JP2008302615A - 乳酸系ポリマーを含む多層シートおよび成形品 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の多層シートは、乳酸系ポリマー及び有機結晶核剤を含む結晶化可能な乳酸系ポリマー組成物からなる層(X)を少なくとも1層と、非晶性の乳酸系ポリマーを含む層(Y)を少なくとも2層とを有する多層シートであって、該多層シートの両側の最外層が前記層(Y)であり、該有機結晶核剤が、110℃でのポリ乳酸に対する溶解度が1.0×10-5以上である少なくとも1種のエチレンビスカルボン酸アミドを含む。
【選択図】なし
Description
その製造方法が記載されている。しかしながら、この場合、結晶化にかかる時間が長いため、生産性の観点から工業的に実施できるレベルには至っていない。
ーと、脂肪族カルボン酸アミドを含む有機結晶核剤と、結晶化促進剤とを含む乳酸系ポリマー組成物、該組成物からなるシート、および該シートを用いて製造した成形品が記載されている。しかしながら、特許文献4に記載の方法では、成形品を製造する際に加熱された金型が必要であることから、そのための特殊な設備が必要となるとともに、成形サイクルを短縮することが困難であったため、コストの面で充分とはいえなかった。また、特許文献4では、多層シートにおける多層構造についての検討が充分になされていない。
本発明の成形品は、JIS K6714に準拠して測定したヘイズ(Haze)が15%以下であることが好ましい。
のシートおよびフィルムの両方を意味する。
本発明の多層シートは、乳酸系ポリマー(A)および特定の有機結晶核剤(B)を含む結晶化可能な乳酸系ポリマー組成物からなる層(X)(以下「結晶化可能な層(X)」ともいう。)を少なくとも1層と、非晶性の乳酸系ポリマーを含む層(Y)(以下「非晶性の層(Y)」ともいう。)を少なくとも2層とを有し、両側の最外層が前記非晶性の層(Y)である。
本発明の多層シートを構成する結晶化可能な層(X)は、乳酸系ポリマー(A)および特定の有機結晶核剤(B)を含む結晶化可能な乳酸系ポリマー組成物からなり、本発明の多層シートにおける中間層を構成する。
a)乳酸系ポリマー(A)
本発明で用いられる乳酸系ポリマー(A)は、乳酸単位を50モル%以上、好ましくは75モル%以上含むポリマーであり、具体的には、(1)ポリ乳酸、または乳酸−他の脂肪族ヒドロキシカルボン酸コポリマー、(2)多官能多糖類および乳酸単位を含む乳酸系ポリマー、(3)脂肪族多価カルボン酸単位、脂肪族多価アルコール単位および乳酸単位を含む乳酸系ポリマー、ならびに(4)これらの混合物である。これらの中では、使用時の透明性および耐熱性等を考慮すると、好ましくはポリ乳酸および乳酸−他の脂肪族ヒドロキシカルボン酸コポリマーであり、さらに好ましくはポリ乳酸である。なお、乳酸にはL−乳酸とD−乳酸とが存在するが、本発明において、単に乳酸という場合は、特にことわりがない限り、L−乳酸およびD−乳酸の両方を意味する。
含有率が、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以
上である。
り、結晶化時の速度が早く、成形可能な乳酸系ポリマー組成物が得られる。
b)有機結晶核剤(B)
本発明における有機結晶核剤(B)とは、上記乳酸系ポリマー組成物内に存在し、ある条件下で加熱処理を行った際に結晶核となり、結晶化を促進させる効果を有するものである。その際、結晶の大きさおよび数を制御して透明性を保持することが好ましい。
Krevelen,D.H.,1990. Properties of Polymers.Elsevier、p.213参照)によって計算された値である。
上記乳酸系ポリマー組成物は、上記乳酸系ポリマー(A)および有機結晶核剤(B)以外にも、必要に応じて他の添加剤を含んでもよい。このような他の添加剤としては、たとえば、結晶化促進剤、アンチブロッキング剤、滑剤、可塑剤、静電防止剤、防曇剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐衝撃性改良剤などが挙げられる。
品名;理研ビタミン(株)製)およびラクトサイザーGP−4001(商品名;荒川化学(株)製)等は、安価でかつ容易に入手でき、結晶化促進効果も高いことから、好ましく用いることができる。
むことが好ましく、さらに、該SiO2が無水シリカであることがより好ましい。
が好ましい。
上記乳酸系ポリマー組成物は、乳酸系ポリマー(A)および有機結晶核剤(B)、必要に応じて結晶化促進剤、アンチブロッキング剤、滑剤、離型剤、耐衝撃改良剤などの他の添加剤を混合することにより得られる。各成分の混合は、公知公用の方法や混練技術を適用できる。例えば、
(1)パウダー状もしくはペレット状の乳酸系ポリマー(A)および有機結晶核剤(B)、必要に応じて他の添加剤をリボンブレンダーなどで一括混合した後、2軸押出機で組成物を加熱溶融しながら押出しペレット化する方法;
(2)パウダー状もしくはペレット状の乳酸系ポリマー(A)を押出ペレット化する際に、有機結晶核剤(B)および必要に応じて他の添加剤を、サイドフィードや液体注入ポンプで押出し機のシリンダー内に添加混合する方法;
(3)予め有機結晶核剤(B)および必要に応じて他の添加剤を、高濃度に押出しペレット化したペレット(マスターバッチ)を製造した後、そのマスターバッチを、パウダー状もしくはペレット状の乳酸系ポリマー(A)でドライブレンド等により希釈して成形品を加工する方法;
(4)上記方法を組み合わせて混合する方法
などが挙げられる。
本発明の多層シートを構成する非晶性の層(Y)は、乳酸系ポリマーを含み、前述の結晶化可能な層(X)と比較して加熱結晶化速度が遅い性質を有する。具体的には、無添加の乳酸系ポリマー、結晶化を促進しない程度の添加剤を含む乳酸系ポリマー、結晶化可能な層(X)と比較して結晶性が低い、例えば光学純度が低い乳酸系ポリマーなどが好ましい。
上記非晶性の層(Y)に含まれる乳酸系ポリマーとしては、上述した乳酸系ポリマー(A)と同様のものを用いることができる。また、上記非晶性の層(Y)は、本発明の効果を損なわない範囲で他の添加剤を含有してもよい。このような他の添加剤としては、上述したアンチブロッキング剤、滑剤、可塑剤、静電防止剤、防曇剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐衝撃性改良剤や、成形加工時の成形性を向上するための離型剤などが挙げられる。
本発明の多層シートは、上記結晶化可能な層(X)を少なくとも1層と、上記非晶性の層(Y)を少なくとも2層とを有し、両側の最外層が前記非晶性の層(Y)である。したがって、本発明の多層シートにおける多層構造としては、たとえば、層(Y)/層(X)/層(Y)の3層構造、層(Y)/層(X)/層(Y)/層(X)/層(Y)の5層構造などが挙げられる。また、同じ層(X)または層(Y)であっても、区別可能な層である場合には、たとえば、層(Y)/層(X1)/層(X2)/層(Y)や、層(Y1)/層(X)/層(Y1)/層(Y2)等の4層構造、層(Y1)/層(X1)/層(X2)/層(Y2)/層(Y1)等の5層構造などのような多層構造をとることができる。このように、本発明の多層シートは、3層以上の多層構造を有することができ、目的によってはバリアー性や耐衝撃性などの機能を付与することも可能である。特に上記のような機能が必要ない場合は、生産効率などを考慮すれば、層(Y)/層(X)/層(Y)の3層構造であることが好ましい。
本発明の多層シートは、公知公用の押出し機や押出し技術で製造することができる。また、必要に応じて延伸加工することにより延伸シートを製造することもできる。
本発明の成形品は、上述した本発明の多層シートを、成形前もしくは成形時に結晶化させながら成形することにより得られ、透明性および耐熱性に優れている。
本発明の多層シートから得られる成形品が十分な耐熱性を有するためには、上記工程(1)において、上記多層シートを、ガラス転移温度以上から融点の間の温度、たとえば、乳酸系ポリマー(A)がポリ乳酸の場合は85℃〜140℃、好ましくは90℃〜130℃の温度に加熱し、後述の範囲に結晶化させることが必要である。
熱によって加熱する方法が一般的に用いられており、ヒーター温度は、乳酸系ポリマー組成物のガラス転移温度から700℃ 、好ましくは150℃〜500℃、より好ましくは
200℃〜500℃、さらに好ましくは250℃〜450℃、特に好ましくは300℃〜450℃であり、加熱時間は成形前のシート厚みによって変化するが、1秒〜60秒、好ましくは1秒〜30秒、より好ましくは1秒〜20秒、さらに好ましくは1秒〜10秒、特に好ましくは1秒〜7秒である。
℃、さらに好ましくは80℃〜175℃であり、加熱時間は1秒〜20秒、好ましくは1秒〜15秒、より好ましくは1秒〜10秒、さらに好ましくは1秒〜5秒、特に好ましくは1秒〜3秒である。
本発明の成形品を得るための成形は、真空成形、真空圧空成形、熱板圧空成形、プレス成形等の公知公用の成形方法によって、成形時に上述した温度に設定した金型に接触させながら行う。この際、成形とともに結晶化を同時に行ってもよい。なお、本発明の成形品は、ポリスチレン(PS)やポリエチレンテレフタレート(PET)等の汎用樹脂と同等な成形サイクルで成形することができる。
好ましくは0.1%〜10%、さらに好ましくは0.5%〜7%、特に好ましくは0.5%〜5%である。
〔実施例1〕
ポリ乳酸樹脂a1(LACEA H−400、三井化学製、重量平均分子量(Mw);21万、分散度(Mw/Mn);3.2、L体/D体=98.2/1.8、融点165℃)100重量部、および有機結晶核剤EBL(エチレンビスラウリン酸アミド、日本化成(株)製「スリパックスL」)0.76重量部をヘンシェルミキサーにて混合後、押出機シリンダー設定温度190〜220℃の条件にてペレット化した。
ッパーへ供給した。各層の厚みを、外層/中間層/外層=10/80/10となるようにして、温度を30℃に調整したキャストロール上に溶融樹脂を押出し、厚み1000μmの3層シートを得た。シート化には、中間層のスクリュー径65mmφ、両外層のスクリュー径50mmφ、ダイス幅550mmのシート化機を使用した。
<結晶化度>
示差熱走査熱量分析装置(セイコー社製)を用いて、多層シートを10℃/minの速度で昇温した時の結晶化熱量(ΔHc)および融解熱量(ΔHm)を測定した。本発明における結晶化度は、以下の計算式:
結晶化度(%)=(融解熱量−結晶化熱量)/93×100
で求めた値をいう。
中間層の結晶化度(%)=多層シートの結晶化度(%)×全層厚み/中間層厚み
で算出した。
得られた成形品(カップ)については、成形品の側面中央部から、縦5cm×横2cmのカットサンプルを採取した。このカットサンプルについて、厚みを測定し、JIS K6714に準じ、東京電色社製Haze Meterを用いて測定した。
得られた成形品を70℃の乾燥機中に2時間保持した後、変形の程度を目視にて評価し
た。評価基準は、変形なしの場合を「○」、僅かに変形した場合を「△」、大きく変形した場合を「×」とした。
収縮率=(h0−h)/h0×100
上記式中、h0は耐熱テスト前のカップ高さであり、hは耐熱テスト後のカップ高さで
ある。
表1に示したように、有機結晶核剤(B)の種類と量、各層の構成を変更したこと以外は、実施例1と同様な方法で乳酸系ポリマー組成物の調製、多層シートの作製、成形品の作製およびこれらの評価を行った。結果を表1に示す。なお、表1中の有機結晶核剤(B
)の種類は以下のとおりである。
EBO:エチレンビスオレイン酸アミド(日本化成(株)製「スリパックスO」、110℃でのポリ乳酸に対する溶解度:2.08×10-5g/g)
EBC:エチレンビスカプリン酸アミド(日本化成(株)製「スリパックスC−10」、110℃でのポリ乳酸に対する溶解度:11.8×10-5g/g)
EBS:エチレンビスステアリン酸アミド(日本化成(株)製「スリパックスE」、110℃でのポリ乳酸に対する溶解度:0.12×10-5g/g)
〔実施例6、7および比較例6〕
表2に示したように、成形時の多層シート温度、プラグ材質を変更した以外は、実施例2で作製した多層シートと同様の構成を有する多層シートを用いて、実施例1と同様の方法で成形品の作製および評価を行った。結果を表2に示す。
実施例2で作製した多層シートを用いて、金型温度を90℃に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で成形を試みたが、カップ状に成形することができなかった。
Claims (11)
- 乳酸系ポリマー(A)および有機結晶核剤(B)を含む結晶化可能な乳酸系ポリマー組成物からなる層(X)を少なくとも1層と、非晶性の乳酸系ポリマーを含む層(Y)を少なくとも2層とを有する多層シートであって、
前記多層シートの両側の最外層が前記層(Y)であり、
前記有機結晶核剤(B)が、110℃でのポリ乳酸に対する溶解度が1.0×10-5(g/g)以上である少なくとも1種のエチレンビスカルボン酸アミドを含むこと
を特徴とする多層シート。 - 前記有機結晶核剤(B)が、前記乳酸系ポリマー組成物中に含まれる乳酸系ポリマー(A)100重量部に対して0.1〜1.5重量部の量で含まれることを特徴とする請求項1に記載の多層シート。
- 前記層(X)の厚みの割合が、多層シート全体の厚みに対して20〜98%であることを特徴とする請求項1または2に記載の多層シート。
- 前記層(Y)と前記層(X)と前記層(Y)とが、この順に積層されている3層構造であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の多層シート。
- 前記有機結晶核剤(B)が、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミドおよびエチレンビスカプリン酸アミドからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の多層シート。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の多層シートを用いて成形したことを特徴とする成形品。
- 前記成形が、金型温度80℃以下の金型を用いて行われたことを特徴とする請求項6に記載の成形品。
- JIS K6714に準拠して測定したヘイズ(Haze)が15%以下であることを特徴とする請求項6または7に記載の成形品。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の多層シートを85℃〜140℃に加熱して層(X)を半結晶化させる工程(1)と、
前記加熱処理された多層シートを、金型温度80℃以下の金型を用いて成形する工程(2)と
を含むことを特徴とする成形品の製造方法。 - 前記層(X)の結晶化度が、前記工程(1)の処理によって10%〜40%となることを特徴とする請求項9に記載の成形品の製造方法。
- 前記工程(2)の成形が、シンタックチック樹脂を材質として含むプラグを用いたプラグアシスト方式で行われることを特徴とする請求項9または10に記載の成形品の製造方法。
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