[実施例1]
(1)画像形成装置例
図30は本発明に係る像加熱装置を画像加熱定着装置として搭載できる画像形成装置の一例の構成模型図である。この画像形成装置は、電子写真画像形成方式を用いて記録材(例えば、記録材、OHPシート等)に画像を形成するレーザビームプリンタである。
本実施例1に示す画像形成装置Aは、像担持体としてのドラム型の電子写真感光体(以下、感光ドラムと記す)101を有する。この感光ドラム101は、画像形成装置Aの筐体を構成する画像形成装置本体Bに回転自在に支持され、駆動手段(不図示)によって矢印方向へ所定のプロセススピードで回転駆動される。その感光ドラム101の周囲には、回転方向に沿って、帯電ローラ(帯電手段)102、レーザ露光装置(露光手段)103、現像装置(現像手段)105、転写ローラ(転写手段)106、クリーニング装置(クリーニング手段)107がその順に配設してある。
回転動作中において、感光ドラム101の外周面(表面)は帯電ローラ102により所定の電位及び極性に一様に帯電される。そしてその感光ドラム101表面に対しレーザ露光装置103から目的の画像情報に基づいたレーザLがミラー104等を介して走査露光される。これによりその露光部分の電荷が除去され、感光ドラム101表面に画像情報に応じた静電潜像(静電像)が形成される。その静電潜像は現像ローラ105aを有する現像装置105によりトナー(現像剤)を用いて現像される。即ち、現像装置105は現像ローラ105aに現像バイアスを印加し、感光ドラム101表面の静電潜像にトナーを付着させる。これによって静電潜像はトナー画像(現像像)として可視化(顕像化)される。
一方、所定のタイミングで給送ローラ109により給送カセット108から記録材Pが給送され、その記録材Pは搬送ローラ110によって感光ドラム101と転写ローラ106との間の転写ニップ部Tnへと搬送される。そしてその記録材Pは転写ニップ部Tnで挟持搬送され、その搬送過程において転写ローラ106に転写バイアスを印加する。これにより感光ドラム101表面のトナー画像が順次記録材Pの上に転写される。
転写ニップ部Tnでトナー画像を担持した記録材Pは感光ドラム101表面から分離し搬送ガイド111に沿って画像加熱定着装置112へ搬送される。定着装置112は記録材P上のトナー画像に熱と圧力を付与してトナー画像を記録材P上に加熱定着する。定着装置112を出た記録材Pは、搬送ローラ113により排出ローラ114に搬送され、その排出ローラ114により装置本体B上の排出トレイ115に排出される。
トナー画像転写後の感光ドラム101表面は、クリーニング装置107の有するクリーニングブレード107aにより転写残トナー等の付着物が除去され、次の画像形成に供される。
(2)定着装置(定着器)
以下の説明において、定着装置又はその定着装置を構成している部材に関し、長手方向とは記録材の面において記録材搬送方向と直交する方向である。短手方向とは記録材の面において記録材搬送方向と平行な方向である。幅とは短手方向の寸法である。
図1は定着装置112の一例の横断面模型図である。図2は定着装置112の図1に示すII−II線矢視断面図である。図3は定着装置112の図1に示すIII−III線矢視断面図である。図4は定着装置112の図1に示すIV−IV線矢視断面図である。
本実施例1に示す定着装置112は、無端ベルト(回転体)としての定着ベルト11及び加圧ベルト12と、加圧部材としての定着ローラ13及び加圧ローラ14と、加熱ローラ16及びテンションローラ17と、を有する。また、定着装置112は、加熱する手段(加熱手段)としてのハロゲンヒータ15と、温度検知手段としてのサーミスタ等の温度検知素子19と、を有する。また、定着装置112は、定着ローラ13を支持する支持部材としての第1フレーム31L・31Rと、加圧ローラ14を支持する支持部材としての第2フレーム33L・33Rと、を有する。また、定着装置112は、加熱ローラ16を支持する支持部材としての第3フレーム35L・35Rと、テンションローラ17を支持する支持部材としての第4フレーム37L・37Rと、を有する。
そして、定着ベルト11、定着ローラ13、加熱ローラ16、ヒータ15、温度検知素子19、定着ローラ13を支持する第1フレーム、及び加熱ローラ16を支持する第3フレームなどによって定着ベルトユニットU1を構成している。
そして、加圧ベルト12、加圧ローラ14、テンションローラ17、加圧ローラ14を支持する第2フレーム33L・33R、及びテンションローラを支持する第4フレーム37L・37Rなどによって加圧ベルトユニットU2を構成している。
本実施例1の定着装置112は、定着ベルトユニットU1において、定着装置の長手方向に沿って配置した定着ベルト11の内側に定着ローラ13と加熱ローラ16を設け、その定着ローラ13と加熱ローラ16とにより定着ベルト11を支持する構成とした。
また、加圧ベルトユニットU2において、定着装置112の長手方向に沿って配置した加圧ベルト12の内側に加圧ローラ14とテンションローラ17を設け、その加圧ローラ14とテンションローラ17とにより加圧ベルト12を支持する構成とした。
図5を参照して、定着ベルト11及び加圧ベルト12の層構成を説明する。図5の(a)は定着ベルト11の層構成の一例を表わす断面図、(b)は加圧ベルト12の層構成の一例を表わす断面図である。
定着ベルト11及び加圧ベルト12は、それぞれ、内側にエンドレスの基層11a・12aを有し、その基層11a・12aの外周に弾性層11b・12bを有し、その弾性層11b・12bの外周に離型層11c・12cを有する(図4(a)・(b))。基層11a・12aは、ニッケル、SUS等の金属製の電鋳ベルト或いはポリイミドなどの耐熱性樹脂からなるエンドレスのベルトである。基層11a・12aの厚さは、金属製の電鋳ベルトの場合には厚さが50〜150μm程度、耐熱樹脂の場合には50〜300μm程度として、ベルト自体が適度な剛性と可撓性を有することが好ましい。弾性層11b・12bは、基層11a・12a上に形成された厚さ50〜300μm程度のシリコンゴム層である。また、離型層11c・12cは、弾性層11b・12b上に形成された厚さ10〜50μm程度のPFA、PTFEなどのフッ素系樹脂層であり、チューブの被覆或いはコーティング等によって弾性層11b・12b上に形成されている。
本実施例1では、定着ベルト11及び加圧ベルト12として、次の構成のものを用いている。即ち、厚さ75μmのニッケル層からなるエンドレスベルトを基層11a・12aとし、その基層11a・12aの外周に弾性層11b・12bとして厚さ300μmのシリコンゴム層を形成している。さらにその弾性層11b・12bに離型層11b・12bとして50μmのPFAチューブを被覆している。また外径は、定着ベルト11、加圧ベルト12共にφ55mmとしている。
定着ローラ13及び加圧ローラ14は、それぞれ、φ18のSUS製の芯金13a・14aの外周に、厚さ5mmのシリコンスポンジゴム層からなる弾性層13b・14bを設けた外径φ28mmの弾性ローラである。このときのアスカーC硬度は9.8N(1kgf)加重時で、約40°である。
本実施例1においては、定着ローラ13及び加圧ローラ14の弾性層13b・14bの長手方向の寸法は、定着ベルト11及び加圧ベルト12の長手方向の寸法よりも僅かに大きい寸法に設定した(図2)。定着ローラ13及び加圧ローラ14の弾性層13b・14bの長手方向の寸法は、定着ベルト11及び加圧ベルト12の長手方向の寸法と略同一、或いは、定着ベルト11及び加圧ベルト12の長手方向の寸法よりも短い寸法に設定しても問題ない。
上記の定着ローラ13は、芯金13aの両端部が軸受32L・32Rを介して第1フレーム31L・31Rに回転自在に支持される(図2)。
加圧ローラ14は、定着ローラ13の下方において定着ローラ13と並列に配置され、芯金13aの両端部が軸受34L・34Rを介して第2フレーム33L・33Rに回転自在に支持される。
図6は、定着ローラ13と加熱ローラ16と定着ベルト11の関係を表わす説明図である。図6において、(a)は定着ローラ13と加熱ローラ16とに定着ベルト11をその定着ベルト11の最短経路長さで掛け回した状態を表わす図である。(b)は定着ローラ13と加熱ローラ16とに定着ベルト11をその定着ベルト11の最短経路長さよりも余裕を持たせて掛け回した状態を表わす図である。
加熱ローラ16は、肉厚1mm、外径φ18mmのアルミニウム製の中空円筒体である。この加熱ローラ16は、定着ローラ13に掛け回した定着ベルト11を定着ローラ13から記録材搬送方向上流側の斜め上方へ張り出すような位置に設けられる。つまり、加熱ローラ16は、定着ローラ13と加熱ローラ16とに定着ベルト11を掛け回したときの定着ベルト11の最短経路長さよりも定着ベルト11の周長さの方が余裕を持って長くなるような位置に、意図的に配置される。
そしてその位置において、加熱ローラ16の両端部が第3フレーム35L・35Rに軸受36L・36R(図4)を介して回転自在に支持される。或いは、加熱ローラ16両端部の軸受35L・35Rが加熱ローラ16の回転中心と定着ローラ13の回転中心とを結ぶ仮想直線L1上において定着ローラ13から離れる方向P1(図1)にバネ等で付勢した状態に第3フレーム35L・35Rに支持される。つまり、定着ベルト11は、図6(a)のように定着ローラ13と加熱ローラ16とにテンションを張った状態に掛け回されるのではなく、図6(b)のように定着ローラ13と加熱ローラ16とに弛ませた状態に緩く掛け回される。従って、定着ベルト11には、その定着ベルト11の周方向において定着ローラ13と加熱ローラ16との間に弛み部11dが形成される。本実施例1においては、定着ローラ13の軸中心位置と加熱ローラ16の中心位置との距離を23[mm]に設定して、弛み部11dを形成するようにした。
加熱ローラ16の内部に設けられたハロゲンヒータ15は、その両端部が第3フレーム35L・35Rに設けられたヒータ支持部35L1・35R1により支持されている。加熱ローラ16の内面は黒色に塗装がなされ、ハロゲンヒータ15の輻射熱を吸収しやすくなっている。
上記の加熱ローラ16は、加熱ローラ16の外周面(表面)の一部を定着ベルト11の内周面(内面)と接触させ、その接触領域からハロゲンヒータ15による熱を定着ベルト11に伝達して、定着ベルト11を加熱する構成である。つまり、定着ベルト11は加熱ローラ16を通じてハロゲンヒータ15により加熱される。
図7は加圧ローラ14とテンションローラ17と加圧ベルト12の関係を表わす説明図である。図7において、(a)は加圧ローラ14とテンションローラ17とに加圧ベルト12をその加圧ベルト12の最短経路長さで掛け回した状態を表わす図である。(b)は加圧ローラ14とテンションローラ17とに加圧ベルト12をその加圧ベルト12の最短経路長さよりも余裕を持たせて掛け回した状態を表わす図である。
テンションローラ17は、外径φ18mmのローラであって、SUS製φ10mmの芯金17aの外周に厚さ4mmのシリコンスポンジゴム層からなる弾性層17bを設けた構成である。弾性層17bの長手方向の寸法は、定着ローラ13及び加圧ローラ14の弾性層13b・14bの長手方向の寸法と等しい。このテンションローラ17は、加圧ローラ14に掛け回した加圧ベルト12を加圧ローラ14から記録材搬送方向上流側の斜め下方へ張り出すような位置に設けられる。つまり、テンションローラ17は、加圧ローラ14とテンションローラ17とに加圧ベルト12を掛け回したときの加圧ベルト12の最短経路長さよりも加圧ベルト12の周長さの方が余裕を持って長くなるような位置に、意図的に配置される。そしてその位置において、テンションローラ17の芯金17aの両端部が第4フレーム37L・37Rに軸受38L・38R(図4)を介して回転自在に支持される。或いは、芯金17a両端部の軸受38L・38Rが加圧ローラ14の回転中心とテンションローラ17の回転中心とを結ぶ仮想直線L2上において加圧ローラ14から離れる方向P2(図1)にバネ等で付勢された状態に第4フレーム37L・37Rに支持される。つまり、加圧ベルト12は、図7(a)のように加圧ローラ14とテンションローラ17とにテンションを張った状態に掛け回されるのではなく、図7(b)のように加圧ローラ14とテンションローラ17とに弛ませた状態に緩く掛け回される。従って、加圧ベルト12には、その加圧ベルト12の周方向において加圧ローラ14とテンションローラ17との間に弛み部12dが形成される。本実施例1においては、加圧ローラ14の軸中心位置とテンションローラ17の中心位置との距離を23[mm]に設定して、弛み部12dを形成するようにした。
従って、本実施例1では、2つの無端ベルトである定着ベルト11と加圧ベルト12の両方に弛み部11d・12dを形成している。
次に、定着ベルトユニットU1の定着ベルト11と加圧ベルトユニットU2の加圧ベルト12とによって形成されるニップ部の詳細について説明する。
以下、本実施例1の定着器構成において、説明の便宜上、ニップ部はその機能的役割に応じて、「プレニップ部」、「加圧ニップ部」と名称を付して説明する。「プレニップ部」とは、定着ベルト11、加圧ベルト12が、それぞれ定着ローラ13、加圧ローラ14に接触していないベルト領域同士によって形成されたニップ部である(図1)。「加圧ニップ部」とは、定着ベルト11、加圧ベルト12の内面側(内側)にそれぞれ配置した定着ローラ13、加圧ローラ14のバックアップがある領域同士によって形成されたニップ部である(図1)。また、「プレニップ部N1」と「加圧ニップ部N2」を合わせたニップ領域を「トータルニップ」とする。ニップ部であるトータルニップは、2つの無端ベルトである定着ベルト11と加圧ベルト12の外周面同士を互いに当接させることにより形成される。
定着ベルトユニットU1と加圧ベルトユニットU2において、定着ローラ13を支持する第一フレームと、加圧ローラを支持する第二フレームには、それぞれ、加圧手段としての加圧バネ41L・41R,42L・42Rが配設される(図2)。そしてその加圧バネ41L・41R,42L・42Rにより定着ローラ13と加圧ローラ14は互いに接近する方向に付勢される。その定着ローラ13と加圧ローラ14は、それぞれの弾性層13b・14bにより定着ベルト11と加圧ベルト12が挟まれて加圧されることにより、定着ベルト11の外周面(表面)と加圧ベルト12の外周面(表面)とが接触する。その結果、定着ベルト11表面と加圧ベルト12表面との接触により加圧ニップ部N2が形成される(図1)。本実施例1においては、加圧バネ41L・41R,42L・42Rによる定着ローラ13と加圧ローラ14への加圧力の総圧を196N(20kgf)とし、これにより加圧ニップ部N2の幅を5mmとしている。
図8は、加圧ニップ部N2の形成に伴い定着ベルト11と加圧ベルト12のそれぞれの弛み部11d・12dによって形成されるプレニップ部N1の説明図である。
上述のように、非加圧状態における定着ベルトユニットU1においては、図6(b)に示すように、弛み部11dを有する。また、非加圧状態における加圧ベルトユニットU2においては、図7(b)に示すように、弛み部12dを有する。
定着ローラ13と加圧ベルト14が互いに接近する方向に付勢され、定着ベルト11と加圧ベルト12との接触より加圧ニップ部N2が形成される。すると、その加圧ニップ部N2の記録材搬送方向上端から、定着ベルト11と加圧ベルト12のそれぞれの弛み部11d・12dに所定の範囲で重なり合う領域、オーバーラップする領域(図8の点線部分)が生じる。それぞれの弛み部11d・12dは、その重なり合う領域で定着ベルト11表面と加圧ベルト12の表面が接触する。これにより、定着ベルト11と加圧ベルト12は周方向に平衡を保つように適度に変形する。これによって、その重なり合う領域にプレニップ部N1が形成される(図1)。従って、このプレニップ部N1内におけるニップ圧は、定着ベルト11と加圧ベルト12が図1に示す接触状態からそれぞれ図6(b)、図7(b)に示す非接触状態に戻ろうとする、定着ベルト11及び加圧ベルト12の弾性の力によるものである。
つまり、プレニップ部N1内におけるニップ圧は、定着ベルト11及び加圧ベルト12の主にそれぞれの基層11a・12aの有する剛性及び可撓性に依存して非接触状態での形状に戻ろうとするベルト11・12自身の復元力によるものである。こうして形成されたプレニップ部N1の幅は、およそ15mmである。
このようにして形成されるプレニップ部N1は、互いに可撓性を有し変形する定着ベルト11及び加圧ベルト12の当接によって形成される。そのため、プレニップ部N1の範囲内においてその圧力分布はほぼ均一であり、安定した当接状態を維持することが可能になっている。
さらに、このプレニップ部N1は、定着ベルト11に内包される定着ローラ13と加圧ベルト12に内包される加圧ローラ14を付勢することによって形成される加圧ニップ部N2と連続して形成される。そのため、記録材を挟持、搬送する際に、記録材Pと定着ベルト11及び加圧ベルト12との密着性が、プレニップ部N1と加圧ニップ部N2を含めたトータルニップ内において維持されている。
このとき形成されているプレニップ部と加圧ニップ部の当接状態を図9に示す。
本実施形態においては、定着ベルト11と加圧ベルトは同じ仕様であり、また、定着ローラ13と加圧ローラ14は共に同じ仕様の弾性ローラであるので、付勢された荷重による変形量は同じとなる。変形量が同じであるということは、定着ベルト11内に配置された定着ローラ13が定着ベルト11内面に接している長さと、加圧ベルト12内に配置された加圧ローラ14が加圧ベルト12内面に接している長さがほぼ等しい。つまり、定着ローラ13が定着ベルト11をバックアップしている長さと、加圧ローラ14が加圧ベルト12をバックアップしている長さはほぼ等しい。従って、加圧ニップ部N2の領域内には、加圧部材である定着ローラ13と加圧ローラ14とによるバックアップがある無端ベルト領域同士、即ち定着ベルト11及び加圧ベルト12の領域同士によって形成された部分を有する。本実施例1では、その部分は加圧ニップ部N2全域である。従って、このときの状態は、図9に示すように、記録材搬送方向上流側から、ベルト同士の当接によって形成されたプレニップ部N1がある。そしてそのプレニップ部N1に引き続き、各ローラにバックアップされたベルト同士の接触によって形成される加圧ニップ部N2が連続して形成された状態となる。つまり、トータルニップは、プレニップ部N1から始まり、記録材搬送方向下流側に連続して加圧ニップ部N2が形成されるよう、2つの無端ベルトである定着ベルト11と加圧ベルト12を支持する。
プレニップ部N1と加圧ニップ部N2とで形成される、本実施形態におけるトータルニップの圧力分布について、ニッタ(株)製の圧力分布測定システムPINCHを用いて測定を行った。図9に測定された圧力分布の様子を示す。
図10に示すように、定着ローラ13と加圧ローラ14とが互いに接近する方向に付勢されていることから、この部分に相当する位置で定着ベルト11と加圧ベルト12が接触して形成される加圧ニップ部N2において加圧力が最も高くなる。
これに対して、プレニップ部N1においては、定着ベルト11と加圧ベルト12との弾性力(復元力)のみで定着ベルト11表面と加圧ベルト12表面とが接触しているために、加圧ニップ部N2の加圧力に比べて非常に低い。また、プレニップ部N1においては、剛性を有するエンドレスベルトを基層11a・12aとして備える定着ベルト11と加圧ベルト12同士の接触となっていることから、均一な圧力分布となっている。
(3)定着装置の加熱定着動作
加圧ローラ14の芯金14aの端部に設けられた駆動ギアG(図2)が定着モータMにより回転駆動されることによって、加圧ローラ14は所定の周速度にて矢印方向に回転される(図1)。加圧ローラ14が回転すると、加圧ニップ部N2においてその加圧ローラ14の回転が加圧ベルト12に伝達され、加圧ベルト12は加圧ローラ14の回転に伴い加圧ローラ14とテンションローラ17の周囲を矢印方向に周回移動する。その加圧ベルト12の回転がテンションローラ17に伝達され、テンションローラ17は加圧ベルト12の回転に伴い矢印方向に従動回転する。また、加圧ニップ部N2においてその加圧ベルト12の回転が定着ベルト11表面に伝達され、定着ベルト11は加圧ベルト12の回転に伴い定着ローラ13と加熱ローラ16の周囲を加圧べルト12と等速度で矢印方向に周回移動する。その定着ベルト11の回転が加熱ローラ16に伝達され、加熱ローラ16は定着ベルト11の回転に伴い矢印方向に従動回転する。本実施例1では、加圧ベルト12及び定着ベルト11の周回移動速度(走行速度)は200mm/sである。
本実施例1のように定着ベルト11と加圧ベルト12を意図的に弛ませた状態(図6(b)、図7(b))においても、その定着ベルト11と加圧ベルト12は、それぞれ、基層11a・12aが剛性及び可撓性を有する。従って、その定着ベルト11と加圧ベルト12は、それぞれ、その弛ませた状態を維持しながら回転する。
加熱定着動作時においても定着ベルト11及び加圧ベルト12は弛んだ形状を維持した状態で回転する。そのため、定着ベルト11と加圧ベルト12がテンションを張った状態(図6(a)、図7(a))で回転する場合に比べ、波打ち(ベルト長手方向のうねり)が発生しにくくなる。従って、定着ベルト11表面を記録材Pに均一に接触させることができるという利点がある。
ヒータ15には、加圧ローラ14の回転駆動と前後して、或いはこれと同時に、通電制御手段としての通電制御部41(図4)により通電を行う。これによりヒータ15が発熱し、そのヒータ15によって回転動作中の加熱ローラ16を加熱し、その加熱ローラ16によって回転動作中の定着ベルト11を加熱する。その定着ベルト11の熱は加圧ニップ部N2及びプレニップ部N1を通じて回転動作中の加圧ベルト12に伝わり、加圧ベルト12が加熱される。加熱ローラ16の温度は温度検知素子19(図1)により検知され、その温度検知素子19からの出力信号S1に基づいて通電制御部41がヒータ15に通電する電力を制御して、ヒータ15の温度制御を行う。即ち、通電制御部41は、プレニップ部N1においてトナー画像Tをフローテスターにおける略流出開始温度以上の温度に加熱する所定の設定温度(目標温度)を維持するように温度検知素子19からの出力信号S1に基づいてヒータ15への通電を制御する。
本実施例1で用いているフローテスターにおける流出開始温度Tfbは、以下の条件で求めたものである。
フローテスターCFT−500D(島津製作所製)を使用し、ダイ穴径:1[mm]、荷重値:405[kgf]、昇温速度4[℃/min.]の条件下で、トナーペレットを加熱して溶融流出させる。このとき、トナーがダイの穴から流出を開始した時点での温度を「流出開始温度Tfb」とした。
上記の定着ローラ13、加圧ローラ14及びテンションローラ17において、弾性層13b・14b・17bは断熱性を有するシリコンスポンジゴム層で形成されている。そのため、記録材Pにトナー画像Tを加熱定着するための定着ベルト11及び加圧ベルト12の加熱に必要な上記部材13・14・17の熱容量を小さくすることができる。従って、本実施例1の定着装置112を搭載する画像形成装置Aは、プリンタ指令の入力後、1枚目の画像を出力するまでの時間(FPOT:First PrintOut Time)を短くできる。つまり、ウォームアップ時間を短くすることができる。また、本実施例1の定着装置112は、プリンタ指令を待つ待機中の消費電力を少なくすることができる。
上記のように加圧ベルト12及び定着ベルト11の回転とヒータ15への通電を行わせた状態において、トナー画像Tを担持する記録材Pがプレニップ部N1にトナー画像担持面を上向きにして導入される。
その記録材Pは、プレニップ部N1において、定着ベルト11と加圧ベルト12とにより、定着ベルト11と加圧ベルト12の弾性(復元力)によって弱く均一に挟持されその状態に搬送される。
同時に、予熱されている定着ベルト11及び加圧ベルト12によって、記録材Pは定着ベルト11側のトナー画像担持面と加圧ベルト12側のトナー画像非担持面の両面から予熱される。このプレニップ部N1は、図3に示すように定着ベルト11と加圧ベルト12の接触のみで形成されているため、記録材Pを挟持している状態では定着ベルト11と加圧ベルトはそれぞれ記録材のみと接触している領域である。
即ち、プレニップ部N1における定着ベルト11は、記録材Pのトナー画像担持面にのみ接触することとなり、定着ローラ13や他の構成部材とは接触していない。
また、プレニップ部N1における加圧ベルト12は、記録材Pのトナー画像非担持面にのみ接触し、加圧ローラ14や他の構成部材とも接触していない。
従って、定着ベルト11及び加圧ベルト12が保持している熱は、記録材Pに対して効率よく伝達することができるようになっている。
このように記録材Pは定着ベルト11及び加圧ベルト12の弾性により定着ベルト11表面と加圧ベルト12表面とによって挟持されることから、記録材P面は全域に渡って均一に弱く加圧され、且つ均一に予熱される。
記録材Pに担持されたトナー画像Tは、プレニップ部N1において略流出開始温度以上に十分に加熱され、引き続き加圧ニップ部N2で定着ベルト11表面と加圧ベルト12表面とにより挟持搬送されながら加圧される。
これにより、記録材Pに担持されたトナー画像Tは、十分な定着性、光沢度(グロス)を有する定着画像として記録材P面に加熱定着される。
つまり、プレニップ部N1でトナー画像Tが十分に溶融する時間を確保してから加圧ニップ部N2でトナー画像Tを記録材Pに加圧定着する温度分布と圧力分布をプレニップ部N1と加圧ニップ部N2とにより得ることができる。これにより、トナー画像Tの定着不良、ブリスター、オフセット等の発生を大幅に低減できる。そしてその記録材Pは加圧ニップ部N2から排出される。
このプレニップ部N1、加圧ニップ部N2を通過する加熱定着過程を通して、記録材P上に担持されたトナー画像Tのトータルニップ内の各地点におけるトナー画像Tの温度変化の様子を測定した。
温度プロファイルの測定は、次のようにして行った。温度検知部の熱容量が小さい熱電対(例えば、安立計器(株)製K型熱電対線径50μm)を記録材P上に貼り付け、その記録材Pを上記温度制御した定着装置112のプレニップ部N1と加圧ニップ部N2で挟持搬送させた。そしてそのときの熱電対から電位差信号を日置電機(株)製メモリハイコーダー(8842)にて測定した。
このようにして、ニップ部通過時における、時間に対する温度変化の様子を測定することができるが、これに記録材の搬送速度を乗ずることによって、トータルニップ内の各位置における温度プロファイルとすることができる。
このようにして測定した本実施例1の定着装置112のプレニップ部N1と加圧ニップ部N2における温度プロファイルを図11に示す。この図中には、図10に示した加圧力の分布を、トータルニップの各地点における位置を横軸方向で合わせた上で、温度プロファイルと重ねて示している。
また、溶融、定着過程を説明するために、この定着工程における記録材Pとトナー画像Tの状態を示すモデル図を図12に示す。
図12以降のトナー層のモデル図について、凡例に示すようにそのトナーの状態を色の分布で表現する。
図12(a)は、プレニップ部N1突入前の記録材Pとトナー画像Tの状態を示す図であり、同様に(b)はプレニップ部N1通過直後における状態、(c)は加圧ニップ部N2通過直後における状態を示すモデル図である。
以下に、本実施例1の定着器をもってトナー画像Tが定着される過程を、図11の温度プロファイル、加圧力の分布、図12の記録材Pとトナー画像Tの状態を示すモデル図から説明する。
まず、トナー画像Tを担時した記録材(記録紙)Pは、プレニップ部N1に導入される。
プレニップ部N1では図11に示すように、トナー画像Tは次第に予熱され、その温度が上昇する。このとき、プレニップ部N1での温度プロファイルは、上昇し、その傾きはプレニップ部N1の後半に至るにつれて次第に緩やかになり、飽和する傾向を示す。
このとき、その温度は図11に示すように、プレニップ部N1の範囲内において、フローテスターにおける略流出開始温度以上に到達している。
まず、フローテスターにおける略流出開始温度以上とするのが好ましいとするのは以下のような理由からである。
トナー画像Tが、実際に記録紙Pに十分な強度をもって定着される為には、少なくとも紙繊維に浸透させ、繊維間に埋め込み固着させる、アンカー効果をもって定着しなければならない。そして、このように紙繊維に浸透させるためには、まずトナーが溶融し、変形する状態になっていなければならない。
フローテスターにおける流出開始温度Tfbは、その測定原理から、まさにこのようにトナーが溶融し変形し始める温度を示している。
即ち、フローテスターにおいて、一定荷重を加えた状態のトナーペレットに対し徐々に温度を上げていった際にトナーがダイ穴から流出し始める温度は、トナーの溶融、変形し始めた温度を示している。
このことは実験的にも以下のように確かめられた。
トナー画像Tを担持した記録紙Pを無加圧の状態で、流出開始温度Tfb以下の環境下に放置した場合、記録紙上に担持されたトナー画像Tは全く変化しなかった。
一方、流出開始温度Tfb以上の環境下に放置した場合には、記録紙上に担持されたトナー画像Tが溶融し始めており、明らかに記録紙に対する付着力の向上が認められた。
次に、トナー画像Tの温度を、特にプレニップ部N1において、Tfb以上にすることが望ましい理由は、加圧力のかかる加圧ニップ部N2に至る前に、十分に溶融した状態を作っておく為である。
トナー画像Tを担持した記録紙Pは、引き続き、加圧力のかかっている加圧ニップ部N2で加圧力を受けて記録紙の紙繊維にトナー画像Tを適度に浸透させ、定着画像を得る。
このとき、プレニップ部N1内において、すでにTfb以上の温度に到達していれば、加圧力のかかっている加圧ニップ部N2内全域に渡って、トナー画像Tは略流出開始温度以上の温度を維持できることになる。つまり、トナー画像Tは加圧ニップ部N2内全域に渡って、溶融変形する状態にあるので、加圧ニップN2で付与された加圧力は、無駄なく、トナー画像Tを記録紙Pへ浸透させるのに使われる。
一方、加圧ニップ部N2内でトナーは流出開始温度Tfb以上の温度に達していない部分があると、トナー画像Tは変形しない状態にある。そのため、その部分で付与された加圧力は、粒子状のトナーを記録紙へ押し付ける力として無駄に使われ、記録紙Pへ効果的に浸透させる力が減少する。
このように、付与した加圧力を効果的に使い、必要最小限の加圧力でトナー画像Tを定着させる為には、加圧力のかかっている加圧ニップ部N2内全域に渡って、トナー画像TをTfb以上の温度とする。つまり、プレニップ部N1内において、トナー画像Tの温度をフローテスターにおける流出開始温度Tfb以上とするのが好ましい。
言うまでもないが、トナー画像Tの温度がプレニップ部N1において、Tfbに到達していないことによって、効果がなくなるわけではない。その場合も、プレニップ部N1内においてできるだけトナー画像Tの温度を上げておくことによって、最も効果の出る状態に近づけることができる。
このように時間をかけて予熱されることによって、トナー画像Tは、その厚さ方向内においても、ほぼ均一に溶融し、トナー層の上層から下層に渡って、良好な溶融状態となっている。同時にこのプレニップ部N1内では圧力はほとんどかかっていないため、記録紙P上のトナー画像Tは図12(b)に示すように記録紙Pにあまり浸透することなく溶融した状態で存在する。
このようにプレニップ部N1において、十分に溶融した状態となった後、記録紙Pは加圧ニップ部N2に至り、図11に示されるような加圧力を受ける。
このとき、トナー画像Tはプレニップ部N1において流出開始温度Tfb以上に到達しており、トナー画像Tはその厚さ方向に渡って十分に溶融している。そのことから、加えられた加圧力はトナー画像Tを記録紙Pに適度に浸透させるために効果的に作用させることができる。即ち、トナー画像Tが十分溶融していることから、高い加圧力を加えなくとも、紙繊維に適度に浸透して定着性を確保できる。このとき、高い加圧力は必要ないので、トナー画像Tは過度に紙繊維に浸透することはない。
加圧ニップ部N2において加圧された記録紙Pは、トナー画像Tが適度に浸透したあと加圧ニップ部N2から排出されることによって、十分な定着性を有する定着画像を得られる(図12(c))。
以上のような過程を経て定着される本実施例1の定着器で実現している定着プロセスの特徴は以下の3点である。
本実施例1の定着器を用いた定着プロセスにおける特徴の1つ目は、トナー画像Tの温度が十分に上昇するまではほとんど加圧力を付与しない点である。
トナーが溶融していない状態で加圧した場合、その加圧力は、粉体状のトナーを記録紙Pに押し付けるだけになってしまうため、全く定着に寄与しない。このときの加圧力は無駄になってしまう。即ち、効率よく定着を行うためには、トナー画像Tが十分に溶融した状態で加圧力を加えることが必要である。
図11に示すように、トナー画像Tを加熱昇温させている過程であるプレニップ部N1の範囲では加圧力がかかっていない。
本実施例1では、プレニップ部N1の領域内でトナー画像Tを担時した記録紙Pに対して積極的に加圧力を加えることなく予熱を行う構成を、定着ベルト11と加圧ベルト12で挟持されるプレニップ部N1をもって形成することによって実現している。
本実施例1の定着器における特徴の2つ目は、加圧力のかかっている加圧ニップ部N2領域内に渡って、トナー画像Tの温度がフローテスターにおける流出開始温度Tfb以上に維持されていることにある。
図11に示すように加圧力のかかっている加圧ニップ部N2の領域内においてそのトナー画像Tの温度はフローテスターにおける流出開始温度Tfb以上の温度を維持している。
これにより、トナー画像Tの温度がTfb以上に達し、十分に溶融した状態で加圧することによって、必要最小限の加圧力で記録材Pへの定着を行うことができる。
加圧ニップ部N2内において、特に「フローテスターにおける流出開始温度Tfb」以上とすることが望ましい理由は前述の通りである。
このように、トナーが十分に溶融状態で加圧することによって、その加圧力を無駄にすることなく、溶融したトナーを適度に紙繊維に浸透させ、効率的に定着させることができる。
本実施例1の定着器における特徴の3つ目は、トナー画像T上層の温度とトナー画像T下層の温度の差が少ない状態、即ち、トナー画像Tの厚さ方向で均一に近いトナーの溶融状態となったところで加圧するという点である。
本実施例1の定着器の温度プロファイルは、図11に示すように、プレニップN1においてそのトナー画像Tの温度が上昇し、Tfb以上に到達する。トナー画像Tの温度変化の傾きはプレニップ部N1の後半に至るにつれて次第に緩やかになり、飽和する傾向を示している。
このように温度変化が飽和する傾向を示しているということは、その付近での温度勾配が少なくなっていることを示している。
つまり、定着ベルト11の熱が十分に記録紙P側へと伝達されて、定着ベルト11と記録紙Pの温度差が小さくなってきていることを示している。
このことは同時に、記録紙Pの厚さ層方向についてもあてはまる。
つまり、このとき、記録紙Pの厚さ層方向での温度分布、実際にトナー画像Tを担持した状態であればそのトナー画像Tの厚さ方向での温度分布が小さくなっていることを示している。
トナー画像Tの厚さ方向での温度分布が小さくなっているということは、即ち、トナー画像T上層と下層でのトナーの溶融状態が近く、厚さ方向でほぼ均一に溶融させることができているということを示している(図12(b))。
トナー画像Tがこのように上層と下層で同じような溶融状態なったところで加圧ニップN2において加圧されることにより、溶融したトナーを適度に紙に浸透させ、同時に十分なグロスを実現している。
以上説明したように、本実施例1の定着装置は、プレニップ部N1において、トナー画像Tを担持した記録紙Pを十分に予熱し、トナー画像T上層の温度と、トナー画像T下層の温度の差の少ない状態とする。即ち、トナー画像Tの厚さ方向でほぼ均一なトナーの溶融状態とする。そしてトナーの溶融状態となった後に、加圧ニップ部N2において加圧することによって、溶融したトナーを適度に紙に浸透させて定着し、十分なグロスを出すことを実現している。
以上のような効果は、実際にはフローテスターにおける流出開始温度Tfbに対して、およそ±5℃程度の範囲内でも得ることができた。
従って、流出開始温度Tfb±5℃程度の「略流出開始温度」とすれば同様の効果が得られる。
本実施例1の定着装置(定着器)112と比較するために作製した比較例1、比較例2、比較例3の定着装置(定着器)の断面図を図13、14、15に示す。ここで本実施例1の定着器112と同一の部材・部分には同じ符号を付して再度の説明を省略する。
比較例1として図13に示す定着器は、図6(a)に示すようにベルトを掛け回した定着ベルトユニットU1と、表層に離型層を有するローラ50によって、ニップ部N1aを形成したものである。このとき、記録材Pをガイドする定着入口ガイド51を、定着ベルト11に沿うように配置し、定着ベルト11からの輻射熱でトナー画像Tと記録材Pの予熱を行おうとしたものである。
比較例2として図14に示す定着器は、本実施例1の定着器と同様、2つの無端ベルトを各々2つのローラ13・16、14・17に掛け回しその無担ベルト11・12同士を互いに圧接させてニップ部N1b・N2b・N3bを形成したものである。しかしながら、加熱ローラ16とテンションローラ17に相当するローラが互いに当接する方向に付勢され、加熱ローラ16とテンションローラ17に巻きかけられた各ベルト11・12表面同士が接触している点が本実施例1の定着器と異なる。
比較例3として図15に示す定着器は、本実施例1の定着器の加圧ベルトユニットU2の代わりに、表層に離型層を有するローラ50を用いている。また定着ベルトユニットU1の定着ベルト11をローラ50の円周上に巻き掛けるようにして、比較例1の熱ローラ定着器に対して比較的長いニップ幅を形成したものである。
上記の比較例1〜3のそれぞれの定着器について、本実施例1の定着器と同様の方法にて加圧力分布及び、温度プロファイルの測定を行った。
図16から図18はそれぞれ比較例1から3における加圧力分布、温度プロファイルの測定結果である。また、図19から図21はそれぞれ比較例1から3における記録材Pとトナー画像Tの溶融状態を示すモデル図である。
まず図13に示す比較例1の定着器において、定着動作を行った結果について説明する。
図19(a)は、比較例1の定着器において、ニップ部N1aに突入する直前における記録紙Pとトナー画像Tの状態を示す図であり、同様に図19(b)はニップ部N1aを出た後の状態を示すモデル図である。
この比較例1の定着器では、トナー画像Tを担持した記録紙Pは、まず定着入口ガイド51に沿って搬送される。このとき、記録紙Pの温度はトナー画像T担持面側から、輻射熱によって加熱されるが、輻射による熱の伝達はわずかであるので、記録紙Pの温度はほとんど上昇しない。引き続き、トナー画像Tを担持した記録紙Pはニップ部N1aに突入し、定着ベルト11と接触して熱の付与を受け、同時に加圧され、排出される。
この比較例1の定着器で本実施例1に用いたものと同じトナー画像Tを定着させたが、本実施例1の定着器で得られた定着画像と同等以上のグロスを有する定着画像を得ることはできなかった。
この比較例1の定着器で得られた定着画像を観察した。すると、記録紙Pが有する凹凸の凸部分に位置するトナーが記録紙Pに浸透して、紙繊維の地合いが見えてやすくなってしまい、定着したトナー画像Tと紙の地合いが混在して見える不均一な定着画像となってしまっていた。これにより、本実施例1の定着器による定着画像と同等の光沢度(グロス)を実現することができていなかった。
これは、以下のようなメカニズムによるものと推察される。
図16は比較例1の定着器における加圧力分布、温度プロファイルの測定結果であるが、この比較例1の定着器と本実施例1の定着器において大きく異なる点は、加圧力がかかっているニップ部N1a領域内での温度である。
まず、この比較例1の定着器においてはN1aに到達するまではトナー画像Tの温度はほとんど上昇しないため、本実施例1の定着器におけるトータルニップ幅よりも短いニップ部N1a領域で熱の付与を行う必要がある。短いニップ幅で熱を伝達するためには、記録紙に対する温度勾配を大きくする、つまり、本実施例1の定着器の定着ベルト11温度よりも高い温度に設定する必要がある。
しかしこのように、急激に熱を伝達しようとすると、被加熱体の層方向での温度差が生じやすくなることは明らかである。つまり、トナー画像T上層の温度とトナー画像T下層の温度の差が大きい状態となる。これは即ち、トナー画像T上層と下層の溶融状態が大きく異なることを意味している。
このときのトナー層の溶融状態を示すモデル図が図19(a)(b)である。
図19(a)はニップ部N1a内でのトナー画像Tの状態、図19(b)はニップ部N1aを出た直後のトナー画像Tの状態を示している。
この図19(a)に示すように、ニップ部N1a領域において、トナー下層温度が適度の紙に浸透するのに最適な状態になったときには、トナー画像T上層はすでに過溶融の状態になってしまっている。このため、トナー画像上層のトナーは紙の繊維に過剰に浸透してしまうため、紙繊維の地合いが定着画像面表面に露出してしまう。
紙の繊維の地合いが定着画像面の表面に見えてしまうと、紙繊維の凸部分はトナー画像で覆われなくなり、「透け」が発生するのと同時に、紙表面の繊維上をトナー画像で均一の覆うことができていないことから、高い画像濃度を達成することが難しい。
また、定着画像面の平滑性が損なわれることから、高い光沢度(グロス)を達成することも困難である。
一方で、このようなトナー画像T上層の過溶融を抑えるために、トナー画像Tの上層の温度がこれよりも低下するように定着ベルトの温度を下げて定着を試みた。
このときのトナー層の溶融状態を示すモデル図が図19(c)(d)である。同様に、図19(c)はニップ部N1a領域内でのトナー画像Tの状態、図19(d)はニップ部N1a領域を出た直後のトナー画像Tの状態を示している。
この場合は、トナー画像T上層のトナーは過溶融する温度まで到達することはなく、透けてしまう状態になることはなかった。しかし、同時に紙繊維下層の温度が低下するために紙繊維下層のトナーが十分に溶融せず、コールドオフセットが発生してしまった(図19(c)(d))。
このように、比較例1の定着器においては、定着ベルト11の温度を変化させたとしても、トナー画像Tの過溶融による記録紙Pへの浸透による光沢度の低下、一方でのトナーの溶融不足によるコールドオフセットの発生という課題がある。従って、比較例1の定着器においては、その2つの課題の狭間で、十分な光沢度(グロス)を有する定着画像を得ることはできなかった。
次に比較例2の定着器において、定着を行った結果について説明する。
比較例2の定着器では、本実施例1の定着器におけるニップ部(プレニップ部N1、加圧ニップ部N2)に加えて、加熱ローラ16とテンションローラ17に巻きかけられたベルト部分の当接で形成されるニップ領域を有する。
図14に示す比較例2の定着器では、記録材搬送方向上流から順に、加熱ローラ16とテンションローラ17に巻きかけられたベルト11・12部分で形成されるニップ部をN1b、ベルト11・12部分同士が接触しているニップ部をN2bとする。そして定着ローラ13と加圧ローラ14に巻きかけられたベルト11・12部分が接触しているニップ部をN3bとする。
図20(a)はニップ部に突入する直前における記録紙Pとトナー画像Tの状態を示す図であり、図20(b)(c)(d)は、それぞれのニップ部N1b,N2b,N3bを通過した直後における記録紙Pとトナー画像Tの状態を示すモデル図である。
この比較例2の定着器を用いて定着を行った際の工程を、順に説明する。
まずトナー画像Tを担持した記録紙Pは、加熱ローラ16とテンションローラ17に巻きかけられたベルト11・12部分で形成されるニップ部N1bに導入され図17に示すように、熱の付与を受ける。これと同時にベルト11・12を介して付勢された加熱ローラ16とテンションローラ17によって加圧されることにより、トナー画像Tはある程度溶融を開始し、記録紙Pに浸透し始める(図20(b))。引き続いてニップ部N2bに記録紙Pが到達すると、このニップ部N2b領域では記録紙Pを挟み込む力が弱くなるため、ニップ部N1bに対して圧力が低くなってしまう。即ち、ベルト11・12同士と記録紙Pを密着性が不足し、いわゆる圧抜けが生じる(図20(c))。このような圧抜けが生じてしまうと、トナー画像Tの温度にかかわらず像ずれが発生する。
一度定着ベルト11が記録紙Pに対して押圧され、再び離れることになると、記録紙P上に担持されていたトナー画像Tは、記録紙P側に付着するものと、ベルト11側に付着するものに分かれてしまう。これはトナーが溶融しておらず粒子上であったとしても、或いは溶融した状態であったとしても同じである。
ニップ部N2b内においては記録紙Pは絶えず熱の付与をうけていることから、記録紙Pには収縮しようとする力が働いている。この状態で、定着ベルト11が紙を押圧する力が弱くなると、相対的に収縮度合いの異なる定着ベルト11と紙との間で、位置のずれが生じる。
この乱された画像状態のままニップ部N3bで加圧され定着されることになる(図20(d))。このため、定着後の画像はいわゆる「像ずれ」という異常画像なり、不均一な定着画像となってしまった。
このように比較例2の構成の定着器においては、長いニップ幅を実現できるものの、そのニップ内において加圧力の分布に谷間が生じるために圧抜けが生じてしまい、像ずれを防ぐことが非常に困難であった。
次に比較例3の定着器において、定着を行った結果について説明する。
図15に示す比較例3の定着器では、本実施例1の定着器における定着ベルトユニットU1に対し、比較例1の定着器と同様に表面に離型層を有するローラ50を当接させてニップ部を形成したものである。その際に、定着ベルトユニットU1の定着ベルト11をローラ50に巻きつけるように配置している。これによって、定着ベルト11に内包された定着ローラ13とローラ50との圧接領域で形成されているニップ部N2cの記録材搬送方向上流側に、定着ベルト11表面とローラ50表面との接触とでニップ部N1cを形成する。
このように比較例3の定着器は、ニップ部N2cの記録材搬送方向上流側にニップ部N1cを形成することにより、定着器全体として幅の広いニップ幅を確保しようとしたものである。
比較例3の定着器において、定着ベルト11を巻きつける際に、より密着させてニップ部N1cを形成するため、定着ベルト11は定着ローラ13と加熱ローラ16とで適度に張った状態になるように保持されている。また、定着ベルト11に内包された定着ローラ13は、ローラ50に対して付勢され、定着に必要な加圧力をかけるようになっている。
図21(a)はニップ部N1c内における記録紙Pとトナー画像Tの状態を示す図である。図21(b)、(c)は、それぞれのニップ部N1c・N2c内における記録紙Pとトナー画像Tの状態、ニップ部N2cを通過した直後における記録紙Pとトナー画像Tの状態を示すモデル図である。
この比較例3の定着器を用いて定着を行った際の定着工程、及びその定着工程で得られた定着画像の特徴について、順に説明する。
まずトナー画像Tを担持した記録紙Pは、定着ベルト11とローラ50とで形成されるニップ部N1cに導入される。ここでトナー画像Tを担持した記録紙Pはベルト11からの熱の付与を受ける。これと同時に、図18に示すようにベルト11の巻きつけ部分であるニップ部N1cにおいてもある程度の加圧力がかかっていることから、トナーは溶融を開始すると同時に、記録紙P上に押し付けられる。引き続いて、ニップ部N2cに入り、図18の加圧力分布に現れている加圧力を受けると同時に、トナーの温度も上昇してくるので、トナーは次第に溶融が進み、記録紙Pに浸透し定着することとなる。
この比較例3の定着器で得られた定着画像を観察したところ、比較例1の定着器と同様であった。即ち、記録紙Pが有する凹凸の凸部分が位置するトナーが記録紙Pに過剰に浸透していて、紙繊維の地合いが見えてやすくなってしまい、「透け」が発生するのと同時に、定着したトナー画像Tと紙の地合いが混在して見える不均一な定着画像となってしまっていた。このように紙の地合いが定着画像面に露出して見えてしまうと、定着画像面の平滑性が損なわれる為、当然のことながら光沢度(グロス)も低くなりがちである。
このため、この比較例3の定着器で得られた定着画像は、本実施例1の定着器による定着画像と同等の光沢度(グロス)を実現することができていなかった。
この比較例3の定着器で得られた定着画像がこのような定着画像面になってしまうのは、以下のような理由によるものであると考えられる。
図18は比較例3の定着器における加圧力分布、温度プロファイルであるが、本実施例1の定着器に対して大きく異なる点は、本実施例1で実現しているトータルニップ幅に対して、ニップ部N1cとニップ部N2cとで形成されるニップ幅が短いという点である。
加圧力がかかっているニップ部N2cは、加圧力の調整等によって、本実施例1の加圧ニップ幅N2と同等の長さを形成することは可能である。しかしながら、比較例3の定着器においてはニップ部N2cの記録材搬送方向上流側で形成されているニップ部N1cを本実施例1のプレニップ部N1と同等以上に形成することが困難である。
これは、比較例3の定着器はベルト11をローラ50に巻きつけることによってニップ部N1cを形成しているためであり、容易にこのニップ部N1cを長くすることができない。このN1cを長くする手段としては、定着ベルト11をローラ50にさらに巻きつけることが考えられるが、このような方法では定着の過程で記録紙を長く湾曲させることになるため、定着後の紙のカールが悪化してしまう。
他の手段としては、ローラ50の外径を大きくすることによって、曲率を小さく保ったまま、N1cを長くする方法が考えられる。しかしながらこの場合も、定着器が大型化すると共に、ローラ50の大径化に伴って熱容量が増大し、ウォームアップ時間の増加、放熱面積の増加などによって、定着器の省エネ性が低下するという弊害が発生してしまう。
このように、比較例3の定着器構成においては、弊害を誘発することなく、本実施例1の定着器と同等以上の長さのニップ幅を形成することが困難である。
従って、比較例3の定着器構成においては本実施例1の定着器におけるトータルニップ幅よりも短いニップ部N1c・N2cで熱の付与を行う必要がある。
短いニップ幅で熱を伝達するためには、比較例1と同様に記録紙に対する温度勾配を大きくする、つまり、本実施例1の定着器の定着ベルト11温度よりも高い温度に設定する必要がある。
しかしこのように、急激に熱を伝達しようとする、つまり定着ベルト11と記録紙Pの温度勾配を大きくしようとすると、同時に、被加熱材であるトナー画像T、記録紙Pの層方向内部での温度差が生じやすくなることは明らかである。つまり、図21(a)(b)に示すように、ニップ部N1c、N2c領域内おいてトナー画像Tの上層と下層で温度の差が生じ、厚さ方向全体を十分に暖めておくことができていない。
図21(a)(b)に示すように、トナー画像T下層温度が適度の紙に浸透するのに最適な状態になったときには、トナー画像T上層はすでに過溶融の状態になってしまっている。
これにより、トナー画像T上層のトナーは紙の繊維に過剰に浸透してしまう。そのため、紙繊維の地合いが定着画像面に露出して、「透け」が発生する(図21(c))のと同時に紙表面の繊維上をトナー画像で均一に覆うことができていないことから、高い画像濃度を達成することができなかった。
また、同時に定着画像面の平滑性が損なわれることから、本実施例1の定着器のよる定着画像と同等の高い光沢度(グロス)を達成することもできなかった。
一方、このようなトナー画像T上層の過溶融を抑えるために、トナー画像Tの上層の温度がこれよりも低下するように定着ベルト11の温度を下げて定着を試みた。このときのトナー画層の溶融状態を示すモデル図が図21(d)(e)(f)である。
図21(d)は、定着ベルト11の温度を下げて定着を行った際の、ニップ部N1c内における記録紙Pとトナー画像Tの状態を示すモデル図である。図21(e)は、定着ベルト11の温度を下げて定着を行った際の、ニップ部N2c内における記録紙Pとトナー画像Tの状態を示すモデル図である。図21(f)は、定着ベルト11の温度を下げて定着を行った際の、ニップ部N2cを通過した直後における記録紙Pとトナー画像Tの状態を示すモデル図である。
この場合は、トナー画像T上層のトナーは過溶融する温度まで到達することはなく(図21(d)(e))、透けてしまう状態になることはなかった。しかし、同時に紙繊維下層の温度が低下するために紙繊維下層のトナーが十分に溶融せず、コールドオフセットが発生してしまった(図18(f))。
このように、比較例3の定着器構成においても、比較例1と同様、ニップ部内でトナー画像Tの上層と下層部分での温度差が生じた状態で加圧することになる。そのため、比較例3の定着器においても、トナー画像Tの過溶融による記録紙Pへの浸透による光沢度の低下、一方でトナーの溶融不足によるコールドオフセットの発生という課題の狭間で、十分な光沢度(グロス)を有する定着画像を得ることはできない。
以上説明したように、本実施例1の定着装置112は、意図的に、弛み部分を有する定着ベルトユニットU1(図6(b))と、加圧ベルトユニットU2(図7(b))を互いに当接させて、ベルトの弾性のみによって形成されるプレニップ部N1を作る。これによって、本実施例1の定着器を用いた定着プロセスは、
(i)トナー画像Tの温度が十分に上昇するまではほとんど加圧力を付与しない。
(ii)加圧力のかかっている加圧ニップ部N2領域内に渡って、トナー画像Tの温度がフローテスターにおける略流出開始温度Tfb以上に維持されている。
(iii)トナー画像T上層の温度とトナー画像T下層の温度の差少ない状態、即ち、トナー画像Tの厚さ方向で均一に近いトナーの溶融状態となったところで加圧する。
という特徴を有する、図11に示すような加圧力分布、温度プロファイルを実現することが可能になった。
このような加圧力分布、温度プロファイル実現することによって、高速化に対応可能な幅の広いニップ幅を実現できると同時に、像ずれなどの異常画像の発生原因となる圧抜けがなく、十分な光沢度(グロス)を有する定着画像を得ることができる。
本実施例1では、互いに弛み部を有する定着ベルトユニットU1(図6(b))と加圧ベルトユニットU2(図7(b))とで構成された定着器構成について説明したが、定着器構成はこれに限られない。即ち、ベルト11・12同士の弾性のみによって形成されるプレニップ部N1が、加圧ニップ部N2の記録材搬送方向上流側に形成されている定着装置であれば、同様の作用効果を得ることができる。
本実施例1の定着装置112においては、図9に示したように、定着ベルト11と加圧ベルト12は同じ仕様であり、また、定着ローラ13と加圧ローラ14が共に同じ仕様である場合について説明した。
この定着装置112は、記録材搬送方向上流側から、定着ベルト11と加圧ベルト12が、それぞれ定着ローラ13、加圧ローラ14のバックアップなしで当接することによって形成されたプレニップ部N1を有する。そしてそのプレニップ部N1に引き続き、定着ベルト11と加圧ベルト12が、それぞれ定着ローラ13加圧ローラ14によってバックアップされた状態で当接することによって加圧ニップ部N2をプレニップ部N1と連続して有するものであった。
一方で、定着ベルト11と加圧ベルト12が例えば図22のような当接状態になっていたとしても同様の作用効果を得ることができる。
図22は本実施例1の定着装置112の定着ベルト11と加圧ベルト12との他の当接状態を示した説明図であって、トータルニップ内での定着ベルト11及び加圧ベルト12の当接状態を示した図である。図22において、加圧ローラ14として外径をφ28mm、アスカーC硬度(9.8N荷重時)で40°の弾性ローラを用いている。定着ローラ13として外径をφ36mm、アスカーC硬度(9.8N荷重時)で40°の弾性ローラを用いている。
この場合、定着ローラ13の外径が加圧ローラ14の外径よりも大きいことから、定着ローラ13が定着ベルト11の内面に接触してバックアップしている長さは、加圧ローラ14が加圧ベルト12をバックアップしている長さに対してわずかに長くなる。
これによって、定着ベルト11と加圧ベルト12がそれぞれ定着ローラ13、加圧ローラ14のバックアップなしで当接することによって形成されるプレニップ部N1のあとには、中間ニップ部N2−aが形成される。その中間ニップ部N2−aは、裏面から加圧ローラ14にバックアップされていない加圧ベルト12の領域と、裏面から定着ローラ13にバックアップされている定着ベルト11の領域と、が当接することによって形成されている。
そして、これに引き続いて裏面から加圧ローラ14にバックアップされている加圧ベルト12の領域と、裏面から定着ローラ13にバックアップされている定着ベルト11の領域と、が当接する本ニップ部N2−bが形成される。従って、加圧ニップ部N2の領域内には、加圧部材である定着ローラ13と加圧ローラ14とによるバックアップがある無端ベルト領域同士、即ち定着ベルト11及び加圧ベルト14の領域同士によって形成された部分として、本ニップ部N2−bを有する。つまり、プレニップ部N1に引き続いて形成される加圧ニップN2として、中間ニップ部N2−aと本ニップ部N2−bが形成されている状態である。
この場合は記録材搬送方向上流側から、バックアップのないベルト11・12同士の当接によって形成されたプレニップ部N1があり、次にバックアップがある定着ベルト11とバックアップのない加圧ベルト12の接触で形成された中間ニップN2−aがある。そしてその中間ニップN2−aに引き続き、各ローラ13・14にバックアップされたベルト11・12同士の接触によって形成される加圧ニップ部N2−bが中間ニップN2−aと連続して形成された状態となる。
図22に示すトータルニップ内での定着ベルト11と加圧ベルト12の他の当接状態は、図23、図24、図25、図26に示す各定着装置112にも適用してよい。
このような当接状態であっても、本実施例1の定着装置112においては、バックアップのないベルト11・12同士の接触によりプレニップ部N1を形成している。これによって、トナー画像Tを担持した記録紙Pを十分に予熱し、トナー画像T上層の温度とトナー画像T下層の温度の差が少ない状態とすることができる。即ち、トナー画像Tの厚さ方向でほぼ均一なトナーの溶融状態とすることができる。そしてトナーの溶融状態となった後に、加圧ニップ部N2において加圧することによって、溶融したトナーを適度に紙に浸透させて定着する。つまり、プレニップ部N1でトナー画像Tを担持した記録紙Pを十分に予熱してトナーを溶融状態とし、加圧ニップ部N2で溶融したトナーを適度に紙に浸透させて定着することが本質であることから、図9に示すものと全く同様の作用効果を得ることができる。
即ち、高速化に対応可能な幅の広いニップ幅を実現できると同時に、像ずれなどの異常画像の発生原因となる圧抜けがなく、十分な光沢度(グロス)を有する定着画像を実現するという効果に変わりはない。
また、ここでは、中間ニップ部N2−aが裏面から加圧ローラ14にバックアップされていない加圧ベルト12の領域と、裏面から定着ローラ13にバックアップされている定着ベルト11の領域と、が当接することによって形成されている場合について述べた。これとは逆に、裏面から加圧ローラ14にバックアップされている加圧ベルト12の領域と、裏面から定着ローラ13にバックアップされていない定着ベルト11の領域と、が当接することによって形成されている場合でも、プレニップ部が形成されていればよい。このような定着器構成であっても、本質的に作用効果は変わりはない。
一方、図22に示したような当接状態、つまり、バックアップのないベルト11・12同士の当接によって形成されたプレニップ部N1があり、次にバックアップがあるベルト11とバックアップのないベルト12の接触で形成された中間ニップ部N2−aがある。そしてその中間ニップ部N2−aに引き続き、各ローラ13・14にバックアップされたベルト11・12同士の接触によって形成される本ニップ部N2−bが中間ニップ部N2−aと連続して形成される例としては、以下のような場合も挙げられる。
・定着ローラ13と加圧ローラ14で外径が異なる場合
・定着ローラ13と加圧ローラ14とで硬度が異なる場合
・定着ベルト11と加圧ベルト12とで外径が異なる場合
・定着ベルト11と加圧ベルト12とで層構成が異なり、それぞれの剛性が異なる場合
・テンションローラ17、加熱ローラ16の外径、配置を本実施例1から変えた場合
上記、いずれの場合にも、バックアップのないベルト11・12同士の接触によりプレニップ部N1を形成することが本質であることから、上で説明したように同様の作用効果を得ることができる。
例えば、定着ベルト11を張架した状態の定着ベルトユニットU1(図6(a))と、加圧ベルト12を弛ませた状態の加圧ベルトユニットU2(図7(b))と、を用いた場合にも、互いのベルト11・12がオーバーラップする領域が形成されることになる。そのため、ベルト11・12は弾性によって当接し、プレニップ部N1が形成される。
つまり、2つの無端ベルトである定着ベルト11と加圧ベルト12のうち、少なくとも一方のベルトに弛み部を形成し、その弛み部を他方のベルトに当接させた「弛み当接部」であるプレニップ部N1をニップ部としてのトータルニップに有している。そしてそのプレニップ部N1をトータルニップの記録材搬送方向の最上流側に形成している。
逆に、図6(b)に示した定着ベルト11を弛ませた状態の定着ベルトユニットU1と、図7(a)に示した加圧ベルト12を張架した状態の加圧ベルトユニットU2と、を組み合わせた場合も同様である。この場合には、定着ベルト11と加圧ベルト12のうち、記録材上のトナー画像担持面に対向する定着ベルト11に弛み部を形成している。
また、ベルト11・12同士の当接領域全体に渡ってわずかに湾曲している場合においても同様の作用効果を得ることができる。
例えば、図6(b)に示した定着ベルト11を弛ませた状態の定着ベルトユニットU1と、図23に示すような、加圧ベルト12が共に同じ向きに凹形状になる状態で弛んでいるベルトユニットU2と、を互いに接近するよう付勢して設置する。そしてバックアップのないベルト11・12同士の接触でプレニップ部N1が形成されていれば同様の作用効果を得ることができる。
本実施例1の定着装置においては、加熱源としてハロゲンヒータ15を用い、そのヒータ15を定着ベルトユニットU1の加熱ローラ16内に配置し、定着ベルト11を加熱するようにしたがヒータ15の配置はこれに限定されない。例えば、ヒータ15を定着ローラ13の位置に配置してもよい。また、定着ベルト11又は加圧ベルト12を掛け回す複数のローラ(不図示)内にヒータ15を設けてもなんら問題ない。
[実施例2]
定着装置の他の例を説明する。
実施例1の定着装置112と同一の部材・部分には同じ符号を付して再度の説明を省略する。実施例3から実施例7についても同様とする。
図24は本実施例2に係る定着装置の一例の横断面模型図である。
本実施例2に示す定着装置113は、実施例1の定着装置112において回転自在の定着ローラ13に代えて長手方向に細長い固定部材(加圧部材)20を用いた点を除いて、実施例1の定着装置112と同じ構成としてある。
実施例1の定着装置112における定着ローラ13は定着ベルト11と接触して回転するが、本実施例2の定着装置112における固定部材20は定着ベルト11と摺動する構成となっている。これにより、本実施例2の定着装置112においては熱容量を下げることができ、定着器としての立上がり時間を早くすることができた。
このように、実施例1の定着装置112における定着ローラ13を固定部材20としたとしても、ベルト同士の弾性のみによって形成されるプレニップ部N1が、加圧ニップ部N2の記録材搬送方向上流側に形成されていれば、同様の作用効果を得ることができる。
また、固定部材20を用いるのは、実施例1の定着装置112の定着ローラ13の相当する部分に限らず、ベルトを支持する他のローラを固定部材に変更したとしても何ら問題はなく、実施例1の定着装置112と同様の作用効果を得ることができる。
[参考例1]
定着装置の他の例を説明する。
図25は本参考例1に係る定着装置の一例の横断面模型図である。
本参考例1に示す定着装置112は、実施例1の定着装置112において加熱ローラ16を廃し、代わりに定着ローラ13の外周面上に加熱源としてのハロゲンヒータ15を内包した加熱ローラ22を当接するように配置したものである。
この加熱ローラ22は、トナー画像Tを担持した記録材Pに直接接触する定着ベルト11の外周面(表面)と接することから、加熱ローラ22の外周面(表面)に離型層を有する。そしてその加熱ローラ22は、定着ベルト11表面と接している位置において定着ベルト11の内周面を定着ローラ13表面に当接させる。これによって、定着ベルト11の回転軌跡が規制され、定着ベルト11の回転が安定する。
このように、定着ローラ13の外周面上に定着ベルト11を加熱し、かつ定着ベルトの回転軌跡を規制するような加熱ローラ22を配置することによっても、実施例1の定着装置と同様、ベルト11・12同士の弾性のみによってプレニップ部が形成できる。そしてそのプレニップ部が加圧ニップ部の記録材搬送方向上流側に形成されているので、実施例1の定着装置112と同様の作用効果を得ることができる。
[参考例2]
定着装置の他の例を説明する。
図26は本参考例2に係る定着装置の一例の横断面模型図である。
本参考例2に示す定着装置112は、実施例1の定着装置112において、加熱手段を誘導加熱方式としたものである。
即ち、実施例1の定着装置112における加熱ローラ16を、SUS製φ10mmの芯金17aの外周に厚さ4mmのシリコンスポンジゴム層からなる弾性層17bを設けた上テンションローラ17に変更したものである。また、定着ベルト11外周面に沿って、磁束発生手段としての電磁誘導加熱部80を配置したものである。その2つ点を除いて、実施例1の定着装置112と同じ構成としてある。
上テンションローラ17は、実施例1の定着装置112の加熱ローラ16と同様、第3フレーム35L・35Rに回動可能に支持されている。
電磁誘導加熱部80は、図示していないが、電気絶縁性の樹脂によって形成された誘導加熱部筐体及び、前記誘導加熱部筐体に内蔵された磁性体コア(以下、コアと略記する)と誘導加熱コイル(以下、コイルと略記する)とを備えている。コアは、例えば、フェライトコアや積層コアから形成されている。コイルは、例えば、表面に融着層と絶縁層とを持つ銅線が複数回巻かれて構成されている。
この電磁誘導加熱部80は、例えばリッツ線を横長・扁平のシート状渦巻き状に巻回してなるコイルと、このコイルを覆わせたコアとを電気絶縁性の樹脂により形成された誘導加熱部筐体に収納した横長・薄板状の部材である。誘導加熱部筐体内において、コアは、定着ベルト11に対向領域面以外に磁束が漏れることのないように配置されている。この電磁誘導加熱部80は、定着ベルト11の外周面に対して所定の距離だけ離した状態で近接配置されている。
誘導加熱方式においては、磁束を発生させる電磁誘導加熱部と、磁束を吸収して発熱する被加熱体の距離によって、発熱量が変動しやすい。そこで、この電磁誘導加熱部80は、上テンションローラ17を支持する第3フレーム35L・35Rに対して固定することにより上テンションローラ17外周面から電磁誘導加熱部80の距離が変動しないようにする。これと同時に、上テンションローラ17に掛け回される定着ベルト11と上テンションローラ17の接触する部分とが、電磁誘導加熱部80からの発生磁束で発熱する領域と重なるように配置した。
本参考例2の定着装置112は、定着動作時には不図示の励磁回路からコイルに10k〜1MHzの交番電流を流すことによって金属製の定着ベルト11の基層11aを誘導加熱している。即ち、コイルに対する通電により、定着ベルト11に供給される磁束が発生する。この磁束は、電磁誘導加熱部80と定着ベルト11との対向領域部において、定着ベルト11の発熱層である基層11aに吸収され、その基層11aに渦状の誘導電流が発生し、該基層11aがその固有抵抗により発熱するものである。
本参考例2のように、加熱手段を誘導加熱方式としても、ベルト11・12同士の弾性のみによって形成されるプレニップ部が、加圧ニップ部の記録材搬送方向上流側に形成されているので、実施例1の定着装置112と同様の作用効果を得ることができる。
[参考例3]
定着装置の他の例を説明する。
図27は本参考例3に係る定着装置の一例の横断面模型図である。
本参考例3に示す定着装置112は、実施例1の定着装置112における加圧ベルトユニットU2の代わりに、表層に離型層60cを有するローラ(他方の回転体)60を用いた点を除いて、実施例1の定着装置112と同じ構成としてある。
本参考例3の定着装置112は、ローラ60として、φ30のSUS製の芯金60aに、厚さ5mmのシリコンゴム層からなる弾性層60bを設けた外径φ40mmの弾性ローラを用いている。そしてその弾性層60b上に離型層60cとして厚さ10〜50μm程度のPFA、PTFEなどのフッ素系樹脂層を被覆している。そして、定着ベルトユニットU1の弛ませた状態の定着ベルト(無端ベルト)11と定着ローラ60を当接して形成されるプレニップ部N1がある。そしてそのプレニップ部N1に引き続き、定着ベルト11の内側にある定着ローラ13とローラ60とを定着ベルト11に向けて付勢することによって形成される加圧ニップ部(加圧当接部)N2が連続して形成された状態となる。プレニップ部N1は、定着ローラ13によるバックアップがない定着ベルト11の領域を定着ベルト11の弾性力のみでローラ60の外周面に当接させることによって形成されている。加圧ニップ部N2は、定着ローラ13によるバックアップがある定着ベルト11の領域をローラ60の外周面に当接させることによって形成されている。
本参考例3の定着装置112においても、トータルニップは、定着ローラ13とローラ60とで定着ベルト11を挟んで加圧して定着ベルト11とローラ60の外周面同士を互いに当接させることにより形成されている。そしてそのトータルニップは、プレニップ部N1から始まり、記録材搬送方向下流側に連続して加圧ニップ部N2が形成されるよう、定着ベルト11とローラ60を支持している。そのため、記録材を挟持、搬送する際に、記録材Pと定着ベルト11及びローラ60との密着性が、プレニップ部N1と加圧ニップ部N2を含めたトータルニップ内において維持されている。
本参考例3の定着装置112は、可撓性を有し変形する定着ベルト11とローラ60の当接によってプレニップ部N1を形成している。そのため、プレニップ部N1の範囲内においてその圧力分布はほぼ均一であり、安定した当接状態を維持することが可能になっている。
このように、実施例1の定着装置112における加圧ベルトユニットU2に代えてローラ60を用いても、プレニップ部N1が加圧ニップ部N2の記録材搬送方向上流側に形成されていれば、実施例1の定着装置112と同様の作用効果を得ることができる。
[参考例4]
定着装置の他の例を説明する。
図28は本参考例4に係る定着装置の一例の横断面模型図である。
本参考例4に示す定着装置112は、参考例3の定着装置112における回転自在の定着ローラ13の代わりに、長手方向に細長い固定部材(加圧部材)20を用いた点を除いて、参考例3の定着装置と同じ構成としてある。
参考例3の定着ローラ13は定着ベルト11と接触して回転するが、本参考例4の定着装置における固定部材20は定着ベルト11と摺動する構成となっている。これにより、本参考例4の定着装置112においては熱容量を下げることができ、定着器としての立上がり時間を早くすることができた。
このように、参考例3の定着装置112における定着ローラ13に代えて固定部材20を用いても、プレニップ部N1が加圧ニップ部N2の記録材搬送方向上流側に形成されていれば、参考例3の定着装置112と同様の作用効果を得ることができる。
[参考例5]
定着装置の他の例を説明する。
図29は本参考例5に係る定着装置の一例の横断面模型図である。
本参考例5に示す定着装置112は、実施例1の定着装置112における定着ベルトユニットU1の代わりに、ヒータ内蔵の定着ローラ(他方の回転体、ローラ)23を用いたものである。また実施例1の定着装置112における加圧ベルトユニットU2の加圧ローラ14とテンションローラ17の代わりに、加圧パッド(加圧部材)24と支持ホルダ25とベルト走行ガイド26を、加圧ベルト12の内側に設けたものである。
ヒータ内蔵の定着ローラ23は、内径Φ37.5mm、外径Φ38.5mm、肉厚0.5mmの鉄からなる中空円筒体である芯金23a上に、弾性体層23bとしてシリコンゴムを肉厚0.5mmで形成している。そしてさらに離型層23cが、弾性体層23b上に厚さ10〜50μm程度のPFA、PTFEなどのフッ素系樹脂層で被覆された構成である。この定着ローラ23の外径Φは40mmである。この定着ローラ23の芯金23aの内面は黒色に塗装がなされ、芯金23aの内部の配置されているハロゲンヒータ(加熱する手段)15の輻射熱を吸収しやすくなっている。
ヒータ内蔵の定着ローラ23の表面温度は、定着ローラ23の表面側に配置された温度検知素子19によって計測され、図示しない温度制御装置によってハロゲンヒータ15が制御されて、定着ローラ23の表面温度が調整される。また、定着ローラ23は不図示の駆動源に接続されており、回転駆動されるようになっている。
加圧パッド24は、支持ホルダ25により保持されており、弛ませた状態の加圧ベルト(無端ベルト)12を挟んで定着ローラ23に圧力を与えるように、加圧ベルト12の内側に配置されている。加圧パッド24は、熱伝導度が低く、かつ、定着ローラ23の弾性体層23bよりも硬い材料で形成されており、耐熱性樹脂またはセラミックから構成されていることが好ましい。
加圧パッド24の加圧ベルト12内面と接触する表面には、10〜50μm程度のPFA、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などのフッ素系樹脂層が形成されていて、摩擦抵抗を低減している。また、加圧パッド24と加圧ベルト12との摩擦抵抗を低減するために、加圧ベルト12の内面に耐熱性のあるフッ素系グリース等の潤滑材を塗布してもよい。
加圧パッド24の定着ローラ23との対向面は、定着ローラ23の外周面に沿った湾曲面としてある。そして、この加圧パッド24に対して定着ローラ23をバネ27によって図29の矢印方向に加圧する構成になっている。本参考例5においては、図29の矢印方向の加圧力は約392N(40kgf)となるように設定されている。
本参考例5の定着装置112は、加圧パッド24とベルト走行ガイド26を最適に配置することにより、プレニップ部N1と加圧ニップ部N2とからなるトータルニップを形成している。このトータルニップは、定着ローラ13と加圧パッド24とで加圧ベルト12を挟んで加圧して加圧ベルト12と定着ローラ13の外周面同士を互いに当接させることにより形成されている。そしてプレニップ部N1は、加圧パッド24によるバックアップがない加圧ベルト12の領域を加圧ベルト12の弾性力のみで定着ローラ13の外周面に当接させることによって形成されている。加圧ニップ部N2は、加圧パッド24によるバックアップがある加圧ベルト12の領域を定着ローラ13の外周面に当接させることによって形成されている。そしてそのトータルニップは、プレニップ部N1から始まり、記録材搬送方向下流側に連続して加圧ニップ部N2が形成されるよう、加圧ベルト12と定着ローラ23を支持している。そのため、記録材を挟持、搬送する際に、記録材Pと定着ベルト11及びローラ60との密着性が、プレニップ部N1と加圧ニップ部N2を含めたトータルニップ内において維持されている。
本参考例5の定着装置112は、可撓性を有し変形する加圧ベルト12と定着ローラ23の当接によってプレニップ部N1を形成している。そのため、プレニップ部N1の範囲内においてその圧力分布はほぼ均一であり、安定した当接状態を維持することが可能になっている。したがってプレニップ部N1が加圧ニップ部N2の記録材搬送方向上流側に形成されていれば、実施例1の定着装置112と同様の作用効果を得ることができる。
[その他]
1)定着ベルト11、加圧ベルト12、定着ローラ13、加圧ローラ14、加熱ローラ15、テンションローラ17などの各部材に関する層構成、厚さ、外径等は各実施例の限定されるものでなく、実際に製品化される定着装置に応じて適宜設定されるものである。
2)定着ベルト11表面への熱供給も、輻射熱による加熱、熱風による加熱、ベルト基層が金属である場合には、誘導加熱による加熱であっても良い。また必要に応じて加圧ベルト12、ローラ60を所定の加熱手段を用いて加熱してもよい。
3)定着ローラ13、加圧ローラ14の構成についても、実際に製品化される定着装置のスペックの要求に応じて、外径、芯金径、弾性層の材質、厚さ等を適宜変更することにより、加圧ニップ部N1幅を変更することが可能であることはいうまでもない。