JP3138196B2 - 生分解性フィルムあるいはシート、および、生分解性プラスチック成形品 - Google Patents

生分解性フィルムあるいはシート、および、生分解性プラスチック成形品

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はポリ乳酸系重合体と
生分解性脂肪族ポリエステルとからなる生分解性プラス
チックフィルムあるいはシートと、熱成形に使用される
生分解性プラスチックフィルムあるいはシートと、前記
熱成形用生分解性プラスチックフィルムあるいはシート
から成形された生分解性プラスチック成形品に関する。
【0002】
【従来の技術、および、発明が解決しようとする課題】
従来のプラスチック製品の多く、特にプラスチック包装
材は使用後すぐに棄却されることが多く、その処理問題
が指摘されている。一般包装用プラスチックとして代表
的なものとしてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ
エチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニルなどがあげら
れる。
【0003】しかし、ポリエチレン、ポリプロピレン、
ポリエチレンテレフタレートは燃焼時の発熱量が高く、
焼却処理中に燃焼炉を痛める恐れがある。また、ポリ塩
化ビニルは自己消火性のため燃焼することが困難であ
る。このため、上記プラスチック製品は埋立処理される
ことが多いが、その化学的、生物的安定性のためほとん
ど分解せず残留し、埋立地の寿命を短くするなどの問題
をおこしている。
【0004】このため燃焼熱量が低く土壌中で分解し、
かつ、安全である生分解性プラスチックが望まれ、多く
の研究がなされている。その一例としてポリ乳酸があ
る。ポリ乳酸は燃焼熱量はポリエチレンの半分以下であ
り、土中・水中では自然に加水分解が進行し、次いで微
生物により無害な分解物となる。
【0005】ところが、ポリ乳酸を使用したフィルムあ
るいはシートは脆く耐衝撃性に劣るため、実際上、使用
できる分野が限られてしまう。また、ポリ乳酸を使用し
たフィルムあるいはシートを成形して得られる成形品は
高温高湿に放置されていると変形してしまう、すなわ
ち、耐湿熱性が満足するものでない。このために、さら
に使用できる分野が限られてしまう。
【0006】そこで、本発明の目的は耐衝撃性に優れた
生分解性のプラスチックフィルムあるいはシートを提供
することにある。また、高温高湿下でも形状変化を生じ
ない生分解性の成形品を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨は、少なく
とも、ポリ乳酸系重合体とガラス転移点Tgが0℃以下
である生分解性脂肪族ポリエステルとからなる生分解性
プラスチックフィルムあるいはシートである。異なる本
発明の要旨は、ポリ乳酸系重合体とガラス転移点Tgが
0℃以下である生分解性脂肪族ポリエステルとからな
り、かつ、前記生分解性脂肪族ポリエステルの含有量は
前記ポリ乳酸系重合体100重量部に対して7〜60重
量部である熱成形用生分解性プラスチックフィルムある
いはシートである。さらに、異なる本発明の要旨は、請
求項2記載の熱成形用生分解性プラスチックフィルムあ
るいはシートから成形された生分解性プラスチック成形
品である。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明において述べているフィル
ムあるいはシートは、特に違いがあるものではなく、置
き換えて使用することができる。
【0009】ポリ乳酸は乳酸の構造単位がL−乳酸であ
るポリL−乳酸、構造単位がD−乳酸であるポリD−乳
酸さらにはL−乳酸とD−乳酸の共重合体であるポリD
L−乳酸がある。またこれらの混合体もある。
【0010】重合法としては縮重合法、開環重合法など
公知のいずれの方法を採用することができる。例えば、
縮重合法ではL−乳酸またはD−乳酸あるいはこれらの
混合物を直接脱水縮重合して任意の組成を持ったポリ乳
酸を得ることができる。
【0011】また、開環重合法では乳酸の環状2量体で
あるラクチドから、必要に応じて重合調整剤等を用いな
がら、選ばれた触媒を使用してポリ乳酸を得ることがで
きる。ラクチドにはL−乳酸の2量体であるL−ラクチ
ド、D−乳酸の2量体であるD−ラクチド、さらにL−
乳酸とD−乳酸からなるDL−ラクチドがあり、これら
を任意に混合して重合することにより任意の組成、結晶
性をもつポリ乳酸を得ることができる。
【0012】分子量増大を目的として少量の鎖延長剤、
例えば、ジイソシアネート化合物、エポキシ化合物、酸
無水物などを使用できる。重合体の重量平均分子量の好
ましい範囲としては6万から100万であり、この範囲
を下回る場合は実用物性がほとんど発現されず、上回る
場合には、溶融粘度が高すぎ成形加工性に劣る。
【0013】ポリ乳酸はそのままでは脆く、無延伸フィ
ルムは耐衝撃性に劣る。従って、従来使用されているポ
リオレフィン系、PET系およびポリ塩化ビニル系フィ
ルムやシート等にかわる包装用フィルムや成形用シート
としては使用しにくい。また、ポリ乳酸の熱成形品は前
述した従来使用されている成形用シートを使用した熱成
形品より耐湿熱性が劣る。
【0014】本発明ではポリ乳酸にガラス転移点Tgが
0℃以下、より好ましくは−20℃以下である生分解性
脂肪族ポリエステルを混合することによって耐衝撃性を
付与する。ガラス転移点Tgが0℃を越えると、耐衝撃
性向上の効果を発現しない場合が多い。脂肪族ポリエス
テル以外の生分解性ポリマーをポリ乳酸と混合させた
後、溶融押し出しして得られるシートは表面に凹凸を生
じ、外観が極めて不良なシートであり実用的でない。
【0015】本発明に使用される生分解性脂肪族ポリエ
ステルとしてはポリ乳酸系重合体を除く生分解性脂肪族
ポリエステル、例えば、脂肪族ジオールと脂肪族ジカル
ボン酸を縮合して得られる脂肪族ポリエステル、環状ラ
クトン類を開環重合した脂肪族ポリエステル、合成系脂
肪族ポリエステル、菌体内で生合成される脂肪族ポリエ
ステル等が挙げられる。
【0016】脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸を縮
合して得られる脂肪族ポリエステルは、脂肪族ジオール
であるエチレングリコール、1,4−ブタンジオールお
よび1,4−シクロヘキサンジメタノール等と、脂肪族
ジカルボン酸であるコハク酸、アジピン酸、スベリン
酸、セバシン酸およびドデカン二酸等の中から、それぞ
れ1種類以上選んで縮合重合して得られる。必要に応じ
てイソシアネート化合物等でジャンプアップして所望の
ポリマーを得ることができる。
【0017】環状ラクトン類を開環重合した脂肪族ポリ
エステルとしては、環状モノマーであるε−カプロラク
トン、δ−バレロラクトン、β−メチル−δ−バレロラ
クトン等が代表的に挙げられ、これらから1種類以上選
ばれて重合される。
【0018】合成系脂肪族ポリエステルとしては、環状
酸無水物とオキシラン類、例えば、無水コハク酸とエチ
レンオキサイド、プロピレンオキサイド等との共重合体
等が挙げられる。
【0019】菌体内で生合成される脂肪族ポリエステル
としては、アルカリゲネスユートロファスを始めとする
菌体内でアセチルコエンチームA(アセチルCoA)に
より生合成される脂肪族ポリエステルが知られている。
この脂肪族ポリエステルは、主にポリ−β−ヒドロキシ
酪酸(ポリ3HB)であるが、プラスチックとしての実
用特性向上のために、吉草酸ユニット(HV)を共重合
し、ポリ(3HB−co−3HV)の共重合体にするこ
とが工業的に有利である。HV共重合比は一般的に0〜
40%である。さらに長鎖のヒドロキシアルカノエート
を共重合してもよい。
【0020】フィルムあるいはシートの製膜方法を説明
する。まず、ポリ乳酸と生分解性脂肪族ポリエステルの
混合は同一の押出機にそれぞれの原料を投入して直接シ
ートを作製する方法、あるいは、一旦ストランド形状に
押し出してペレットを作製した後、再び押出機にてシー
トを作製する方法がある。いづれも、押出機中での分解
による分子量の低下を考慮しなければならない。ポリ乳
酸と生分解性脂肪族ポリエステルとを均一に混合させる
には、後者の方が好ましい。
【0021】ポリ乳酸と生分解性脂肪族ポリエステルを
十分に乾燥、水分を除去した後、押出機で溶融する。ポ
リ乳酸と生分解性脂肪族ポリエステルとの混合物の溶融
押出温度はL−乳酸とD−乳酸の組成比、使用する生分
解性脂肪族ポリエステルの融点、および、混合比率を考
慮して、適宜選択する。通常、100〜250℃の温度
範囲が選択される。
【0022】シート状に溶融成形されたポリマーは、回
転するキャスティングドラム(冷却ドラム)に接触させ
て急冷するのが好ましい。混合するポリマーの性質と割
合にもよるが、キャスティングドラムの温度は60℃以
下が適当である。これより高いとポリマーがキャスティ
ングドラムに粘着し、引き取れない。
【0023】得られたシートから熱成形により成形品を
得るには、シートを赤外線ヒータ、熱板ヒータ、熱風な
どにより成形温度に予熱し熱成形する。予熱温度はポリ
乳酸のガラス転移点である60℃から90℃の範囲内で
予熱を行う。予熱温度が60℃以下ではシートが柔らか
くならず成形が困難であり、90℃以上では予熱中にシ
ートに白化やムラ等が発生し、外観の良好な成形品が得
られない。
【0024】熱成形の方法としては真空成形法、圧空成
形法、雄雌型成形法、成形雄型に沿ってシートを変形し
た後に成形雄型を拡張する方法等がある。シートの厚さ
は通常の熱成形に使用できる程度の厚さであればよく、
通常、10〜1000μmの範囲である。
【0025】しかし、本発明に使用されるガラス転移点
Tgが0℃以下である生分解性脂肪族ポリエステルの多
くは結晶性が高く、配合量が多いと成形が困難となる。
すなわち、生分解性フィルムあるいはシートからなる本
発明の成形品は、生分解性脂肪族ポリエステルの含有量
が少ないと耐衝撃性の改善が不十分であり、含有量が多
いと熱成形が行ないにくい。
【0026】具体的には、生分解性脂肪族ポリエステル
の前記ポリ乳酸系重合体100重量部に対する含有量は
7〜60重量部であることが好ましい。7重量部未満で
は耐衝撃性の改善が不十分であり、60重量部を越すと
熱成形が行ないにくい。同様に、耐湿熱性も7〜60重
量部であることが好ましい。
【0027】本発明の生分解性フィルム、シートおよび
成形品は、ポリ乳酸および生分解性脂肪族ポリエステル
からなり、自然環境中で分解する。一般的に、脂肪族ポ
リエステルはポリ乳酸より分解速度は速いので、脂肪族
ポリエステル含有量が多いと分解速度が速くなる。すな
わち、ポリ乳酸および生分解性脂肪族ポリエステルの混
合比を適宜選択することで、分解速度を調整することが
できる。
【0028】
【実施例】以下に実施例を示すが、これらにより本発明
は限定されない。なお、実施例中に示す測定、評価は次
に示すような条件で行った。
【0029】(1)ガラス転移点Tg 示差走査熱量計DSC−7(パ−キンエルマ−社製)を
用い、フィルムサンプル10mgをJIS−K7122
に基づいて、昇温速度10℃/分で昇温したときのサ−
モグラムからガラス転移点を求めた。
【0030】(2)押出シートの外観 30mmφ小型単軸押出機を用い、Tダイより溶融押し
出し、約200μmのシートを作製し、その外観を評価
した。作製条件は次の通りである。
【0031】 Tダイ リップ幅:200mm、リップギャップ:0.6mm スクリュー フルフライト、L/D:25 押出温度 180〜240℃ 評価は以下の通りである。
【0032】 ○ 優れている △ シート表面に若干の凹凸があるが実用範囲以上 × シート表面の凹凸が大きく実用範囲以下 (3)耐衝撃性 高速衝撃試験機HTM−1型((株)島津製作所製)を
用い、耐衝撃性を測定した。100mm×100mmに
切り出したシートをクランプで固定し、フィルム中央に
落垂で衝撃を与え、そのエネルギーを読みとる。測定温
度は23℃、落垂の落下速度は3m/秒である。エネル
ギーが大きいほど耐衝撃性に優れる。
【0033】(4)熱成形性 三和興業社製熱成形機(PLAVAC−FE36PH
型)に150mm×150mmに切り出したシートをク
ランプし、赤外線ヒーターで成形温度(60〜90℃)
に予熱した後、金型をシートの下から持ち上げ、次いで
金型内を真空にして成形を行った。図1に使用した金型
の断面図(A)と底面図(B)を示す。図1に示す金型
は底面が四角形の比較的浅いカップである。
【0034】評価は ○ 良好に成形可能 △ 成形後、僅かに収縮したが実用範囲内 × 成形不可能 とした。
【0035】(5)耐湿熱性 上述した(4)熱成形性で作成した熱成形品を、温度6
0℃、相対湿度80%の恒温恒湿器に24時間放置し
て、形状の変化を観察した。評価は ○ 変形していない △ 若干、変形しているが実用範囲内 × 変形が大きく実用範囲外 とした。
【0036】(実験例1)L−乳酸からなる構造単位と
D−乳酸からなる構造単位の割合がおよそ98:2でガ
ラス転移点58℃、融点175℃、重量平均分子量24
万のポリ乳酸重合体を30mmφ単軸エクストルーダー
にて210℃でTダイより押し出し、キャスティングロ
ールにて急冷して厚み200μmのシートを得た。得ら
れたシートを試料No1として上記テストを行い、その
結果を表1に示す。
【0037】(実験例2)ポリカプロラクトンから作ら
れるガラス転移点Tgが−60℃のプラクセルH7(ダ
イセル化学工業(株)社製)を乾燥した。さらに、実験
例1で使用したポリ乳酸系重合体100重量部に、上記
プラクセルH7を20重量部を混合溶融した後、ストラ
ンド形状に押し出してペレットを作製した。
【0038】得られたペレットを溶融押出しして、厚さ
200μmのシートを作製した。得られたシートを試料
No2として上記テストを行い、その結果を表1に示
す。
【0039】(実験例3〜5)主に1,4−ブタンジオ
ールとコハク酸の縮合体であるガラス転移点がTg−3
0℃であるビオノーレ#1010(昭和高分子(株)社
製)、変成デンプンと変成エチレン−酢酸ビニル共重合
体の混合物でガラス転移点Tgが20℃であるマタービ
ーAT05H(ノバモント社製)、および、クロロホル
ム中での固有粘度が約1.3で、ガラス転移点Tgが3
7℃であるポリグリコリドを用いて、実験例2と同様に
して厚さ200μmのシートを作製した。得られたシー
トを試料No3〜5として上記テストを行い、その結果
を表1に示す。
【0040】(実験例6〜10)主に、1−4ブタンジ
オールとコハク酸およびアジピン酸の縮合体であるガラ
ス転移点がTg−45℃であるビオノーレ#3010
(昭和高分子(株)社製)の含有量を、ポリ乳酸重合体
100重量部に対して、5,10,20,50,70重
量部として、実験例2と同様にして厚さ200μmのシ
ートを作製した。得られたシートを試料No6〜10と
して上記テストを行い、その結果を表1に示す。
【0041】
【表1】 表1にはテスト結果と合わせて、シートと成形品の総合
評価を示した。評価は ○ 良好 △ 実用範囲内 × 実用範囲外 とした。
【0042】尚、プラクセルH7、ビオノーレ#101
0、ポリグリコリドおよびビオノーレ#3010は生分
解性脂肪族ポリエステルであり、マタービーAT05H
は生分解性であるが脂肪族ポリエステルではない。
【0043】ポリ乳酸系重合体とガラス転移点Tgが0
℃以下である生分解性脂肪族ポリエステルとからなる生
分解性プラスチックシートである試料No2,3,6〜
10はシートの外観および耐衝撃性に優れている。特
に、耐衝撃性は生分解性脂肪族ポリエステルの含有量が
10重量部を越すと優れていることが分かる。
【0044】また、ポリ乳酸系重合体100重量部に対
して、上記ガラス転移点Tgが0℃以下である生分解性
脂肪族ポリエステルを7〜60重量部含有する生分解性
プラスチックシートである試料No2,3,7〜9から
得た熱成形品は耐衝撃性、熱成形性および耐湿熱性に優
れており、試料No2,3,7〜9が熱成形用生分解性
プラスチックシートに適していることがわかる。
【0045】
【発明の効果】本発明は耐衝撃性に優れたプラスチック
フィルムあるいはシート、および、高温高湿下でも形状
変化を生じないプラスチック成形品を提供できるので、
ポリ乳酸を使用した生分解性プラスチック製品の利用分
野を広げることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】熱成形性のテストで使用される金型の断面図
(A)と底面図(B)。

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 少なくとも、ポリ乳酸系重合体とガラス
    転移点Tgが0℃以下である生分解性脂肪族ポリエステ
    ルとからなる生分解性プラスチックフィルムあるいはシ
    ート。
  2. 【請求項2】 少なくとも、ポリ乳酸系重合体とガラス
    転移点Tgが0℃以下である生分解性脂肪族ポリエステ
    ルとからなり、かつ、前記生分解性脂肪族ポリエステル
    の含有量は前記ポリ乳酸系重合体100重量部に対して
    7〜60重量部である熱成形用生分解性プラスチックフ
    ィルムあるいはシート。
  3. 【請求項3】 請求項2記載の熱成形用生分解性プラス
    チックフィルムあるいはシートから成形された生分解性
    プラスチック成形品。
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