以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本実施形態の分離方法は、
活性水素含有化合物(A)(本明細書中、単に「化合物(A)」又は「(A)」ともいう。)、及び(A)と可逆的に反応する化合物(B)を含有する混合物から、(A)又は(B)の少なくとも一方を多段蒸留塔で蒸留分離する工程と、上記混合物を、上記多段蒸留塔の内部に形成された不活性な部位に供給する工程と、を備える、(A)と(B)とを分離する分離方法である。
一般的に、可逆的な反応とは、原系(原料)から生成系(生成物)への反応(正反応)と、反対に生成系から原系に戻る反応(逆反応)がともに起こる反応のことである。本実施形態において、「活性水素含有化合物(A)と可逆的に反応する化合物(B)」(本明細書中、単に「化合物(B)」又は「(B)」ともいう。)とは、活性水素含有化合物(A)と反応して、(A)と(B)の結合体を形成し得る化合物である。例えば、下記式(11)で表される反応系が成立する化合物である。
一般的に、ある反応系においてそれらの正反応及び逆反応しか起こらなければ、その反応系は最終的に一定量の基質と生成物を含む平衡状態に落ち着く。このような、平衡状態を形成し得る反応系を平衡反応という。すなわち、「活性水素含有化合物(A)と可逆的に反応する化合物(B)」は「活性水素含有化合物(A)と平衡反応を形成し得る化合物(B)」ということもできる。本実施形態において、(A)と(B)とを含有する混合物は、該混合物において、(A)、(B)及び(A)と(B)の結合体が下記式(12)で表される平衡状態にある混合物であることが好ましい。
より好ましくは、(B)は(A)と熱解離平衡を形成し得る化合物であり、さらに好ましくは、該混合物において、(A)、(B)及び(A)と(B)の結合体は熱解離平衡状態にある。熱解離とは、温度の上昇によって分子などが分解し、温度が下がれば逆反応によってもとの分子に戻る反応であり、上記式(12)を例にすると、(A)と(B)の結合体が、温度の上昇によって分解して(A)と(B)を形成し、温度が下がれば、(A)と(B)とが反応して(A)と(B)の結合体を形成する反応である。反応系内に触媒は存在していても存在していなくてもよいが、触媒が存在していない反応系が好ましい。
また、本実施形態において、(B)が、(A)と反応して、(A)と(B)の結合体を形成し得る化合物であり、下記式(13)で表される反応系が成立する化合物であってもよい。
式(13)で表される反応系を形成し得る(A)としては、ヘテロ原子又はハロゲン原子に結合した水素原子を有する化合物が挙げられる。ここでいう「ヘテロ原子」とは、複素環式化合物を形成し得る炭素以外の原子であって、例えば、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子を指す。
ヘテロ原子に結合した水素原子を有する化合物としては、例えば、下記式(1)〜(4)で表される基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基を有する化合物が挙げられる。
式中、X
1、X
2、X
3及びX
4(X
1〜X
4)は、各々独立に、酸素原子又は硫黄原子を示し、R’は有機基を示す。
このような化合物としては、例えば、下記式(14)で表される化合物が挙げられる。
式中、R
3は、炭素数1〜85の有機基を示し、X
6は、上記式(1)〜(4)で表される基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基を示し、aは、1〜6の整数を表す。
上記式(14)において、R3としては、例えば、脂肪族基、芳香族基、又は脂肪族基と芳香族基とが結合してなる基が挙げられる。より具体的には、例えば、非環式炭化水素基、環式炭化水素基(例えば、単環式炭化水素基、縮合多環式炭化水素基、架橋環式炭化水素基、スピロ炭化水素基、環集合炭化水素基、側鎖のある環式炭化水素基、ヘテロ環基、ヘテロ環式スピロ基、ヘテロ架橋環基、複素環基)、上記非環式炭化水素基と上記環式炭化水素基とからなる群から選ばれる1種以上の基が結合した基、又は上記群から選ばれる1種以上の基が、特定の非金属原子(炭素、酸素、窒素、硫黄、ケイ素)との共有結合を介して結合している基が挙げられる。
R3のなかでも、副反応が起こりにくいことから、脂肪族基、芳香族基、及び脂肪族基と芳香族基とが結合してなる基から選ばれ、かつ炭素数が1〜44の基が好ましい。流動性等を考慮すれば、炭素数が1〜30の基が好ましく、炭素数が1〜13の基がより好ましい。
X6が上記式(1)で表される基である場合、上記式(14)で表される化合物は、有機第1アミンである。X6が上記式(2)で表される基である場合、上記式(14)で表される化合物は、ヒドロキシ化合物(X1が酸素原子の場合)又はチオール(X1が硫黄原子の場合)である。X6が上記式(3)で表される基である場合、上記式(14)で表される化合物は、N―置換カルバミン酸エステル(X2及びX3が酸素原子の場合)、N−置換−O−置換チオカルバミン酸エステル(X2が硫黄原子で、X3が酸素原子の場合)、N−置換−S−置換チオカルバミン酸エステル(X2が酸素原子で、X3が硫黄原子の場合)又はN−置換ジチオカルバミン酸エステル(X2及びX3が硫黄原子の場合)である。X6が上記式(4)で表される基である場合、上記式(14)で表される化合物は、N−置換ウレイド(X4が酸素原子の場合)又はN−置換チオウレイド(X4が硫黄原子の場合)である。
上記式(14)で表される有機第1アミンとしては、
1)R3が、脂肪族及び/又は芳香族置換されてよい芳香族環を1種以上含有する炭素数6〜85の基であって、R3中の芳香族環をNH2基が置換し、aが1である、芳香族有機モノ第1アミン、
2)R3が、脂肪族及び/又は芳香族置換されてよい芳香族環を1以上含有する炭素数6〜44の基であって、R3中の芳香族環をNH2基が置換し、aが2以上である芳香族有機ポリ第1アミン、
3)R3が、炭素数1〜44の、芳香族置換されてよい脂肪族基であって、aが2又は3の脂肪族有機ポリ第1アミンである。
なお、NH2基が結合している原子(好ましくは炭素原子)が、芳香族環に含まれるものを芳香族有機アミンと表記し、芳香族環でない原子(主に炭素)に結合している場合を脂肪族有機アミンと表記している。
このようなR3の例としては、メチレン、ジメチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、オクタメチレン等の直鎖炭化水素基;シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、ビス(シクロヘキシル)アルカン等の無置換の脂環式炭化水素由来の基;メチルシクロペンタン、エチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン(各異性体)、エチルシクロヘキサン(各異性体)、プロピルシクロヘキサン(各異性体)、ブチルシクロヘキサン(各異性体)、ペンチルシクロヘキサン(各異性体)、ヘキシルシクロヘキサン(各異性体)等のアルキル置換シクロヘキサン由来の基;ジメチルシクロヘキサン(各異性体)、ジエチルシクロヘキサン(各異性体)、ジブチルシクロヘキサン(各異性体)等のジアルキル置換シクロヘキサン由来の基;1,5,5−トリメチルシクロヘキサン、1,5,5−トリエチルシクロヘキサン、1,5,5−トリプロピルシクロヘキサン(各異性体)、1,5,5−トリブチルシクロヘキサン(各異性体)等のトリアルキル置換シクロヘキサン由来の基;トルエン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン等のモノアルキル置換ベンゼン由来の基;キシレン、ジエチルベンゼン、ジプロピルベンゼン等のジアルキル置換ベンゼン由来の基;ジフェニルアルカン、ベンゼン等の芳香族炭化水素由来の基等が挙げられる。中でも、ヘキサメチレン、フェニレン、ジフェニルメタン、トルエン、シクロヘキサン、キシレニル、メチルシクロヘキサン、イソホロン及びジシクロヘキシルメタン由来の基が挙げられる。
ヒドロキシ化合物は、アルコール、芳香族ヒドロキシ化合物であり、アルコールの場合は、下記式(15)で表される化合物である。
式中、R
3は、c個のヒドロキシ基で置換された炭素数1〜44の脂肪族基、又は芳香族基が結合した炭素数7〜44の脂肪族基からなる基を示し、cは、1〜6の整数を表す。ただし、R
3は、ヒドロキシ基以外に活性水素を有しない基であり、式(15)で表されるアルコールの−OH基は芳香族基に結合していない−OH基である。
上記式(15)において、好ましいR3としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、メチルシクロペンチル基、エチルシクロペンチル基、メチルシクロヘキシル基、エチルシクロヘキシル基、プロピルシクロヘキシル基、ブチルシクロヘキシル基、ペンチルシクロヘキシル基、ヘキシルシクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基、ジエチルシクロヘキシル基、ジブチルシクロヘキシル基等を挙げることができる。
このようなR3を有するアルコールの具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ドデカノール、オクタデカノール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、シクロヘプタノール、シクロオクタノール、メチルシクロペンタノール、エチルシクロペンタノール、メチルシクロヘキサノール、エチルシクロヘキサノール、プロピルシクロヘキサノール、ブチルシクロヘキサノール、ペンチルシクロヘキサノール、ヘキシルシクロヘキサノール、ジメチルシクロヘキサノール、ジエチルシクロヘキサノール、ジブチルシクロヘキサノール、トリメチロールブタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリトリット、グリセリン、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリトリット、ソルビット、マンニット、ジグリセロール、トレイット、エリトリット、アドニット(リビトール)、アラビット(リキシトール)、キシリット、ズルシット(ガラクチトール)等を挙げることができる。
また、R3としては、フェニルメチル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、フェニルペンチル基、フェニルヘキシル基、フェニルヘプチル基、フェニルオクチル基、フェニルノニル基等を挙げることもできる。
このようなR3を有するアルコールの具体例としては、フェニルメタノール、フェニルエタノール、フェニルプロパノール、フェニルブタノール、フェニルペンタノール、フェニルヘキサノール、フェニルヘプタノール、フェニルオクタノール、フェニルノナノール等を挙げることができる。
上述のアルコールのうち、工業的な使用を考えれば、アルコール性ヒドロキシ基(ヒドロキシ化合物を構成する、芳香族環以外の炭素原子に直接付加するヒドロキシ基)を1又は2個有するアルコールが、一般に低粘度であるため好ましく、上記アルコール性ヒドロキシ基が1個であるモノアルコールがより好ましい。
これらの中でも、入手のし易さ、原料や生成物の溶解性等の観点から、炭素数1〜20のアルキルアルコールが好ましい。
ヒドロキシ化合物が、芳香族ヒドロキシ化合物である場合は、上記ヒドロキシ化合物は、下記式(16)で表される化合物である。
式中、環Aは、芳香族性を保つ任意の位置にd個のヒドロキシ基で置換された芳香族基を含有する、6〜44の炭素原子を含む有機基を示し、単環でも複数環でも複素環であっても、他の置換基によって置換されていてもよく、dは、1〜6の整数を表す。
環Aは、ベンゼン環、ナフタレン環及びアントラセン環からなる群から選ばれる少なくとも1つの構造を含有する構造であることが好ましく、環Aは、ベンゼン環を少なくとも1つ含有する構造であることがより好ましい。また、環Aは、ヒドロキシ基以外に活性水素を有しない基であることが好ましい。
環Aの芳香族基に結合するヒドロキシ基は、環Aの芳香族基の炭素原子に結合したヒドロキシ基である。該ヒドロキシ基の数は1〜6個、好ましくは1〜3個、より好ましくは1〜2個、さらに好ましくは1個(すなわち、d=1)である。
具体的には、フェノール、メチルフェノール(各異性体)、エチルフェノール(各異性体)、プロピルフェノール(各異性体)、ブチルフェノール(各異性体)、ペンチルフェノール(各異性体)、ヘキシルフェノール(各異性体)、オクチルフェノール(各異性体)、ノニルフェノール(各異性体)、クミルフェノール(各異性体)、ジメチルフェノール(各異性体)、メチルエチルフェノール(各異性体)、メチルプロピルフェノール(各異性体)、メチルブチルフェノール(各異性体)、メチルペンチルフェノール(各異性体)、ジエチルフェノール(各異性体)、エチルプロピルフェノール(各異性体)、エチルブチルフェノール(各異性体)、ジプロピルフェノール(各異性体)、ジクミルフェノール(各異性体)、トリメチルフェノール(各異性体)、トリエチルフェノール(各異性体)、ナフトール(各異性体)等が挙げられる。
芳香族ヒドロキシ化合物としては、上記芳香族ヒドロキシ化合物を構成する芳香族炭化水素環に直接結合するヒドロキシル基を1つ有する芳香族モノヒドロキシ化合物が好ましい。上記芳香族ヒドロキシ化合物を構成する芳香族炭化水素環に直接結合するヒドロキシル基を2つ以上有する芳香族ヒドロキシ化合物であっても、芳香族ヒドロキシ化合物として使用することが可能であるが、芳香族モノヒドロキシ化合物は一般的に低粘度であるため、芳香族炭化水素環に直接結合するヒドロキシル基は1つであることが好ましい。
チオールとしては、下記式(17)で表される化合物が好ましい。
式中、R
3は、e個のスルフヒドリル基で置換された、炭素数1〜44の脂肪族基、又は芳香族基が結合した炭素数7〜44の脂肪族基からなる基を示し、式(17)で表されるチオールの−SH基は芳香族基に結合していない−SH基である。eは、1〜3の整数を表す。ただし、R
3は、スルフヒドリル基以外に活性水素を有しない基である。
R3としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、メチルシクロペンチル基、エチルシクロペンチル基、メチルシクロヘキシル基、エチルシクロヘキシル基、プロピルシクロヘキシル基、ブチルシクロヘキシル基、ペンチルシクロヘキシル基、ヘキシルシクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基、ジエチルシクロヘキシル基、ジブチルシクロヘキシル基等を挙げることができる。
このようなR3を有するチオールの具体例としては、メタンチオール、エタンチオール、プロパンチオール、ブタンチオール、ペンタンチオール、ヘキサンチオール、ヘプタンチオール、オクタンチオール、ノナンチオール、デカンチオール、ドデカンチオール、オクタデカンチオール、シクロペンタンチオール、シクロヘキサンチオール、シクロヘプタンチオール、シクロオクタンチオール、メチルシクロペンタンチオール、エチルシクロペンタンチオール、メチルシクロヘキサンチオール、エチルシクロヘキサンチオール、プロピルシクロヘキサンチオール、ブチルシクロヘキサンチオール、ペンチルシクロヘキサンチオール、ヘキシルシクロヘキサンチオール、ジメチルシクロヘキサンチオール、ジエチルシクロヘキサンチオール、ジブチルシクロヘキサンチオール等を挙げることができる。
また、R3としては、フェニルメチル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、フェニルペンチル基、フェニルヘキシル基、フェニルヘプチル基、フェニルオクチル基、フェニルノニル基等を挙げることもできる。
このようなR3を有するチオールの具体例としては、フェニルメタンチオール、フェニルエタンチオール、フェニルプロパンチオール、フェニルブタンチオール、フェニルペンタンチオール、フェニルヘキサンチオール、フェニルヘプタンチオール、フェニルオクタンチオール、フェニルノナンチオール等を挙げることができる。
上述のチオールのうち、工業的な使用を考えれば、チオール性スルフヒドリル基(チオールを構成する、芳香族環以外の炭素原子に直接付加するスルフヒドリル基)を1又は2個有するチオールが、一般に低粘度であるため好ましく、上記チオール性スルフヒドリル基が1個であるモノチオールがより好ましい。
これらの中でも、入手のし易さ、原料や生成物の溶解性等の観点から、炭素数1〜20のアルキルチオールが好ましい。
芳香族チオールとしては、下記式(18)で表される化合物が好ましい。
式中、環Aは、芳香族性を保つ任意の位置にf個のスルフヒドリル基で置換された芳香族基を含有する、6〜44の炭素原子を含む有機基を示し、単環でも複数環でも複素環であっても、他の置換基によって置換されていてもよく、fは、1〜6の整数を表す。
環Aは、ベンゼン環、ナフタレン環及びアントラセン環からなる群から選ばれる少なくとも1つの構造を含有する構造であることが好ましく、環Aは、ベンゼン環を少なくとも1つ含有する構造であることがより好ましい。また、環Aは、スルフヒドリル基以外に活性水素を有しない基であることが好ましい。
環Aの芳香族基に結合するスルフヒドリル基は、環Aの芳香族基の炭素原子に結合したスルフヒドリル基である。該スルフヒドリル基の数は1〜6個、好ましくは1〜3個、より好ましくは1〜2個、さらに好ましくは1個(すなわち、f=1)である。
具体的には、ベンゼンチオール、メチルベンゼンチオール(各異性体)、エチルベンゼンチオール(各異性体)、プロピルベンゼンチオール(各異性体)、ブチルベンゼンチオール(各異性体)、ペンチルベンゼンチオール(各異性体)、ヘキシルベンゼンチオール(各異性体)、オクチルベンゼンチオール(各異性体)、ノニルベンゼンチオール(各異性体)、クミルベンゼンチオール(各異性体)、ジメチルベンゼンチオール(各異性体)、メチルエチルベンゼンチオール(各異性体)、メチルプロピルベンゼンチオール(各異性体)、メチルブチルベンゼンチオール(各異性体)、メチルペンチルベンゼンチオール(各異性体)、ジエチルベンゼンチオール(各異性体)、エチルプロピルベンゼンチオール(各異性体)、エチルブチルベンゼンチオール(各異性体)、ジプロピルベンゼンチオール(各異性体)、ジクミルベンゼンチオール(各異性体)、トリメチルベンゼンチオール(各異性体)、トリエチルベンゼンチオール(各異性体)、ナフタレンチオール(各異性体)等が挙げられる。
芳香族チオールとしては、該芳香族チオールを構成する芳香族炭化水素環に直接結合するスルフヒドリル基を1つ有する芳香族モノチオール化合物が好ましい。芳香族チオールを構成する芳香族炭化水素環に直接結合するスルフヒドリル基を2つ以上有する芳香族チオールであっても、芳香族チオールとして使用することが可能であるが、上記スルフヒドリル基を1又は2個有する芳香族チオールが、一般に低粘度であるため好ましく、上記スルフヒドリル基を1個有する芳香族モノチオールがより好ましい。
上記式(14)において、X6が上記式(3)で表される基である場合、R’は有機基であり、該有機基を含んでなる上記式(14)で表される化合物は単量体であっても多量体であっても良い。蒸留分離を行う観点からは、R’は、炭素数1〜44の有機基であることが好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基(各異性体)、ブチル基(各異性体)、ペンチル基(各異性体)、ヘキシル基(各異性体)、ヘプチル基(各異性体)、オクチル基(各異性体)、ノニル基(各異性体)、デシル基(各異性体)、ウンデシル基(各異性体)、ドデシル基(各異性体)等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、メチル−フェニル基(各異性体)、エチル−フェニル基(各異性体)、プロピル−フェニル基(各異性体)、ブチル−フェニル基(各異性体)、ペンチル−フェニル基(各異性体)、ヘキシル−フェニル基(各異性体)、ヘプチル−フェニル基(各異性体)、オクチル−フェニル基(各異性体)、ノニル−フェニル基(各異性体)、デシル−フェニル基(各異性体)、ドデシル−フェニル基(各異性体)、フェニル−フェニル基(各異性体)、フェノキシ−フェニル基(各異性体)、クミル−フェニル基(各異性体)、ジメチル−フェニル基(各異性体)、ジエチル−フェニル基(各異性体)、ジプロピル−フェニル基(各異性体)、ジブチル−フェニル基(各異性体)、ジペンチル−フェニル基(各異性体)、ジヘキシル−フェニル基(各異性体)、ジヘプチル−フェニル基(各異性体)、ジフェニル−フェニル基(各異性体)、ジフェノキシ−フェニル基(各異性体)、ジクミル−フェニル基(各異性体)、ナフチル基(各異性体)、メチル−ナフチル基(各異性体)等の芳香族基であることがより好ましい。
N−置換カルバミン酸エステルの例としては、N,N’−ヘキサンジイル−ビス−カルバミン酸ジフェニルエステル、N,N’−ヘキサンジイル−ビス−カルバミン酸ジ(メチルフェニル)エステル(各異性体)、N,N’−ヘキサンジイル−ビス−カルバミン酸ジ(エチルフェニル)エステル(各異性体)、N,N’−ヘキサンジイル−ビス−カルバミン酸ジ(プロピルフェニル)エステル(各異性体)、N,N’−ヘキサンジイル−ビス−カルバミン酸ジ(ブチルフェニル)エステル(各異性体)、N,N’−ヘキサンジイル−ビス−カルバミン酸ジ(ペンチルフェニル)エステル(各異性体)、N,N’−ヘキサンジイル−ビス−カルバミン酸ジ(クミルフェニル)エステル(各異性体)、ジフェニル−4,4’−メチレン−ジシクロヘキシルカルバメート、ジ(メチルフェニル)−4,4’−メチレン−ジシクロヘキシルカルバメート、ジ(エチルフェニル)−4,4’−メチレン−ジシクロヘキシルカルバメート、ジ(プロピルフェニル)−4,4’−メチレン−ジシクロヘキシルカルバメート(各異性体)、ジ(ブチルフェニル)−4,4’−メチレン−ジシクロヘキシルカルバメート(各異性体)、ジ(ペンチルフェニル)−4,4’−メチレン−ジシクロヘキシルカルバメート(各異性体)、ジ(ヘキシルフェニル)−4,4’−メチレン−ジシクロヘキシルカルバメート(各異性体)、ジ(ヘプチルフェニル)−4,4’−メチレン−ジシクロヘキシルカルバメート(各異性体)、ジ(クミルフェニル)−4,4’−メチレン−ジシクロヘキシルカルバメート(各異性体)、3−(フェノキシカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸フェニルエステル、3−(メチルフェノキシカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸(メチルフェノキシ)エステル(各異性体)、3−(エチルフェノキシカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸(エチルフェニル)エステル(各異性体)、3−(プロピルフェノキシカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸(プロピルフェニル)エステル(各異性体)、3−(ブチルフェノキシカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸(ブチルフェニル)エステル(各異性体)、3−(ペンチルフェノキシカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸(ペンチルフェニル)エステル(各異性体)、3−(ヘキシルフェノキシカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸(ヘキシルフェニル)エステル(各異性体)、3−(ヘプチルフェノキシカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸(ヘプチルフェニル)エステル(各異性体)、3−(クミルフェノキシカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸(クミルフェニル)エステル(各異性体)、トルエン−ジカルバミン酸ジフェニルエステル(各異性体)、トルエン−ジカルバミン酸ジ(メチルフェニル)エステル(各異性体)、トルエン−ジカルバミン酸ジ(エチルフェニル)エステル(各異性体)、トルエン−ジカルバミン酸ジ(プロピルフェニル)エステル(各異性体)、トルエン−ジカルバミン酸ジ(ブチルフェニル)エステル(各異性体)、トルエン−ジカルバミン酸ジ(ペンチルフェニル)エステル(各異性体)、トルエン−ジカルバミン酸ジ(ヘキシルフェニル)エステル(各異性体)、トルエン−ジカルバミン酸ジ(ヘプチルフェニル)エステル(各異性体)、トルエン−ジカルバミン酸ジ(オクチルフェニル)エステル(各異性体)、N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジフェニル)−ビスカルバミン酸ジフェニルエステル、N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジフェニル)−ビスカルバミン酸ジ(メチルフェニル)エステル、N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジフェニル)−ビスカルバミン酸ジ(エチルフェニル)エステル、N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジフェニル)−ビスカルバミン酸ジ(プロピルフェニル)エステル、N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジフェニル)−ビスカルバミン酸ジ(ブチルフェニル)エステル、N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジフェニル)−ビスカルバミン酸ジ(ペンチルフェニル)エステル、N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジフェニル)−ビスカルバミン酸ジ(ヘキシルフェニル)エステル、N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジフェニル)−ビスカルバミン酸ジ(ヘプチルフェニル)エステル、N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジフェニル)−ビスカルバミン酸ジ(オクチルフェニル)エステル(各異性体)を挙げることができる。
上述したN−置換カルバミン酸エステルは、一種単独で用いてもよく、二種以上併用してもよい。
N−置換−O−置換チオカルバミン酸エステルの例としては、N,N’−ヘキサンジイル−ビス−チオカルバミン酸ジ(O−フェニル)エステル、N,N’−ヘキサンジイル−ビス−チオカルバミン酸ジ(O−メチルフェニル)エステル(各異性体)、N,N’−ヘキサンジイル−ビス−チオカルバミン酸ジ(O−エチルフェニル)エステル(各異性体)、N,N’−ヘキサンジイル−ビス−チオカルバミン酸ジ(O−プロピルフェニル)エステル(各異性体)、N,N’−ヘキサンジイル−ビス−チオカルバミン酸ジ(O−ブチルフェニル)エステル(各異性体)、N,N’−ヘキサンジイル−ビス−チオカルバミン酸ジ(O−ペンチルフェニル)エステル(各異性体)、N,N’−ヘキサンジイル−ビス−チオカルバミン酸ジ(O−クミルフェニル)エステル(各異性体)、ジ(O−フェニル)−4,4’−メチレン−ジチオカルバメート、ジ(O−メチルフェニル)−4,4’−メチレン−ジシクロヘキシルチオカルバメート、ジ(O−エチルフェニル)−4,4’−メチレン−ジシクロヘキシルチオカルバメート、ジ(O−プロピルフェニル)−4,4’−メチレン−ジシクロヘキシルチオカルバメート(各異性体)、ジ(O−ブチルフェニル)−4,4’−メチレン−ジシクロヘキシルチオカルバメート(各異性体)、ジ(O−ペンチルフェニル)−4,4’−メチレン−ジシクロヘキシルチオカルバメート(各異性体)、ジ(O−ヘキシルフェニル)−4,4’−メチレン−ジシクロヘキシルチオカルバメート(各異性体)、ジ(O−ヘプチルフェニル)−4,4’−メチレン−ジシクロヘキシルチオカルバメート(各異性体)、ジ(O−オクチルフェニル)−4,4’−メチレン−ジシクロヘキシルチオカルバメート(各異性体)、3−(フェノキシチオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルチオカルバミン酸(O−フェニル)エステル、3−(メチルフェノキシチオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルチオカルバミン酸(O−メチルフェニル)エステル(各異性体)、3−(エチルフェノキシチオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルチオカルバミン酸(O−エチルフェニル)エステル(各異性体)、3−(プロピルフェノキシチオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸(O−プロピルフェニル)エステル(各異性体)、3−(ブチルフェノキシチオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルチオカルバミン酸(O−ブチルフェニル)エステル(各異性体)、3−(ペンチルフェノキシチオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルチオカルバミン酸(O−ペンチルフェニル)エステル(各異性体)、3−(ヘキシルフェノキシチオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルチオカルバミン酸(O−ヘキシルフェニル)エステル(各異性体)、3−(ヘプチルフェノキシチオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルチオカルバミン酸(O−ヘプチルフェニル)エステル(各異性体)、3−(オクチルフェノキシチオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルチオカルバミン酸(O−オクチルフェニル)エステル(各異性体)、トルエン−ビスーチオカルバミン酸ジ(O−フェニル)エステル(各異性体)、トルエン−ビスーチオカルバミン酸ジ(O−メチルフェニル)エステル(各異性体)、トルエン−ビスーチオカルバミン酸ジ(O−エチルフェニル)エステル(各異性体)、トルエン−ビスーチオカルバミン酸ジ(O−プロピルフェニル)エステル(各異性体)、トルエン−ビスーチオカルバミン酸ジ(O−ブチルフェニル)エステル(各異性体)、トルエン−ビスーチオカルバミン酸ジ(O−ペンチルフェニル)エステル(各異性体)、トルエン−ビスーチオカルバミン酸ジ(O−ヘキシルフェニル)エステル(各異性体)、トルエン−ビスーカルバミン酸ジ(O−ヘプチルフェニル)エステル(各異性体)、トルエン−ビスーカルバミン酸ジ(O−オクチルフェニル)エステル(各異性体)、N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジフェニル)−ビスーチオカルバミン酸ジ(O−フェニル)エステル、N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジフェニル)−ビスーチオカルバミン酸ジ(O−メチルフェニル)エステル、N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジフェニル)−ビスーチオカルバミン酸ジ(O−エチルフェニル)エステル、N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジフェニル)−ビスーチオカルバミン酸ジ(O−プロピルフェニル)エステル、N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジフェニル)−ビスカルバミン酸ジ(ブチルフェニル)エステル、N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジフェニル)−ビスーチオカルバミン酸ジ(O−ペンチルフェニル)エステル、N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジフェニル)−ビスーチオカルバミン酸ジ(O−ヘキシルフェニル)エステル、N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジフェニル)−ビス−チオカルバミン酸ジ(O−ヘプチルフェニル)エステル、N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジフェニル)−ビスーチオカルバミン酸ジ(O−オクチルフェニル)エステル(各異性体)を挙げることができる。
上述したN−置換−O−置換チオカルバミン酸エステルは、一種単独で用いてもよく、二種以上併用してもよい。
N−置換−S−置換チオカルバミン酸エステルの例としては、N,N’−ヘキサンジイル−ビス−チオカルバミン酸ジ(S−フェニル)エステル、N,N’−ヘキサンジイル−ビス−チオカルバミン酸ジ(S−メチルフェニル)エステル(各異性体)、N,N’−ヘキサンジイル−ビス−チオカルバミン酸ジ(S−エチルフェニル)エステル(各異性体)、N,N’−ヘキサンジイル−ビス−チオカルバミン酸ジ(S−プロピルフェニル)エステル(各異性体)、N,N’−ヘキサンジイル−ビス−チオカルバミン酸ジ(S−ブチルフェニル)エステル(各異性体)、N,N’−ヘキサンジイル−ビス−チオカルバミン酸ジ(S−ペンチルフェニル)エステル(各異性体)、ジ(S−フェニル)−4,4’−メチレン−ジチオカルバメート、ジ(S−メチルフェニル)−4,4’−メチレン−ジシクロヘキシルチオカルバメート、ジ(S−エチルフェニル)−4,4’−メチレン−ジシクロヘキシルチオカルバメート、ジ(S−プロピルフェニル)−4,4’−メチレン−ジシクロヘキシルチオカルバメート(各異性体)、ジ(S−ブチルフェニル)−4,4’−メチレン−ジシクロヘキシルチオカルバメート(各異性体)、ジ(S−ペンチルフェニル)−4,4’−メチレン−ジシクロヘキシルチオカルバメート(各異性体)、ジ(S−ヘキシルフェニル)−4,4’−メチレン−ジシクロヘキシルチオカルバメート(各異性体)、ジ(S−ヘプチルフェニル)−4,4’−メチレン−ジシクロヘキシルチオカルバメート(各異性体)、ジ(S−オクチルフェニル)−4,4’−メチレン−ジシクロヘキシルチオカルバメート(各異性体)、3−(フェノキシチオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルチオカルバミン酸(S−フェニル)エステル、3−(メチルフェノキシチオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルチオカルバミン酸(S−メチルフェニル)エステル(各異性体)、3−(エチルフェノキシチオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルチオカルバミン酸(S−エチルフェニル)エステル(各異性体)、3−(プロピルフェノキシチオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸(S−プロピルフェニル)エステル(各異性体)、3−(ブチルフェノキシチオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルチオカルバミン酸(S−ブチルフェニル)エステル(各異性体)、3−(ペンチルフェノキシチオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルチオカルバミン酸(S−ペンチルフェニル)エステル(各異性体)、3−(ヘキシルフェノキシチオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルチオカルバミン酸(S−ヘキシルフェニル)エステル(各異性体)、3−(ヘプチルフェノキシチオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルチオカルバミン酸(S−ヘプチルフェニル)エステル(各異性体)、3−(オクチルフェノキシチオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルチオカルバミン酸(S−オクチルフェニル)エステル(各異性体)、トルエン−ビスーチオカルバミン酸ジ(S−フェニル)エステル(各異性体)、トルエン−ビスーチオカルバミン酸ジ(S−メチルフェニル)エステル(各異性体)、トルエン−ビスーチオカルバミン酸ジ(S−エチルフェニル)エステル(各異性体)、トルエン−ビスーチオカルバミン酸ジ(S−プロピルフェニル)エステル(各異性体)、トルエン−ビスーチオカルバミン酸ジ(S−ブチルフェニル)エステル(各異性体)、トルエン−ビスーチオカルバミン酸ジ(S−ペンチルフェニル)エステル(各異性体)、トルエン−ビスーチオカルバミン酸ジ(S−ヘキシルフェニル)エステル(各異性体)、トルエン−ビスーカルバミン酸ジ(S−ヘプチルフェニル)エステル(各異性体)、トルエン−ビスーカルバミン酸ジ(S−オクチルフェニル)エステル(各異性体)、N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジフェニル)−ビスーチオカルバミン酸ジ(S−フェニル)エステル、N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジフェニル)−ビス−チオカルバミン酸ジ(S−メチルフェニル)エステル、N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジフェニル)−ビスーチオカルバミン酸ジ(S−エチルフェニル)エステル、N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジフェニル)−ビス−チオカルバミン酸ジ(S−プロピルフェニル)エステル、N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジフェニル)−ビスカルバミン酸ジ(ブチルフェニル)エステル、N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジフェニル)−ビス−チオカルバミン酸ジ(S−ペンチルフェニル)エステル、N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジフェニル)−ビス−チオカルバミン酸ジ(S−ヘキシルフェニル)エステル、N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジフェニル)−ビス−チオカルバミン酸ジ(S−ヘプチルフェニル)エステル、N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジフェニル)−ビス−チオカルバミン酸ジ(S−オクチルフェニル)エステル(各異性体)を挙げることができる。
上述したN−置換−S−置換チオカルバミン酸エステルは、一種単独で用いてもよく、二種以上併用してもよい。
N−置換ジチオカルバミン酸エステルの例としては、N,N’−ヘキサンジイル−ビス−ジチオカルバミン酸ジフェニルエステル、N,N’−ヘキサンジイル−ビス−ジチオカルバミン酸ジ(メチルフェニル)エステル(各異性体)、N,N’−ヘキサンジイル−ビス−ジチオカルバミン酸ジ(エチルフェニル)エステル(各異性体)、N,N’−ヘキサンジイル−ビス−ジチオカルバミン酸ジ(プロピルフェニル)エステル(各異性体)、N,N’−ヘキサンジイル−ビス−ジチオカルバミン酸ジ(ブチルフェニル)エステル(各異性体)、N,N’−ヘキサンジイル−ビス−ジチオカルバミン酸ジ(ペンチルフェニル)エステル(各異性体)、ジフェニル−4,4’−メチレン−ジジチオカルバメート、ジ(メチルフェニル)−4,4’−メチレン−ジシクロヘキシルジチオカルバメート、ジ(エチルフェニル)−4,4’−メチレン−ジシクロヘキシルジチオカルバメート、ジ(プロピルフェニル)−4,4’−メチレン−ジシクロヘキシルジチオカルバメート(各異性体)、ジ(ブチルフェニル)−4,4’−メチレン−ジシクロヘキシルジチオカルバメート(各異性体)、ジ(ペンチルフェニル)−4,4’−メチレン−ジシクロヘキシルジチオカルバメート(各異性体)、ジ(ヘキシルフェニル)−4,4’−メチレン−ジシクロヘキシルジチオカルバメート(各異性体)、ジ(ヘプチルフェニル)−4,4’−メチレン−ジシクロヘキシルジチオカルバメート(各異性体)、ジ(オクチルフェニル)−4,4’−メチレン−ジシクロヘキシルジチオカルバメート(各異性体)、3−(フェニルスルホニルチオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルジチオカルバミン酸フェニルエステル、3−(メチルフェニルジチオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルジチオカルバミン酸(メチルフェニル)エステル(各異性体)、3−(エチルフェニルジチオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルジチオカルバミン酸(エチルフェニル)エステル(各異性体)、3−(プロピルフェニルジチオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸(プロピルフェニル)エステル(各異性体)、3−(ブチルフェニルジチオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルジチオカルバミン酸(ブチルフェニル)エステル(各異性体)、3−(ペンチルフェニルジチオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルジチオカルバミン酸(ペンチルフェニル)エステル(各異性体)、3−(ヘキシルフェニルジチオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルジチオカルバミン酸(ヘキシルフェニル)エステル(各異性体)、3−(ヘプチルフェニルジチオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルジチオカルバミン酸(ヘプチルフェニル)エステル(各異性体)、3−(オクチルフェニルジチオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルジチオカルバミン酸(オクチルフェニル)エステル(各異性体)、トルエン−ビスージチオカルバミン酸ジフェニルエステル(各異性体)、トルエン−ビスージチオカルバミン酸ジ(メチルフェニル)エステル(各異性体)、トルエン−ビスージチオカルバミン酸ジ(エチルフェニル)エステル(各異性体)、トルエン−ビスージチオカルバミン酸ジ(プロピルフェニル)エステル(各異性体)、トルエン−ビスージチオカルバミン酸ジ(ブチルフェニル)エステル(各異性体)、トルエン−ビスージチオカルバミン酸ジ(ペンチルフェニル)エステル(各異性体)、トルエン−ビスージチオカルバミン酸ジ(ヘキシルフェニル)エステル(各異性体)、トルエン−ビスーカルバミン酸ジ(ヘプチルフェニル)エステル(各異性体)、トルエン−ビスーカルバミン酸ジ(オクチルフェニル)エステル(各異性体)、N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジフェニル)−ビス−ジチオカルバミン酸ジフェニルエステル、N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジフェニル)−ビスージチオカルバミン酸ジ(メチルフェニル)エステル、N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジフェニル)−ビスージチオカルバミン酸ジ(エチルフェニル)エステル、N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジフェニル)−ビスージチオカルバミン酸ジ(プロピルフェニル)エステル、N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジフェニル)−ビスカルバミン酸ジ(ブチルフェニル)エステル、N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジフェニル)−ビスージチオカルバミン酸ジ(ペンチルフェニル)エステル、N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジフェニル)−ビスージチオカルバミン酸ジ(ヘキシルフェニル)エステル、N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジフェニル)−ビス−ジチオカルバミン酸ジ(ヘプチルフェニル)エステル、N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジフェニル)−ビス−ジチオカルバミン酸ジ(オクチルフェニル)エステル(各異性体)を挙げることができる。
上述したN−置換ジチオカルバミン酸エステルは、一種単独で用いてもよく、二種以上併用してもよい。
N−置換カルバミン酸エステル、N−置換−O−置換チオカルバミン酸エステル、N−置換−S−置換チオカルバミン酸エステル、N−置換ジチオカルバミン酸エステルの製造方法は特に限定はされず、種々の公知の方法を用いることができる。
X6が上記式(4)で表される基である場合、上記式(14)で表される化合物は、N−置換ウレイド(X4が酸素原子の場合)又はN−置換チオウレイド(X4が硫黄原子の場合)である。
N−置換ウレイドとしては、N−フェニルウレア、N−(メチルフェニル)ウレア(各異性体)、N−(ジメチルフェニル)ウレア(各異性体)、N−(ジエチルフェニル)ウレア(各異性体)、N−(ジプロピルフェニル)ウレア(各異性体)、N−ナフチルウレア(各異性体)、N−(メチルナフチル)ウレア(各異性体)、N−ジメチルナフチルウレア(各異性体)、N−トリメチルナフチルウレア(各異性体)、N,N’−フェニレンジウレア(各異性体)、N,N’−メチルフェニレンジウレア(各異性体)、N,N’−メチレンジフェニレンジウレア(各異性体)、N,N’−メシチレンジウレア(各異性体)、N,N’−ビフェニレンジウレア(各異性体)、N,N’−ジフェニレンジウレア(各異性体)、N,N’−プロピレンジフェニレンジウレア(各異性体)、N,N’−オキシ−ジフェニレンジウレア(各異性体)、ビス(ウレイドフェノキシエタン)(各異性体)、N,N’−キシレンジウレア(各異性体)、N,N’−メトキシフェニルジウレア(各異性体)、N,N’−エトキシフェニルジウレア(各異性体)、N,N’−ナフタレンジウレア(各異性体)、N,N’−メチルナフタレンジウレア(各異性体)、N,N’−エチレンジウレア、N,N’−プロピレンジウレア(各異性体)、N,N’−ブチレンジウレア(各異性体)、N,N’−ペンタメチレンジウレア(各異性体)、N,N’−ヘキサンメチレンジウレア(各異性体)、N,N’−デカメチレンジウレア(各異性体)等のN−脂肪族ジウレア;N,N’,N’’−ヘキサメチレントリウレア(各異性体)、N,N’,N’’−ノナメチレントリウレア(各異性体)、N,N’,N’’−デカメチレントリウレア(各異性体)等のN−脂肪族トリウレア;N,N’−シクロブチレンジウレア(各異性体)、N,N’−メチレンジシクロヘキシルジウレア(各異性体)、3−ウレイドメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルウレア(シス及び/又はトランス体)、メチレンビス(シクロヘキシルウレア)(各異性体)等の置換されたN−環式脂肪族ポリウレアが挙げることができる。
N−置換チオウレイドとしては、N−フェニルチオウレア、N−(メチルフェニル)チオウレア(各異性体)、N−(ジメチルフェニル)チオウレア(各異性体)、N−(ジエチルフェニル)チオウレア(各異性体)、N−(ジプロピルフェニル)チオウレア(各異性体)、N−ナフチルチオウレア(各異性体)、N−(メチルナフチル)チオウレア(各異性体)、N−ジメチルナフチルチオウレア(各異性体)、N−トリメチルナフチルチオウレア(各異性体)、N,N’−フェニレンジチオウレア(各異性体)、N,N’−メチルフェニレンジチオウレア(各異性体)、N,N’−メチレンジフェニレンジチオウレア(各異性体)、N,N’−メシチレンジチオウレア(各異性体)、N,N’−ビフェニレンジチオウレア(各異性体)、N,N’−ジフェニレンジチオウレア(各異性体)、N,N’−プロピレンジフェニレンジチオウレア(各異性体)、N,N’−オキシ−ジフェニレンジチオウレア(各異性体)、ビス(チオウレイドフェノキシエタン)(各異性体)、N,N’−キシレンジチオウレア(各異性体)、N,N’−メトキシフェニルジチオウレア(各異性体)、N,N’−エトキシフェニルジチオウレア(各異性体)、N,N’−ナフタレンジチオウレア(各異性体)、N,N’−メチルナフタレンジチオウレア(各異性体)、N,N’−エチレンジチオウレア、N,N’−プロピレンジチオウレア(各異性体)、N,N’−ブチレンジチオウレア(各異性体)、N,N’−ペンタメチレンジチオウレア(各異性体)、N,N’−ヘキサンメチレンジチオウレア(各異性体)、N,N’−デカメチレンジチオウレア(各異性体)等のN−脂肪族ジチオウレア;N,N’,N’’−ヘキサメチレントリチオウレア(各異性体)、N,N’,N’’−ノナメチレントリチオウレア(各異性体)、N,N’,N’’−デカメチレントリチオウレア(各異性体)等のN−脂肪族トリチオウレア;N,N’−シクロブチレンジチオウレア(各異性体)、N,N’−メチレンジシクロヘキシルジチオウレア(各異性体)、3−チオウレイドメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルチオウレア(シス及び/又はトランス体)、メチレンビス(シクロヘキシルチオウレア)(各異性体)等の置換されたN−環式脂肪族ポリチオウレアが挙げることができる。
ハロゲン原子に結合した水素原子を有する化合物としては、例えば、塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素が挙げられる。
(B)としては、例えば、カルボニル基(>C=O)を有する化合物が挙げられる。カルボニル基を有する化合物としては、例えば、下記式(5)〜(8)で表される基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基を有する化合物が挙げられる。
式中、Y
1、Y
2、Y
3及びY
4(Y
1〜Y
4)は、各々独立に、酸素原子又は硫黄原子を示し、R
1及びR
2は、各々独立に、炭素数1〜30の有機基を示し、R’’は、有機基を示す。
上記式(7)は炭酸エステルである。上記式(5)、(6)及び(8)で表される基を有する化合物としては、例えば、下記式(19)で表される化合物が挙げられる。
式中、R
4は、炭素数1〜80の有機基を示し、Y
6は、上記式(5)、(6)及び(8)で表される基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基を示し、bは、1〜10の整数を表す。
上記式(19)において、R4としては、例えば、脂肪族基、芳香族基、又は脂肪族基と芳香族基とが結合してなる基が挙げられる。より具体的には、例えば、非環式炭化水素基、環式炭化水素基(例えば、単環式炭化水素基、縮合多環式炭化水素基、架橋環式炭化水素基、スピロ炭化水素基、環集合炭化水素基、側鎖のある環式炭化水素基、ヘテロ環基、ヘテロ環式スピロ基、ヘテロ架橋環基、複素環基)、上記非環式炭化水素基と上記環式炭化水素基とからなる群から選ばれる1種以上の基が結合した基、又は上記群から選ばれる1種以上の基が、特定の非金属原子(炭素、酸素、窒素、硫黄、ケイ素)との共有結合を介して結合している基が挙げられる。
R4のなかでも、副反応が起こりにくいことから、脂肪族基、芳香族基、及び脂肪族基と芳香族基とが結合してなる基から選ばれ、かつ炭素数が1〜80の基が好ましい。流動性等を考慮すれば、炭素数が1〜70の基が好ましく、炭素数が1〜30の基がより好ましい。
R4の例としては、メチレン、ジメチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、オクタメチレン等の直鎖炭化水素基;シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、ビス(シクロヘキシル)アルカン等の無置換の脂環式炭化水素由来の基;メチルシクロペンタン、エチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン(各異性体)、エチルシクロヘキサン(各異性体)、プロピルシクロヘキサン(各異性体)、ブチルシクロヘキサン(各異性体)、ペンチルシクロヘキサン(各異性体)、ヘキシルシクロヘキサン(各異性体)等のアルキル置換シクロヘキサン由来の基;ジメチルシクロヘキサン(各異性体)、ジエチルシクロヘキサン(各異性体)、ジブチルシクロヘキサン(各異性体)等のジアルキル置換シクロヘキサン由来の基;1,5,5−トリメチルシクロヘキサン、1,5,5−トリエチルシクロヘキサン、1,5,5−トリプロピルシクロヘキサン(各異性体)、1,5,5−トリブチルシクロヘキサン(各異性体)等のトリアルキル置換シクロヘキサン由来の基;トルエン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン等のモノアルキル置換ベンゼン由来の基;キシレン、ジエチルベンゼン、ジプロピルベンゼン等のジアルキル置換ベンゼン由来の基;ジフェニルアルカン、ベンゼン等の芳香族炭化水素由来の基等が挙げられる。中でも、ヘキサメチレン、フェニレン、ジフェニルメタン、トルエン、シクロヘキサン、キシレニル、メチルシクロヘキサン、イソホロン及びジシクロヘキシルメタン由来の基が挙げられる。
Y6が上記式(5)で表される基である場合、上記式(19)で表される化合物は、N―置換カルバミン酸エステル(Y1及びY2が酸素原子の場合)、N−置換−O−置換チオカルバミン酸エステル(Y1が硫黄原子で、Y2が酸素原子の場合)、N−置換−S−置換チオカルバミン酸エステル(Y1が酸素原子で、Y2が硫黄原子の場合)又はN−置換時チオカルバミン酸エステル(Y1及びY2が硫黄原子の場合)である。これらの好ましい化合物の例は上述したとおりである(R’’はR’と同様である)。Y6が上記式(6)で表される基である場合、上記式(19)で表される化合物は、N−置換ウレイド(Y3が酸素原子の場合)又はN−置換チオウレイド(Y3が硫黄原子の場合)である。これらの好ましい化合物の例は上述したとおりである。Y6が上記式(8)で表される基である場合、上記式(19)で表される化合物は、イソシアネート(Y4が酸素原子の場合)又はイソチオシアネート(Y4が硫黄原子の場合)である。
炭酸エステルとは、炭酸CO(OH)2の2つの水素原子のうち、その1つ又は2つを、脂肪族基又は芳香族基で置換した化合物を指す。
上記式(7)において、R1及びR2で示される脂肪族基の例としては、特定の非金属原子(炭素、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、ハロゲン原子)で構成される基が挙げられる。脂肪族基としては、例えば、鎖状炭化水素基、環状炭化水素基、及び上記鎖状炭化水素基と上記環状炭化水素基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基が結合した基(例えば、鎖状炭化水素基で置換された環状炭化水素基、環状炭化水素基で置換された鎖状炭化水素基などを指す)が好ましい。また、アラルキル基の例としては、鎖状及び/又は分岐鎖状のアルキル基が、芳香族基で置換された基が挙げられる。該芳香族基とは、上述したように、好ましくは特定の非金属原子(炭素、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、ハロゲン原子)で構成される基であって、単環式芳香族基、縮合多環式芳香族基、架橋環式芳香族基、環集合芳香族基、ヘテロ環式芳香族基等が挙げられる。さらに好ましくは、置換及び/又は無置換のフェニル基、置換及び/又は無置換のナフチル基、置換及び/又は無置換のアントリル基である。
R1及びR2で示される芳香族基の例としては、特定の非金属原子(炭素、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、ハロゲン原子)で構成される基であって、単環式芳香族基、縮合多環式芳香族基、架橋環式芳香族基、環集合芳香族基、ヘテロ環式芳香族基等が挙げられる。さらに好ましくは、置換及び/又は無置換のフェニル基、置換及び/又は無置換のナフチル基、置換及び/又は無置換のアントリル基である。置換基は、水素原子、脂肪族基(鎖状炭化水素基、環状炭化水素基、及び上記鎖状炭化水素基と上記環状炭化水素基から選ばれる少なくとも1種の基が結合した基(例えば、鎖状炭化水素基で置換された環状炭化水素基、環状炭化水素基で置換された鎖状炭化水素基などを指す))、上記した芳香族基で置換されてもよく、上記脂肪族基と芳香族基で構成される基であってもよい。
このようなR1及びR2としては、メチル基、エチル基、プロピル基(各異性体)、ブチル基(各異性体)、ペンチル基(各異性体)、ヘキシル基(各異性体)、ヘプチル基(各異性体)、オクチル基(各異性体)、ノニル基(各異性体)、デシル基(各異性体)、ウンデシル基(各異性体)、ドデシル基(各異性体)、トリデシル基(各異性体)、テトラデシル基(各異性体)、ペンタデシル基(各異性体)、ヘキサデシル基(各異性体)、ヘプタデシル基(各異性体)、オクタデシル基(各異性体)、ノナデシル(各異性体)、エイコシル基(各異性体)のアルキル基;フェニル基、メチルフェニル基(各異性体)、エチルフェニル基(各異性体)、プロピルフェニル基(各異性体)、ブチルフェニル基(各異性体)、ペンチルフェニル基(各異性体)、ヘキシルフェニル基(各異性体)、ヘプチルフェニル基(各異性体)、オクチルフェニル基(各異性体)、ノニルフェニル基(各異性体)、デシルフェニル基(各異性体)、ビフェニル基(各異性体)、ジメチルフェニル基(各異性体)、ジエチルフェニル基(各異性体)、ジプロピルフェニル基(各異性体)、ジブチルフェニル基(各異性体)、ジペンチルフェニル基(各異性体)、ジヘキシルフェニル基(各異性体)、ジヘプチルフェニル基(各異性体)、ターフェニル基(各異性体)、トリメチルフェニル基(各異性体)、トリエチルフェニル基(各異性体)、トリプロピルフェニル基(各異性体)、トリブチルフェニル基(各異性体)等のアリール基;フェニルメチル基、フェニルエチル基(各異性体)、フェニルプロピル基(各異性体)、フェニルブチル基(各異性体)、フェニルペンチル基(各異性体)、フェニルヘキシル基(各異性体)、フェニルヘプチル基(各異性体)、フェニルオクチル基(各異性体)、フェニルノニル基(各異性体)等のアラルキル基等を挙げることができる。これらの炭酸エステルの中でも、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジプロピル(各異性体)、炭酸ジブチル(各異性体)、炭酸ジペンチル(各異性体)、炭酸ジヘキシル(各異性体)、炭酸ジヘプチル(各異性体)、炭酸ジオクチル(各異性体)、炭酸ジフェニル、炭酸メチルフェニル等が好ましい。
上記式(8)で表される基を有する化合物としては、例えば、下記式(10)で表される化合物が挙げられる。該化合物は、本実施形態の分離方法において好ましく使用される。
式中、R
4は、炭素数1〜80の有機基を示し、Y
5は、酸素原子又は硫黄原子を示し、bは、1〜10の整数を表す。
Y5が酸素原子の場合、式(10)で表される化合物はイソシアネートである。また、Y5が硫黄原子の場合、式(10)で表される化合物はイソチオシアネートである。
まず、イソシアネートについて説明する。本実施形態におけるイソシアネートとは、IUPAC(The International Union of Pure and Applied Chemistry)で定められた Nomenclature(IUPAC Nomenclature of Organic Chemistry)記載の規則C−8に定められる“イソシアネート(isocyanates)”の項の「The isocyanic acid tautomer, HN=C=O,of cyanic acid, HOC=N and its hydrocarbyl derivatives:RN=C=O.」のうち、後半部の「its hydrocarbyl derivatives:RN=C=O」に相当する化合物である。好ましくは、下記式(20)で表される化合物である。
式中、R
4は、炭素数1〜80の有機基を示し、bは、1〜10の整数を表す。
上記式(20)において、R4は、炭素数1〜22の脂肪族基、及び炭素数6〜22の芳香族基からなる群から選ばれる1つの基であることが好ましい。該基は、酸素原子又は窒素原子を含んでいてもよい。好ましいR4としては、メチレン、ジメチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、オクタメチレン等の直鎖炭化水素基;シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、ビス(シクロヘキシル)アルカン等の無置換の脂環式炭化水素由来の基;メチルシクロペンタン、エチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン(各異性体)、エチルシクロヘキサン(各異性体)、プロピルシクロヘキサン(各異性体)、ブチルシクロヘキサン(各異性体)、ペンチルシクロヘキサン(各異性体)、ヘキシルシクロヘキサン(各異性体)等のアルキル置換シクロヘキサン由来の基;ジメチルシクロヘキサン(各異性体)、ジエチルシクロヘキサン(各異性体)、ジブチルシクロヘキサン(各異性体)等のジアルキル置換シクロヘキサン由来の基;1,5,5−トリメチルシクロヘキサン、1,5,5−トリエチルシクロヘキサン、1,5,5−トリプロピルシクロヘキサン(各異性体)、1,5,5−トリブチルシクロヘキサン(各異性体)等のトリアルキル置換シクロヘキサン由来の基;トルエン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン等のモノアルキル置換ベンゼン;キシレン、ジエチルベンゼン、ジプロピルベンゼン等のジアルキル置換ベンゼン;ジフェニルアルカン、ベンゼン等の芳香族炭化水素由来の基等が挙げられる。中でも、ヘキサメチレン、フェニレン、ジフェニルメタン、トルエン、シクロヘキサン、キシレニル、メチルシクロヘキサン、イソホロン及びジシクロヘキシルメタン由来の基がより好ましい。
上記式(20)において、好ましいbは1〜3の整数であり、より好ましくは、bが2であるジイソシアネートである。
好ましいイソシアネートの具体的な例としては、フェニルイソシアネート、ナフタレンイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート(各異性体)、トリレンジイソシアネート(各異性体)、メチレンビス(シクロヘキサン)ジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート(各異性体),トリイソシアネート、例えばトリイソシアナトノナン、2,4,6−トリイソシアナトトルエン、トリフェニルメタントリイソシアネート、若しくは2,4,4’−トリイソシアナトジフェニルエーテル、又はジ−、トリ−、及びより高級なポリイソシアネートからなる混合物である。当該ポリイソシアネートとしては、例えば、相応するアニリン/ホルムアルデヒド縮合物のホスゲン化によって得られ、かつメチレン架橋を有するポリフェニルポリイソシアネート等が挙げられる。
次に、イソチオシアネートについて説明する。本実施形態におけるイソチオシアネートとは、IUPAC(The International Union of Pure and Applied Chemistry)で定められた Nomenclature(IUPAC Nomenclature of Organic Chemistry)記載の規則C−8に定められる“イソチオシアネート(isothiocyanates)”の項の「Sulfer analogues of isocyanates:RN=C=S.」である。好ましくは、下記式(21)で表される化合物である。
式中、R
4は、炭素数1〜80の有機基を示し、bは、1〜10の整数を表す。
上記式(21)において、好ましいR4は、上記式(20)におけるR4と同様である。
また、上記式(21)において、好ましいbは1〜3の整数であり、より好ましくは、bが2であるジイソチオシアネートである。
好ましいイソチオシアネートの具体的な例としては、フェニルイソチオシアネート、ナフタレンイソチオシアネート、ヘキサメチレンジイソチオシアネート、イソホロンジイソチオシアネート、ジフェニルメタンジイソチオシアネート(各異性体)、トリレンジイソチオシアネート(各異性体)、メチレンビス(シクロヘキサン)ジイソチオシアネート、ナフタレンジイソチオシアネート(各異性体)、リシンジイソチオシアネート等が挙げられる。
一実施形態において、本発明の分離方法は、アロファネート基含有ポリイソシアネート類を製造する際に用いることができる。
アロファネート基含有ポリイソシアネート類としては、例えば、下記式(22)で表される化合物が挙げられる。
式中、
R
5は、(k+m)価の有機基を示し、
R
6は、各々独立に、イソシアネートに由来する基を示し、
R
7は、酸素原子又は窒素原子を示し、
R
pは、−CH
2−CH
2−O−、−CH
2−CH(CH
3)−O−、−CH(CH
3)−CH
2−O−、−CH
2−C(CH
3)
2−O−、−C(CH
3)
2−CH
2−O−、−CH
2−CH(Vin)−O−、−CH(Vin)−CH
2−O−、−CH
2−CHPh−O−、−CHPh−CH
2−O−、−CH
2−CH
2−S−、−CH
2−CH(CH
3)−S−、−CH(CH
3)−CH
2−S−、−CH
2−C(CH
3)
2−S−、−C(CH
3)
2−CH
2−S−、−CH
2−CH(Vin)−S−、−CH(Vin)−CH
2−S−、−CH
2−CHPh−S−、及び−CHPh−CH
2−S−からなる群から選ばれる基を示し(ただし、Phはフェニル基を表し、Vinはビニル基を表す)、複数あるR
pは、それぞれ同一であってもよく、相互に異なっていてもよい、
Xは、酸素原子又は硫黄原子を示し、
kは、0又は正の数を表し、
mは、正の数を表し、
k+mは、3以上の数であり、
nは、0又は正の数を表す。
上記式(22)において、好ましくはm>k、より好ましくはm≧(k+1)である。また、好ましくはk≦0.5、より好ましくはk≦0.2、さらに好ましくはk=0である。
上記式(22)において、R5は、例えば、ヒドロキシ化合物又はチオール(芳香族チオールを含む)に由来する基であってもよい。具体的には、例えば、ヒドロキシ化合物から(k+m)個の−OH基を除いた残基、又は、チオール(芳香族チオールを含む)から(k+m)個の−SH基を除いた残基であってもよい。(k+m)の値は、好ましくは3以上の数、より好ましくは3〜6の数、さらに好ましくは3〜4の数、さらにより好ましくは3である。ヒドロキシ化合物が上記式(15)で表されるアルコールの場合、上記式(15)のcは(k+m)以上の数である。上記式(16)で表される芳香族ヒドロキシ化合物、上記式(17)で表されるチオール、上記式(18)で表される芳香族チオールの場合も同様である。
また、上記式(22)において、R5[−R7−(Rp)n−H](k+m)が、ヒドロキシ化合物又はチオール(芳香族チオールを含む)に由来する基であってもよい。この場合は、該ヒドロキシ化合物として、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)シアヌル酸を例示することができる。
上記式(22)において、R6は、例えば、イソシアネート又はイソチオシアネートに由来する基であってもよい。上記式(20)で表されるイソシアネートの場合は上記式(20)におけるR4、上記式(21)で表されるイソチオシアネートの場合は上記式(21)におけるR4が相当する。好ましくは、上記式(20)においてaが2であるジイソシアネート、又は、上記式(21)においてbが2であるジイソチオシアネートである。
上記式(22)で表されるアロファネート基含有ポリイソシアネート類の数平均分子量Mnは、通常、2000g/mol未満、好ましくは1800g/mol未満、更に好ましくは1500g/mol未満、更により好ましくは1200g/mol未満、及び特に好ましくは1100g/mol未満である。数平均分子量Mnの下限に特に制限はないが、通常250g/mol以上である。数平均分子量Mnは、ポリスチレンを標準物質としてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)において測定した値である。
上記式(22)におけるNCX基(NCO基又はNCS基)含有率は、通常、5質量%より多く、好ましくは6質量%より多く、より好ましくは8質量%より多く、かつ最大17質量%、好ましくは最大15質量%である。
本実施形態におけるアロファネート基含有ポリイソシアネート類は、本実施形態の要旨から逸脱しない程度に、アロファネート基の他に、他の反応性の基、例えば未反応のヒドロキシ基、スルフヒドリル基、イソシアヌレート基等を含有することができる。
アロファネート基含有ポリイソシアネート類は、例えば、上記イソシアネート及び/又はイソチオシアネートと、ヒドロキシ化合物及び/又はチオール(芳香族チオールを含む)と、を反応させて製造することができる。反応条件について以下説明する。
反応温度は通常、最大150℃、好ましくは最大120℃、より好ましくは100℃未満、さらに好ましくは90℃未満である。反応は、ウレタン化反応及び/又はアロファネート化反応を触媒作用する少なくとも1つの触媒の存在下で行うことが好ましい。しかしながらウレタン基の形成は、触媒の不存在下でも行うことができる。
ここでいう触媒とは、出発原料中に触媒が存在することによって、同じ出発原料で同一の反応条件下で触媒がない場合よりも、より多くのウレタン基若しくはアロファネート基含有ポリイソシアネート類が生成するような化合物である。
触媒としては、例えば、有機アミン、特に第3級の脂肪族、脂環式又は芳香族アミン、及び/又はルイス酸の有機金属化合物を挙げることができる。ルイス酸有機金属化合物としては、例えばスズ化合物を挙げることができ、具体的には、スズ(II)ジアセテート、スズ(II)ジオクトエート、スズ(II)ビス(エチルヘキサノエート)、及びスズ(II)ジラウレート等の有機カルボン酸のスズ(II)塩;ジメチルスズジアセテート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジブチレート、ジブチルスズ−ビス(2−エチルヘキサノエート)、ジブチルスズ−ジラウレート、ジブチルスズ−マレエート、ジオクチルスズ−ジラウレート、及びジオクチルスズジアセテート等の有機カルボン酸のジアルキルスズ(IV)塩を例示できる。また、亜鉛(II)塩(例えば、亜鉛(II)ジオクトエート)を使用することもできる。さらに、金属錯体(例えば、鉄、チタン、アルミニウム、ジルコン、マンガン、ニッケル、亜鉛、及びコバルト)のアセチルアセトネートを使用してもよい。
ルイス酸の有機金属化合物としては、ジメチルスズ−ジアセテート、ジブチルスズ−ジブチレート、ジブチルスズ−ビス(2−エチルヘキサノエート)、ジブチルスズ−ジラウレート、ジオクチルスズ−ジラウレート、亜鉛(II)ジオクトエート、ジルコン−アセチルアセトネート及びジルコン−2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネートが好ましい。
触媒の使用量は、NCX基(NCO基及び/又はNCS基)に対して0.001〜10mol%、好ましくは0.5〜8mol%、より好ましくは1〜7mol%、さらに好ましくは2〜5mol%である。
反応時間は、特に制限はないが、好ましくは0.001〜50時間、より好ましくは0.01〜20時間、さらに好ましくは0.1〜10時間である。また、反応液を採取し、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって、所望する数平均分子量のアロファネート基含有ポリイソシアネートが生成したことを確認したのち、反応を終了することもできる。
反応は、好ましくは溶剤を用いずに行うが、粘度を下げて流動性を確保する等を目的に溶剤を使用してもよい。
溶剤としては、イソシアネート基又はイソチオシアネート基に対して反応性がなく、かつ当該溶剤中にポリイソシアネートが好ましくは10質量%以上、より好ましくは25質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上、さらにより好ましくは75質量%以上溶解する溶剤が好ましい。
このような溶剤としては、芳香族(アルキル化されたベンゼン及びナフタリンを含む)炭化水素及び/又は(環式)脂肪族炭化水素、及びこれらの混合物、塩化炭化水素、ケトン、エステル、アルコキシ化されたアルカン酸アルキルエステル、エーテル、並びにこれら各溶剤の混合物を用いることができる。
芳香族炭化水素及びこれらの混合物としては、80〜350℃の沸点範囲を有し炭素数7〜20の化合物が好ましい。具体的には、トルエン、o−、m−又はp−キシレン、トリメチルベンゼン異性体、テトラメチルベンゼン異性体、エチルベンゼン、クメン、テトラヒドロナフタリン及びこれらを含む混合物が好ましい。例としては、Exxon Mobil Chemical社のSolvesso(登録商標)、特にSolvesso(登録商標)100(CAS−No.64742−95−6、主にC9〜C10−芳香族化合物、沸点範囲約154〜178℃)、150(沸点範囲約182〜207℃)及び200(CAS−No.64742−94−5)、並びにShell社のShellsol(登録商標)、Petrochem Carless社のCaromax(登録商標)(例えば、Caromax(登録商標)18)、及びDHC社のハイドロゾル(例えばHydrosol(登録商標)A170)である。パラフィン、シクロパラフィン及び芳香族化合物からなる炭化水素混合物は、商品名Kristalloel(例えばKristalloel 30、沸点範囲約158〜198℃又はKristalloel 60:CAS−No.64742−82−1)、ホワイトスピリット(例えば同様にCAS−No.64742−82−1)又はソルベントナフサ(軽質:沸点範囲約155〜180℃、重質:沸点範囲約225〜300℃)を挙げることができる。この種の炭化水素混合物の芳香族化合物含有量は、一般に、90質量%より高く、好ましくは95質量%より高く、特に好ましくは98質量%より高く、さらに特に好ましくは99質量%より高い。特に低いナフタリン含分を有する炭化水素混合物を使用するのが有利であり得る。
(環式)脂肪族炭化水素としては、例えば、デカリン、アルキル化デカリン、及び直鎖状若しくは分枝状のアルカン及び/又はシクロアルカンの異性体混合物が挙げられる。
エステルとしては、例えば、n−ブチルアセテート、エチルアセテート、1−メトキシプロピルアセテート−2、及び2−メトキシエチルアセテートが挙げられる。
エーテルとしては、例えば、THF、ジオキサン、並びにエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール又はトリプロピレングリコールのジメチルエーテル、ジエチルエーテル、又はn−ブチルエーテルが挙げられる。
ケトンとしては、例えば、アセトン、ジエチルケトン、エチルメチルケトン、イソブチルメチルケトン、メチルアミルケトン、及びt−ブチルメチルケトンが挙げられる。
ポリイソシアネート類は、イソシアネート及び/又はイソチオシアネートに対して反応性の基を含む少なくとも1つの成分(結合剤)を有する化合物であり、二成分ポリウレタン塗料での有用に用いられる。このようなポリイソシアネート類は、例えば、モノマーのイソシアネートのオリゴマー化によって得ることができる。
使用されるモノマーのイソシアネート及び/又はイソチオシアネートは、芳香族、脂肪族、又は脂環式であってよく、好ましくは脂肪族又は脂環式(これらは本明細書では短く(環式)脂肪族と呼ぶ)であり、より好ましくは脂肪族イソシアネート及び/又は脂肪族イソチオシアネート、さらに好ましくは、脂肪族イソシアネートである。
上述した方法によって製造されるアロファネート基含有ポリイソシアネート類を含む反応混合物は、未反応のイソシアネート、イソチオシアネート、ヒドロキシ化合物、チオール(芳香族チオールを含む)を含む。これらの未反応物は、反応混合物中に残しておいてもよいが、該アロファネート基含有ポリイソシアネート類は、好適には、ウレタン系塗料として、自動車塗料や建築塗料等の外観品質を求められる用途に使用されるため、該未反応物を反応混合物から除去することが好ましく、本実施形態の分離方法が好適に用いられる。
一実施形態において、本発明の分離方法は、上記したN−置換カルバミン酸エステル、N−置換−O−置換チオカルバミン酸エステル、N−置換−S−置換チオカルバミン酸エステル、N−置換ジチオカルバミン酸エステルの熱分解反応によって得られる混合物を蒸留分離する際にも好適に使用できる。
これらの、N−置換カルバミン酸エステル、N−置換−O−置換チオカルバミン酸エステル、N−置換―S−置換チオカルバミン酸エステル、N−置換ジチオカルバミン酸エステルの製造方法は特に限定はされず、種々の公知の方法を用いることができる。また、これらの、N−置換カルバミン酸エステル、N−置換−O−置換チオカルバミン酸エステル、N−置換―S−置換チオカルバミン酸エステル、N−置換ジチオカルバミン酸エステルは、一種類であっても複数種の混合物であってもよい。
上記N−置換カルバミン酸エステル、N−置換−O−置換チオカルバミン酸エステル、N−置換―S−置換チオカルバミン酸エステル、N−置換ジチオカルバミン酸エステルは、いずれの化合物においても、その熱分解反応に付す操作は同様であることから、以下、N−置換カルバミン酸エステルの熱分解反応を例に、上記したこれらの化合物の熱分解反応について説明する。N−置換カルバミン酸エステルの熱分解反応では、イソシアネートとヒドロキシ化合物とが生成するが、N−置換−O−置換チオカルバミン酸エステルの熱分解反応の場合は、イソシアネートを対応するイソチオシアネートと置き換えればよく、N−置換−S−置換チオカルバミン酸エステルの熱分解反応の場合は、ヒドロキシ化合物を、対応するチオール又は芳香族チオールと置き換えればよく、N−置換ジチオカルバミン酸エステルの熱分解反応の場合は、イソシアネートを対応するイソチオシアネート、ヒドロキシ化合物を、対応するチオール又は芳香族チオールと置き換えればよい。
N−置換カルバミン酸エステルを熱分解反応に付して、イソシアネートとヒドロキシ化合物とを含有する混合物を製造する工程について説明する。
本工程では、溶媒を用いても用いなくてもよいが、好ましくはヒドロキシ化合物の存在下で実施する。N−置換カルバミン酸エステルの製造においてヒドロキシ化合物が使用される場合、該ヒドロキシ化合物をそのまま本工程におけるヒドロキシ化合物として使用することができる。また、炭酸エステルと有機第1アミンとの反応によってN−置換カルバミン酸エステルを製造する方法の場合、反応副生物としてヒドロキシ化合物が生成するので、該ヒドロキシ化合物をそのまま本工程におけるヒドロキシ化合物として使用することができる。必要であれば、ヒドロキシ化合物の量を調整して本工程を実施してもよい。
ヒドロキシ化合物の量は、N−置換カルバミン酸エステルの移送効率や、貯蔵の際の貯槽の大きさを考慮すると、ヒドロキシ化合物のモル数が、N−置換カルバミン酸エステルに含まれるエステル基の総数に対して、好ましくは0.2〜50倍、より好ましくは、0.3〜30倍、さらに好ましくは、1〜20倍である。
反応操作を容易にする等の目的で適当な不活性溶媒を添加してもよい。不活性溶媒としては、例えば、ヘキサン(各異性体)、ヘプタン(各異性体)、オクタン(各異性体)、ノナン(各異性体)、デカン(各異性体)などのアルカン類;ベンゼン、トルエン、キシレン(各異性体)、エチルベンゼン、ジイソプロピルベンゼン(各異性体)、ジブチルベンゼン(各異性体)、ナフタレン等の芳香族炭化水素及びアルキル置換芳香族炭化水素類;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン(各異性体)、ブロモベンゼン、ジブロモベンゼン(各異性体)、クロロナフタレン、ブロモナフタレン、ニトロベンゼン、ニトロナフタレン等のハロゲン又はニトロ基によって置換された芳香族化合物類;ジフェニル、置換ジフェニル、ジフェニルメタン、ターフェニル、アントラセン、ジベンジルトルエン(各異性体)等の多環炭化水素化合物類;シクロヘキサン、シクロペンタン、シクロオクタン、エチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類;メチルエチルケトン、アセトフェノン等のケトン類;ジブチルフタレート、ジヘキシルフタレート、ジオクチルフタレートなどが挙げられる。
熱分解反応の反応温度は、好ましくは100℃〜350℃の範囲である。反応速度を高めるためには高温が好ましい。ただし、高温ではN−置換カルバミン酸エステル及び/又は生成物であるイソシアネートによって、上述したような副反応が引き起こされる場合があるので、より好ましくは150℃〜250℃の範囲である。反応温度を一定にするために、上記反応器に公知の冷却装置、加熱装置を設置してもよい。また、反応圧力は、用いる化合物の種類や反応温度によって異なるが、減圧、常圧、加圧のいずれであってもよく、好ましくは20〜1×106Paの範囲で行われる。反応時間(連続法の場合は滞留時間)に、特に制限はなく、好ましくは0.001〜100時間、より好ましくは0.005〜50時間、さらに好ましくは0.01〜10時間である。
熱分解反応には、触媒を使用しないことが好ましい。ただし、上記N−置換カルバミン酸エステルを製造する際に、いずれかの工程で触媒を使用した場合、上記触媒残渣等が上記熱分解工程に供給される場合がある。本実施形態において、そのような触媒残渣等が存在していても差し支えない。
N−置換カルバミン酸エステルは、高温下で長時間保持された場合、例えば、2分子のN−置換カルバミン酸エステルからの脱炭酸エステル反応によって尿素結合含有化合物を生成する反応、N−置換カルバミン酸エステルの熱分解によって生成するイソシアネート基との反応によってアロファネート基を生成する反応等の副反応が生起されることがある。したがって、上記N−置換カルバミン酸エステル及び上記イソシアネートが高温下に保持される時間は、可能な限り短時間であることが好ましい。したがって、上記熱分解反応は、好ましくは連続法で行われる。連続法とは、上記N−置換カルバミン酸エステルを含有する混合物を、反応器に連続的に供給して、熱分解反応に付し、生成するイソシアネート及びヒドロキシ化合物を、上記熱分解反応器から連続的に抜き出す方法である。上記連続法において、N−置換カルバミン酸エステルの熱分解反応によって生成する低沸点成分は、好ましくは、気相成分として上記熱分解反応器より回収され、残りは液相成分として上記熱分解反応器の底部より回収される。熱分解反応器中に存在する全ての化合物を気相成分として回収することもできるが、液相成分を上記熱分解反応器中に存在させることによって、N−置換カルバミン酸エステル及び/又はイソシアネートによって生起される副反応によって生成するポリマー状化合物を溶解して、上記ポリマー状化合物の上記熱分解反応器への付着・蓄積を防止する効果が得られる。N−置換カルバミン酸エステルの熱分解反応により、イソシアネートとヒドロキシ化合物が生成するが、これらの化合物のうち、少なくとも一方の化合物を気相成分として回収する。どの化合物を気相成分として回収するかは、熱分解反応条件等に依存する。
ここで、本実施形態で用いる用語「N−置換カルバミン酸エステルの熱分解反応によって生成する低沸点成分」とは、上記N−置換カルバミン酸エステルの熱分解反応によって生成する、ヒドロキシ化合物及び/又はイソシアネートが相当するが、特に、当該熱分解反応が実施される条件下で、気体として存在し得る化合物を指す。
例えば、熱分解反応によって生成するイソシアネートとヒドロキシ化合物とを気相成分として回収し、N−置換カルバミン酸エステルを含有する液相成分を回収する方法を採用することができる。当該方法において、熱分解反応器でイソシアネートとヒドロキシ化合物を別々に回収してもよい。
上記液相成分が、N−置換カルバミン酸エステルを含有する場合は、上記液相成分の一部又は全部を、上記熱分解反応器の上部に供給し、上記N−置換カルバミン酸エステルを、再度、熱分解反応に付すことが好ましい。ここでいう、熱分解反応器の上部とは、例えば、上記熱分解反応器が蒸留塔の場合は、理論段数で塔底より2段目以上上の段を指し、上記熱分解反応器が薄膜蒸留器の場合は、加熱されている伝面部分よりも上の部分を指す。上記液相成分の一部又は全部を熱分解反応器の上部に供給する際は、上記液相成分を、好ましくは50℃〜280℃、より好ましくは、70℃〜230℃、さらに好ましくは、100℃〜200℃に保持して移送する。
また、例えば、熱分解反応によって生成するイソシアネートとヒドロキシ化合物とを気相成分として回収し、N−置換カルバミン酸エステルを含有する液相成分を熱分解反応器の底部から回収する方法を採用することもできる。当該方法においても、回収されたイソシアネートを含有する気体成分は、気相で、上記イソシアネートを精製分離するための蒸留装置に供給されることが好ましい。一方、N−置換カルバミン酸エステルを含有する液相成分は、その一部若しくは全部を、上記熱分解反応器の上部に供給し、該N−置換カルバミン酸エステルを、再度、熱分解反応に付すことが好ましい。上記液相成分の一部又は全部を熱分解反応器の上部に供給する際は、上記液相成分を、好ましくは50℃〜180℃、より好ましくは、70℃〜170℃、さらに好ましくは、100℃〜150℃に保持して移送する。
さらに、例えば、熱分解反応によって生成するイソシアネートとヒドロキシ化合物のうち、ヒドロキシ化合物を気相成分として回収し、上記イソシアネートを含有する混合物を液相成分として、上記熱分解反応器の底部より回収する方法を採用することができる。この場合、上記液相成分を蒸留装置に供給し、イソシアネートを回収する。上記液相成分に、N−置換カルバミン酸エステルが含有される場合には、上記N−置換カルバミン酸エステルを含有する混合物は、その一部又は全部を、上記熱分解反応器の上部に供給し、上記N−置換カルバミン酸エステルを、再度、熱分解反応に付すことが好ましい。上記液相成分の一部又は全部を熱分解反応器の上部に供給する際は、上記液相成分を、好ましくは50℃〜180℃、より好ましくは、70℃〜170℃、さらに好ましくは、100℃〜150℃に保持して移送する。
先にも述べたように、上記熱分解反応においては、液相成分を該熱分解反応器の底部より回収することが好ましい。それは、液相成分を上記熱分解反応器中に存在させることによって、上述したような、N−置換カルバミン酸エステル及び/又はイソシアネートによって生起される副反応によって生成するポリマー状副生物を溶解して、液相成分として熱分解反応器から排出させることができるからである。これにより、上記ポリマー状化合物の上記熱分解反応器への付着・蓄積を低減する効果が得られる。
液相成分にN−置換カルバミン酸エステルが含有される場合には、上記液相成分の一部若しくは全部を、上記熱分解反応器の上部に供給し、上記N−置換カルバミン酸エステルを、再度、熱分解反応に付すが、この工程を繰り返すと、液相成分にポリマー状副生物が蓄積される場合がある。その場合には、上記液相成分の一部又は全部を反応系から除去することで、ポリマー状副生物の蓄積を減少させる、又はポリマー状副生物を一定の濃度に保持することができる。
上記熱分解反応器の形式に、特に制限はないが、気相成分を効率よく回収するために、公知の蒸留装置を使用することが好ましい。例えば、蒸留塔、多段蒸留塔、多管式反応器、連続多段蒸留塔、充填塔、薄膜蒸発器、内部に支持体を備えた反応器、強制循環反応器、落膜蒸発器、落滴蒸発器のいずれかを含む反応器を用いる方式、及びこれらを組み合わせた方式等、公知の種々の方法が用いられる。低沸点成分を素早く反応系から除去する観点から、管状反応器を用いる方法が好ましく、管状薄膜蒸発器、管状流下膜蒸発器等の反応器を用いる方法がより好ましい。また、生成する低沸点成分を気相にすみやかに移動させられる気−液接触面積の大きな構造が好ましい。
熱分解反応器及びラインの材質は、上記N−置換カルバミン酸エステル及び生成物である芳香族ヒドロキシ化合物、イソシアネート等に悪影響を及ぼさなければ、公知のどのようなものであってもよいが、SUS304、SUS316、及びSUS316L等が安価であり、好ましく使用できる。
<本実施形態に係る分離方法>
本実施形態に係る分離方法は、活性水素含有化合物(A)、及び(A)と可逆的に反応する化合物(B)を含有する混合物から、(A)又は(B)の少なくとも一方を多段蒸留塔で蒸留分離する工程と、上記混合物を、上記多段蒸留塔の内部に形成された不活性な部位に供給する工程と、を備える。
用語「不活性な部位」は、(A)と(B)との反応に対して不活性な部位を意味する。すなわち、(A)と(B)との反応速度を促進する作用の小さい部位を意味する。
上述のように、反応し得る複数種の化合物の混合物を蒸留分離する際、これらの化合物が反応することによって、反応生成物が蒸留塔を汚染したり、蒸留分離による回収効率を低下させたり、蒸留分離そのものができなくなったりする場合が多かった。本願発明者らは、驚くべきことに、(A)と(B)との反応(例えば、(A)ヒドロキシ化合物及び/又はチオールと、(B)イソシアネート及び/又はイソチオシアネートとの反応)速度が、(A)と(B)との混合物が接触する部分の材質及びその面積により影響を受けることを見出し、本発明を完成させた。
本実施形態の分離方法の第1の態様は、上記多段蒸留塔が棚段塔であって、上記不活性な部位が、上記混合物と接触する表面が(A)と(B)との反応に対して不活性な材料で形成されている部位である、分離方法である。
本実施形態の分離方法の第2の態様は、上記多段蒸留塔が充填塔であって、上記不活性な部位が、上記混合物と接触する表面が、(A)と(B)との反応に対して不活性な材料で形成された充填材が充填された部位である、分離方法である。
本願発明者らは、驚くべきことに、(A)と(B)との反応速度が、(A)と(B)との混合物が接触する部分(部位)の材質に依存することを見出した。本願発明者らが鋭意検討した結果、種々の遷移金属元素を特定量含む材質、中でも、第3周期の遷移金属元素、その中でも、Fe元素、Ni元素又はTi元素を特定量含む材質が、(A)と(B)との反応を促進する(反応速度を高める)材質であることが見いだされた。
したがって、上記不活性な部位に用いられる材料は、Fe原子、Ni原子及びTi原子の含有量がいずれも10質量%以下の材料であることが好ましい。また、Fe原子、Ni原子及びTi原子の含有量がいずれも5質量%以下であることがより好ましく、2質量%以下であることが更に好ましい。
本実施形態の充填材における、Fe原子、Ni原子、及びTi原子以外の成分としては、例えば、酸化ケイ素(組成式:SiO2)、酸化アルミニウム(組成式:Al2O3)、フッ化炭素(−CHF−又はCF2−の繰り返し単位を有する化合物)が好ましい。また、これらを構成成分とするガラスやセラミックやフッ素樹脂も好ましい。ガラスやセラミックの場合、酸化ケイ素と酸化アルミニウムの含有量は特に限定されず、酸化ケイ素の含有量が60質量%以上を占めるものであっても、酸化アルミニウムの含有量が60質量%以上を占めるものであってもよく、種々の材料を選択できる。フッ素樹脂としては、ポリテトラフルトロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体、エチレン・四フッ化エチレン共重合体、エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体等があげられる。ここに示した好ましい充填材に本実施形態の趣旨に反しない範囲で他の金属原子が含まれていてもよい。
上述の好ましい材質(材料)は、多段蒸留塔の内部で(A)と(B)とを含有する混合物と接触する部分の表面すべてに適用されていることが好ましいが、上述の材質の耐熱性及び機械的強度等の観点から、全てに適用することが難しい場合がある。多段蒸留塔が充填塔である場合、一般的に、充填塔を構成する構造材表面は、充填材表面の面積に対して極めて小さい場合が多く、構造材表面の影響は極めて小さい。したがって、充填塔では、充填材に対して上記の好ましい材質を適用し、充填塔の構造材には、例えば機械的強度の高いステンレス鋼等を用いることができる。
(A)と(B)とを含有する混合物を、多段蒸留塔の蒸留塔内に供給し蒸留分離を行う際、一般的に、蒸留塔の塔頂から塔底にかけて(A)と(B)の濃度が連続的に変化する。また、充填塔の場合、一般的に、上記した好ましい材料による充填材は、例えば、SUS316、SUS304等のステンレス製の充填材に比べて、理論段数あたりの充填高さが大きい場合が多く、多段充填塔の全てに上記した好ましい充填材を充填することが、混合物の分離性能の観点からは好ましくない場合がある。本実施形態の分離方法は、(A)と(B)との反応に不活性な材質を使用することにより、(A)と(B)との反応を抑えて、(A)及び/又は(B)の回収を効率良く行うことが目的であることから、必ずしも、全ての段に上記の好ましい材質を適用することが適切であるとは限らない。したがって、少なくとも、多段蒸留塔の内部の混合物を供給する段(棚段塔では1段分、充填塔では理論段で1段分)には、上記の不活性な材質を用いることが好ましい。また(A)と(B)の化学量論比((A)/(B))が、蒸留塔内で、少なくとも0.2〜5となる範囲、好ましくは0.01〜100となる範囲、より好ましくは0.001〜1000となる範囲で上記材質を採用することがより好ましい。また、多段充填塔の全段において上記した好ましい材料が用いられていることが更に好ましい。
蒸留分離を行う際の圧力は、蒸留分離が実施される多段蒸留塔に供給される成分の組成、温度、及び多段蒸留塔の種類等によって異なる。例えば、減圧下でも、大気圧下でも、加圧下でも行われるが、通常、0.01kPa〜10MPaの範囲で実施されることが好ましく、工業的実施の容易性を考慮すると、より好ましくは0.1kPa〜1MPaの範囲、さらに好ましくは0.5kPa〜50kPaの範囲が好ましい。
蒸留分離を行う際の温度は、蒸留分離が実施される多段蒸留塔に供給される成分の組成、温度、及び多段蒸留塔の種類等によって異なる。一方、あまりに高温の場合は、(A)、(B)、後述する中間沸点不活性化合物を使用する場合には、中間沸点不活性化合物が熱変性する場合があり、一方で、あまりに低温の場合は、冷却のための新たな設備を設ける必要が生じたりして工業的な実施が容易でなくなることから、好ましくは、50℃〜350℃の範囲、より好ましくは80℃〜300℃、さらに好ましくは100℃〜250℃の範囲である。
多段蒸留塔において、ラインや凝縮器等の多段蒸留塔に付随する設備類も、上記したような不活性な材質で構成されていることが好ましいが、強度等の観点から、このような材質が、多段充填塔の充填材以外の部分又はライン等の構造体の構築に適さない場合も多い。そのような場合には、多段充填塔の充填材以外の部分及びライン等の内壁を、上記したような材質でコーティング(例えば、ガラスライニングやテフロン(登録商標)コーティング等の方法)してもよい。これは、多段蒸留塔そのものや、多段蒸留塔が充填塔である場合の充填材についても同様である。
多段蒸留塔とは、蒸留の理論段数が3段以上の多段を有する蒸留塔であって、連続蒸留が可能な多段蒸留塔であるならばどのようなものであってもよい。一方、あまりに理論段数が多い場合は、多段蒸留塔が巨大なものとなり工業的な実施が難しい場合がある。したがって、段数(棚段塔では棚段の数、充填塔では理論段)は好ましくは500段以下とする。充填材を用いる場合の充填材の形状には特に制限がなく、ラシヒリング、レッシングリング、ポールリング、ベルルサドル、インタロックスサドル、ディクソンパッキング、マクマホンパッキング、ヘリパック、スルザーパッキング、メラパック等の各種充填材を使用することができる。
本実施形態の分離方法の第3の態様は、上記不活性な部位が、
(X)上記混合物と接触する上記多段蒸留塔の内面の面積(単位:m2)と
(Y)上記混合物の体積(単位:m3)とが、
(X)/(Y)≦100を満たす、分離方法である。
上記したように、(A)と(B)の反応は、(A)と(B)との混合物が接触する部分の材質に依存し、上記した特定の金属元素が反応を促進する(反応速度を高める)。これに加えて、本願発明者らは、上記反応速度が、上記混合物の接触する部分の面積にも依存することを見出した。この知見に基づき、本願発明者らは、多段蒸留塔の蒸留塔内に形成した不活性な部位が、(X)と(Y)とが、(X)/(Y)≦100を満たす多段蒸留塔による蒸留分離方法を提示する。当該方法により、(A)と(B)との反応が抑制され(反応が促進されない)、効率良く(A)及び/又は(B)を蒸留分離することが可能となる。
(X)/(Y)の値は、好ましくは、(X)/(Y)≦100、より好ましくは、(X)/(Y)≦70、さらに好ましくは、(X)/(Y)≦50である。
多段蒸留塔における(X)/(Y)の値は、例えば、棚段塔方式の場合、(X)/(Y)の値を評価する段に保持し得る最大の液量を(Y)、該段の内表面積を(X)として(X)/(Y)の値を定義し、該値が上記の好適範囲内であれば良いと判断することができる。多段蒸留塔の全段における(X)/(Y)の値を評価する場合は、全ての段について同様に(X)及び(Y)を定義すればよい。また、例えば、充填塔方式の場合、蒸留を実施する際と同様の運転条件で安定して運転が実施されている状態での塔内液保有量を測定し、該塔内液保有量を(Y)、充填材の表面積と充填塔の内表面積の和を(X)として(X)/(Y)の値を定義し、該値が上記の好適範囲内であれば良いと判断することができる。
(A)と(B)とを含有する混合物を、多段蒸留塔の蒸留塔内に供給し蒸留分離を行う際、一般的に、蒸留塔の塔頂から塔底にかけて(A)と(B)の濃度が連続的に変化し、一方が濃縮される。本実施形態の方法は、(A)と(B)との反応が促進されないよう、(A)と(B)との混合物が接触する多段蒸留塔の内面の面積を特定の範囲とすることにより、(A)と(B)との反応を抑えて、(A)及び/又は(B)の回収を効率良く行うことが目的であることから、必ずしも、全ての段に上記範囲を適用する必要はない。したがって、少なくとも、多段蒸留塔の内部の混合物を供給する段(棚段塔では1段分、充填塔では理論段で1段分)を、上記の範囲とすることが好ましい。また、(A)と(B)の化学量論比((A)/(B))が、蒸留塔内で、少なくとも0.2〜5となる範囲、好ましくは0.01〜100となる範囲、より好ましくは0.001〜1000となる範囲で、上記範囲となるような多段蒸留塔を採用することがより好ましい。また、多段充填塔の全段において上記した好適な範囲を満たすことが更に好ましい。
蒸留分離を行う際の圧力は、蒸留分離が実施される多段蒸留塔に供給される成分の組成、温度、及び多段蒸留塔の種類等によって異なる。例えば、減圧下でも、大気圧下でも、加圧下でも行われるが、通常、0.01kPa〜10MPaの範囲で実施されることが好ましく、工業的実施の容易性を考慮すると、より好ましくは0.1kPa〜1MPaの範囲、さらに好ましくは0.5kPa〜50kPaの範囲が好ましい。
蒸留分離を行う際の温度は、蒸留分離が実施される多段蒸留塔に供給される成分の組成、温度、及び多段蒸留塔の種類等によって異なる。一方、あまりに高温の場合は、(A)、(B)、後述する中間沸点不活性化合物を使用する場合には、中間沸点不活性化合物が熱変性する場合があり、一方で、あまりに低温の場合は、冷却のための新たな設備を設ける必要が生じたりして工業的な実施が容易でなくなることから、好ましくは、50℃〜350℃の範囲、より好ましくは80℃〜300℃、さらに好ましくは100℃〜250℃の範囲である。
多段蒸留塔において、ラインや凝縮器等の該多段蒸留塔に付随する設備類も、上記したような不活性な材質で構成されていることが好ましいが、強度等の観点から、このような材質が、該多段充填塔の充填材以外の部分又はライン等の構造体の構築に適さない場合も多い。そのような場合には、多段充填塔の充填材以外の部分及びライン等の内壁を、上記したような材質でコーティング(例えば、ガラスライニングやテフロン(登録商標)コーティング等の方法)してもよい。これは、多段蒸留塔そのものや、多段蒸留塔が充填塔である場合の充填材についても同様である。
多段蒸留塔とは、蒸留の理論段数が3段以上の多段を有する蒸留塔であって、連続蒸留が可能な多段蒸留塔であるならばどのようなものであってもよい。一方、あまりに理論段数が多い場合は、多段蒸留塔が巨大なものとなり工業的な実施が難しい場合がある。したがって、段数(棚段塔では棚段の数、充填塔では理論段)は好ましくは500段以下とする。充填材を用いる場合の充填材の形状には特に制限がなく、ラシヒリング、レッシングリング、ポールリング、ベルルサドル、インタロックスサドル、ディクソンパッキング、マクマホンパッキング、ヘリパック、スルザーパッキング、メラパック等の各種充填材を使用することができる。しかしながら、充填塔方式のものを使用する場合は、多段蒸留塔内部の表面積が大きい場合が多く、上記した(X)/(Y)の好適な範囲を満たすために、多段蒸留塔が大きくなったり、多段蒸留塔への上記(A)と上記(B)を含む混合物の供給量を少なくしなければならない場合(すなわち、多段蒸留塔の大きさに対して蒸留分離の処理量が小さくなる場合)が多い。したがって、多段蒸留塔としては棚段塔方式ものもが好ましく使用される。
本実施形態の分離方法によって蒸留分離する化合物は、活性水素含有化合物(A)又は(A)と可逆的に反応する化合物(B)である。(A)としては、ヒドロキシ化合物及び/又はチオール(芳香族チオールを含む)が好ましく、ヒドロキシ化合物がより好ましく、芳香族ヒドロキシ化合物が更に好ましい。また、(B)としては、イソシアネート及び/又はイソチオシアネートが好ましく、イソシアネートがより好ましく、上記式(20)で、R4が脂肪族基である脂肪族イソシアネートが更に好ましい。(A)と(B)の組み合わせは特に制限がないが、(A)と(B)とを蒸留分離する本実施形態の趣旨を鑑みると、(A)と(B)の組み合わせは、標準沸点の差が、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上、さらに好ましくは15℃以上となる組み合わせである。
<中間沸点不活性化合物の存在下で分離する方法>
本実施形態において、(A)と(B)との蒸留分離を、(A)の標準沸点と(B)の標準沸点との間に標準沸点を有し、かつ(A)及び(B)に対して化学的に不活性である化合物(C)(本明細書において「中間沸点不活性化合物」ともいう。)の存在下にて行う方法も、好ましく実施される。
「中間沸点不活性化合物」は、(A)の標準沸点と(B)の標準沸点の間に標準沸点を有し、かつ(A)と(B)の双方に対して化学的に不活性である化合物を指す。
すなわち、まず、中間沸点不活性化合物の特徴として、(A)と(B)に対して「化学的に不活性」である点が挙げられる。「化学的に不活性」とは、(A)と(B)とに対して反応性を有しないという意味である。蒸留の操作温度で、中間沸点不活性化合物は、(A)と(B)のそれぞれと、又は別々に共有結合を形成しない化合物である。
中間沸点不活性化合物は、(A)及び(B)と反応する官能基を有しない化合物が好ましく、活性水素を有しない化合物がより好ましい。
中間沸点不活性化合物としては、
(1)直鎖状、分岐鎖状又は環構造を有する炭化水素化合物、
(2)同種の又は異種の、直鎖状、分岐鎖状又は環構造を有する炭化水素化合物が、エーテル結合又はチオエーテル結合を介して結合した化合物(すなわち、2つの炭化水素化合物がエーテル結合又はチオエーテル結合を介して結合した化合物。上記炭化水素化合物は直鎖状、分岐鎖状又は環構造を有し、2つの炭化水素化合物は同種のものであっても、異種のものであってもよい。)、
(3)炭化水素基からなる置換基を有してもよい芳香族炭化水素化合物、
(4)同種の又は異種の芳香族炭化水素化合物が、エーテル結合又はチオエーテル結合を介して結合した化合物、
(5)直鎖状、分岐鎖状又は環構造を有する炭化水素化合物と芳香族炭化水素化合物とが、エーテル結合又はチオエーテル結合を介して結合した化合物、
(6)直鎖状、分岐鎖状又は環構造を有する炭化水素化合物を構成する少なくとも1つの水素原子、又は、炭化水素基からなる置換基を有してもよい芳香族炭化水素化合物を構成する少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子に置換されたハロゲン化物からなる群より選択される少なくとも一種の化合物を挙げることができる。
中間沸点不活性化合物の具体例としては、ペンタン(各異性体)、ヘキサン(各異性体)、ヘプタン(各異性体)、オクタン(各異性体)、ノナン(各異性体)、デカン(各異性体)、ドデカン(各異性体)、テトラデカン(各異性体)、ペンタデカン(各異性体)、ヘキサデカン(各異性体)、オクタデカン(各異性体)、ノナデカン(各異性体)等の炭化水素化合物;オクチルエーテル(各異性体)、ノニルエーテル(各異性体)、デシルエーテル(各異性体)、ドデシルエーテル(各異性体)、テトラデシルエーテル(各異性体)、ペンタデシルエーテル(各異性体)、ヘキサデシルエーテル(各異性体)、オクタデシルエーテル(各異性体)、ノナデシルエーテル(各異性体)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル等の、炭化水素化合物がエーテル結合を介して結合したエーテル類;ジメチルスルフィド、ジエチルスルフィド、ジブチルスルフィド(各異性体)、ジヘキシルスルフィド(各異性体)、オクチルスルフィド(各異性体)、ノニルスルフィド(各異性体)、デシルスルフィド(各異性体)、ドデシルスルフィド(各異性体)、テトラデシルスルフィド(各異性体)、ペンタデシルスルフィド(各異性体)、ヘキサデシルスルフィド(各異性体)、オクタデシルスルフィド(各異性体)、ノナデシルスルフィド(各異性体)等の、炭化水素化合物がチオエーテル結合を介して結合したチオエーテル類;ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、ブチルベンゼン(各異性体)、ペンチルベンゼン(各異性体)、ヘキシルベンゼン(各異性体)、オクチルベンゼン(各異性体)、ビフェニル、ターフェニル、ジフェニルエタン(各異性体)、(メチルフェニル)フェニルエタン(各異性体)、ジメチルビフェニル(各異性体)、ベンジルトルエン(各異性体)等の芳香族炭化水素化合物;ジフェニルエーテル、ジ(メチルベンジル)エーテル(各異性体)、ジ(エチルベンジル)エーテル(各異性体)、ジ(ブチルベンジル)エーテル(各異性体)、ジ(ペンチルベンジル)エーテル(各異性体)、ジ(ヘキシルベンジル)エーテル(各異性体)、ジ(オクチルベンジル)エーテル(各異性体)、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル等の芳香族炭化水素化合物がエーテル結合を介して結合した芳香族エーテル類;ジフェニルスルフィド、ジ(メチルベンジル)スルフィド(各異性体)、ジ(エチルベンジル)スルフィド(各異性体)、ジ(ブチルベンジル)スルフィド(各異性体)、ジ(ペンチルベンジル)スルフィド(各異性体)、ジ(ヘキシルベンジル)スルフィド(各異性体)、ジ(オクチルベンジル)スルフィド(各異性体)、ジ(メチルフェニル)スルフィド、ジベンジルスルフィド等の芳香族炭化水素化合物がチオエーテル結合を介して結合した芳香族チオエーテル類;メトキシベンゼン、エトキシベンゼン、ブトキシベンゼン(各異性体)、ジメトキシベンゼン(各異性体)、ジエトキシベンゼン(各異性体)、ジブトキシベンゼン(各異性体)等の炭化水素化合物と芳香族炭化水素化合物とがエーテル結合を介して結合した化合物;クロロメタン、クロロエタン、クロロペンタン(各異性体)、クロロオクタン(各異性体)、ブロモメタン、ブロモエタン、ブロモペンタン(各異性体)、ブロモオクタン(各異性体)、ジクロロエタン(各異性体)、ジクロロペンタン(各異性体)、ジクロロオクタン(各異性体)、ジブロモエタン(各異性体)、ジブロモペンタン(各異性体)、ジブロモオクタン(各異性体)、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、ジクロロベンゼン、ジブロモベンゼン、塩化ベンジル、臭化ベンジル等のハロゲン化物を挙げることができる。
上記(2)、(4)、(5)のようなエーテル結合又はチオエーテル結合を有する化合物は、条件によっては酸化物や過酸化物を生成する場合がある。したがって、熱的に安定であるという観点から、(1)直鎖状、分岐鎖状又は環構造を有する炭化水素化合物、(3)炭化水素基からなる置換基を有してもよい芳香族炭化水素化合物、(6)直鎖状、分岐鎖状又は環構造を有する炭化水素化合物を構成する少なくとも1つの水素原子、又は、炭化水素基からなる置換基を有してもよい芳香族炭化水素化合物を構成する少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子に置換されたハロゲン化物が好ましい。また、(6)のようなハロゲン原子を含有する化合物は、条件によっては、分解又はハロゲンラジカルを発生し、生成物にハロゲン化物が混入する場合がある。したがって、(1)直鎖状、分岐鎖状又は環構造を有する炭化水素化合物、(3)炭化水素基からなる置換基を有してもよい芳香族炭化水素化合物がより好ましい。
また、上記中間沸点不活性化合物の特徴として、上記中間沸点不活性化合物の標準沸点が、(A)の標準沸点と(B)の標準沸点の間の温度であることが挙げられる。すなわち、中間沸点不活性化合物の標準沸点(Tc℃)は、分離する(A)の標準沸点(Ta℃)と(B)の標準沸点(Tb℃)に対して、Tb<Tc<Ta、又はTa<Tc<Tbである。(A)と(B)に合わせて、中間沸点不活性化合物は適宜選択して使用することができる。ここで標準沸点とは、1気圧下での沸点を表す。標準沸点は一般式等の構造で規定することは困難であり、各々の化合物について標準沸点を測定又は調査して選択する。標準沸点の測定は、例えば、第十四改正日本薬局方第一部54で規定の方法等の公知の方法で行うことができ、当業者であれば通常実施できる。
中間沸点不活性化合物の標準沸点(Tc℃)は、分離する(B)の標準沸点(Tb℃)及び(A)の標準沸点(Ta℃)と5℃以上、さらに好ましくは10℃以上異なることが好ましい。この場合、(A)と中間沸点不活性化合物、又は中間沸点不活性化合物と(B)との分離が容易である。すなわち、中間沸点不活性化合物の標準沸点が、(A)の標準沸点及び(B)の標準沸点と5℃以上離れていることは、本実施形態の根幹をなすものではない。ただし、分離される2成分の標準沸点が5℃以上離れていれば、工業的に充分蒸留分離可能であるという知見に基づき、(A)と(B)との分離後に生じ得る工程が容易となるとの観点で、5℃以上離れていることが好ましいとしている。
(A)と(B)とを含有する混合物は、多段蒸留塔内の、上述した中間沸点不活性化合物からなる層に供給し、上記多段蒸留塔にて(A)と(B)を分離回収することが好ましい。すなわち、(A)と(B)とを含有する混合物を上記多段充填塔に供給する際には、混合物と接触する部分の面積と、混合物の体積の比が、上記した範囲であることに加えて、多段充填塔内の(A)と(B)との混合物が供給される供給口を具備する高さに、中間沸点不活性化合物からなる層が形成されていることが好ましい。
(A)と(B)とを含有する混合物は、多段充填塔の中段に供給する。ここでいう「中段」とは、多段蒸留塔において、高さ方向で塔頂部と塔底部との間であって、供給口を具備する段の上部及び下部に少なくとも1段(充填塔では理論段1段)、好ましくは、少なくとも3段(充填塔では理論段3段)が存在し得る位置である。塔頂部とは、多段蒸留塔の最上部であって、連続的にガス相を抜き出す部分を指し、塔底部とは、多段蒸留塔の最底部を指す。
本実施形態における「中間沸点不活性化合物からなる層」は、主として上述した中間沸点不活性化合物によって形成された層を指す。本実施形態の分離方法は、(A)と(B)とを含有する混合物を、多段蒸留塔の蒸留塔内に形成した不活性な部位に供給し、上記多段蒸留塔で(A)と(B)とを蒸留分離する分離方法であって、上記多段蒸留塔が棚段塔であって、上記不活性な部位の、上記混合物との接触表面が、(A)と(B)との反応に対して不活性な材料で形成されている分離方法、又は、上記多段蒸留塔が充填塔であって、上記不活性な部位が、上記混合物との接触表面が(A)と(B)との反応に対して不活性な材料で形成された充填材から形成される部位である分離方法である。当該分離方法に加えて、中間沸点不活性化合物からなる層に(A)と(B)との混合物を供給し、(A)と(B)とを分離及び/又は希釈することによって、(A)と(B)との接触による(A)と(B)との反応を抑制し、より一層効率良く、(A)と(B)とを分離できる効果を奏する。
本実施形態における中間沸点不活性化合物からなる層は、供給口の上部及び下部に、少なくとも1段、好ましくは少なくとも3段の範囲に形成されている。中間沸点不活性化合物からなる層の、液相及び/又は気相、好ましくは、液相及びガス相は、中間沸点不活性化合物の含有率が、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上である。中間沸点不活性化合物の含有率は、多段蒸留塔より、液相成分及び/又はガス相成分をサンプリングして、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー等の公知の方法で分析することにより求めることができる。また、あらかじめ多段蒸留塔内の成分のT−XY線図を求めておき、多段充填塔内の任意の場所における温度と圧力からT−XY線図を用いて中間沸点不活性化合物の含有率を推定してもよい。
中間沸点不活性化合物からなる層の範囲は、多段蒸留塔底部に具備する蒸発器に与える熱量、多段蒸留塔頂部における還流量、中間沸点不活性化合物の供給量、(A)と(B)とを含有する混合物の供給量、多段充填塔内の圧力等を制御することにより調整することができる。また、場合によっては、上記した範囲以外の段に該中間沸点不活性化合物が存在する場合があっても構わない。
一方、多段蒸留塔への混合物の供給を開始する時は、中間沸点不活性化合物のみを多段蒸留塔内に導入して中間沸点不活性化合物を炊き上げることにより、気相部を中間沸点不活性化合物のガスで満たしておいた状態とした多段蒸留塔に混合物を供給する方法が好ましく、さらに好ましくは、中間沸点不活性化合物の全還流状態としておいた多段蒸留塔に混合物を供給する。
中間沸点不活性化合物は、多段蒸留塔に液体で供給することもできるし、ガス状で供給することもできる。中間沸点不活性化合物は、多段蒸留塔のどの位置から供給してもよく、多段蒸留塔の上部に具備する供給口より供給してもよいし、多段蒸留塔の下部に具備する供給口より供給してもよいし、混合物が供給される供給口と同じ高さに具備する供給口より供給してもよいし、混合物が供給される供給口より供給してもよい。
中間沸点不活性化合物の使用量は、使用する化合物や分離する化合物、操作条件にもよるが、混合物の質量に対して0.01倍〜100倍であることが好ましい。(A)と(B)との反応を抑制するためには、中間沸点不活性化合物の使用量は、過剰とすることが好ましいが、あまりに大過剰とすると、充填塔での処理量((A)と(B)とを含有する混合物の供給量)が低下することになり好ましくない。したがって、中間沸点不活性化合物の使用量は、混合物の質量に対してより好ましくは0.1倍〜50倍、さらに好ましくは0.3倍〜30倍である。
蒸留分離を行う際の圧力は、蒸留分離が実施される多段蒸留塔に供給される成分の組成、温度、及び多段蒸留塔の種類等によって異なる。例えば、減圧下でも、大気圧下でも、加圧下でも行われるが、通常、0.01kPa〜10MPaの範囲が好ましく、工業的実施の容易性を考慮すると、0.1kPa〜1MPaの範囲がより好ましく、0.5kPa〜50kPaの範囲がさらに好ましい。
蒸留分離を行う際の温度は、蒸留分離が実施される多段充填塔に供給される成分の組成、温度、及び多段充填塔の種類等によって異なる。一方、あまりに高温の場合は、(A)、(B)、中間沸点不活性化合物が熱変性する場合があり、一方で、あまりに低温の場合は、冷却のための新たな設備を設ける必要が生じたりして工業的な実施が容易でなくなることから、好ましくは、50℃〜350℃の範囲、より好ましくは80℃〜300℃、さらに好ましくは100℃〜250℃の範囲である。
以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
<分析方法>
(1)NMR分析方法
装置:日本電子(株)社製JNM−A400 FT−NMRシステム
(1−1)1H−NMR分析サンプル及び13C−NMR分析サンプルの調製
サンプル溶液を約0.3g秤量し、重クロロホルム(アルドリッチ社製、99.8%)約0.7gと内部標準物質としてテトラメチルスズ(和光純薬工業社製、和光一級)0.05gとを加えて均一に混合した溶液をNMR分析サンプルとした。
(1−2)定量分析法
各標準物質について分析を実施し、作成した検量線を基に、分析サンプル溶液の定量分析を実施した。
(2)液体クロマトグラフィー分析方法
装置:島津社製 LC−10ATシステム
カラム:東ソー社製 Silica−60カラム 2本直列に接続
展開溶媒:ヘキサン/テトラヒドロフラン=80/20(体積比)の混合液
溶媒流量:2mL/分
カラム温度:35℃
検出器:R.I.(屈折率計)
(2−1)液体クロマトグラフィー分析サンプル
サンプルを約0.1g秤量し、テトラヒドロフラン(和光純薬工業社製、脱水)を約1gと内部標準物質としてビスフェノールA(和光純薬工業社製、一級)を約0.02g加えて均一に混合した溶液を、液体クロマトグラフィー分析のサンプルとした。
(2−2)定量分析法
各標準物質について分析を実施し、作成した検量線を基に、分析サンプル溶液の定量分析を実施した。
(3)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)分析方法
装置:島津社製 LC−10ATシステム
カラム:東ソー社製 TSKgelG1000HXL 3本直列に接続
展開溶媒:クロロホルム
溶媒流量:2mL/分
カラム温度:35℃
検出器:R.I.(屈折率計)
(3−1)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー分析サンプル
サンプルを約0.1g秤量し、クロロホルムを約1g加えて均一に混合した溶液を分析のサンプルとした。
(3−2)定量分析法
標準試料として単分散ポリスチレンを使用し保持時間に対する検量線を作成し、該検量線により分子量を算出した。
[実施例1]
<工程(1−1)>
ヘキサメチレンジイソシアネート12.1kg(72mol)を、ヒドロキシ基1つにつき平均で1つのプロピレンオキシド基を有するプロポキシ化されたグリセリン0.98g(3.6mol)と混合した。この溶液に酢酸亜鉛0.5gを添加し、120℃で約1.5時間加熱した。GPCにより分析したところ、原料のイソシアネートとプロポキシ化されたグリセリンに相当するピークを除いた部分の数平均分子量は5.9×102であった。この混合物に、ジエチルヘキシルホスフェート0.5mlを加えた。
<工程(1−2)>
図1に示す蒸留分離装置100を使用して、未反応モノマーの蒸留分離を行った。
セラミック製ラシヒ(Ti原子含有量:0.809質量%、Fe原子含有量:0.699質量%、Ni原子含有量:0.01質量%)を充填した連続多段充填塔101にライン10より工程(1−1)で得た反応液を供給した。連続多段充填塔101を120℃とし、内部の圧力を0.2kPaとして、蒸留分離を行った。連続多段充填塔101のライン10との連結部より下の部分は、熱媒ジャケットにより加熱した。ライン11よりヘキサメチレンジイソシアネートを回収し、ライン17よりプロポキシ化されたグリセリンを回収し、ライン16よりポリイソシアネートを回収した。得られたポリイソシアネートのGPC測定を行ったところ、数平均分子量は6.0×102であった。
[参考例1]
<工程(A−1)>
実施例1の工程(1−1)と同様の反応を行った。反応液をGPCにより分析したところ、原料のイソシアネートとプロポキシ化されたグリセリンに相当するピークを除いた部分の数平均分子量は5.9×102であった。この混合物に、ジエチルヘキシルホスフェート0.5mlを加えた。
<工程(A−2)>
図2に示す蒸留分離装置200を使用した。
SUS316製ラシヒ(Fe原子含有量:67質量%以上、Ni原子含有量:12質量%)を充填した連続多段充填塔201にライン20より工程(A−1)で得た反応液を供給した。連続多段充填塔201を120℃とし、内部の圧力を0.2kPaとして蒸留分離を行った。連続多段充填塔201のライン20との連結部より下の部分は、熱媒ジャケットにより加熱した。ライン21よりヘキサメチレンジイソシアネートを回収し、ライン27よりプロポキシ化されたグリセリンを回収し、ライン26よりポリイソシアネートを回収した。得られたポリイソシアネートのGPC測定を行ったところ、数平均分子量は9.1×102であった。
工程(A−2)では、連続多段蒸留塔201においてSUS316製ラシヒの表面のFeがポリイソシアネート化反応を促進し、工程(A−2)を実施する前後でポリイソシアネートの数平均分子量が変化したと推定される。
[実施例2]
<工程(2−1)>
実施例1の工程(1−1)と同様の反応を行った。反応液をGPCにより分析したところ、原料のイソシアネートとプロポキシ化されたグリセリンに相当するピークを除いた部分の数平均分子量は5.9×102であった。この混合物に、ジエチルヘキシルホスフェート0.5mlを加えた。
<工程(2−2)>
図3に示す蒸留分離装置300を使用して、未反応モノマーの蒸留分離を行った。
工程(2−1)で得た反応液を、150℃に加熱し、かつ内部の圧力を0.4kPaとした薄膜蒸留装置301に供給した。ライン36より回収したポリイソシアネートのGPC測定を行ったところ数平均分子量は6.1×102であった。一方、未反応モノマーは気体成分としてライン31より抜き出し、連続多段蒸留塔302(ガラス製オルダーショウ、段数15段)に供給した。ライン33より回収された液はヘキサメチレンジイソシアネートであった。またライン35より回収された液はプロポキシ化されたグリセリンであった。
[参考例2]
<工程(B−1)>
実施例1の工程(1−1)と同様の反応を行った。反応液をGPCにより分析したところ、原料のイソシアネートとプロポキシ化されたグリセリンに相当するピークを除いた部分の数平均分子量は5.9×102であった。この混合物に、ジエチルヘキシルホスフェート0.5mlを加えた。
<工程(B−2)>
図4に示す蒸留分離装置400を使用して未反応モノマーの蒸留分離を行った。
工程(B−1)で得た反応液を、150℃に加熱し、かつ内部の圧力を0.4kPaとした薄膜蒸留装置401に供給した。ライン46より回収したポリイソシアネートのGPC測定を行ったところ数平均分子量は6.1×102であった。未反応モノマーは気体成分としてライン41より抜き出し、連続多段蒸留塔402(SUS316製オルダーショウ、実施例2の工程(2−2)で使用した連続多段蒸留塔302と同じ大きさ、段数)に供給した。ライン43より回収された液はヘキサメチレンジイソシアネートであった。一方ライン45より回収された液は、プロポキシ化されたグリセリンのヒドロキシ基の一部がイソシアネート基と反応した化合物であり、GPC測定による数平均分子量は3.8×102であった。
工程(B−2)では、連続多段蒸留塔402においてSUS316製オルダーショウの表面のFeがヘキサメチレンジイソシアネートと、プロポキシ化されたグリセリンとの反応を促進し、プロポキシ化されたグリセリンのヒドロキシ基の一部がイソシアネート基と反応した化合物が生成したと推定される。
[実施例3]
<工程(3−1)>
イソホロンジイソシアネート12.0kg(54mol)を、ヒドロキシ基1つにつき平均で1つのプロピレンオキシド基を有するプロポキシ化されたグリセリン1.98g(7.2mol)と混合した。この溶液に酢酸亜鉛0.5gを添加し、120℃で約0.5時間加熱した。GPCにより分析したところ、原料のイソシアネートとプロポキシ化されたグリセリンに相当するピークを除いた部分の数平均分子量は8.1×102であった。この混合物に、ジエチルヘキシルホスフェート0.5mlを加えた。
<工程(3−2)>
図3に示す蒸留分離装置300を使用して、未反応モノマーの蒸留分離を行った。
工程(3−1)で得た反応液を、150℃に加熱し、かつ内部の圧力を0.1kPaとした薄膜蒸留装置301に供給した。ライン36より回収したポリイソシアネートのGPC測定を行ったところ数平均分子量は8.2×102であった。一方、未反応モノマーは気体成分としてライン31より抜き出し、連続多段蒸留塔302(ガラス製オルダーショウ、段数15段)に供給した。ライン33より回収された液はイソホロンジイソシアネートを98質量%含んでいた。またライン35より回収された液はプロポキシ化されたグリセリンを98質量%含んでいた。
[参考例3]
<工程(C−1)>
実施例3の工程(3−1)と同様の反応を行った。反応液をGPCにより分析したところ、原料のイソシアネートとプロポキシ化されたグリセリンに相当するピークを除いた部分の数平均分子量は8.1×102であった。この混合物に、ジエチルヘキシルホスフェート0.5mlを加えた。
<工程(C−2)>
図4に示す蒸留分離装置400を使用して、未反応モノマーの蒸留分離を行った。
工程(C−1)で得た反応液を、150℃に加熱し、かつ内部の圧力を0.4kPaとした薄膜蒸留装置401に供給した。ライン46より回収したポリイソシアネートのGPC測定を行ったところ数平均分子量は8.1×102であった。未反応モノマーは気体成分としてライン41より抜き出し、連続多段蒸留塔402(SUS316製オルダーショウ、実施例3の工程(3−2)で使用した連続多段蒸留塔302と同じ大きさ)に供給した。ライン43より回収された液はヘキサメチレンジイソシアネートであった。一方ライン45より回収された液は、プロポキシ化されたグリセリンと、プロポキシ化されたグリセリンのヒドロキシ基の一部がイソシアネート基と反応した化合物との混合物であり、GPC測定による数平均分子量は4.8×102であった。
[実施例4]
<工程(4−1)>
ブチルフェニルカーボネート97.0kg(500mol)を窒素雰囲気下で120℃に加熱した。次いで、ヘキサメチレンジアミン11.6kg(100mol)を加え、5時間撹拌を継続した。反応液を液体クロマトグラフィー及び1H−NMRで分析したところ、N,N’−ヘキサンジイル−ジカルバミン酸ジブチルエステルとブチルフェニルカーボネートとフェノールを含有する混合物であった。
<工程(4−2)>
図5に示す蒸留分離装置500で蒸留分離を行った。
セラミック製ラシヒ(マツイマシン社製)を充填した連続多段充填塔501にライン51より工程(4−1)で得た反応液を供給した。連続多段充填塔501を90℃とし、内部の圧力を0.2kPaとして、蒸留分離を行った。ライン53よりフェノールを回収し、ライン55よりN,N’−ヘキサンジイル−ジカルバミン酸ジブチルエステルとブチルフェニルカーボネートを回収した。なお、ライン55から回収した混合物には、ジブチルカーボネートは検出されなかった。
[参考例4]
<工程(D−1)>
実施例4の工程(4−1)と同様の反応を行い、N,N’−ヘキサンジイル−ジカルバミン酸ジブチルエステルとブチルフェニルカーボネートとフェノールを含有する混合物を得た。
<工程(D−2)>
図6に示す蒸留分離装置600でフェノールの蒸留分離を行った。
SUS304製ラシヒを充填した連続多段充填塔601にライン61より工程(D−1)で得た反応液を供給した。連続多段充填塔601を90℃とし、内部の圧力を0.2kPaとして、蒸留分離を行った。ライン63よりフェノールとブタノールを回収した。ライン65からは、N,N’−ヘキサンジイル−ジカルバミン酸ジブチルエステル、下記式(a)で表される化合物、ブチルフェニルカーボネート、ジフェニルカーボネートを含有する混合液を回収した。
連続多段充填塔601にて、Feを含有するSUS304製ラシヒの表面により、ブチルフェニルカーボネートとフェノールとのエステル交換反応が促進されて、その生成物であるジフェニルカーボネートが連続多段充填塔601の塔底から回収され、もう一方の生成物であるブタノールが連続多段充填塔601の塔頂から回収され、また、N,N’−ヘキサンジイル−ジカルバミン酸ジブチルエステルとフェノールとのエステル交換反応が促進されて、その生成物である上記式(a)で表される化合物が連続多段充填塔601の塔底から回収されたと推定される。
[実施例5]
<工程(5−1)>
ブチルフェニルカーボネート67.9kg(350mol)を窒素雰囲気下で120℃に加熱した。次いで、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン10.5kg(50mol)を加え、5時間撹拌を継続した。反応液を液体クロマトグラフィー及び1H−NMRで分析したところ、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジ(カルバミン酸ブチルエステル)とブチルフェニルカーボネートとフェノールを含有する混合物であった。
<工程(5−2)>
図7に示す蒸留分離装置700で蒸留分離を行った。
工程(5−1)で得た反応液を、150℃に加熱し、かつ内部の圧力を0.1kPaとしたガラス製薄膜蒸留装置701に供給した。ライン71より4,4’−ジシクロヘキシルメタンジ(カルバミン酸ブチルエステル)が回収された。ブチルフェニルカーボネートとフェノールを含有する気相成分をライン72より抜き出し、テフロン(登録商標)製ラシヒを充填した連続多段蒸留塔702に供給して蒸留分離を行った。ライン73より得られた液はフェノールであり、ライン74より回収された液はブチルフェニルカーボネートであった。
[参考例5]
<工程(E−1)>
実施例5の工程(5−1)と同様の反応を行い、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジ(カルバミン酸ブチルエステル)とブチルフェニルカーボネートとフェノールを含有する混合物を得た。
<工程(E−2)>
図8に示す蒸留分離装置800で蒸留分離を行った。
工程(E−1)で得た反応液を、150℃に加熱し、かつ内部の圧力を0.1kPaとしたガラス製薄膜蒸留装置801に供給した。ライン81より4,4’−ジシクロヘキシルメタンジ(カルバミン酸ブチルエステル)が回収された。ブチルフェニルカーボネートとフェノールを含有する気相成分をライン82より抜き出し、チタン製ラシヒを充填した連続多段蒸留塔802に供給して蒸留分離を行った。ライン83より得られた液はフェノールとブタノールとを含有する液であり、ライン84より回収された液はブチルフェニルカーボネートとジフェニルカーボネートを含有する液であった。
連続多段蒸留塔801にて、チタン(Ti)を含有するチタン製ラシヒの表面により、ブチルフェニルカーボネートとフェノールとのエステル交換反応が促進されて、その生成物であるジフェニルカーボネートが連続多段蒸留塔801の塔底から回収され、もう一方の生成物であるブタノールが連続多段蒸留塔801の塔頂から回収されたと推定される。
[実施例6]
<工程(6−1)>
図9に示すN−置換カルバミン酸エステル製造装置900を使用して、工程(6−1)を実施した。
ライン94を閉止した状態で、炭酸ジフェニル25.7kg(120mol)を貯槽901よりライン91を経て攪拌槽904に供給し、フェノール19.8kg(110mol)を貯槽902よりライン92を経て攪拌槽904に供給した。攪拌槽904内の液温度を約50℃に調整し、ヘキサメチレンジアミン4.9kg(42mol)を貯槽903よりライン93を経て攪拌槽904に供給した。反応液を液体クロマトグラフィーで分析した結果、N,N’−ヘキサンジイル−ジカルバミン酸ジフェニルエステルが収率99.5%で生成していた。
ライン94を開き、反応液を、ライン94を経て貯槽905に移送した。この操作を5回繰り返した。
<工程(6−2)>
図10に示すN−置換カルバミン酸エステル熱分解及びイソシアネート分離装置1000を使用して、工程(6−2)を実施した。
セラミック製ラシヒ(Ti原子含有量:0.809質量%、Fe原子含有量:0.699質量%、Ni原子含有量:0.01質量%)を充填した連続多段充填塔1002の塔底にヘキサメチレンジイソシアネートをフィードし、ヘキサメチレンジイソシアネートの全還流運転を行った。
ガラス製薄膜蒸留装置1001を240℃に加熱し、内部の圧力を約1kPaとした。工程(6−1)で貯槽905に回収した反応液を150℃に加熱し、ラインA1を経て約10kg/hrで薄膜蒸留装置1001の上部に供給した。薄膜蒸留装置1001にて、N,N’−ヘキサンジイル−ジカルバミン酸ジフェニルエステルの熱分解を行うことにより、イソシアネートとヒドロキシ化合物とを含有する混合物を得た。薄膜蒸留装置1001の底部より、液相成分をラインA3より抜き出し、ラインA5及びラインA1を経て、薄膜蒸留装置1001の上部に循環させた。上記混合物は、気相成分としてラインA2より抜き出した。
連続多段充填塔1002の中段に、薄膜蒸留装置1001よりラインA2を経て気相成分として抜き出した混合物を連続的にフィードし、該混合物の蒸留分離を行った。連続多段充填塔1002の塔頂から留出するガスを、ラインA6を経て凝縮器1003で凝縮してラインA7より連続的に抜き出した。一方、塔底部より、ラインA8及びA9を経て液相成分を抜き出した。
ラインA9より抜き出された液は、ヘキサメチレンジイソシアネートを約99質量%含有する溶液であった。ヘキサメチレンジアミンに対する収率は93%であった。
[実施例7]
<工程(7−1)>
図11に示すN−置換カルバミン酸エステル製造装置1100を使用して、工程(7−1)を実施した。
ヘキサメチレンジアミン4.8kg、4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール165kg、及び尿素10.0kgを混合し、原料溶液を調製した。充填材(ヘリパックNo.3)を充填した充填塔1101を240℃に加熱し、かつ内部の圧力を約20kPaとした。充填塔1101の上方側部に連結されたラインB1より、原料溶液と同じ組成の混合液を充填塔1101内部に導入した。運転条件が安定した後、ラインB1より原料溶液を充填塔1101内部に導入し、反応させた。反応液を充填塔1101の最底部に連結されたラインB4及びB5を経由して貯槽1105に回収した。また、充填塔1101の最上部に連結されたラインB2より気相成分を回収し、約85℃に保持された凝縮器1102で凝縮して得られる成分を回収した。ラインB5より回収した反応液を、液体クロマトグラフィー及び1H−NMRで分析したところ、この反応液中には、N,N’−ヘキサンジイル−ジカルバミン酸ジ(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル)エステルがヘキサメチレンジアミンに対して収率約95%で生成していた。
上記操作を5回繰り返した。
<工程(7−2)>
図12に示すN−置換カルバミン酸エステル熱分解及びイソシアネート分離装置1200を使用して、工程(7−2)を実施した。
セラミック製ラシヒ(Ti原子含有量:0.809質量%、Fe原子含有量:0.699質量%、Ni原子含有量:0.01質量%)を充填した連続多段充填塔1202の塔底にヘキサメチレンジイソシアネートをフィードし、ヘキサメチレンジイソシアネートの全還流運転を行った。
薄膜蒸留装置1201を280℃に加熱し、内部の圧力を約1.0kPaとした。工程(7−1)で貯槽1105に回収した反応液を150℃に加熱し、薄膜蒸留装置1201の上方側部に連結されたラインC1より約10kg/hrで薄膜蒸留装置1201に供給し、N,N’−ヘキサンジイル−ジカルバミン酸ジ(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル)エステルの熱分解を行った。この熱分解により、イソシアネートとヒドロキシ化合物とを含有する混合物を得た。なお、薄膜蒸留装置1201の底部に連結されたラインC3より液相成分を抜き出し、ラインC5及びラインC1を経て、薄膜蒸留装置1201の上部に導入し、循環させた。上記混合物は、気相成分としてラインC2より抜き出した。
連続多段充填塔1202の中段に、薄膜蒸留装置1201よりラインC2を経て気相成分として抜き出した混合物を連続的にフィードし、該混合物の蒸留分離を行った。蒸留分離に必要な熱量は、塔下部液をリボイラー1204及びラインC8を経て循環させることにより供給した。塔頂圧力は約5kPaであった。連続多段充填塔1202の塔頂から留出するガスを、ラインC6を経て凝縮器1203で凝縮して液相成分とし、ラインC7より連続的に抜き出し、連続多段充填塔1205に供給した。
連続多段充填塔1205の中段に、ラインC7より抜き出された液相成分を連続的にフィードし、液相成分の蒸留分離を行った。連続多段充填塔1205の塔頂から留出するガスを、凝縮器1206で凝縮して貯槽1209へ連続的に抜き出した。貯槽1209に抜き出された液は、ヘキサメチレンジイソシアネートを約99質量%含有する溶液であった。ヘキサメチレンジアミンに対する収率は88%であった。
[参考例6]
<工程(F−1)>
実施例7の工程(7−1)と同様の反応を行い、N,N’−ヘキサンジイル−ジカルバミン酸ジ(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル)エステルをヘキサメチレンジアミンに対して収率約95%で得た。
<工程(F−2)>
図12に示すN−置換カルバミン酸エステル熱分解及びイソシアネート分離装置1200を使用した。
SUS316製ラシヒ(Fe原子含有量:67質量%以上、Ni原子含有量:12質量%)を連続多段充填塔1202に充填した以外は、実施例7の工程(7−2)と同様の方法を行った。貯槽1209に回収された液は、ヘキサメチレンジイソシアネートを約99.8質量%含有する溶液であった。ヘキサメチレンジアミンに対する収率は5%であった。
[実施例8、実施例9、参考例7〜10]
実施例7の工程(7−2)におけるセラミック製ラシヒを、Fe原子含有量、Ni原子含有量及びTi原子含有量がそれぞれ下記表1に記載の量である充填材(ラシヒ)に変更したこと以外は、実施例7の工程(7−2)と同様にして、N,N’−ヘキサンジイル−ジカルバミン酸ジ(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル)エステルの熱分解及びイソシアネートの分離回収を行った。回収されたヘキサメチレンジイソシアネートのヘキサメチレンジアミンに対する収率は下記表1に記載のとおりであった。
[実施例10]
<工程(10−1)>
4−(α,α−ジメチルベンジル)フェノール68.0kgと尿素7.0kgを、攪拌槽に供給し、攪拌槽を100℃に加熱した。均一な溶液となったのち、ヘキサメチレンジアミン3.3kgを約0.1kg/minで供給した。ヘキサメチレンジアミンの供給が終了した後、約2時間攪拌し、反応液を液体クロマトグラフィーで分析した結果、1,6−ヘキサンジウレアが生成していた。
<工程(10−2)>
図13に示すN−置換カルバミン酸エステル製造装置1300を使用して、工程(10−2)を実施した。
充填材(ヘリパックNo.3)を充填した充填塔1301を240℃に加熱し、充填塔1301内部の圧力を約5kPaとした。充填塔1301の上方側部に連結されたラインD1より、工程(10−1)の反応液を充填塔1301内部に導入し反応させた。反応液を充填塔1301の最底部に連結されたラインD4及びD5を経由して回収した。また、充填塔1301の最上部に連結されたラインD2より気相成分を回収し、約85℃に保持された凝縮器1302で凝縮して得られる成分をラインD3より回収した。ラインD5より回収した反応液を、液体クロマトグラフィー及び1H−NMRで分析したところ、この反応液中には、N,N’−ヘキサンジイル−ジカルバミン酸ジ(4−(α,α−ジメチルベンジル)フェニル)エステルがヘキサメチレンジアミンに対して収率約94%で生成していた。
<工程(10−3)>
図14に示すN−置換カルバミン酸エステル熱分解及びイソシアネート分離装置1400を使用した。
棚段塔1402(SUS316製)の上記(X)(単位m2)と、上記(Y)(単位m3)との比は、(X)/(Y)=41であった。
工程(10−2)で得た反応液を、220℃に加熱し、かつ内部の圧力を0.1kPaとした薄膜蒸留装置1401にラインE1より約30g/分で供給した。薄膜蒸留装置1401の底部より液相成分を抜き出し、一部をラインE4よりブローダウンしながら、ラインE5を経て薄膜蒸留装置1401に再循環させた。一方、気相成分はラインE2より抜き出し、棚段塔1402にて蒸留分離を行った。棚段塔1402の塔頂より抜き出したガスを凝縮器1403で凝縮し、凝縮液を棚段塔1402に還流するとともに、ラインE7より抜き出した。ラインE7より抜き出した液は、ヘキサメチレンジイソシアネートを99質量%含有する液であり、ヘキサメチレンジアミンに対する収率は88%であった。
[実施例11〜13、参考例11、参考例12]
棚段塔1402(SUS316製)の上記(X)(単位m
2)と、上記(Y)(単位m
3)との比を、表2に示すとおりに変更したこと以外は、実施例10の工程(10−3)と同様の方法を行った。回収されたヘキサメチレンジイソシアネートのヘキサメチレンジアミンに対する収率は下記表2に記載のとおりであった。
[実施例14]
ペンタデカンをラインC10より供給した以外は、実施例7の工程(7−2)と同様の方法を行った。連続多段充填塔1202のラインC2との連結部と塔底との中間に連結されたサンプリングラインより液相成分をサンプリングし、分析したところ、ペンタデカンを10質量%含有していた。一方、連続多段蒸留塔1202の塔頂に連結されたラインC6より抜き出した気相成分を凝縮器1203で凝縮し、一部を連続多段蒸留塔1202に還流するとともに、ラインC7より抜き出した。ラインC7より抜き出した液を分析したところ、ペンタデカンを45質量%、ヘキサメチレンジイソシアネートを54質量%含有する混合液であった。該混合液をさらに蒸留分離してヘキサメチレンジイソシアネートを回収したところ、ヘキサメチレンジアミンに対して収率94%でヘキサメチレンジイソシアネートが得られた。
なお、ペンタデカンの標準沸点(Tc)、ヘキサメチレンジイソシアネートの標準沸点(Tb)、4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールの標準沸点(Ta)を比較すると、Tb<Tc<Taであった。
[実施例15]
ベンジルトルエン(異性体混合物)をラインE10より供給した以外は、実施例10の工程(10−3)と同様の方法を行った。棚段塔1402のラインE2との連結部と塔底との中間に連結されたサンプリングラインより液相成分をサンプリングし分析したところ、ベンジルトルエンを24質量%含有していた。一方、棚段塔1402の塔頂に連結されたラインE6より抜き出した気相成分を凝縮器1403で凝縮し、一部を棚段塔1402に還流するとともに、ラインE7より抜き出した。ラインE7より抜き出した液を分析したところ、ベンジルトルエンを53質量%、ヘキサメチレンジイソシアネートを46質量%含有する混合液であった。該混合液をさらに蒸留分離してヘキサメチレンジイソシアネートを回収したところ、ヘキサメチレンジアミンに対して収率93%でヘキサメチレンジイソシアネートが得られた。
なお、ベンジルトルエンの標準沸点(Tc)、ヘキサメチレンジイソシアネートの標準沸点(Tb)、4−(α,α−ジメチルベンジル)フェノールの標準沸点(Ta)を比較すると、Tb<Tc<Taであった。
[実施例16]
・工程(16−1)
図14に示すN−置換カルバミン酸エステル熱分解及びイソシアネート分離装置1400を使用した。
棚段塔1402の塔底にn−ドデカンを供給し、塔頂圧力を約1kPaとしてn−ドデカンの全還流運転を行った。
薄膜蒸留装置1401を290℃に加熱し、内部の圧力を約2kPaとした。N,N’−ヘキサンジイル−ビス−チオカルバミン酸ジ(O−(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル))とフェノールとの混合液(質量比10:1)を、ラインE1を経て約1.0kg/時間で薄膜蒸留装置1401の上部に供給して、N,N’−ヘキサンジイル−ビス−チオカルバミン酸ジ(O−(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル))の熱分解を行った。薄膜蒸留装置1401の底部より、液相成分をラインE3より抜き出した。混合ガスをラインE2より抜き出した。
棚段塔1402の中段に、薄膜蒸留装置1401よりラインE2を経て抜き出した混合ガスを連続的にフィードし、同時に、ラインE10よりn−ドデカンを供給した。棚段塔1402のラインE2との連結部と塔底との中間に連結されたサンプリングラインより液相成分をサンプリングし分析したところ、n−ドデカンを14質量%含有していた。
棚段塔1402の塔頂から留出する気相成分を、凝縮器1403で凝縮して一部を棚段塔1402に還流するとともにラインE7より連続的に抜き出した。ラインE7より抜き出した液は、n−ドデカンとヘキサメチレンジイソチオシアネートとの混合液であった。一方、塔底部より、ラインE8及びE9を経て液相成分を抜き出した。ラインE9から抜き出した液は4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールであった。ラインE7から抜き出した液を分析した結果、N,N’−ヘキサンジイル−ビス−チオカルバミン酸ジ(O−フェニル)に対するヘキサメチレンジイソチオシアネートの収率は89%であった。
なお、ヘキサメチレンジイソチオシアネートの標準沸点をTbとし、4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールの標準沸点をTaとした場合、n−ドデカンの標準沸点Tcは、Tb<Tc<Taを満たしていた。
[実施例17]
<工程(17−1)>
N,N’−ヘキサンジイル−ビス−チオカルバミン酸ジ(O−フェニル)とフェノールとの混合液の代わりに、N,N’−ヘキサンジイル−ビス−チオカルバミン酸ジ(S−フェニル)とベンゼンチオールとの混合液(質量比10:1)を使用した以外は、実施例16の工程(16−1)と同様の方法を行った。
棚段塔1402のラインE2との連結部と塔底との中間に連結されたサンプリングラインより液相成分をサンプリングし分析したところ、n−ドデカンを15質量%含有していた。
棚段塔1402の塔頂から留出する気相成分を、凝縮器1403で凝縮して一部を棚段塔1402に還流するとともにラインE7より連続的に抜き出した。ラインE7より抜き出した液は、n−ドデカンとベンゼンチオールとの混合液であった。一方、塔底部より、ラインE8及びE9を経て液相成分を抜き出した。ラインE9から抜き出した液はヘキサメチレンジイソシアネートであった。N,N’−ヘキサンジイル−ビス−チオカルバミン酸ジ(S−フェニル)に対するヘキサメチレンジイソシアネートの収率は91%であった。
なお、ヘキサメチレンジイソシアネートの標準沸点をTbとし、ベンゼンチオールの標準沸点をTaとした場合、n−ドデカンの標準沸点Tcは、Ta<Tc<Tbを満たしていた。
[実施例18]
<工程(18−1)>
n−ドデカンの代わりにn−デカンを使用し、N,N’−ヘキサンジイル−ビス−チオカルバミン酸ジ(O−フェニル)とフェノールとの混合液の代わりに、N,N’−ヘキサンジイル−ビス−ジチオカルバミン酸ジフェニルとベンゼンチオールとの混合液(質量比8:1)を使用した以外は、実施例16の工程(16−1)と同様の方法を行った。
棚段塔1402のラインE2との連結部と塔底との中間に連結されたサンプリングラインより液相成分をサンプリングし分析したところ、n−デカンを18質量%含有していた。
棚段塔1402の塔頂から留出する気相成分を、凝縮器1403で凝縮して一部を棚段塔1402に還流するとともにラインE7より連続的に抜き出した。ラインE7より抜き出した液は、n−デカンとベンゼンチオールとの混合液であった。一方、塔底部より、ラインE8及びE9を経て液相成分を抜き出した。ラインE9から抜き出した液はヘキサメチレンジイソチオシアネートであった。N,N’−ヘキサンジイル−ビス−ジチオカルバミン酸ジフェニルに対するヘキサメチレンジイソチオシアネートの収率は87%であった。
なお、ヘキサメチレンジイソチオシアネートの標準沸点をTbとし、ベンゼンチオールの標準沸点をTaとした場合、n−デカンの標準沸点Tcは、Ta<Tc<Tbを満たしていた。