JP5790607B2 - 溶銑脱りん方法、溶銑脱りんシステム、低りん溶銑の製造方法および低りん溶銑の製造装置 - Google Patents

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Description

本発明は、転炉を用いた溶銑予備脱りん処理としての溶銑脱りんにおいて、出銑待ち期間中の溶銑中のりん濃度を高精度に推定する溶銑脱りん方法、該溶銑脱りん方法を実行可能な溶銑脱りんシステム、該溶銑脱りん方法を用いた低りん溶銑の製造方法、および該低りん溶銑の製造方法を実行可能な低りん溶銑の製造装置に関する。
精錬工程におけるりん濃度の制御は、鋼の品質管理上、非常に重要である。特に、主要な脱りん工程である溶銑脱りん吹錬では、溶銑中のりん濃度の制御のために、吹込み酸素量、生石灰・スケール等の副原料投入量、上吹きランス高さ、上吹き酸素流量および底吹きガス流量が、操作量として用いられている。これらの操作量は、目標りん濃度や溶銑情報および過去の操業実績に基づいて作成された操業基準等、吹錬開始前に得られる情報で決定されることが多い。
ただし、同じような操業条件でも実際の吹錬における脱りん挙動の再現性はあまり良くなかった。すなわち、上記のような吹錬開始前に得られる情報のみに基づいて決定された操作量による溶銑脱りん吹錬では、溶銑中のりん濃度のばらつきが大きくなるという問題があった。また、溶銑脱りん吹錬では、吹錬が終了してもフォーミングしたスラグの鎮静化のためにある一定期間だけ出銑を待つことがあるが、この出銑待ち期間中にりん濃度が増加し(復りんし)、溶銑脱りん吹錬終了時点では目標りん濃度を満足していたとしても、出銑時には目標りん濃度を上回ってしまう場合があった(図1参照)。
上記問題点に対応すべく、吹錬中に定周期で得られる排ガス成分や排ガス流量の測定値を活用した技術がこれまでに提案されている。例えば特許文献1には、吹錬中の排ガス組成や流量、酸素ガス流量、副原料投入量および溶銑成分から、酸素バランスを逐次計算することにより求められる蓄積酸素量に基づき、転炉内のFeO生成量を推定し、その推定したFeO量に応じて、上吹きランス高さ、酸素ガス流量及び底吹きガス流量のうち少なくともいずれか一つを調整して、処理後のりん濃度を低減する高炭素極低りん鋼の溶製方法が開示されている。また、特許文献2には、排ガスの分析値と排ガス流量から計算される脱炭酸素効率の実績値が、あらかじめ処理パターンごとに設定した目標変化曲線に追従するように、ランス高さ、送酸速度、底吹ガス種類と量のうちのいずれか1つもしくは2つ以上を調整する溶銑脱りん方法が開示されている。
特開2006−206930号公報 特開2010−13685号公報
しかしながら、特許文献1、2に開示された技術は両方とも、酸素吹込みを行っている吹錬中を対象とした技術であり、先に示した出銑待ち期間中における溶銑中のりん濃度の変化には対処できない。
そこで、本発明は、転炉を用いた溶銑予備脱りん処理としての溶銑脱りんにおいて、出銑待ち期間中の溶銑中のりん濃度を高精度に推定する溶銑脱りん方法、該溶銑脱りん方法を実行可能な溶銑脱りんシステム、該溶銑脱りん方法を用いた低りん溶銑の製造方法、および該低りん溶銑の製造方法を実行可能な低りん溶銑の製造装置を提供することを課題とする。
本発明の第1の態様は、上底吹き転炉を用いて溶銑の浴面に酸素および脱りん剤を吹き付ける溶銑脱りん吹錬工程を含む、溶銑脱りん方法であって、溶銑脱りん吹錬工程後に、少なくとも排ガス成分および排ガス流量を含む操業条件に基づいて、溶銑中のりん濃度を出銑開始時まで逐次推定するりん濃度推定工程を含む、溶銑脱りん方法である。
上記本発明の第1の態様のりん濃度推定工程において、排ガス成分、排ガス流量、上底吹きガス流量、副原料投入量および溶銑の構成成分から酸素収支を計算して得られる炉内蓄積酸素量原単位を用いて、溶銑中のりん濃度を出銑開始時まで逐次推定することが好ましい。炉内蓄積酸素量原単位が脱りん速度定数に及ぼす影響が大きいからである。
また、上記本発明の第1の態様は、りん濃度推定工程における溶銑中のりん濃度の推定結果と、溶銑の目標りん濃度と、に基づいて、出銑待ちの期間中における溶銑中のりん濃度を調整するための操作量を決定する、操作量決定工程をさらに含むことが好ましい。かかる形態とすることによって、出銑開始時における溶銑中のりん濃度を目標りん濃度に精度良く的中させることができる。また、上記操作量が、底吹きガス流量および/または媒溶材投入量であることが好ましい。かかる形態とすることによって、溶銑中のりん濃度を適切に調整することができる。
本発明の第2の態様は、上記本発明の第1の態様にかかる溶銑脱りん方法を用いる低りん溶銑の製造方法である。
本発明において「低りん溶銑」とは、含有する化学成分の質量濃度が炭素3%以上、且つ、りん0.3%以下である溶銑を意味する。
本発明の第3の態様は、上底吹き転炉において溶銑の浴面に酸素および脱りん剤を吹き付ける溶銑脱りん吹錬工程を含む、溶銑脱りん方法に用いる、溶銑脱りんシステムであって、溶銑脱りん吹錬工程後に、少なくとも排ガス成分および排ガス流量を含む操業条件に基づいて、溶銑中のりん濃度を出銑開始時まで逐次推定するりん濃度推定手段を備える、溶銑脱りんシステムである。
上記本発明の第3の態様において、りん濃度推定手段が、排ガス成分、排ガス流量、上底吹きガス流量、副原料投入量および溶銑成分から酸素収支を計算して得られる炉内蓄積酸素量原単位を用いて、溶銑中のりん濃度を出銑開始時まで逐次推定することが好ましい。炉内蓄積酸素量原単位が脱りん速度定数に及ぼす影響が大きいからである。
また、上記本発明の第3の態様において、りん濃度推定手段による溶銑中のりん濃度の推定結果と、溶銑の目標りん濃度と、に基づいて、出銑待ちの期間中における溶銑中のりん濃度を調整するための操作量を決定する、操作量決定手段を備えることが好ましい。かかる形態とすることによって、出銑開始時における溶銑のりん濃度を目標りん濃度に精度良く的中させることができる。また、上記操作量が、底吹きガス流量および/または媒溶材投入量であることが好ましい。かかる形態とすることによって、溶銑中のりん濃度を適切に調整することができる。
本発明の第4の態様は、上記本発明の第3の態様にかかる溶銑脱りんシステムを備える低りん溶銑の製造装置である。
本発明によれば、転炉を用いた溶銑予備脱りん処理としての溶銑脱りんにおいて、出銑待ち期間中の溶銑中のりん濃度を高精度に推定する溶銑脱りん方法、該溶銑脱りん方法を実行可能な溶銑脱りんシステム、該溶銑脱りん方法を用いた低りん溶銑の製造方法、および該低りん溶銑の製造方法を実行可能な低りん溶銑の製造装置を提供することができる。
溶銑中のりん濃度の推定値の推移例を示す説明図である。 低りん溶銑の製造装置100の構成を概略的に示す図である。 炉内蓄積酸素量原単位演算手段5、りん濃度推定手段6および操作量決定手段7による演算の流れについて概略的に示すフローチャートである。
本発明の上記した作用および利得は、以下に説明する発明を実施するための形態から明らかにされる。以下、適宜図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下に示す形態は本発明の例示であり、本発明がこれらの形態に限定されるものではない。
本発明にかかる溶銑脱りん方法は、上底吹き転炉を用いて溶銑の浴面に酸素および脱りん剤を吹き付ける溶銑脱りん吹錬工程を含むものであり、該溶銑脱りん吹錬工程後に、少なくとも転炉からの排ガスの成分および流量を含む操業条件に基づいて、溶銑中のりん濃度を出銑開始時まで逐次推定する、りん濃度推定工程を含んでいる。
上記溶銑脱りん吹錬工程は、脱りんのために溶銑の浴面に酸素および脱りん剤を吹き付ける工程であり、従来の方法と同様にしておこなうことができる。りん濃度推定工程について以下に説明する。
溶銑脱りん吹錬工程(以下、単に「溶銑脱りん吹錬」または「吹錬」ということがある。)後から出銑までの出銑待ち期間中における溶銑中のりん濃度([P](%))の時間変化は、下記式(1)の1次反応式で表わすことができる。
Figure 0005790607
上記式(1)において、[P]iniは溶銑脱りん吹錬終了時の溶銑中のりん濃度(%)であり、kは脱りん速度定数(sec−1)である。
上記式(1)より、正確な脱りん速度定数kが得られれば、出銑待ち期間中における溶銑中のりん濃度を高精度に推定できることがわかる。但し、一般に脱りん速度定数は一定ではなく、様々な操業要因の影響を受けて変動すると考えられる。そこで、本発明者は、溶銑の構成成分や溶銑の温度のような吹錬開始前に得られる情報だけでなく、転炉からの排ガス成分や排ガス流量の実測値のような吹錬中ならびに出銑待ちの期間中に定周期で得られる情報を活用した、脱りん速度定数の推定精度向上方法に着目した。
上記式(1)より、溶銑脱りん吹錬を終了してからt秒後における溶銑中のりん濃度[P]は下記式(2)で表される。
ln[P]=ln[P]ini−k×t (2)
また、過去の操業実績データを使ってチャージ毎の脱りん速度定数kを求めると、あるチャージiの脱りん速度定数kは下記式(3)で表される。
Figure 0005790607
上記式(3)において、[P]tapは出銑時の溶銑中のりん濃度(%)であり、ttapは出銑待ち時間(秒)である。なお、下付き添え字のiは、あるチャージiにおける値であることを意味している。
ここで、上記式(3)に従って求めた脱りん速度定数kを目的変数、種々の操業条件(X)を説明変数とする回帰式(下記式(4))を予め作成しておき、実際の出銑待ち期間中にはそのときの操業条件を用いて式(4)から脱りん速度定数kを推定し、これを式(2)に適用してりん濃度を推定するという構成とすることにより、操業条件の変化に対応したりん濃度の推定が可能となる。
Figure 0005790607
上記式(4)において、αは回帰係数であり、Xは操業条件である。なお、操業条件としては、例えば下記表1に記載したものが挙げられる。
Figure 0005790607
そして、本発明者らによる調査の結果、排ガス成分、排ガス流量、上底吹きガス流量、副原料投入量および溶銑の構成成分から酸素収支を計算して得られる炉内蓄積酸素量原単位が、脱りん速度定数に及ぼす影響が大きいことを見出した。具体的には、炉内蓄積酸素量原単位が大きい場合には脱りん速度定数が大きくなる傾向が認められた。したがって、りん濃度推定工程は、排ガス成分、排ガス流量、上底吹きガス流量、副原料投入量および溶銑の構成成分から酸素収支を計算して得られる炉内蓄積酸素量原単位を用いて、溶銑中のりん濃度を出銑開始時まで逐次推定する工程であることが好ましい。なお、炉内蓄積酸素量原単位の算出方法は後述する。
下記式(※)に示す脱りん反応を促進させるためには、スラグ中のCaO濃度とスラグ中のFeO濃度を高める必要がある。炉内蓄積酸素量がほぼ(FeO)に対応することからすると、上記の傾向は妥当なものと考えられる。
3(CaO)+5(FeO)+2[P]=(3CaO・P)+5[Fe] (※) 上記式(※)において、( )はスラグ中の成分であることを意味し、[ ]は溶銑中の成分であることを意味している。
より具体的には、脱りん速度定数を推定する回帰式(上記式(4))の説明変数(X)に、炉内蓄積酸素量原単位を追加することにより、精度良く脱りん速度定数を推定できるようになる。
以上より、脱りん速度定数を精度良く推定可能となり、その結果、出銑待ち期間中における溶銑中のりん濃度の高精度な推定が可能となる。図1に、溶銑中のりん濃度の推定値の推移例を示した。図1の横軸は時間軸であり、上段の図は上吹酸素流量(Nm/h)の推移例を示しており、下段の図は溶銑中のりん濃度の推移例を示している。図1の下段の図において実線の曲線が上述した方法によるりん濃度の推定値であり、●がりん濃度の実測値である。図1に示したように、出銑待ち期間中における溶銑中のりん濃度の高精度な推定が可能となっている。
なお、吹止め時のりん濃度の測定値が無い場合には、溶銑中のりん濃度[P]を初期値とした上記式(1)〜(4)と同様な定式化ならびに脱りん速度定数推定用の回帰式を準備することによって得られる溶銑脱りん吹錬終了時のりん濃度の推定値を、上記式(1)中の[P]iniとして用いればよい。
ここで、溶銑の脱りん吹錬における炉内蓄積酸素量原単位の算出方法について説明する。炉内蓄積酸素量原単位は、例えば下記のようにして算出することができる。
転炉炉内から炉外に排出される酸素(出力酸素)は、溶鋼中の炭素と結びついてCOガス或いはCOガスの形態をとる。そして、この出力酸素の大部分を占めるCOの生成に要する酸素量と転炉炉内での二次燃焼(CO生成)に要する酸素量は、排ガス情報を利用して算出することができる。具体的には、窒素バランスにより炉内で発生したCOの流量V CO[Nm/h]およびCOの流量V CO2[Nm/h]を下記式(5)〜(10)から求め、このCO、COとして結びついた酸素量を計算すればよい。
まず、排ガス中COの流量VCO[Nm/h]、COの流量VCO2[Nm/h]、Oの流量VO2[Nm/h]およびNの流量VN2[Nm/h]は下記式(5)〜(8)により計算することができる。
Figure 0005790607
上記式(5)〜(8)において、hCOは排ガス中のCO濃度[%]、hCO2は排ガス中のCO濃度[%]、hO2は排ガス中のO濃度[%]、Qoffgasは排ガス流量[Nm/h]、i_delayは排ガス分析遅れ[−]である。
そして、上記式(5)〜(8)を用いて、炉内で発生したCOの流量V CO[Nm/h]およびCOの流量V CO2[Nm/h]を下記式(9)、(10)により求める。
Figure 0005790607
最終的に、炉内蓄積酸素量原単位(O)[Nm/ton]は、下記式(11)、(12)に示すように、炉内蓄積酸素量変化量(dO)を積分したものから、SiO生成に要する酸素量を差し引いた量(炉内蓄積酸素量)を、処理量(Wst)で割ったものとして定義することができる。ここで、上吹き酸素流量及び炉内へ投入された副原料に含まれる酸素流量の合計が「炉内への入力酸素」に相当する。また、炭素と結合し排ガスのCOやCOとして炉外へと排出される酸素流量が「炉外への出力酸素」に相当する。また、炉内蓄積酸素量は、ほぼスラグ中の酸化鉄(FeO、Fe)に含有される酸素量に相当する。
dO=炉内への入力酸素−炉外への出力酸素 (11)
={∫dOdt−(%SiO)消費酸素)}/Wst (12)
これまでに説明したように、本発明の溶銑脱りん方法によれば、出銑待ち期間中の溶銑中のりん濃度を高精度に推定できる。また、本発明の溶銑脱りん方法は、上述したりん濃度推定工程における溶銑中のりん濃度の推定結果と、溶銑の目標りん濃度と、に基づいて、出銑待ちの期間中における溶銑中のりん濃度を調整する、りん濃度調整工程をさらに含むことが好ましい。りん濃度調整工程において溶銑中のりん濃度を調整することにより、出銑開始時における溶銑中のりん濃度を目標りん濃度に精度良く的中させることができる。出銑開始時における溶銑中のりん濃度を目標りん濃度とするために必要な操作について以下に説明する。
現時点の溶銑脱りん吹錬終了時点からの経過時間をtとし、現時点の操業条件から得られた脱りん速度定数推定値をk’とすると、この時のりん濃度推定値[P]は下記式(13)から得られる。
[P]1=exp(ln[P]ini−k’1×t1) (13)
次に、予定出銑待ち時間がtであるとすると、現時点における出銑時のりん濃度の推定値([P])は下記式(14)から得られる。但し、現時点の脱りん速度定数k’が現時点から吹錬終了時まで変わらないと仮定している。
[P]2=exp(ln[P]ini−k’1×t2) (14)
[P]が目標りん濃度([P]aim)より小さければ脱りんのための操作は必要ないが、[P]が目標りん濃度([P]aim)より大きい場合には、脱りん促進のための操作が必要となる。このように、[P]が目標りん濃度より大きくなるのは、式(14)中のk’が正の値となり、復りんが発生している状況が挙げられる。図1には出銑待ちの期間中に復りんが発生している例を示しているが、本発明の溶銑脱りん方法で精度良くりん濃度を推定できている。
そして、一般的な出銑待ち期間中における脱りん促進の操作として、(I)底吹きガス吹込みによる撹拌、(II)媒溶材(生石灰)の投入が挙げられる。例えば、表2に示すような、[P]と[P]aimの差(ΔP=[P]−[P]aim)の大きさに応じた操作を行うことにより、図1に示すような復りんを回避することが可能となり、りん濃度を目標りん濃度以下へと高精度に制御できる。なお、表2には、底吹きガス流量および媒溶材(石灰石)投入量(溶銑1tonに対する媒溶材の投入量(kg))、または底吹きガス流量を調整する方法を例示している。
Figure 0005790607
以上に説明した本発明の溶銑脱りん方法により、転炉を用いた溶銑脱りんにおける出銑待ち期間中の溶銑中のりん濃度を高精度で推定し、この推定値に基づいて出銑待ち期間中における底吹きガス流量や媒溶材投入量を決定することにより、溶銑中のりん濃度を目標値に精度良く的中させることができる。また、これまでに説明した溶銑脱りん方法を用いる低りん溶銑の製造方法によれば、りん濃度が目標値に精度良く的中した低りん溶銑を製造することができる。
次に、上述したような溶銑脱りん方法および低りん溶銑の製造方法を実行可能な溶銑脱りんシステムおよび低りん溶銑の製造装置について以下に説明する。図2に、一つの実施形態に係る本発明の溶銑脱りんシステム10および転炉システム20を備えた低りん溶銑の製造装置100の構成を概略的に示す。
図2に示されるように、溶銑脱りんシステム10においては、溶銑・副原料データ1、パラメータ2、目標データ3および吹止め成分データ4が用いられる。溶銑・副原料データ1は、チャージ毎の溶銑重量、溶銑成分(C、Si、Mn、P等)、溶銑温度、溶銑率等の溶銑条件等のデータである。パラメータ2は、脱りん速度定数を推定する回帰式(上記式(4))のパラメータである。目標データ3は、チャージ毎の出銑開始時における目標りん濃度のデータである。吹止め成分データ4は、溶銑脱りん吹錬吹止め時における溶銑中のりん濃度のデータである。これら溶銑・副原料データ1、パラメータ2、目標データ3および吹止め成分データ4は、吹錬前或いは操業中に公知の方法により適宜決定、変更することができる。
炉内蓄積酸素量原単位演算手段5は、転炉システム20に備えられた排ガス成分分析計および排ガス流量計から得られた排ガスデータを用いて、上記式(5)〜(12)に基づいて炉内蓄積酸素量原単位を逐次算出する手段である。炉内蓄積酸素量原単位演算手段5は、上記式(5)〜(12)に基づいて炉内蓄積酸素量原単位を逐次算出可能なものであれば、公知の演算装置等を特に限定されることなく用いることができる。
りん濃度推定手段6は、炉内蓄積酸素量原単位演算手段5で算出した炉内蓄積酸素量原単位と、溶銑・副原料データ1と、吹止め成分データ4と、パラメータ2と、を用いて、溶銑脱りん吹錬後から出銑開始時まで溶銑中のりん濃度を逐次推定する手段である。りん濃度推定手段6は、上記のように溶銑中のりん濃度を逐次推定できるものであれば、公知の演算装置等を特に限定されることなく用いることができる。
操作量決定手段7は、りん濃度推定手段6で推定したりん濃度の推定値と目標データ3とに基づいて、溶銑の脱りんを促進させる必要があるか否かを決定し、溶銑の脱りんを促進させる必要がある場合はそれに必要な操作量を、例えば表2に従って決定する手段である。
炉内蓄積酸素量原単位演算手段5、りん濃度推定手段6および操作量決定手段7による演算の流れの一例について、図3に示すフローチャートを使って説明する。図3に示すように、炉内蓄積酸素量原単位演算手段5、りん濃度推定手段6および操作量決定手段7においては、溶銑データの収集(STEP1)、炉内蓄積酸素計算(STEP2)、りん濃度推定値計算(STEP3)、底吹きガス量・媒溶材投入量決定(STEP4)および出銑開始判断(STEP5)が行われる。
STEP1では、溶銑重量や副原料等のデータを溶銑・副原料データ1から収集する。STEP2では、排ガス流量測定値、排ガス成分分析値および溶銑・副原料データから式(1)〜(12)に基づいて炉内蓄積酸素量原単位を算出する。次に、STEP3では、STEP2の結果を使って式(1)〜(4)を用いて溶銑中のりん濃度の推定値を計算する。STEP4では、STEP3で求めたりん濃度の推定値が目標りん濃度より大きい場合には、例えば、表2に従って決定された脱りんを促進させる操作量を決定する。つぎに、STEP5で出銑が開始されているかどうかを確認し、出銑開始の場合には計算を終了する。出銑が開始されていなければ(出銑待ちの状態)であればSTEP2に戻って同じ処理を繰り返す。
以上の手順に従えば、転炉を用いた溶銑脱りんにおける出銑待ち期間中の溶銑中のりん濃度を高精度で推定し、この推定値に基づいて出銑待ち期間中における底吹きガス流量や媒溶材投入量を決定することにより、りん濃度を目標りん濃度に精度良く的中させることができる。
上記のようにしてりん濃度推定手段6および操作量決定手段7で演算された結果は入出力部8へ出力される。入出力部8は、当該演算結果の表示や、溶銑・副原料データ1、パラメータ2、目標データ3および吹止め成分データ4の修正入力などのインターフェイス機能を有するものであり、入出力部8としては公知の入出力手段を用いればよい。入出力部8に出力された結果に基づく転炉システム20に対する操作は、作業者が手動で行ってもよく、図示していない公知の制御手段によって自動で行われるように構成されていてもよい。
転炉システム20は、溶銑の浴面に酸素を吹き付けるとともに公知の脱りん剤を吹き付ける、上底吹き転炉を用いたシステムであり、転炉システム20としては公知の転炉システムを用いればよい。
本発明にかかる溶銑脱りんシステム10は、出銑待ち期間中の溶銑中のりん濃度を高精度で推定することができ、この推定値に基づいて出銑待ち期間中における底吹きガス流量や媒溶材投入量を決定することにより、溶銑中のりん濃度を目標値に精度良く的中させることができる。また、本発明にかかる低りん溶銑の製造装置100は、転炉システム20に上述したような溶銑脱りんシステム10を組み合わせることにより、りん濃度が目標値に精度良く的中した低りん溶銑を製造することができる。
1 溶銑・副原料データ
2 パラメータ
3 目標データ
4 吹止め成分データ
5 炉内蓄積酸素量原単位演算手段
6 りん濃度推定手段
7 操作量決定手段
8 入出力部
10 溶銑脱りんシステム
20 転炉システム
100 低りん溶銑の製造装置

Claims (10)

  1. 上底吹き転炉を用いて溶銑の浴面に酸素および脱りん剤を吹き付ける溶銑脱りん吹錬工程を含む、溶銑脱りん方法であって、
    前記溶銑脱りん吹錬工程後に、少なくとも排ガス成分および排ガス流量を含む操業条件に基づいて、前記溶銑中のりん濃度を出銑開始時まで逐次推定する、りん濃度推定工程を含む、溶銑脱りん方法。
  2. 前記りん濃度推定工程において、前記排ガス成分、前記排ガス流量、上底吹きガス流量、副原料投入量および前記溶銑の構成成分から酸素収支を計算して得られる炉内蓄積酸素量原単位を用いて、前記溶銑中のりん濃度を出銑開始時まで逐次推定する、請求項1に記載の溶銑脱りん方法。
  3. 前記りん濃度推定工程における前記溶銑中のりん濃度の推定結果と、前記溶銑の目標りん濃度と、に基づいて、出銑待ちの期間中における前記溶銑中のりん濃度を調整するための操作量を決定する、操作量決定工程をさらに含む、請求項1または2に記載の溶銑脱りん方法。
  4. 前記操作量が、底吹きガス流量および/または媒溶材投入量である、請求項3に記載の溶銑脱りん方法。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の溶銑脱りん方法を用いる、低りん溶銑の製造方法。
  6. 上底吹き転炉において溶銑の浴面に酸素および脱りん剤を吹き付ける溶銑脱りん吹錬工程を含む、溶銑脱りん方法に用いる、溶銑脱りんシステムであって、
    前記溶銑脱りん吹錬工程後に、少なくとも排ガス成分および排ガス流量を含む操業条件に基づいて、前記溶銑中のりん濃度を出銑開始時まで逐次推定するりん濃度推定手段を備える、溶銑脱りんシステム。
  7. 前記りん濃度推定手段が、前記排ガス成分、前記排ガス流量、上底吹きガス流量、副原料投入量および前記溶銑の構成成分から酸素収支を計算して得られる炉内蓄積酸素量原単位を用いて、前記溶銑中のりん濃度を出銑開始時まで逐次推定する、請求項6に記載の溶銑脱りんシステム。
  8. 前記りん濃度推定手段による前記溶銑中のりん濃度の推定結果と、前記溶銑の目標りん濃度と、に基づいて、出銑待ちの期間中における前記溶銑中のりん濃度を調整するための操作量を決定する、操作量決定手段を備える、請求項6または7に記載の溶銑脱りんシステム。
  9. 前記操作量が、底吹きガス流量および/または媒溶材投入量である、請求項8に記載の溶銑脱りんシステム。
  10. 請求項6〜9のいずれか1項に記載の溶銑脱りんシステムを備える、低りん溶銑の製造装置。
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