JP2016132809A - 溶銑の脱燐処理方法 - Google Patents

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明大 杉本
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Abstract

【課題】大型スクラップの使用が可能で、所内発生スクラップの有効活用が可能となる溶銑脱燐方法の提供。【解決手段】転炉に溶銑をスクラップと共に装入するに当り、スクラップを比表面積(表面積/質量)別に区分して管理し、溶銑の成分と温度、溶銑を脱燐処理した後の目標成分と目標温度、及び溶銑を脱燐処理時に用いる副原料の種類と使用量を考え、熱バランスに基づきスクラップが完全溶解する量であるスクラップ装入可能配合比率(SR'')を算出し前記SR''と、脱燐処理で装入する予定のスクラップの比表面積と、溶銑の脱燐処理予定時間(酸素供給時間)と、溶銑の温度とを考え、完全には溶解しないスクラップ量を含む装入スクラップ配合比率(SR)を算出し、転炉に装入するスクラップとして、SRに比表面積を考慮したスクラップを用いて、転炉で脱燐処理を行った後の転炉内に装入したスクラップの一部が溶け残る溶銑の脱燐処理方法。【選択図】図1

Description

本発明は、上底吹転炉で溶銑を脱燐処理する際に、通常の処理条件では完全には溶解しないサイズのスクラップ配合を可能にする溶銑の脱燐処理方法に関する。
鉄鋼製品の低燐化ニーズの高まり、およびその製造プロセスを高能率化する必要性に応じて、近年、転炉製鋼プロセスを溶銑予備脱燐処理と溶銑脱炭処理に分割して行う比率が増加している。さらにその溶銑予備脱燐処理自体も高能率化かつ低燐化が求められる一方で、環境負荷低減、リサイクル促進の観点から、スクラップの多配合、或いは所内発生スクラップの活用が求められている。
しかし、溶銑予備脱燐処理を行う一貫製鐵所においては、発生する所内スクラップは必ずしも脱燐処理中に完全溶解するサイズだけではなく、通常の処理条件では完全溶解しない大型スクラップ(スラブ,ブルーム等)も多量に発生している。しかも、転炉製鋼プロセスを溶銑予備脱燐処理と溶銑脱炭処理に分割すると、従来の脱燐から脱炭まで一体でその終了時には1600℃を超える転炉吹錬において可能であった大型スクラップの配合可能量は、必然的に減少してしまう。従来の転炉吹錬と比べて、溶銑予備脱りん処理では終了時の温度が1400℃未満と低温である上に、その処理時間が10分間程度と短いため、特に大型スクラップではその加熱及び溶解の速度がその処理時間内に溶解完了するためには不十分になるし、溶銑脱炭処理ではその終了時点で1600℃を超える高温にすることは同じでも、脱炭処理の対象とする溶銑中のC濃度やSi濃度が低くなっているので、処理中の発熱量が少なくなっているからである。そのため、所内スクラップの発生/使用バランスを確保する事は難しくなっている。
そこで、特許文献1では、転炉型精錬炉において、少なくとも幅または厚みのいずれか一方が100mm以上のスクラップを装入して溶銑の脱燐処理を行い、出湯後に溶け残ったスクラップが確認されたなら、その溶け残りスクラップをスラグと共に前記精錬炉に残したまま次回の脱燐処理を行う方法が公開されている。しかしこの文献には、処理後温度の一定化制御には言及されていない。処理後に溶け残りスクラップが発生したか否かによってスクラップの融解熱量が変わるため、仮に同じ質量のスクラップを使用しても処理後の溶銑温度が変わってしまう。また、溶け残り量が多いとその量を正確に知ることができないため、その処理結果をその後に行う処理に反映させて、処理後の温度制御に反映させることもできない。
溶銑脱燐処理は、脱燐反応を平衡論的に考えれば低温の方が溶銑の脱燐に有利であるが、その一方で脱燐反応を進めるためにはCaO源等の溶融滓化が必要であり、高温の方が滓化促進に有利である。したがって、溶銑脱燐処理中ないし処理後の温度制御精度を高めて滓化安定と脱燐促進を図ることが望まれているところ、スクラップ融解量を把握できないのではそのような要望に十分応えることができない。同様に特許文献2においても、厚みまたは幅が40mm以上で且つ単重が100kg以上の重量スクラップを含めて使用する、転炉における溶銑脱燐処理方法が開示されている。しかし、1チャージ目で重量スクラップを使用して溶け残りを許容し、その溶け残りを続く2チャージ目の処理で溶解するという、2チャージで1セットの操業を必要とし、かつ、処理後の温度制御は気にしないことと明記されている。したがって、脱燐処理用のスラグ生成が安定しないほか、処理後の溶銑P濃度も安定化が困難ということが懸念される。
また特許文献3では、脱燐処理後の脱燐率の安定化と温度の安定化とを目指す技術が記載され、具体的には完全溶解する量のスクラップを使用する発明が記載されている。しかし、スクラップは完全に溶解する物を使用する前提での技術であり、やはりスクラップの未溶解には対応していない。
特開平8−92618号公報 特許第5145736号公報 特許第5283309号公報
本発明の目的は、以上のような従来技術の課題を「脱燐」を確保する事を前提とした上で解決し、難溶解屑を脱燐処理へ適用可能とする溶銑の脱燐処理方法を提供することにある。
溶銑予備脱燐処理では、高炉から出銑された溶銑を1回の転炉吹錬で脱燐脱炭する転炉製鋼法と比べて吹錬終点が低温で脱燐反応平衡的には有利である。しかし、低温・短時間吹錬の脱燐処理において或る程度以上のサイズの大型屑を配合すると、溶け残りは不可避的に発生する。また、脱燐反応において低温が有利なところ、低温になるほどCaO源の滓化遅れやスクラップの溶解遅れなどの不利な影響もあるので、総合的に考えて低温の方が有利と一概に言えない。安定的に脱燐操業を行うためには、操業条件に応じて処理後温度を所定の値に制御できることが重要である。
しかし、溶け残りが不可避的に発生するような或る程度以上のサイズの大型スクラップを使用するなら、その溶け残り量が変動すると処理後温度が変動してしまう。また、完全溶解させる条件の確立、という従来範囲の開発は成立しない。
そこで、180度考え方を変え、未溶解が発生する前提での熱バランス確保方法の開発を検討した。ここで重要となるのは、溶け残り量を精度良く推定する事である。溶け残り量が多いと、想定よりも冷却量が不足し処理後温度が上昇してしまうので、脱燐能低下を引き起こしてしまう。このほか、軽量屑を使用する場合においても、吹錬時間、スクラップ配合比率、装入溶銑温度の違い等のパラメータにより、スクラップの溶け残りが発生する場合がある事が実機で確認されている。そこで、詳しく調査した結果、これらパラメータと溶け残りには一定の相関がみられる事が判明した。本発明はこの点に着想を得た。
操業条件の諸パラメータに基づいて完全に溶解するスクラップの溶解量を算出し、完全には溶解しない大型スクラップを含めて適切なスクラップ使用量を決定する事は、精度良く熱バランスを調整する事と互いに裏腹の関係にあり、大型スクラップの配合を可能にすると共に処理後温度の精度向上が期待される。さらに、処理後温度のコントロール精度が向上する事で脱燐能が安定するため、処理前提としての脱燐の確保も期待される。
なお、溶け残りを許容する結果、脱燐処理後にスクラップが溶け残るようになるが、その溶け残ったスクラップはスラグと共に一旦炉内から排出する。そのように炉外へ一旦排出しないと、次の脱燐処理において外乱要因となり、脱燐処理が安定しなくなるからである。そのように排出しても、後工程においてスクラップを磁選回収し再度脱燐処理にて使用することができるので、鉄分ロスの発生は回避できる。
本発明は以下の通りである。
(1)上吹ランスと底吹きノズルを備えた上底吹き型の転炉に、溶銑をスクラップと共に装入して、脱燐処理を行うに当たり、前記スクラップを個々のスクラップの比表面積(表面積/質量)別に区分して管理しておき、少なくとも前記溶銑の成分と温度、当該溶銑を脱燐処理した後の目標成分と目標温度、及び当該溶銑を脱燐処理する際に用いる副原料の種類と使用量を考慮して、熱バランスに基づき前記スクラップが完全溶解する量であるスクラップ装入可能配合比率(SR’’)を算出し、少なくとも当該スクラップ装入可能配合比率(SR’’)と、当該脱燐処理で装入する予定のスクラップの比表面積と、当該溶銑の脱燐処理予定時間(酸素供給時間)と、当該溶銑の温度とを考慮して、完全には溶解しないスクラップ量を含む装入スクラップ配合比率(SR)を算出し、前記溶銑と共に装入するスクラップとして、前記算出して得られた装入スクラップ配合比率(SR)に前記比表面積を考慮したスクラップをその比表面積を変えずに充当して用いて、前記転炉で脱燐処理を行った後の当該転炉内に前記装入したスクラップの一部が溶け残っていることを特徴とする溶銑の脱燐処理方法。
(2)前記熱バランスに基づき算出したスクラップ装入可能配合比率(SR’’)と前記完全には溶解しないスクラップ量を含む装入スクラップ配合比率(SR)との比(SR’’/SR)が0.85未満の場合に、当該脱燐処理で装入する予定のスクラップの比表面積と、当該溶銑の脱燐処理予定時間(酸素供給時間)のいずれか一方または両方を調整して、その比を0.85以上になるよう調整することを特徴とする上記(1)に記載の溶銑の脱燐処理方法。
本発明によれば、従来は脱燐処理では配合できなかった大型スクラップの使用が可能となり、所内発生スクラップの有効活用が可能となる。
図1は、αと吹錬時間との関係において、スクラップ比表面積を38.6(□印),32.2(△印),24.9(○印)と低下させた場合の、αへの影響を示す図である。 図2は、αと吹錬時間との関係において、スクラップ比表面積を24.9(m−1)と一定にした場合の、スクラップ配合率が補正係数αに及ぼす影響を示す図である。 図3は、αと吹錬時間との関係において、溶銑量が補正係数αに及ぼす影響を示す図である。 図4は、αと吹錬時間との関係において、スクラップ比表面積を24.9(m−1)と一定にした場合の、装入温度が1300〜1349℃の低温グループと1350〜1399℃の高温グループとが補正係数αに及ぼす影響を示す図である。 図5は、目標(脱りん)処理後温度と実績(脱燐処理後)温度を示す図である。
本発明を実施するための形態を説明する。
上吹ランスと底吹きノズルを備えた上底吹き型の転炉に、大型スクラップを含むスクラップと共に質量濃度でC:4.3−4.6%、Si:0.30−0.80%およびP:0.080−0.120%を有する溶銑を装入して、上吹ランスから酸素または酸素と粉状生石灰とを吹付け、底吹きノズルから窒素や炭酸ガス等を吹き込んで脱燐処理を行う。
(1)スクラップの管理
本発明は上底吹き型の転炉を用いて溶銑脱燐処理を行うに際し、通常の処理条件では処理後に溶け残りが発生してしまう大型スクラップを多量に用いる。そのためのスクラップ形状の管理を、スクラップの比表面積を指標として行う。溶銑脱燐処理中の溶銑温度は、ほぼ常にスクラップの溶解温度である1500℃よりも低いため、溶銑中に浸かったスクラップは単なる加熱効果によって溶解するのではない。溶銑からの熱を受けて1250〜1400℃に加熱されるとともに、溶銑中のCと接触して界面部の融点が下がることによって、速やかに溶銑中への溶解が進行するのである。したがって、スクラップと溶銑との界面部の面積が広い方が、溶解の進行が速くなる。
このような溶銑との界面部の面積は、転炉に装入する前のスクラップの表面積に置き換えられる。スクラップ1個あたりの質量は容易に計測できるし、そのスクラップ形状を計測してその表面積を算出することも容易である。そこで、この両者の比である比表面積(表面積/質量)を個々のスクラップについて予め求めておき、スクラップ使用時にそのスクラップの個々の比表面積と、その質量とを操業パラメータとして用いて、溶解しないスクラップの量を含めた装入スクラップの量(SR)を計算することが考えられる。
但し、溶銑脱燐処理に用いるスクラップの質量は、使用する主原料(溶銑+スクラップ)の質量の0〜10%程度であり、スクラップを使用する場合には、1回の溶銑脱燐処理あたりのスクラップ使用量は数t〜30tと大量である。しかも、スクラップの形状は、スラブやブルーム等の切断くずのほか、薄鋼板、厚鋼板、型鋼、鋼管、棒線材等と、スクラップの由来によって実に様々である。それらの比表面積を一々計測していては、大変な手間が掛かってしまうおそれがある。
そこで、スクラップの由来別に、4〜8グループに分けて管理しておくことが考えられる。スクラップの由来は、製鐵所内では発生場所別に明らかであるため、その発生場所別にスクラップ保管場所を分けて管理しておくことで、各グループの平均値として管理することが可能となる。例えば、A.スラブやブルーム等の大型切断屑、B.熱間圧延後の厚鋼片切断屑、C.熱間圧延後の薄鋼片切断屑、D.冷間圧延後の軽量薄板屑、E.軽量線材屑、等とスクラップの発生場所別に管理しておき、その平均的な比表面積を把握しておく。
(2)熱バランス計算用の諸データの用意
脱燐処理における熱計算用の諸データとして、各物質のエンタルピーや同種の処理条件における実績データ等に基づいて、少なくとも次のi)〜iii)の諸データを用意しておく。
i)使用副原料の冷却能
冷却能とは、同一質量の副原料が有する溶銑温度低下効果を、完全溶解するスクラップが有する溶銑温度低下効果と対比して表す数値である。各種の副原料10kg/tが有する冷却効果を、同一質量のスクラップ(スクラップ配合比率で1%)が完全溶解する場合の冷却効果を基準値(=1)として、指数化したものである。
スクラップ配合比率とは、溶銑質量とスクラップ質量の合計に対するスクラップ質量の比率(%)のことであって、本発明の説明においてはスクラップ量の多寡をスクラップ配合比率の高低で表す。
:各副原料の冷却能(スクラップ配合比率%/副原料使用量10kg/t)(iは、任意の副原料であることを表す添数である。)
ii)スクラップが完全溶解する条件での、各成分の酸化発熱量とスクラップ溶解量との関係把握
これらの関係把握には、熱力学の基礎データを用いるのでなく、実績に基づく統計的数値を用いる。したがって、溶銑予備脱燐吹錬という比較的限られた条件範囲内では、溶銑C含有量の変化に伴う2次燃焼発熱の影響が主としてaに、FeO生成による発熱量の影響が主としてbに含まれている。
a:配合比1%のスクラップがすべて溶解した場合に相当する溶銑C変化量(溶銑中濃度%/スクラップ配合比率%)
b:配合比1%のスクラップがすべて溶解した場合に相当する溶銑Si変化量(溶銑中濃度%/スクラップ配合比率%)
c:配合比1%のスクラップがすべて溶解した場合に相当する溶銑温度変化量(℃/スクラップ配合比率%)
iii)処理対象とする溶銑の条件把握とその処理後の条件設定
少なくとも処理前と処理後の溶銑中C,Si,温度とその変化に伴うスクラップ溶解量の変化量を、同一転炉での溶銑脱燐処理の操業実績に基づいて把握しておく。
C:装入溶銑C濃度(%)
Si:装入溶銑Si濃度(%)
T:装入溶銑温度(℃)
C’:脱燐処理後C濃度(%)
Si’:脱燐処理後Si濃度(%)
T’:脱燐処理後溶銑温度(℃)
C’、Si’、およびT’はいずれも、調査時は実績値であり、本発明実施時は目標値である。これらの処理対象とする溶銑の条件とその処理後の条件とから、処理対象チャージで溶解する最多スクラップ配合比率(SR’)は、次の(1)式で算出される。この(1)式の計算では、スクラップが全量溶解することを前提とするものであるし、脱燐処理に必要な副原料使用量の必要熱量も考慮されていない。
SR’=(C−C’)/a+(Si−Si’)/b+(T−T’)/c・・・(1)式
(3)脱燐処理条件(溶銑を脱燐処理する際に用いる副原料の種類と使用量)の決定
処理対象溶銑の条件と処理後目標条件とから脱燐目標値達成に必要な副原料の原単位を別途求め、その原単位が必要とする含熱量をスクラップ溶解に必要な熱量に置き換える。
同一転炉での溶銑脱燐処理の操業実績に基づき、処理前の溶銑条件(C,Si,P濃度、温度)を処理後の目標溶銑条件(C,Si,P濃度、温度)にするために必要な副原料の種類(CaO,FeO等)と必要量とを、一般的な脱燐制御式等の形式で把握しておく。
脱燐目標値達成に必要な副原料の原単位は、例えば特許第5211786号公報に記載されている算出方法を用いれば良い。
:脱燐吹錬時に炉内投入する副原料(CaO、FeO,Fe)原単位(kg/t)
(4)副原料の種類と使用量を考慮した、完全に溶けきる前提での最多スクラップ量(スクラップ装入可能配合比率:SR’’)の算出
完全に溶けきる前提での副原料使用量を考慮した最多スクラップ量(スクラップ装入可能配合比率:SR’’)は、(2)式に示すように、前記したSR’から脱燐目標達成のために必須の副原料が必要とする熱量を差し引いた値となる。
SR’’=SR’−ΣX・Y =(C−C’)/a+(Si−Si’)/b+ (T−T’)/c−ΣX・Y ・・・・・・・・(2)式
このSR’’は、溶銑脱燐処理においてスクラップの多量使用を行おうとする本発明においては、実際に吹錬を始めるためにスクラップを準備する際の仮予定量(d)となる。
このSR’’(=d)は、完全溶解ベースなので、区分して用意している最軽量スクラップの使用が前提である。
本発明の特徴は、このSR’’(=d)に対して、後述するように軽量スクラップを重量スクラップに置き換えて使用する際の補正係数αを予め承知しておき、その補正係数αを考慮して重量スクラップ配合比率を操作することである。
(5)完全には溶けきらない重量スクラップを使用する場合の、スクラップ使用量の最大値(装入スクラップ配合比率:SR)の算出
(5−1)算出の考え方
実際に使用する、重量スクラップを含む最多スクラップ量(装入スクラップ配合比率:SR)は、次のようにして算出する。
上記した(1)式(2)式では、スクラップは全量溶解が前提であったが、本発明では全量溶解しないことが前提である。したがって、実際に使用する装入スクラップ配合比率(SR)に対して溶解補正係数‘α’を乗じた値が、溶解するスクラップ配合比率と考える。
そうすると、(1)式は、(2)式を用いて(3)式で表される。
SR’=(C−C’)/a+(Si−Si’)/b+ (T−T’)/c
=SR’’+ΣX・Y
=α×SR+ΣX・Y ・・・・・・・・(3)式
つまり、(3)式は、
副原料の所要熱量控除後の、完全溶解前提でのスクラップ最多溶解量(SR’’)+副原料の所要熱量
=補正係数α×完全溶解しない前提のスクラップ溶解量(SR) + 副原料の所要熱量
ということになる。
但し、スクラップを熱的に溶解可能な最多量で用いることが、常に要請されている訳ではない。スクラップ量を減少するなら、その減少に伴う所用熱量の減少分を副原料(FeO等)の増量分で補填して熱バランスを調整することができる。その調整方法は、(2)式(3)式において、使用する副原料を増やすだけであって、他には調整を要しないので極めて容易なものである。
(5−2)基準値の決定
上記した「(2)熱バランス計算用の諸データ」と「(3)脱燐処理条件」に基づき、転炉に装入するスクラップ配合比を算出し、その配合比になるようにスクラップを用意する。
本発明は、熱力学的データを実績に基づく統計的数値に組み合わせて、実際の脱燐処理における処理後のスクラップ溶け残り量を予測する技術である。統計的数値を用いて実際の脱燐処理後に関し予測するためには、基準となる条件を定めて、その基準条件と予定する操業条件との差異の影響を統計的に見積もる手法が有用である。
そうすると、通常の条件では完全には溶解しきらない大型スクラップの溶解量には、軽量スクラップの最多溶解量(スクラップ装入可能配合比率:SR’’)の増減に影響する溶銑の条件(成分、温度)や脱燐処理後の条件(成分、温度)とは別に、スクラップ形状(比表面積)、吹錬時間(脱燐処理予定時間)、スクラップ使用量、溶銑温度が影響すると考えられる。そこで、それらに関する基準値を定めた上で基準値からのズレに関する補正係数αを定めることにする。
すなわち、前記した補正係数αは、例えば次の(4)式によって求めることにする。
α = 1− ( h + k + l + m )・・・・・(4)式
h:スクラップ使用量の影響係数
k:吹錬時間(脱燐処理予定時間)の影響係数
l:比表面積の影響係数
m:溶銑温度の影響係数
これらのスクラップ形状(比表面積)、吹錬時間(脱燐処理予定時間)、スクラップ使用量、溶銑温度の基準値を定める際には、溶銑の条件(成分、温度)と脱燐処理後の条件(成分、温度)とがその基準値に影響を及ぼしているため、それらの基準値を定めるための調査ではその調査対象としたチャージでの平均値を用いて、統一的に検討する。
スクラップ形状(比表面積)、吹錬時間、スクラップ使用量、処理後の溶銑温度は、所定の基準条件においては互いに独立に操作し得る条件であるが、相互に影響しあう。したがって、所定の基準スクラップ(軽量スクラップ)が所定のスクラップ使用量で完全に溶解する時間を基準に採って、その基準値からの各条件のズレを補正する。
なお、本発明の特徴は「通常の処理条件では完全には溶解しないサイズのスクラップの配合を可能にすべく、スクラップ形状(比表面積)、吹錬時間(脱燐処理予定時間)、スクラップ使用量、処理後の溶銑温度という各指標、中でもスクラップ形状の影響を比表面積という指標を含む数式を用いて評価し、その評価結果をスクラップ使用量の調整に反映させること」にあるのであって、「(4)式の線形一次式を用いて評価すること」には限定されない。これは、溶銑の条件(成分、温度)と脱燐処理後の条件(成分、温度)が補正係数αを定める際の基準値に影響を及ぼす場合があることから、これらの条件を考慮した上で調査対象としたチャージ毎に最適な補正係数を決定する必要があるためである。したがって、溶銑によっては補正係数αが二次式、三次式など、種々の式で表される場合がある。例えば(4)式により補正係数αを定めるためには、以下のi)〜iv)を決める必要がある。
i)基準とする溶銑の条件(成分、温度)と、脱燐処理後の条件(成分、温度)
調査対象とした各条件の平均値とする。
以下に、調査した溶銑の成分範囲と温度範囲、並びにそれらの平均値(=基準値)を示す。例えば、あるチャージでの基準値は、溶銑60t〜100t(組成:[C]4.4〜4.6質量%、[Si]0.33〜0.80質量%、[P]0.080〜0.120質量%、溶銑温度1318〜1392℃)から、基準[C]=4.5%、基準[Si]=0.45%、基準[P]=0.095%、基準温度=1375℃であるものとする。
また、以下に、調査した溶銑の脱燐処理後の成分範囲と温度範囲、並びにそれらの平均値(=目標値)を併せて示す。例えば、あるチャージでの目標値は、処理後の[C]3.3〜3.7質量%(目標3.6%)、[Si]≦0.02質量%(目標0.01%)、[P]≦0.020%(目標0.015%)、溶銑温度1280〜1340℃(目標1320℃)であったものとする。
ii)基準とする軽量スクラップの形状(比表面積)
基準とする軽量スクラップは、その比表面積(S/V)が38.6(m−1)のものとする。この比表面積(S/V)は、通常用いるスクラップのうちで最も大きな数値を有するものである。
iii)基準とするスクラップ使用量(配合比率)
基準条件は、基準とする軽量スクラップのみを使用する処理において、通常の熱バランスにおいて完全溶解する最多のスクラップ量(スクラップ装入可能配合比率:SR’’)を使用する条件とする。即ち、後述するように10%とした。
iv)基準とする吹錬時間(脱燐処理予定時間)
基準とする軽量スクラップのみを用いる処理での、基準とする最多スクラップ量(スクラップ装入可能配合比率:SR’’)が完全溶解する最短の吹錬時間とする。この際の最短吹錬時間は、上記の基準スクラップのみを用いた処理において、熱的に最多のスクラップを溶解する条件での溶解熱量不足以外の要因で溶け残りが発生し始める最短の吹錬時間である。
基準とした軽量スクラップのみを用いても、吹錬時間が短くなると溶け残りが発生するようになる。例えば、数分間での脱燐処理が可能であったとしても、そのような短時間では通常の軽量スクラップは完全には溶解できないからである。
上記したi)の条件において、上記ii)、iii)、iv)について調査した結果を図1に纏めて示す。
図1に示したように、本発明に係る基準条件として、ii)軽量スクラップの比表面積(S/V)が38.6(m−1)のものを選定した。また、そのスクラップの配合比率の基準値iii)を、10%に選定した。
この選定条件において、図1に□印で示したαと吹錬時間との関係からα=1.0になる最短吹錬時間は、10.4分間であることが分かる。
したがって、本発明に係る基準条件を次のように定める。
比表面積の影響:基準値 ii) : 38.6(1/m)
スクラップ使用量の影響:基準値 iii) : 10(%)
吹錬時間の影響:基準値 iv) :10.4 (分)
(5−3)補正係数αの決定
(5−3−1)比表面積が変わることの影響
図1に示したαと吹錬時間との関係において、比表面積を38.6(□印),32.2(△印),24.9(○印)と低下させた場合の、αへの影響を並べて示す。
図1に示したように、吹錬時間=10.4分の条件において、S/V=38.6のときα=1.0であり、S/V=24.9のときα=0.928であるから、S/V変化に伴うαの変化は(1−0.928)/(38.6−24.9)=0.0053と見積もられる。
(5−3−2)スクラップ使用量(配合比)が変わることの影響
図2に、αと吹錬時間との関係において、比表面積を24.9(m−1)と一定にした場合の、スクラップ配合率が補正係数αに及ぼす影響を示す。
調査した吹錬時間6.2〜10.4分の範囲で、スクラップ配合比がαに及ぼす影響は(0.044)/(6−10)=−0.011と見積もられる。
これは、スクラップ配合比率が高い程、溶銑装入直後の炉内での溶銑温度は低下し、スクラップ表面で凝固する溶銑量が増加するためと考えられる。
なお、ヒートサイズによるスクラップ溶解度を評価した結果を図3に示す。図3中、Case1〜5は各々表1に示す溶銑量(t)である。なお、図3ではスクラップ比表面積を24.9(m−1)で一定値のものと用いた。
この結果から明らかなように、同一スクラップ配合比率であれば、ヒートサイズによるスクラップ溶解度の変化は認められない。すなわち、ヒートサイズの違いに応じて上底吹転炉の蓄熱度に多少の差異はあるものの、スクラップ溶解度を決定する支配因子では無いことが確認できる。
(5−3−3)吹錬時間が変わることの影響
図1に示した、αと吹錬時間との関係において、例えば比表面積が38.6(m−1)の場合に、吹錬時間を7.0分間から10.4分間に延ばすとαが0.895から1.0に上昇していた。この場合の吹錬時間がαに及ぼす影響は(1.0−0.895)/(10.4−7.0)=0.0031と見積もられる。
(5−3−4)使用する溶銑の温度の影響
図4に示した、αと装入溶銑温度との関係において、装入温度が1300〜1349℃の低温グループと1350〜1399℃の高温グループとで、高温グループの方がαが0.063だけ大きいことが分かった。両グループの間に平均して50℃の差があるため、溶銑温度がαに及ぼす影響は0.0013と見積もられる。
溶銑温度が低い場合は装入した溶銑がスクラップで冷却されることで凝固し、実際に配合したスクラップよりも比表面積が小さくなることで溶解度が低下するものと考えられるため、高温の方がスクラップの溶解速度が速いと考えられる。
上記の調査結果を書き換えると、
α = 1− ( h + k + l + m )・・・・・(4)式
において、各影響係数h、k、l、mは、それらの基準条件ではそれぞれの値が0になるように設定してある。これらの影響係数は各々以下の式で表される。
スクラップ配合比率の影響係数 h=(10−d)×(−0.011)
・・・・・(4.1)式
吹錬時間の影響係数 k=(10.4−e)× 0.0031
・・・・・(4.2)式
比表面積の影響係数 l=(38.6−f)× 0.0053
・・・・・(4.3)式
溶銑温度の影響係数 m=(1375−g)× 0.0013
・・・・(4.4)式
上記各式中、dは対象チャージの屑配合比(%)、eは対象チャージの吹錬予定時間(分)、fは対象チャージの使用屑比表面積(m−1)、gは対象チャージで装入する溶銑の温度(℃)である。
なお一般的に冷却能Yは、生石灰=0.6(スクラップ率%/(10kg/t))、石灰石=2.5(スクラップ率%/(10kg/t)))、鉄鉱石=3.0(スクラップ率%/(10kg/t))、ミルスケール=2.0(スクラップ率%/(10kg/t))等であるが、操業実績に基づき適切な値を使用すれば良い。また同様にa(溶銑C変化量)=0.25(溶銑中%/スクラップ率%)、b(溶銑Si変化量)=0.1(溶銑中%/スクラップ率%)、c(溶銑温度変化量)=30(溶銑温度℃/スクラップ率%)であるが、これらも操業実績に基づき適切な値を使用すれば良い。
(5−4)完全溶解しないスクラップ量を含む装入スクラップ配合比率(SR)の算出
SRは前記(3)式を用いて求めることができる。
SR’=(C−C’)/a+(Si−Si’)/b+ (T−T’)/c=SR’’+ΣX・Y= α×SR+ΣX・Y・・・・(3)式
完全溶解する前提での最多スクラップ配合比率(SR’)
=補正係数α×完全溶解しないスクラップ量を含む装入スクラップ量(SR) + 副原料のスクラップ溶解換算量
したがって、SRは(5)式で算出される。
SR=(1/α)×(SR’−ΣX・Y)=(1/α)×{((C−C’)/a+(Si−Si’)/b+ (T−T’)/c)−ΣX・Y} ・・(5)
この結果、使用予定の溶銑条件(成分、温度)と脱燐処理後の溶銑条件(成分、温度)、並びにそれらの条件から決定される脱燐に必要な副原料の種類(CaO,FeO等)とそれらの量から、先ず完全溶解ベースでのスクラップ使用配合比率(SR’’)が、SR’’={((C−C’)/a+(Si−Si’)/b+ (T−T’)/c)−ΣX・Y}のように算出される。
この算出されたSR’’を、その予定する吹錬で使用するスクラップ配合比率(d)と仮決めする。
この予定スクラップ量のほか、予定吹錬時間、予定比表面積を適宜定めて補正係数を算出し、さらに使用予定溶銑の温度が高温グループか低温グループかによって補正係数を修正して、スクラップ性状の選択と各選択スクラップの使用量(所定の比表面積となるよう配合)とが求められる。本発明では、溶銑と共に装入するスクラップとして、前述のように算出して得られた装入スクラップ配合比率(SR)に、SRを算出する際に用いた比表面積と同じ比表面積になるように配合したスクラップを充当して用いる必要がある。
(6)転炉内に装入したスクラップの一部が溶け残っていること
ここで、仮決めしたスクラップ配合比率(d)に対して、大型スクラップを多配合すると補正係数αが小さくなる結果、大型スクラップを含めたスクラップ使用量の全量である装入スクラップ配合比率(SR)が大きな値になる。
αが小さくなるということは、溶け残り量が増えるということだが、そのように溶け残りが発生することを覚悟して大型スクラップを用いることが本発明の目的である。このように溶け残りが発生しても、目標とする溶銑脱燐条件(処理後温度や成分)を一定に管理する計算式に基づいているので、脱燐は安定している。
この算出したαは、(1−α)がスクラップの溶け残り比率を意味するため、溶け残りスクラップが系外に持ち去る顕熱量が問題になり得る。したがって、αが0.85未満であることは好ましくない。αが0.85未満になった場合には、例えば(4)式中のhはスクラップ配合量の影響なのでこの時点での変更は好ましくなく、残る k か l かのいずれかを操作して、αを0.85以上にすることが好ましい。
この脱燐処理では、スクラップ配合比率(SR)の内、スクラップ比表面積が補正係数αを構成する補正係数 l を介して調整されている。また、脱燐処理後の溶銑条件(成分、温度)は、それぞれ目標値管理されているため、いずれも重量スクラップの使用量や溶け残り量の影響を受けない。したがって、重量スクラップを適切に管理しつつ使用して、かつ、所期の脱燐処理を安定して行うことが可能である。
溶銑60t〜100t(組成:[C]4.4〜4.6質量%、[Si]0.33〜0.80質量%、[P]0.080〜0.120質量%、溶銑温度1318〜1392℃)をスクラップと共に上底吹転炉へ装入し、処理後の組成を[C]3.3〜3.7質量%、[Si]≦0.02質量%、[P]≦0.020質量%、溶銑温度1320℃とすべく、上吹酸素流量:1.50〜3.0Nm/min/tにて脱燐処理を行った。
この処理を行うに先立ち、スクラップを表2に示すように発生場所別に区分けしておき、各区分けされたスクラップの比表面積を予め算出しておいた。
処理開始に先立ち、脱燐処理における熱計算用の諸データとして、各物質のエンタルピーや同種の処理条件における実績データ等に基づいて、i)使用副原料による冷却能(スクラップ質量換算)と、ii)スクラップが完全溶融する条件での、各成分の酸化発熱量とを把握しておいた。
各処理を始めるに際しては、先ず、各処理対象の溶銑とその処理における目標値、並びにその処理で必要な副原料の種類と量を前記した特許第5211786号公報に記載された算出方法により算出した結果に基づいて、完全に溶けきる前提での最多スクラップ量(スクラップ装入可能配合比率:SR’’)を、前述の(2)式により算出した。
SR’’= (C−C’)/a+(Si−Si’)/b+ (T−T’)/c・−ΣX・Y ・・・・・・・・(2)式
続いて、表2のように用意しておいたスクラップを適宜配合することにし、上記SR’’をスクラップ仮装入量とし、処理時間(吹錬時間)を適宜定めて、完全溶解しない前提のスクラップ溶解量(装入スクラップ配合比率:SR)を算出するための補正係数αを、(4)式により算出した。
α = 1− ( h + k + l + m )・・・・・(4)式
このとき、αを算出するためのスクラップ配合比の影響係数、吹錬時間の影響係数、比表面積の影響係数、溶銑装入温度の影響係数の算出には、それぞれ(4.1)〜(4.4)式を用いた。
スクラップ配合比率の影響係数 h=(10−d)×(−0.011)
・・・・・(4.1)式
吹錬時間の影響係数 k=(10.4−e)× 0.0031
・・・・・(4.2)式
比表面積の影響係数 l=(38.6−f)× 0.0053
・・・・・(4.3)式
溶銑温度の影響係数 m=(1375−g)× 0.0013
・・・・・(4.4)式
一例として、SR’’=6%、予定吹錬時間=8.7分間、予定するスクラップの比表面積を表2に記載した銘柄A,B,Cを均等に用いることにした31.9、装入溶銑温度=1335℃の場合の処理について説明する。
スクラップ配合比の影響係数 h は、(4.1)式により、−0.044であり、吹錬時間の影響係数 k は、(4.2)式により、0.0053であり、比表面積の影響係数 l は、(4.3)式により、0.0355、溶銑温度の影響係数 m は、(4.4)式により、0.052であった。
この場合、補正係数αは、(4)式により、0.951となる。
この結果、完全溶解しない前提のスクラップ溶解量(SR)は、6%/0.951=6.31%と分かったので、表2に記載した銘柄A,B,Cを均等に配合した6.31%のスクラップを予定した溶銑と共に転炉に装入した。この処理後には、0.3%相当である0.3tの溶け残りスクラップがあったが、そのスクラップは少量なので処理後のスラグと共に転炉外に排出し、スラグ処理場で回収してその後の転炉吹錬の原料としてリサイクルした。
但し、比表面積が24.9のスクラップを多用した例として、例えばSR’’=6%、予定吹錬時間=8.7分間、予定するスクラップの比表面積を表2に記載した銘柄A,Cを均等に用いることにした31.75、装入溶銑温度=1335℃の例では、比表面積の影響係数 l が、(4.3)式により、0.0363に変わるだけである。そこで、そのようにスクラップを装入して、完全溶解しない前提のスクラップ溶解量(SR)は6.31%と殆ど変らずに重量スクラップAの使用量を増加させることができた。
一方、予定するスクラップの比表面積を表2に記載した銘柄Aのみにすると24.9となり、比表面積の影響係数 l が、(4.3)式により、0.0726に変わるため、完全溶解しない前提のスクラップ溶解量(SR)は6.56%と、装入したスクラップ6%のうち0.56%分が溶け残ることになる。
但し、この場合にも、処理後の溶銑成分、温度は目標値通りであるから、安定した脱燐を行いつつ重量スクラップを多量に使うという目的は達成することができた。
以上の条件をすべて考慮して、目標処理後温度と実績値である脱燐処理後温度との関係を調査した結果を図5に示す。溶銑、スクラップ配合比率、スクラップ比表面積は表1に示す条件の範囲とした。図5では、熱バランス的に可能な最多スクラップ量を用いない場合には代わりに副原料の使用量を増やしてΣX・Yを計算することで目標処理温度を求めた。その結果、脱燐処理後の温度(実績値)はおよそ目標処理後温度の±10℃の範囲内にコントロールすることが可能となり、脱燐能の低下を抑制することが可能となった。

Claims (2)

  1. 上吹ランスと底吹きノズルを備えた上底吹き型の転炉に、溶銑をスクラップと共に装入して、脱燐処理を行うに当たり、
    前記スクラップを個々のスクラップの比表面積(表面積/質量)別に区分して管理しておき、
    少なくとも前記溶銑の成分と温度、当該溶銑を脱燐処理した後の目標成分と目標温度、及び当該溶銑を脱燐処理する際に用いる副原料の種類と使用量を考慮して、熱バランスに基づき前記スクラップが完全溶解する量であるスクラップ装入可能配合比率(SR’’)を算出し、
    少なくとも当該スクラップ装入可能配合比率(SR’’)と、当該脱燐処理で装入する予定のスクラップの比表面積と、当該溶銑の脱燐処理予定時間(酸素供給時間)と、当該溶銑の温度とを考慮して、完全には溶解しないスクラップ量を含む装入スクラップ配合比率(SR)を算出し、
    前記溶銑と共に装入するスクラップとして、前記算出して得られた装入スクラップ配合比率(SR)に前記比表面積を考慮したスクラップをその比表面積を変えずに充当して用いて、
    前記転炉で脱燐処理を行った後の当該転炉内に前記装入したスクラップの一部が溶け残っていること
    を特徴とする溶銑の脱燐処理方法。
  2. 前記熱バランスに基づき算出したスクラップ装入可能配合比率(SR’’)と前記完全には溶解しないスクラップ量を含む装入スクラップ配合比率(SR)との比(SR’’/SR)が0.85未満の場合に、当該脱燐処理で装入する予定のスクラップの比表面積と、当該溶銑の脱燐処理予定時間(酸素供給時間)のいずれか一方または両方を調整して、その比を0.85以上になるよう調整すること
    を特徴とする請求項1に記載の溶銑の脱燐処理方法。
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