JP5678718B2 - 転炉での溶銑の脱炭精錬方法 - Google Patents

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Description

本発明は、転炉での溶銑の脱炭精錬方法に関し、詳しくは、脱炭精錬における転炉内でのFeOの生成量を、酸素ガス供給量、排ガスの組成及び流量、溶湯成分などから脱炭精錬中にオンラインで逐次推定し、FeO生成量の推定値に基づきFeOの生成量が目標範囲になるように操業条件を制御し、これにより脱炭精錬終了時の溶鋼中燐濃度を安定して低位に維持する脱炭精錬方法に関する。
転炉における溶銑の脱炭精錬において、脱炭精錬終了時(以下、「終点」とも記す)の溶湯(溶鋼)の燐濃度が目標の濃度よりも高くなる(以下、「燐外れ」とも記す)と、溶湯成分を再度調製し直す必要があり、追加分の精錬コストを要するのみならず、生産性の低下も招く。また、燐外れを防止するために、吹錬終了後に酸素ガスを余分に供給するなどして酸素を過剰に供給する傾向があるが、溶湯の酸素濃度の増加を招き、その結果、出鋼後の脱酸用Alの使用量が多くなり、溶製コストが増加する。また更に、溶銑の予備脱燐処理によって溶銑の燐濃度を予め低下させることで、転炉での脱炭精錬時間を短縮させる技術もあるが、この技術を活かすためには、転炉脱炭精錬において、処理時間内に溶湯の燐濃度を製品に要求される燐濃度まで低減する必要がある。
つまり、転炉における溶銑の脱炭精錬においては、何れの場合であっても、過剰の酸素ガスを供給することなく、設定した精錬時間内で終点の溶鋼中燐濃度を目標とする範囲に安定して制御する必要がある。尚、転炉における溶銑の脱炭精錬では、脱炭精錬の進行に伴って溶銑の炭素含有量は減少し、溶銑は終点時には炭素含有量の少ない溶鋼に溶製されるが、転炉脱炭精錬において、特に精錬途中において、溶銑と溶鋼とを区別して表示することは極めて困難であるので、本発明では溶銑及び溶鋼をまとめて溶湯と表示する。
ところで、転炉における溶銑の脱炭精錬においては、溶湯とスラグとの間で下記の(1)式に示す脱燐反応が進行する。但し、(1)式において、[P]、[Fe]は溶湯中の成分、(FeO)、(CaO)、(3CaO・P25)はスラグ中の成分を示している。つまり、溶銑中の燐(P)がFeOによって酸化され、この酸化反応によって生成したP25がCaOと反応してスラグに吸収されるという反応である。
Figure 0005678718
このような脱燐反応において、反応速度をより一層促進させるためには、CaOのスラグ中への滓化・溶融を促す必要があり、また、CaOの滓化促進のためには、FeOの作用を効果的に利用することが必要になる。
転炉脱炭精錬において炉内でのFeOの生成量を制御する従来技術の例としては特許文献1がある。特許文献1では、酸素吹錬開始以前に過去実績を参照して鋼種毎に目標とするFeO量の推移を設定し、精錬中、送酸量、投入副原料情報、排ガス情報から実績FeO量を逐次算出し、実績FeO量が目標とする推移に近づくように、上吹きランスの送酸速度、ランス高さ、底吹き流量の何れか1つ以上を制御する技術を提案している。しかしながら、特許文献1は、FeO生成量の推移と脱燐反応との関係については明らかにしていない。
また、転炉での溶銑の脱炭精錬において、FeO生成量の推移を制御し、これにより終点の溶湯中燐濃度を制御する技術として、特許文献2及び特許文献3が提案されている。溶銑の脱炭精錬において、脱炭精錬終点の溶湯中燐濃度を低位に安定させるためには、少なくとも終点直前のサブランス投入の時点までに、既に溶湯中燐濃度が下がっている必要があり、そのためには、吹錬開始時から直ちにFeOの生成量を制御する必要がある。
この観点から、特許文献2、3を検証すれば、特許文献2は、中間サブランスによる溶湯中炭素濃度を初期値とし、これ以降のFeOの生成量を推定しており、対応が遅く、終点の溶湯中燐濃度が安定して目標値を達成するとはいいがたい。特許文献3は、炉内に供給される酸素量及び炉外に排出される酸素量に加えて、吹錬中のスラグ状況を測定するセンサーの情報を加味してスラグ中のFeO量を算出しており、FeO量を精度良く推定できるものの、スラグ状況測定センサーの設備費やメンテナンス費を要し、経済的に好ましくない。
一方、特許文献4には、脱燐炉及び脱炭炉の2基の転炉を用いる高炭素極低燐鋼の溶製方法において、脱燐炉での脱燐精錬に際し、吹錬中の排ガス組成や流量、酸素ガス流量、副原料投入量及び溶銑成分から酸素バランスを逐次計算することにより求められる蓄積酸素量に基づいて炉内のFeO生成量を推定し、その推定したFeO量に応じて、上吹きランス高さ、酸素ガス流量、底吹きガス流量のうちの少なくとも何れか一つを調整して、処理後の溶湯中燐濃度を0.015質量%以下まで低減する技術が開示されている。しかしながら、この技術は溶銑の予備脱燐処理に関する技術であり、予備脱燐処理においては本発明の対象とする脱炭精錬よりも脱炭量が少なく、FeO生成量の制御方法が脱炭精錬とは異なる。
また、精錬剤として添加する石灰源の一部を搬送用ガスとともに上吹きランスを介して溶銑に吹き付け添加(「投射」ともいう)し、脱炭精錬における脱燐反応を促進させる技術が、従来から研究・検討されているが(例えば特許文献5を参照)、石灰源を投射しながら炉内のFeO生成量を制御する技術、並びに、炉内のFeO生成量の推移に基づいて石灰源の投射方法を調整する技術は、従来、報告されていない。
特開昭61−159520号公報 特開平2−19413号公報 特開平1−242711号公報 特開2006−206930号公報 特開昭58−61211号公報
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、底吹き羽口から攪拌用ガスを吹き込んで溶湯を攪拌しながら、上吹きランスから、酸素ガスを供給するとともに、添加する石灰源の一部を搬送用ガスとともに投射して転炉内に装入した溶銑を脱炭精錬するにあたり、精錬中の炉内でのFeOの生成量を推定し、この推定値の推移に基づいて精錬開始時から全酸素量の40体積%の酸素量を供給する時点までに、FeOの生成量を目標範囲に制御することで、酸素ガスを過剰に供給することなく且つ脱炭精錬時間を延長することなく、脱炭精錬終了時の溶湯中燐濃度を低位に安定することのできる、溶銑の脱炭精錬方法を提供することである。
上記課題を解決するための本発明の要旨は以下のとおりである。
(1) 底吹き羽口から攪拌用ガスを吹き込んで溶湯を攪拌しながら、上吹きランスから酸素ガスを溶湯に供給すると同時に、添加する石灰源の一部を搬送用ガスとともに前記上吹きランスから投射して、転炉内に装入した溶銑を脱炭精錬するにあたり、上吹きランスからの酸素ガス流量、精錬中の排ガスの組成、排ガスの流量、副原料投入量及び溶湯成分から酸素バランスを逐次計算することにより求められる不明酸素量に基づいて炉内でのFeO生成量を推定し、推定したFeO生成量の推移に照らし合わせて、上吹きランスからの酸素ガス流量、上吹きランスのランス高さ、底吹き羽口からの攪拌用ガス流量のうちの少なくとも何れか1種を調整し、この調整により、精錬開始時から全酸素量の40体積%の酸素量を供給する時点までに、炉内でのFeOの生成量を3〜30kg/溶銑tの範囲に調製することを特徴とする、転炉での溶銑の脱炭精錬方法。
(2) 全酸素量の40体積%の酸素量を供給する時点から全酸素量の80体積%の酸素量を供給する時点までに、炉内でのFeOの生成量を3kg/溶銑t以上の範囲に調製することを特徴とする、上記(1)に記載の転炉での溶銑の脱炭精錬方法。
(3) 精錬開始時から全酸素量の40体積%の酸素量を供給する時点までの底吹き攪拌用ガス流量の平均値(Nm3/(min・溶銑t))と、転炉脱炭精錬における溶銑比率(溶銑比率(%)=溶銑装入量(t)×100/(溶銑装入量(t)+鉄スクラップ装入量(t)))と、の乗算値を、4.8Nm3・%/(min・溶銑t)以上に保つことを特徴とする、上記(1)または上記(2)に記載の転炉での溶銑の脱炭精錬方法。
(4) 酸素吹錬の開始時点から全酸素量の40体積%の酸素量を供給する時点まで、上吹きランスから、添加する全石灰源量の10質量%以上の分量の石灰源を連続して投射し、全酸素量の40体積%の酸素量を供給した時点を越えた以降は上吹きランスからの石灰源の投射を停止することを特徴とする、上記(1)ないし上記(3)の何れか1項に記載の転炉での溶銑の脱炭精錬方法。
(5) 石灰源の投射速度(kg/(min・溶銑t))と、炉内でのFeOの生成速度(kg/(min・溶銑t))との比(石灰源投射速度/FeO生成速度)が、0.4〜5.5の範囲内となるように、上吹きランスから投射する石灰源の投射速度をFeOの生成速度に応じて調整することを特徴とする、上記(4)に記載の転炉での溶銑の脱炭精錬方法。
本発明によれば、転炉を用いた、上吹き酸素ガス、上吹きランスからの石灰源の投射及び攪拌用底吹き不活性ガスによる溶銑の脱炭精錬において、炉内でのFeOの生成量を推定し、推定したFeO生成量の推移に照らし合わせて、上吹きランスからの酸素ガス流量、上吹きランスのランス高さ、底吹き羽口からの攪拌用ガス流量のうちの少なくとも何れか1種を調整し、この調整により、精錬開始時から全酸素量の40体積%の酸素量を供給する時点までに、炉内でのFeO生成量を3〜30kg/溶銑tの範囲に調製するので、投射による石灰源の滓化促進による脱燐反応の促進効果も相俟って、酸素ガスを過剰に供給することなく、また、脱炭精錬時間を延長することなく、脱炭精錬終了時の溶湯中燐濃度を低位に安定することが達成される。また、酸素ガスの供給量が過剰にならないので、溶湯の酸素濃度が過度に上昇せず、脱酸用Alの使用量が削減されるという副次的効果も発現し、溶製コストを大幅に低減することが実現される。
本発明を実施する際に用いる転炉設備の概略断面図である。 精錬進行度が40%の時点におけるスラグ中FeO濃度の推定値と終点での溶湯中燐濃度との関係を示す図である。 攪拌用ガス流量と脱燐挙動との関係の調査結果を示す図である。 投射条件2の操業条件において、比(石灰源投射速度/FeO生成速度)と脱炭精錬終点での溶湯中燐濃度との関係を示す図である。 本発明法1及び本発明法2における石灰源の投射速度の例を示す図である。 本発明法3及び従来法における炉内のFeO生成量の推移の例を示す図である。 本発明法2及び本発明法3における石灰源投射速度並びにFeO生成量の推移の例を示す図である。
以下、本発明を具体的に説明する。先ず、本発明を適用する転炉設備を説明する。図1は、本発明を実施する際に用いる転炉設備の1例の概略断面図である。
図1において、溶銑16を収容した転炉本体1の内部には、上方から上吹きランス2が挿入され、この上吹きランス2から酸素ガスが溶銑16に吹き付けられると同時に、転炉本体1の底部に配置した複数の底吹き羽口3から攪拌用底吹きガスが吹き込まれて溶銑16とスラグ17とが攪拌されながら、溶銑16の脱炭精錬が行われる。また、上吹きランス2への酸素ガス供給流路は、分岐して生石灰(CaO)、石灰石(CaCO3)などの石灰源19を収容するディスペンサー18に接続し、ディスペンサー18を経由した酸素ガスが前記酸素ガス供給流路に再度連結しており、ディスペンサー18に収容された石灰源19が酸素ガスを搬送用ガスとして、上吹きランス2を介して溶銑16に吹き付け添加(投射)されるように構成されている。即ち、脱炭精錬の任意の期間に、任意の量の石灰源19を溶銑16に投射して脱炭精錬を行うことができるように構成されている。溶銑16の脱炭精錬によって炉内からCOガスを主体とする排ガスが発生する。
転炉本体1の上方には煙道4が設置され、煙道4の後段には、一次集塵機8、二次集塵機9、排ガス流量計11、誘引送風機12が、この順に設置されている。この排ガス処理設備は、排ガス中のCOガスを、冷却して除塵し未燃焼のまま回収する、非燃焼方式の排ガス処理設備(「OG式排ガス回収設備」ともいう)であり、この排ガス回収設備では、誘引送風機12の下流側に、更に、三方弁、煙突、回収弁、ガスホルダーなどが配置されるが図1では省略している。二次集塵機9として設置したPAベンチュリーには、PAダンパー10が設置されており、PAダンパー10の開度調整により転炉本体1の炉内圧が制御されるようになっている。つまり、脱炭精錬によって転炉本体1の内部で発生する排ガスは、PAダンパー10によって流量制御されながら、電動機(図示せず)により駆動される誘引送風機12で吸引され、ガスホルダーに回収されるようになっている。
煙道4の転炉本体1の炉口との接続側は、スカート5と呼ばれており、上下移動が可能な構造となっており、排ガスを回収する場合には、スカート5と転炉本体1の炉口とは原則的には密着した状態になる。また、煙道4には、生石灰、焼成ドロマイト、鉄鉱石、ミルスケール、マンガン鉱石、コークス及び合金鉄(Fe−Mn、Fe−Siなど)などの副原料を転炉本体1に投入添加するための、ホッパー6及び投入シュート7などからなる副原料投入装置が設置されている。副原料投入装置から炉内に投入される生石灰、焼成ドロマイト、鉄鉱石、ミルスケール、マンガン鉱石などによってスラグ17が形成される。
煙道4には、脱炭精錬によって転炉本体1の内部で発生する排ガスを採取するためのガス採取プローブ13が設置され、ガス採取プローブ13で採取された排ガスは、ガス分析装置14に送られ、ガス分析装置14において、排ガス中のCOガス濃度、CO2ガス濃度、水素ガス濃度及び酸素ガス濃度が測定される。これらの合計値と100質量%との差分が窒素ガスとして求められる。この場合に、底吹き羽口3から攪拌用底吹きガスとしてArガスを吹き込むときには、更にArガス濃度を差し引いて窒素ガス濃度が求められる。そして、測定された排ガス組成は演算装置15に送信されている。また、演算装置15には、上吹きランス2から炉内に供給される酸素ガスの流量、副原料投入装置によって投入される副原料の投入量、及び、排ガス流量計11で測定される排ガスの流量が送信されている。
この演算装置15は、脱炭精錬中の酸素バランスを逐次計算し、計算した酸素バランスから求められる不明酸素量に基づいて、炉内でのFeOの生成量を推定し、推定したFeO生成量の推移を表示する装置である。以下、この演算装置15によるFeO生成量の推定方法及び推定値の推移を表示する方法を説明する。
演算装置15は、先ず、下記の(2)式を用いて精錬中にオンラインで不明酸素量を逐次算出する。
Figure 0005678718
但し、(2)式において、ΔWO2は、酸素吹錬開始時から時刻ti(秒)までの不明酸素量(Nm3/溶銑t)、Aは、上吹きランス2からの酸素ガス流量(Nm3/溶銑t)、Bは、投入副原料中の酸素ガス流量(Nm3/溶銑t)、Cは、転炉炉口での巻き込み空気中の酸素ガス流量(Nm3/溶銑t)、Dは、排ガス中のCOガス流量(Nm3/溶銑t)、Eは、排ガス中のCO2ガス流量(Nm3/溶銑t)、Fは、溶湯成分、具体的には溶湯中の珪素、マンガン、燐の酸化に消費される酸素ガス流量(Nm3/溶銑t)、tは時刻(秒)であり、時刻の添え字iは、吹錬開始時からi番目の計算であることを示している。ここで、不明酸素量(ΔWO2)は、炉内に供給される酸素量と炉外に排出される酸素量との差分であることから、炉内に酸化物として蓄積される酸素量を意味している。
尚、溶湯成分(Si、Mn、P)の変化は、予め脱炭精錬中に求めた実績値に基づいて作成したモデル式を利用するものとする。即ち、化学分析により求めた脱炭精錬前の溶銑16の化学組成を初期値とし、脱炭精錬中のSi、Mn、Pの濃度推移を実績値に基づいて設定する。また、投入副原料中の酸素ガス流量(B)は、酸化鉄形態の副原料によって炉内に供給される酸素を酸素ガスに換算したものであり、例えば、酸化鉄形態の副原料が鉄鉱石の焼結鉱の場合には、「B(Nm3/溶銑t)=焼結鉱投入量(kg/溶銑t)×0.15」、鉄鉱石の場合には、「B(Nm3/溶銑t)=鉄鉱石投入量(kg/溶銑t)×0.20」で求めることができる。つまり、酸素ガス流量(B)は、酸化鉄形態の副原料中の酸素含有量とその添加量とから求めることができる。また、巻き込み空気中の酸素ガス流量(C)は、排ガス中の窒素ガス濃度から求めることができる。つまり、攪拌用底吹きガスが窒素ガスでない場合には、酸素ガス流量(C)は排ガス中の窒素ガス流量(Nm3/溶銑t)の1/4とすればよく、攪拌用底吹きガスが窒素ガスの場合には、排ガス中の窒素ガス流量から攪拌用窒素ガス流量を差し引いた値を巻き込み空気中の窒素ガス流量とし、この窒素ガス流量から酸素ガス流量(C)を求めればよい。
(2)式では、不明酸素量(ΔWO2)を求める際に、排ガス中の酸素ガス濃度を考慮していないが、脱炭精錬の最盛期には、酸素効率が高く、排ガス中に酸素ガスがほとんど存在しないので、酸素ガス濃度を考慮することなく、不明酸素量(ΔWO2)を求めることができる。
次いで、演算装置15は、上記のようにして求めた不明酸素量(ΔWO2)に基づき、下記の(3)式を用いて、酸素吹錬開始時からti時間経過した時点までに炉内で生成したFeO量を推定する。
Figure 0005678718
但し、(3)式において、FeOiは、酸素吹錬開始時からti時間経過した時点までに炉内で生成したFeO量(kg/溶銑t)である。尚、(3)式は、「不明酸素量(ΔWO2)は、全てFeOの生成に使用される」という考え方で導出したものである。
このように、演算装置15は、入力された、上吹きランス2からの酸素ガス流量、精錬中の排ガスの組成、排ガスの流量、副原料投入量及び溶湯成分(Si、Mn、P)から、酸素バランスを逐次計算して不明酸素量(ΔWO2)を求め、求めた不明酸素量(ΔWO2)に基づいて炉内でのFeO生成量を推定し、推定した値をその都度表示することで、推定したFeO生成量の推移を表示する。
本発明を適用する転炉設備はこのようにして構成されている。
この転炉設備を用い、転炉本体1に収容された溶銑16に、上吹きランス2から酸素ガスを供給し、且つ上吹きランス2から生石灰を石灰源19として投射するとともに底吹き羽口3から攪拌用ガス(Arガス)を吹き込み、更に、投入シュート7を介して生石灰及び焼成ドロマイトを投入し、0.1質量%以上の燐を含有する溶銑16の脱炭精錬を実施し、(3)式により算出される炉内のFeO生成量の推移と実際の脱燐挙動との関係を調査する試験を行った。
その際に、生石灰の投射条件として、以下の2水準で実施した。即ち、全酸素量の40体積%の酸素量を供給する時点までに投射する石灰源19が、炉内に添加する全石灰源量の10質量%未満の分量である場合(投射条件1)と、全酸素量の40体積%の酸素量を供給する時点までに投射する石灰源19が、炉内に添加する全石灰源量の10質量%以上の分量であり、且つ、全酸素量の40体積%の酸素量を供給した時点を越えた以降は上吹きランス2からの石灰源19の投射を停止する条件(投射条件2)との2水準である。両水準ともに、酸素吹錬の開始時点から全酸素量の40体積%の酸素量を供給する時点まで石灰源19を連続して投射した。また、投射条件1の場合には、全酸素量の40体積%の酸素量を供給した時点を越えた以降は投射を停止する条件と、それ以降も継続して投射する条件の双方を実施した。
この試験操業において、脱炭精錬終了時の溶湯中燐濃度の目標値は0.015質量%以下とし、脱炭精錬終了時の溶湯中燐濃度は、酸素吹錬終了時点で溶湯中に投入したサブランスで採取した溶湯サンプルの化学分析によって求めた。試験操業の操業条件を表1に、また、投射条件1及び投射条件2を含めた全ての試験における溶湯の化学成分の変化(平均値)を表2に示す。
Figure 0005678718
Figure 0005678718
炉内でのFeO生成量の推移と実際の脱燐挙動との関係を種々の観点から調査した結果、供給すべき全酸素量の40体積%の酸素量を供給した時点におけるFeO生成量の推定値と、終点での溶湯中燐濃度との間に強い相関のあることが分った。尚、本発明では、脱炭精錬の進行程度を酸素ガスの供給量に比例して管理しており、酸素ガスの供給開始時点を精錬進行度=0%とし、供給すべき全酸素量の100体積%の酸素量を供給した時点を精錬進行度=100%と定義する。従って、供給すべき全酸素量の40体積%の酸素量を供給した時点は、精錬進行度が40%の時点となる。
図2に、精錬進行度が40%の時点におけるFeO生成量の推定値と終点での溶湯中燐濃度との関係を示す。図2に示すように、精錬進行度が40%の時点におけるFeO生成量の推定値が3kg/溶銑t以上であれば、精錬終了時の溶湯中燐濃度を安定して0.015質量%以下に低減できることが分った。一方、精錬進行度が40%の時点におけるFeO生成量の推定値が高くなるとスロッピング(酸素吹錬時の炉口からのスラグの噴出)が起こることから、精錬進行度が40%の時点におけるFeO生成量の推定値を30kg/溶銑t以下にする必要のあることが分った。図2からも、精錬進行度が40%の時点におけるFeO生成量が25kg/溶銑t程度になると、それ以上にFeO量を多くしても終点での溶湯中燐濃度は低下しないことから、精錬進行度が40%の時点におけるFeO生成量を30kg/溶銑t以下にすることは、脱燐反応の観点から何ら問題とならない。
図2には、精錬進行度が40%の時点までにFeO生成量の推定値が3kg/溶銑t以上であったが、精錬進行度が40%の時点から精錬進行度が80%の時点までのFeO生成量の推定値が3kg/溶銑t未満の試験を併せて示す(符号□印のチャージ)。これらの試験では、精錬進行度が40%の時点から精錬進行度が80%の時点までのFeO生成量の推定値が3kg/溶銑t以上である試験に比較して、終点での溶湯中燐濃度が高くなることが確認された。これは、精錬進行度が40%の時点から精錬進行度が80%の時点までのFeO生成量が少なく、この期間に溶湯中燐濃度が上昇したと考えられる。この結果から、精錬進行度が40%の時点におけるFeO生成量の推定値を3〜30kg/溶銑tに調製した上で、更に、精錬進行度が40%の時点から精錬進行度が80%の時点までのFeO生成量の推定値を3kg/溶銑t以上に調製することが好ましいことが分った。尚、図2に符号●印、符号○印及び符号△印で示す試験は、精錬進行度が40%の時点から精錬進行度が80%の時点までのFeO生成量の推定値が3kg/溶銑t以上の試験である。
また、図2に示すように、投射条件2の条件で脱炭精錬することで、投射条件1の場合に比較して、脱炭精錬終点の溶湯中燐濃度が更に低くなり、終点の溶湯中燐濃度を安定して0.010質量%以下に低減できることが分った。これは、投射条件2においては、上吹きランス2からの酸素ガスの溶湯浴面への衝突位置(「火点」という)へ添加される石灰源19の量が多くなり、火点は1800℃以上の高温であることから石灰源19の滓化が促進され、スラグ17の燐吸収能力が高くなるためである。尚、図2のスロッピング発生チャージ(符号△印の試験)、及び、精錬進行度が40%の時点から精錬進行度が80%の時点までのFeO生成量の推定値が3kg/溶銑t未満のチャージ(符号□印の試験)は投射条件1の試験である。また、投射条件1において、精錬進行度が40%の時点を越えた以降も投射を継続した場合と、精錬進行度が40%となった時点で投射を停止した場合とで、脱炭精錬終点での溶湯中燐濃度を比較した結果、両者に優位差は見られなかった。
本発明者らは、更に、精錬進行度が40%の時点における炉内でのFeO生成量の推定値が3〜30kg/溶銑tであり且つ精錬進行度が40%から80%までの炉内でのFeO生成量の推定値が3kg/溶銑t以上である試験に関して、精錬進行度が40%までの底吹き羽口からの攪拌用ガス流量と脱燐挙動との関係について調査した。図3は、横軸を、精錬進行度が0%から精錬進行度が40%までの平均の底吹き攪拌用ガス流量(Nm3/(min・溶銑t))と、転炉脱炭精錬における溶銑比率(溶銑比率(%)=溶銑装入量(t)×100/(溶銑装入量(t)+鉄スクラップ装入量(t)))と、の乗算値とし、縦軸を終点での溶湯中燐濃度として、攪拌用ガス流量と脱燐挙動との関係の調査結果を示す図である。図3に示すように、精錬進行度が0%から精錬進行度が40%までの底吹き攪拌用ガス流量の平均値と、転炉脱炭精錬における溶銑比率とを乗じた値が4.8Nm3・%/(min・溶銑t)以上であれば、底吹き攪拌用ガスによる攪拌動力の増加によってスラグと溶湯との混合が促進され、脱燐に寄与するスラグ中FeOの割合が増加し、終点での溶湯中燐濃度を安定して低下できることが分った。つまり、前記乗算値を4.8Nm3・%/(min・溶銑t)以上とすることが好ましいことが分った。
また更に、投射条件2において更なる試験操業を実施した結果、精錬進行度が40%となる時点までの石灰源の投射速度(kg/(min・溶銑t))と、精錬進行度が40%となる時点までのFeOの生成速度(kg/(min・溶銑t))との比(石灰源投射速度/FeO生成速度)を或る特定の範囲に制御することで、脱炭精錬終了時の溶湯中燐濃度がより一層低くなることが分った。
図4に、投射条件2の操業条件において、比(石灰源投射速度/FeO生成速度)と脱炭精錬終点での溶湯中燐濃度との関係の調査結果を示す。図4に示すように、投射条件2において、比(石灰源投射速度/FeO生成速度)を0.4〜5.5の範囲内とすることで、終点での溶湯中燐濃度は0.008質量%以下になることが確認できた。この比が0.4未満では、石灰源19の供給速度が小さいために、つまりスラグ17の燐吸収能が小さいために終点燐濃度の下がりが悪く、一方、この比が5.5を超えると、FeO量に比べて石灰源量が多くなり、投入した石灰源19が滓化しにくく終点燐濃度の下がりが悪くなる。つまり、比(石灰源投射速度/FeO生成速度)を0.4〜5.5の範囲内とすることで、スラグ17の燐吸収能が確保された状態で、生成するFeOと添加した石灰源19とが反応して石灰源19の滓化が促進され、脱燐反応が促進されるからである。
本発明は、これらの知見に基づきなされたもので、底吹き羽口3から攪拌用ガスを吹き込んで溶湯を攪拌しながら、上吹きランス2から酸素ガスを溶湯に供給すると同時に、添加する石灰源19の一部を搬送用ガスとともに上吹きランス2から投射して、転炉内に装入した溶銑16を脱炭精錬するにあたり、(2)式から求められる不明酸素量(ΔWO2)に基づいて炉内でのFeO生成量を推定し、推定したFeO生成量の推移に照らし合わせて、上吹きランス2からの酸素ガス流量、上吹きランス2のランス高さ、底吹き羽口3からの攪拌用ガス流量のうちの少なくとも何れか1種を調整し、この調整により、精錬開始時から全酸素量の40体積%の酸素量を供給する時点までに、炉内でのFeOの生成量を3〜30kg/溶銑tの範囲に調製することを特徴とする。
上吹きランス2からの酸素ガス流量を増加すると所謂「ハードブロー」になり、供給する酸素ガスは溶湯中炭素との反応に費やされてFeOの生成が少なくなるのみならず、溶湯とスラグ17との攪拌が強くなることから溶湯とスラグ17との反応が起こってスラグ17のFeOが還元され、これらにより、炉内のFeOは低下する或いは増加せずに維持される。逆に、上吹きランス2からの酸素ガス流量を低下すると所謂「ソフトブロー」になり、供給する酸素ガスと溶湯自体(鉄)との反応が起こり炉内のFeOは増加する。
上吹きランス2のランス高さ(ランス先端と静止時の炉内溶湯湯面との距離)を小さくすると、ハードブローになり、上記の理由で炉内のFeO量は低下する或いは増加せずに維持される。逆に、上吹きランス2のランス高さを大きくすると、ソフトブローになり、炉内のFeOは増加する。
底吹き羽口3からの攪拌用ガス流量を増加すれば、溶湯とスラグ17との攪拌が強くなることから溶湯とスラグ17との反応が起こってスラグ17のFeOが還元され、炉内のFeOは低下する或いは増加せずに維持される。逆に、攪拌用ガス流量を減少すれば、溶湯とスラグ17との攪拌が弱くなることから溶湯とスラグ17との反応は抑制され、炉内のFeOは増加する。
このように、上吹きランス2からの酸素ガス流量、上吹きランス2のランス高さ、底吹き羽口3からの攪拌用ガス流量の何れか1つを変更することによって、スラグ17のFeO濃度を調製可能であり、従って、本発明においては、上吹きランス2から石灰源19の一部を搬送用ガスとともに溶湯に投射して溶銑16を脱炭精錬するにあたり、脱炭精錬中に演算装置15を用いて炉内でのFeOの生成量を逐次推定し、このFeO生成量の推定値の推移から、全酸素量の40体積%の酸素量を供給する時点における炉内でのFeO生成量の推定値が3kg/溶銑t未満になると予測される場合には、上吹きランス2からの酸素ガス流量を低下する、上吹きランス2のランス高さを大きくする、底吹き羽口3からの攪拌用ガス流量を低下する、のうちの少なくとも1種以上を実施してFeOの生成量を増加させ、全酸素量の40体積%の酸素量を供給する時点におけるFeO生成量を3kg/溶銑t以上に調製する。逆に、全酸素量の40体積%の酸素量を供給する時点における炉内でのFeO生成量の推定値が30kg/溶銑tを超えると予測される場合には、上吹きランス2からの酸素ガス流量を増加する、上吹きランス2のランス高さを小さくする、底吹き羽口3からの攪拌用ガス流量を増加する、のうちの少なくとも1種以上を実施して炉内でのFeOの生成量或いはFeO量を減少させ、全酸素量の40体積%の酸素量を供給する時点におけるFeO生成量を30kg/溶銑t以下に調製する。上吹きランス2からの酸素ガス流量、ランス高さ、底吹きガス流量の変動範囲は、表1に示す範囲で十分であるが、表1の範囲を外れて変化させても全く問題ない。
但し、ソフトブロー化するべく、上吹きランス2からの酸素ガス流量を低下させると脱炭精錬時間の増大を引き起こし、生産性の低下を招くことから、これを回避するために、上吹きランス2からの酸素ガス流量を増加させ且つ上吹きランス2のランス高さを大きくしてスラグ17のFeO量を増加させることが好ましい。また、底吹き羽口3からの攪拌用ガス流量を減少させると、溶湯とスラグ17との攪拌力の低下により脱燐反応が抑制されるので、脱燐反応を確保するためには、底吹き羽口3からの攪拌ガス流量は極力一定にして上吹きランス2のランス高さを大きくしてFeO量を増加させることが好ましい。
精錬開始時から全酸素量の40体積%の酸素量を供給する時点までに、炉内でのFeO生成量を3〜30kg/溶銑tの範囲に調製したならば、それ以降は、少なくとも炉内のFeO量が3kg/溶銑t未満にならないように制御して精錬を終了する。精錬進行度が40%の時点以降に、炉内のFeO量が3kg/溶銑t未満になると、脱燐反応が滞り終点での溶湯中燐濃度が目標値を達成しない可能性がある。また、精錬進行度が40%の時点以降における炉内のFeO量の上限値は特に規定する必要はないが、過剰に多くなるとスロッピングの恐れがあるので、30kg/溶銑t以下の範囲に維持することが好ましい。つまり、精錬進行度が40%の時点以降も、炉内のFeO量を3〜30kg/溶銑tの範囲に維持して精錬を終了することが好ましい。
但し、全酸素量の40体積%の酸素量を供給した時点から全酸素量の80体積%の酸素量を供給する時点までの炉内でのFeOの生成量が3kg/溶銑t未満になると、この期間では脱燐反応が進行せず、逆に溶湯中燐濃度が上昇し、終点での溶湯中燐濃度は0.015質量%を超えないものの高くなるので、全酸素量の40体積%の酸素量を供給した時点から全酸素量の80体積%の酸素量を供給する時点までの期間に、炉内に新たに3kg/溶銑t以上のFeOが生成するように、上吹きランスからの酸素ガス流量、上吹きランスのランス高さ、底吹き羽口からの攪拌用ガス流量のうちの少なくとも何れか1種を調整することが好ましい。全酸素量の40体積%の酸素量を供給した時点から全酸素量の80体積%の酸素量を供給する時点までの炉内でのFeOの生成量が30kg/溶銑tを超えると、スロッピングの恐れがあるので、この期間のFeOの生成量を30kg/溶銑t以下に調整することが好ましい。
また、本発明を実施するにあたり、前述したように、精錬進行度が0%から精錬進行度が40%までの底吹き攪拌用ガス流量の平均値と転炉脱炭精錬における溶銑比率とを乗じた値が4.8Nm3・%/(min・溶銑t)以上となるように調整することが好ましい。この場合に、前記底吹き攪拌用ガス流量の平均値と転炉脱炭精錬における溶銑比率とを乗じた値が21.4Nm3・%/(min・溶銑t)を超えると、ガスの吹き抜けが生じ、攪拌力が却って低下するので、前記の乗じた値が21.4Nm3・%/(min・溶銑t)以下になるように調整することが好ましい。
また、酸素吹錬の開始時点から全酸素量の40体積%の酸素量を供給する時点まで、上吹きランス2から、添加する全石灰源量の10質量%以上の分量の石灰源19を連続して投射し、全酸素量の40体積%の酸素量を供給した時点を越えた以降は上吹きランス2からの石灰源19の投射を停止することが好ましく、更に、この場合に、石灰源19の投射速度(kg/(min・溶銑t))と、炉内でのFeOの生成速度(kg/(min・溶銑t))との比(石灰源投射速度/FeO生成速度)が、0.4〜5.5の範囲内となるように、上吹きランス2から投射する石灰源19の投射速度をFeOの生成速度に応じて調整することが好ましい。
尚、本発明の脱炭精錬を実施するにあたり、鉄源として溶銑以外に鉄スクラップを装入しても構わず、生石灰や焼成ドロマイトなどの造滓剤、鉄鉱石や焼結鉱などの冷却材或いはコークスなどの昇熱材は通常の操業条件に準じて行うものとする。また、底吹き羽口3から吹き込む攪拌用ガスは、不活性ガスである限りガス種類を特定する必要はなく、通常は、Arガスや窒素ガスが使用されるが、不活性ガスである限り、これら以外であっても構わない。
このようにして溶銑16を脱炭精錬することで、投射による石灰源19の滓化促進による脱燐反応の促進効果も相俟って、酸素ガスを過剰に供給することなく、また、脱炭精錬時間を延長することなく、脱炭精錬終了時の溶湯中燐濃度を低位に安定することが実現される。
図1に示す転炉設備を用いて、本発明に係る溶銑の脱炭精錬(本発明法1、本発明法2、本発明法3)と、上吹きランスからの石灰源の投射を行わず且つ炉内でのFeO生成量を調製しない従来技術による脱炭精錬(従来法)とを、それぞれ100チャージずつ実施した。脱炭精錬終了時の溶湯中燐濃度の上限値は0.015質量%であり、この値を超えた場合には、燐外れとなる。石灰源としては生石灰(CaO)を使用し、生石灰の投入量は45kg/溶銑tの一定値とした。
本発明法1は、酸素吹錬の開始時点から全酸素量の40体積%の酸素量を供給する時点までに投射する石灰源が、炉内に添加する全石灰源量の10質量%未満となる条件(=投射条件1)として、精錬開始時から全酸素量の40体積%の酸素量を供給する時点までの炉内でのFeOの生成量が3〜30kg/溶銑tの範囲内であるものの、全酸素量の40体積%の酸素量を供給する時点から全酸素量の80体積%の酸素量を供給する時点までのFeOの生成量が3kg/溶銑t未満、精錬開始時から全酸素量の40体積%の酸素量を供給する時点までの底吹き攪拌用ガス流量の平均値と転炉脱炭精錬における溶銑比率との乗算値が4.8Nm3・%/(min・溶銑t)未満、石灰源の投射速度と炉内でのFeOの生成速度との比(石灰源投射速度/FeO生成速度)が0.1となる条件で操業した試験である。
本発明法2は、酸素吹錬の開始時点から全酸素量の40体積%の酸素量を供給する時点まで、添加する全石灰源量の10質量%以上の分量の石灰源を連続して投射し、全酸素量の40体積%の酸素量を供給した時点を越えた以降は上吹きランスからの石灰源の投射を停止する条件(=投射条件2)として、精錬開始時から全酸素量の40体積%の酸素量を供給する時点までの炉内でのFeOの生成量が3〜30kg/溶銑tの範囲内、全酸素量の40体積%の酸素量を供給する時点から全酸素量の80体積%の酸素量を供給する時点までのFeOの生成量が3〜30kg/溶銑tの範囲内、精錬開始時から全酸素量の40体積%の酸素量を供給する時点までの底吹き攪拌用ガス流量の平均値と転炉脱炭精錬における溶銑比率との乗算値が4.8〜21.4Nm3・%/(min・溶銑t)の範囲内であるものの、石灰源の投射速度と炉内でのFeOの生成速度との比(石灰源投射速度/FeO生成速度)が0.4未満または5.5超えとなる条件で操業した試験である。
本発明法3は、投射条件2の条件で投射して、精錬開始時から全酸素量の40体積%の酸素量を供給する時点までの炉内でのFeOの生成量が3〜30kg/溶銑tの範囲内、全酸素量の40体積%の酸素量を供給する時点から全酸素量の80体積%の酸素量を供給する時点までのFeOの生成量が3〜30kg/溶銑tの範囲内、精錬開始時から全酸素量の40体積%の酸素量を供給する時点までの底吹き攪拌用ガス流量の平均値と転炉脱炭精錬における溶銑比率との乗算値が4.8〜21.4Nm3・%/(min・溶銑t)の範囲内、石灰源の投射速度と炉内でのFeOの生成速度との比(石灰源投射速度/FeO生成速度)が0.4〜5.5の範囲内となる条件で操業した試験である。本発明法1及び本発明法2における石灰源の投射速度の例を図5に示す。
本発明法1、2、3では、炉内のFeO生成量を逐次推定し、推定したFeO生成量に照らし合わせて表1の範囲内で、上吹き酸素ガス流量、ランス高さ、底吹きガス流量のうちの少なくとも何れか1つまたは2以上を調整して、酸素吹錬開始時から精錬進行度が40%の時点までに、炉内のFeO生成量を3〜30kg/溶銑tの範囲に調製した。
本発明法3及び従来法における炉内のFeO生成量の推移の例を図6に示す。尚、図6は、本発明法3及び従来法ともに、終点におけるFeO生成量が30kg/溶銑tになった例であり、また、図6において、FeO生成量は折れ線で示されるが、これは、FeO生成量を或る時間間隔で推定し、それぞれの推定値を直線で結んだことによる。図6に示す従来法Aは、精錬進行度が40%の時点におけるFeO生成量が30kg/溶銑tを超えており、精錬中にスロッピングが発生した例で、従来法Bは、精錬進行度が40%の時点におけるFeO生成量が3kg/溶銑t未満であり、脱炭精錬終点時に燐外れとなった例である。
図7に、本発明法2及び本発明法3における石灰源投射速度並びにFeO生成量の推移の例を示す。本発明法2−Aは、比(石灰源投射速度/FeO生成速度)が5.94の例であり、本発明法2−Bは、比(石灰源投射速度/FeO生成速度)が0.25の例である。尚、図7において、実線が石灰源の投射速度で、破線がFeO生成量を示している。
また、本発明法1、本発明法2、本発明法3及び従来法における操業結果の平均値を表3に示す。但し、表3に示す本発明法2は、本発明法2−Aと本発明法2−Bとの両方を示している。表3に示す「燐濃度の外れ率」とは、燐外れの発生したチャージの比率を示している。尚、本発明法2-Aは、FeO量に比べて石灰源量が多いために石灰源が滓化しにくく終点燐濃度の下がりが本発明法3に比べて悪くなった。また、本発明法2-Bは、石灰源の供給速度が小さかったためにスラグの燐吸収能が本発明法3に比べて悪くなった。
Figure 0005678718
表3に示すように、本発明を適用することにより、脱炭精錬における燐外れが回避され、脱炭精錬終了時の溶湯中燐濃度を低位に安定できることが確認できた。
1 転炉本体
2 上吹きランス
3 底吹き羽口
4 煙道
5 スカート
6 ホッパー
7 投入シュート
8 一次集塵機
9 二次集塵機
10 PAダンパー
11 排ガス流量計
12 誘引送風機
13 ガス採取プローブ
14 ガス分析装置
15 演算装置
16 溶銑
17 スラグ
18 ディスペンサー
19 石灰源

Claims (5)

  1. 底吹き羽口から攪拌用ガスを吹き込んで溶湯を攪拌しながら、上吹きランスから酸素ガスを溶湯に供給すると同時に、添加する石灰源の一部を搬送用ガスとともに前記上吹きランスから投射して、転炉内に装入した溶銑を脱炭精錬するにあたり、上吹きランスからの酸素ガス流量、精錬中の排ガスの組成、排ガスの流量、副原料投入量及び溶湯成分から酸素バランスを逐次計算することにより求められる不明酸素量に基づいて炉内でのFeO生成量を推定し、推定したFeO生成量の推移に照らし合わせて、上吹きランスからの酸素ガス流量、上吹きランスのランス高さ、底吹き羽口からの攪拌用ガス流量のうちの少なくとも何れか1種を調整し、この調整により、精錬開始時から全酸素量の40体積%の酸素量を供給する時点までの期間の炉内でのFeOの生成量を3〜30kg/溶銑tの範囲に調製することを特徴とする、転炉での溶銑の脱炭精錬方法。
  2. 全酸素量の40体積%の酸素量を供給する時点から全酸素量の80体積%の酸素量を供給する時点までの期間の炉内でのFeOの生成量を3kg/溶銑t以上の範囲に調製することを特徴とする、請求項1に記載の転炉での溶銑の脱炭精錬方法。
  3. 精錬開始時から全酸素量の40体積%の酸素量を供給する時点までの底吹き攪拌用ガス流量の平均値(Nm3/(min・溶銑t))と、転炉脱炭精錬における溶銑比率(溶銑比率(%)=溶銑装入量(t)×100/(溶銑装入量(t)+鉄スクラップ装入量(t)))と、の乗算値を、4.8Nm3・%/(min・溶銑t)以上に保つことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の転炉での溶銑の脱炭精錬方法。
  4. 酸素吹錬の開始時点から全酸素量の40体積%の酸素量を供給する時点まで、上吹きランスから、添加する全石灰源量の10質量%以上の分量の石灰源を連続して投射し、全酸素量の40体積%の酸素量を供給した時点を越えた以降は上吹きランスからの石灰源の投射を停止することを特徴とする、請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載の転炉での溶銑の脱炭精錬方法。
  5. 石灰源の投射速度(kg/(min・溶銑t))と、炉内でのFeOの生成速度(kg/(min・溶銑t))との比(石灰源投射速度/FeO生成速度)が、0.4〜5.5の範囲内となるように、上吹きランスから投射する石灰源の投射速度をFeOの生成速度に応じて調整することを特徴とする、請求項4に記載の転炉での溶銑の脱炭精錬方法。
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