及び高耐久かつ高画質の定着装置を提供することを目的とする。
【0022】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、下記の本発明に係る定着装置にて達成される。
【0023】
金属又は耐熱性樹脂のベース層上に、耐熱弾性層を被覆した無端状定着ベルトにおいて、前記耐熱弾性層は、少なくとも2層の耐熱弾性層を有し、ベース層側の耐熱弾性層の耐熱温度が、表層側の耐熱弾性層の耐熱温度より高いことを特徴とする無端状定着ベルトである。
【0024】
金属又は耐熱性樹脂のベース層上に、耐熱弾性層、及び耐熱離型性樹脂のトップ層を、この順に被覆した無端状定着ベルトにおいて、前記耐熱弾性層は、少なくとも2層の耐熱弾性層を有し、ベース層側の耐熱弾性層の耐熱温度が、トップ層側の耐熱弾性層の耐熱温度より高いことを特徴とする無端状定着ベルトである。
【0025】
前記耐熱弾性層の硬度は、表層側の耐熱弾性層硬度が、ベース層側の耐熱弾性層硬度よりも低いことを特徴とする上記(1)記載の無端状定着ベルトである。
【0026】
前記耐熱弾性層の硬度は、トップ層側の耐熱弾性層硬度が、ベース層側の耐熱弾性層硬度よりも低いことを特徴とする上記(2)記載の無端状定着ベルトである。
【0027】
無端状定着ベルトが内側に配設した複数のローラ又は部材に所定の張力を持って張架され、加圧部材が前記複数のローラ又は部材の少なくとも1つに無端状定着ベルトを介して圧接されて、圧接ニップ部を形成し、前記圧接ニップ部に記録材を搬送して、記録材上の未定着画像を、記録材上に加熱、加圧して定着させる定着装置において、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の無端状定着ベルトを用いたことを特徴とする定着装置である。
【0028】
無端状定着ベルトが内側に配設した複数のローラ又は部材に所定の張力を持って張架され、加圧部材が前記複数のローラ又は部材の少なくとも1つに無端状定着ベルトを介して圧接されて、圧接ニップ部を形成し、前記圧接ニップ部に記録材を搬送して、記録材上の未定着画像を、記録材上に加熱、加圧して定着させる定着装置において、無端状定着ベルト表層及び加圧部材表層に、フッ素系樹脂等の耐熱離型性樹脂のトップ層を設け、かつオイル含有トナーを用いることで、無端状定着ベルトまたは加圧部材にオイル塗布機構を使用しないオイルレス定着装置であることを特徴とする上記(2)または上記(4)記載の定着装置である。
【0029】
前記圧接ニップ部を通過した記録材を無端状定着ベルト又は加圧部材から分離する分離部材を、無端状定着ベルト及び加圧部材に接触配置させないことを特徴とする上記(6)記載の定着装置である。
【0030】
(作用)
請求項1または請求項2記載の発明によれば、ベース層側の耐熱弾性層が高耐熱性なので、定着ベルトの耐熱弾性層は、耐久による熱的劣化が小さい。これは、定着ベルトの耐熱弾性層において、定着ベルト内側の加熱ローラからの熱的作用が最も大きいのは、ベース層と耐熱弾性層との界面部であるため、この界面部に接するベース側の耐熱弾性層を高耐熱性とすることで、定着ベルトの耐熱弾性層の耐久による熱的劣化が小さくなるためである。
【0031】
表層側またはトップ層側の耐熱弾性層は、ベース側の耐熱弾性層と比較して低耐熱性であるが、定着ベルト内側の加熱ローラからの熱的作用がベース層側の高耐熱性の耐熱弾性層によってブロックされて緩和されるために、耐久による熱的劣化が小さくなる。
【0032】
従って、本発明によれば、定着ベルトの耐熱弾性層は、耐久による熱的劣化を防止できるので、高耐久の定着ベルトを提供することができる。
【0033】
請求項3または請求項4記載の発明によれば、ベース層側の耐熱弾性層を高硬度・高耐熱性とし、表層またはトップ層側の耐熱弾性層を低硬度・低耐熱性とすることで、定着ベルトの耐久による熱的劣化及び機械的劣化が小さくなる。熱的劣化に対しては上記で述べた通りである。機械的劣化に対して下記に説明する。
【0034】
定着ベルトが複数のローラや部材に張架され、曲率変化が発生することによる機械的作用は、表層またはトップ層側の耐熱弾性層で最も大きい。これは、定着ベルトが曲率変化する時の変位量すなわち応力は、定着ベルトの外側すなわち表層またはトップ層側で最も大きいためである。この曲率変化による機械的作用は、表層またはトップ層側の耐熱弾性層を低硬度化することで、この低硬度の弾性により応力集中を緩和して、低減化することができる。よって、低硬度の耐熱弾性層は、機械的劣化に強く、熱的劣化に弱いという相反関係にある。
【0035】
従って、曲率変化による機械的作用は、熱的劣化を助長する傾向にあるため、ベース層側の耐熱弾性層は、高硬度かつ高耐熱性として、熱的劣化を防止すると共に、表層またはトップ層側の耐熱弾性層への熱的作用をブロックして緩和し、表層またはトップ層側の耐熱弾性層は、低硬度かつ低耐熱性として、曲率変化による機械的作用を緩和することで、高耐久定着ベルトを提供することができる。
【0036】
また、特に耐熱弾性層上に、トップ層として耐熱離型性樹脂を被覆する構成の定着ベルトにおいては、トップ層側の耐熱弾性層が高硬度の場合には、トップ層は弾性が小さいために、耐熱弾性層とトップ層との界面で応力が強いため、定着ベルトの曲率が小さい部分でトップ層を伸ばして塑性変形させてしまい、曲率の大きい部分または直線部分では、トップ層にシワが発生してしまうという問題が発生した。トップ層側の耐熱弾性層が低硬度の場合には、耐熱弾性層とトップ層との界面で発生する応力を低硬度の耐熱弾性層が緩和するため、定着ベルトの曲率が小さい部分でもトップ層を塑性変形させることを防止し、トップ層にシワが発生することが無いという利点を持つ。
【0037】
さらに、表層側またはトップ層側の耐熱弾性層を低硬度とすることで、トナー画像の平滑化作用が大きく、高光沢な画像及び透光色再現性に優れたOHT画像を得ることができ、また、トナーつぶれが小さいために、解像度の低下を防止することができるので、高品質画像を得ることができる。
【0038】
従って、ベース層側の耐熱弾性層は、高硬度・高耐熱性とすることで、熱的劣化防止、熱的作用のブロック層として働き、表層またはトップ層側の耐熱弾性層は、低硬度・低耐熱性とすることで、機械的劣化防止、高画質化として働くように、定着ベルトの耐熱弾性層を複層化して、各耐熱弾性層に各機能を持たせるように、機能分離を行うことで、高耐久化と画像品質良化を両立できる定着ベルトを提供することができる。
【0039】
請求項5記載の発明によれば、無端状定着ベルトが内側に配置した複数のローラ又は部材に所定の張力を持って張架される定着装置においては、定着ベルトの曲率が変化するために、定着ベルトの熱的劣化及び機械的劣化が大きくなるが、本発明の定着ベルトを採用することによって、機械的劣化及び熱的劣化を防止して、高耐久化と画像品質良化を両立できる定着装置を提供することができる。
【0040】
請求項6記載の発明によれば、本発明の無端状定着ベルトを採用することによって、高耐久化と画像品質良化を両立できるオイルレス定着装置を提供することができる。
【0041】
請求項7記載の発明によれば、本発明の無体状定着ベルトを採用し、さらに分離部材を、無端状定着ベルト又は加圧部材に非接触配置、あるいは分離部材を削除することによって、分離部材による無端状定着ベルト又は加圧部材の摺擦削れを防止できるので、さらに高耐久と画像品質良化を両立できるオイルレス定着装置を提供することができる。
【0042】
【発明の実施の形態】
以下の添付図面に基づき本発明における実施の形態に関して説明する。
【0043】
(実施形態1)
図1〜図3、及び表1により本発明に係る実施形態1について説明する。
【0044】
図2は、本実施形態に係る定着装置101の概略構成を示す模式的断面図である。
【0045】
この定着装置101は、図2で示すように、定着ベルト1、弾性ローラ2、加熱ローラ3、加圧ローラ4とで主要部が構成されている。
【0046】
定着ベルト1は、弾性ローラ2及び加熱ローラ3に張架され(所定の張力で架設され)、加圧ローラ4は定着ベルト1を介して弾性ローラ2に対向して設けられる。
【0047】
定着ベルト1は、低熱容量化を図り、クイックスタート性を向上させるために、フィルム膜厚は150μm以下、好ましくは30〜80μm程度の耐熱素材たるPTFE、PFA又はFEP等のフッ素樹脂を主成分とする無端帯状体であるという単層構造、或いは、ポリイミド、ポリアミドイミド、PEEK、PES又はPPS等の耐熱樹脂材や、Ni、SUS、ジュラルミン等の金属材を主成分とするベース層としての無端帯状体の外周面に、PTFE、PFA又はFEP等のフッ素樹脂を主成分とする離型層を被覆するという複層構造等を使用できる。
【0048】
また、フルカラー画像形成装置の定着装置において、定着ベルト1は、トナー面を均一に溶融して平滑化し、高光沢に仕上げるべく、前記ベース層としての無端帯状体の外周面に、厚み0.1mm〜1mm程度のシリコーンゴム、またはフッ素ゴム等の耐熱弾性層を被覆する複層構造等を使用できる。この場合には、定着ベルト1と記録材P上のトナーTとの離型性を向上してオフセットを防止するために、定着ベルト1にオイルを塗布するオイル塗布装置13が配置されるオイル塗布定着装置とする必要がある。
【0049】
従来のフルカラー画像形成装置の定着装置の定着ベルト1は、図3で示すように、ベース層20としてSUS材40μm上に耐熱弾性層としてシリコーンゴム層21を用いた単層の耐熱弾性層を用いていた。
【0050】
本実施形態では、図1で示すように、ベース層20としてのSUS材40μm上に耐熱弾性層としてフッ素ゴム層22とシリコーンゴム層23を用いた複層の耐熱弾性層を配設した内径φ60の定着ベルトを使用し、定着ベルト1に隣接してオイル塗布装置13が配置してある。
【0051】
ヒータ5を内包した加熱ローラ3は、立ち上がりを早くするために、小径かつ薄肉で熱伝導の良いアルミニウムや鉄等の金属材を主成分とする金属パイプで構成して低熱容量化してある。定着ベルト1は、ヒータ5により加熱ローラ3を介して加熱され、温度検知素子(サーミスタ)7で加熱ローラ3の温度を検知して、ヒータ5をON/OFFして、加熱ローラ3の温度を制御することによって、定着ベルト1の表面温度を所定の温度に維持する構成となっている。
【0052】
本実施形態では、アルミニウムの厚み1mm、外径φ24mmの加熱ローラ3を使用し、ヒータ5としてハロゲンヒータを使用した。
【0053】
加圧ローラ4は、芯金4aにシリコーンゴム又はフッ素ゴム等の耐熱弾性層4bを設けた構成の場合には、定着ベルト1にオイル塗布が必要なオイル塗布定着装置となる。
【0054】
本実施形態では、鉄の厚み1mmの芯金4aの外周に、厚み3mmのシリコーンゴムの耐熱弾性層を被覆した外径φ40mmの加圧ローラ4を使用した。また、本実施形態では、定着ベルト1を所定の温度に早く立ち上げるために、加圧ローラ4にヒータ6としてハロゲンヒータを内包させ、温度検知素子(サーミスタ)8で加圧ローラ4の温度を検知して、ヒータ6をON/OFFして、加圧ローラ4の温度を制御する構成となっている。しかし、装置構成によっては、ヒータ6を削除し、加熱源をヒータ5のみとする構成でも良い。
【0055】
弾性ローラ2は、芯金2a上に、シリコーンゴム、フッ素ゴム、または定着ベルト1の温度を早く立ち上げるために、断熱性を向上させたシリコーンスポンジ等の耐熱弾性層2bを被覆してある。
【0056】
本実施形態では、鉄の外径φ14mmの芯金2aの外周に、厚み8mmのシリコーンスポンジ2bを被覆し、シリコーンスポンジの熱伝導率0.08[W/(m・℃)]とした、外径φ30mmの弾性ローラ2を使用した。
【0057】
本実施形態において、加圧ローラ4は、両端部がベアリング等(不図示)を介して回転可能に定着装置に固定配置され、弾性ローラ2は、両端部がベアリング等(不図示)を介して回転可能で、かつ両端部が不図示のバネ等の加圧機構によって、定着ベルト1を介して加圧ローラ4に加圧されるように定着装置に配置される。互いに圧接された定着ベルト1と加圧ローラ4との間には、未定着のトナーT画像を担持した記録材Pが挿通され、トナーTを加熱溶解するとともに加圧して、記録材P上にトナーT画像を定着する圧接ニップ(定着ニップ)Nが形成される。また、加熱ローラ3は、両端部がベアリング等(不図示)を介して回転可能で、かつ定着ベルト1に所定のテンションを付与するように加圧機構(不図示)によって加圧されている。
【0058】
不図示の駆動源による回転駆動で定着ベルト1、弾性ローラ2、加熱ローラ3、加圧ローラ4が回転する。
【0059】
本実施形態では、画像形成装置本体からの駆動源によって加圧ローラ4が矢印X方向に回転する。定着ベルト1は、この加圧ローラ4の回転により、加圧ローラ4と定着ベルト1との外周面との摩擦力で、定着ベルト1に矢印Y方向に回転力が作用する。さらに定着ベルト1の内周面と、弾性ローラ2及び加熱ローラ3の外周面との摩擦力で、弾性ローラ2及び加熱ローラ3に回転力が作用する。従って、加圧ローラ4が駆動回転されることによって、定着ベルト1、弾性ローラ2及び加熱ローラ3が加圧ローラ4の周速度と略同じ周速度を持って従動回転する加圧ローラ駆動方式を採用している。定着ニップNに記録材Pが挿通された場合には、加圧ローラ4と記録材Pと定着ベルト1との摩擦力で前記同様に従動回転がなされる。
【0060】
ここで、弾性ローラ2と加圧ローラ4は、弾性ローラ2端部に配置したワンウェイギヤ(不図示)と、加圧ローラ4端部に配置したギヤ(不図示)によって連結され、加圧ローラ4と定着ベルト1、または記録材Pを介して加圧ローラ4と定着ベルト1において、スリップが発生した場合には、前記ワンウェイギヤ(不図示)によって弾性ローラ2が駆動回転され、加圧ローラ4と定着ベルト1は略同じ周速度を持って回転するようにスリップ対策がなされている。
【0061】
加圧ローラ4の周面の前後には、トナーT画像を担持した記録材Pが搬送される搬送路を構成するガイド部材としての定着入り口ガイド9、定着排紙ガイド10が配置されている。
【0062】
定着ニップN下流側には、記録材P上のトナーTと定着ベルト1または加圧ローラ4との分離不良が発生した場合に、記録材Pをメカ的に分離するように、分離部材として、定着ベルト1に所定の圧力で当接する上分離爪11、または加圧ローラ4に所定の圧力で当接する下分離爪12の少なくとも一方、あるいは両方の接触分離爪が配置されている。本実施形態においては、両方の接触分離爪が配置されている。
【0063】
定着ベルト方式を採用する従来の定着装置においては、例えば図3で示すようなベース層20としてのSUS材40μm上に、耐熱弾性層として低耐熱性・低硬度のシリコーンゴム層21を500μm被覆した単層の耐熱弾性層を用いた定着ベルト1を採用していた。
【0064】
この場合、定着ベルト1の耐熱弾性層としてのシリコーンゴム層21は、耐久によって、加熱ローラ3による熱的劣化による硬度低下や、定着ベルト1が弾性ローラ2と加熱ローラ3の2軸によって支持・回転されることから、繰り返しの曲率変化による機械的劣化による強度低下から破断等が発生するという問題が発生した。
【0065】
また、定着ベルトの耐熱弾性層の耐久劣化による硬度低下は、熱ローラ方式の定着装置における定着ローラの耐熱弾性層の耐久劣化による硬度低下に比べて大きいことから、定着ベルトが複数のローラや部材に張架され、曲率変化が発生することによる機械的劣化が熱的劣化を助長する傾向にあることが筆者らの検討により判明した。
【0066】
ここで、定着ベルト1の耐熱弾性層をシリコーンゴムから高耐熱性・高硬度のフッ素ゴムに変更することで、熱的劣化を防止することができた。
【0067】
しかしながら、フッ素ゴムはシリコーンゴムに比べて、低硬度化することが困難であるために、耐熱弾性層としてゴム硬度が高いことから、フッ素ゴムは、トナー面を均一に溶融して平滑化し、高光沢に仕上げる効果や、トナーつぶれによる解像度低下を防止する効果がシリコーンゴムに比べて小さいことが筆者らの検討により判明した。
【0068】
従って、定着ベルト1の耐熱弾性層としてフッ素ゴムを使用する場合、前記画像品質を良化させるためには、シリコーンゴムに比べて厚みを大きくする必要があり、ウォームアップ時間が延長し、かつ定着ベルト1表面温度が低下して、スループットを高くできないといった弊害が発生した。また、フッ素ゴムの厚みを大きくすると、画像品質は良化するが、シリコーンゴムと比べると、やはり画像品質は劣化してしまう。
【0069】
そこで、本実施形態においては、図1で示すように、ベース層20としてのSUS材40μm上に、耐熱弾性層として高耐熱性・高硬度のフッ素ゴム層22を250μm、低耐熱性・低硬度のシリコーンゴム層21を250μm、総耐熱弾性層厚み500μmを、この順序で被覆した複層耐熱弾性層を配設した定着ベルト1を使用した。
【0070】
この複層耐熱弾性層を用いた定着ベルト1においては、ベース層側の耐熱弾性層がフッ素ゴムで高耐熱性なので、定着ベルトの耐熱弾性層は、耐久による熱的劣化が小さい。これは、定着ベルトの耐熱弾性層において、定着ベルト内側の加熱ローラからの熱的作用が最も大きいのは、ベース層と耐熱弾性層との界面部であるため、この界面部に接するベース側の耐熱弾性層を高耐熱性とすることで、定着ベルトの耐熱弾性層の耐久による熱的劣化が小さくなるためである。
【0071】
表層側の耐熱弾性層であるシリコーンゴムは、低耐熱性であるが、定着ベルト内側の加熱ローラからの熱的作用がベース層側の高耐熱性の耐熱弾性層によってブロックされて緩和されるために、耐久による熱的劣化が小さくなる。
【0072】
また、定着ベルトが複数のローラや部材に張架され、曲率変化が発生することによる機械的作用は、表層側の耐熱弾性層で最も大きい。これは、定着ベルトが曲率変化する時の変位量すなわち応力は、定着ベルトの外側すなわち表層側で最も大きいためである。この曲率変化による機械的作用は、表層側の耐熱弾性層を低硬度化することで、この低硬度の弾性により応力集中を緩和して、低減化することができる。よって、低硬度の耐熱弾性層は、機械的劣化に強く、熱的劣化に弱いという相反関係にある。
【0073】
従って、曲率変化による機械的作用は、熱的劣化を助長する傾向にあるため、ベース層側の耐熱弾性層は、高硬度かつ高耐熱性として、熱的劣化を防止すると共に、表層側の耐熱弾性層への熱的作用をブロックして緩和し、表層側の耐熱弾性層は、低硬度かつ低耐熱性として、曲率変化による機械的作用を緩和することで、高耐久の定着ベルトを提供することができる。
【0074】
さらに、表層側の耐熱弾性層を低硬度のシリコーンゴムとすることで、トナー画像の平滑化作用が大きく、高光沢な画像及び透光色再現性に優れたOHT画像を得ることができ、また、トナーつぶれが小さいために、解像度の低下を防止することができるので、高品質画像を得ることができる。
【0075】
従って、ベース層側の耐熱弾性層は、高硬度・高耐熱性のフッ素ゴムとすることで、熱的劣化防止、熱的作用のブロック層として働き、表層側の耐熱弾性層は、低硬度・低耐熱性のシリコーンゴムとすることで、機械的劣化防止、高画質化として働くように、定着ベルトの耐熱弾性層を複層化して、各耐熱弾性層に各機能を持たせるように、機能分離を行うことで、高耐久化と画像品質良化を両立できる定着ベルトを提供することができる。
【0076】
図1で示す本実施形態の複層耐熱弾性層総厚み500μmの定着ベルトは、トナーと接触する表層を低硬度のシリコーンゴムとすることで、トナー面を均一に溶融して平滑化し、高光沢に仕上げる効果や、トナーつぶれによる解像度低下を防止する効果は、図3で示す従来の単層シリコーンゴム層厚み500μmの定着ベルトと同等レベルを維持することができた。
【0077】
また、複層耐熱弾性層総厚みを500μmとして、図3で示す従来の単層シリコーンゴム層厚み500μmと同じ厚みとすることで、ウォームアップ時間は同等で、同等のスループットを維持することができた。
【0078】
従って、上記構成の複層耐熱弾性層を用いた定着ベルト1においては、熱的・機械的劣化を防止した高耐久性と、画像品質を満足し、かつウォームアップ時間・スループット性能を維持した定着ベルトを提供することができた。
【0079】
実際に、最大通紙幅が297mm(A3紙縦通紙)の定着装置101において、記録材の搬送スピードを104mm/sec、弾性ローラ2の加圧ローラ4への加圧力を総圧(両端の加圧力の合計)300N(約30Kgf)、定着ニップ幅6mm、加熱ローラ5の定着ベルト1の張力を総圧(両端の加圧力の合計)50N(約5Kgf)とした構成において、
加熱ローラ3表面温度を、定着ニップNにおいて記録材通過時250℃、記録材非通過時(スタンバイ時)200℃とするようにサーミスタ7で温調し、加圧ローラ4表面温度を100℃(常時)とするようにサーミスタ8で温調して、A3紙を間欠通紙(5分間で2枚通紙)した時の定着ベルト硬度変化(Askerマイクロゴム硬度計測定)と、画像特性(光沢均一性、トナーつぶれ)を、表1に示す。
【0080】
従来の単層耐熱弾性層定着ベルト(ベース層:SUS材40μm+表層:シリコーンゴム層500μm)
本実施形態の複層耐熱弾性層定着ベルト(ベース層:SUS材40μm+フッ素ゴム層250μ+表層:シリコーンゴム層250μm)
比較例の複層耐熱弾性層定着ベルト(ベース層:SUS材40μm+シリコーンゴム層250μm+表層:フッ素ゴム層250μm)
比較例の単層耐熱弾性層定着ベルト(ベース層:SUS材40μm+表層:フッ素ゴム層500μm)
<硬度変化>
ベース層としてSUS材40μm品を用い、SUS材に各耐熱弾性層を被覆して、耐熱弾性層上を、Askerマイクロゴム硬度計で測定した。耐熱弾性層のゴム材は、JIS−A硬度で、シリコーンゴムは10度品、フッ素ゴムは30度品を用いた。
【0081】
表1で示すように、まず、▲1▼の従来の単層(シリコーンゴム)耐熱弾性層は、耐久が進むに従って硬度が10度低下し、10万枚でゴム層が破壊してしまった。これは、加熱ローラ3による熱的劣化によって、耐熱弾性層が硬度低下し、さらに機械的劣化によって熱的劣化が助長されて耐熱弾性層の破壊が発生している。
【0082】
▲2▼の本実施形態の複層耐熱弾性層は、耐久初期において下層の高硬度フッ素ゴムの影響を若干受けて硬度が高くなっているが、20万枚でも硬度低下が3度と少なく、定着ベルトの寿命としては、▲1▼の従来の単層耐熱弾性層に比べて、倍以上の耐久性が得られた。これは、耐熱性が高く熱的にほとんど劣化しない下層のフッ素ゴムが加熱ローラ5の熱のブロック層として働き、熱的作用を緩和することで、表層のシリコーンゴムの熱的劣化を防止し、さらに、表層の低硬度シリコーンゴムによって機械的劣化も低減されているためである。
【0083】
▲3▼の比較例の複層耐熱弾性層は、上記▲2▼の本実施形態の複層耐熱弾性層において、弾性層の順序を逆にして、下層にシリコーンゴム、表層にフッ素ゴムを被覆したものである。▲3▼の構成での耐久による硬度低下は、▲1▼の構成と比較して硬度低下が5度と少ないが、これは表層のフッ素ゴムの硬度が高いために、下層のシリコーンゴムの硬度変化に対して測定値変化が少ないためである。従って、実際には、下層のシリコーンゴムは、▲1▼の従来例と同様に10度程度の硬度低下が発生していると考えられる。よって、10万枚では、熱的・機械的劣化によって、下層のシリコーンゴムが破壊して、表層のフッ素ゴムとの接着力が低下し、表層のフッ素ゴムが移動することで、表層のフッ素ゴムにシワが発生してしまった。
【0084】
▲4▼の比較例の単層(フッ素ゴム)耐熱弾性層は、高硬度のフッ素ゴムのために硬度が最も高くなっている。▲4▼の構成での耐久による硬度低下は、高耐熱のため、ほとんど低下しない。ただし、20万枚時には、曲率変化による繰り返し応力の機械的劣化によって、表面に微小な亀裂(クラック)が発生して、画像に微小な横筋が発生してしまった。
【0085】
<画像特性>
耐久初期において、上記設定条件における定着トナー画像の表面平滑性の均一性(光沢均一性)と、文字や微小ドットのトナーつぶれ(ドット再現性)を評価した。
【0086】
光沢均一性は、定着後の画像を目視で観察し、均一な画像を○、微小な光沢ムラが若干有るがほぼ均一な画像を△、微小な光沢ムラが多数発生しているものを×とした。
【0087】
ドット再現性は、文字や微小ドットにおいて、記録材上の未定着トナー画像の拡大写真と、定着後のトナー画像の拡大写真を比較して、文字太さやドットの大きさに注目し、定着画像の文字太さやドットの大きさの未定着画像からの増加率が10%未満を○、20%未満を△、20%以上を×として評価した。
【0088】
光沢均一性及びドット再現性として、△レベル以上は実用上問題の無いレベルであり、×レベルは許容できない画像品質である。
【0089】
表1で示すように、表層に低硬度のシリコーンゴムを採用している▲1▼の従来の単層(シリコーンゴム)耐熱弾性層と、▲2▼の表層に低硬度のシリコーンゴムを採用している本実施形態の複層耐熱弾性層は、光沢均一性及びドット再現性は非常に良好であり、両者とも同等レベルの○レベルであった。
【0090】
一方、表層に高硬度のフッ素ゴムを採用している▲3▼の比較例の複層耐熱弾性層と、▲4▼の比較例の単層(フッ素ゴム)耐熱弾性層は、▲1▼や▲2▼に比較して硬度が高いため、光沢均一性及びドット再現性は△レベルであった。
【0091】
従って、本実施形態である▲2▼の複層耐熱弾性層構成のように、樹脂や金属等のベース層上に、高耐熱性・高硬度の耐熱弾性層例えばフッ素ゴムを被覆し、その上に表層として低耐熱性・低硬度の耐熱弾性層例えばシリコーンゴムを被覆して、耐熱弾性層を複層化して耐久性と画像品質の機能を分離させる構成の定着ベルトを採用することによって、高耐久化と画像品質良化とを両立することができる定着ベルト、及び定着装置を提供することができた。そして、この定着装置を採用することによって、定着装置交換の頻度を減少させることができるので、画像形成装置のランニングコストをも減少させる低コスト画像形成装置を提供することができた。
【0092】
定着ベルトのベース層として本実施形態においては、SUS材40μmを用いた例で説明したが、ベース層は、金属に限定されるものでは無く、PI(ポリイミド)等の耐熱性樹脂を用いても、またベース層厚みも定着装置構成や画像形成装置構成に応じて任意に設定しても本発明の効果は同等である。
【0093】
本実施形態では、フルカラー画像形成装置の定着装置に関して述べたが、これは画像特性に要求されるレベルが高いフルカラー画像形成装置に本発明を適用すると効果が大きいためであるが、モノカラー画像形成装置(例えば白黒画像形成装置)の定着装置に適用しても同等の効果を発揮することができる。
【0094】
本実施形態では、定着ベルトの複層耐熱弾性層として、下層にフッ素ゴム、表層にシリコーンゴムの構成に関して述べたが、フッ素ゴムとシリコーンゴムの組み合わせに限定するものでは無く、下層に高耐熱性弾性層で表層に低耐熱弾性層の組み合わせ、または下層に高硬度耐熱弾性層で表層に低硬度耐熱弾性層の組み合わせを満たす任意の耐熱弾性層を用いても、高耐久または高画像品質を満足できる定着ベルトを提供することができる。従って、例えば、下層に高耐熱性で高硬度のシリコーンゴム、表層に低耐熱性で低硬度のシリコーンゴムとする組み合わせの複層耐熱弾性層の定着ベルト構成とすることでも、高耐久と高画質の両方を満足できる本発明の本実施形態と同様の効果を発揮できる定着ベルトを提供することができる。
【0095】
(実施形態2)
図4〜図6、及び表2により本発明に係る実施形態2について説明する。
【0096】
実施形態1は、オイル塗布装置13を配設したオイル塗布定着装置に関して述べたが、本実施形態はオイル塗布装置13を削除したオイルレス定着装置に関して述べる。
【0097】
本実施形態は、定着ベルト1と加圧ローラ4の表層にフッ素樹脂等の耐熱離型性樹脂層を被覆し、オイル内包トナーを使用して、定着ベルト1及び加圧ローラ4と、トナーとの離型性を高めたオイルレス定着装置に本発明を適用したものである。
【0098】
図5は、本実施形態に係る定着装置102の概略構成を示す模式的断面図である。図1と同部材は同符号で示している。図5においては、オイル塗布装置13が削除され、オイル内包トナーを使用しているために、記録材P上のトナーTと定着ベルト1または加圧ローラ4との離型性(分離性)が良好なため、記録材Pをメカ的に分離する上分離爪11と下分離爪12が削除している。
【0099】
図5で示すように、分離爪を削除することによって、定着ベルト1または加圧ローラ4の分離爪による削れを無くすことができるので、定着ベルト1または加圧ローラ4の寿命を延ばすことができる。さらに、オイル塗布装置13を削除することによって、定着ベルト1の熱を奪う部材が減るので、ウォーミングアップ時間を減少することができる等の利点を持つ。
【0100】
定着ベルト方式のオイルレス定着装置を採用する従来の定着装置においては、図6で示すようなベース層20として例えばSUS材40μm上に、耐熱弾性層としてのシリコーンゴム層21を500μm被覆し、さらに表層に耐熱離型性樹脂層23として例えばPFAチューブ30μmを被覆した単層耐熱弾性層を用いた定着ベルト1を採用していた。
【0101】
この場合、実施形態1と同様に定着ベルト1の耐熱弾性層としてのシリコーンゴム層21は、耐久によって、加熱ローラ3による熱的劣化による硬度低下や、定着ベルト1が弾性ローラ2と加熱ローラ3の2軸によって支持・回転されることから、繰り返しの曲率変化による機械的劣化から熱的劣化を助長し、シリコーンゴム層21が破壊され、表層のPFAチューブにシワが発生するという問題が発生した。
【0102】
ここで、定着ベルト1の耐熱弾性層を、実施形態1と同様に、シリコーンゴムから高耐熱性・高強度のフッ素ゴムに変更することで、上記熱的劣化を防止することができた。
【0103】
しかしながら、実施形態1で説明したように、フッ素ゴムは、シリコーンゴムに比べてトナー面を均一に溶融して平滑化し、高光沢に仕上げる効果や、トナーつぶれによる解像度低下を防止する効果がシリコーンゴムに比べて小さく、また、画像品質を良化させるためには、シリコーンゴムに比べて厚みを大きくする必要があり、ウォームアップ時間の延長、高スループットにできないといった弊害が発生した。また、フッ素ゴムの厚みを大きくすると、画像品質は良化するが、シリコーンゴムと比べると、やはり画像品質は劣化してしまう。
【0104】
そこで、本実施形態においては、図4で示すように、ベース層20としてのSUS材40μm上に耐熱弾性層としてフッ素ゴム層22を250μm、シリコーンゴム層21を250μmを、この順序で被覆し、さらに表層に離型性耐熱樹脂層23としてPFAチューブ30μmを被覆した複層耐熱弾性層を用いた定着ベルト1を使用した。
【0105】
この複層耐熱弾性層を用いた定着ベルト1は、ベース層側の耐熱弾性層がフッ素ゴムで高耐熱性・高硬度であり、トップ層側の耐熱弾性層がシリコーンゴムで低耐熱性・低硬度なので、定着ベルトの耐熱弾性層は、耐久による熱的劣化及び機械的劣化が小さく、高耐久性で高画像品質の定着ベルトである。
【0106】
これは、実施形態1で説明したように、定着ベルト内側の加熱ローラからの熱的作用がベース層側の高耐熱性・高硬度の耐熱弾性層(フッ素ゴム層)によってブロックされて緩和されるために、トップ層側の低耐熱性・低硬度の耐熱弾性層(シリコーンゴム層)の耐久による熱的劣化が小さくなるためである。
【0107】
また、実施形態1で説明したように、トップ層側の低硬度の耐熱弾性層(シリコーンゴム層)が曲率変化による機械的作用を緩和することで、耐久による機械的劣化が小さいためである。
【0108】
さらに、特に本実施形態のように耐熱弾性層上に、トップ層として耐熱離型性樹脂を被覆する構成の定着ベルトにおいては、トップ層側の耐熱弾性層が高硬度の場合には、トップ層は弾性が小さいために、耐熱弾性層とトップ層との界面で応力が強いため、定着ベルトの曲率が小さい部分でトップ層を伸ばして塑性変形させてしまい、曲率の大きい部分または直線部分では、トップ層にシワが発生してしまうという問題が発生した。しかし、本実施形態のようにトップ層側の耐熱弾性層が低硬度の場合には、耐熱弾性層とトップ層との界面で発生する応力を低硬度の耐熱弾性層が緩和するため、定着ベルトの曲率が小さい部分でもトップ層を塑性変形させることを防止し、トップ層にシワが発生することが無いという利点を持つ。
【0109】
そして、表層側の耐熱弾性層を低硬度のシリコーンゴムとすることで、トナー画像の平滑化作用が大きく、高光沢な画像及び透光色再現性に優れたOHT画像を得ることができ、また、トナーつぶれが小さいために、解像度の低下を防止することができるので、高品質画像を得ることができる。
【0110】
従って、ベース層側の耐熱弾性層は、高硬度・高耐熱性のフッ素ゴムとすることで、熱的劣化防止、熱的作用のブロック層として働き、表層側の耐熱弾性層は、低硬度・低耐熱性のシリコーンゴムとすることで、機械的劣化防止、高画質化として働くように、定着ベルトの耐熱弾性層を複層化して、各耐熱弾性層に各機能を持たせるように、機能分離を行うことで、高耐久化と画像品質良化を両立できる定着ベルトを提供することができる。
【0111】
トップ層側の耐熱弾性層を低硬度のシリコーンゴムとすることで、トナー面を均一に溶融して平滑化し、高光沢に仕上げる効果や、トナーつぶれによる解像度低下を防止する効果は、図6で示す従来の単層シリコーンゴム層厚み500μmの定着ベルトと同等レベルを維持することができた。
【0112】
また、複層耐熱弾性層の総厚みを500μmとして、図6で示す従来の単層シリコーンゴム層厚み500μmと同じ厚みとすることで、ウォームアップ時間は同等で、同等のスループットを維持することができた。
【0113】
よって、上記構成の複層耐熱弾性層を用いた定着ベルト1においては、熱的・機械的劣化を防止した高耐久性と、画像品質を満足し、かつウォームアップ時間・スループット性能を維持した定着ベルト1を提供することができた。
【0114】
実際に、最大通紙幅が297mm(A3紙縦通紙)の定着装置101において、記録材の搬送スピードを104mm/sec、弾性ローラ2の加圧ローラ4への加圧力を総圧(両端の加圧力の合計)300N(約30Kgf)、定着ニップ幅6mm、加熱ローラ5の定着ベルト1の張力を総圧(両端の加圧力の合計)50N(約5Kgf)とした構成において、
加熱ローラ3表面温度を、定着ニップNにおいて記録材通過時260℃、記録材非通過時(スタンバイ時)200℃とするようにサーミスタ7で温調し、加圧ローラ4表面温度を100℃(常時)とするようにサーミスタ8で温調して、A3紙を間欠通紙(5分間で2枚通紙)した時の定着ベルト硬度変化(Askerマイクロゴム硬度計測定)と、画像特性(光沢均一性、トナーつぶれ)を、表2に示す。
【0115】
従来の単層耐熱弾性層定着ベルト(ベース層:SUS材40μm+シリコーンゴム層500μm+トップ層:PFAチューブ30μm)
本実施形態の複層耐熱弾性層定着ベルト(ベース層:SUS材40μm+フッ素ゴム層250μ+シリコーンゴム層250μm+トップ層:PFAチューブ30μm)
比較例の複層耐熱弾性層定着ベルト(ベース層:SUS材40μm+シリコーンゴム層250μm+フッ素ゴム層250μm+トップ層:PFAチューブ30μm)
比較例の単層耐熱弾性層定着ベルト(ベース層:SUS材40μm+フッ素ゴム層500μm+トップ層:PFAチューブ30μm)
<硬度変化>
ベース層としてSUS材40μm品を用い、SUS材に各耐熱弾性層及びトップ層を被覆して、トップ層上を、Askerマイクロゴム硬度計で測定した。ゴム材は、JIS−A硬度で、シリコーンゴムは10度品、フッ素ゴムは30度品を用いた。
【0116】
表2で示すように、まず、▲5▼の従来の単層(シリコーンゴム)耐熱弾性層は、耐久が進むに従って硬度が4度低下し、10万枚でトップ層のPFAチューブにシワが発生してしまった。これは、加熱ローラ3による熱的劣化によって、耐熱弾性層が硬度低下し、さらに曲率変化による機械的劣化によって熱的劣化が助長され、耐熱弾性層が破壊し、トップ層のPFAチューブにシワが発生している。
▲5▼の構成での耐久による硬度低下は、実施形態1の▲1▼の構成と比較して硬度低下が少ないが、これはトップ層のPFAチューブの硬度が高いために、内部の耐熱弾性層であるシリコーンゴムの硬度変化に対して測定値変化が少ないためである。従って、実際には、内部のシリコーンゴムは実施形態1の▲1▼の構成と同様に10度程度の硬度低下が発生していると考えられる。
【0117】
▲6▼の本実施形態の複層耐熱弾性層は、耐久初期において下層の高硬度フッ素ゴムの影響を若干受けて硬度が若干高くなっているが、20万枚でも硬度低下が1度と少なく、定着ベルトの寿命としては、▲5▼の従来の単層耐熱弾性層に比べて、倍以上の耐久性が得られた。これは、耐熱性が高く熱的にほとんど劣化しない下層のフッ素ゴムによって加熱ローラ3の熱のブロック層として働き、熱的作用を緩和することで、上層のシリコーンゴムの熱的劣化を防止し、さらに上層の低硬度のシリコーンゴムによって機械的劣化も低減されている。▲6▼の構成での耐久による硬度低下は、実施形態1の▲2▼の構成と比較して硬度低下が少ないが、これはトップ層のPFAチューブの硬度が高いために、内部の耐熱弾性層の硬度変化に対して測定値変化が少ないためである。従って、実際には、内部の耐熱弾性層は実施形態1の▲2▼の構成と同程度の3度程度の硬度低下が発生していると考える。
【0118】
▲7▼の比較例の複層耐熱弾性層は、上記▲6▼の本実施形態の複層耐熱弾性層において、弾性層の順序を逆にして、下層にシリコーンゴム、上層にフッ素ゴムを被覆したものである。▲7▼の構成での耐久による硬度低下は、▲5▼の構成と比較して硬度低下が3度と少ないが、これは上層のフッ素ゴム及び表層のPFAチューブの硬度が高いために、下層のシリコーンゴムの硬度変化に対して測定値変化が少ないためである。従って、実際には、下層のシリコーンゴムは、▲5▼の従来例、即ち実施形態▲1▼の構成と同様に10度程度の硬度低下が発生していると考えられる。よって、10万枚では、熱的・機械的劣化によって、下層のシリコーンゴムが破壊して、上層のフッ素ゴムとの接着力が低下し、上層のフッ素ゴムが移動することで、トップ層のPFAチューブにシワが発生してしまった。
【0119】
▲8▼の比較例の単層耐熱弾性層は、高硬度のフッ素ゴムのために硬度が最も高くなっている。▲8▼の構成での耐久による硬度低下は、高耐熱のため、ほとんど低下しない。ただし、10万枚時には、曲率変化による繰り返し応力によって、トップ層のPFAチューブを塑性変形させてしまい、定着ベルトの曲率の大きい箇所や直線箇所において、PFAチューブにシワが発生してしまった。
【0120】
<画像特性>
耐久初期において、上記設定条件における定着トナー画像の表面平滑性の均一性(光沢均一性)と、文字や微小ドットのトナーつぶれ(ドット再現性)を評価した。
【0121】
光沢均一性は、定着後の画像を目視で観察し、均一な画像を○、微小な光沢ムラが若干有るがほぼ均一な画像を△、微小な光沢ムラが多数発生しているものを×とした。
【0122】
ドット再現性は、文字や微小ドットにおいて、記録材上の未定着トナー画像の拡大写真と、定着後のトナー画像の拡大写真を比較して、文字太さやドットの大きさに注目し、定着画像の文字太さやドットの大きさの未定着画像からの増加率が10%未満を○、20%未満を△、20%以上を×として評価した。
【0123】
光沢均一性及びドット再現性として、△レベル以上は実用上問題の無いレベルであり、×レベルは許容できない画像品質である。
【0124】
表2で示すように、トップ層にPFAチューブを被覆し、低硬度のシリコーンゴムを採用している▲5▼の従来の単層(シリコーンゴム)耐熱弾性層と、▲6▼の上層に低硬度のシリコーンゴムを採用している本実施形態の複層耐熱弾性層は、光沢均一性及びドット再現性は良好であり、両者とも同等レベルの△レベルであった。実施形態1の表1の▲1▼または▲2▼と比較すると、表層に高硬度のPFAチューブを被覆しているために、1ランクレベルが低下しているが実用上問題無いレベルである。
【0125】
一方、表層にPFAチューブを被覆し、上層に高硬度のフッ素ゴムを採用している▲7▼の比較例の複層耐熱弾性層と▲8▼の比較例の単層(フッ素ゴム)耐熱弾性層は、▲5▼や▲6▼に比較して硬度が高いため、光沢均一性及びドット再現性は×レベルであった。これも実施形態1の表1の▲3▼や▲4▼と比較すると、表層に高硬度のPFAチューブを被覆しているために、レベルが低下しており、画像品質として許容できないレベルであった。
【0126】
従って、本実施形態の複層耐熱弾性層構成▲6▼のように、樹脂や金属等のベース層上に、高耐熱性・高硬度の耐熱弾性層例えばフッ素ゴムを被覆し、その上に低耐熱性・低硬度の耐熱弾性層例えばシリコーンゴムを被覆し、さらにトップ層にPFAチューブを被覆したオイルレス定着装置用の定着ベルトを採用することによって、高耐久化と画像品質良化とを両立することができる定着ベルト、及び定着装置を提供することができた。そして、この定着装置を採用することによって、定着装置交換の頻度を減少させることができるので、画像形成装置のランニングコストをも減少させる低コスト画像形成装置を提供することができた。
【0127】
本実施形態では、オイルレス定着装置に関して述べたが、トップ層に耐熱離型層を設けた分、定着ベルト表面温度を所定温度まで上昇させるためには、加熱ローラ温度をオイル塗布定着装置に比べて高温化する必要がある。従って、定着ベルトの耐熱弾性層の熱的劣化がより促進されるため、熱的劣化に対して、本発明の本実施形態を用いる効果が大きくなる。
【0128】
定着ベルトのベース層として本実施形態においては、SUS材40μmを用いた例で説明したが、ベース層は、金属に限定されるものでは無く、PI(ポリイミド)等の耐熱性樹脂を用いても、またベース層厚みも定着装置構成や画像形成装置構成に応じて任意に設定しても本発明の効果は同等である。
【0129】
本実施形態では、フルカラー画像形成装置のオイルレス定着装置に関して述べたが、これは画像特性に要求されるレベルが高いフルカラー画像形成装置に本発明を適用すると効果が大きいためであるが、モノカラー画像形成装置(例えば白黒画像形成装置)の定着装置に適用しても同等の効果を発揮することができる。
【0130】
本実施形態では、定着ベルトの複層耐熱弾性層として、下層にフッ素ゴム、上層にシリコーンゴムの構成に関して述べたが、フッ素ゴムとシリコーンゴムの組み合わせに限定するものでは無く、下層に高耐熱弾性層と上層に低耐熱弾性層の組み合わせ、または下層に高耐熱・高硬度耐熱弾性層と上層に低耐熱・低硬度耐熱弾性層の組み合わせを満たす任意の耐熱弾性層用いても、高耐久または高画像品質を満足できる定着ベルトを提供することができる。
【0131】
従って、例えば、下層に高耐熱性で高硬度のシリコーンゴム、上層に低耐熱性で低硬度のシリコーンゴムとする組み合わせの複層耐熱弾性層の定着ベルト構成とすることでも、高耐久と高画質の両方を満足できる本発明の本実施形態と同様の効果を発揮できる定着ベルトを提供することができる。
【0132】
本実施形態では、オイルレス定着装置として、表層にPFAチューブを被覆した定着ベルトに関して述べたが、表層の耐熱離型性樹脂層としては、FEPコート等、他の耐熱離型性樹脂としても効果は同等である。
【0133】
以上、本発明の実施形態に関して説明したが、
実施形態1または実施形態2における諸数値は、実施形態の説明を簡略化するための一例であって、前記諸数値は、装置の構成及び設定等に応じて定めることができる。
【0134】
本発明は、実施形態1または実施形態2で説明した定着装置に限定されるものではなく他の形態のベルト定着装置にも適用することができる。他の形態のベルト定着装置例に関して、下記3)〜6)に説明する。
【0135】
本発明の実施形態は、弾性ローラ2と加熱ローラ3の2軸に定着ベルトを張架する構成に関して述べたが、例えば図7に示すように、定着ベルト1を加圧ローラ4に巻きつけるように、補助ローラ30を、弾性ローラ2の上流側に配置した3軸構成にも本発明を適用することによって、定着ベルトの高耐久性と画像品質良化を両立することができる。この3軸構成は、定着ニップN幅を増加して、記録材P及びトナーTの加熱時間を増加することで、定着性を向上させる利点を持つ。図7は、定着ニップNにおいて回転方向の圧力を均等にするために、弾性ローラ2と補助ローラ30との間に、押圧部材31を配置する構成としてある。また、補助ローラ30は、弾性ローラ2の下流側に配置しても良い。
【0136】
本発明の実施形態において、加熱ローラを金属等の電磁誘導発熱性部材(例えばNi)とし、前記加熱ローラ内部に、磁場発生手段としての励磁コイル、磁性コア等を配設して、渦電流を発生させることによるジュール熱によって、電磁誘導発熱性部材である加熱ローラを、電磁誘導発熱させる構成の電磁誘導加熱方式のベルト定着装置においても、本発明を適用することによって、定着ベルトの高耐久性と画像品質良化を両立できる。
【0137】
本発明の実施形態において、定着ベルトのベース層を金属等の電磁誘導発熱性部材(例えばNi)とし、定着ベルトの加熱源として、定着ベルト内側又は外側に磁場発生手段としての励磁コイル、磁性コア等を配設して、渦電流を発生させることによるジュール熱によって、電磁誘発熱部材である定着ベルトのベース層を、直接、電磁誘導発熱させる構成の電磁誘導加熱方式のベルト定着装置においても、本発明を適用することによって、定着ベルトの高耐久性と画像品質良化を両立することができる。
【0138】
本発明の実施形態において、定着ベルトの加熱源は、定着ベルト内側にセラミックス等を主成分とする薄板状の基板の一面に商用電源からの電力供給により発熱する抵抗発熱体が設けられ、発熱体が定着ベルトを介して加圧ローラに圧接し、発熱体表面を定着ベルトが摺擦回転する構成の面状加熱方式のベルト定着装置においても、本発明を適用することによって、定着ベルトの高耐久性と画像品質良化を両立することができる。
【0139】
本発明は、加圧体がローラ体に限らず、加圧ベルト等の他の形態による加圧体の定着装置にも適用できる。さらに、この場合には、加圧ベルトに本発明を適用しても良い。
【0140】
以下に本発明の実施形態1に係る検討結果(表1)及び本発明の実施形態2に係る検討結果(表2)を示す。
【0141】
【表1】
【0142】
【表2】
【0143】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、ベース層側の耐熱弾性層は、高硬度・高耐熱性のフッ素ゴムとすることで、熱的劣化防止、熱的作用のブロック層として働き、表層側の耐熱弾性層は、低硬度・低耐熱性のシリコーンゴムとすることで、機械的劣化防止、高画質化として働くように、定着ベルトの耐熱弾性層を複層化して、各耐熱弾性層に各機能を持たせるように、機能分離を行うことで、高耐久化と画像品質良化とを両立することができる定着ベルト、及び定着装置を提供することができる。そして、この定着装置を採用することによって、定着装置交換の頻度を減少させることができるので、画像形成装置のランニングコストをも減少させる低コスト画像形成装置を提供することができる。
【0144】
特に、定着ベルトの曲率が変化しながら走行する構成においては、高耐久化の効果が大きくなる。
【0145】
さらに、オイルレス定着装置において、分離爪を定着ベルトから非接触配置構成とすることによって、より高耐久な定着ベルト及び定着装置を得ることができ、より低コスト画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態1に係る定着ベルト構成を示す模式的断面図である。
【図2】本発明の実施形態1に係る定着装置の概略構成を示す模式的断面図である。
【図3】本発明の実施形態1に係る従来例の定着ベルト構成を示す模式的断面図である。
【図4】本発明の実施形態2に係る定着ベルト構成を示す模式的断面図である。
【図5】本発明の実施形態2に係る定着装置の概略構成を示す模式的断面図である。
【図6】本発明の実施形態2に係る従来例の定着ベルト構成を示す模式的断面図である。
【図7】本発明の他の実施形態に係る定着装置の概略構成を示す模式的断面図である。
【符号の説明】
1 定着ベルト
2 弾性ローラ
3 加熱ローラ
4 加圧ローラ
5 加熱ローラ内包ヒータ
6 加圧ローラ内包ヒータ
7、8 温度検知体(温度センサ)
11 上接触分離爪
12 下接触分離爪
20 定着ベルトのベース層
21 耐熱弾性層(シリコーンゴム層)
22 耐熱弾性層(フッ素ゴム層)
23 耐熱離型性樹脂層(PFAチューブ)
30 定着補助ローラ
31 押圧部材
101 オイル塗布定着装置
102 オイルレス定着装置
N 圧接ニップ(定着ニップ)
P 記録材
T トナー
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真方式等の画像形成装置(複写機、ファクシミリ、プリンタ)において、記録材上に転写された未定着トナー像を加熱及び加圧し、トナー像を記録材に定着させる無端状定着ベルト、及び無端状定着ベルトを用いた定着装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
定着装置は、一般的に、記録材に担持させた未定着画像を記録材に定着せしめる定着装置、未定着画像を記録材に仮に定着せしめる仮定着装置、及び定着画像を担持した記録材の表面性を改質する表面改質装置として実用に供されている。
【0003】
便宜上、複写機・プリンタ等の画像形成装置に具備させる、トナー画像を記録材に加熱、加圧して定着させる定着装置を例にして説明する。
【0004】
画像形成装置において、電子写真プロセス・静電記録プロセス・磁気記録プロセス等の適宜の画像形成プロセス手段部で、記録材(転写材シート・エレクトロファックスシート・静電記録紙・OHPシート・印刷用紙・フォーマット紙・封筒等)に転写方式あるいは直接方式にて形成担持させた画像情報の未定着画像(未定着トナー画像)を、記録材に永久固着画像として加熱・加圧定着させる定着装置としては熱ローラ方式の定着装置が広く用いられている。
【0005】
従来、一般的に用いられていた熱ローラ方式の定着装置は、加熱源としてのハロゲンヒータ等を内包した加熱体としての定着ローラと、これに圧接させた加圧体としての加圧ローラを基本構成とし、このローラ対を回転させて、ローラ対の圧接ニップ(以下、定着ニップ)部に未定着画像を担持した記録材を挿通し、定着ローラからの熱と定着ニップ部の加圧力によって、未定着画像を記録材に永久定着させるものである。
【0006】
また、ウォームアップ時間を短縮できるようにしたベルト方式の定着装置が提案されている。
【0007】
このベルト方式の定着装置は、例えば弾性ローラと、加熱源としてのハロゲンヒータ等を内包した加熱ローラに張架された無端状定着ベルトを配置し、この定着ベルトを介して弾性ローラと加圧ローラとを圧接させ、この定着ニップ部に未定着画像を担持した記録材を挿通し、定着ベルトからの熱と定着ニップ部の加圧力によって、未定着画像を記録材に永久定着させるものである。
【0008】
この定着ベルト方式の定着装置は、薄層で低熱容量の定着ベルトを加熱ローラによって加熱するため、急速に定着ベルトを加熱することができるので、ウォームアップ時間を短縮でき、さらにウォームアップ時間が短縮できるために、定着装置を省エネルギー化できる利点を持つ。
【0009】
熱ローラ方式の定着装置は、白黒画像形成装置はもちろん、フルカラー画像形成装置の定着装置にも用いられている。但し、フルカラー画像は、モノカラー画像に比べて記録材上のトナー層が厚く、トナーの付着量も多いことから、定着ニップ部の搬送方向長さ(定着ニップ幅)をできる限り広く確保し、定着工程時において、記録材上に形成された未定着トナー像を可能な限り低温で長時間加熱して、記録材上に定着することが望ましい。
【0010】
また、記録材の光沢や記録材としてOHPにおける透光色再現性を確保するため、フルカラー用定着装置は、トナー面を均一に溶融して平滑化し、高光沢に仕上げるべく、定着ローラ及び加圧ローラ双方に高平滑ないし鏡面な耐熱弾性層を設けた熱ローラ方式の定着装置が主流となっている。これは、耐熱弾性層を設けない定着ローラは、定着ローラの剛性によって、記録材表面の凹凸やトナー層表面の凹凸に追従できないため、微小な定着ムラが発生し、トナー層表面を平滑化できずに部分的に凹部が発生する。この凹部で光が乱反射することで、記録材の光沢の低下や光沢ムラ、OHPの透光色再現性の低下が発生してしまうためである。
【0011】
さらに、耐熱弾性層を設けない定着ローラは、定着ローラの剛性と加圧力によってトナーが押し潰され、記録材上において、未定着トナー画像に比べて、定着トナー画像の面積が広がるために、画像の解像度(ドット再現性)が低下するという問題があった。一方、耐熱弾性層を設ける定着ローラは、定着ローラの剛性が緩和され、トナーが押し潰されて、トナー画像が広がることによる解像度の低下を防止できる利点を持つ。
【0012】
ところが、フルカラー用の熱ローラ方式の定着装置において、広い定着ニップ幅を確保するためには、定着ローラの大径化、定着ローラの耐熱弾性層の厚肉化、加圧力増大化等の手法があるが、定着ローラを大径化した場合には、定着装置ひいては画像形成装置全体の大型化を招く問題がある。一方、耐熱弾性層の厚みを厚くした場合には、ハロゲンヒータ等の加熱源から定着ローラ表層への熱伝導の低下による熱供給速度の低下によって、定着ローラ表面温度が低下して、未定着トナーが記録材上に固着できない定着不良が発生するため、プリント速度が低下して、高スループット(単位時間当たりのプリント枚数)追従性が低下する等の問題がある。さらに、加圧力を大きくした場合には、トナーを押し潰す作用が大きくなるので、解像度低下の増大等の問題がある。
【0013】
フルカラー用定着装置において、定着装置の小型化を図り、かつ、高速化(高スループット化)、高画質化(高解像度化)を実現するには、定着ニップ幅を拡大しつつ熱の供給速度を低下させないで、適度な加圧力とすることが重要な課題であるが、熱ローラ方式におけるニップ幅の拡大手法としては、上述したローラの大径化及び耐熱弾性層の厚肉化、加圧力の増大化しかないことから、当該課題に応えるには限界があった。
【0014】
そこで、上述したような熱ローラ方式による限界を打破すべく、例えば前述した定着ベルトを加圧ローラに圧接させて定着ニップ部を形成する定着ベルト方式の定着装置が特開平4−324476号公報等で提案されている。
【0015】
定着ベルト方式の定着装置は、弾性ローラを低硬度化することで、熱ローラ方式に比べて、広い定着ニップ幅を容易に確保することができる。また、薄層で低熱容量の定着ベルトを加熱ローラによって加熱するため、急速に定着ベルトを加熱し、熱供給速度を低下させずに記録材を加熱することができるので、ウォームアップ時間を短縮でき、小型でかつ高速化が可能になるという利点がある。
【0016】
【特許文献1】
特開平4−324476号公報
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
画像形成装置の定着装置に上述した定着ベルト方式を採用するにあたって、良好なフルカラー画像を得るためには、上述した熱ローラ方式の定着装置と同様に、定着ベルトに耐熱弾性層を設けることが必要となる。
【0018】
しかしながら、定着ベルトの耐熱弾性層は、ベース層としてのNiやSUS等の金属や、PI(ポリイミド)等の耐熱性樹脂、そしてトップ層としてのフッ素系樹脂等の耐熱離型性樹脂と比較して、耐熱温度が低く、耐久によって耐熱弾性層の硬度が低下する等、劣化し易いという耐久性の問題があった。
【0019】
定着ベルトの耐熱弾性層は、上述したように、トナー面を均一に溶融して平滑化し、高光沢に仕上げ、トナーつぶれによる解像度低下を防止するため、低硬度が望ましい。しかし、耐熱弾性層を低硬度化すると、さらに耐熱性が低下するために、熱的劣化による硬度低下の劣化を引き起こし易くなる。
【0020】
また、定着ベルトの耐熱弾性層の耐久による劣化は、定着ベルトが複数のローラや部材に張架され、曲率変化による繰り返し応力が発生することによる機械的劣化が熱的劣化を助長するために、定着ローラの耐熱弾性層の耐久による劣化に比べて、大きいことことが判明した。
【0021】
そこで本発明は、上述した従来技術に伴う課題を解決するため、定着ベルト方式の定着装置において、記録材の光沢やOHPにおける透光色再現性を確保し、トナーつぶれによる画像の解像度の低下を防止すると同時に、定着ベルトの耐熱弾性層の熱的劣化及び機械的劣化を防止して、定着ベルトの耐久性を確保し、高耐久(高寿命)かつ高画質の定着ベルト、及び高耐久かつ高画質の定着装置を提供することを目的とする。
【0022】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、下記の本発明に係る定着装置にて達成される。
【0023】
金属又は耐熱性樹脂のベース層上に、耐熱弾性層を被覆した無端状定着ベルトにおいて、前記耐熱弾性層は、少なくとも2層の耐熱弾性層を有し、ベース層側の耐熱弾性層の耐熱温度が、表層側の耐熱弾性層の耐熱温度より高いことを特徴とする無端状定着ベルトである。
【0024】
金属又は耐熱性樹脂のベース層上に、耐熱弾性層、及び耐熱離型性樹脂のトップ層を、この順に被覆した無端状定着ベルトにおいて、前記耐熱弾性層は、少なくとも2層の耐熱弾性層を有し、ベース層側の耐熱弾性層の耐熱温度が、トップ層側の耐熱弾性層の耐熱温度より高いことを特徴とする無端状定着ベルトである。
【0025】
前記耐熱弾性層の硬度は、表層側の耐熱弾性層硬度が、ベース層側の耐熱弾性層硬度よりも低いことを特徴とする上記(1)記載の無端状定着ベルトである。
【0026】
前記耐熱弾性層の硬度は、トップ層側の耐熱弾性層硬度が、ベース層側の耐熱弾性層硬度よりも低いことを特徴とする上記(2)記載の無端状定着ベルトである。
【0027】
無端状定着ベルトが内側に配設した複数のローラ又は部材に所定の張力を持って張架され、加圧部材が前記複数のローラ又は部材の少なくとも1つに無端状定着ベルトを介して圧接されて、圧接ニップ部を形成し、前記圧接ニップ部に記録材を搬送して、記録材上の未定着画像を、記録材上に加熱、加圧して定着させる定着装置において、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の無端状定着ベルトを用いたことを特徴とする定着装置である。
【0028】
無端状定着ベルトが内側に配設した複数のローラ又は部材に所定の張力を持って張架され、加圧部材が前記複数のローラ又は部材の少なくとも1つに無端状定着ベルトを介して圧接されて、圧接ニップ部を形成し、前記圧接ニップ部に記録材を搬送して、記録材上の未定着画像を、記録材上に加熱、加圧して定着させる定着装置において、無端状定着ベルト表層及び加圧部材表層に、フッ素系樹脂等の耐熱離型性樹脂のトップ層を設け、かつオイル含有トナーを用いることで、無端状定着ベルトまたは加圧部材にオイル塗布機構を使用しないオイルレス定着装置であることを特徴とする上記(2)または上記(4)記載の定着装置である。
【0029】
前記圧接ニップ部を通過した記録材を無端状定着ベルト又は加圧部材から分離する分離部材を、無端状定着ベルト及び加圧部材に接触配置させないことを特徴とする上記(6)記載の定着装置である。
【0030】
(作用)
請求項1または請求項2記載の発明によれば、ベース層側の耐熱弾性層が高耐熱性なので、定着ベルトの耐熱弾性層は、耐久による熱的劣化が小さい。これは、定着ベルトの耐熱弾性層において、定着ベルト内側の加熱ローラからの熱的作用が最も大きいのは、ベース層と耐熱弾性層との界面部であるため、この界面部に接するベース側の耐熱弾性層を高耐熱性とすることで、定着ベルトの耐熱弾性層の耐久による熱的劣化が小さくなるためである。
【0031】
表層側またはトップ層側の耐熱弾性層は、ベース側の耐熱弾性層と比較して低耐熱性であるが、定着ベルト内側の加熱ローラからの熱的作用がベース層側の高耐熱性の耐熱弾性層によってブロックされて緩和されるために、耐久による熱的劣化が小さくなる。
【0032】
従って、本発明によれば、定着ベルトの耐熱弾性層は、耐久による熱的劣化を防止できるので、高耐久の定着ベルトを提供することができる。
【0033】
請求項3または請求項4記載の発明によれば、ベース層側の耐熱弾性層を高硬度・高耐熱性とし、表層またはトップ層側の耐熱弾性層を低硬度・低耐熱性とすることで、定着ベルトの耐久による熱的劣化及び機械的劣化が小さくなる。熱的劣化に対しては上記で述べた通りである。機械的劣化に対して下記に説明する。
【0034】
定着ベルトが複数のローラや部材に張架され、曲率変化が発生することによる機械的作用は、表層またはトップ層側の耐熱弾性層で最も大きい。これは、定着ベルトが曲率変化する時の変位量すなわち応力は、定着ベルトの外側すなわち表層またはトップ層側で最も大きいためである。この曲率変化による機械的作用は、表層またはトップ層側の耐熱弾性層を低硬度化することで、この低硬度の弾性により応力集中を緩和して、低減化することができる。よって、低硬度の耐熱弾性層は、機械的劣化に強く、熱的劣化に弱いという相反関係にある。
【0035】
従って、曲率変化による機械的作用は、熱的劣化を助長する傾向にあるため、ベース層側の耐熱弾性層は、高硬度かつ高耐熱性として、熱的劣化を防止すると共に、表層またはトップ層側の耐熱弾性層への熱的作用をブロックして緩和し、表層またはトップ層側の耐熱弾性層は、低硬度かつ低耐熱性として、曲率変化による機械的作用を緩和することで、高耐久定着ベルトを提供することができる。
【0036】
また、特に耐熱弾性層上に、トップ層として耐熱離型性樹脂を被覆する構成の定着ベルトにおいては、トップ層側の耐熱弾性層が高硬度の場合には、トップ層は弾性が小さいために、耐熱弾性層とトップ層との界面で応力が強いため、定着ベルトの曲率が小さい部分でトップ層を伸ばして塑性変形させてしまい、曲率の大きい部分または直線部分では、トップ層にシワが発生してしまうという問題が発生した。トップ層側の耐熱弾性層が低硬度の場合には、耐熱弾性層とトップ層との界面で発生する応力を低硬度の耐熱弾性層が緩和するため、定着ベルトの曲率が小さい部分でもトップ層を塑性変形させることを防止し、トップ層にシワが発生することが無いという利点を持つ。
【0037】
さらに、表層側またはトップ層側の耐熱弾性層を低硬度とすることで、トナー画像の平滑化作用が大きく、高光沢な画像及び透光色再現性に優れたOHT画像を得ることができ、また、トナーつぶれが小さいために、解像度の低下を防止することができるので、高品質画像を得ることができる。
【0038】
従って、ベース層側の耐熱弾性層は、高硬度・高耐熱性とすることで、熱的劣化防止、熱的作用のブロック層として働き、表層またはトップ層側の耐熱弾性層は、低硬度・低耐熱性とすることで、機械的劣化防止、高画質化として働くように、定着ベルトの耐熱弾性層を複層化して、各耐熱弾性層に各機能を持たせるように、機能分離を行うことで、高耐久化と画像品質良化を両立できる定着ベルトを提供することができる。
【0039】
請求項5記載の発明によれば、無端状定着ベルトが内側に配置した複数のローラ又は部材に所定の張力を持って張架される定着装置においては、定着ベルトの曲率が変化するために、定着ベルトの熱的劣化及び機械的劣化が大きくなるが、本発明の定着ベルトを採用することによって、機械的劣化及び熱的劣化を防止して、高耐久化と画像品質良化を両立できる定着装置を提供することができる。
【0040】
請求項6記載の発明によれば、本発明の無端状定着ベルトを採用することによって、高耐久化と画像品質良化を両立できるオイルレス定着装置を提供することができる。
【0041】
請求項7記載の発明によれば、本発明の無体状定着ベルトを採用し、さらに分離部材を、無端状定着ベルト又は加圧部材に非接触配置、あるいは分離部材を削除することによって、分離部材による無端状定着ベルト又は加圧部材の摺擦削れを防止できるので、さらに高耐久と画像品質良化を両立できるオイルレス定着装置を提供することができる。
【0042】
【発明の実施の形態】
以下の添付図面に基づき本発明における実施の形態に関して説明する。
【0043】
(実施形態1)
図1〜図3、及び表1により本発明に係る実施形態1について説明する。
【0044】
図2は、本実施形態に係る定着装置101の概略構成を示す模式的断面図である。
【0045】
この定着装置101は、図2で示すように、定着ベルト1、弾性ローラ2、加熱ローラ3、加圧ローラ4とで主要部が構成されている。
【0046】
定着ベルト1は、弾性ローラ2及び加熱ローラ3に張架され(所定の張力で架設され)、加圧ローラ4は定着ベルト1を介して弾性ローラ2に対向して設けられる。
【0047】
定着ベルト1は、低熱容量化を図り、クイックスタート性を向上させるために、フィルム膜厚は150μm以下、好ましくは30〜80μm程度の耐熱素材たるPTFE、PFA又はFEP等のフッ素樹脂を主成分とする無端帯状体であるという単層構造、或いは、ポリイミド、ポリアミドイミド、PEEK、PES又はPPS等の耐熱樹脂材や、Ni、SUS、ジュラルミン等の金属材を主成分とするベース層としての無端帯状体の外周面に、PTFE、PFA又はFEP等のフッ素樹脂を主成分とする離型層を被覆するという複層構造等を使用できる。
【0048】
また、フルカラー画像形成装置の定着装置において、定着ベルト1は、トナー面を均一に溶融して平滑化し、高光沢に仕上げるべく、前記ベース層としての無端帯状体の外周面に、厚み0.1mm〜1mm程度のシリコーンゴム、またはフッ素ゴム等の耐熱弾性層を被覆する複層構造等を使用できる。この場合には、定着ベルト1と記録材P上のトナーTとの離型性を向上してオフセットを防止するために、定着ベルト1にオイルを塗布するオイル塗布装置13が配置されるオイル塗布定着装置とする必要がある。
【0049】
従来のフルカラー画像形成装置の定着装置の定着ベルト1は、図3で示すように、ベース層20としてSUS材40μm上に耐熱弾性層としてシリコーンゴム層21を用いた単層の耐熱弾性層を用いていた。
【0050】
本実施形態では、図1で示すように、ベース層20としてのSUS材40μm上に耐熱弾性層としてフッ素ゴム層22とシリコーンゴム層23を用いた複層の耐熱弾性層を配設した内径φ60の定着ベルトを使用し、定着ベルト1に隣接してオイル塗布装置13が配置してある。
【0051】
ヒータ5を内包した加熱ローラ3は、立ち上がりを早くするために、小径かつ薄肉で熱伝導の良いアルミニウムや鉄等の金属材を主成分とする金属パイプで構成して低熱容量化してある。定着ベルト1は、ヒータ5により加熱ローラ3を介して加熱され、温度検知素子(サーミスタ)7で加熱ローラ3の温度を検知して、ヒータ5をON/OFFして、加熱ローラ3の温度を制御することによって、定着ベルト1の表面温度を所定の温度に維持する構成となっている。
【0052】
本実施形態では、アルミニウムの厚み1mm、外径φ24mmの加熱ローラ3を使用し、ヒータ5としてハロゲンヒータを使用した。
【0053】
加圧ローラ4は、芯金4aにシリコーンゴム又はフッ素ゴム等の耐熱弾性層4bを設けた構成の場合には、定着ベルト1にオイル塗布が必要なオイル塗布定着装置となる。
【0054】
本実施形態では、鉄の厚み1mmの芯金4aの外周に、厚み3mmのシリコーンゴムの耐熱弾性層を被覆した外径φ40mmの加圧ローラ4を使用した。また、本実施形態では、定着ベルト1を所定の温度に早く立ち上げるために、加圧ローラ4にヒータ6としてハロゲンヒータを内包させ、温度検知素子(サーミスタ)8で加圧ローラ4の温度を検知して、ヒータ6をON/OFFして、加圧ローラ4の温度を制御する構成となっている。しかし、装置構成によっては、ヒータ6を削除し、加熱源をヒータ5のみとする構成でも良い。
【0055】
弾性ローラ2は、芯金2a上に、シリコーンゴム、フッ素ゴム、または定着ベルト1の温度を早く立ち上げるために、断熱性を向上させたシリコーンスポンジ等の耐熱弾性層2bを被覆してある。
【0056】
本実施形態では、鉄の外径φ14mmの芯金2aの外周に、厚み8mmのシリコーンスポンジ2bを被覆し、シリコーンスポンジの熱伝導率0.08[W/(m・℃)]とした、外径φ30mmの弾性ローラ2を使用した。
【0057】
本実施形態において、加圧ローラ4は、両端部がベアリング等(不図示)を介して回転可能に定着装置に固定配置され、弾性ローラ2は、両端部がベアリング等(不図示)を介して回転可能で、かつ両端部が不図示のバネ等の加圧機構によって、定着ベルト1を介して加圧ローラ4に加圧されるように定着装置に配置される。互いに圧接された定着ベルト1と加圧ローラ4との間には、未定着のトナーT画像を担持した記録材Pが挿通され、トナーTを加熱溶解するとともに加圧して、記録材P上にトナーT画像を定着する圧接ニップ(定着ニップ)Nが形成される。また、加熱ローラ3は、両端部がベアリング等(不図示)を介して回転可能で、かつ定着ベルト1に所定のテンションを付与するように加圧機構(不図示)によって加圧されている。
【0058】
不図示の駆動源による回転駆動で定着ベルト1、弾性ローラ2、加熱ローラ3、加圧ローラ4が回転する。
【0059】
本実施形態では、画像形成装置本体からの駆動源によって加圧ローラ4が矢印X方向に回転する。定着ベルト1は、この加圧ローラ4の回転により、加圧ローラ4と定着ベルト1との外周面との摩擦力で、定着ベルト1に矢印Y方向に回転力が作用する。さらに定着ベルト1の内周面と、弾性ローラ2及び加熱ローラ3の外周面との摩擦力で、弾性ローラ2及び加熱ローラ3に回転力が作用する。従って、加圧ローラ4が駆動回転されることによって、定着ベルト1、弾性ローラ2及び加熱ローラ3が加圧ローラ4の周速度と略同じ周速度を持って従動回転する加圧ローラ駆動方式を採用している。定着ニップNに記録材Pが挿通された場合には、加圧ローラ4と記録材Pと定着ベルト1との摩擦力で前記同様に従動回転がなされる。
【0060】
ここで、弾性ローラ2と加圧ローラ4は、弾性ローラ2端部に配置したワンウェイギヤ(不図示)と、加圧ローラ4端部に配置したギヤ(不図示)によって連結され、加圧ローラ4と定着ベルト1、または記録材Pを介して加圧ローラ4と定着ベルト1において、スリップが発生した場合には、前記ワンウェイギヤ(不図示)によって弾性ローラ2が駆動回転され、加圧ローラ4と定着ベルト1は略同じ周速度を持って回転するようにスリップ対策がなされている。
【0061】
加圧ローラ4の周面の前後には、トナーT画像を担持した記録材Pが搬送される搬送路を構成するガイド部材としての定着入り口ガイド9、定着排紙ガイド10が配置されている。
【0062】
定着ニップN下流側には、記録材P上のトナーTと定着ベルト1または加圧ローラ4との分離不良が発生した場合に、記録材Pをメカ的に分離するように、分離部材として、定着ベルト1に所定の圧力で当接する上分離爪11、または加圧ローラ4に所定の圧力で当接する下分離爪12の少なくとも一方、あるいは両方の接触分離爪が配置されている。本実施形態においては、両方の接触分離爪が配置されている。
【0063】
定着ベルト方式を採用する従来の定着装置においては、例えば図3で示すようなベース層20としてのSUS材40μm上に、耐熱弾性層として低耐熱性・低硬度のシリコーンゴム層21を500μm被覆した単層の耐熱弾性層を用いた定着ベルト1を採用していた。
【0064】
この場合、定着ベルト1の耐熱弾性層としてのシリコーンゴム層21は、耐久によって、加熱ローラ3による熱的劣化による硬度低下や、定着ベルト1が弾性ローラ2と加熱ローラ3の2軸によって支持・回転されることから、繰り返しの曲率変化による機械的劣化による強度低下から破断等が発生するという問題が発生した。
【0065】
また、定着ベルトの耐熱弾性層の耐久劣化による硬度低下は、熱ローラ方式の定着装置における定着ローラの耐熱弾性層の耐久劣化による硬度低下に比べて大きいことから、定着ベルトが複数のローラや部材に張架され、曲率変化が発生することによる機械的劣化が熱的劣化を助長する傾向にあることが筆者らの検討により判明した。
【0066】
ここで、定着ベルト1の耐熱弾性層をシリコーンゴムから高耐熱性・高硬度のフッ素ゴムに変更することで、熱的劣化を防止することができた。
【0067】
しかしながら、フッ素ゴムはシリコーンゴムに比べて、低硬度化することが困難であるために、耐熱弾性層としてゴム硬度が高いことから、フッ素ゴムは、トナー面を均一に溶融して平滑化し、高光沢に仕上げる効果や、トナーつぶれによる解像度低下を防止する効果がシリコーンゴムに比べて小さいことが筆者らの検討により判明した。
【0068】
従って、定着ベルト1の耐熱弾性層としてフッ素ゴムを使用する場合、前記画像品質を良化させるためには、シリコーンゴムに比べて厚みを大きくする必要があり、ウォームアップ時間が延長し、かつ定着ベルト1表面温度が低下して、スループットを高くできないといった弊害が発生した。また、フッ素ゴムの厚みを大きくすると、画像品質は良化するが、シリコーンゴムと比べると、やはり画像品質は劣化してしまう。
【0069】
そこで、本実施形態においては、図1で示すように、ベース層20としてのSUS材40μm上に、耐熱弾性層として高耐熱性・高硬度のフッ素ゴム層22を250μm、低耐熱性・低硬度のシリコーンゴム層21を250μm、総耐熱弾性層厚み500μmを、この順序で被覆した複層耐熱弾性層を配設した定着ベルト1を使用した。
【0070】
この複層耐熱弾性層を用いた定着ベルト1においては、ベース層側の耐熱弾性層がフッ素ゴムで高耐熱性なので、定着ベルトの耐熱弾性層は、耐久による熱的劣化が小さい。これは、定着ベルトの耐熱弾性層において、定着ベルト内側の加熱ローラからの熱的作用が最も大きいのは、ベース層と耐熱弾性層との界面部であるため、この界面部に接するベース側の耐熱弾性層を高耐熱性とすることで、定着ベルトの耐熱弾性層の耐久による熱的劣化が小さくなるためである。
【0071】
表層側の耐熱弾性層であるシリコーンゴムは、低耐熱性であるが、定着ベルト内側の加熱ローラからの熱的作用がベース層側の高耐熱性の耐熱弾性層によってブロックされて緩和されるために、耐久による熱的劣化が小さくなる。
【0072】
また、定着ベルトが複数のローラや部材に張架され、曲率変化が発生することによる機械的作用は、表層側の耐熱弾性層で最も大きい。これは、定着ベルトが曲率変化する時の変位量すなわち応力は、定着ベルトの外側すなわち表層側で最も大きいためである。この曲率変化による機械的作用は、表層側の耐熱弾性層を低硬度化することで、この低硬度の弾性により応力集中を緩和して、低減化することができる。よって、低硬度の耐熱弾性層は、機械的劣化に強く、熱的劣化に弱いという相反関係にある。
【0073】
従って、曲率変化による機械的作用は、熱的劣化を助長する傾向にあるため、ベース層側の耐熱弾性層は、高硬度かつ高耐熱性として、熱的劣化を防止すると共に、表層側の耐熱弾性層への熱的作用をブロックして緩和し、表層側の耐熱弾性層は、低硬度かつ低耐熱性として、曲率変化による機械的作用を緩和することで、高耐久の定着ベルトを提供することができる。
【0074】
さらに、表層側の耐熱弾性層を低硬度のシリコーンゴムとすることで、トナー画像の平滑化作用が大きく、高光沢な画像及び透光色再現性に優れたOHT画像を得ることができ、また、トナーつぶれが小さいために、解像度の低下を防止することができるので、高品質画像を得ることができる。
【0075】
従って、ベース層側の耐熱弾性層は、高硬度・高耐熱性のフッ素ゴムとすることで、熱的劣化防止、熱的作用のブロック層として働き、表層側の耐熱弾性層は、低硬度・低耐熱性のシリコーンゴムとすることで、機械的劣化防止、高画質化として働くように、定着ベルトの耐熱弾性層を複層化して、各耐熱弾性層に各機能を持たせるように、機能分離を行うことで、高耐久化と画像品質良化を両立できる定着ベルトを提供することができる。
【0076】
図1で示す本実施形態の複層耐熱弾性層総厚み500μmの定着ベルトは、トナーと接触する表層を低硬度のシリコーンゴムとすることで、トナー面を均一に溶融して平滑化し、高光沢に仕上げる効果や、トナーつぶれによる解像度低下を防止する効果は、図3で示す従来の単層シリコーンゴム層厚み500μmの定着ベルトと同等レベルを維持することができた。
【0077】
また、複層耐熱弾性層総厚みを500μmとして、図3で示す従来の単層シリコーンゴム層厚み500μmと同じ厚みとすることで、ウォームアップ時間は同等で、同等のスループットを維持することができた。
【0078】
従って、上記構成の複層耐熱弾性層を用いた定着ベルト1においては、熱的・機械的劣化を防止した高耐久性と、画像品質を満足し、かつウォームアップ時間・スループット性能を維持した定着ベルトを提供することができた。
【0079】
実際に、最大通紙幅が297mm(A3紙縦通紙)の定着装置101において、記録材の搬送スピードを104mm/sec、弾性ローラ2の加圧ローラ4への加圧力を総圧(両端の加圧力の合計)300N(約30Kgf)、定着ニップ幅6mm、加熱ローラ5の定着ベルト1の張力を総圧(両端の加圧力の合計)50N(約5Kgf)とした構成において、
加熱ローラ3表面温度を、定着ニップNにおいて記録材通過時250℃、記録材非通過時(スタンバイ時)200℃とするようにサーミスタ7で温調し、加圧ローラ4表面温度を100℃(常時)とするようにサーミスタ8で温調して、A3紙を間欠通紙(5分間で2枚通紙)した時の定着ベルト硬度変化(Askerマイクロゴム硬度計測定)と、画像特性(光沢均一性、トナーつぶれ)を、表1に示す。
【0080】
従来の単層耐熱弾性層定着ベルト(ベース層:SUS材40μm+表層:シリコーンゴム層500μm)
本実施形態の複層耐熱弾性層定着ベルト(ベース層:SUS材40μm+フッ素ゴム層250μ+表層:シリコーンゴム層250μm)
比較例の複層耐熱弾性層定着ベルト(ベース層:SUS材40μm+シリコーンゴム層250μm+表層:フッ素ゴム層250μm)
比較例の単層耐熱弾性層定着ベルト(ベース層:SUS材40μm+表層:フッ素ゴム層500μm)
<硬度変化>
ベース層としてSUS材40μm品を用い、SUS材に各耐熱弾性層を被覆して、耐熱弾性層上を、Askerマイクロゴム硬度計で測定した。耐熱弾性層のゴム材は、JIS−A硬度で、シリコーンゴムは10度品、フッ素ゴムは30度品を用いた。
【0081】
表1で示すように、まず、▲1▼の従来の単層(シリコーンゴム)耐熱弾性層は、耐久が進むに従って硬度が10度低下し、10万枚でゴム層が破壊してしまった。これは、加熱ローラ3による熱的劣化によって、耐熱弾性層が硬度低下し、さらに機械的劣化によって熱的劣化が助長されて耐熱弾性層の破壊が発生している。
【0082】
▲2▼の本実施形態の複層耐熱弾性層は、耐久初期において下層の高硬度フッ素ゴムの影響を若干受けて硬度が高くなっているが、20万枚でも硬度低下が3度と少なく、定着ベルトの寿命としては、▲1▼の従来の単層耐熱弾性層に比べて、倍以上の耐久性が得られた。これは、耐熱性が高く熱的にほとんど劣化しない下層のフッ素ゴムが加熱ローラ5の熱のブロック層として働き、熱的作用を緩和することで、表層のシリコーンゴムの熱的劣化を防止し、さらに、表層の低硬度シリコーンゴムによって機械的劣化も低減されているためである。
【0083】
▲3▼の比較例の複層耐熱弾性層は、上記▲2▼の本実施形態の複層耐熱弾性層において、弾性層の順序を逆にして、下層にシリコーンゴム、表層にフッ素ゴムを被覆したものである。▲3▼の構成での耐久による硬度低下は、▲1▼の構成と比較して硬度低下が5度と少ないが、これは表層のフッ素ゴムの硬度が高いために、下層のシリコーンゴムの硬度変化に対して測定値変化が少ないためである。従って、実際には、下層のシリコーンゴムは、▲1▼の従来例と同様に10度程度の硬度低下が発生していると考えられる。よって、10万枚では、熱的・機械的劣化によって、下層のシリコーンゴムが破壊して、表層のフッ素ゴムとの接着力が低下し、表層のフッ素ゴムが移動することで、表層のフッ素ゴムにシワが発生してしまった。
【0084】
▲4▼の比較例の単層(フッ素ゴム)耐熱弾性層は、高硬度のフッ素ゴムのために硬度が最も高くなっている。▲4▼の構成での耐久による硬度低下は、高耐熱のため、ほとんど低下しない。ただし、20万枚時には、曲率変化による繰り返し応力の機械的劣化によって、表面に微小な亀裂(クラック)が発生して、画像に微小な横筋が発生してしまった。
【0085】
<画像特性>
耐久初期において、上記設定条件における定着トナー画像の表面平滑性の均一性(光沢均一性)と、文字や微小ドットのトナーつぶれ(ドット再現性)を評価した。
【0086】
光沢均一性は、定着後の画像を目視で観察し、均一な画像を○、微小な光沢ムラが若干有るがほぼ均一な画像を△、微小な光沢ムラが多数発生しているものを×とした。
【0087】
ドット再現性は、文字や微小ドットにおいて、記録材上の未定着トナー画像の拡大写真と、定着後のトナー画像の拡大写真を比較して、文字太さやドットの大きさに注目し、定着画像の文字太さやドットの大きさの未定着画像からの増加率が10%未満を○、20%未満を△、20%以上を×として評価した。
【0088】
光沢均一性及びドット再現性として、△レベル以上は実用上問題の無いレベルであり、×レベルは許容できない画像品質である。
【0089】
表1で示すように、表層に低硬度のシリコーンゴムを採用している▲1▼の従来の単層(シリコーンゴム)耐熱弾性層と、▲2▼の表層に低硬度のシリコーンゴムを採用している本実施形態の複層耐熱弾性層は、光沢均一性及びドット再現性は非常に良好であり、両者とも同等レベルの○レベルであった。
【0090】
一方、表層に高硬度のフッ素ゴムを採用している▲3▼の比較例の複層耐熱弾性層と、▲4▼の比較例の単層(フッ素ゴム)耐熱弾性層は、▲1▼や▲2▼に比較して硬度が高いため、光沢均一性及びドット再現性は△レベルであった。
【0091】
従って、本実施形態である▲2▼の複層耐熱弾性層構成のように、樹脂や金属等のベース層上に、高耐熱性・高硬度の耐熱弾性層例えばフッ素ゴムを被覆し、その上に表層として低耐熱性・低硬度の耐熱弾性層例えばシリコーンゴムを被覆して、耐熱弾性層を複層化して耐久性と画像品質の機能を分離させる構成の定着ベルトを採用することによって、高耐久化と画像品質良化とを両立することができる定着ベルト、及び定着装置を提供することができた。そして、この定着装置を採用することによって、定着装置交換の頻度を減少させることができるので、画像形成装置のランニングコストをも減少させる低コスト画像形成装置を提供することができた。
【0092】
定着ベルトのベース層として本実施形態においては、SUS材40μmを用いた例で説明したが、ベース層は、金属に限定されるものでは無く、PI(ポリイミド)等の耐熱性樹脂を用いても、またベース層厚みも定着装置構成や画像形成装置構成に応じて任意に設定しても本発明の効果は同等である。
【0093】
本実施形態では、フルカラー画像形成装置の定着装置に関して述べたが、これは画像特性に要求されるレベルが高いフルカラー画像形成装置に本発明を適用すると効果が大きいためであるが、モノカラー画像形成装置(例えば白黒画像形成装置)の定着装置に適用しても同等の効果を発揮することができる。
【0094】
本実施形態では、定着ベルトの複層耐熱弾性層として、下層にフッ素ゴム、表層にシリコーンゴムの構成に関して述べたが、フッ素ゴムとシリコーンゴムの組み合わせに限定するものでは無く、下層に高耐熱性弾性層で表層に低耐熱弾性層の組み合わせ、または下層に高硬度耐熱弾性層で表層に低硬度耐熱弾性層の組み合わせを満たす任意の耐熱弾性層を用いても、高耐久または高画像品質を満足できる定着ベルトを提供することができる。従って、例えば、下層に高耐熱性で高硬度のシリコーンゴム、表層に低耐熱性で低硬度のシリコーンゴムとする組み合わせの複層耐熱弾性層の定着ベルト構成とすることでも、高耐久と高画質の両方を満足できる本発明の本実施形態と同様の効果を発揮できる定着ベルトを提供することができる。
【0095】
(実施形態2)
図4〜図6、及び表2により本発明に係る実施形態2について説明する。
【0096】
実施形態1は、オイル塗布装置13を配設したオイル塗布定着装置に関して述べたが、本実施形態はオイル塗布装置13を削除したオイルレス定着装置に関して述べる。
【0097】
本実施形態は、定着ベルト1と加圧ローラ4の表層にフッ素樹脂等の耐熱離型性樹脂層を被覆し、オイル内包トナーを使用して、定着ベルト1及び加圧ローラ4と、トナーとの離型性を高めたオイルレス定着装置に本発明を適用したものである。
【0098】
図5は、本実施形態に係る定着装置102の概略構成を示す模式的断面図である。図1と同部材は同符号で示している。図5においては、オイル塗布装置13が削除され、オイル内包トナーを使用しているために、記録材P上のトナーTと定着ベルト1または加圧ローラ4との離型性(分離性)が良好なため、記録材Pをメカ的に分離する上分離爪11と下分離爪12が削除している。
【0099】
図5で示すように、分離爪を削除することによって、定着ベルト1または加圧ローラ4の分離爪による削れを無くすことができるので、定着ベルト1または加圧ローラ4の寿命を延ばすことができる。さらに、オイル塗布装置13を削除することによって、定着ベルト1の熱を奪う部材が減るので、ウォーミングアップ時間を減少することができる等の利点を持つ。
【0100】
定着ベルト方式のオイルレス定着装置を採用する従来の定着装置においては、図6で示すようなベース層20として例えばSUS材40μm上に、耐熱弾性層としてのシリコーンゴム層21を500μm被覆し、さらに表層に耐熱離型性樹脂層23として例えばPFAチューブ30μmを被覆した単層耐熱弾性層を用いた定着ベルト1を採用していた。
【0101】
この場合、実施形態1と同様に定着ベルト1の耐熱弾性層としてのシリコーンゴム層21は、耐久によって、加熱ローラ3による熱的劣化による硬度低下や、定着ベルト1が弾性ローラ2と加熱ローラ3の2軸によって支持・回転されることから、繰り返しの曲率変化による機械的劣化から熱的劣化を助長し、シリコーンゴム層21が破壊され、表層のPFAチューブにシワが発生するという問題が発生した。
【0102】
ここで、定着ベルト1の耐熱弾性層を、実施形態1と同様に、シリコーンゴムから高耐熱性・高強度のフッ素ゴムに変更することで、上記熱的劣化を防止することができた。
【0103】
しかしながら、実施形態1で説明したように、フッ素ゴムは、シリコーンゴムに比べてトナー面を均一に溶融して平滑化し、高光沢に仕上げる効果や、トナーつぶれによる解像度低下を防止する効果がシリコーンゴムに比べて小さく、また、画像品質を良化させるためには、シリコーンゴムに比べて厚みを大きくする必要があり、ウォームアップ時間の延長、高スループットにできないといった弊害が発生した。また、フッ素ゴムの厚みを大きくすると、画像品質は良化するが、シリコーンゴムと比べると、やはり画像品質は劣化してしまう。
【0104】
そこで、本実施形態においては、図4で示すように、ベース層20としてのSUS材40μm上に耐熱弾性層としてフッ素ゴム層22を250μm、シリコーンゴム層21を250μmを、この順序で被覆し、さらに表層に離型性耐熱樹脂層23としてPFAチューブ30μmを被覆した複層耐熱弾性層を用いた定着ベルト1を使用した。
【0105】
この複層耐熱弾性層を用いた定着ベルト1は、ベース層側の耐熱弾性層がフッ素ゴムで高耐熱性・高硬度であり、トップ層側の耐熱弾性層がシリコーンゴムで低耐熱性・低硬度なので、定着ベルトの耐熱弾性層は、耐久による熱的劣化及び機械的劣化が小さく、高耐久性で高画像品質の定着ベルトである。
【0106】
これは、実施形態1で説明したように、定着ベルト内側の加熱ローラからの熱的作用がベース層側の高耐熱性・高硬度の耐熱弾性層(フッ素ゴム層)によってブロックされて緩和されるために、トップ層側の低耐熱性・低硬度の耐熱弾性層(シリコーンゴム層)の耐久による熱的劣化が小さくなるためである。
【0107】
また、実施形態1で説明したように、トップ層側の低硬度の耐熱弾性層(シリコーンゴム層)が曲率変化による機械的作用を緩和することで、耐久による機械的劣化が小さいためである。
【0108】
さらに、特に本実施形態のように耐熱弾性層上に、トップ層として耐熱離型性樹脂を被覆する構成の定着ベルトにおいては、トップ層側の耐熱弾性層が高硬度の場合には、トップ層は弾性が小さいために、耐熱弾性層とトップ層との界面で応力が強いため、定着ベルトの曲率が小さい部分でトップ層を伸ばして塑性変形させてしまい、曲率の大きい部分または直線部分では、トップ層にシワが発生してしまうという問題が発生した。しかし、本実施形態のようにトップ層側の耐熱弾性層が低硬度の場合には、耐熱弾性層とトップ層との界面で発生する応力を低硬度の耐熱弾性層が緩和するため、定着ベルトの曲率が小さい部分でもトップ層を塑性変形させることを防止し、トップ層にシワが発生することが無いという利点を持つ。
【0109】
そして、表層側の耐熱弾性層を低硬度のシリコーンゴムとすることで、トナー画像の平滑化作用が大きく、高光沢な画像及び透光色再現性に優れたOHT画像を得ることができ、また、トナーつぶれが小さいために、解像度の低下を防止することができるので、高品質画像を得ることができる。
【0110】
従って、ベース層側の耐熱弾性層は、高硬度・高耐熱性のフッ素ゴムとすることで、熱的劣化防止、熱的作用のブロック層として働き、表層側の耐熱弾性層は、低硬度・低耐熱性のシリコーンゴムとすることで、機械的劣化防止、高画質化として働くように、定着ベルトの耐熱弾性層を複層化して、各耐熱弾性層に各機能を持たせるように、機能分離を行うことで、高耐久化と画像品質良化を両立できる定着ベルトを提供することができる。
【0111】
トップ層側の耐熱弾性層を低硬度のシリコーンゴムとすることで、トナー面を均一に溶融して平滑化し、高光沢に仕上げる効果や、トナーつぶれによる解像度低下を防止する効果は、図6で示す従来の単層シリコーンゴム層厚み500μmの定着ベルトと同等レベルを維持することができた。
【0112】
また、複層耐熱弾性層の総厚みを500μmとして、図6で示す従来の単層シリコーンゴム層厚み500μmと同じ厚みとすることで、ウォームアップ時間は同等で、同等のスループットを維持することができた。
【0113】
よって、上記構成の複層耐熱弾性層を用いた定着ベルト1においては、熱的・機械的劣化を防止した高耐久性と、画像品質を満足し、かつウォームアップ時間・スループット性能を維持した定着ベルト1を提供することができた。
【0114】
実際に、最大通紙幅が297mm(A3紙縦通紙)の定着装置101において、記録材の搬送スピードを104mm/sec、弾性ローラ2の加圧ローラ4への加圧力を総圧(両端の加圧力の合計)300N(約30Kgf)、定着ニップ幅6mm、加熱ローラ5の定着ベルト1の張力を総圧(両端の加圧力の合計)50N(約5Kgf)とした構成において、
加熱ローラ3表面温度を、定着ニップNにおいて記録材通過時260℃、記録材非通過時(スタンバイ時)200℃とするようにサーミスタ7で温調し、加圧ローラ4表面温度を100℃(常時)とするようにサーミスタ8で温調して、A3紙を間欠通紙(5分間で2枚通紙)した時の定着ベルト硬度変化(Askerマイクロゴム硬度計測定)と、画像特性(光沢均一性、トナーつぶれ)を、表2に示す。
【0115】
従来の単層耐熱弾性層定着ベルト(ベース層:SUS材40μm+シリコーンゴム層500μm+トップ層:PFAチューブ30μm)
本実施形態の複層耐熱弾性層定着ベルト(ベース層:SUS材40μm+フッ素ゴム層250μ+シリコーンゴム層250μm+トップ層:PFAチューブ30μm)
比較例の複層耐熱弾性層定着ベルト(ベース層:SUS材40μm+シリコーンゴム層250μm+フッ素ゴム層250μm+トップ層:PFAチューブ30μm)
比較例の単層耐熱弾性層定着ベルト(ベース層:SUS材40μm+フッ素ゴム層500μm+トップ層:PFAチューブ30μm)
<硬度変化>
ベース層としてSUS材40μm品を用い、SUS材に各耐熱弾性層及びトップ層を被覆して、トップ層上を、Askerマイクロゴム硬度計で測定した。ゴム材は、JIS−A硬度で、シリコーンゴムは10度品、フッ素ゴムは30度品を用いた。
【0116】
表2で示すように、まず、▲5▼の従来の単層(シリコーンゴム)耐熱弾性層は、耐久が進むに従って硬度が4度低下し、10万枚でトップ層のPFAチューブにシワが発生してしまった。これは、加熱ローラ3による熱的劣化によって、耐熱弾性層が硬度低下し、さらに曲率変化による機械的劣化によって熱的劣化が助長され、耐熱弾性層が破壊し、トップ層のPFAチューブにシワが発生している。
▲5▼の構成での耐久による硬度低下は、実施形態1の▲1▼の構成と比較して硬度低下が少ないが、これはトップ層のPFAチューブの硬度が高いために、内部の耐熱弾性層であるシリコーンゴムの硬度変化に対して測定値変化が少ないためである。従って、実際には、内部のシリコーンゴムは実施形態1の▲1▼の構成と同様に10度程度の硬度低下が発生していると考えられる。
【0117】
▲6▼の本実施形態の複層耐熱弾性層は、耐久初期において下層の高硬度フッ素ゴムの影響を若干受けて硬度が若干高くなっているが、20万枚でも硬度低下が1度と少なく、定着ベルトの寿命としては、▲5▼の従来の単層耐熱弾性層に比べて、倍以上の耐久性が得られた。これは、耐熱性が高く熱的にほとんど劣化しない下層のフッ素ゴムによって加熱ローラ3の熱のブロック層として働き、熱的作用を緩和することで、上層のシリコーンゴムの熱的劣化を防止し、さらに上層の低硬度のシリコーンゴムによって機械的劣化も低減されている。▲6▼の構成での耐久による硬度低下は、実施形態1の▲2▼の構成と比較して硬度低下が少ないが、これはトップ層のPFAチューブの硬度が高いために、内部の耐熱弾性層の硬度変化に対して測定値変化が少ないためである。従って、実際には、内部の耐熱弾性層は実施形態1の▲2▼の構成と同程度の3度程度の硬度低下が発生していると考える。
【0118】
▲7▼の比較例の複層耐熱弾性層は、上記▲6▼の本実施形態の複層耐熱弾性層において、弾性層の順序を逆にして、下層にシリコーンゴム、上層にフッ素ゴムを被覆したものである。▲7▼の構成での耐久による硬度低下は、▲5▼の構成と比較して硬度低下が3度と少ないが、これは上層のフッ素ゴム及び表層のPFAチューブの硬度が高いために、下層のシリコーンゴムの硬度変化に対して測定値変化が少ないためである。従って、実際には、下層のシリコーンゴムは、▲5▼の従来例、即ち実施形態▲1▼の構成と同様に10度程度の硬度低下が発生していると考えられる。よって、10万枚では、熱的・機械的劣化によって、下層のシリコーンゴムが破壊して、上層のフッ素ゴムとの接着力が低下し、上層のフッ素ゴムが移動することで、トップ層のPFAチューブにシワが発生してしまった。
【0119】
▲8▼の比較例の単層耐熱弾性層は、高硬度のフッ素ゴムのために硬度が最も高くなっている。▲8▼の構成での耐久による硬度低下は、高耐熱のため、ほとんど低下しない。ただし、10万枚時には、曲率変化による繰り返し応力によって、トップ層のPFAチューブを塑性変形させてしまい、定着ベルトの曲率の大きい箇所や直線箇所において、PFAチューブにシワが発生してしまった。
【0120】
<画像特性>
耐久初期において、上記設定条件における定着トナー画像の表面平滑性の均一性(光沢均一性)と、文字や微小ドットのトナーつぶれ(ドット再現性)を評価した。
【0121】
光沢均一性は、定着後の画像を目視で観察し、均一な画像を○、微小な光沢ムラが若干有るがほぼ均一な画像を△、微小な光沢ムラが多数発生しているものを×とした。
【0122】
ドット再現性は、文字や微小ドットにおいて、記録材上の未定着トナー画像の拡大写真と、定着後のトナー画像の拡大写真を比較して、文字太さやドットの大きさに注目し、定着画像の文字太さやドットの大きさの未定着画像からの増加率が10%未満を○、20%未満を△、20%以上を×として評価した。
【0123】
光沢均一性及びドット再現性として、△レベル以上は実用上問題の無いレベルであり、×レベルは許容できない画像品質である。
【0124】
表2で示すように、トップ層にPFAチューブを被覆し、低硬度のシリコーンゴムを採用している▲5▼の従来の単層(シリコーンゴム)耐熱弾性層と、▲6▼の上層に低硬度のシリコーンゴムを採用している本実施形態の複層耐熱弾性層は、光沢均一性及びドット再現性は良好であり、両者とも同等レベルの△レベルであった。実施形態1の表1の▲1▼または▲2▼と比較すると、表層に高硬度のPFAチューブを被覆しているために、1ランクレベルが低下しているが実用上問題無いレベルである。
【0125】
一方、表層にPFAチューブを被覆し、上層に高硬度のフッ素ゴムを採用している▲7▼の比較例の複層耐熱弾性層と▲8▼の比較例の単層(フッ素ゴム)耐熱弾性層は、▲5▼や▲6▼に比較して硬度が高いため、光沢均一性及びドット再現性は×レベルであった。これも実施形態1の表1の▲3▼や▲4▼と比較すると、表層に高硬度のPFAチューブを被覆しているために、レベルが低下しており、画像品質として許容できないレベルであった。
【0126】
従って、本実施形態の複層耐熱弾性層構成▲6▼のように、樹脂や金属等のベース層上に、高耐熱性・高硬度の耐熱弾性層例えばフッ素ゴムを被覆し、その上に低耐熱性・低硬度の耐熱弾性層例えばシリコーンゴムを被覆し、さらにトップ層にPFAチューブを被覆したオイルレス定着装置用の定着ベルトを採用することによって、高耐久化と画像品質良化とを両立することができる定着ベルト、及び定着装置を提供することができた。そして、この定着装置を採用することによって、定着装置交換の頻度を減少させることができるので、画像形成装置のランニングコストをも減少させる低コスト画像形成装置を提供することができた。
【0127】
本実施形態では、オイルレス定着装置に関して述べたが、トップ層に耐熱離型層を設けた分、定着ベルト表面温度を所定温度まで上昇させるためには、加熱ローラ温度をオイル塗布定着装置に比べて高温化する必要がある。従って、定着ベルトの耐熱弾性層の熱的劣化がより促進されるため、熱的劣化に対して、本発明の本実施形態を用いる効果が大きくなる。
【0128】
定着ベルトのベース層として本実施形態においては、SUS材40μmを用いた例で説明したが、ベース層は、金属に限定されるものでは無く、PI(ポリイミド)等の耐熱性樹脂を用いても、またベース層厚みも定着装置構成や画像形成装置構成に応じて任意に設定しても本発明の効果は同等である。
【0129】
本実施形態では、フルカラー画像形成装置のオイルレス定着装置に関して述べたが、これは画像特性に要求されるレベルが高いフルカラー画像形成装置に本発明を適用すると効果が大きいためであるが、モノカラー画像形成装置(例えば白黒画像形成装置)の定着装置に適用しても同等の効果を発揮することができる。
【0130】
本実施形態では、定着ベルトの複層耐熱弾性層として、下層にフッ素ゴム、上層にシリコーンゴムの構成に関して述べたが、フッ素ゴムとシリコーンゴムの組み合わせに限定するものでは無く、下層に高耐熱弾性層と上層に低耐熱弾性層の組み合わせ、または下層に高耐熱・高硬度耐熱弾性層と上層に低耐熱・低硬度耐熱弾性層の組み合わせを満たす任意の耐熱弾性層用いても、高耐久または高画像品質を満足できる定着ベルトを提供することができる。
【0131】
従って、例えば、下層に高耐熱性で高硬度のシリコーンゴム、上層に低耐熱性で低硬度のシリコーンゴムとする組み合わせの複層耐熱弾性層の定着ベルト構成とすることでも、高耐久と高画質の両方を満足できる本発明の本実施形態と同様の効果を発揮できる定着ベルトを提供することができる。
【0132】
本実施形態では、オイルレス定着装置として、表層にPFAチューブを被覆した定着ベルトに関して述べたが、表層の耐熱離型性樹脂層としては、FEPコート等、他の耐熱離型性樹脂としても効果は同等である。
【0133】
以上、本発明の実施形態に関して説明したが、
実施形態1または実施形態2における諸数値は、実施形態の説明を簡略化するための一例であって、前記諸数値は、装置の構成及び設定等に応じて定めることができる。
【0134】
本発明は、実施形態1または実施形態2で説明した定着装置に限定されるものではなく他の形態のベルト定着装置にも適用することができる。他の形態のベルト定着装置例に関して、下記3)〜6)に説明する。
【0135】
本発明の実施形態は、弾性ローラ2と加熱ローラ3の2軸に定着ベルトを張架する構成に関して述べたが、例えば図7に示すように、定着ベルト1を加圧ローラ4に巻きつけるように、補助ローラ30を、弾性ローラ2の上流側に配置した3軸構成にも本発明を適用することによって、定着ベルトの高耐久性と画像品質良化を両立することができる。この3軸構成は、定着ニップN幅を増加して、記録材P及びトナーTの加熱時間を増加することで、定着性を向上させる利点を持つ。図7は、定着ニップNにおいて回転方向の圧力を均等にするために、弾性ローラ2と補助ローラ30との間に、押圧部材31を配置する構成としてある。また、補助ローラ30は、弾性ローラ2の下流側に配置しても良い。
【0136】
本発明の実施形態において、加熱ローラを金属等の電磁誘導発熱性部材(例えばNi)とし、前記加熱ローラ内部に、磁場発生手段としての励磁コイル、磁性コア等を配設して、渦電流を発生させることによるジュール熱によって、電磁誘導発熱性部材である加熱ローラを、電磁誘導発熱させる構成の電磁誘導加熱方式のベルト定着装置においても、本発明を適用することによって、定着ベルトの高耐久性と画像品質良化を両立できる。
【0137】
本発明の実施形態において、定着ベルトのベース層を金属等の電磁誘導発熱性部材(例えばNi)とし、定着ベルトの加熱源として、定着ベルト内側又は外側に磁場発生手段としての励磁コイル、磁性コア等を配設して、渦電流を発生させることによるジュール熱によって、電磁誘発熱部材である定着ベルトのベース層を、直接、電磁誘導発熱させる構成の電磁誘導加熱方式のベルト定着装置においても、本発明を適用することによって、定着ベルトの高耐久性と画像品質良化を両立することができる。
【0138】
本発明の実施形態において、定着ベルトの加熱源は、定着ベルト内側にセラミックス等を主成分とする薄板状の基板の一面に商用電源からの電力供給により発熱する抵抗発熱体が設けられ、発熱体が定着ベルトを介して加圧ローラに圧接し、発熱体表面を定着ベルトが摺擦回転する構成の面状加熱方式のベルト定着装置においても、本発明を適用することによって、定着ベルトの高耐久性と画像品質良化を両立することができる。
【0139】
本発明は、加圧体がローラ体に限らず、加圧ベルト等の他の形態による加圧体の定着装置にも適用できる。さらに、この場合には、加圧ベルトに本発明を適用しても良い。
【0140】
以下に本発明の実施形態1に係る検討結果(表1)及び本発明の実施形態2に係る検討結果(表2)を示す。
【0141】
【表1】
【0142】
【表2】
【0143】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、ベース層側の耐熱弾性層は、高硬度・高耐熱性のフッ素ゴムとすることで、熱的劣化防止、熱的作用のブロック層として働き、表層側の耐熱弾性層は、低硬度・低耐熱性のシリコーンゴムとすることで、機械的劣化防止、高画質化として働くように、定着ベルトの耐熱弾性層を複層化して、各耐熱弾性層に各機能を持たせるように、機能分離を行うことで、高耐久化と画像品質良化とを両立することができる定着ベルト、及び定着装置を提供することができる。そして、この定着装置を採用することによって、定着装置交換の頻度を減少させることができるので、画像形成装置のランニングコストをも減少させる低コスト画像形成装置を提供することができる。
【0144】
特に、定着ベルトの曲率が変化しながら走行する構成においては、高耐久化の効果が大きくなる。
【0145】
さらに、オイルレス定着装置において、分離爪を定着ベルトから非接触配置構成とすることによって、より高耐久な定着ベルト及び定着装置を得ることができ、より低コスト画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態1に係る定着ベルト構成を示す模式的断面図である。
【図2】本発明の実施形態1に係る定着装置の概略構成を示す模式的断面図である。
【図3】本発明の実施形態1に係る従来例の定着ベルト構成を示す模式的断面図である。
【図4】本発明の実施形態2に係る定着ベルト構成を示す模式的断面図である。
【図5】本発明の実施形態2に係る定着装置の概略構成を示す模式的断面図である。
【図6】本発明の実施形態2に係る従来例の定着ベルト構成を示す模式的断面図である。
【図7】本発明の他の実施形態に係る定着装置の概略構成を示す模式的断面図である。
【符号の説明】
1 定着ベルト
2 弾性ローラ
3 加熱ローラ
4 加圧ローラ
5 加熱ローラ内包ヒータ
6 加圧ローラ内包ヒータ
7、8 温度検知体(温度センサ)
11 上接触分離爪
12 下接触分離爪
20 定着ベルトのベース層
21 耐熱弾性層(シリコーンゴム層)
22 耐熱弾性層(フッ素ゴム層)
23 耐熱離型性樹脂層(PFAチューブ)
30 定着補助ローラ
31 押圧部材
101 オイル塗布定着装置
102 オイルレス定着装置
N 圧接ニップ(定着ニップ)
P 記録材
T トナー
Claims (7)
- 金属又は耐熱性樹脂のベース層上に、耐熱弾性層を被覆した無端状定着ベルトにおいて、
前記耐熱弾性層は、少なくとも2層の耐熱弾性層を有し、ベース層側の耐熱弾性層の耐熱温度が、表層側の耐熱弾性層の耐熱温度より高いことを特徴とする無端状定着ベルト。 - 金属又は耐熱性樹脂のベース層上に、耐熱弾性層、及び耐熱離型性樹脂のトップ層を、この順に被覆した無端状定着ベルトにおいて、
前記耐熱弾性層は、少なくとも2層の耐熱弾性層を有し、ベース層側の耐熱弾性層の耐熱温度が、トップ層側の耐熱弾性層の耐熱温度より高いことを特徴とする無端状定着ベルト。 - 前記耐熱弾性層の硬度は、表層側の耐熱弾性層硬度が、ベース層側の耐熱弾性層硬度よりも低いことを特徴とする請求項1記載の無端状定着ベルト。
- 前記耐熱弾性層の硬度は、トップ層側の耐熱弾性層硬度が、ベース層側の耐熱弾性層硬度よりも低いことを特徴とする請求項2記載の無端状定着ベルト。
- 無端状定着ベルトが内側に配置した複数のローラ又は部材に所定の張力を持って張架され、加圧部材が前記複数のローラ又は部材の少なくとも1つに無端状定着ベルトを介して圧接されて、圧接ニップ部を形成し、前記圧接ニップ部に記録材を搬送して、記録材上の未定着画像を、記録材上に加熱、加圧して定着させる定着装置において、
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の無端状定着ベルトを用いたことを特徴とする定着装置。 - 無端状定着ベルトが内側に配置した複数のローラ又は部材に所定の張力を持って張架され、加圧部材が前記複数のローラ又は部材の少なくとも1つに無端状定着ベルトを介して圧接されて、圧接ニップ部を形成し、前記圧接ニップ部に記録材を搬送して、記録材上の未定着画像を、記録材上に加熱、加圧して定着させる定着装置において、
無端状定着ベルト表層と加圧部材表層に、フッ素系樹脂等の耐熱離型性樹脂のトップ層を設け、かつオイル含有トナーを用いることで、無端状定着ベルト及び加圧部材にオイル塗布機構を使用しないオイルレス定着装置であることを特徴とする請求項2または請求項4記載の定着装置。 - 前記圧接ニップ部を通過した記録材を、無端状定着ベルト及び加圧部材から分離する分離部材を、無端状定着ベルト及び加圧部材に接触配置させないことを特徴とする請求項6記載の定着装置。
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-
2003
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