JP3902446B2 - 転炉吹錬方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、転炉における吹錬に際し、転炉内スラグ中の鉄系酸化物量を制御する転炉吹錬方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
転炉にて高炉で製造された溶銑に、上吹ランスまたは炉底に設置された羽口を介して多量の酸素を高速で供給するのは、溶銑中に3.8〜4.8質量%程度含まれているC量を、鋼種に応じて0.03〜0.8質量%程度にまで低減することを最大の目的とする他、溶銑中の不純物(C、Si、P)を酸化除去し、かつこれらの不純物の酸化熱を利用して所定の温度にまで溶鋼の温度を上昇させて、鋳造するのに必要な温度を確保することを目的とする。
【0003】
この様に多量の酸素を供給して不純物を酸化除去するため、一般に吹錬終了時の転炉内スラグ(以下、単に「スラグ」ということがある)は酸化度が高くなっている。スラグの酸化度を表す指標として、一般に該スラグ中のFeO、Fe2O3およびFe3O4に占めるFe量を示す(T.Fe)[単位:質量%]が用いられており、通常、吹錬終了時の(T.Fe)は15〜25質量%程度である。
【0004】
尚、転炉スラグ中の鉄系酸化物は、一般に前記FeO、Fe2O3およびFe3O4のうちFeOが主体であることから、以下では(T.Fe)について転炉スラグ中のFeOを中心に話を進めることとする。
【0005】
ところで吹錬では、生石灰や軽焼ドロマイトなどの副原料を溶銑に加え、溶銑中のりん分をスラグへ移行させて脱りん処理を行う。この脱りん処理では、下記反応式(3)に示す様にFeOが反応に必要とされる。
【0006】
2P+5FeO+3CaO=3(CaO・P2O5)+5Fe(l) …(3)
一方(T.Fe)が過剰になると、転炉操業コストおよび製品品質に多大な悪影響を及ぼす。コスト面では転炉寿命が低下し取替えが頻繁となることが挙げられるが、これはFeOが低融点でかつその他の酸化物を該FeO中に溶解させやすいことから、スラグ中のFeO濃度[以下(FeO)と示すことがある]が高いと、転炉の内張り耐火物を構成する酸化物が溶解、即ち耐火物が溶損することによる。特に、高温かつ酸化性雰囲気の精錬反応に耐えられるよう高価なMgO−C等を前記耐火物に使用する場合には、コストアップに拍車を掛けることとなる。
【0007】
また品質面に及ぼす悪影響として、アルミナ系介在物の多量析出に起因する製品欠陥の増加が挙げられる。これは、吹錬後の溶鋼を取鍋に移し替える際に転炉スラグも溶鋼に随伴して流出するが、該スラグ中のFeO濃度が高いと、吹錬終了後に脱酸材として添加するAl合金が該FeOにより酸化され、多量のアルミナ系介在物を生成させることによる。
【0008】
この様に吹錬終了時の(T.Fe)はある程度確保する必要があるものの、その濃度が高いと製造コストおよび品質に深刻な悪影響を及ぼすことから、(T.Fe)を低位に制御した吹錬方法が提案されつつあり、その代表的なものとして次の2種類の方法が挙げられる。
【0009】
第一の方法は、転炉の炉底から一酸化炭素、アルゴン、窒素等のガスを単独または複数を組み合わせて吹き込み、鋼浴の攪拌を強化することでFeOの生成を抑制するといった方法であり、第二の方法は、吹錬末期における上吹酸素流量を低減するといった方法である。これらは、(T.Fe)低減の点で効果的であることから近年普及してきた方法であり、いずれも次に示すようなFeOの生成および脱炭の反応機構の推定に基づき導かれた技術である。
【0010】
下記反応式(4)で示される転炉での脱炭反応は、その律速段階が吹錬時期によって二通りあると考えられている。吹錬の初期段階および中期段階では、吹き込まれる酸素量に対して溶鋼中のC量が多く、供給された酸素のほぼ全量が溶鋼中のCとの反応に消費されるため、前記脱炭反応の律速段階は酸素の供給にあるといえる。
【0011】
一方、吹錬の末期段階には溶鋼中のCが0.2〜0.4質量%程度にまで低減されているので、下記反応式(4)で示される脱炭反応は抑制され、供給された酸素は下記反応式(5)に示すFeとの酸化反応に消費される。従って吹錬末期には脱炭反応とFe酸化反応との競合反応が生じることから、下記反応式(4)に示す脱炭反応の律速段階は、酸素が鋼浴に衝突する火点などの脱炭反応サイトへのC供給にあるといえる。
【0012】
C + 1/2 O2(g) = CO(g) …(4)
Fe(l) + 1/2 O2(g) =FeO …(5)
そして、前記第一の方法(底吹ガスによる強攪拌)によれば、効率よく脱炭反応サイトへCを供給して脱炭反応の効率を向上させる、即ち、前記式(4)の反応を促進させて前記反応式(5)のFe酸化反応を抑制することができ、(T.Fe)を低位とすることができるのである。例えば第100・101回西山記念技術講座(昭和59年、第176頁)や「鉄と鋼」(第76年 (1990) 第11号 第1793頁)には、この様な技術を用いて(T.Fe)を低位とすることが示されている。
【0013】
また、前記第2の方法(吹錬末期における上吹酸素流量の低減)は、前記反応式(4)および反応式(5)にて使用される酸素の供給量を減少させ、結果として生成するFeO量を減少させることで(T.Fe)を低位とするといったものであり、例えば「鉄と鋼」(第70年 (1984) S248)には、300トン転炉にて吹錬末期に酸素流量を低下させることで(T.Fe)を低減できたことが示されている。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
前記第一の方法(底吹ガスによる強攪拌)はスラグ中の(T.Fe)低減の観点からは有効であるものの、該底吹攪拌のみで(T.Fe)を所望濃度にまで低減するには、約0.3Nm3/T・min以上もの多量の底吹ガスを供給する必要があるが、底吹ガス流量の多い領域ではスラグ中の(T.Fe)低減効果が小さくなることから、更なるガス流量の増加を要する。従って、この様な技術には底吹ガスや底吹設備にかかるコストが増大するといった問題がある。
【0015】
更に、溶銑段階で脱りん処理を施した銑鉄(脱りん銑)の吹錬を行う場合、該脱りん処理を施していない銑鉄の吹錬と比較してスラグ発生量が少ないので、上吹酸素流量が同一である場合には、却って(T.Fe)が増加する傾向にある。このため、該底吹技術の改善だけでは(T.Fe)を所望濃度にまで低減するのは困難である。
【0016】
また、前記第二の方法(吹錬末期の上吹酸素流量の低減)は、上述の様にFeO発生量を低減させるといった効果がある反面、吹錬時間の延長を招くことから、転炉における生産性を阻害するといった問題が避けられない。
【0017】
本発明はこの様な事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、底吹ガス流量を増加させずかつ上吹酸素流量を低減させなくとも、吹錬終了時における(T.Fe)を低位とすることのできる有用な吹錬方法を提供することにある。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明は、吹錬に際して、吹錬終了時の転炉内スラグ量、スラグ中のMgO濃度および吹錬終了温度が下記式(2)を満たすようにして吹錬終了時の(T.Fe)を10〜15質量%とするところに要旨を有する転炉吹錬方法を規定するものである。
【0020】
−64.0≦0.0045(WSLAG−200)[ (MgO)−21]−0.040TTD≦−59.0 …(2)
但し、WSLAG=20〜100kg/t
[式中、WSLAGは吹錬終了時の転炉内スラグ量(kg/t)を示し、(MgO)は吹錬終了時の転炉内スラグ中のMgO濃度(質量%)を示し、TTD(Temperatureat Turn Down)は吹錬終了温度(℃)を示す]
尚、前記吹錬終了温度とは、吹錬終了時の静止鋼浴面から約500mm深さ点での溶鋼の温度をいうものとする。
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、前述した様な状況の下で、まず吹錬終了時の(T.Fe)の適正範囲について、脱りん能の確保および品質・コスト面における影響の観点から数々の実験を行い検討したところ、10〜15質量%の範囲内とするのがよいことが判明した。(T.Fe)の下限を規定した具体的理由は次の通りである。即ち、最近の溶銑技術では、溶銑中にりんの除去を行う溶銑脱りん処理が一般に普及しており、転炉での脱りん操業負荷がかなり軽減されている。この様に溶銑中のりんが低濃度である場合に吹錬終了後の(T.Fe)が低すぎると、転炉内耐火物に付着している全チャージ分スラグ中のP2O5が還元され、溶銑中のりん濃度(溶銑りん濃度)よりも吹錬終了後のりん濃度(吹止りん濃度)の方が高くなるといった、いわゆる復りん現象が生じる。図1は、吹錬終了時の(T.Fe)と脱りん率との関係を調べたもので、実験は、240トン転炉にて脱珪・脱りん処理後の高炉溶銑に対して酸素吹錬を行ったものであり、(T.Fe)は出鋼時に炉内の溶鋼上に浮かぶスラグを採取し、冷却後に粉砕して蛍光X線分析法で測定し、吹錬開始前の溶銑中のりん濃度および吹錬終了後の溶鋼中のりん濃度は、真空型光電測光式発光分光分析装置(カントバック)にて測定した。
【0022】
この図1に示す如く(T.Fe)が10質量%未満になると復りん現象が発生するため、再度、脱りんのための吹錬が必要となる。一方、(T.Fe)の上限を15質量%としたのは、図1に示す様に(T.Fe)が15質量%を超えても脱りん率はほぼ一定であり、前述した様に(T.Fe)が増加するほど品質面およびコスト面に与える悪影響が大きくなるからである。
【0023】
本発明者らは、この様に吹錬終了時の(T.Fe)を10〜15質量%の範囲内とすべく、具体的な制御方法について種々の実験を重ねた。その結果、吹錬終了時のスラグ量と吹錬終了時のスラグ中のMgO濃度とがある一定の関係を満たすよう制御することが大変有効であることを見出した。以下、詳細に説明する。
【0024】
吹錬終了時の(T.Fe)は、吹錬終了時のスラグ中のMgO濃度[以下(MgO)と示す]と相関関係があり、更にこの(T.Fe)と(MgO)の相関関係を一次式で表した場合、その勾配が吹錬終了時のスラグ量の関数で表されることを見出した。図2は、スラグ量等の異なる種々の溶銑の吹錬を行い、吹錬終了時(吹錬終了温度:1640〜1660℃)の(T.Fe)と(MgO)の関係をスラグ量別に示したものである。実験は、240トン転炉にて脱珪・脱りん処理後の高炉溶銑に対して酸素吹錬を行い、(T.Fe)および(MgO)は吹錬終了後の炉内溶鋼上から採取したスラグを蛍光X線分析に供して測定した。またスラグ量は、前記(T.Fe)および(MgO)と同様の方法で求めた(CaO)と、吹錬開始前、吹錬中および吹錬終了後出鋼前に炉内へ挿入した生石灰および軽焼ドロマイト等のCaO分から計算した。
【0025】
この図2における関係を一次式として定式化すると、吹錬終了時の(T.Fe)は、一般的な吹錬操業の終了温度である約1650℃において、下記式(6)に示す様に(MgO)およびスラグ量(WSLAG)の関数として表される。
【0026】
(T.Fe)=0.0045(WSLAG−200)[ (MgO)−21]+7.1 …(6)
[式中、WSLAGは吹錬終了時の転炉内スラグ量(kg/t)を示し、(MgO)は吹錬終了時の転炉内スラグ中のMgO濃度(質量%)を示す]
従って、吹錬終了時(吹錬終了温度:約1650℃)の(T.Fe)を10〜15質量%の範囲内に制御するには、吹錬終了時の(MgO)およびスラグ量が前記式(6)より導かれる下記式(1)を満足するよう制御する必要がある。
【0027】
3.0≦0.0045(WSLAG−200)[ (MgO)−21]≦8.0 …(1)
[式中、WSLAGは吹錬終了時の転炉内スラグ量(kg/t)を示し、(MgO)は吹錬終了時の転炉内スラグ中のMgO濃度(質量%)を示す]
図3は、吹錬終了時のスラグ量(WSLAG)を横軸、(MgO)を縦軸に前記式(1)の範囲を示したものである。吹錬終了温度約1650℃では、スラグ量と(MgO)の関係が図3に示す範囲内となるようにすれば(T.Fe)を適正範囲内とすることができるのである。
【0028】
前記式(6)について考察すると、スラグ量は一般に20〜100kg/t程度であるので、前記式(6)を(MgO)を変数とした1次式と考えるとその勾配は負の値を示す。即ち、前記式(6)からは(MgO)を増加させると(T.Fe)を低減できることが読み取れる。この様な傾向が生じる機構は以下の様に説明することができる。
【0029】
前述の通り、吹錬初期から中期にかけては溶銑中にCが多量に存在するので、前記反応式(4)に示す脱炭反応が主反応となる。しかし吹錬末期になると溶銑中のCが減少するため、前記反応式(4)の脱炭反応は抑制され、供給酸素は前記反応式(5)のFe酸化反応に消費されるようになる。(T.Fe)は、前記反応式(5)に示される酸化物生成反応と下記反応式(7)に示される還元反応のバランスにより決まるが、吹錬末期では、前記Fe酸化反応が下記反応式(7)に示す還元反応よりも優位となるので(T.Fe)が増加する。
【0030】
FeO+C→ Fe + CO(g) …(7)
この様な状況下、一般的な吹錬終了温度である1650℃近傍において、MgOが飽和溶解度約7%を超えてスラグ中に存在する場合、溶解しきれず固体のままのMgOがスラグ中に存在するのでスラグは固液共存状態となり、(MgO)の増加に伴いスラグの粘性が増加することとなる。スラグの粘性が増加すると前記反応式(5)にて生成するFeOとスラグとの攪拌混合が十分でなくなり、スラグ−溶鋼界面近傍に局所的に(FeO)の高い領域ができる。そして前記スラグ−溶鋼界面近傍ではFeOの還元反応が促進されることから、スラグ中のFeOが低減されて(T.Fe)が低位となるのである。
【0031】
次に前記式(1)について考察する。前記式(1)を(MgO)の1次式と考えた場合、勾配を示す項がスラグ量の関数となっている。(MgO)が一定でスラグ量(WSLAG)が20〜100kg/tの範囲で変化する場合、スラグ量が増加すると(T.Fe)は減少する。またMgOによる(T.Fe)低減効果はスラグ量に影響を受け、スラグ量が増加すると(MgO)が増加しても(T.Fe)低減効果は小さいことが分かった。これらの現象は次のような機構によるものと考えられる。
【0032】
前記反応式(5)に示すFeO生成反応は酸素供給が律速であるので、酸素供給量が同じであれば、スラグ量が異なる場合であってもFeO生成量は等しい。(T.Fe)は、FeO等に占めるFe量のスラグ量に対する割合を表したものであるから、FeO生成量が同一(Fe量がほぼ同一)の場合にはスラグ量の増加に伴い(T.Fe)の値が減少するのである。
【0033】
またスラグ量が増加した場合、(MgO)が増加しても(T.Fe)低減効果が小さいのは、スラグ量が増加するとFeOが生成してもスラグにより希釈され、前記スラグ−溶鋼界面近傍におけるFeO量が少なく、従ってFeOの還元速度が小さくなるためであると考えられる。
【0034】
以上では、一般的な吹錬操業での吹錬終了温度である約1650℃にて(T.Fe)を制御することについて検討してきたが、吹錬終了温度は、目的とする鋼種の成分によって多少異なり、各鋼種の凝固温度に応じて大凡1610℃〜1700℃の範囲内で変化する。
【0035】
この様に吹錬終了温度が変化すると、図4に示すようにスラグ中のMgO飽和溶解度が変化する。よってスラグ中のMgO量が一定であっても、吹錬終了温度が変化するとスラグの固相率が変化し、前記反応式(5)にて生成するFeOのスラグ中への拡散速度が変化するのである。吹錬終了温度が高く従ってスラグ中MgO飽和溶解度が高い場合には、スラグの固相率が低いのでスラグ中へFeOが拡散しやすい。一方、吹錬終了温度が低い場合には、スラグ中MgO飽和溶解度が低くスラグの固相率が高くなるので、前記FeOは、スラグ中へ拡散しにくくスラグ−溶鋼界面近傍に留まり、前記反応式(7)に示す還元反応が生じて(T.Fe)が低減されるといったことが生じる。
【0036】
この様に吹錬終了時の(T.Fe)は、吹錬終了時のスラグ量および(MgO)が一定であっても、吹錬終了温度により変動することから、本発明者らは、(T.Fe)をより高精度に制御するには、下記式(8)に示す如く前記式(6)に吹錬終了温度の項を導入することが有効であることを見出した。
【0037】
(T.Fe)=0.0045(WSLAG−200)[ (MgO)−21]−0.040TTD+74 …(8)
[式中、WSLAGは吹錬終了時の転炉内スラグ量(kg/t)を示し、(MgO)は吹錬終了時の転炉内スラグ中のMgO濃度(質量%)を示し、TTDは吹錬終了温度(℃)を示す]
前記式(8)から、吹錬終了時の(T.Fe)を10〜15質量%に制御するための条件として下記式(2)を導くことができる。
【0038】
−64.0≦0.0045(WSLAG−200)[ (MgO)−21]−0.040TTD≦−59.0 …(2)
[式中、WSLAGは吹錬終了時の転炉内スラグ量(kg/t)を示し、(MgO)は吹錬終了時の転炉内スラグ中のMgO濃度(質量%)を示し、TTDは吹錬終了温度(℃)を示す]
図5および図6は、例として吹錬終了温度1620℃と1680℃のそれぞれの場合について、吹錬終了時のスラグ量(WSLAG)を横軸、(MgO)を縦軸に前記式(2)の範囲を示したものであり、吹錬終了温度1620℃および1680℃では、スラグ量と(MgO)の関係がそれぞれ図5または図6に示す領域を満たすようにすれば(T.Fe)を10〜15質量%の範囲内とすることができるのである。
【0039】
本発明は、式(1)または式(2)を満たすための具体的操業方法まで規定するものではなく種々の操業方法を採用することができるが、目標値とする(MgO)と吹錬終了温度(TTD)を設定し、スラグ量(WSLAG)が式(1)または式(2)の範囲内となるよう、添加する生石灰量、軽焼ドロマイト量および昇熱用FeSi量を計算し、挿入するといった方法が操業方法として挙げられる。
【0040】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0041】
実施例1
240トン転炉にて、脱珪・脱りん処理後の高炉溶銑を用い、吹錬終了温度をほぼ1650℃とする吹錬実験を行った。(T.Fe)および(MgO)は吹錬終了後の炉内溶鋼上から採取したスラグを蛍光X線分析に供して測定した。吹錬終了時のスラグ量(WSLAG)は、前記(T.Fe)および(MgO)と同様の方法で求めた(CaO)と、吹錬開始前、吹錬中および吹錬終了後出鋼前に炉内へ挿入した生石灰および軽焼ドロマイト等のCaO分から計算した。また吹錬終了温度(TTD)、即ち吹錬終了時の静止鋼浴面から約500mm深さ点での溶鋼の温度は、測温用の熱電対が組み込まれたプローブを先端に装着したサブランスを溶鋼中に浸漬させて測定した。
【0042】
前記吹錬終了時のスラグ量(WSLAG)、(MgO)および(T.Fe)並びに吹錬終了温度(TTD)を測定した結果を表1および表2に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
表1および表2より、前記式(1)を満たすようスラグ量(WSLAG)および(MgO)を調整した表1のNo.1〜15では、(T.Fe)を10〜15質量%の範囲内とすることができたのに対し、スラグ量(WSLAG)および(MgO)を制御しなかった表2のNo.1〜13では、いずれも(T.Fe)が10〜15質量%の範囲から外れていることがわかる。
【0046】
実施例2
240トン転炉にて、脱珪脱りん処理後の高炉溶銑を用い、吹錬終了温度(TTD)を表3および表4に示すように1610〜1700℃の間で変化させて吹錬実験を行った。
【0047】
尚、吹錬終了時のスラグ量(WSLAG)、(MgO)および(T.Fe)並びに吹錬終了温度(TTD)は前記実施例1と同様にして測定した。
【0048】
【表3】
【0049】
【表4】
【0050】
表3および表4より、前記式(2)を満たすようスラグ量(WSLAG)、(MgO)および吹錬終了温度を調整した表3のNo.1〜15では、(T.Fe)を10〜15質量%の範囲内とすることができたのに対し、スラグ量(WSLAG)および(MgO)を制御しなかった表4のNo.1〜15では、いずれも(T.Fe)が10〜15質量%の範囲から外れていることがわかる。
【0051】
【発明の効果】
本発明によれば、従来技術の如く吹錬において底吹ガスによる強攪拌や吹錬末期における上吹酸素供給量の低減を行わなくとも(T.Fe)を精度よく低位に制御することができ、脱りん能を確保しつつ鋼材の品質およびコストに悪影響を与えない範囲にまでスラグ中の鉄系酸化物を低減できることとなった。
【図面の簡単な説明】
【図1】吹錬終了時の(T.Fe)と脱りん率の関係を示すグラフである。
【図2】吹錬終了時の(MgO)と(T.Fe)の関係をスラグ量別に示したグラフである。
【図3】前記式(1)における本発明の規定範囲を例示したグラフである。
【図4】吹錬終了温度(TTD)とスラグ中MgO飽和溶解度の関係を示すグラフである。
【図5】吹錬終了温度を1620℃とした場合の前記式(2)における本発明の規定範囲を例示したグラフである。
【図6】吹錬終了温度を1680℃とした場合の前記式(2)における本発明の規定範囲を例示したグラフである。
Claims (1)
- 吹錬に際して、吹錬終了時のスラグ中の(T.Fe)を10〜15質量%の範囲内に制御するにあたり、
吹錬終了温度TTD(℃)に対して、下記式(2)に応じて転炉内スラグ量WSLAG(kg/t)およびスラグ中のMgO濃度(質量%)を調整することによって(T.Fe)の濃度を制御することを特徴とする転炉吹錬方法。
−64.0≦0.0045(WSLAG−200)[(MgO)−21]−0.040TTD≦−59.0 …(2)
但し、WSLAG=20〜100kg/t(W SLAG =20kg/tを除く)
[式中、WSLAGは吹錬終了時の転炉内スラグ量(kg/t)を示し、(MgO)は吹錬終了時の転炉内スラグ中のMgO濃度(質量%)を示し、TTDは吹錬終了温度(℃)を示す]
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