JP6916729B2 - ポリ乳酸樹脂組成物積層シートの製造方法 - Google Patents

ポリ乳酸樹脂組成物積層シートの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、ポリ乳酸樹脂組成物積層シートの製造方法に関する。更に詳しくは、日用品、化粧品、家電製品等のパックやトレイ等の成形体に好適に使用し得るポリ乳酸樹脂組成物積層シートの製造方法に関する。
ポリ乳酸樹脂は、原料が植物由来であるために二酸化炭素排出量が極めて少ないこと等からその利用が期待されているが、樹脂の特性として剛性が強く透明性が高いこと等の特徴により、積層化により機能性を付与する技術が検討されている。
例えば、特許文献1には、高い耐衝撃性と透明性を両立するポリ乳酸樹脂組成物積層シートとして、可塑剤を含有する層Pと、層Pよりも可塑剤の含有量が少ない層Qを備えたポリ乳酸樹脂組成物積層シートが提案されている。
特開2017−24407号公報
特許文献1のポリ乳酸樹脂組成物積層シートは、高い耐衝撃性と透明性を両立するものであるが、特に剛性については更なる改良が求められるところである。
本発明は、剛性に優れるポリ乳酸樹脂組成物積層シートの製造方法に関する。
本発明は、複数のポリ乳酸樹脂組成物の層を含むポリ乳酸樹脂組成物積層シートの製造方法であって、下記工程(1)〜(3)を含む、ポリ乳酸樹脂組成物積層シートの製造方法に関する。
工程(1):(P−A)ポリ乳酸樹脂及び(P−B)可塑剤を含有する層P、並びに(Q−A)ポリ乳酸樹脂を含有する層Qを含む複数の層を積層して積層シートを得る工程、ここで、層P及び/又は層Qの融点以上の温度で接触させて積層し、層Pが積層シートの表面側と裏面側の少なくとも一方の最外層になるように積層し、層Qがさらに(Q−B)可塑剤を含む場合においては、(P−B)可塑剤の含有量の方が(Q−B)可塑剤の含有量より多い工程
工程(2):工程(1)の後、積層シートを2秒間以上保持する工程
工程(3):工程(2)の後、積層シートを冷却し最外層の表面の温度を60℃以下とする工程
本発明によれば、剛性に優れるポリ乳酸樹脂組成物積層シートの製造方法を提供することができる。
多層Tダイの断面を示す概略図である。
本発明の製造方法で得られるポリ乳酸樹脂組成物積層シートは、ポリ乳酸樹脂組成物の層が少なくとも2種類積層されたものであり、一方の層が他方の層より可塑剤の含有量が多いことを特徴とする。一般に、外部から衝撃が加わると緩和作用を奏するために、衝撃を吸収するシートの体積に応じて可塑剤が必要となるところ、可塑剤が均一に分散された系では全体体積に応じた可塑剤量が必要となる。すると、シート全体に亘って透明性や剛性が低下することになる。一方、可塑剤含有量が多い層(層Pとも称する)と少ない層(層Qとも称する)とが存在する本発明においては、外部からの衝撃緩和は可塑剤含有量が多い層Pが担うため、当該層に均一分散系で必要とされる可塑剤量と同じ量を含有させることになると可塑剤の分布割合が高くなり結果として耐衝撃性が向上すると考えられる。しかしながら、層Pは可塑剤含有量が多いため、引張弾性率や引張強度といった剛性が低く、単に積層シートを作製した場合、積層シート自体の剛性も低下してしまう場合があることが分かった。
このような積層シートは、層P及び層Qを含む複数の層を高温で積層した後、冷却することで得られることが知られている。本発明者らが前記課題について検討したところ、層P及び/又は層Qの融点以上の温度で接触させて積層し、特定時間保持した後に冷却することで、引張弾性率の理論値を大きく超えるものとなることを新たに見出した。このメカニズムは定かではないが、融点以上の温度で接触させた状態で特定時間保持した後に冷却することで、層P、層Q間の界面において可塑剤の分布幅が広がり、これにより弾性率が向上するためと推定される。ただし、これらの推測は、本発明を限定するものではない。なお、本発明のポリ乳酸樹脂組成物積層シートのことを、単に、本発明の積層シートと記載することもある。
本発明の製造方法は、下記工程(1)〜(3)を含む。
<工程(1)>
工程(1)は、(P−A)ポリ乳酸樹脂及び(P−B)可塑剤を含有する層P、並びに(Q−A)ポリ乳酸樹脂を含有する層Qを含む複数の層を積層して積層シートを得る工程である。工程(1)では、P及び/又は層Qの融点以上の温度で接触させて積層する。例えば、フィードブロック法、マルチマニホールド法等のTダイを用いた溶融共押出成形に供することで積層することができる。層P及び/又は層Qが複数存在する場合においては、積層シート中の少なくとも1の層Pと少なくとも1の層Qとを接触させればよく、必ずしも全ての層P、層Q同士を接触させて積層することを要しないが、剛性と耐衝撃性の観点から、全ての層P、層Q同士を接触させて積層することが好ましい。また、層Pは積層シートの表面側と裏面側の少なくとも一方の最外層に、好ましくは表面側と裏面側の各最外層に配置されるのに対し、層Qは内側の層であればよく、層Pの間に層Qが存在することが好ましい。例えば、3層構造であれば中心に層Qが位置し、5層構造であれば最外層以外のいずれかに層Qを配置することができる。工程(1)における積層数は特に限定されないが、剛性と耐衝撃性の観点から、好ましくは3層以上8層以下、より好ましくは3層以上5層以下であり、例えば、層P/層Q/層P/層Q/層Pの順、層P/層Q/層Pの順に積層することができる。また、層Pより可塑剤の含有量が少なく、層Qより可塑剤の含有量の多い層P’などを含む3種類以上の層から構成される場合には、可塑剤の最も多い層を層P、最も少ない層を層Qとする。そして、このような層P’を用いて層P/層P’/層Q/層P’/層Pの順に積層することなどもできる。
工程(1)における積層時の温度は、層P及び層Qの融点のうち、高い方の温度を基準として0℃以上であり、剛性の観点から、好ましくは10以上、より好ましくは20℃以上、さらに好ましくは30℃以上であり、上限は特に限定されるものではないが、例えば、80℃以下である。なお、図1のようなTダイを使用した共押出成形の場合における積層時の温度は、Tダイの設定温度である。
以下、工程(1)に供される層P、層Qについて説明する。
〔層P〕
層Pは、(P−A)ポリ乳酸樹脂及び(P−B)可塑剤含有するポリ乳酸樹脂組成物の層である。
[(P−A)ポリ乳酸樹脂]
層Pにおけるポリ乳酸樹脂としては、市販されているポリ乳酸樹脂、例えば、Nature Works社製:Nature Works PLA/NW2003D、NW3001D、NW4032D、NW4060Dや、トヨタ自動車社製:エコプラスチックU'z S−09、S−12、S−17等の他、乳酸やラクチドから合成したポリ乳酸樹脂が挙げられる。なかでも、層Pのポリ乳酸樹脂組成物の剛性を向上する観点から、光学純度が好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上のポリ乳酸樹脂が好ましく、例えば、Nature Works社製ポリ乳酸樹脂(NW4032D等)を用いることができる。なお、本発明におけるポリ乳酸の光学純度は、「ポリオレフィン等合成樹脂製食品容器包装等に関する自主基準 第3版改訂版 2004年6月追補 第3部 衛生試験法 P12-13」記載のD体含有量の測定方法に従って求めることができる。
また、本発明において、ポリ乳酸樹脂として、ポリ乳酸樹脂組成物の強度や透明性の観点から、異なる異性体を主成分とする乳酸成分を用いて得られた2種類のポリ乳酸からなるステレオコンプレックスポリ乳酸樹脂を用いてもよい。
また、本発明におけるポリ乳酸樹脂は、ポリ乳酸樹脂以外の生分解性ポリエステル樹脂やポリプロピレン等の非生分解性樹脂がポリ乳酸樹脂とのブレンドによるポリマーアロイとして含有されていてもよい。なお、本明細書において「生分解性」とは、自然界において微生物によって低分子化合物に分解され得る性質のことであり、具体的には、JIS K6953(ISO14855)「制御された好気的コンポスト条件の好気的かつ究極的な生分解度及び崩壊度試験」に基づいた生分解性のことを意味する。
ポリ乳酸樹脂の含有量は、剛性の観点から、層Pのポリ乳酸樹脂組成物中、80質量%以上が好ましく、85質量%以上がより好ましく、98質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましい。
[(P−B)可塑剤]
層Pで用いられる可塑剤としては、剛性、耐衝撃性、透明性、及び成形性の観点から、以下の(i)及び(ii)からなる群より選ばれる1種又は2種以上のエステル化合物を含むことが好ましい。
(i)分子中に2個以上のエステル基を有するエステル化合物であって、該エステル化合物を構成するアルコール成分の少なくとも1種が水酸基1個当たり炭素数2〜3のアルキレンオキサイドを平均0.5〜8モル付加したアルコールであるエステル化合物、及び
(ii)式(I):
O−CO−R−CO−〔(OR)O−CO−R−CO−〕OR (I)
(式中、Rは炭素数が1〜4のアルキル基、Rは炭素数が2〜4のアルキレン基、Rは炭素数が2又は3のアルキレン基であり、mは1〜6の数、nは1〜12の数を示し、但し、全てのRは同一でも異なっていてもよく、全てのRは同一でも異なっていてもよい)
で表される化合物
(i)のエステル化合物としては、剛性、耐衝撃性、透明性、及び成形性の観点から、分子中に2個以上、好ましくは2個以上5個以下、より好ましくは2個以上3個以下のエステル基を有するエステル化合物であって、該エステル化合物を構成するアルコール成分の少なくとも1種が水酸基1個当たり炭素数2又は3のアルキレンオキサイドを平均0.5モル以上8モル以下、好ましくは1モル以上6モル以下、より好ましくは1モル以上3モル以下付加したアルコールであるエステル化合物を用いることができる。なかでも、好ましくは、分子中に2個以上、好ましくは2個以上5個以下、より好ましくは2個以上3個以下のエステル基を有する多価アルコールエステル又は多価カルボン酸エステルであって、該エステル化合物を構成するアルコール成分の少なくとも1種が水酸基1個当たり炭素数2又は3のアルキレンオキサイドを平均0.5モル以上8モル以下、好ましくは1モル以上6モル以下、より好ましくは1モル以上3モル以下付加したアルコールであるエステル化合物を用いることができる。
具体的には、例えば、特開2008−174718号公報及び特開2008−115372号公報に記載の可塑剤が挙げられる。なかでも、酢酸とグリセリンのエチレンオキサイド平均3モル以上6モル以下付加物(水酸基1個あたりエチレンオキサイドを1モル以上2モル以下付加)とのエステル、酢酸とエチレンオキサイドの平均付加モル数が4以上6以下のポリエチレングリコールとのエステル、コハク酸とエチレンオキサイドの平均付加モル数が2以上6以下のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(水酸基1個あたりエチレンオキサイドを2モル以上6モル以下付加)とのエステル、アジピン酸とジエチレングリコールモノメチルエーテルとのエステル、1,3,6−ヘキサントリカルボン酸とジエチレングリコールモノメチルエーテルとのエステルが好適に用いられる。
(ii)のエステル化合物は、剛性、耐衝撃性、透明性、及び耐ブリード性の観点から、好ましい。
式(I)におけるRは、炭素数が1以上4以下、好ましくは1又は2のアルキル基を示し、1分子中に2個存在して、分子の両末端に存在する。Rは炭素数が1以上4以下であれば、直鎖であっても分岐鎖であってもよい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基が挙げられ、なかでも、ポリ乳酸樹脂との相溶性を向上させ界面における可塑剤の分布幅を広げ、可塑剤のブリードアウトを抑制する観点、及び耐衝撃性と透明性の観点から、メチル基が好ましい。
式(I)におけるRは、炭素数が2以上4以下のアルキレン基を示し、直鎖のアルキレン基が好適例として挙げられる。具体的には、エチレン基、1,3−プロピレン基、1,4−ブチレン基が挙げられ、なかでも、ポリ乳酸樹脂との相溶性を向上させ界面における可塑剤の分布幅を広げ、可塑剤のブリードアウトを抑制する観点、及び耐衝撃性と透明性の観点から、エチレン基、1,3−プロピレン基が好ましく、エチレン基がより好ましい。但し、全てのRは同一でも異なっていてもよい。
式(I)におけるRは、炭素数が2又は3のアルキレン基を示し、ORはオキシアルキレン基を示す。具体的には、エチレン基、1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基が挙げられる。但し、全てのRは同一でも異なっていてもよい。
mはオキシアルキレン基の平均の繰り返し数を示し、1以上6以下の数である。mが大きくなると、式(I)で表されるエステル化合物のエーテル基価が上がり、酸化されやすくなり安定性が低下する傾向がある。ポリ乳酸樹脂との相溶性を向上させる観点から、1以上4以下の数が好ましく、1以上3以下の数がより好ましく、1以上2以下の数が更に好ましい。
nは平均重合度を示し、1以上12以下の数である。ポリ乳酸樹脂との相溶性を向上させ界面における可塑剤の分布幅を広げ、可塑剤のブリードアウトを抑制する観点、及び耐衝撃性と透明性の観点から、1以上4以下の数が好ましく、1以上3以下の数がより好ましく、1以上2以下の数が更に好ましい。
かかる構造のうちでも、透明性の観点から、コハク酸、グルタル酸、及びアジピン酸から選ばれる少なくとも1つの二塩基酸と、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、及び1,3−プロパンンジオールから選ばれる少なくとも1つの2価アルコールのオリゴエステル〔式(I)中、n=1〜3〕が好ましい。
式(I)で表される化合物は、市販品であっても公知の製造方法に従って合成したものを用いてもよく、例えば特開2012−62467号公報に開示されているような方法に従って製造することができる。
その他の可塑剤としては、例えば、前記(i)及び(ii)以外の、ポリエステル系可塑剤、グリセリン系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤、ポリアルキレングリコール系可塑剤、及びエポキシ系可塑剤等を用いることができる。本発明で用いられる全可塑剤における前記(i)及び(ii)からなる群より選ばれる1種又は2種以上のエステル化合物の含有量は、剛性、耐衝撃性、及び透明性の観点から、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上が更に好ましく、95質量%以上が更により好ましく、100質量%が更により好ましい。なお、本明細書において、(i)及び(ii)からなる群より選ばれる1種又は2種以上のエステル化合物の含有量とは、複数の化合物を用いている場合は合計含有量を意味する。
製造時における、層Pのポリ乳酸樹脂組成物中の可塑剤の含有量は、層Pのポリ乳酸樹脂100質量部に対して、耐衝撃性の観点から、5質量部以上が好ましく、7質量部以上がより好ましく、9質量部以上が更に好ましく、13質量部以上が更に好ましく、相溶性、成形性の観点から、20質量部以下が好ましく、18質量部以下がより好ましく、17質量部以下が更に好ましい。
また、層Pのポリ乳酸樹脂組成物中の可塑剤の含有量は、剛性と耐衝撃性の観点から、4質量%以上が好ましく、6質量%以上がより好ましく、8質量%以上が更に好ましく、10質量%以上が更に好ましく、透明性の観点から、18質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、14質量%以下が更に好ましい。
[(P−C)有機結晶核剤]
層Pのポリ乳酸樹脂組成物は、有機結晶核剤をさらに含有することができる。
有機結晶核剤としては、透明性の観点から、以下の(a)〜(d)からなる群より選ばれる少なくとも1種の有機結晶核剤を用いることが好ましい。
(a)イソインドリノン骨格を有する化合物、ジケトピロロピロール骨格を有する化合物、ベンズイミダゾロン骨格を有する化合物、インジゴ骨格を有する化合物、フタロシアニン骨格を有する化合物、及びポルフィリン骨格を有する化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の有機化合物〔有機結晶核剤(a)という〕
(b)カルボヒドラジド類、ウラシル類、及びN−置換尿素類からなる群より選ばれる少なくとも1種の有機化合物〔有機結晶核剤(b)という〕
(c)芳香族スルホン酸ジアルキルの金属塩、リン酸エステルの金属塩、フェニルホスホン酸の金属塩、ロジン酸類の金属塩、芳香族カルボン酸アミド、及びロジン酸アミドからなる群より選ばれる少なくとも1種の有機化合物〔有機結晶核剤(c)という〕
(d)分子中に水酸基とアミド基を有する化合物及びヒドロキシ脂肪酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種の有機化合物〔有機結晶核剤(d)という〕
これらの中では、透明性向上の観点から、有機結晶核剤(c)、有機結晶核剤(d)が好ましく、有機結晶核剤(d)がより好ましい。
有機結晶核剤(c)としては、上記の観点から、置換基を有しても良いフェニル基とホスホン基(−PO(OH)2)を有するフェニルホスホン酸の金属塩が好ましく、フェニルホスホン酸の具体例としては、無置換のフェニルホスホン酸、メチルフェニルホスホン酸、エチルフェニルホスホン酸、プロピルフェニルホスホン酸、ブチルフェニルホスホン酸、ジメトキシカルボニルフェニルホスホン酸、ジエトキシカルボニルフェニルホスホン酸等が挙げられ、無置換のフェニルホスホン酸が好ましい。
有機結晶核剤(d)の分子中に水酸基とアミド基を有する化合物としては、水酸基を有する脂肪族アミドが好ましく、具体例としては、12−ヒドロキシステアリン酸モノエタノールアミド等のヒドロキシ脂肪酸モノアミド、メチレンビス12−ヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビス12−ヒドロキシステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビス12−ヒドロキシステアリン酸アミド等のヒドロキシ脂肪酸ビスアミド等が挙げられる。
層Pのポリ乳酸樹脂組成物中の有機結晶核剤の含有量は、層Pのポリ乳酸樹脂100質量部に対して、シートの結晶化度を向上させる観点から、0.1質量部以上が好ましく、0.3質量部以上がより好ましく、透明性の観点から、1.0質量部以下が好ましく、0.8質量部以下がより好ましく、0.75質量部以下が更に好ましく、0.5質量部以下が更に好ましい。
[(P−D)加水分解抑制剤]
層Pのポリ乳酸樹脂組成物は、加水分解抑制剤をさらに含有することができる。
加水分解抑制剤としては、ポリカルボジイミド化合物やモノカルボジイミド化合物等のカルボジイミド化合物が挙げられる。
モノカルボジイミド化合物としては、ジフェニルカルボジイミド、ジ−2,6−ジメチルフェニルカルボジイミド、ジ−2,6−ジエチルフェニルカルボジイミド、ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド、ジ−2,6−ジ−tert−ブチルフェニルカルボジイミド、ジ−o−トリルカルボジイミド、ジ−p−トリルカルボジイミド、ジ−2,4,6−トリメチルフェニルカルボジイミド、ジ−2,4,6−トリイソプロピルフェニルカルボジイミド、ジ−2,4,6−トリイソブチルフェニルカルボジイミド等の芳香族モノカルボジイミド化合物;ジ−シクロヘキシルカルボジイミド、ジ−シクロヘキシルメタンカルボジイミド等の脂環族モノカルボジイミド化合物;ジ−イソプロピルカルボジイミド、ジ−オクタデシルカルボジイミド等の脂肪族モノカルボジイミド化合物等が挙げられる。
ポリカルボジイミドとしては、具体的には、ポリ(4,4’−ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(p−フェニレンカルボジイミド)、ポリ(m−フェニレンカルボジイミド)、ポリ(ジイソプロピルフェニルカルボジイミド)、ポリ(トリイソプロピルフェニルカルボジイミド)等の芳香族ポリカルボジイミド;ポリ(ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)等の脂環族ポリカルボジイミドが挙げられる。
前記カルボジイミド化合物は、単独で又は2種以上組み合わせて用いてもよい。これらの中では、耐衝撃性の観点から、ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド、ポリ(ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)が好ましく、ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミドがより好ましい。
層Pのポリ乳酸樹脂組成物中の加水分解抑制剤の含有量は、耐久性を向上させる観点から、層Pのポリ乳酸樹脂100質量部に対して、0.05質量部以上が好ましく、0.1質量部以上がより好ましく、0.3質量部以上が更に好ましく、透明性向上の観点から3質量部以下が好ましく、2質量部以下がより好ましく、1質量部以下が更に好ましい。
層Pのポリ乳酸樹脂組成物は、前記以外の他の成分として、滑剤、無機結晶核剤、充填剤(無機充填剤、有機充填剤)、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、防曇剤、光安定剤、顔料、防カビ剤、抗菌剤、発泡剤、衝撃改良剤等を、本発明の効果を損なわない範囲で含有することができる。また同様に、本発明の効果を阻害しない範囲内で他の高分子材料や他の樹脂組成物を含有することも可能である。これらの使用量は公知技術に従って適宜設定することができる。
層Pにおけるポリ乳酸樹脂組成物は、前記成分(P−A)、(P−B)を含有するものであれば特に限定なく調製することができ、例えば、ポリ乳酸樹脂及び可塑剤、さらに必要により、有機結晶核剤及び加水分解抑制剤を含む他の添加剤を含有する原料を、密閉式ニーダー、1軸もしくは2軸の押出機、オープンロール型混練機等の公知の混練機を用いて溶融混練して調製することができる。原料は、予めヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等を用いて均一に混合した後に、溶融混練に供することも可能である。なお、ポリ乳酸樹脂組成物を調製する際にポリ乳酸樹脂の可塑性を促進させるため、超臨界ガスを存在させて溶融混合させてもよい。溶融混練後は、公知の方法に従って、溶融混練物を乾燥させてもよい。
溶融混練温度は、分解抑制及び透明性の観点から、好ましくは170℃以上であり、好ましくは220℃以下、より好ましくは200℃以下である。溶融混練時間は、溶融混練温度、混練機の種類によって一概には決定できないが、15秒間以上900秒間以下が好ましい。
〔層Q〕
本発明における層Qは、(Q−A)ポリ乳酸樹脂を含有するポリ乳酸樹脂組成物の層である。
[(Q−A)ポリ乳酸樹脂]
層Qにおけるポリ乳酸樹脂は、層Pにおけるポリ乳酸樹脂と同様のものを用いることができる。具体的には、層Pにおけるポリ乳酸樹脂の項に例示されたものである。なかでも、層Qのポリ乳酸樹脂組成物の透明性を向上する観点から、光学純度が好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上、更に好ましくは80%以上であり、好ましくは99%以下のポリ乳酸樹脂が好ましく、例えば、Nature Works社製ポリ乳酸樹脂(NW2003D、4032D、4060D等)を用いることができる。
ポリ乳酸樹脂の含有量は、剛性と透明性の観点から、層Qのポリ乳酸樹脂組成物中、95質量%以上が好ましく、99質量%以上がより好ましい。
[(Q−B)可塑剤]
層Qのポリ乳酸樹脂組成物中にはさらに可塑剤が含まれていてもよい。層Qがさらに(Q−B)可塑剤を含む場合においては、層Pにおける(P−B)可塑剤の含有量の方が(Q−B)可塑剤の含有量より多い。層Qにおける可塑剤は、層Pにおける可塑剤と同様のものを用いることができ、具体的には、層Pにおける可塑剤の項に例示されたものが挙げられる。
製造時における、層Qのポリ乳酸樹脂組成物中の可塑剤の含有量は、層Qのポリ乳酸樹脂100質量部に対して、剛性と透明性の観点から、6質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましく、4質量部以下が更に好ましく、3質量部以下が更に好ましく、2質量部以下がより更に好ましい。下限は特に設定されないが、0質量部以上であればよい。
また、層Qのポリ乳酸樹脂組成物中の可塑剤の含有量は、0質量%以上6質量%以下であるが、剛性の観点から、5.4質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、4質量%以下が更に好ましく、3質量%以下がより更に好ましい。なお、本明細書において、可塑剤の含有量が0質量部又は0質量%とは、層Qにおけるポリ乳酸樹脂組成物に可塑剤が含まれない態様のことであり、本発明においては、層Qに可塑剤が添加されても、添加されなくてもよい。
本発明においては、層Q中にさらに可塑剤が含まれる場合、層P中の可塑剤と層Q中の可塑剤では、層P中の可塑剤の含有量が多いことを一つの特徴とする。層Qにおけるポリ乳酸樹脂の含有量を基準とし、層Qにおけるポリ乳酸樹脂100質量部に対する含有量として比較した場合、層P中の可塑剤の含有量は、層Q中の可塑剤の含有量に比べて、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上多ければよい。また、上限は特に設定されない。
また、本発明の製造方法に用いられる可塑剤の合計含有量としては、積層シート中のポリ乳酸樹脂の合計含有量を100質量部とした場合、2質量部以上が好ましく、3質量部以上がより好ましく、4.5質量部以上が更に好ましく、6質量部以上がより更に好ましく、16質量部以下が好ましく、12質量部以下がより好ましく、10質量部以下が更に好ましい。本発明では、可塑剤の全体としての使用量が前記範囲内のような量であっても十分な耐衝撃性と剛性が得られる。
層Qにおけるポリ乳酸樹脂組成物は、前記以外の他の成分として、加水分解抑制剤、滑剤、有機結晶核剤、無機結晶核剤、充填剤(無機充填剤、有機充填剤)、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、防曇剤、光安定剤、顔料、防カビ剤、抗菌剤、発泡剤、衝撃改良剤、結晶化阻害剤等を、本発明の効果を損なわない範囲で含有することができる。また同様に、本発明の効果を阻害しない範囲内で他の高分子材料や他の樹脂組成物を含有することも可能である。これらの使用量は公知技術に従って適宜設定することができる。
層Qにおけるポリ乳酸樹脂組成物は、前記成分(Q−A)を含有するもの、必要に応じて更に前記成分(Q−B)を含有するものであれば特に限定なく調製することができ、層Pにおけるポリ乳酸樹脂組成物と同様にして調製することができる。具体的には、層Pにおけるポリ乳酸樹脂組成物の調製方法の項を参照することができる。
〔その他任意の層〕
工程(1)においては、層Pと層Q以外の層をさらに積層させてもよい。積層シートに剥離性、ガスバリア性、ヒートシール性など各種機能性を付与する層が挙げられ、その機能に応じて適切な位置に積層させることができる。具体的には、PET、PBT、あるいはPTT等のポリエステル樹脂組成物、PE、PP等のポリオレフィン系樹脂組成物、あるいはナイロン樹脂組成物を構成成分とする層などが挙げられる。これら任意の層は、公知の手法によって、適宜調製することができる。
<工程(2)>
工程(2)は、工程(1)の後、積層シートを2秒間以上保持する工程である。工程(2)における保持時間は、工程(1)の積層直後から、後述する工程(3)の冷却直前までの時間である。例えば、図1のようなTダイを使用した共押出成形の場合においては、積層シートがTダイ内接触区間2とエアギャップ3とを通過する時間の合計であり、押出速度やエアギャップの距離を調節することで、保持時間を調節することができる。
工程(2)における保持時間は、剛性の観点から、2秒間以上であり、好ましくは3秒間以上であり、より好ましくは5秒間以上であり、さらに好ましくは7秒間以上であり、剛性の観点から、好ましくは30秒間以下であり、より好ましくは25秒間以下であり、さらに好ましくは20秒間以下である。
保持時間における積層シートの最外層の表面の温度は60℃より高い温度が好ましく、65℃以上がより好ましく、70℃以上がさらに好ましい。なお、最外層の表面の温度とは、最外層の表面の実測した温度を意味し、接触式温度計を用いて測定することができる。
<工程(3)>
工程(3)は、工程(2)の後、積層シートを冷却し最外層の表面の温度を60℃以下とする工程である。積層シートの冷却手段としては、本分野において公知の冷却手段を使用することができ、冷却ロールなどが挙げられる。
冷却ロールの温度は、透明性向上と冷却ロールからの剥離性向上の観点から、40℃未満が好ましく、30℃以下がより好ましい。なお、冷却ロールの表面温度とは、ロール表面の実測した温度を意味し、接触式温度計を用いて測定することができる。
冷却ロールに接する時間としては、冷却ロールの設定温度や冷却ロールの個数、押出速度、シート巻取速度によって異なるため必ずしも規定されるものではないが、例えば透明性向上と冷却ロールからの剥離性向上の観点から、好ましくは1秒以上、より好ましくは3秒以上、更に好ましくは5秒以上であり、好ましくは60秒以下、より好ましくは50秒以下、更に好ましくは40秒以下である。
<その他、任意の工程>
本発明の製造方法においては、積層シートの調製で行われる他の工程を任意に行ってもよい。例えば、工程(3)の後、加熱ロールに接触させることでシートの結晶性を調整し、その後、裁断してもよい。また、得られた積層シートを必要に応じて一軸又は二軸延伸してもよい。
加熱ロールの表面温度は、透明性向上と結晶化度向上の観点から、65℃以上が好ましく、70℃以上がより好ましく、75℃以上が更に好ましく、100℃以下が好ましい。また加熱ロールに接触している時間の合計は、5秒以上が好ましく、10秒以上がより好ましく、15秒以上が更に好ましい。なお、加熱ロールの表面温度とは、ロール表面の実測した温度を意味し、接触式温度計を用いて測定することができる。
<積層シート>
本発明の製造方法で得られた積層シートは、透明性が良好で、耐衝撃性に優れることから、各種用途、例えば、日用品、化粧品、家電製品などの包装材として、ブリスターパックやトレイ、お弁当の蓋等の食品容器、工業部品の輸送や保護に用いる工業用トレイ等の材として好適に用いることができる。
本発明の製造方法で得られた積層シートの厚みは、好ましくは10μm以上であり、より好ましくは100μm以上であり、好ましくは1000μm以下であり、より好ましくは700μm以下である。
本発明の製造方法で得られた積層シートにおける各層は、例えば、層Pを複数含み、そのうち最も厚い1層の厚みが、積層シート全体の厚みに対して、耐衝撃性の観点から、好ましくは5%以上であり、より好ましくは7%以上であり、更に好ましくは11%以上であり、更に好ましくは15%以上であり、剛性と透明性の観点から、好ましくは40%以下であり、より好ましくは35%以下であり、更に好ましくは28%以下であり、更に好ましくは25%以下である。
また、層Pの合計厚みと層Qの厚みの比(層P/層Q)としては、80/20〜10/90が好ましく、55/45〜30/70がより好ましい。
本発明の製造方法で得られた積層シートのヘイズ値は、好ましくは10%以下であり、より好ましくは8%以下であり、さらに好ましくは5%以下である。本明細書において、ヘイズ値は、成形後のシートから5cm×5cm×0.3mmのサンプルを作成し、JIS−K7105規定の積分球式光線透過率測定装置(HM−150 村上色彩技術研究所)を用いて測定する。
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明する。なお、この実施例は、単なる本発明の例示であり、何ら限定を意味するものではない。例中の部は、特記しない限り質量部である。なお、「常圧」とは101.3kPaを、「常温」とは25℃を示す。
可塑剤の製造例1((MeEO)SA、コハク酸とトリエチレングリコールモノメチルエーテルとのジエステル化合物)
攪拌機、温度計、脱水管を備えた3Lフラスコに、無水コハク酸500g、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(和光純薬社製、試薬)2463g、パラトルエンスルホン酸一水酸化物(和光純薬社製、試薬)9.5gを仕込み、空間部に窒素(500mL/分)を吹き込みながら、減圧下(4〜10.7kPa)、110℃で15時間反応させた。反応液の酸価は1.6mgKOH/gであった。反応液に吸着剤キョーワード500SH(協和化学工業社製)27gを添加して80℃、2.7kPaで45分間攪拌してろ過した後、液温115〜200℃、圧力0.03kPaでトリエチレングリコールモノメチルエーテルを留去し、80℃に冷却後、残液を減圧ろ過して、ろ液として、コハク酸とトリエチレングリコールモノメチルエーテルとのジエステル〔(MeEOSA〕を得た。得られたジエステルは、重量平均分子量410、粘度(23℃)27mPa・s、酸価0.2mgKOH/g、鹸化価274mgKOH/g、水酸基価1mgKOH/g以下、色相APHA200であった。なお、本可塑剤は、水酸基1個当たりエチレンオキサイドを3モル付加したアルコールとのエステル化合物である。
可塑剤の製造例2((MeEO)SA、コハク酸とテトラエチレングリコールモノメチルエーテルとのジエステル化合物)
攪拌機、温度計、脱水管を備えた3Lフラスコに、無水コハク酸500g、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル3124g、パラトルエンスルホン酸一水酸化物9.5gを仕込み、空間部に窒素(500mL/分)を吹き込みながら、減圧下(4〜10.7kPa)、130℃で20時間反応させた。反応液の酸価は1.6mgKOH/gであった。反応液に吸着剤キョーワード500SH 27gを添加して80℃、2.7kPaで45分間攪拌してろ過した後、液温150〜250℃、圧力0.003kPaでテトラエチレングリコールモノメチルエーテルを留去し、80℃に冷却後、残液を減圧ろ過して、ろ液として、コハク酸とテトラエチレングリコールモノメチルエーテルとのジエステル〔(MeEO)SA〕を得た。得られたジエステルは、重量平均分子量499、粘度(23℃)35mPa・s、酸価0.2mgKOH/g、鹸化価225mgKOH/g、水酸基価1mgKOH/g以下、色相APHA230であった。なお、本可塑剤は、水酸基1個当たりエチレンオキサイドを4モル付加したアルコールとのエステル化合物である。
可塑剤の製造例3((MeEO)SA、コハク酸とヘキサエチレングリコールモノメチルエーテルとのジエステル化合物)
攪拌機、温度計、脱水管を備えた3Lフラスコに、無水コハク酸500g、ヘキサエチレングリコールモノメチルエーテル4235g、パラトルエンスルホン酸一水酸化物9.5gを仕込み、空間部に窒素(500mL/分)を吹き込みながら、減圧下(4〜10.7kPa)、150℃で40時間反応させた。反応液の酸価は1.6mgKOH/gであった。反応液に吸着剤キョーワード500SH 27gを添加して80℃、2.7kPaで45分間攪拌してろ過した後、液温200〜280℃、圧力0.003kPaでヘキサエチレングリコールモノメチルエーテルを留去し、80℃に冷却後、残液を減圧ろ過して、ろ液として、コハク酸とヘキサエチレングリコールモノメチルエーテルとのジエステル〔(MeEO)SA〕を得た。得られたジエステルは、重量平均分子量674、粘度(23℃)42mPa・s、酸価0.2mgKOH/g、鹸化価166mgKOH/g、水酸基価1mgKOH/g以下、色相APHA280であった。なお、本可塑剤は、水酸基1個当たりエチレンオキサイドを6モル付加したアルコールとのエステル化合物である。
可塑剤の製造例4(MeSA−1,3PD、コハク酸ジメチルと1,3−プロパンジオ−ルとのオリゴエステル化合物)
4ツロフラスコ(攪拌機、温度計、滴下漏斗、蒸留管、窒素吹き込み管付き)に1,3−プロパンジオール86.8g(1.14モル)及び触媒として28重量%ナトリウムメトキシド含有メタノール溶液2.2g(ナトリウムメトキシド0.011モル)を入れ、常圧、120℃で0.5時間攪拌しながらメタノールを留去した。その後、コハク酸ジメチル(和光純薬工業社製)500g(3.42モル)を2時間かけて滴下し、常圧、120℃で、反応により生じるメタノールを留去した。次に、75℃に冷却し、圧力を2時間かけて常圧から6.7kPaまで徐々に下げてメタノールを留去した後、常圧にもどし、さらに、触媒として28重量%ナトリウムメトキシド含有メタノール溶液2.0g(ナトリウムメトキシド0.010モル)を添加し、100℃で、圧力を3時間かけて常圧から2.9kPaまで徐々に下げてメタノールを留出させた。その後、80℃に冷却してキョーワード600S(協和化学工業社製)6gを添加し、圧力4.0kPa、80℃で1時間攪拌した後、減圧ろ過を行った。ろ液を圧力4.5kPaで、温度を1時間かけて114℃から194℃に上げて残存コハク酸ジメチルを留去し、常温黄色の液体として〔MeSA−1,3PD〕を得た。なお、触媒の使用量は、ジカルボン酸エステル100モルに対して0.61モルであった。なお、本可塑剤は、式(I)で表されるエステル化合物(R1はメチル基、R2はエチレン基、R3はプロピレン基であり、mは1、nは1.5)である。
ポリ乳酸樹脂組成物の調製
ポリ乳酸樹脂組成物として、表1〜5に示す組成物原料を、二軸押出機(Perker社製、HK25D、シリンダー直径25.2mm、回転数100rpm、吐出量8kg/h)を使用して、表1〜5に示す溶融混練温度で溶融混練し、ストランドカットを行い、ポリ乳酸樹脂組成物のペレットを得た。得られたペレットは、110℃減圧下で2時間乾燥し、水分量を500ppm以下とした。
実施例1〜10及び比較例1〜2
共押出成形による積層シートの調製
前記で得られた層Pのペレット及び、層Qのペレットを2種3層のマルチマニホールド式のT−ダイ押出機(プラスチック工学研究所社製、300mmT−ダイ)を用いて、表1〜3の条件にて幅250mmの共押出シート成形を行い、シート厚み300μmのポリ乳酸樹脂組成物積層シートを得た。得られた樹脂組成物積層シートは、層P/層Q/層Pで構成され、その層比は25/50/25であった。
押出成形による単層シートの調製
前記で得られたペレット又は原料を単層T−ダイ押出機(プラスチック工学研究所社製、300mmT−ダイ)を用いて、表4、5の条件にて幅250mmの単層シート成形を行い、単層シートを得た。
比較例3
ハンドラミネーターによる積層シートの調整
ポリエステルポリウレタンポリオール(LX−500、DIC社製)10g、芳香族ポリイソシアネート(KW−75、DIC社製)1gを酢酸エチル(和光純薬社製)16gと混ぜてラミネート用の接着剤を作製した。前記で得られた単層シートを接着剤とバーコーター(OSP−22、OSGシステムプロダクツ社製)を用いて積層シートを作製し、40℃で72時間エージングした。得られた樹脂組成物積層シートは、層P/層Q/層Pで構成され、その層比は25/50/25であった。
なお、表1〜5における原料は以下の通りである。
<ポリ乳酸樹脂>
4032D:NatureWorksLLC製Ingeo(登録商標)Biopolymer4032D(ポリ−L−乳酸、光学純度98.5%、融点166℃、重量平均分子量180000)
4060D:NatureWorksLLC製Ingeo(登録商標)Biopolymer4060D(ポリ−L−乳酸、光学純度88.0%、結晶化せず融点測定不可、重量平均分子量190000)
<PET樹脂>
RT−553C:日本ユニペット社製、UNIPET RT‐553C、融点257℃
<可塑剤>
DAIFATTY−101:アジピン酸と、ジエチレングリコールモノメチルエーテル/ベンジルアルコール=1/1との混合ジエステル、大八化学工業社製
(MeEO)SA:前記可塑剤の製造例1で製造したジエステル化合物
(MeEO)SA:前記可塑剤の製造例2で製造したジエステル化合物
(MeEO)SA:前記可塑剤の製造例3で製造したジエステル化合物
MeSA−1,3PD:前記可塑剤の製造例4で製造したオリゴエステル化合物
<有機結晶核剤>
スリパックスH:エチレンビス12−ヒドロキシステアリン酸アミド、日本化成社製
<加水分解抑制剤>
BioAdmide 100:ジイソプロピルフェニルカルボジイミド、ラインケミー社製
得られた積層シートの特性を、下記の試験例1の方法に従って評価した。なお、前記の層比については下記のようにして測定した。
<層比>
内層に用いる樹脂を黒顔料(カーボンブラック)で着色し、得られた積層シートの破断面をミクロトームを使用して作成し、光学顕微鏡(キーエンス社製、VHX−1000)を用いて、200倍で観察し、シート厚み、内層の着色層の厚みを測定し、層比を求めた。
試験例1
<引張弾性率>
23℃の恒温室において、得られたシートをJIS K7127に基づき試験片タイプ5のダンベル形状試験片を作製して、引張試験を行い、引張弾性率を求めた。引張試験には、SHIMADZU社製 オートグラフ精密万能試験機(AGS−10kNX)を用い、JIS K7127に従って、試験速度50mm/min、1サンプルにつき5点試験を行った。引張弾性率の数値が大きいほど剛性に優れることを示す。結果を表1〜5に示す。
<引張弾性率の理論計算値>
積層シートの層A、層B、層Cにおける各層の引張弾性率をEa、Eb、Ec、各層の体積分率をXa、Xb、Xcとすると、積層シートの引張弾性率の理論計算値Eは、
E=EaXa+EbXb+EcXc
から求めることができる。表5の単層シートの引張弾性率の値と、表1〜4の層比から積層シートの引張弾性率の理論計算値を算出した。結果を表1〜4に示す。
<ポリ乳酸樹脂、ポリ乳酸樹脂組成物の融点>
示差走査熱量分析装置「DSC8500」(PerkinElmer社製)を用いて、下記測定条件にて測定される160℃付近に観察される吸熱ピークのピークトップを融点(Tm)とする。結果を表1〜4に示す。
測定条件: PerkinElmer社製スタンダードアルミパンに試料約10mgを測り取り、作製したアルミパンをDSC8500にセットし、25℃から280℃まで15℃/minで昇温する。
Figure 0006916729
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表1〜4より、本発明の製造方法で得られた各実施例のポリ乳酸樹脂組成物積層シートは、理論値との差が大きく、剛性に優れるものであった。一方、層Pに可塑剤を含まない比較例1や、層QにPET樹脂を使用した比較例2では、理論値との差がほとんど見られなかった。また、層P、Qが同組成の実施例2と比較例3とを対比すると、本発明の製造方法の実施例2の引張弾性率が顕著に高くなっていることが分かる。また、各実施例のポリ乳酸樹脂組成物積層シートは、透明性についても良好であった。
本発明のポリ乳酸樹脂組成物積層シートは、耐衝撃性に優れることから、食品容器、日用品や家電製品の包装材料、工業用部品のトレイ等、様々な用途に好適に使用することができる。
1 Tダイ
2 Tダイ内接触区間
3 エアギャップ
4 冷却ロール

Claims (4)

  1. 複数のポリ乳酸樹脂組成物の層を含むポリ乳酸樹脂組成物積層シートの製造方法であって、下記工程(1)〜(3)を含む、ポリ乳酸樹脂組成物積層シートの製造方法。
    工程(1):(P−A)ポリ乳酸樹脂及び(P−B)可塑剤を含有する層P、並びに(Q−A)ポリ乳酸樹脂を含有する層Qを含む複数の層を積層して積層シートを得る工程、ここで、層P及び/又は層Qの融点以上の温度で接触させて積層し、層Pが積層シートの表面側と裏面側の少なくとも一方の最外層になるように積層し、層Qがさらに(Q−B)可塑剤を含む場合においては、(P−B)可塑剤の含有量の方が(Q−B)可塑剤の含有量より多い工程
    工程(2):工程(1)の後、積層シートを2秒間以上保持する工程
    工程(3):工程(2)の後、積層シートを冷却し最外層の表面の温度を60℃以下とする工程
  2. 層P中の(P−B)可塑剤の含有量が4質量%以上18質量%以下である、請求項1に記載の製造方法。
  3. (P−B)可塑剤及び/又は(Q−B)可塑剤が、
    (i)分子中に2個以上のエステル基を有するエステル化合物であって、該エステル化合物を構成するアルコール成分の少なくとも1種が水酸基1個当たり炭素数2〜3のアルキレンオキサイドを平均0.5〜8モル付加したアルコールであるエステル化合物、及び
    (ii)式(I):
    O−CO−R−CO−〔(OR)O−CO−R−CO−〕OR (I)
    (式中、Rは炭素数が1〜4のアルキル基、Rは炭素数が2〜4のアルキレン基、Rは炭素数が2又は3のアルキレン基であり、mは1〜6の数、nは1〜12の数を示し、但し、全てのRは同一でも異なっていてもよく、全てのRは同一でも異なっていてもよい)
    で表される化合物からなる群から選ばれる1種又は2種以上を含んでなる、請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. 層P中に(P−C)有機結晶核剤及び/又は層Q中に(Q−C)有機結晶核剤をさらに含有する、請求項1〜3いずれか記載の製造方法。
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