JP5688150B2 - ポリ乳酸系樹脂用耐衝撃性付与剤 - Google Patents

ポリ乳酸系樹脂用耐衝撃性付与剤 Download PDF

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Description

本発明は、ポリ乳酸系樹脂に優れた耐衝撃性を付与するポリ乳酸系樹脂用耐衝撃性付与剤及び該剤とポリ乳酸系樹脂を含有するポリ乳酸系樹脂組成物に関する。
植物原料をはじめとする再生可能な資源を用いた材料開発は、循環型社会構築の観点から、緊急に着手すべき社会性の高い研究テーマである。石油を主原料とするプラスチックを、再生可能な原料から製造されたバイオプラスチックに置き換えることができれば、カーボンニュートラル(すなわち、光合成の過程で環境中の二酸化炭素を取り込んだ材料を焼却しても、全体として大気中の二酸化炭素量は増えないという考え方)が実現し、地球温暖化の防止に貢献できる。
バイオプラスチックの中でも、トウモロコシ等の再生可能資源から製造することができるポリ乳酸に対する関心は高く、すでに医療分野での利用は始まっている。さらなる用途展開を目的として2005年の愛知万博において大規模な実証試験が行われるなど、実用材料としての高い潜在性が確認されており、農業用資材(例えば、シート、フィルム)、食品包装用資材(例えば、食品包装フィルム、シート、袋)、その他の包装用資材(例えば、衣料、日用雑貨包装用シート、フィルム、袋)などへの利用が期待されている。
ポリ乳酸は、PET(ポリエチレンテレフタレート)と同程度の引張強度及び透明性を有する結晶性熱可塑性高分子である。燃焼した場合の燃焼カロリーが、PE(ポリエステル)、PP(ポリプロピレン)などの約1/3と小さく、焼却炉を痛めることが少なく、有害なガスの発生もない。加えて、前記のようにポリ乳酸の原料は植物であるため、焼却処理したときの二酸化炭素の増加が環境への負荷となり難いため、地球環境にも優しい。そのような利点のために近年になって製造法や応用用途などの研究開発が盛んになり、今後、用途の多角化とそれに伴う生産量の増加が期待されている。
しかしながら、ポリ乳酸は硬くて脆く、すなわち衝撃特性に乏しいという性質を有するために工業的な用途が制限されてきた。このため、このポリ乳酸の物性を改善するために様々な検討が行われている。
例えば、特許文献1には、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリグリコリド等の軟質系生分解性脂肪族ポリエステルをポリ乳酸に混合した樹脂組成物が開示されている。
また、特許文献2では、アジピン酸ジ−i−ブチル、セバシン酸ジ−n−ブチル等の可塑剤を添加したポリ乳酸系樹脂組成物、特許文献3には、脂肪族ポリエステル(なかでもポリ乳酸)にポリグリセリン酢酸エステルを可塑剤として配合した脂肪族ポリエステル組成物が開示されている。
さらに、特許文献4及び5には、溶解度パラメータ値と密度値から導きだされる特定の関係をそれぞれ満たす2種のポリマーからなる特定のポリマーがポリ乳酸用の耐衝撃性付与剤として開示されている。
またさらに、本願発明者らの以前の特許出願に係る発明である特許文献6においては、平均重合度、脂肪酸エステル化率が特定のポリグリセリン脂肪酸エステルをポリ乳酸に添加することで、ポリ乳酸の可塑性を改良できることが報告されている。
特開平9−111107号公報 特開平4−335060号公報 特開2003−73532号公報 特開2003−268088号公報 特許第3972615号公報 特開2008−69299号公報
こうした従来技術に拠って、可塑性が向上されたポリ乳酸系樹脂組成物を提供することができるものの、その性能は未だ十分ではないことが判明した。即ち、特許文献1の樹脂組成物ではポリ乳酸の衝撃特性は改善されるものの、脂肪族ポリエステルの添加量が10重量部以上と比較的多いことに加え、この脂肪族ポリエステルのガラス転移温度はポリ乳酸のガラス転移温度よりも低いため、組成物全体として熱的特性に課題が残る。
特許文献2及び3に記載の可塑剤は、ポリ乳酸に柔軟性が付与されるというデータは示されているものの、衝撃特性及び熱的特性についての言及が無く、不明なままである。特許文献4及び5に記載の耐衝撃性付与剤はコハク酸、プロピレングリコール、ヘキサメチレンジイソシアネート等の石油原料を化学合成したもので、当該耐衝撃性付与剤を添加したポリ乳酸のガラス転移温度の低下も抑えられている。しかし、添加量はポリ乳酸に対して10重量%以上と比較的多量である。
特許文献6に記載の方法では、ガラス転移点の低下が抑えられ、透明性も損なうことなくポリ乳酸に可塑性を付与することができ、またポリグリセリン脂肪酸エステルの添加量も比較的少量(〜10重量%程度)である。しかし、特許文献6に記載されている可塑化ポリ乳酸樹脂組成物は、いわゆる溶媒キャスト法による方法で製造されている。つまり、押出機や射出成形機など、通常のプラスチックの成形加工機器による製造が実施されておらず、この可塑化ポリ乳酸組成物についての成形加工特性については不明で、工業生産可能かどうかは不明なままであった。
本発明の課題は、ポリ乳酸系樹脂の持つ熱的特性を維持したまま衝撃特性及び成形加工性を向上させるポリ乳酸系樹脂用耐衝撃性付与剤、及び該剤とポリ乳酸系樹脂を含有するポリ乳酸系樹脂組成物を提供することにある。
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の脂肪酸とポリグリセリンからなるポリグリセリン脂肪酸エステルを耐衝撃性付与剤としてポリ乳酸系樹脂に添加することにより、熱的特性、成形加工性を維持したまま衝撃特性が向上したポリ乳酸系樹脂組成物が得られることを見出した。また、ポリグリセリンの平均重合度が特定の範囲内である場合、用いる脂肪酸によって好適なエステル化率が異なることを見出し、特定の平均重合度を有するポリグリセリンと特定の脂肪酸を特定のエステル化率で反応させて得られるポリグリセリン脂肪酸エステルが前記特性がより向上するものとなり、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、
〔1〕 カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、及びオレイン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種を構成脂肪酸中80質量%以上含む脂肪酸と平均重合度2〜のポリグリセリンにより構成され、エステル化率が30〜45%であるポリグリセリン脂肪酸エステルを含有する、ポリ乳酸系樹脂用耐衝撃性付与剤、
〔2〕 カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、及びオレイン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種を構成脂肪酸中80質量%以上含む脂肪酸と平均重合度5〜10のポリグリセリンにより構成され、エステル化率が5〜45%であるポリグリセリン脂肪酸エステルを含有する、ポリ乳酸系樹脂用耐衝撃性付与剤、
〔3〕 カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、及びオレイン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種を構成脂肪酸中80質量%以上含む脂肪酸と平均重合度11〜40のポリグリセリンにより構成され、エステル化率が5〜40%であるポリグリセリン脂肪酸エステルを含有する、ポリ乳酸系樹脂用耐衝撃性付与剤、ならびに
〕 ポリ乳酸系樹脂と、前記〔1〕〜〔3〕いずれか記載の耐衝撃性付与剤を含有してなるポリ乳酸系樹脂組成物
に関する。
本発明のポリ乳酸系樹脂用耐衝撃性付与剤は、ポリ乳酸系樹脂の持つ熱的特性、成形加工特性を維持したまま、衝撃特性を向上させるという優れた効果を奏する。
比較例1(ポリ乳酸)の2500倍のSEM写真である。 実施例12の2500倍のSEM写真である。 実施例27の2000倍のSEM写真である。
本発明のポリ乳酸系樹脂用耐衝撃性付与剤は、ポリグリセリン脂肪酸エステルを含み、該ポリグリセリン脂肪酸エステルは特定の構造を持つことに特徴がある。ポリ乳酸系樹脂は、その分子構造が剛直であるため、硬く、成形体が割れやすい。そこで、本発明者らが検討した結果、特定の構造を有するポリグリセリン脂肪酸エステルをポリ乳酸系樹脂に添加混合させることにより、該ポリグリセリン脂肪酸エステルがミクロンオーダーで分散して、ポリ乳酸系樹脂がマトリックス、ポリグリセリン脂肪酸エステルが微細な島となる海島構造を形成することで、この海島構造が外部からの衝撃エネルギーを吸収し、衝撃特性を向上することができると推定される。また、特定の構造を有するポリグリセリン脂肪酸エステルも、その組成によって構造上に僅かな違いが生じることから、さらに検討した結果、構成ポリグリセリンの平均重合度によって、その構成脂肪酸やそのエステル化率に好ましい態様が存在し、特定の組成を有するポリグリセリン脂肪酸エステル、即ち、特定平均重合度のポリグリセリンと特定の脂肪酸が特定のエステル化率でエステル結合したものの場合、海島構造が衝撃エネルギーをより吸収しやすいものとなると推察される。海島構造はSEM写真にて観察することができる。
本発明のポリ乳酸系樹脂用耐衝撃性付与剤(単に、本発明の耐衝撃性付与剤ともいう)に含有されるポリグリセリン脂肪酸エステルは、グリセリンの重合物であるポリグリセリンと脂肪酸を構成成分として含むものであり、これらの成分は、ポリグリセリンの水酸基と脂肪酸のカルボン酸を介してエステル結合している。即ち、本発明におけるポリグリセリン脂肪酸エステルは、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、及びオレイン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種を構成脂肪酸中、80質量%以上、好ましくは85質量%以上、より好ましくは90質量%以上含む脂肪酸とポリグリセリンとにより構成される。本明細書において、脂肪酸の含有量とは、前記の脂肪酸を2種以上用いる場合はそれらの合計含有量のことを意味し、構成脂肪酸とは、ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成する全ての脂肪酸成分を合わせたもののことを意味する。
なお、本明細書において、カプリル酸は炭素数8の、カプリン酸は炭素数10の、ラウリン酸は炭素数12の、ミリスチン酸は炭素数14の、パルミチン酸は炭素数16の、ステアリン酸は炭素数18の飽和の直鎖脂肪酸であり、オレイン酸が炭素数18の不飽和脂肪酸である。また、ポリグリセリン脂肪酸エステルの製造に用いる原料脂肪酸としての、「カプリル酸」はカプリル酸を好ましくは85質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上含むもの、「カプリン酸」はカプリン酸を好ましくは85質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、「ラウリン酸」はラウリン酸を好ましくは85質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上含むもの、「ミリスチン酸」はミリスチン酸を好ましくは85質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上含むもの、「パルミチン酸」はパルミチン酸を好ましくは85質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上含むもの、「ステアリン酸」はステアリン酸を好ましくは85質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上含むもの、「オレイン酸」はオレイン酸を好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上含むものを意味する。ポリグリセリン脂肪酸エステルの構成脂肪酸の原料脂肪酸組成としては、例えば、以下の(a)〜(v)組が例示される。なお、構成脂肪酸の原料脂肪酸組成における割合は、各原料に記載の分子量を用いて算出されたmol数の割合(mol%)を意味する。
(a)カプリル酸のみ
(b)カプリン酸のみ
(c)ラウリン酸のみ
(d)カプリル酸とカプリン酸
(e)カプリル酸とラウリン酸
(f)カプリン酸とラウリン酸
(g)ラウリン酸とパルミチン酸
(h)ミリスチン酸のみ
(i)ミリスチン酸とパルミチン酸
(j)ミリスチン酸とステアリン酸
(k)ミリスチン酸とパルミチン酸とステアリン酸
(l)ミリスチン酸とオレイン酸
(m)パルミチン酸のみ
(n)パルミチン酸とステアリン酸
(o)パルミチン酸とオレイン酸
(p)ステアリン酸のみ
(q)ラウリン酸とステアリン酸
(r)ステアリン酸とオレイン酸
(s)ステアリン酸とパルミチン酸とオレイン酸
(t)ステアリン酸とパルミチン酸とラウリン酸
(u)ステアリン酸とオレイン酸とミリスチン酸とパルミチン酸とラウリン酸
(v)オレイン酸のみ
(d)カプリル酸とカプリン酸
カプリル酸とカプリン酸の2種類からなる組合せである。その構成割合は特に限定されないが、カプリル酸90〜10mol%、カプリン酸10〜90mol%であることが好ましく、カプリル酸70〜30mol%、カプリン酸が30〜70mol%であることがより好ましい。
(e)カプリル酸とラウリン酸
カプリル酸とラウリン酸の2種類からなる組合せである。その構成割合は特に限定されないが、カプリル酸90〜10mol%、ラウリン酸10〜90mol%であることが好ましく、カプリル酸70〜30mol%、ラウリン酸30〜70mol%であることがより好ましい。
(f)カプリン酸とラウリン酸
カプリン酸とラウリン酸の2種類からなる組合せである。その構成割合は特に限定されないが、カプリン酸90〜10mol%、ラウリン酸10〜90mol%であることが好ましく、カプリン酸70〜30mol%、ラウリン酸30〜70mol%であることがより好ましい。
(g)ラウリン酸とパルミチン酸
ラウリン酸とパルミチン酸の2種類からなる組合せである。その構成割合は特に限定されないが、ラウリン酸90〜10mol%、パルミチン酸10〜90mol%であることが好ましく、ラウリン酸70〜30mol%、パルミチン酸30〜70mol%であることがより好ましい。
(i)ミリスチン酸とパルミチン酸
ミリスチン酸とパルミチン酸の2種類からなる組合せである。その構成割合は特に限定されないが、ミリスチン酸90〜10mol%、パルミチン酸10〜90mol%であることが好ましく、ミリスチン酸70〜30mol%、パルミチン酸30〜70mol%であることがより好ましい。
(j)ミリスチン酸とステアリン酸
ミリスチン酸とステアリン酸の2種類からなる組合せである。その構成割合は特に限定されないが、ミリスチン酸90〜10mol%、ステアリン酸10〜90mol%であることが好ましく、ミリスチン酸70〜30mol%、ステアリン酸30〜70mol%であることがより好ましい。
(k)ミリスチン酸とパルミチン酸とステアリン酸
ミリスチン酸とパルミチン酸とステアリン酸の3種類からなる組合せである。その構成割合は特に限定されないが、ミリスチン酸40〜90mol%、パルミチン酸30〜5mol%、ステアリン酸30〜5mol%であることが好ましく、ミリスチン酸40〜60mol%、パルミチン酸30〜20mol%、ステアリン酸30〜20mol%であることがより好ましい。
(l)ミリスチン酸とオレイン酸
ミリスチン酸とオレイン酸の2種類からなる組合せである。その構成割合は特に限定されないが、ミリスチン酸90〜10mol%、オレイン酸10〜90mol%であることが好ましく、ミリスチン酸70〜30mol%、オレイン酸30〜70mol%であることがより好ましい。
(n)パルミチン酸とステアリン酸
パルミチン酸とステアリン酸の2種類からなる組合せである。その構成割合は特に限定されないが、パルミチン酸90〜10mol%、ステアリン酸10〜90mol%であることが好ましく、パルミチン酸70〜30mol%、ステアリン酸30〜70mol%であることがより好ましい。
(o)パルミチン酸とオレイン酸
パルミチン酸とオレイン酸の2種類からなる組合せである。その構成割合は特に限定されないが、パルミチン酸90〜10mol%、オレイン酸10〜90mol%であることが好ましく、パルミチン酸70〜30mol%、オレイン酸30〜70mol%であることがより好ましい。
(q)ラウリン酸とステアリン酸
ラウリン酸とステアリン酸の2種類からなる組合せである。その構成割合は特に限定されないが、ラウリン酸90〜10mol%、ステアリン酸10〜90mol%であることが好ましく、ラウリン酸70〜30mol%、ステアリン酸30〜70mol%であることがより好ましい。
(r)ステアリン酸とオレイン酸
ステアリン酸とオレイン酸の2種類からなる組合せである。その構成割合は特に限定されないが、ステアリン酸90〜10mol%、オレイン酸10〜90mol%であることが好ましく、ステアリン酸70〜30mol%、オレイン酸30〜70mol%であることがより好ましい。
(s)ステアリン酸とパルミチン酸とオレイン酸
ステアリン酸とパルミチン酸とオレイン酸の3種類からなる組合せである。その構成割合は特に限定されないが、ステアリン酸30〜5mol%、パルミチン酸30〜5mol%、オレイン酸40〜90mol%であることが好ましく、ステアリン酸30〜20mol%、パルミチン酸30〜20mol%、オレイン酸40〜60mol%であることがより好ましい。
(t)ステアリン酸とパルミチン酸とラウリン酸
ステアリン酸とパルミチン酸とラウリン酸の3種類からなる組合せである。その構成割合は特に限定されないが、ステアリン酸5〜30mol%、パルミチン酸5〜30mol%、ラウリン酸90〜40mol%であることが好ましく、ステアリン酸20〜30mol%、パルミチン酸20〜30mol%、ラウリン酸60〜40mol%であることがより好ましい。
(u)ステアリン酸とオレイン酸とミリスチン酸とパルミチン酸とラウリン酸
ステアリン酸とオレイン酸とミリスチン酸とパルミチン酸とラウリン酸の5種類からなる組合せである。その構成割合は特に限定されないが、ステアリン酸10〜60mol%、オレイン酸10〜40mol%、ミリスチン酸1〜15mol%、パルミチン酸10〜70mol%、ラウリン酸5〜30mol%であることが好ましく、ステアリン酸15〜35mol%、オレイン酸10〜30mol%、ミリスチン酸1〜10mol%、パルミチン酸25〜45mol%、ラウリン酸5〜25mol%であることがより好ましい。好適な一態様としては、ステアリン酸25mol%、オレイン酸20mol%、ミリスチン酸5mol%、パルミチン酸35mol%、ラウリン酸15mol%が例示される。
また、ポリグリセリン脂肪酸エステルのもう一つの構成成分であるポリグリセリンとしては、特に限定されるものではないが、ポリ乳酸系樹脂組成物における成形加工性の観点から、平均重合度が2〜40のものを用いる。なお、本明細書において、ポリグリセリンの平均重合度(単に、重合度という場合もある)とは、以下に記載のポリグリセリンの水酸基価の式により算出される。
<ポリグリセリンの水酸基価の式>
OHV=56110(n+2)/(74n+18)
OHV:ポリグリセリンの水酸基価
n :ポリグリセリンの平均重合度
本発明におけるポリグリセリン脂肪酸エステルのエステル化率は、ポリグリセリンと脂肪酸の仕込み比率を変化させることにより調整することができることから、前記脂肪酸とポリグリセリンを用いるのであれば適宜調整することができ、特に限定されない。なお、本発明において、エステル化率は、以下に記載の式に従って算出される。
<ポリグリセリン脂肪酸エステルのエステル化率>
エステル化率(%)=(構成脂肪酸のmol数/構成ポリグリセリンの総水酸基mol数)×100(%)
また、本発明におけるポリグリセリン脂肪酸エステルは、ポリグリセリンの平均重合度によって、以下の3つの態様が挙げられる。
(1)平均重合度が2〜4のポリグリセリンを含有する態様(態様1)
(2)平均重合度が5〜10のポリグリセリンを含有する態様(態様2)
(3)平均重合度が11〜40のポリグリセリンを含有する態様(態様3)
(1)態様1のポリグリセリン脂肪酸エステル
態様1のポリグリセリン脂肪酸エステルは、平均重合度が2〜4のポリグリセリンを含有し、ポリグリセリン脂肪酸エステルの分子量が比較的小さいことが特徴である。平均重合度が2〜4のポリグリセリンは比較的安価であり、ポリグリセリン脂肪酸エステルそのものも比較的安価に調製することが可能である。
態様1のポリグリセリン脂肪酸エステルにおける脂肪酸は、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、及びオレイン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種を、構成脂肪酸中、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上含有する。前記脂肪酸は重合度が低いポリグリセリンと結合するが、ポリ乳酸系樹脂の衝撃特性を向上させるために、得られるポリグリセリン脂肪酸エステルがポリ乳酸系樹脂中でいわゆる海島構造における適度な大きさの島を形成する観点から、エステル化率は30〜100%が好ましく、30〜90%がより好ましい。また、本発明においては、ポリ乳酸系樹脂の衝撃特性をより向上させる観点から、脂肪酸としては、以下の(1−a)〜(1−d)組から選ばれるものがより好ましい。
(1−a)カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、及びオレイン酸からなる群より選ばれる少なくとも3種
(1−b)ラウリン酸のみ
(1−c)パルミチン酸及び/又はステアリン酸
(1−d)オレイン酸のみ
(1−a)
(1−a)の脂肪酸としては、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、及びオレイン酸からなる群より選ばれる少なくとも3種を、構成脂肪酸中、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上含むものが挙げられる。なかでも、ポリ乳酸系樹脂の衝撃特性を向上させるために、得られるポリグリセリン脂肪酸エステルがポリ乳酸系樹脂中でいわゆる海島構造における適度な大きさの島を形成する観点から、(i)カプリル酸、カプリン酸、及びラウリン酸から選ばれる少なくとも1種、(ii)ミリスチン酸、パルミチン酸、及びステアリン酸から選ばれる少なくとも1種、(iii)オレイン酸、のうち少なくとも2つの群より構成され、かつ、脂肪酸が3種以上となることが好ましい。原料脂肪酸の構成割合は特に限定されないが、一例として、ステアリン酸10〜60mol%、オレイン酸10〜40mol%、ミリスチン酸1〜15mol%、パルミチン酸10〜70mol%、ラウリン酸5〜30mol%であることが好ましく、ステアリン酸15〜35mol%、オレイン酸10〜30mol%、ミリスチン酸1〜10mol%、パルミチン酸25〜45mol%、ラウリン酸5〜25mol%であることがより好ましい。かかる組み合わせの脂肪酸を用いる場合、前記と同様の観点から、エステル化率は好ましくは30〜90%、より好ましくは40〜80%、さらに好ましくは45〜80%である。
(1−b)
(1−b)の脂肪酸としては、ラウリン酸を構成脂肪酸中、好ましくは85質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上含むものが挙げられる。エステル化率は、ポリ乳酸系樹脂の衝撃特性を向上させるために、得られるポリグリセリン脂肪酸エステルがポリ乳酸系樹脂中でいわゆる海島構造における適度な大きさの島を形成する観点から、好ましくは40〜100%、より好ましくは50〜90%である。
(1−c)
(1−c)の脂肪酸としては、パルミチン酸及び/又はステアリン酸を構成脂肪酸中、好ましくは85質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上含むものが挙げられる。なかでも、ポリ乳酸系樹脂の衝撃特性を向上させるために、得られるポリグリセリン脂肪酸エステルがポリ乳酸系樹脂中でいわゆる海島構造における適度な大きさの島を形成する観点から、パルミチン酸とステアリン酸とを共に含有することが好ましい。原料脂肪酸の構成割合は特に限定されないが、パルミチン酸90〜10mol%、ステアリン酸10〜90mol%であることが好ましく、パルミチン酸70〜30mol%、ステアリン酸30〜70mol%であることがより好ましい。かかる脂肪酸を用いる場合、前記と同様の観点から、エステル化率は好ましくは30〜70%、より好ましくは35〜65%、さらに好ましくは35〜60%である。
(1−d)
(1−d)の脂肪酸としては、オレイン酸を構成脂肪酸中、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上含むものが挙げられる。エステル化率は、ポリ乳酸系樹脂の衝撃特性を向上させるために、得られるポリグリセリン脂肪酸エステルがポリ乳酸系樹脂中でいわゆる海島構造における適度な大きさの島を形成する観点から、好ましくは30〜70%、より好ましくは35〜65%、さらに好ましくは35〜60%である。
(2)態様2のポリグリセリン脂肪酸エステル
態様2のポリグリセリン脂肪酸エステルは、平均重合度が好ましくは5〜10のポリグリセリンを含有し、態様1と比べて平均重合度が高いことでポリグリセリン脂肪酸エステルの分子量が大きくなり、幅広いエステル化率でポリ乳酸系樹脂の衝撃特性を付与できることが特徴である。
態様2のポリグリセリン脂肪酸エステルにおける脂肪酸は、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、及びオレイン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種を、構成脂肪酸中、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上含む。前記脂肪酸は重合度が比較的低いポリグリセリンと結合することから、ポリ乳酸系樹脂の衝撃特性を向上させるために、得られるポリグリセリン脂肪酸エステルがポリ乳酸系樹脂中でいわゆる海島構造における適度な大きさの島を形成する観点から、エステル化率は好ましくは5〜90%、より好ましくは7〜90%、さらに好ましくは20〜90%である。また、本発明においては、ポリ乳酸系樹脂の衝撃特性をより向上させる観点から、以下の(2−a)〜(2−f)組から選ばれるものがより好ましい。
(2−a)(i)ラウリン酸及びパルミチン酸、(ii)ラウリン酸及びステアリン酸、又は(iii)ラウリン酸、パルミチン酸、及びステアリン酸
(2−b)オレイン酸のみ
(2−c)パルミチン酸及び/又はステアリン酸
(2−d)(i)パルミチン酸及びオレイン酸、(ii)ステアリン酸及びオレイン酸、又は(iii)パルミチン酸、ステアリン酸、及びオレイン酸
(2−e)カプリン酸のみ
(2−f)ラウリン酸のみ
(2−a)
(2−a)の脂肪酸としては、(i)ラウリン酸及びパルミチン酸、(ii)ラウリン酸及びステアリン酸、又は(iii)ラウリン酸、パルミチン酸、及びステアリン酸、を構成脂肪酸中、好ましくは85質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上含むものが挙げられる。なかでも、ポリ乳酸系樹脂の衝撃特性を向上させるために、得られるポリグリセリン脂肪酸エステルがポリ乳酸系樹脂中でいわゆる海島構造における適度な大きさの島を形成する観点から、(i)の場合、原料脂肪酸の構成割合は特に限定されないが、ラウリン酸90〜10mol%、パルミチン酸10〜90mol%であることが好ましく、ラウリン酸70〜30mol%、パルミチン酸30〜70mol%であることがより好ましい。(ii)の場合、原料脂肪酸の構成割合は特に限定されないが、ラウリン酸90〜10mol%、ステアリン酸10〜90mol%であることが好ましく、ラウリン酸70〜30mol%、ステアリン酸30〜70mol%であることがより好ましい。(iii)の場合、原料脂肪酸の構成割合は特に限定されないが、ステアリン酸30〜5mol%、パルミチン酸30〜5mol%、ラウリン酸40〜90mol%であることが好ましく、ステアリン酸30〜20mol%、パルミチン酸30〜20mol%、ラウリン酸40〜60mol%であることがより好ましい。かかる脂肪酸を用いる場合、前記と同様の観点から、エステル化率は5〜70%が好ましく、10〜65%がより好ましく、40〜65%がさらに好ましく、40〜60%がさらに好ましい。
(2−b)
(2−b)の脂肪酸としては、オレイン酸を構成脂肪酸中、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上含むものが挙げられる。エステル化率は、ポリ乳酸系樹脂の衝撃特性を向上させるために、得られるポリグリセリン脂肪酸エステルがポリ乳酸系樹脂中でいわゆる海島構造における適度な大きさの島を形成する観点から、好ましくは5〜70%、より好ましくは10〜65%、さらに好ましくは30〜65%、さらに好ましくは30〜60%である。
(2−c)
(2−c)の脂肪酸としては、パルミチン酸及び/又はステアリン酸を構成脂肪酸中、好ましくは85質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上含むものが挙げられる。なかでも、ポリ乳酸系樹脂の衝撃特性を向上させるために、得られるポリグリセリン脂肪酸エステルがポリ乳酸系樹脂中でいわゆる海島構造における適度な大きさの島を形成する観点から、パルミチン酸及びステアリン酸を共に含有することが好ましい。原料脂肪酸の構成割合は特に限定されないが、パルミチン酸90〜10mol%、ステアリン酸10〜90mol%であることが好ましく、パルミチン酸70〜30mol%、ステアリン酸30〜70mol%であることがより好ましい。かかる脂肪酸を用いる場合、前記と同様の観点から、エステル化率は好ましくは5〜60%、より好ましくは10〜50%、さらに好ましくは30〜50%、さらに好ましくは30〜45%である。
(2−d)
(2−d)の脂肪酸としては、(i)パルミチン酸及びオレイン酸、(ii)ステアリン酸及びオレイン酸、又は(iii)パルミチン酸、ステアリン酸、及びオレイン酸、を構成脂肪酸中、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上含むものが挙げられる。なかでも、ポリ乳酸系樹脂の衝撃特性を向上させるために、得られるポリグリセリン脂肪酸エステルがポリ乳酸系樹脂中でいわゆる海島構造における適度な大きさの島を形成する観点から、(i)の場合、原料脂肪酸の構成割合は特に限定されないが、パルミチン酸90〜10mol%、オレイン酸10〜90mol%であることが好ましく、パルミチン酸70〜30mol%、オレイン酸30〜70mol%であることがより好ましい。(ii)の場合、原料脂肪酸の構成割合は特に限定されないが、ステアリン酸90〜10mol%、オレイン酸10〜90mol%であることが好ましく、ステアリン酸70〜30mol%、オレイン酸30〜70mol%であることがより好ましい。(iii)の場合、原料脂肪酸の構成割合は特に限定されないが、ステアリン酸30〜5mol%、パルミチン酸30〜5mol%、オレイン酸40〜90mol%であることが好ましく、ステアリン酸30〜20mol%、パルミチン酸30〜20mol%、オレイン酸40〜60mol%であることがより好ましい。かかる脂肪酸を用いる場合、前記と同様の観点から、エステル化率は好ましくは5〜80%、より好ましくは20〜70%、さらに好ましくは30〜70%、さらに好ましくは30〜65%である。
(2−e)
(2−e)の脂肪酸としては、カプリン酸を構成脂肪酸中、好ましくは85質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上含むものが挙げられる。エステル化率は、ポリ乳酸系樹脂の衝撃特性を向上させるために、得られるポリグリセリン脂肪酸エステルがポリ乳酸系樹脂中でいわゆる海島構造における適度な大きさの島を形成する観点から、好ましくは50〜100%、より好ましくは50〜90%である。
(2−f)
(2−f)の脂肪酸としては、ラウリン酸を構成脂肪酸中、好ましくは85質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上含むものが挙げられる。エステル化率は、ポリ乳酸系樹脂の衝撃特性を向上させるために、得られるポリグリセリン脂肪酸エステルがポリ乳酸系樹脂中でいわゆる海島構造における適度な大きさの島を形成する観点から、好ましくは7〜70%、より好ましくは7〜60%である。
(3)態様3のポリグリセリン脂肪酸エステル
態様3のポリグリセリン脂肪酸エステルは、平均重合度が好ましくは11〜40のポリグリセリンを含有し、平均重合度が高いことでポリグリセリン脂肪酸エステルの分子量が大きくなり、ブリード特性も改善され、ポリ乳酸系樹脂の衝撃特性を付与できることが特徴である。
態様3のポリグリセリン脂肪酸エステルにおける脂肪酸は、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、及びオレイン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種を、構成脂肪酸中、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上含む。前記脂肪酸は重合度が高いポリグリセリンと結合することから、ポリ乳酸系樹脂の衝撃特性を向上させるために、得られるポリグリセリン脂肪酸エステルがポリ乳酸系樹脂中でいわゆる海島構造における適度な大きさの島を形成する観点から、エステル化率は好ましくは5〜80%、より好ましくは30〜75%、さらに好ましくは30〜70%である。また、本発明においては、ポリ乳酸系樹脂の衝撃特性をより向上させる観点から、以下の(3−a)〜(3−c)組から選ばれるものがより好ましい。
(3−a)カプリル酸、カプリン酸、及びラウリン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種
(3−b)ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、及びオレイン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種
(3−c)ラウリン酸、パルミチン酸、及びステアリン酸
(3−a)
(3−a)の脂肪酸としては、カプリル酸、カプリン酸、及びラウリン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種を、構成脂肪酸中、好ましくは85質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上含むものが挙げられる。ポリ乳酸系樹脂の衝撃特性を向上させるために、得られるポリグリセリン脂肪酸エステルがポリ乳酸系樹脂中でいわゆる海島構造における適度な大きさの島を形成する観点から、エステル化率は好ましくは30〜80%、より好ましくは30〜75%、さらに好ましくは50〜75%、さらに好ましくは50〜70%である。
(3−b)
(3−b)の脂肪酸としては、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、及びオレイン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種を、構成脂肪酸中、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上含むものが挙げられる。ポリ乳酸系樹脂の衝撃特性を向上させるために、得られるポリグリセリン脂肪酸エステルがポリ乳酸系樹脂中でいわゆる海島構造における適度な大きさの島を形成する観点から、エステル化率は好ましくは5〜60%、より好ましくは30〜50%、さらに好ましくは30〜45%である。
(3−c)
(3−c)の脂肪酸としては、ラウリン酸、パルミチン酸、及びステアリン酸を、構成脂肪酸中、好ましくは85質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上含むものが挙げられる。ポリ乳酸系樹脂の衝撃特性を向上させるために、得られるポリグリセリン脂肪酸エステルがポリ乳酸系樹脂中でいわゆる海島構造における適度な大きさの島を形成する観点から、エステル化率は好ましくは20〜60%、より好ましくは20〜50%である。
なお、本発明においては、前記脂肪酸以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、他の脂肪酸を含有することができる。他の脂肪酸としては、炭素数6〜22の、飽和あるいは不飽和、直鎖あるいは分岐の脂肪酸がある。即ち、カプロン酸、ノナデカン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸などの飽和脂肪酸やパルミトレイン酸、エライジン酸、ガドレイン酸、エルカ酸、ネルボン酸、リノール酸、エイコサジエン酸、ドコサジエン酸、リノレン酸、ステアリドン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸などの不飽和脂肪酸が挙げられる。さらに、イソステアリン酸、リシノレイン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、9−ヒドロキシステアリン酸、10−ヒドロキシステアリン酸、水素添加ヒマシ油脂肪酸(12−ヒドロキシステアリン酸の他に少量のステアリン酸及びパルミチン酸を含有する脂肪酸)等が挙げられる。
ポリグリセリンと脂肪酸とのエステル化反応は、一般的な合成法であれば特に限定されないが、例えば、ポリグリセリンと脂肪酸を、酸触媒(リン酸、p−トルエンスルホン酸等)もしくはアルカリ触媒(苛性ソーダ等)存在下、又は触媒を用いずに、水を除去しながら、好ましくは100〜300℃、より好ましくは120〜260℃の範囲で加熱することにより行うことができる。また、反応は不活性ガスの存在下で行なってもよい。このようにして得られたエステルは目的に応じて精製しても良い。精製には減圧下での蒸留、分子蒸留、水蒸気蒸留といった蒸留技術の他、有機溶剤による抽出、分画や合成吸着剤、ゲル濾過剤を充填したカラムによるクロマト分離も利用できる。
かくして、本発明におけるポリグリセリン脂肪酸エステルが得られる。本発明で規定するポリグリセリン脂肪酸エステルの耐衝撃性付与剤における含有量は、特に限定されないが、80質量%以上が好ましく、85質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、95質量%以上がさらに好ましく、99質量%以上がさらに好ましく、実質的に100質量%がよりさらに好ましい。
本発明はまた、前記本発明の耐衝撃性付与剤とポリ乳酸系樹脂を含有するポリ乳酸系樹脂組成物を提供する。
本発明におけるポリ乳酸系樹脂は、分子中に乳酸単位〔CHCH(OH)COOH〕を含む脂肪族ポリエステル樹脂であり、分子中に該乳酸単位を少なくとも50mol%、好ましくは60mol%以上、より好ましくは70mol%以上含む脂肪族ポリエステル樹脂である。
具体的には、
(1)ポリ乳酸、
(2)乳酸−他の脂肪族ヒドロキシカルボン酸コポリマー、
(3)多官能多糖類及び乳酸単位を含むポリ乳酸系樹脂、
(4)脂肪族多価カルボン酸単位、脂肪族多価アルコール単位、及び乳酸単位を含むポリ乳酸系樹脂、ならびに
(5)(1)〜(4)の混合物
が挙げられる。
(1)ポリ乳酸
ポリ乳酸とは、実質的にL−乳酸及び/又はD−乳酸がエステル結合で重合している高分子をいう。ここで「実質的」にとは、本発明の効果を損なわない程度範囲で、L−乳酸又はD−乳酸以外の他のモノマー単位を含んでいても良いという意味である。本発明に用いるポリ乳酸としては、構成単位がL−乳酸のみからなるポリ(L−乳酸)、D−乳酸のみからなるポリ(D−乳酸)、及びL−乳酸単位とD−乳酸単位とが種々の割合で存在するポリ(DL−乳酸)等が挙げられる。なお、本明細書において、単に乳酸という場合は、特に断りがない限り、L−体とD−体の両者を意味する。
ポリ乳酸の合成方法としては、L−乳酸、D−乳酸、又はDL−乳酸を直接脱水重縮合する方法、これら各乳酸の環状2量体であるラクチドを開環重合する方法等が挙げられる。また、何れの重合方法においても、重合の途中段階で鎖延長剤を添加して分子量を上げても良い。また開環重合は、高級アルコール、ヒドロキシカルボン酸等の水酸基を有する化合物の存在下で行ってもよく、何れの方法によって製造されたものでもよい。
ポリ乳酸は、前記方法に従って合成したものを用いてもよいが、入手のし易さから市販されているものを用いてもよい。具体的には、Nature Works社製のIngeo(登録商標)、トヨタ自動車社製のU’z(登録商標)、UCC社製のTONE(登録商標)、島津製作所社製のラクティ(登録商標)、ユニチカ社製のテラマック(登録商標)、三井化学社製のレイシア、カネボウ合繊社製ラクトロン(登録商標)、三菱樹脂社製のエコロージュ(登録商標)、クラレ社製のプラスターチ(登録商標)、東セロ社製のパルグリーン(登録商標)等が挙げられる。
(2)乳酸−他の脂肪族ヒドロキシカルボン酸コポリマー
乳酸−他の脂肪族ヒドロキシカルボン酸コポリマーとは、乳酸と他の脂肪族ヒドロキシカルボン酸との共重合体のことである。乳酸については前記の通りである。一方、脂肪族ヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、5−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸等が挙げられる。
乳酸−他の脂肪族ヒドロキシカルボン酸コポリマーの製造方法としては、上記各乳酸と上記脂肪族ヒドロキシカルボン酸を脱水重縮合する方法、上記各乳酸の環状2量体であるラクチドと上記脂肪族ヒドロキシカルボン酸の環状体を開環共重合する方法等が挙げられる。何れの方法によって製造されたものでもよい。乳酸−他の脂肪族ヒドロキシカルボン酸コポリマーに含まれる乳酸モノマーの量は少なくとも50mol%であることが好ましい。
(3)多官能多糖類及び乳酸単位を含むポリ乳酸系樹脂
多官能多糖類及び乳酸単位を含むポリ乳酸系樹脂における多官能多糖類としては、例えば、セルロース、酢酸セルロース、硝酸セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、セルロイド、ビスコースレーヨン、再生セルロース、セロハン、キュプラ、銅アンモニアレーヨン、キュプロファン、ベンベルグ、ヘミセルロース、デンプン、アクロペクチン、デキストリン、デキストラン、グリコーゲン、ペクチン、キチン、キトサン、アラビアガム、グァーガム、ローカストビーンガム、アカシアガム等、及びこれらの混合物、ならびに、これらの誘導体が挙げられる。これらの内、酢酸セルロース、及びエチルセルロースが好ましい。
多官能多糖類及び乳酸単位を含むポリ乳酸系樹脂の製造方法としては、上記多官能多糖類と、上記ポリ乳酸又は乳酸−他の脂肪族ヒドロキシカルボン酸コポリマー等を反応させる方法、上記多官能多糖類と、上記各乳酸及び環状エステル類等を反応させる方法等が挙げられる。何れの方法によって製造されたものでもよい。前記ポリ乳酸系樹脂に含まれる乳酸単位の量は少なくとも50mol%であることが望ましい。
(4)脂肪族多価カルボン酸単位、脂肪族多価アルコール単位、及び乳酸単位を含むポリ乳酸系樹脂
脂肪族多価カルボン酸単位、脂肪族多価アルコール単位、及び乳酸単位を含むポリ乳酸系樹脂における脂肪族多価カルボン酸単位としては、例えば、シュウ酸、コハク酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸等、及びこれらの無水物が挙げられる。これらは、酸無水物との混合物であってもよい。また、脂肪族多価アルコール単位としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、テトラメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。
脂肪族多価カルボン酸単位、脂肪族多価アルコール単位、及び乳酸単位を含むポリ乳酸系樹脂の製造方法としては、上記脂肪族多価カルボン酸単位及び上記脂肪族多価アルコール単位と、上記ポリ乳酸又は乳酸−他の脂肪族ヒドロキシカルボン酸コポリマー等を反応する方法、上記脂肪族多価カルボン酸単位及び上記脂肪族多価アルコール単位と、上記各乳酸及び環状エステル類等を反応する方法等が挙げられる。何れの方法によって製造されたものでもよい。前記ポリ乳酸系樹脂に含まれる乳酸単位の量は少なくとも50モル%であることが好ましい。
(5)(1)〜(4)の混合物
(1)〜(4)の混合物としては、前記(1)〜(4)のポリ乳酸系樹脂を含むものであれば、その構成割合も限定されない。
これらの(1)〜(5)のポリ乳酸系樹脂群のうち、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物に用いる場合にはどの樹脂を利用しても良く、特に限定されるものではないが、熱的特性及び透明性の維持という観点から、(1)ポリ乳酸及び(2)乳酸−他の脂肪族ヒドロキシカルボン酸コポリマーが好ましく、(1)ポリ乳酸がより好ましい。
ポリ乳酸系樹脂の分子量としては特に限定されるものではなく、目的とする用途に応じて適宜選択すれば良い。樹脂の一般的な考え方として、分子量が高ければ高いほど物性も高くなるが成形加工が困難になり、一方で分子量が低いと成形加工は容易になるものの、物性に乏しいものとなる。かかる点を考慮すると、本発明におけるポリ乳酸系樹脂の分子量としては、1万〜100万程度の範囲が好ましく、5万〜50万がより好ましく、10万〜30万がさらに好ましい。なお、本明細書における樹脂の分子量とは、特に断りがない限り、重量平均分子量を指すこととする。
本発明の組成物には、前記ポリ乳酸系樹脂以外に、他の生分解性樹脂が本発明の効果を損なわない範囲で適宜含有されていてもよい。他の生分解性樹脂としては、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリエチレンテレフタレートアジペート、ポリブチレンテレフタレートアジペート等が挙げられる。前記ポリ乳酸系樹脂の含有量は、特に限定されないが、組成物を構成する樹脂の総質量中、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、実質的に100質量%であることがさらに好ましい。
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物中、ポリグリセリン脂肪酸エステルとポリ乳酸系樹脂の含有量は、目的とする用途に応じて適宜選択すれば良く、特に限定されるものではないが、好ましくはポリ乳酸系樹脂が99.9〜90質量%、ポリグリセリン脂肪酸エステルが0.1〜10質量%の割合である。耐衝撃性、成形加工性の観点からは、ポリ乳酸系樹脂が99.5〜95質量%、ポリグリセリン脂肪酸エステルが0.5〜5質量%であることがより好ましく、ポリ乳酸系樹脂が99.0〜97.0質量%、ポリグリセリン脂肪酸エステルが1.0〜3.0質量%であることがより好ましい。
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて以下の添加物を配合してもよい。添加物としては、アンチブロッキング剤、滑剤、着色剤、帯電防止剤、防曇剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、酸化防止剤、着色防止剤、抗菌剤、安定剤、静電剤、結晶核剤、充填剤、顔料、難燃剤、各種フィラー、分散剤等が挙げられる。
アンチブロッキング剤としては、シリカ、炭酸カルシウム、チタニア、マイカ、タルク等が挙げられる。
滑剤としては、流動パラフィン、ポリエチレンワックス等の炭化水素類、ステアリン酸等の脂肪酸類、オキシ脂肪酸類、脂肪酸アミド類、アルキレンビス脂肪酸アミド類、脂肪酸低級アルコールエステル類、脂肪酸多価アルコールエステル類、脂肪酸ポリグリコールエステル類、脂肪族アルコール類、多価アルコール類、ポリグリコール類、ステアリン酸カルシウム等の金属石鹸類等が挙げられる。
帯電防止剤としては、脂肪酸塩類、高級アルコール硫酸エステル類、液体脂肪油硫酸エステル塩類、脂肪族アミン及び脂肪族アマイド硫酸塩類、脂肪族アルコ−ルリン酸エステル塩類、二塩基性脂肪酸エステルのスルホン酸塩類、脂肪族アミドスルホン酸塩類、アルキルアリルスルホン酸塩類、脂肪族アミン塩類、第4級アンモニウム塩類、アルキルピリジウム塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルエステル類、ソルビタンアルキルエステル類、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル類、イミダゾリン誘導体、高級アルキルアミン類等が挙げられる。
防曇剤としては、グリセリンモノステアレート等のグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレート等のソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル等が挙げられる
紫外線吸収剤としては、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール類や、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン類、サリチル酸p−tert−ブチルフェニル等のサリチル酸誘導体等が挙げられる。
熱安定剤、酸化防止剤、及び着色防止剤としては、ペンタエリストールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]等のヒンダードフェノール系化合物、パラメトキシフェノール等のフェノール系化合物、トリフェニルホスファイト等のホスファイト系化合物、2−メルカプトベンズイミダゾール等の硫黄系化合物、フェニルナフチルアミン等のアミン系化合物等が挙げられる。
充填剤としては、硫酸バリウム、酸化チタン、カオリン、カーボンブラック等が挙げられる。
難燃剤としては、デカブロモジフェニルエーテル等のハロゲン系化合物、三酸化アンチモン等のアンチモン系化合物等が挙げられる。
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物は、ポリ乳酸系樹脂とポリ乳酸系樹脂用耐衝撃性付与剤を含有するものであれば特に限定なく調製することができる。例えば、ポリ乳酸系樹脂及びポリ乳酸系樹脂用耐衝撃性付与剤、必要により他の添加剤を含む原料を、高速攪拌機又は低速攪拌機等を用いて均一に混合した後、十分な混練能力を有する一軸あるいは多軸の押出機を用いて加熱溶融混練して、調製することが出来る。
加熱溶融混合の方法については特に限定されるものではないが、工業的には連続的に処理できる方法が好ましい。具体的には、例えば、上記のポリ乳酸系樹脂とポリ乳酸系樹脂用耐衝撃性付与剤を所定の割合で混合したものを一軸混練押出機や二軸混練押出機などで溶融し、直ちに成形して成形品とすることができる。Tダイが装着された押出機を用いることにより、ポリ乳酸系樹脂、及びポリ乳酸系樹脂用耐衝撃性付与剤、必要により他の添加剤を溶融混練したものを、そのまま押出してシート・フィルム等に成形することができる。なお、溶融混練したものをそのまま成形した場合、通常、非晶状態の成形体が得られるが、該成形体に熱処理を施すことによって結晶化を促進させて、結晶化させた成形体も得ることができる。
また、シート・フィルム等の成形体には、必要に応じて、シート表面に帯電防止性、防曇性、粘着性、ガスバリヤー性、密着性、易接着性等の機能を有する層を形成することができる。これらの層を形成する方法としては、塗布法、ラミネート法等が挙げられる。
塗布法としては、スプレーコート方式、エアーナイフ方式、リバースコート方式、キスコート方式、グラビアコート方式、マイヤーバー方式、ロールブラッシュ方式等の公知の方法が挙げられ、例えば、シートの片面あるいは両面に帯電防止剤等を含む塗工液を、前記方法に従って、塗布、乾燥することによって帯電防止層を形成することができる。ラミネート法としては、押出ラミネート法、ドライラミネート法等の公知の方法を用いることができ、前記機能を有するフィルムを積層することができる。
粘着層を形成する方法としては、例えば、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等のアクリル酸アルキルエステルに対し、他のビニルモノマー類を共重合して得られたコポリマー等のアクリル系樹脂を含む塗布液を、シートに塗布、乾燥する方法が挙げられる。塗布液は、上記コポリマーの有機溶剤溶液でも良いし、水エマルジョンでも良い。
かくして得られる、本発明の成形体は、特定の脂肪酸を構成脂肪酸とするポリグリセリン脂肪酸エステルが配合されているため可塑性に優れ、熱的特性を維持したまま衝撃特性及び成形加工性を向上させることができる。また、本発明の成形体は、ポリグリセリン脂肪酸エステルが良好に分散しているため、JIS規格 K7136に準拠した曇り度(Haze)が好ましくは5%未満である。
以下、本発明を実施例及び比較例に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施例等によりなんら限定されるものではない。
〔ポリグリセリン脂肪酸エステルのエステル化率〕
ポリグリセリン脂肪酸エステルのエステル化率は、(構成脂肪酸のmol数/構成ポリグリセリンの総水酸基mol数)×100(%)の式に基づいて計算される。
〔ポリグリセリンの平均重合度〕
ポリグリセリンの重合度は、以下の式に基づいて、水酸基価より決定される。
OHV=56110(n+2)/(74n+18)
OHV:ポリグリセリンの水酸基価
n :ポリグリセリンの重合度
ポリグリセリン脂肪酸エステルの製造例1
表1〜10、12〜17に示すポリグリセリンと構成脂肪酸を混合したものとを、不活性ガス中、リン酸、p−トルエンスルホン酸、又は苛性ソーダの存在下で、120〜260℃で加熱し反応水を系外に除去することによって、ポリグリセリン脂肪酸エステルを得た。
実施例1〜143及び比較例1〜14
表1〜18に示す量のポリ乳酸(実施例1〜81、比較例1〜10はトヨタ自動車社製U’z S−17を使用、実施例82〜143、比較例11〜14はNature Works社製のIngeo2002Dを使用)、及び表1〜18に示す種類と量のポリグリセリン脂肪酸エステル又はポリ乳酸系樹脂用改質剤をドライブレンドし、ストランドダイを装着した二軸押出機を使ってシリンダ温度200℃で溶融混練を行った。得られたストランドを水冷したのち、ペレタイザーでペレット化することで各種ポリ乳酸系樹脂組成物のペレットを得た。得られたペレットは、除湿型乾燥器を使い、50℃で24時間乾燥させた。なお、エステル化率が45%を超える、実施例14、15、22、29、30、36〜38、45〜49、59〜65、68、69、71〜74、80〜84、88〜92、94、96〜99、103〜106、110〜113、115〜119、125〜127、132〜141、143は、参考例である。
なお、表1〜18における原料は以下の通りであり、脂肪酸の使用量は、便宜上、用いた原料のmol%で表記した。例えば、実施例1における構成脂肪酸は、C16とC18を50mol%ずつから構成される。即ち、C16とC18を等モル量用いたが、各原料には不純物としての他の脂肪酸が存在するため、C16とC18の正確な合計量(パルミチン酸とステアリン酸の正確な合計量)は、構成脂肪酸中、99質量%と計算される(C16の不純物の多くはC18、C18の不純物の多くはC16)。同様に、実施例2における構成脂肪酸がC18を100mol%というのは、原料脂肪酸としてC18のみを使用した例であり、原料中の他の脂肪酸(不純物)を考慮すると、C18の正確な量(ステアリン酸の正確な量)は、構成脂肪酸中、97質量%である。
C8:カプリル酸、花王社製、純度99質量%
C10:カプリン酸、花王社製、純度99質量%
C12:ラウリン酸、花王社製、純度99質量%
C14:ミリスチン酸、花王社製、純度99質量%
C16:パルミチン酸、花王社製、純度96質量%
C18:ステアリン酸、花王社製、純度97質量%
C18F−1:オレイン酸、花王社製、純度90質量%
DAIFATTY−101:アジピン酸エステル、大八化学工業社製
プラメートPD−150:ポリ乳酸/ジオール・ジカルボン共重合体、DIC社製
ポエムG−002:酢酸モノグリセライド、理研ビタミン製
PARAROID BPM−500:ROHM and HAAS社製
得られたペレットを、射出成形機(住友重機械工業社製、SE−18S)を用いて、シリンダ温度200℃、金型温度30℃で引張試験片(JIS K7113の附属書1に記載の1(1/2)号形の小形試験片:厚み2mm、平行部分の長さ30mm、平行部分幅5mm、両端の幅10mm)、短冊形試験片(4×10×80mm)及び小形角板試験片(1×50×55mm)の作製を行った。各試験片は、試験前に温度23℃、相対湿度50%で48時間以上状態調節を行った。
得られた試験片を用いて、以下の試験例1〜5の方法に従って評価を行なった。結果を表1〜18に示す。また、試験例5の試験結果は図1〜3に示す。
<評価1>〔成形加工適性〕(実施例1〜143、比較例1〜14)
ポリ乳酸系樹脂組成物調製時や試験片作製時のポリ乳酸系樹脂組成物の成形加工状況を観察し、成形加工適性として、A:ブリード特性、B:射出成形特性、C:成形品の出来、の3つの項目によりポリ乳酸系樹脂組成物の評価を行った。なお、この成形加工適性はポリ乳酸単独の場合の評価は、ブリード特性が4、射出成形特性が5、成形品出来が4であり、同等ほど好ましく、製品化という観点からは、ブリード特性は3以上、射出成形特性は3以上、成形品出来は3以上であることが好ましい。
A:ブリード特性
二軸押出機を使ったポリ乳酸系樹脂組成物の調製において、押出時の樹脂ストランドを目視により観察し、ブリード特性を確認した。樹脂ストランドは水冷により冷却されるため、ポリグリセリン脂肪酸エステルがブリードしていれば水面に浮かび、これによりブリード特性を判別することができる。
〔ブリード特性の評価基準〕
4:ブリードアウトが無いもの
3:ブリードアウトが僅かにあるもの
2:ブリードアウトがある程度あるもの
1:ブリードアウトが多量にあるもの
B:射出成形特性
射出成形の際の成形状況を観察し、以下の評価基準に従って射出成形特性を評価した。一般的にプラスチックの射出成形方法としては、材料を射出成形機内部で溶融させながら、金型に流し込む分を計量し、計量した材料を金型に流し込む。その後、金型内で材料を冷却・固化させて成形品を得る。バリやヒケの無い外観のきれいな成形品を得るためには、計量時間・射出速度・保圧等の成形条件を調整する必要がある。射出成形特性の悪い材料は、これらの成形条件の調整に多大な労力を要する。成形条件を決定するまでに労力を要するものほど、射出成形特性は悪いとした。
〔射出成形特性の評価基準〕
5:成形条件の設定が容易なもの
4:成形条件の設定に若干労力を要するが、成形が容易なもの
3:成形条件の設定にある程度の労力を要するが、成形が可能なもの
2:成形条件の設定に多大な労力を要し、成形が困難なもの
1:成形できないもの
C:成形品の出来
射出成形によって得られた衝撃試験片を目視により観察を行い、以下の評価基準に従って成形品の出来を評価した。
〔成形品の出来の評価基準〕
4:ポリ乳酸単独の成形品と同等かそれ以上のもの
3:成形品表面にわずかに荒れ、又はわずかなヒケ等が観察されるもの
2:成形品表面にある程度の荒れ、又はある程度のヒケ等が観察されるもの
1:成形品表面にかなりの荒れ、又はかなりのヒケが観察されるもの
<評価2-1> 〔衝撃特性 アイゾット衝撃試験〕(実施例1〜81、比較例1〜10)
短冊形試験片を用いて、アイゾット衝撃試験(JIS K7110:プラスチック−アイゾット衝撃強さの試験方法)により評価を行った。衝撃試験機(CEAST社製、6546、2Jハンマー)を用い、ノッチ無しで、打撃方向をエッジワイズで試験を行った。ポリ乳酸のみの場合のアイゾット衝撃値を100%とした場合の、相対衝撃値を算出し、衝撃特性を評価した。相対衝撃値の数値が大きいほど衝撃特性に優れていることを意味し、105%以上であればより好ましい。
<評価2-2> 〔衝撃特性 デュポン式衝撃試験〕(実施例82〜143、比較例11〜14)
小形角板試験片を用いて、衝撃特性を評価した。具体的には以下の手順で評価した。使用した機器はデュポン式落下衝撃試験機(安田精機製作所製No.517、落下高さ最大100cm、ピッチ5cm)である。直径1インチの撃ち型と、直径1インチの受け台を使用した。まず予備試験を行い、50%衝撃破壊エネルギー(E50(J))を推定し、その後、予備試験の結果に基づいて本番試験を行い、E50(J)を求めた。E50(J)の数値が大きいほど衝撃特性に優れていることを意味する。なお、予備試験の方法、本番試験の方法、及びE50(J)の算出方法は、JIS K7211−1(2006)の「7.6.2 予備試験」、「7.6.3 試験手順」、及び「7.6.4 結果の表示」にそれぞれ記載されている方法に従った。
<評価3>〔可塑性〕(実施例1〜81、比較例1〜10)
可塑性は、引張試験(JIS K7161:プラスチック−引張特性の試験方法)により、引張伸度を算出することによって評価を行った。具体的には、万能材料試験機(インストロンジャパン社製、model5582)を用い、射出成形により作製した引張試験片を、引張速度5mm/min、つかみ具間距離55mmの条件で試験を行い、降伏を伴わずに破壊する場合は、引張破壊ひずみ、降伏後に破壊する場合は、引張破壊時呼びひずみの測定値をもって引張伸度(%)とした。引張伸度が大きいほど可塑性に優れていることを意味する。引張伸度は以下の式により算出した。
引張伸度(引張破壊ひずみ、又は、引張破壊時呼びひずみ)(%)=試験片が破断するまでのつかみ具間距離の増加量(mm)/55(mm)×100
<評価4>〔ガラス転移点(Tg)の測定〕(実施例1〜81、比較例1〜10)
ガラス転移点(Tg)は、JIS K7121(プラスチックの転移温度測定方法)に準拠し、示差走査熱量計(リガク社製、XRD−DSCII)を用い、昇温速度20℃/minで測定を行った。
<評価5>〔モルフォロジー評価〕(比較例1、実施例12、実施例27)
環境制御型電子顕微鏡(FEI社製、Quanta200、以下SEMとする)を使い、衝撃試験後の試験片の破断面の観察を行った。
以上の結果より、以下のことが確認できる。なお、表1、12〜16は態様1のポリグリセリン脂肪酸エステル、表2〜6、17は態様2のポリグリセリン脂肪酸エステル、表7〜9は態様3のポリグリセリン脂肪酸エステルについての実施例の試験結果を示したものである。
表2〜6より、態様2のポリグリセリン脂肪酸エステルの構造としては、同一のポリグリセリン重合度、脂肪酸種の場合、エステル化率が高いほど、ポリ乳酸単品よりも衝撃特性が高いことがわかる。具体的には、実施例9〜15を比較すると(これらは全て、平均重合度が10のポリグリセリンと、ステアリン酸とパルミチン酸が等量(50:50)の脂肪酸とのポリグリセリン脂肪酸エステルであって、エステル化率だけが異なるポリグリセリン脂肪酸エステルを3質量%ポリ乳酸に添加したものである)、エステル化率が60.0%の実施例15は衝撃特性が高い。また、エステル化率が30.0〜50.0%の実施例11〜14は成形加工適性、衝撃特性の双方が優れている。成形加工適性、衝撃特性の双方を両立させるためには適度なエステル化率が必要である。
オレイン酸、ラウリン酸の場合でもエステル化率が高いほど、ポリ乳酸単品よりも衝撃特性が高いことがわかる。具体的には、実施例20〜22(ラウリン酸の場合)を比較すると、エステル化率が高い実施例22の方が実施例20、21よりも衝撃特性が高いことがわかる。対して、実施例20、21は、成形加工適性、衝撃特性の両立が可能である。また、実施例23〜30(オレイン酸の場合)からも同様の事象が認められ、エステル化率が30.0〜65.0%の実施例26〜29は成形加工適性、衝撃特性の両立が可能である。
ポリグリセリン脂肪酸エステルの構造のうち、構成する脂肪酸としては、ステアリン酸とパルミチン酸を組み合わせたものの方が、ステアリン酸又はパルミチン酸を単独で用いるよりも、さらに衝撃特性に優れ、より好ましいことがわかる。具体的には、実施例5、7と、実施例12とを比較すると、パルミチン酸又はステアリン酸のみで構成されたポリグリセリン脂肪酸エステルよりも、パルミチン酸とステアリン酸とを組み合わせたポリグリセリン脂肪酸エステルの方が、成形加工適性はより優れており、さらに衝撃特性もより優れていることが確認できる。
実施例27と実施例34、39を比較すれば、オレイン酸だけを用いた実施例27でも衝撃特性は向上するが、ステアリン酸を併用した実施例39、もしくはステアリン酸とパルミチン酸を併用した実施例34は、さらに衝撃特性が高いことがわかる。更には実施例34、39は成形加工適性が良好である。
実施例21と実施例41、43においては、ラウリン酸のみを用いる実施例21でも十分に優れた衝撃特性を示すものの、ラウリン酸とステアリン酸とを組み合わせた実施例41、及びラウリン酸とパルミチン酸とステアリン酸とを組み合わせた実施例43の方が、ラウリン酸を単独で用いた場合よりも、さらに衝撃特性に優れることが確認できる。
また、表7〜9の結果より、態様2の結果と同様で、態様3のポリグリセリン脂肪酸エステルの構造としては、同一のポリグリセリン重合度、脂肪酸種の場合、エステル化率が高いほど、ポリ乳酸単品よりも衝撃特性が高いことがわかる。具体的には、実施例56〜60を比較すると(これらは全て、平均重合度が38のポリグリセリンと、ステアリン酸とパルミチン酸が等量(50:50)の脂肪酸とのポリグリセリン脂肪酸エステルであって、エステル化率だけが異なるポリグリセリン脂肪酸エステルを3質量%ポリ乳酸に添加したものである)、エステル化率が60.0%の実施例60は衝撃特性が高い。また、エステル化率が30.0〜50.0%の実施例57〜59は成形加工適性、衝撃特性の双方が優れている。成形加工適性、衝撃特性の双方を両立させるためには適度なエステル化率が必要である。
また、ポリグリセリン脂肪酸エステルの構造のうち、グリセリン部分はモノグリセリンではなく、ポリグリセリンである方が衝撃特性に優れていることがわかる。具体的には実施例1、4、12、58と比較例2とを対比すると(これらは脂肪酸組成とエステル化率が同じでかつ、ポリ乳酸系樹脂へのエステル添加量が同じ)、ポリグリセリンの重合度が高い実施例1、4、12、58は衝撃特性が優れているのに対し、モノグリセリンである比較例2では衝撃特性がポリ乳酸単品よりも劣っていることが分かる。
本発明のポリグリセリン脂肪酸エステル以外の添加剤を使用した場合の特性を比較例5〜10に示した。比較例5〜10で用いた添加剤は既に上市された製品であるが、比較例5〜10において、成形加工適性には優れるものの、衝撃特性が高いものはないことがわかる。加えて本発明以外の脂肪酸エステルに該当する比較例5、6、10では、ガラス転移温度が著しく低下しており、衝撃特性に劣るだけでなく、熱的特性に問題があることもわかる。
さらに、表12〜18の結果より、以下のことが分かる。比較例12、13、14で用いた添加剤は既に上市された製品であるが、比較例12、14において、成形加工適性には優れるものの、添加量が多い場合でも衝撃特性が高いものはないことがわかる。比較例13においては、衝撃特性は優れているものの、成形加工適性が低い。対して、本発明のポリグリセリン脂肪酸エステルでは、成形加工適性が優れ、飛躍的に衝撃特性を向上させることが確認できる。ポリグリセリン脂肪酸エステルの構造としては、同一のポリグリセリン重合度、脂肪酸種の場合、エステル化率が高いほど、ポリ乳酸単品よりも衝撃特性が高いことがわかる。具体的には、実施例85〜92をそれぞれ比較すると(ステアリン酸とパルミチン酸が等量(50:50)の場合)、エステル化率が高いほど衝撃特性が高い。実施例86〜91は、成形加工適性、衝撃特性の双方が優れており、成形加工適性、衝撃特性の双方を両立させるためには適度なエステル化率が必要であることが分かる。また、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸を組み合わせて用い、エステル化率が40.0〜80.0%の実施例109〜111も、成形加工適性、衝撃特性の双方が優れている。
また、図1にポリ乳酸(比較例1)のSEM写真、図2に実施例12、図3に実施例27のSEM写真を示したが、図1と図2及び3とを比較すれば明らかなように、ポリグリセリン脂肪酸エステルがポリ乳酸中で島を形成して微分散し、いわゆる海島構造となっていることが確認できる。
本発明のポリ乳酸系樹脂用耐衝撃性付与剤を含有するポリ乳酸系樹脂組成物は、耐衝撃特性に優れることから、例えば、農業用資材、食品包装資材、その他の包装資材等に好適に用いられる。

Claims (14)

  1. カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、及びオレイン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種を構成脂肪酸中80質量%以上含む脂肪酸と平均重合度2〜4のポリグリセリンにより構成され、エステル化率が30〜45%であるポリグリセリン脂肪酸エステルを含有する、ポリ乳酸系樹脂用耐衝撃性付与剤。
  2. 前記脂肪酸がカプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、及びオレイン酸からなる群より選ばれる少なくとも3種を構成脂肪酸中80質量%以上含、請求項記載のポリ乳酸系樹脂用耐衝撃性付与剤。
  3. 前記脂肪酸がラウリン酸を構成脂肪酸中85質量%以上含み、前記エステル化率が40〜45%である、請求項記載のポリ乳酸系樹脂用耐衝撃性付与剤。
  4. 前記脂肪酸がパルミチン酸及び/又はステアリン酸を構成脂肪酸中85質量%以上含、請求項記載のポリ乳酸系樹脂用耐衝撃性付与剤。
  5. 前記脂肪酸がオレイン酸を構成脂肪酸中80質量%以上含、請求項記載のポリ乳酸系樹脂用耐衝撃性付与剤。
  6. カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、及びオレイン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種を構成脂肪酸中80質量%以上含む脂肪酸と平均重合度5〜10のポリグリセリンにより構成され、エステル化率が5〜45%であるポリグリセリン脂肪酸エステルを含有する、ポリ乳酸系樹脂用耐衝撃性付与剤。
  7. 前記脂肪酸が(i)ラウリン酸及びパルミチン酸、(ii)ラウリン酸及びステアリン酸、又は(iii)ラウリン酸、パルミチン酸、及びステアリン酸、を構成脂肪酸中85質量%以上含、請求項記載のポリ乳酸系樹脂用耐衝撃性付与剤。
  8. 前記脂肪酸がオレイン酸を構成脂肪酸中80質量%以上含、請求項記載のポリ乳酸系樹脂用耐衝撃性付与剤。
  9. 前記脂肪酸がパルミチン酸及び/又はステアリン酸を構成脂肪酸中85質量%以上含、請求項記載のポリ乳酸系樹脂用耐衝撃性付与剤。
  10. 前記脂肪酸が(i)パルミチン酸及びオレイン酸、(ii)ステアリン酸及びオレイン酸、又は(iii)パルミチン酸、ステアリン酸、及びオレイン酸、を構成脂肪酸中80質量%以上含、請求項記載のポリ乳酸系樹脂用耐衝撃性付与剤。
  11. カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、及びオレイン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種を構成脂肪酸中80質量%以上含む脂肪酸と平均重合度11〜40のポリグリセリンにより構成され、エステル化率が5〜40%であるポリグリセリン脂肪酸エステルを含有する、ポリ乳酸系樹脂用耐衝撃性付与剤。
  12. 前記脂肪酸がカプリル酸、カプリン酸、及びラウリン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種を構成脂肪酸中85質量%以上含み、前記エステル化率が30〜40%である、請求項11記載のポリ乳酸系樹脂用耐衝撃性付与剤。
  13. 前記脂肪酸がミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、及びオレイン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種を構成脂肪酸中80質量%以上含、請求項11記載のポリ乳酸系樹脂用耐衝撃性付与剤。
  14. ポリ乳酸系樹脂と、請求項1〜13いずれか記載の耐衝撃性付与剤を含有することを特徴とするポリ乳酸系樹脂組成物。
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