JP2008302615A - 乳酸系ポリマーを含む多層シートおよび成形品 - Google Patents

乳酸系ポリマーを含む多層シートおよび成形品 Download PDF

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Abstract

【課題】透明性、耐熱性および生産性に優れた乳酸系ポリマー組成物を含む多層シート、該多層シートからなる成形品および該成形品の生産性に優れた製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の多層シートは、乳酸系ポリマー及び有機結晶核剤を含む結晶化可能な乳酸系ポリマー組成物からなる層(X)を少なくとも1層と、非晶性の乳酸系ポリマーを含む層(Y)を少なくとも2層とを有する多層シートであって、該多層シートの両側の最外層が前記層(Y)であり、該有機結晶核剤が、110℃でのポリ乳酸に対する溶解度が1.0×10-5以上である少なくとも1種のエチレンビスカルボン酸アミドを含む。
【選択図】なし

Description

本発明は、乳酸系ポリマーを含む多層シート、および該多層シートを用いて形成される成形品に関する。より詳しくは、透明性を維持したまま結晶化を促して耐熱性を付与できる乳酸系ポリマー組成物を用いて形成される多層シート、該多層シートを低温の金型を用いて成形した成形品およびその製造方法に関する。
従来、プラスチックから作られる成形物の材料としては、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート樹脂が使用されている。かかる樹脂から製造された成形物は透明性に優れているものもあるが、廃棄する際その処理方法を誤るとゴミの量を増加させる。さらに、自然環境下では殆ど分解しないため、埋設処理すると半永久的に地中に残留する。
一方、熱可塑性樹脂で生分解性を有するポリマーとして、乳酸系ポリマー、例えば、ポリ乳酸や、乳酸とその他のヒドロキシカルボン酸とのコポリマーなどが開発されている。乳酸系ポリマーは、動物の体内で数カ月から1年以内に100%生分解し、また、土壌や海水中に置かれた場合、湿った環境下では数週間で分解を始め、約1年から数年で消滅し、さらに、その分解生成物は、人体に無害な乳酸と二酸化炭素と水になるという特性を有している。
このような乳酸系ポリマーの成形体(例えば、3次元的形状を有するボ卜ル等の成形品、2次元的形状を有する未延伸のフィルムやシート、1次元的形状を有する未延伸のフィラメントや糸)は、通常、成形直後は非晶性であり、光を散乱する原因となる光の波長と同程度以上の大きさの結晶が殆ど存在しないので透明である。
しかしながら、この透明な成形品は、通常、ガラス転移温度(Tg)が低く非晶性であるがゆえに耐熱性に劣る。例えば、非晶性ポリ乳酸容器は透明性に優れているが耐熱性が低く、熱湯や電子レンジを使用することができず、用途が限定されていた。また、耐熱性を向上させるために、成形加工時に結晶化温度付近に保持した金型内に充填することにより、あるいは、成形後に非晶性の成形品を熱処理(アニール)等することにより、結晶化度をあげると、通常、光を散乱する原因となる光の波長と同程度以上の大きさの結晶(例えば、球晶)が急速に成長して、成形品は不透明となってしまう。
そこで、上記乳酸系ポリマーに結晶核剤を添加して結晶化を促進することにより、シートや成形品の耐熱性を向上することが検討されてきたが、樹脂そのものの透明性を阻害することなく耐熱性を付与することは困難であった。
例えば、特開2002−146170号公報(特許文献1)には、可塑剤と結晶核剤とを必須成分とし、可塑化されたポリ乳酸樹脂に特定の結晶性を付与することにより、実用性の高いフィルムが得られることが記載されている。しかしながら、この方法によると、添加した結晶核剤の粒子径が大きいこと、あるいはその添加量が多いことから、透明性が著しく低下し、良好な透明性を有するシートや成形品を得ることは困難である。
また、特開平9−278991号公報(特許文献2)には、脂肪族カルボン酸アミド、脂肪族カルボン酸塩、脂肪族アルコールおよび脂肪族カルボン酸エステルからなる群より選択された少なくとも1種の透明核剤と乳酸系ポリマーとからなる組成物を成形し、成形時または成形後に熱処理することにより、透明性および結晶性が付与された成形体および
その製造方法が記載されている。しかしながら、この場合、結晶化にかかる時間が長いため、生産性の観点から工業的に実施できるレベルには至っていない。
また、特開2004−204143号公報(特許文献3)には、生分解性ポリエステルと層状珪酸塩とからなる組成物および該組成物を用いた成形体に関する技術が開示されている。しかしながら、この方法では、添加した層状珪酸塩の分散状態を、透明性を阻害しない程度に微細に制御することが難しく、高度な透明性を達成することは困難である。
また、WO 2006/121056パンフレット(特許文献4)には、乳酸系ポリマ
ーと、脂肪族カルボン酸アミドを含む有機結晶核剤と、結晶化促進剤とを含む乳酸系ポリマー組成物、該組成物からなるシート、および該シートを用いて製造した成形品が記載されている。しかしながら、特許文献4に記載の方法では、成形品を製造する際に加熱された金型が必要であることから、そのための特殊な設備が必要となるとともに、成形サイクルを短縮することが困難であったため、コストの面で充分とはいえなかった。また、特許文献4では、多層シートにおける多層構造についての検討が充分になされていない。
特開2002−146170号公報 特開平9−278991号公報 特開2004−204143号公報 WO 2006/121056パンフレット
本発明は、上記従来技術における課題を解決しようとするものであり、透明性、耐熱性および生産性に優れた乳酸系ポリマー組成物を含む多層シート、該多層シートからなる成形品および該成形品の生産性に優れた製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、特定の有機結晶核剤を含む結晶化可能な乳酸系ポリマー組成物からなる層と、非晶性の乳酸系ポリマーを含む層とを有し、特定の多層構造とした多層シートを用いることにより、低温の金型を用いて成形しても透明性および耐熱性に優れた成形品が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明に係る多層シートは、乳酸系ポリマー(A)および有機結晶核剤(B)を含む結晶化可能な乳酸系ポリマー組成物からなる層(X)を少なくとも1層と、非晶性の乳酸系ポリマーを含む層(Y)を少なくとも2層とを有する多層シートであって、前記多層シートの両側の最外層が前記層(Y)であり、前記有機結晶核剤(B)が、110℃でのポリ乳酸に対する溶解度が1.0×10-5(g/g)以上である少なくとも1種のエチレンビスカルボン酸アミドを含むことを特徴とする。
本発明の多層シートにおいて、前記有機結晶核剤(B)は、前記乳酸系ポリマー組成物中に含まれる乳酸系ポリマー(A)100重量部に対して0.1〜1.5重量部の量で含まれることが好ましい。また、前記層(X)の厚みの割合は、多層シート全体の厚みに対して20〜98%であることが好ましい。また、前記層(Y)と前記層(X)と前記層(Y)とが、この順に積層されている3層構造であることが好ましい。また、前記有機結晶核剤(B)は、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミドおよびエチレンビスカプリン酸アミドからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
本発明に係る成形品は、上述した本発明の多層シートを用いて成形したことを特徴とする。なお、前記成形を、金型温度80℃以下の金型を用いて行うことが好ましい。また、
本発明の成形品は、JIS K6714に準拠して測定したヘイズ(Haze)が15%以下であることが好ましい。
本発明に係る成形品の製造方法は、上述した本発明の多層シートを85℃〜140℃に加熱して層(X)を半結晶化させる工程(1)と、前記加熱処理された多層シートを、金型温度80℃以下の金型を用いて成形する工程(2)とを含むことを特徴とする。
本発明の成形品の製造方法において、前記層(X)の結晶化度が、前記工程(1)の処理によって10%〜40%となることが好ましい。また、前記工程(2)の成形が、シンタックチック樹脂を材質として含むプラグを用いたプラグアシスト方式で行われることが好ましい。
本発明によれば、透明性、耐熱性および生産性に優れた乳酸系ポリマー組成物を含む多層シート、および該多層シートからなる成形品を得ることができる。
以下、本発明に係る多層シート、該多層シートからなる成形品およびその製造方法について詳細に説明する。なお、本発明におけるシートとは、厚みが10μm〜10mm程度
のシートおよびフィルムの両方を意味する。
[多層シート]
本発明の多層シートは、乳酸系ポリマー(A)および特定の有機結晶核剤(B)を含む結晶化可能な乳酸系ポリマー組成物からなる層(X)(以下「結晶化可能な層(X)」ともいう。)を少なくとも1層と、非晶性の乳酸系ポリマーを含む層(Y)(以下「非晶性の層(Y)」ともいう。)を少なくとも2層とを有し、両側の最外層が前記非晶性の層(Y)である。
〔結晶化可能な層(X)〕
本発明の多層シートを構成する結晶化可能な層(X)は、乳酸系ポリマー(A)および特定の有機結晶核剤(B)を含む結晶化可能な乳酸系ポリマー組成物からなり、本発明の多層シートにおける中間層を構成する。
<乳酸系ポリマー組成物>
a)乳酸系ポリマー(A)
本発明で用いられる乳酸系ポリマー(A)は、乳酸単位を50モル%以上、好ましくは75モル%以上含むポリマーであり、具体的には、(1)ポリ乳酸、または乳酸−他の脂肪族ヒドロキシカルボン酸コポリマー、(2)多官能多糖類および乳酸単位を含む乳酸系ポリマー、(3)脂肪族多価カルボン酸単位、脂肪族多価アルコール単位および乳酸単位を含む乳酸系ポリマー、ならびに(4)これらの混合物である。これらの中では、使用時の透明性および耐熱性等を考慮すると、好ましくはポリ乳酸および乳酸−他の脂肪族ヒドロキシカルボン酸コポリマーであり、さらに好ましくはポリ乳酸である。なお、乳酸にはL−乳酸とD−乳酸とが存在するが、本発明において、単に乳酸という場合は、特にことわりがない限り、L−乳酸およびD−乳酸の両方を意味する。
上記乳酸系ポリマー(A)の原料としては、乳酸類およびヒドロキシカルボン酸類が用いられる。乳酸類としては、L−乳酸、D−乳酸、これらの混合物または乳酸の環状2量体であるラクタイドを使用することができる。なお、高い結晶性を発現するためには、このような乳酸類を原料とする乳酸系ポリマーにおいて、L−乳酸含有率またはD−乳酸含有率が大きい方が好ましい。具体的には、乳酸単位中におけるL−乳酸またはD−乳酸の
含有率が、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以
上である。
また、上記乳酸類と併用できるヒドロキシカルボン酸類としては、炭素数2〜10のヒドロキシカルボン酸類が好ましい。具体的には、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、5−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸などを好適に使用することができる。また、ヒドロキシカルボン酸の環状エステル中間体、例えば、グリコール酸の2量体であるグリコライドや、6−ヒドロキシカプロン酸の環状エステルであるε−カプロラクトンも使用できる。原料としての乳酸類とヒドロキシカルボン酸類との混合物は、得られるコポリマー中の乳酸含有率が50%以上、好ましくは75%以上になるように、種々の組み合わせで使用することができる。
上記乳酸系ポリマー(A)を得るためには、公知公用の方法を用いることができる。例えば、上記原料を直接脱水重縮合する方法や、上記乳酸類やヒドロキシカルボン酸類の環状2量体、例えばラクタイドやグリコライド、あるいはε−カプロラクトンのような環状エステル中間体を開環重合させる方法などが挙げられる。
直接脱水重縮合して製造する場合、原料である乳酸類または乳酸類とヒドロキシカルボン酸類との混合物を、好ましくは有機溶媒の存在下で共沸脱水縮合して重合することにより、本発明に適した強度を持つ高分子量の乳酸系ポリマーが得られる。特に、有機溶媒としてフェニルエーテル系溶媒を用い、共沸により留出した溶媒から水を除去し、実質的に無水の状態にした溶媒を反応系に戻すことが好ましい。
特に、直接脱水重縮合法で製造された乳酸系ポリマーは、開環重合法で製造されたものと比べて、光学純度の高い乳酸系ポリマーを製造することができるため、透明性および結晶化速度が要求される本発明のような用途に好ましく用いることができる。
乳酸系ポリマー(A)の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは3万〜500万、より好ましくは5万〜100万、さらに好ましくは10万〜30万、特に好ましくは10万〜20万である。また、その分散度(Mw/Mn)は、2〜10、好ましくは2〜8、より好ましくは2〜6、さらに好ましくは2〜4、特に好ましくは2〜3である。乳酸系ポリマー(A)の重量平均分子量(Mw)や分散度(Mw/Mn)が前記範囲にあることによ
り、結晶化時の速度が早く、成形可能な乳酸系ポリマー組成物が得られる。
なお、本発明で用いられる乳酸系ポリマー組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、上記乳酸系ポリマー(A)以外の他の樹脂を混合してもよい。
b)有機結晶核剤(B)
本発明における有機結晶核剤(B)とは、上記乳酸系ポリマー組成物内に存在し、ある条件下で加熱処理を行った際に結晶核となり、結晶化を促進させる効果を有するものである。その際、結晶の大きさおよび数を制御して透明性を保持することが好ましい。
本発明で用いられる有機結晶核剤(B)は、110℃でのポリ乳酸に対する溶解度が1.0×10-5(g/g)以上、好ましくは1.0×10-5(g/g)〜20.0×10-5(g/g)、より好ましくは1.0×10-5(g/g)〜15.0×10-5(g/g)である少なくとも1種のエチレンビスカルボン酸アミドを含む。このような特定の有機結晶核剤を用いることにより、透明性および耐熱性に優れた成形品を得ることができる。
上記溶解度は、van Krevelen−Hoftyzer group法(van
Krevelen,D.H.,1990. Properties of Polymers.Elsevier、p.213参照)によって計算された値である。
上記溶解度の条件を満たす有機結晶核剤(B)としては、例えば、エチレンビスオレイン酸アミド(溶解度:2.08×10-5g/g)、エチレンビスラウリン酸アミド(溶解度:3.01×10-5g/g)、エチレンビスカプリン酸アミド(溶解度:11.8×10-5g/g)などが挙げられる。特にエチレンビスオレイン酸アミドは、安価かつ容易に入手できることから好ましく用いられる。
上記有機結晶核剤(B)は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記の特定の有機結晶核剤以外の有機結晶核剤を含んでもよい。このような他の有機結晶核剤としては、たとえば、カプリン酸アミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘニン酸アミド等の炭素数8〜30の脂肪族カルボン酸モノアミドや、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、エチレンビスベヘニン酸アミド、エチレンビスイソステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、ブチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、へキサメチレンビスステアリン酸アミド、へキサメチレンビスベヘニン酸アミド、へキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド等の脂肪族カルボン酸ビスアミドなど、分子内にアミド結合を有する脂肪酸アミド類を挙げることができる。
上記有機結晶核剤(B)の総添加量は、上記乳酸系ポリマー(A)100重量部に対して、好ましくは0.1〜1.5重量部、より好ましくは0.3〜1.2重量部、さらに好ましくは0.5〜1.0重量部である。上記乳酸系ポリマー組成物における有機結晶核剤(B)の含有量が前記範囲にあると、透明性および耐熱性に優れた成形品を得ることができる。
c)他の添加剤
上記乳酸系ポリマー組成物は、上記乳酸系ポリマー(A)および有機結晶核剤(B)以外にも、必要に応じて他の添加剤を含んでもよい。このような他の添加剤としては、たとえば、結晶化促進剤、アンチブロッキング剤、滑剤、可塑剤、静電防止剤、防曇剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐衝撃性改良剤などが挙げられる。
上記結晶化促進剤としては、たとえば、ジ-n-オクチルフタレート、ジ-2-エチルヘキシルフタレート、ジベンジルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジトリデシルフタレート、ジウンデシルフタレート等のフタル酸誘導体、ジオクチルイソフタレート等のイソフタル酸誘導体、ジ-n-ブチルアジペート、ジオクチルアジペート等のアジピン酸誘導体、ジ-n-ブチルマレエート等のマレイン酸誘導体、トリ-n-ブチルシトレート等のクエン酸誘導体、モノブチルイタコネート等のイタコン酸誘導体、ブチルオレート等のオレイン酸誘導体、グリセリンモノリシノレート等のリシノール酸誘導体、トリクレジルフォスフェート、トリキシレニルフォスフェート等のリン酸エステル、ポリエチレンアジペート、ポリアクリレートアセチルクエン酸トリブチル等のヒドロキシ多価カルボン酸エステル類、グリセリントリアセテート、グリセリントリプロピオネート等の多価アルコールエステル類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール誘導体、ベンジル=2-(2-メトキシエトキシ)エチル=アジパートなどが挙げられる。
これらの中では、少量で結晶化速度を促進する効果を示し、安価でかつ容易に入手できるクエン酸誘導体、ポリアルキレングリコール誘導体、ヒドロキシ多価カルボン酸エステル類および多価アルコールエステル類が好ましく用いられる。
具体的には、ポリエチレングリコール、ATBC(商品名;ジェイ・プラス(株)製)、ダイファッティー101(商品名;大八化学(株)製)、リケマールPL−710(商
品名;理研ビタミン(株)製)およびラクトサイザーGP−4001(商品名;荒川化学(株)製)等は、安価でかつ容易に入手でき、結晶化促進効果も高いことから、好ましく用いることができる。
上記結晶化促進剤の添加量は、乳酸系ポリマー(A)100重量部に対して、0.1重量部〜7重量部、好ましくは0.5〜7重量部、より好ましくは1〜5重量部、さらに好ましくは1〜3重量部である。
上記アンチブロッキング剤としては、公知公用のものを用いることができ、無機フィラーなどが好適に用いられる。このような無機フィラーとしては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、チタニア、マイカ、タルク等が挙げられ、特にシリカが好ましい。
また、上記アンチブロッキング剤の平均粒径は5μm以下、好ましくは4μm以下、より好ましくは3μm以下、さらに好ましくは2μm以下である。平均粒径が5μmを超える粒径になるとフィルムの表面に微細な凹凸が生じ外観が不透明になる場合がある。
得られる成形品、例えばシートに高度に透明性が必要な場合には、好ましくは平均粒径7nm〜2000nm、より好ましくは7nm〜200nm、さらに好ましくは7nm〜50nmのシリカを用いることが望ましい。また、そのシリカはSiO2を95%以上含
むことが好ましく、さらに、該SiO2が無水シリカであることがより好ましい。
上記アンチブロッキング剤は、乳酸系ポリマー(A)100重量部に対して0.01〜3重量部、好ましくは0.05〜2重量部、さらに好ましくは0.05〜1重量部の範囲の量で用いられる。添加量が過少であると、アンチブロッキング剤の効果が発現し難くなり、逆に添加量が過大であると、フィルムの外観、特に透明性を低下させる場合がある。
上記滑剤としては、公知公用のものを用いることができる。例えば、流動パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、天然パラフィン、合成パラフィン、ポリエチレン等の脂肪族炭化水素系滑剤;ステアリン酸、ラウリン酸、ヒドロキシステアリン酸、硬化ひまし油等の脂肪酸系滑剤;ステアリン酸鉛、ステアリン酸カルシウム、ヒドロキシステアリン酸カルシウム等の炭素数12〜30の脂肪酸金属塩である金属石鹸系滑剤;モンタンワックス等の長鎖エステルワックス類;および、これらを複合した複合滑剤などが挙げられる。
上記滑剤の使用量は、乳酸系ポリマー(A)100重量部に対して0.1重量部〜2重量部、好ましくは0.2重量部〜1.5重量部、より好ましくは0.3重量部〜1重量部である。添加量が過少であると、得られる成形品、例えばシートの滑り性が発現しない場合があり、逆に添加量が過大であると、シートの成形性が低下し、得られるシートの平板性が低下したり、さらには透明性等が低下する場合がある。
滑剤とアンチブロッキング剤とを併用する場合、その使用量は乳酸系ポリマー(A)100重量部に対し、滑剤とアンチブロッキング剤の総量が0.2〜7重量部であり、かつそれぞれの単体の使用量が上記の範囲を超えないことである。滑剤とアンチブロッキング剤が少なすぎると、耐候性の持続性効果が発現されず、多過ぎると成形が不安定になったり、フィルムの外観が劣ることがある。
本発明では成形加工品の耐衝撃性を向上するために、公知公用の耐衝撃改良剤を添加することもできる。用いられる耐衝撃改良剤としては、本発明の乳酸系ポリマー組成物の特徴を損なわない限り何ら制限はない。例えば、生分解性を有する耐衝撃性改良剤や非生分解性の熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。特に、生分解性を有する耐衝撃性改良剤
が好ましい。
生分解性の耐衝撃性改良剤としては、たとえば、プラメートPD−150(商品名;大日本インキ化学社製)やプラメートPD−350(商品名;大日本インキ化学社製)などが挙げられる。非生分解性の熱可塑性エラストマーとしては、たとえば、タフマー(商品名;三井化学社製)、シンジオタクティックポリプロピレン、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、スチレン−ブタジエン−ブチレン−スチレン系のSBBSラバー、イミノ変性したSBBSラバー、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン系のSEBSラバー、イミノ変性したSEBSラバー等のオレフィン系エラストマーもしくはラバーや、メタブレン(商品名:三菱レイヨン社製)等のシリコン系ラバーなどが挙げられる。
上記耐衝撃性改良剤は、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記耐衝撃改良剤の添加量は、用途に応じて適宜選択することができるが、乳酸系ポリマー組成物100重量部に対して、0.1重量部〜20重量部、好ましくは1重量部〜15重量部、より好ましくは3重量部〜10重量部の範囲の量で用いられる。
<乳酸系ポリマー組成物の製造方法>
上記乳酸系ポリマー組成物は、乳酸系ポリマー(A)および有機結晶核剤(B)、必要に応じて結晶化促進剤、アンチブロッキング剤、滑剤、離型剤、耐衝撃改良剤などの他の添加剤を混合することにより得られる。各成分の混合は、公知公用の方法や混練技術を適用できる。例えば、
(1)パウダー状もしくはペレット状の乳酸系ポリマー(A)および有機結晶核剤(B)、必要に応じて他の添加剤をリボンブレンダーなどで一括混合した後、2軸押出機で組成物を加熱溶融しながら押出しペレット化する方法;
(2)パウダー状もしくはペレット状の乳酸系ポリマー(A)を押出ペレット化する際に、有機結晶核剤(B)および必要に応じて他の添加剤を、サイドフィードや液体注入ポンプで押出し機のシリンダー内に添加混合する方法;
(3)予め有機結晶核剤(B)および必要に応じて他の添加剤を、高濃度に押出しペレット化したペレット(マスターバッチ)を製造した後、そのマスターバッチを、パウダー状もしくはペレット状の乳酸系ポリマー(A)でドライブレンド等により希釈して成形品を加工する方法;
(4)上記方法を組み合わせて混合する方法
などが挙げられる。
なお、有機結晶核剤(B)および必要に応じて他の添加剤をマスターバッチとして添加する場合、各添加剤毎のマスターバッチ、あるいは2種以上の添加剤のマスターバッチとして添加してもよく、その方法に何等制限はない。また、マスターバッチとして添加する際、乳酸系ポリマー(A)との混合比率は、マスターバッチ/乳酸系ポリマー(A)の重量比が1/100〜1/2、好ましくは1/50〜1/3、より好ましくは1/30〜1/5、特に好ましくは1/30〜1/10である。
〔非晶性の層(Y)〕
本発明の多層シートを構成する非晶性の層(Y)は、乳酸系ポリマーを含み、前述の結晶化可能な層(X)と比較して加熱結晶化速度が遅い性質を有する。具体的には、無添加の乳酸系ポリマー、結晶化を促進しない程度の添加剤を含む乳酸系ポリマー、結晶化可能な層(X)と比較して結晶性が低い、例えば光学純度が低い乳酸系ポリマーなどが好ましい。
上記非晶性の層(Y)は、本発明の多層シートにおける多層構造の両側の最外層を構成するが、中間層の一部を構成してもよい。
上記非晶性の層(Y)に含まれる乳酸系ポリマーとしては、上述した乳酸系ポリマー(A)と同様のものを用いることができる。また、上記非晶性の層(Y)は、本発明の効果を損なわない範囲で他の添加剤を含有してもよい。このような他の添加剤としては、上述したアンチブロッキング剤、滑剤、可塑剤、静電防止剤、防曇剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐衝撃性改良剤や、成形加工時の成形性を向上するための離型剤などが挙げられる。
上記離型剤としては、本発明の効果を損なわない限り何等制限はない。例えば、シリコン誘導体類、テフロン(登録商標)誘導体類、脂肪族カルボン酸類、脂肪族カルボン酸金属塩類、脂肪族アルコール類などが挙げられる。特に、離型剤効果の高いシリコン誘導体類や脂肪族カルボン酸類が好ましい。
上記シリコン誘導体類としては、ジメチルシリコーンオイルが特に好ましく、その溶液粘度は、0.5〜50万センチストークス、好ましくは1〜1万センチストークス、より好ましくは5〜5000センチストークス、さらに好ましくは5〜1000センチストークスである。例えば、KF96(商品名;信越化学(株)製)、KF69(商品名;信越化学(株)製)、KMP110(商品名;信越化学(株)製)が挙げられる。
上記脂肪族カルボン酸類は、炭素数8〜30の脂肪族カルボン酸、好ましくは炭素数10〜26の脂肪族カルボン酸、より好ましくは炭素数12〜22の脂肪族カルボン酸である。
上記離型剤は、乳酸系ポリマーもしくはその組成物100重量部に対して、0.01重量部〜1重量部、好ましくは0.05重量部〜0.8重量部、より好ましくは0.1重量部〜0.5重量部の範囲の量で用いられる。
〔多層構造〕
本発明の多層シートは、上記結晶化可能な層(X)を少なくとも1層と、上記非晶性の層(Y)を少なくとも2層とを有し、両側の最外層が前記非晶性の層(Y)である。したがって、本発明の多層シートにおける多層構造としては、たとえば、層(Y)/層(X)/層(Y)の3層構造、層(Y)/層(X)/層(Y)/層(X)/層(Y)の5層構造などが挙げられる。また、同じ層(X)または層(Y)であっても、区別可能な層である場合には、たとえば、層(Y)/層(X1)/層(X2)/層(Y)や、層(Y1)/層(X)/層(Y1)/層(Y2)等の4層構造、層(Y1)/層(X1)/層(X2)/層(Y2)/層(Y1)等の5層構造などのような多層構造をとることができる。このように、本発明の多層シートは、3層以上の多層構造を有することができ、目的によってはバリアー性や耐衝撃性などの機能を付与することも可能である。特に上記のような機能が必要ない場合は、生産効率などを考慮すれば、層(Y)/層(X)/層(Y)の3層構造であることが好ましい。
上記のように、本発明の多層シートにおいて、両側の最外層は非晶性の層(Y)である。このように非晶性の層(Y)が最外層を構成することにより、得られる成形品の表面の粗さ(外部Haze)が低減されるため、透明性に優れた成形品を得ることができる。
各層の厚み構成としては、多層シート全体の厚みに対して、上記結晶化可能な層(X)の合計の厚みの割合が、好ましくは20〜98%、より好ましくは55〜95%、さらに好ましくは75〜90%であり、上記非晶性の層(Y)の合計の厚みの割合が、好ましくは2〜80%、より好ましくは5〜45%、さらに好ましくは10〜25%である。層(X)および(Y)が前記のような厚み比率であることにより、本発明の効果がより顕著なものとなる。
〔多層シートの製造方法〕
本発明の多層シートは、公知公用の押出し機や押出し技術で製造することができる。また、必要に応じて延伸加工することにより延伸シートを製造することもできる。
本発明の多層シートは、Tダイが装着された押出機を用いる溶融押出法によりシート状に成形することが好ましい。この際、異なる樹脂組成物を、別々にシート化した後に接着してもよいし、また、マルチマニホールドダイまたはフィードブロックを備えた押出機を用いて、共押出してもよい。また、得られた多層シートをロール延伸によって流れ方向に延伸することにより多層延伸シートを製造することができる。さらに、テンター延伸によって横方向に延伸してもよいし、横延伸後、緊張下で熱処理してもよい。
本発明の多層シートは、必要に応じて多層シート表面に帯電防止性、防曇性、離型性、粘着性、ガスバリヤー性、密着性および易接着性などの機能を有する層をコーティングにより形成することができる。例えば、多層シートの片面もしくは両面に、帯電防止剤を含む水性塗工液を塗布して乾燥することによって帯電防止層を形成することができる。また、本発明の多層シートは、必要に応じて、他樹脂および他シートをラミネートすることにより、帯電防止性、防曇性、粘着性、ガスバリヤー性、密着性および易接着性などの機能を有する層を形成することができる。その際、押出ラミネーション、ドライラミネーションなどの公知の方法を用いることができる。
[成形品]
本発明の成形品は、上述した本発明の多層シートを、成形前もしくは成形時に結晶化させながら成形することにより得られ、透明性および耐熱性に優れている。
本発明の成形品の製造方法は、上述した本発明の多層シートを加熱して、上記層(X)を軟化させつつ後述の範囲に結晶化させる工程(1)と、前記加熱処理された多層シートを、後述の温度に設定された金型で成形する工程(2)とを含む。以下にそれぞれの方法を詳しく記載する。
〔工程(1)〕
本発明の多層シートから得られる成形品が十分な耐熱性を有するためには、上記工程(1)において、上記多層シートを、ガラス転移温度以上から融点の間の温度、たとえば、乳酸系ポリマー(A)がポリ乳酸の場合は85℃〜140℃、好ましくは90℃〜130℃の温度に加熱し、後述の範囲に結晶化させることが必要である。
上記工程(1)における加熱処理後の上記層(X)の結晶化度は、10%〜40%、好ましくは10%〜35%、より好ましくは15%〜30%、さらに好ましくは15%〜25%である。層(X)の結晶化度を前記範囲にした後に成形することにより、成形加工性に優れるとともに、十分な透明性と耐熱性を有する成形品が得られる。また、上記乳酸系ポリマー組成物を用いることにより、前記結晶化度は非常に短時間で達成できるため、優れた生産効率で成形品を得ることができる。
本発明の多層シートを加熱する方法は、後述する様な各種成形方法によって異なり、例えば、ヒーターの輻射熱で加熱する方法や、加温した金属板等に接触させて加熱する方法などが挙げられる。また、加熱時間は、上記加熱方法によっても異なり、多層シートを上述した好ましい温度範囲に加熱する時間であればよく、適宜選択することができる。
例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリスチレン(PS)等の熱成形に用いられる真空成形や真空圧空成形の場合は、加熱方法はセラミックヒーターなどの輻射
熱によって加熱する方法が一般的に用いられており、ヒーター温度は、乳酸系ポリマー組成物のガラス転移温度から700℃ 、好ましくは150℃〜500℃、より好ましくは
200℃〜500℃、さらに好ましくは250℃〜450℃、特に好ましくは300℃〜450℃であり、加熱時間は成形前のシート厚みによって変化するが、1秒〜60秒、好ましくは1秒〜30秒、より好ましくは1秒〜20秒、さらに好ましくは1秒〜10秒、特に好ましくは1秒〜7秒である。
また、延伸したポリスチレン(OPS)等の熱成形に用いられる熱板圧空成形の場合、加熱方法は加温した金属板等に接触させる方法が一般的に用いられており、金属板等の温度は60℃〜300℃ 、好ましくは70℃〜250℃、より好ましくは80℃〜200
℃、さらに好ましくは80℃〜175℃であり、加熱時間は1秒〜20秒、好ましくは1秒〜15秒、より好ましくは1秒〜10秒、さらに好ましくは1秒〜5秒、特に好ましくは1秒〜3秒である。
〔工程(2)〕
本発明の成形品を得るための成形は、真空成形、真空圧空成形、熱板圧空成形、プレス成形等の公知公用の成形方法によって、成形時に上述した温度に設定した金型に接触させながら行う。この際、成形とともに結晶化を同時に行ってもよい。なお、本発明の成形品は、ポリスチレン(PS)やポリエチレンテレフタレート(PET)等の汎用樹脂と同等な成形サイクルで成形することができる。
カップ状の成形品を製造する場合、一般的にプラグでアシストする方法が用いられるが、そのプラグの材質としては、シートとの熱伝導率が低いものが適しており、特にシンタックチック樹脂のものが好ましい。シンタックチック樹脂としては、Matrix Asia Pacific社製のハイタックシリーズなどが挙げられる。また、プラグの形状については、比較的金型に近い形状のものが成形性の面から適している。なお、プラグの温度は、成形性や成形品の外観などを考慮して適宜設定すればよい。
乳酸系ポリマー(A)がポリ乳酸の場合には、多層シートを前述した温度に予め加熱した後、80℃以下、好ましくは0℃〜60℃、より好ましくは0℃〜「ポリ乳酸のTg(約55℃)」に設定した金型に接触させながら成形する。また、金型温度が前記範囲であることにより、離型時に収縮したり変形したりせず、安定した形状の成形品を得ることができる。
上記工程(1)における多層シートの加熱温度および上記工程(2)における金型の最適温度は、乳酸系ポリマー組成物の組成、例えば、乳酸系ポリマー(A)、有機結晶核剤(B)および必要に応じて用いられる他の添加剤の種類と量によって変化する。したがって、成形品の透明性、耐熱性、成形性および生産性などを考慮して、適宜最適条件を設定することができる。
本発明の成形品は、例えばカップ状の成形品を恒温器中で一定の温度で2時間保持した場合、目視での判断で変形する温度が高い、すなわち耐熱収縮性に優れているという特徴を有する。その熱変形開始温度は、好ましくは70℃以上、より好ましくは80℃以上、さらに好ましくは90℃以上である。
本発明の成形品は透明性に優れる。本発明の成形品の透明性(JIS K6714に準じて、東京電色製Haze Meterを用いて測定)は、好ましくは15%以下、より
好ましくは0.1%〜10%、さらに好ましくは0.5%〜7%、特に好ましくは0.5%〜5%である。
本発明の成形品は、乳酸系ポリマー(A)の特徴である高い透明性を維持するとともに、高い耐熱性を有するため、一般的な熱成形によって得られる容器、トレー等の用途にも広く用いることができる。
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
〔実施例1〕
ポリ乳酸樹脂a1(LACEA H−400、三井化学製、重量平均分子量(Mw);21万、分散度(Mw/Mn);3.2、L体/D体=98.2/1.8、融点165℃)100重量部、および有機結晶核剤EBL(エチレンビスラウリン酸アミド、日本化成(株)製「スリパックスL」)0.76重量部をヘンシェルミキサーにて混合後、押出機シリンダー設定温度190〜220℃の条件にてペレット化した。
次いで、得られたペレットを、樹脂温度が220℃に設定された3層T−ダイ製膜機の中間層用ホッパーへ供給し、一方 ポリ乳酸樹脂a1を該3層T−ダイ製膜機の両外層ホ
ッパーへ供給した。各層の厚みを、外層/中間層/外層=10/80/10となるようにして、温度を30℃に調整したキャストロール上に溶融樹脂を押出し、厚み1000μmの3層シートを得た。シート化には、中間層のスクリュー径65mmφ、両外層のスクリュー径50mmφ、ダイス幅550mmのシート化機を使用した。
得られた厚み1000μmの多層シートは、シート温度が105℃になるように加熱した後、40℃に設定した金型を用いて、真空圧空熱成形を行った。成形方式はプラグアシスト方式とし、プラグの材質にはMatrix Asia Pacific社製「ハイタックWF」を用いた。また、金型形状は、上部口径90mm、底部口径60mm、高さ105mm、絞り比1.2のカップ状であった。良好な成形品(カップ)が得られる最適金型内のホールド時間は5秒であった。得られた成形品の厚み、透明性(ヘイズ)および耐熱性を評価した。また、加熱処理したときの多層シートの結晶化度を測定した。
なお、上記結晶化度、透明性(ヘイズ)および耐熱性は、以下の方法で測定および評価を行った。これらの結果を表1に示す。
<結晶化度>
示差熱走査熱量分析装置(セイコー社製)を用いて、多層シートを10℃/minの速度で昇温した時の結晶化熱量(ΔHc)および融解熱量(ΔHm)を測定した。本発明における結晶化度は、以下の計算式:
結晶化度(%)=(融解熱量−結晶化熱量)/93×100
で求めた値をいう。
なお、中間層の結晶化度は、得られた多層シートの結晶化度を測定し、中間層および全層の厚みを用いて、以下の計算式:
中間層の結晶化度(%)=多層シートの結晶化度(%)×全層厚み/中間層厚み
で算出した。
<透明性(ヘイズ)>
得られた成形品(カップ)については、成形品の側面中央部から、縦5cm×横2cmのカットサンプルを採取した。このカットサンプルについて、厚みを測定し、JIS K6714に準じ、東京電色社製Haze Meterを用いて測定した。
<耐熱性>
得られた成形品を70℃の乾燥機中に2時間保持した後、変形の程度を目視にて評価し
た。評価基準は、変形なしの場合を「○」、僅かに変形した場合を「△」、大きく変形した場合を「×」とした。
さらに、縦方向の収縮率を以下の式によって計算した。
収縮率=(h0−h)/h0×100
上記式中、h0は耐熱テスト前のカップ高さであり、hは耐熱テスト後のカップ高さで
ある。
〔実施例2〜5および比較例1〜5〕
表1に示したように、有機結晶核剤(B)の種類と量、各層の構成を変更したこと以外は、実施例1と同様な方法で乳酸系ポリマー組成物の調製、多層シートの作製、成形品の作製およびこれらの評価を行った。結果を表1に示す。なお、表1中の有機結晶核剤(B
)の種類は以下のとおりである。
EBL:エチレンビスラウリン酸アミド(日本化成(株)製「スリパックスL」、110℃でのポリ乳酸に対する溶解度:3.01×10-5g/g)
EBO:エチレンビスオレイン酸アミド(日本化成(株)製「スリパックスO」、110℃でのポリ乳酸に対する溶解度:2.08×10-5g/g)
EBC:エチレンビスカプリン酸アミド(日本化成(株)製「スリパックスC−10」、110℃でのポリ乳酸に対する溶解度:11.8×10-5g/g)
EBS:エチレンビスステアリン酸アミド(日本化成(株)製「スリパックスE」、110℃でのポリ乳酸に対する溶解度:0.12×10-5g/g)
〔実施例6、7および比較例6〕
表2に示したように、成形時の多層シート温度、プラグ材質を変更した以外は、実施例2で作製した多層シートと同様の構成を有する多層シートを用いて、実施例1と同様の方法で成形品の作製および評価を行った。結果を表2に示す。
〔比較例7〕
実施例2で作製した多層シートを用いて、金型温度を90℃に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で成形を試みたが、カップ状に成形することができなかった。
Figure 2008302615
Figure 2008302615

Claims (11)

  1. 乳酸系ポリマー(A)および有機結晶核剤(B)を含む結晶化可能な乳酸系ポリマー組成物からなる層(X)を少なくとも1層と、非晶性の乳酸系ポリマーを含む層(Y)を少なくとも2層とを有する多層シートであって、
    前記多層シートの両側の最外層が前記層(Y)であり、
    前記有機結晶核剤(B)が、110℃でのポリ乳酸に対する溶解度が1.0×10-5(g/g)以上である少なくとも1種のエチレンビスカルボン酸アミドを含むこと
    を特徴とする多層シート。
  2. 前記有機結晶核剤(B)が、前記乳酸系ポリマー組成物中に含まれる乳酸系ポリマー(A)100重量部に対して0.1〜1.5重量部の量で含まれることを特徴とする請求項1に記載の多層シート。
  3. 前記層(X)の厚みの割合が、多層シート全体の厚みに対して20〜98%であることを特徴とする請求項1または2に記載の多層シート。
  4. 前記層(Y)と前記層(X)と前記層(Y)とが、この順に積層されている3層構造であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の多層シート。
  5. 前記有機結晶核剤(B)が、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミドおよびエチレンビスカプリン酸アミドからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の多層シート。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の多層シートを用いて成形したことを特徴とする成形品。
  7. 前記成形が、金型温度80℃以下の金型を用いて行われたことを特徴とする請求項6に記載の成形品。
  8. JIS K6714に準拠して測定したヘイズ(Haze)が15%以下であることを特徴とする請求項6または7に記載の成形品。
  9. 請求項1〜5のいずれかに記載の多層シートを85℃〜140℃に加熱して層(X)を半結晶化させる工程(1)と、
    前記加熱処理された多層シートを、金型温度80℃以下の金型を用いて成形する工程(2)と
    を含むことを特徴とする成形品の製造方法。
  10. 前記層(X)の結晶化度が、前記工程(1)の処理によって10%〜40%となることを特徴とする請求項9に記載の成形品の製造方法。
  11. 前記工程(2)の成形が、シンタックチック樹脂を材質として含むプラグを用いたプラグアシスト方式で行われることを特徴とする請求項9または10に記載の成形品の製造方法。
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