JP2019218580A - 溶鋼の脱燐処理方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】溶銑予備処理段階や転炉吹錬段階で重負荷をかけることなく、さらには予め大量のエネルギーや操業コストを抑え、RH工程においてCaO系脱燐スラグによる効率的な、高炭素濃度を有する溶鋼の脱燐処理方法を提供する。【解決手段】RH型精錬設備の真空槽内の高炭素溶鋼に対して、上吹きランスから噴流衝突流速15m/s以上で酸素源を供給して内部脱炭による強撹拌条件を確保し、真空槽内に高CaO活量の脱燐スラグを滞在させて界面酸素ポテンシャルを高位に確保した上で脱燐処理を実施し、その後、脱酸、合金化処理を実施する前に、環流量を増加させて脱燐スラグを取鍋スラグ内に排出することで復燐の悪影響を抑制して効率の良い処理が実現できる。【選択図】図1

Description

本発明は、RH型真空精錬炉によって炭素濃度が高い溶鋼の脱燐処理を実施するための溶鋼の脱燐処理方法に関する。
鋼製品中の燐は、偏析による材質特性の不均一性や、低温での脆性破壊、薄板製品の硬さ強度低下の要因となる有害元素であるため、鉄鋼製品の製造では溶鉄段階における脱燐処理により規定値以下まで脱燐される。脱燐処理は、溶鉄中の燐が燐酸としてCaOベースの滓化した精錬スラグ中に吸収除去される反応が最も経済的で、塩基性転炉での酸化吹錬による脱炭処理に伴って脱燐反応による除去が実施されてきた。また、転炉での脱炭吹錬前の溶銑予備処理による事前脱燐や、取鍋段階での脱燐処理など、各種精錬技術が利用されている。
このような溶鉄に対する酸化脱燐反応を進行させる場合、溶鉄中の炭素が同時に酸化される。一方、高級軸受け鋼や特性の優れた線材などに用いられる鋼製品には、炭素濃度の成分規格が1質量%以上の高炭素濃度の製品が含まれており、酸化反応にてスラグ中に燐を除去する際には、スラグ中のトータルFeに代表される酸素ポテンシャルを高位に確保することが困難である。そこで、例えば、転炉吹錬末期において増加するスラグ中の酸化鉄濃度が上昇するまで脱炭を行い、スラグ中の酸素ポテンシャルを高めた上で十分に脱燐を行った後、出鋼後の取鍋精錬段階で大量の炭素を添加するなどの手段が用いられる場合がある。このような方法は、一般的に吹下げ加炭法と呼ばれている。しかしながら、吹下げ吹錬による転炉の耐火物のダメージが大きくなったり、大量の炭材添加による熱ロスが発生したり、高純度炭素源を大量に使用することによって極めて深刻なコストアップに繋がったりする。
上記のような「吹下げ加炭法」と呼ばれる操業を回避するために、現状では、予め溶銑予備処理の段階で大量のフラックスを添加して事前に脱燐したり、転炉で比較的高炭素領域での吹錬中においてスラグ中の酸化鉄濃度を高めるためのソフトブロー操業を実施したりすることなどがなされている。しかしながら、今後の更なる高炭素低燐鋼の製品のニーズの拡大に対応するためには、新たな効率の良い操業技術の提示が求められている。
高炭素溶鋼の脱燐に有効な手段としては、脱炭時にスラグ中の酸素ポテンシャルを高めるため、添加フラックスとして、石灰石などのCaO源と酸化鉄とをプリメルトや焼結によって予め滓化性に優れた低融点のカルシウムフェライトを利用する手段が用いられている。転炉吹錬においては、特許文献1に記載のような操業が提案され、また、取鍋精錬(RH法)においては特許文献2に記載のような操業が提案され、後工程で大量の炭素の添加を必要としない操業が可能となってきている。
しかし、予め熱処理を加えることによって製造される低融点のカルシウムフェライト焼結品は、その製造のための熱エネルギーや操業コストを伴うために、脱燐剤自体の値段が高価であるという本質的な課題を伴う。更に、転炉内でカルシウムフェライトが炭素によって還元されることから、高炭素溶鋼の脱燐に必要な十分な酸素ポテンシャルの確保が困難であるといった問題もある。さらに、取鍋脱燐精錬では撹拌が不十分であり、溶鉄中の酸素ポテンシャル(酸素活量)が低い溶鋼と酸素濃度の高いスラグとの界面での酸素ポテンシャルを脱燐に適した高位に確保することができないといった問題もある。
また、他の方法として、例えば特許文献3に示されるような方法が提案されている。この方法では、C濃度が1.2質量%でP濃度が0.01質量%未満の高炭素極低燐鋼を製造するために、0.7質量%以下の炭素濃度領域の溶鋼に対して、加圧条件においてコストの高いCaC2フラックスを用いた脱燐処理を行い、その後に所定濃度まで炭素を加えている。ところがこの方法においても、極めて設備コストが高く、フラックスや副材コストが高く生産性の低い製造方法である。
特開2010−1536号公報 特開2015−232157号公報 特開昭62−107017号公報
桑原達郎ら:鉄と鋼,73(1987),S176.
近年のユーザー要求による更なる低燐、高炭鉄鋼製品の需要増に対応するためには、従来よりも安価な製造技術の開発が強く望まれている。従って、高価なカルシウムフェライトやCaC2を用いる手段の代替技術として安価に製造できる技術の提示は極めて重要な課題である。
本発明は前述の問題点を鑑み、溶銑予備処理段階や転炉吹錬段階で重負荷をかけることなく、さらには予め大量のエネルギーや操業コストを抑え、RH工程においてCaO系脱燐スラグによる効率的な、高炭素濃度を有する溶鋼の脱燐処理方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、RH脱ガス法を用いた溶鋼脱燐技術に着眼し、RH型真空精錬炉の真空槽内で酸素ポテンシャルを高位に維持しつつ、継続的にCOボイリング(以下、内部脱炭)を発生させることによって、スラグと溶鋼との間の界面酸素ポテンシャルを脱燐反応の進行に有利な条件に維持しつつ、スラグと溶鋼とのエマルジョン状態を生成し、脱燐反応を促進させること、更に、真空槽内の脱燐スラグを脱酸や合金添加前に排出することで復燐により溶鋼の燐濃度が上昇することを回避し、炭素濃度の高い溶鋼で効率的に脱燐処理を実行できることを見出した。
即ち、本発明の要旨とするところは以下の通りである。
(1)脱酸および合金調整を行う前に脱燐処理を行う溶鋼の脱燐処理方法であって、
C:0.7〜2.0質量%を含有する溶鋼を取鍋に収容してRH型真空精錬炉にて減圧し、CaO,SiO2,Al23,t.Fe,MgO,MnO及びP25の合計が85質量%以上で、かつ(1)〜(4)式で規定される条件を満たし、溶解時に(5)式で規定される範囲の粘性η(cP)になる脱燐剤を添加する際に、
下降浸漬管の平均溶鋼流速Umを0.5m/s以上1.0m/s以下にして溶鋼を環流させた状態で、かつ真空槽内に設置した上吹きランスから酸素ガス、または酸化鉄とともにキャリヤーガスを、(6)〜(8)式で規定される衝突流速Uが15m/s以上の条件で前記溶鋼に吹き付ける状態で、前記脱燐剤をCaO質量で0.03kg/t以上添加し、
当該添加を開始した後に、前記平均溶鋼流速Umおよび衝突流速Uの数値範囲を4分間以上維持して、前記酸素ガスまたは酸化鉄を酸素質量で0.003kg/t以上供給した後、生成した脱燐スラグを前記真空槽内から前記下降浸漬管を通して排出させることを特徴とする溶鋼の脱燐処理方法。
70.0質量%≧(%CaO)≧40.0質量% ・・・・(1)
(%CaO)/(%SiO2)≧1.5 ・・・・(2)
(%CaO)/(%Al23)≧2.0 ・・・・(3)
(%CaF2)<3.0質量% ・・・・(4)
100≦η(cP)≦250 ・・・・(5)
U=Lp×M1/Lo×Co ・・・・(6)
Lp=0.8×M1×(5.88+1.54M1 2)Ds ・・・・(7)
1=(2/(K−1)×Pn((K-1)/K)−1)1/2 ・・・・(8)
ここで、(%X)は、前記脱燐剤におけるXの割合(質量%)を表し、
η(cP)=1.2(%CaO)+7.3(%SiO2)+0.8(%Al23)+0.5(%t.Fe)+0.3(%MgO)+0.2(%MnO)+0.2(%P25)とする。
また、Lp:ポテンシャルコア長さ(mm)、M1:代表マッハ数(−)、Lo:真空槽内の溶鋼表面からのランス高さ(mm)、Co:代表音速(340m/s)、Ds:ランススロート部のノズル相当径(mm)、Pn:ノズル背圧(kg/cm2)、K:ガス比熱比(−)とする。
本発明によれば、RH脱ガス法によって高炭素溶鋼に対しても真空槽内の脱燐スラグによる脱燐反応を効率的に進行させることができ、脱酸や合金添加後の復燐による悪影響を低位に抑制できる。よって、従来、実施することができなかった高炭素鋼製品の溶鋼段階の製造工程において大量の炭素添加などの操業障害を軽減でき、安価で効率的な高炭素含有鋼の脱燐処理を実施することが可能となる。
本発明の実施様態におけるRH型真空精錬炉の構造を説明するための図である。 溶鋼中のスラグ滴径と終末速度との関係を示す図である。 1600℃における粘性の実験値と推定式との相関関係を示す図である。
以下、本発明について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施様態におけるRH型真空精錬炉の構造を説明するための図である。図1に示す装置は、酸素上吹き、および不活性ガスなどのキャリヤーガスによる粉体の上吹き機能を有するRH型真空精錬炉であり、上吹きランス1はランス折損などによる操業障害が小さい水冷構造のものが望ましい。
図1には、脱燐処理中の様子が示されており、取鍋2内に高炭素溶鋼3が収容され、その上部には取鍋スラグ4が存在する。真空槽5には、CaO系である脱燐用の脱燐剤6が上部ホッパー7から添加され、高温の真空槽5内で滓化した状態で脱燐スラグ8が存在する。また、真空槽5には、上昇浸漬管12(内径Du)と下降浸漬管13(内径Dd)とが設けられ、取鍋スラグ4の層よりも深い位置まで高炭素溶鋼3中に挿入されている。また、上昇浸漬管12には、環流ガス10を吹き込むための環流ガス羽口11が設置されている。高炭素溶鋼3には、前工程の転炉吹錬後の炭素と、燐や溶存酸素などの不純物とが含有されており、真空槽5内を減圧にすることで溶鋼は上方に吸引され、環流ガス10によって溶鋼が循環される。
本実施形態は、C濃度が0.7質量%以上2.0質量%以下の製品であって、主に連続鋳造を用いた製鋼工程によって製造される製品を対象としており、前述のように転炉での脱炭・脱燐処理後の炭材大量添加による操業上の課題やカルシウムフェライトなどの高価な脱燐剤を用いなければならないという課題の解決を主目的としている。したがって、RH型真空精錬炉での脱燐処理後に多少の成分調整用の加炭を認めるとしても、RH型真空精錬炉での脱燐処理に伴う溶鋼中C濃度低下を回復させる程度である。このことから、本実施形態に係る脱燐処理を開始する前、すなわち、本実施形態に係る脱燐剤を真空槽内に投入する直前の溶鋼中C濃度は、対象溶鋼から製造する製品のC濃度の規格である0.7〜2.0質量%とする。
対象溶鋼から製造する製品のC濃度の規格を2.0質量%以下とし、本実施形態に係る脱燐処理を開始する前の溶鋼中C濃度を2.0質量%以下とするのは、次の理由からである。つまり、C濃度が2.0質量%を超える溶鉄から製品を製造しようとすると、連続鋳造工程において割れが発生したり、鋳片から最終製品を加工する際に破損したりするなどの問題を伴うからである。
このとき、溶鋼中C濃度が0.7質量%以上では、数十気圧以上の加圧でない場合には内部脱炭を発生させるための酸素源を真空槽内の溶鋼中に溶存酸素として存在させることはできない。従って、本実施形態では上吹きランス1から酸素ジェット16で気体酸素を吹き付けて高炭素溶鋼3中に酸化鉄を生成させ、高炭素溶鋼3内部で懸濁スラグ15として懸濁させる、もしくは、上吹きランス1からアルゴンなどのキャリヤーガスによって鉄鉱石などの酸化鉄を吹き付けて溶鋼中に侵入させて懸濁スラグ15として懸濁させ、下記(9)式に示す内部脱炭によりCO気泡14を発生させることが本実施形態の重要点である。
(FexO)in metal+[C]→Fe+CO↑ ・・・・(9)
ここで、(FexO)in metalは、真空槽内のスラグメタル界面よりも下の高炭素溶鋼の内部に存在する酸化鉄を示し、溶鋼内部で炭素によって還元されることでスラグメタル反応に必要な界面攪乱のための内部脱炭が発生する。そして、内部脱炭により脱燐スラグをエマルジョン化させて界面反応を拡大させるとともに、スラグの酸素ポテンシャルを高める酸化鉄が界面へ物質移動するのを促進する。これにより、界面酸素ポテンシャルを高位に維持することができ、脱燐反応が有効に進行する。
本発明は、C濃度が0.7質量%以上のような内部脱炭が起こりにくい溶鋼を対象として脱燐処理することを目指しているので、本発明に係る脱燐処理を開始する前の溶鋼中C濃度を0.7質量%以上としている。
真空槽内に添加する脱燐剤は、脱燐効率を高位にするための高いCaO活量のものが望まれる。このとき、化合物や混合物、プリメルト品などの単体を添加してもよい。真空槽内での脱燐剤の配合組成は、70.0質量%≧(%CaO)≧40.0質量%((1)式)、(%CaO)/(%SiO2)≧1.5((2)式)、(%CaO)/(%Al23)≧2.0((3)式)の要件を満たす必要がある。なお、(%X)は、前記脱燐剤におけるXの割合(質量%)を表す。
ここで、(2)式および(3)式の要件を満たす理由としては、CaO濃度が高いスラグにおいてはSiO2やAl23の存在によりCaOの溶融比率を高める効果がある。一方、SiO2およびAl23はCaOの活量を下げる影響も有する。このことから、溶融比率とCaOの活量の維持との兼ね合いにより、(2)式および(3)式で下限を定めている。(%CaO)/(%SiO2)および(%CaO)/(%Al23)の上限は特に定めないが、(1)式でCaO濃度の上限を70質量%と定めたことによって、それらの上限も自ずと定まる。なお、CaOの溶融比率は100%である必要はなく、溶融スラグ中に液相スラグの適切な粘性維持に影響がない条件で固相CaOが懸濁した滓化状態にして、処理中の液相スラグのCaO活量を高位に維持することは、脱燐効率を高める上で有効な手段の一つである。
しかし、脱燐剤として配合するCaOが70質量%を超える場合には、滓化スラグのCaO活量は高位に維持できるものの、未滓化CaOによる滓化不良によってスラグ中へPが吸収されることが妨げられる。したがって、脱燐剤において、CaOは70質量%以下とする。
また、脱燐剤の原料として従来知られているCaF2は、粘性低下効果が著しく、脱燐処理中のスラグが微細化することによって、脱燐スラグの排出が促進されてしまう。脱燐剤にCaF2を配合する必要はないが、脱燐剤にリサイクルスラグなどを用いる際にCaF2は不可避的に混入する場合がある。そのような場合でも、脱燐剤におけるCaF2含有量は3質量%未満((4)式)である必要がある。脱燐剤中のCaF2を定量化する際には、化学分析で得られたF含有量に対して、Caが等量モル比にて存在するものとして計算して評価することができる。
以上のような条件を満たす脱燐剤は、CaO質量で0.03kg/t以上添加する必要がある。添加量が0.03kg/t未満である場合には、脱燐効果が明確に得られない虞があるからである。本発明を実施する際には、脱燐率{(処理前[P]−処理後[P])×100/処理前[P]}で10%以上が得られないとその効果が認められるとは言い難い。CaO質量で0.03kg/tという量は、P濃度が0.01質量%の極低P鋼においてP濃度の10%程度をスラグ中に3CaO・P25として液相中の会合状態で吸収されるために必要な量に相当する。一方、添加するCaO質量の上限は、脱燐反応面からは定める必要が無い。但し、RH型真空精錬炉での脱燐処理によるRH型真空精錬炉の耐火物の損耗、連鋳操業とのマッチング等の面から、脱燐処理中の酸素供給量や脱燐処理時間には上限がある。
脱燐処理時間(脱燐剤の添加を開始した時から、脱燐後に脱燐スラグの排出を開始するまでの時間)は、本発明による脱燐効果を明確に得るためには4分間以上が必要である。一方で、RH型真空精錬炉の耐火物の損耗、連鋳操業とのマッチング等の面から、脱燐処理時間は25分間以下が好ましい。この25分間の脱燐処理時間を考慮すると、添加する脱燐剤のCaO質量の上限は、キャリヤーガスの安定的な搬送能力とも照らし合わせて30kg/tが好ましいといえる。
なお、高炭素溶鋼では、溶鋼中の溶存酸素は脱燐反応には不十分な低濃度である。しかし、転炉による溶銑予備処理での脱燐プロセスではC濃度が4質量%程度の溶銑中の溶存酸素は極めて僅かな溶銑に対して、吹錬に伴う強撹拌により、高い酸素ポテンシャルを有する脱燐スラグ中の酸化鉄の物質移動を促進し、界面での酸素ポテンシャルを高位にすることで脱燐が効率的に進行することは当業者に良く知られている。このことから、高炭素溶鋼を対象とした脱燐処理においても、前述した(9)式の内部脱炭を発生させることによって真空槽内で強撹拌することが効率的な脱燐処理に必要であることは同様の反応機構で容易に説明できる。この内部脱炭を発生させるためには、酸素噴流の衝突圧力を高めて酸素ジェットが脱燐剤で形成されるスラグ層を突き破った上で、溶鋼と酸素との反応で生成される酸化鉄を溶鋼内部に一旦侵入させる必要がある。もしくは、キャリヤーガスによって噴出される酸化鉄がスラグ層を突き破った上で、酸化鉄を溶鋼内に侵入させる必要がある。その上で溶鋼内部にて炭素によって酸化鉄が還元されて火点領域を形成させる。そのためには、(6)〜(8)式によって計算される溶鋼表面への衝突流速Uを15m/s以上に連続的、または断続的に維持する必要がある。
U=Lp×M1/Lo×Co ・・・・(6)
Lp=0.8×M1×(5.88+1.54M1 2)Ds ・・・・(7)
1=(2/(K−1)×Pn((K-1)/K)−1)1/2 ・・・・(8)
ここで、Lp:ポテンシャルコア長さ(mm)、M1:代表マッハ数(−)、Lo:真空槽内の溶鋼表面からのランス高さ(mm)、Co:代表音速(340m/s)、Ds:ランススロート部のノズル相当径(mm)、Pn:ノズル背圧(kg/cm2)、K:ガス比熱比(−)である。また、衝突流速Uを算出する際に、ラバールノズルの場合、ノズル背圧Pnはスロート部の圧力を指し、先細ノズルやストレートノズルの場合、ノズル背圧Pnはノズル先端部における絶対圧力を指す。また、ノズル相当径Dsはその部分の直径を指すが、真円でない形状の場合は、断面積を真円相当にしたときの相当直径で規定する。
また、物性値であるガス比熱比K(−)は、ガス種によって異なるが、製鉄用に用いられるガスとして、酸素、窒素、水素、空気の場合は1.4でよく、アルゴンやヘリウムを用いる場合には1.7、二酸化炭素、水蒸気を用いる場合は1.3が適当な値である。
真空槽内の圧力、排ガス成分、および排ガス流量は、真空槽内の排気孔に設置された排ガス測定器9で連続的にモニターされている。従って、真空槽内の圧力によって大気圧に晒された取鍋内溶鋼が吸引された高さを知ることができ、ランス高さの差によってランス高さLoをコントロールでき、ノズル相当径Dsの決まった上吹きランスのノズル背圧Pnを選択することで真空槽内でのガスの衝突流速Uを制御することができる。加えて、上記内部脱炭の発生は、真空槽内をモニターで観察して確認できる他、排ガス測定器で真空度、排ガス流量、排ガス中のCO、CO2の成分を連続的に分析することで、COガスの発生速度をモニターすることができる。一般的には、溶鋼中から5ppm/min以上の炭素が発生している場合には、本発明に十分な撹拌力を有する内部脱炭が発生しているものと判断できる。
内部脱炭を発生させるために上吹きランスから供給する酸素源としては、気体の酸素ガスの他に、スケールや鉄鉱石、ダスト等の酸化鉄を多く含有するものがある。鉄鉱石等の酸化鉄を吹き付ける場合はアルゴンや窒素などのキャリヤーガスとともに吹き付けられる。本発明では溶存酸素が低濃度の高炭素溶鋼を対象とするため、吹き付けるガスの衝突流速Uが15m/s以上である必要がある。
また、鉄鉱石等の固体の酸化鉄を供給する場合、最大粒径が2.00mmを超えるとキャリヤーガスによって酸化鉄を運搬するのが難しくなる。一方、最大粒径が0.01mm未満であると、キャリヤーガスの衝突流速Uが15m/s以上であっても酸化鉄が溶鋼内部に侵入しづらくなる。したがって、最大粒径は0.01mm以上2.00mm以下とすることが好ましい。また、キャリヤーガスの種類としては、特に限定するものではないが、アルゴンガスや窒素ガスなどを用いることができる。なお、コストをより重視したい場合には、窒素ガスを用いることが好ましい。
前述の(9)式の内部酸化は、酸素源を供給することによる溶鋼中Cの酸化反応である。また、溶鋼中Pを酸化するためにも、酸素の供給量は重要である。本発明を実施した場合の脱燐効果を明確に得るためには、前述したように脱燐剤をCaO質量で0.03kg/t以上添加するとともに、5ppm/minの内部脱炭を4分間維持するために必要な酸素質量として、酸素ガスまたは酸化鉄を酸素質量で0.003kg/t以上供給することが必要である。この酸素供給量にも上限は特に定めないが、前述したように脱燐処理時間は25分間以下が好ましいということから、脱燐処理中の酸素供給量は6kg/t以下が好ましいことになる。
また、この操業においてさらに重要なことは、真空槽内において内部脱炭によって脱燐スラグを撹拌懸濁状態にして懸濁スラグとして長時間滞留させることであり、真空槽内に添加した脱燐剤が溶融して溶鋼中にエマルジョン状態にて懸濁した脱燐スラグが、脱燐処理中には下降浸漬管から排出される割合を抑制することが重要である。
二液相のエマルジョン現象については、比重の小さい浮遊相の粘性が低いと生成される粒滴は小さくなることはよく知られている。例えばCaF2を添加すると脱燐スラグの粘性は低下し、スラグ滴は微細化して比表面積は拡大する。ここで、スラグ滴の粒径が微細化すると、浮上速度が小さいために溶鋼中の滞留時間が長くなる。このように比表面積の拡大と滞留時間の長時間化との両面で反応促進に大きな効果がある。しかしながら、本発明の実施形態においては、小さいサイズのスラグ滴が真空槽内に分散する場合には、下降浸漬管の溶鋼流によって真空槽内から短時間で排出されてしまい、その後に取鍋スラグ中にスラグ滴が吸収されて効果的な脱燐処理を実施することができない。
ここで、脱燐スラグが分散したときの、溶鋼中のスラグ滴の浮上速度(終末速度)は、以下の(10)式に示すニュートンの式によって算定される。
Uf={(4/3(ρm−ρs)g・d)/(0.5・ρm)}1/2 ・・・(10)
Uf:終末速度(m/s)、d:スラグ滴径(m)、g:重力加速度(9.8m/s2)、ρm:溶鋼比重(約7000kg/m3)、ρs:スラグ比重(約3000kg/m3
一方、RH型真空精錬炉の環流量については、非特許文献1に記載されている環流量の規定式(以下の(11)式)に基づくことで容易に計算することができる。
Q=11.4×G1/4×D4/3×{ln(P1/P2)} ・・・・・(11)
Q:環流量(t/min)、G:上昇管環流ガス流量(Nl/min)、D:浸漬管内径(m)、P1:環流ガス吹き込み圧力(通常操業では大気圧)、P2:真空槽内圧力
従って、下降浸漬管の平均下降流速Um(m/s)は、以下の(12)式で計算されることが分かる。
m=1000・Q/{60・ρm・π(D/2)2} ・・・・・・(12)
(12)式によれば、(11)式で求められる環流量Qに基づいて、平均下降流速Umが定義され、その範囲は0.5m/s以上1.0m/s以下とする。平均下降流速Umがこの範囲に限定される理由は以下の通りである。つまり、現在の工業的に適用されるRH型真空精錬炉の浸漬管径はおよそ0.4〜0.7m程度であり、CO気泡の発生を伴う精錬処理時の真空度は20〜2kPaである。さらに、浸漬管を通過する環流ガス流量は概ね500〜3000(Nl/min)程度である。この範囲より(11)式および(12)式にて計算される平均下降流速Umは、ほぼ0.5〜1.0m/sの範囲となる。
従って、(10)式によって規定されるスラグ滴の終末速度が0.5m/s未満の場合には、脱燐剤が真空槽内に添加されて滓化、エマルジョン化されたスラグ滴は短時間で下降浸漬管より排出されてしまうため、有効な脱燐処理を実施することができない。
図2は、スラグ滴径d(m)と(10)式で計算される終末速度Uf(m/s)との関係を示す図である。図2に示すように、スラグ滴径が0.02m以下では、終末速度Ufが0.5m/s未満となるため、前述したように有効な脱燐処理を実施することができない。
一方、スラグ滴径が0.07mを超える場合には、終末速度Ufが1.0m/sを超える。この場合は、スラグ滴が浮上しやすい状態であることから、環流ガス流量の増加や真空度の上昇操作などの通常操業の範囲で脱燐処理後に真空槽内からスラグを排出することが極めて困難になる。したがって、脱燐処理後に真空槽内にスラグが残留し、成分調整のために脱酸や合金添加で強脱酸元素によって残留スラグ中にP25の形で酸化吸収された燐が還元されて復燐する場合がある。このため、所定の低燐鋼製品を安定して製造することができない。
真空槽内で懸濁したときのスラグ滴のサイズは、スラグ粘性による影響が最も大きい。そこで、本発明者らはスラグ粘性の基礎実験調査を行った。実験方法は、予め組成を調査した表1に示す範囲の脱燐剤を用いて、1600℃における粘性を回転式粘度測定法によって調査した。
得られた実験値と組成とを統計処理した結果、CaF2を5質量%含有する合成ブリケットを除いては、粘性η(cP)は以下の(13)式によって定量評価することができることを見出した。(13)式中、(%X)は脱燐剤中におけるXの割合(質量%)を意味し、t.Feは酸化鉄として含まれるは2価と3価の酸化鉄の質量%の合計を表している。また、チタン酸化物やクロム酸化物などを添加しての不可避的不純物の影響を調査した結果、(13)式に記載の成分(CaO,SiO2,Al23,t.Fe,MgO,MnO及びP25)の合計が85質量%以上であれば、不純物が与える粘性計算値への誤差は7%未満であり、実用上差し支えないことも確認した。
η(cP)=1.2(%CaO)+7.3(%SiO2)+0.8(%Al23)+0.5(%t.Fe)+0.3(%MgO)+0.2(%MnO)+0.2(%P25) ・・・・・・・・・・(13)
図3には、1600℃において実験によって測定された粘性と(13)式で計算された値との相関関係を示す。図3に示されるように、表1に示したCaF2含有品以外の脱燐剤は、スラグの粘性を良く再現できていることが分かる。
上記の操業をRH型真空精錬炉にて工業的に実施するためには、前述したように、真空槽内の懸濁スラグのスラグ滴径の主要分布を0.02〜0.07mの範囲にする必要性がある。その条件を満足する精錬スラグの特性調査は、後述する本発明の効果の検証のための実機RH実験で行った。この実験では、下降浸漬管の周囲の表面スラグを金属棒で破砕除去し、下降浸漬管から浮上してくるスラグ滴の様子を高速カメラで撮影観察した。そして、高速カメラで得られた画像解析データと、添加した脱燐剤の組成を(13)式に代入して規定される粘性η(cP)とを比較評価した結果、粘性η(cP)が100cP以上、250cP以下である場合に、効率良く脱燐処理を行い、かつ脱燐処理終了後の真空槽内からスラグを排出することが可能であった。
以上のように、本実施形態では溶存酸素活量が低い高炭素溶鋼を対象としていることから、CaO系の脱燐スラグの組成は、前述した(1)〜(4)式の範囲を満足することが求められる。また、スラグ滴を懸濁スラグとして長時間滞留させるためには、さらに脱燐剤が溶解した際に粘性η(cP)が(5)式の範囲を満足することが求められる。したがって、本発明の実施形態においては、滓化した真空槽内での脱燐スラグの組成を把握することは重要である。
脱燐処理中に真空槽内の脱燐スラグを採取することは困難である。そこで、脱燐剤の配合組成と上吹きランスから添加した酸素源から生成する酸化鉄量のマスバランスとから脱燐スラグの組成を算定する手法が簡便である。なお、試験的に脱燐試験を実施する場合には、上吹きランスに付着採取用の金属板を設置して内部脱炭と共に飛散したスラグを採取したり、一時的に環流量を大きくして、下降浸漬管から排出されて下降浸漬管付近から浮上するスラグを浸漬型サンプラーで採取したりするなどしてスラグを直接成分分析にて確認することは可能である。しかし、本発明に際して調査を行った結果、添加した脱燐剤の配合組成と分析値のばらつきの範囲で滓化した脱燐剤(脱燐スラグ)の組成とでは組成が変化しておらず、配合組成にて脱燐スラグの組成は脱燐剤の組成とみなすことができることを確認している。
また、添加する脱燐剤の組成は、同一組成の混合物である必要はなく、本発明の特徴とする脱燐処理の間規定の組成を維持するように、前もって真空槽内に分割して添加し、真空槽内で混合、滓化させてもよい。また、必要に応じて脱燐剤の構成物を脱燐処理の途中で真空槽内に添加するなどの方法を用いてもよい。いずれの方法でも発明の効果を問題なく享受することができる。
所定の脱燐処理は、サンプルを分析して終点を判定したり、操業条件によって処理時間を定めたりするなど、一般的な操業基準で行っても良い。この脱燐処理以降、脱水素などの処理基準がある場合も含め、脱酸元素であるアルミ、シリコン、マンガンなどを添加する前に、環流速度を上昇させて真空槽内の精錬スラグを下降浸漬管から排出して取鍋内の溶鋼上に浮上させておく必要がある。そのための手段としては、環流ガスの流量を上昇させたり、真空度を上昇させたりして環流速度を上昇させる。また、排出処理の確認を行うためには、真空槽の下降浸漬管周辺の表面固化スラグを破砕して、下降浸漬管周囲の溶鋼表面にスラグが浮上開始してから終了する状況を、カメラや目視で確認して、操業基準として定めるなどが一般的である。
このスラグ排出を実施せずに脱酸を実施した場合には、真空槽内のスラグ中にP25として分離除去された燐が還元されて復燐するため、本発明の効果は得られない。
本発明の実施例について説明する。ここで記載した条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
本発明の効果を確認するために、290t/chのRH型真空精錬炉を用い、溶鋼の初期温度は約1600℃、処理前C濃度は、対象とする溶鋼の向け先製品のC濃度の規格に合わせて、C濃度の規格が1.0〜1.2質量%のものには、処理前C濃度を1.0〜1.2質量%とし、C濃度の規格が1.8〜2.0質量%のものには、処理前C濃度を1.8〜2.0質量%とした。いずれの鋼種も向け先製品のP濃度の規格は0.01質量%以下である。そのため、溶銑脱燐処理および転炉脱炭・脱燐処理により、処理前P濃度は約0.025質量%とした。また、その他の主成分は、いずれの鋼種においても処理前後ともにSi:0.05質量%未満、Mn:0.05質量%未満、S:0.01質量%未満であった。
実験で用いたRH型真空精錬炉の浸漬管の内径は、上昇浸漬管、下降浸漬管共に0.6mであった。そして、取鍋に収容された溶鋼に浸漬管を浸漬させ、真空引きして真空槽内の圧力を20kPaにした。また、上昇浸漬管の羽口から環流ガスとしてArガスを1000Nl/min吹き込み、下降浸漬管の平均下降流速Umを0.57m/sに調整した。そして、約100mmサイズである塊状の脱燐剤を上部ホッパーから一括添加したが、脱燐剤中の成分が変化することによる、CaO活量の変化の影響を把握するため、配合成分に基づいてCaO分が600kg/ch(2.1kg/t)になる量に統一して脱燐処理を実施した。また、上記脱燐剤を添加する直前に、上吹きランスから酸素ガスの吹き付け、または窒素ガスをキャリヤーガスとして最大粒径が0.1〜0.2mmのミルスケール(主成分Fe23)の吹き付けを実施して、後述する吹き付け条件で酸素の供給を始め、その直後に上記脱燐剤を一括して投入し、その後12分間で酸素を0.70kg/t供給した。その処理時間中に、COボイリングの発生が維持できていることを排ガスモニターで確認した。
上吹きランスは水冷のスロート径18mmの単孔ラバールノズルを用いた。吹き付け条件は、純酸素、ミルスケールを含有する窒素ガスともに、ランス背圧Pnは絶対圧4kg/cm2とし、そのときのガス吹き付け速度は710Nm3/hを基本条件とした。なお、ミルスケールを含有する窒素ガスを吹き付ける際には、キャリヤーガスの窒素流量を同じにしてミルスケール中の酸素量が純酸素と等しい条件で実施した。
ランス高さLoは1500mmを基本条件とし、このときの衝突流速Uは23m/sであった。吹き付け速度を変更する場合にはランス高さLoを変化させて制御したが、ランス高さLoが2300mm以下(衝突流速Uが15m/s以上)では、酸素吹付時の脱炭速度は約40ppm/minで一定値を示した。一方、同一背圧にてそれよりも高いランス高さの場合では、脱炭速度は3ppm/min程度に急激に低下した。これは、酸素ジェットの衝突速度Uが小さくなり、ソフトブロー化によって火点形成を伴った内部脱炭が発生しなかったことを示している。
上記の脱燐処理が終了した後は、環流ガスであるArガスの流量を2000Nl/minに増加させると共に真空度を0.20kPaにし、下降浸漬管の平均下降流速Umを1.13m/sに制御し、下降浸漬管を通して脱燐スラグの排出を行った。この際、下降浸漬管周囲のスラグを予め破砕除去し、溶鋼面から浮上してくるスラグ滴をモニター画像で監視して、排出が完了することを確認した。その後、脱酸のためにアルミニウムを添加して、処理前と処理後の成分変化を比較した。実験後の溶鋼は再度所定の合金調整を実施した後に連続鋳造工程にて鋳片製品にした。
なお、前述の適正なスラグ滴の粒径分布及び計算した粘性η(cP)は、予め内部脱炭発生開始から0分〜2分の間で脱燐スラグの成分変化が誤差範囲内であり、正しく計算されたことを確認した。また、内部脱炭開始後1.5分で脱燐スラグの排出処理を実施し、そのときの画像データの解析結果から粒径分布を求めた。内部脱炭維持のために上吹きによって吹き付けた気体酸素、または、ミルスケールによるスラグ成分としての酸化鉄濃度の変化は、一連の実験の分析誤差範囲内であった。この観察試験結果から、粘性η(cP)が100cP未満では多くの脱燐スラグが内部脱炭発生時に0.02m未満のサイズで排出されたことを確認した。さらに、粘性η(cP)が250cPを超える場合には平均下降流速Umが1.0m/sを超えるときでも多くのスラグが真空槽内に残留し、一部のみが0.07m近いサイズの比較的大きなスラグ滴で排出されたことを確認した。また、以下の表2に示すすべてのサンプルは、CaO,SiO2,Al23,t.Fe,MgO,MnO及びP25の合計が85質量%以上であった。表2には、実験結果の一覧を示す。
実施例1、2は、脱隣剤に転炉滓を用い、内部脱炭を発生させるためにそれぞれ気体酸素、スケールを用いて脱燐処理を実施したものである。両者とも目標値であるP濃度で0.01質量%を大きく下回る良好な結果が得られた。
一方、比較例1は、脱燐剤に転炉滓を用いたが、酸素供給を行わなかった場合の結果である。モニターされた脱炭速度も1ppm/min程度で脱燐も不良であった。これは、本発明の要件である内部脱炭によるスラグ撹拌効果が得られなかったためである。
比較例2は、CaF2を多く含有する脱燐剤を使用したものであり、内部脱炭を発生させるために気体酸素を吹き付けて脱燐処理を実施したものである。前述の通り、CaF2含有スラグは(13)式の推定式による評価ができないことから、表中の粘性値は回転粘度計による測定値である。この例では、脱燐処理初期に下降浸漬管付近から大量のスラグ流出が観察され、脱燐も不良であった。これは、粘性が低いことから脱燐処理初期に真空槽中の脱燐スラグが排出されて脱燐不良になったためである。
比較例3は、高粘性の脱燐剤(溶解時の粘性η(cP)>250cP)を用いたものである。この例では、脱燐処理後のスラグ排出処理時に下降浸漬管付近からのスラグ流出が観察されず、RH処理後のP濃度も高く、不合格であった。これは、脱燐処理後の真空槽内に脱酸剤を添加した時に復燐が発生して低燐溶鋼の製造ができなかったためである。
比較例4は、脱燐剤として脱炭滓に珪砂を加え、(%CaO)/(%SiO2)<1.5の条件で脱燐処理を行った実験結果である。また、比較例5は脱炭滓にアルミナを加えて脱燐剤が(%CaO)/(%Al23)<2.0の条件で脱燐処理を行った実験結果である。それぞれ用いた添加材の珪砂、アルミナ共に約1mm程度の粒状物を用いており、両者ともCaO活量の低下作用によって目標のレベルまでの脱燐処理ができなかった。
実施例3、4は、それぞれ、比較例4、5と同じ珪砂、アルミナ添加量を調整して(2)式および(3)式の条件を満たすようにして脱燐処理を行った実験結果である。これらは本規定範囲内での目標レベルの脱燐処理が可能であることを確認することができた。
実施例5、比較例6は、それぞれランス高さLoを変更して酸素の衝突流速Uを変更したものである。前述のように本発明の規定範囲内である衝突流速U=15m/sの条件とした実施例5では、内部脱炭による反応促進作用が得られたため、脱燐処理が良好に実施できていた。これに対し、比較例6(衝突流速U=14m/s)では、排ガス測定によっても内部脱炭の発生が起こっていないことが察知され、脱燐処理も不良であった。
実施例6は、他の例に比べてC濃度の高い高炭素鋼種を対象に実験を実施したものである。C濃度が2質量%近くの高炭素溶鋼であっても、本発明の有効性が確認できた。
比較例7は、初期のC濃度を0.65質量%として脱燐処理を実施した結果である。脱燐効率は他の高炭素溶鋼と殆ど差異はなかった。しかしながら、所定の規格以上のC濃度の製品用の溶鋼を製造するために、その後、0.4質量%相当量を超える量の高純度炭材の大量添加を必要としたため、非常にコストが多くかかることが確認できた。
本発明によれば、これまで低濃度まで脱炭した後に大量の炭材添加を行うなどの高コスト操業が必要とされた高炭素鋼の低燐化を、安価で効率よく実施することが可能となり、その工業的利用価値は極めて高いものである。
1:上吹きランス
2:取鍋
3:高炭素溶鋼
4:取鍋スラグ
5:真空槽
6:製錬剤
7:上部ホッパー
8:脱燐スラグ
9:排ガス測定器
10:環流ガス
11:環流ガス羽口
12:上昇浸漬管
13:下降浸漬管
14:CO気泡
15:懸濁スラグ
16:酸素ジェット

Claims (1)

  1. 脱酸および合金調整を行う前に脱燐処理を行う溶鋼の脱燐処理方法であって、
    C:0.7〜2.0質量%を含有する溶鋼を取鍋に収容してRH型真空精錬炉にて減圧し、CaO,SiO2,Al23,t.Fe,MgO,MnO及びP25の合計が85質量%以上で、かつ(1)〜(4)式で規定される条件を満たし、溶解時に(5)式で規定される範囲の粘性η(cP)になる脱燐剤を添加する際に、
    下降浸漬管の平均溶鋼流速Umを0.5m/s以上1.0m/s以下にして溶鋼を環流させた状態で、かつ真空槽内に設置した上吹きランスから酸素ガス、または酸化鉄とともにキャリヤーガスを、(6)〜(8)式で規定される衝突流速Uが15m/s以上の条件で前記溶鋼に吹き付ける状態で、前記脱燐剤をCaO質量で0.03kg/t以上添加し、
    当該添加を開始した後に、前記平均溶鋼流速Umおよび前記衝突流速Uの数値範囲を4分間以上維持して、前記酸素ガスまたは酸化鉄を酸素質量で0.003kg/t以上供給した後、生成した脱燐スラグを前記真空槽内から前記下降浸漬管を通して排出させることを特徴とする溶鋼の脱燐処理方法。
    70.0質量%≧(%CaO)≧40.0質量% ・・・・(1)
    (%CaO)/(%SiO2)≧1.5 ・・・・(2)
    (%CaO)/(%Al23)≧2.0 ・・・・(3)
    (%CaF2)<3.0質量% ・・・・(4)
    100≦η(cP)≦250 ・・・・(5)
    U=Lp×M1/Lo×Co ・・・・(6)
    Lp=0.8×M1×(5.88+1.54M1 2)Ds ・・・・(7)
    1=(2/(K−1)×Pn((K-1)/K)−1)1/2 ・・・・(8)
    ここで、(%X)は、前記脱燐剤におけるXの割合(質量%)を表し、
    η(cP)=1.2(%CaO)+7.3(%SiO2)+0.8(%Al23)+0.5(%t.Fe)+0.3(%MgO)+0.2(%MnO)+0.2(%P25)とする。
    また、Lp:ポテンシャルコア長さ(mm)、M1:代表マッハ数(−)、Lo:真空槽内の溶鋼表面からのランス高さ(mm)、Co:代表音速(340m/s)、Ds:ランススロート部のノズル相当径(mm)、Pn:ノズル背圧(kg/cm2)、K:ガス比熱比(−)とする。
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