JP3680385B2 - 溶銑の脱マンガン方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、溶銑の脱マンガン方法に関し、特に、溶銑予備処理工程でフラックス・インジェクション法を用いて溶銑から脱マンガンする技術に係わる。
【0002】
【従来の技術】
マンガン元素(以下、マンガンという)は、構造用鋼など強度を必要とする鋼材には必須の含有成分であり、こうした鋼材の溶製に際しては、精錬工程中のマンガンの酸化ロスを抑制し、転炉出鋼時に添加する高価なマンガン合金鉄の使用量をできるだけ削減することが望まれてきた。そのための方策の1つが、現在広く実施されている溶銑予備脱燐であり、それは、浸漬ランスを用いて、酸化鉄等の固体酸素源と生石灰を主成分とするフラックスを溶銑中にインジェクションするものである。そして、この予備脱燐を施した溶銑を、転炉において少量のスラグ存在下で脱炭のみを行い、転炉吹錬時でのマンガン酸化ロスの抑制及びマンガン鉱石の還元が可能となった。さらに、特公昭57−38649号公報や特公昭61−23243号公報は、溶銑予備処理中のマンガン酸化ロスの抑制方法を、あるいは特公昭58−39716号公報や特公昭60−27721号公報は、マンガン鉱石の還元による溶銑中マンガン濃度の増加方法を提案している。
【0003】
一方、極低炭素鋼や電磁鋼板等には、マンガン濃度が低いほど材料特性が向上する鋼種があり、こうした鋼種の溶製の際には、逆に脱マンガン精錬が必要となる。しかしながら、前述したように、最近の転炉精練では、少ないスラグ量の下で脱炭のみを行う吹錬が定着しており、溶銑の大幅な脱マンガンは困難であるので、予め溶銑予備処理段階で脱マンガンを行っておく必要が生じた。
【0004】
現在の状況を述べると、通常の溶銑脱燐処理では、溶銑中の燐、珪素と共にマンガンの一部も酸化除去されるが、該処理前のマンガン濃度が高い場合には、脱燐中の脱マンガン量が不足して、転炉装入時の溶銑中のマンガン濃度が目標値以上となることがある。そのため、通常は高炉で低マンガン原料を配合した操業を行い、出銑される低マンガン溶銑を極低炭素鋼や電磁鋼板用に振り向けている。
【0005】
しかしながら、かかる特殊な高炉操業は、高炉の特性より低マンガン溶銑の必要量の如何にかかわらず継続して行わねばならず、短期的な生産計画に対し弾力的な対応がとれない。つまり、高マンガン鋼種に対しても低マンガン溶銑を振り向けることになり、転炉等で多量のマンガン源を添加する必要が生じる。従って、もし溶銑予備処理段階において、必要に応じて脱マンガンが可能となれば、高炉の出銑成分規制が緩和され、製造コストの削減が達成されることになる。これまで、溶銑予備処理時に脱マンガンを行う技術に関する技術報告としては、以下のようなものがある。
【0006】
特公昭52−22613号公報に開示されている技術は、高炉から出銑した溶銑を入れる容器に、予め微粉酸化鉄15〜30kg/tを前置きしておき、溶銑注入後にガス吹き込み等で該溶銑浴を撹拌し、脱珪と同時に脱マンガンを行うものであった。また、特公昭52−13491号公報、特公昭53−33936号公報及び特公昭53−35766号公報には、溶銑鍋に充填した溶銑に酸化鉄を上添加し、機械的撹拌又はガス撹拌を行って、脱マンガン処理を施す技術が開示されている。さらに、特公昭64−1525号公報には、溶銑中に酸化鉄をインジェクションする際に、処理の進行に伴ってランス浸漬深さを深くすることにより、脱マンガンを促進させる技術も開示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特公昭52−22613号公報記載の技術は、溶銑脱燐処理の前に施す脱珪処理に関するものであるが、高炉鋳床の溶銑樋や傾注樋において脱珪剤を連続的に添加して脱珪を行う方法を採用している製鉄所は多い。従って、多くの製鉄所では、いまさら特公昭52−22613号公報記載の脱マンガン法は適用できない。また、特公昭52−13491号公報、特公昭53−33936号公報及び特公昭53−35766号公報記載の方法は、溶銑鍋での処理が前提となっており、スラグ−メタル間反応が進行しにくいトピードカーでの処理では、上記公報記載の効果は得られない。従って、溶銑鍋での処理設備を有しない製鉄所では、別途、設備の建設が必要となる。さらに、特公昭52−22613号公報、特公昭53−33936号公報、特公昭53−35766公報及び特公昭64−1525号公報のいずれについても、この処理の間には脱燐は進行せず、別途脱燐処理が必要となる。
【0008】
本発明は、かかる事情を鑑み、溶銑予備処理段階で効率良く、且つ安価に溶銑から脱マンガンする方法の提供を目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
従来の熱力学の知見によれば、溶銑、溶鋼中のマンガンの酸化、すなわち脱マンガン反応を促進するためには、
ア)スラグの塩基度を低くする。
イ)スラグ中のT.Fe濃度を高める(スラグ中酸素ポテンシャルを高める)。
【0010】
ウ)溶銑、溶鋼温度を低下させる。
ことが知られていた。そして、実操業における溶銑、溶鋼中マンガンの挙動はこうした知見に基づいたメタル/トップスラグ(操業中にメタルの上に生じるスラグ)間反応によって論じられてきた。このうち、溶銑、溶鋼温度は他工程との関係があって任意に調整できるものではないので、従来は投入するフラックスの量、および成分によって処理後のトップスラグの組成を調整し、所望の冶金特性を得るような取り組みがなされていた。かかる方法は、例えば転炉等、精錬剤が上添加され、メタル/トップスラグ間の反応界面積が大きい場合には、マンガンの挙動をよく説明付けられる。
【0011】
ところが、溶銑予備処理で多くの採用されているフラックス・インジェクション法の場合には、インジェクションされたフラックスの浮上中の反応、所謂トランジトリー反応が大きな寄与を果たしており、メタル/トップスラグ間反応のみによってマンガンの挙動を説明できないと考えられる。
そこで、発明者は、トランジトリー反応領域でのフラックス粒子の塩基度と脱マンガン挙動の関係に着目し、種々の条件のもと実験室的に溶銑脱燐実験を行った。実験はインジェクションするフラックスの組成、上添加フラックスの有無及びその組成(処理中のトップスラグ組成)、溶銑中のSiO2 濃度(溶銑中SiO2 の酸化により生じるSiO2 量)を変化させて行った。実験条件及び結果を表1に示す。また、(1)式で定義したトランジトリー反応領域での塩基度と脱マンガン率の関係を図1に示す。
【0012】
【表1】
【0013】
表1及び図1から、溶銑の脱マンガンには、インジェクションするフラックスにSiO2 を配合したり、溶銑中SiO2 の酸化により生じるSiO2 量に応じてインジェクションするフラックス中の生石灰量を変化させて、トランジトリー反応領域での塩基度を2未満とすることが望ましいことが確認され、本発明を完成できた。
【0014】
すなわち、本発明は、溶銑中に、固体及び気体酸素源、生石灰及び酸化珪素からなるフラックス粉を吹込み溶銑を酸化精錬するに際して、上記フラックス粉の全吹込み期間を通じ、生石灰及び酸化珪素の吹込速度が(1)式を満たすよう該フラックス粉を吹込むことを特徴とする溶銑の脱マンガン方法である。なお、吹込速度の単位は、(kg/min−溶銑トン)である。
(フラックス中CaOの吹込速度)/{(溶銑中Siの酸化によるSiO2 の生成速度)+(フラックス中SiO2 の吹込速度)}<2 …(1)
また、本発明は、上記(1)式のSiO2 生成速度の瞬間値を、事前に溶銑中珪素濃度の経時変化より求め、それより予測して定めることを特徴とする溶銑の脱マンガン方法である。
【0015】
さらに、本発明は、全吹込み期間を通じ溶銑上のスラグ塩基度を2以上としたことを特徴とする溶銑の脱マンガン方法でもある。
かかる本発明により、溶銑予備処理工程において効率よく脱マンガンでき、合わせて同時に脱燐、脱珪も可能となった。その結果、高炉の出銑成分規制が緩和され、低マンガン鋼材の製造コスト削減が達成されることになる。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態は、予備処理容器に保持した溶銑中に、特許請求の範囲で述べた条件でフラクッス粉を吹き込むことである。その際、マンガンに関して所謂トランジトリー反応を優先的に起こさせるため、本発明では、(1)式に示す条件、つまりトランジトリー領域でのスラグ塩基度を2未満としたのである。このようにすると、溶銑上の所謂トップスラグの塩基度の値にかかわらず、脱マンガンが順調に行われるからである。なお、トランジトリー領域でのスラグ塩基度を2未満で低下させるほど脱マンガンには良いが、1以下になると脱燐反応が起き難くなるので、脱燐を同時に行う場合には、1〜2の範囲になるようフラックスを吹き込むのが良い。
【0017】
次に、(1)式の条件を満たすには、吹込み中の各瞬間のSiO2 生成速度に対して生石灰及びSiO2 の吹込み速度を決める必要があるが、実際には、各瞬間でのSiO2 生成速度を正確に求めることは困難である。そこで、本発明では、以下の方法によってSiO2 生成速度を求め、フラックスの吹込み速度を定めるようにした。第1の方法は、本発明を適用する条件のもとで、予め事前に溶銑中の珪素濃度の経時変化を求めておき、このデータより吹込み処理中の各段階でのSiO2 の生成速度を予測し、(1)式を満たすようCaO及びSiO2 の吹き込み条件を決定する方法である。第2の方法は、吹込み処理前後の溶銑中珪素濃度の変化からSiO2 の全生成量を求め、これを処理時間で除すことにより、SiO2 の生成速度を一定値として与えるようにした。
【0018】
なお、本発明では、フラックス吹込みにより、必然的に前記トップスラグの塩基度が低下して復硫が生じる恐れがある。そこで、本発明は、脱マンガン又は脱燐処理後に十分な脱硫処理が行えない場合には、フラックスの吹込み中に生石灰を上添加したり、吹込み前に生石灰の吹込みや上添加を行って、常時トップスラグの塩基度が2以上となるようにして、復流を防止するようにした。
【0019】
【実施例】
処理能力200tのトピードカーに溶銑を保持して本発明を適用した。その際、使用した設備は、3基の粉体吹き込み用ディスペンサ、及び1基の副原料上添加用ホッパである。
各々のディスペンサから切り出された各種粉体は、配管の途中でポストミックスされた後、搬送ガスに空気を用い浸漬ランスを介して溶銑中に吹込まれる。なお、上記各種粉体として、粉体吹込み用ディスペンサに焼結ダスト、生石灰、及び珪砂粉を受入れ、前記(1)式を満足するようこれらの吹込み速度を変化させた。また、焼結ダストには、CaO、SiO2 がそれぞれ10、6重量%含まれている。さらに、上添加用ホッパには、塊状生石灰を入れ、粉体吹込み中にそれを上添加することも行った。
ここでは、本発明に係る4つの実施例(実施例1〜4)と1つの比較例(比較例1)を示すが、各例の粉体吹込み状況をパターン化して図2に、本発明を適用した前後の溶銑成分の変化をそれぞれの粉体吹込み条件と共に表2に示す。
【0020】
【表2】
【0021】
なお、比較例1は、現在行われている標準的な溶銑脱燐処理であり、実施例1は、比較例1と焼結ダストの吹き込みパターンのみを同一とし、他の粉体は(1)式を満たすように生石灰の吹込み速度を低下させた場合である。また、実施例2は、比較例1と焼結ダストと生石灰の吹き込みパターンを同一として、本発明の条件を満たすよう珪砂を吹き込んだ場合であり、実施例3は、実施例2において処理後半の珪砂の吹き込み速度を増加させた場合である。さらに、実施例4は、実施例2の吹き込み条件のもと、生石灰を上添加した場合である。
【0022】
本発明の実施成績は、表2から明らかなように、実施例1〜4がいずれも比較例1に対して良好な脱マンガン特性を示している。そのなかでも、トランジトリー反応領域での塩基度が最も小さい実施例3が、最大の脱マンガン率を得た。一方、脱燐は、実施例4と比較例1がほぼ同等で、以下実施例2、3、1の順でやや悪化したが、この程度の悪化は許容できる範囲である。また、実施例1〜3では、若干復硫が認められたが、実施例4のように脱硫剤の上添加を併用すれば復硫を防止できることも明らかである。
【0023】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明により、溶銑予備処理工程で効率良く,安価に脱マンガンが可能となった。また、本発明の適用により、同時に溶銑中の燐も除けることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【図1】酸素原単位あたりの脱マンガン率とトランジトリー反応領域の塩基度との関係を示すグラフである。
【図2】実施例および比較例における各粉体の吹込みパターンを示す図である。
Claims (3)
- 溶銑中に、固体及び気体酸素源、生石灰及び酸化珪素からなるフラックス粉を吹込み溶銑を酸化精錬するに際して、
上記フラックス粉の全吹込み期間を通じ、生石灰及び酸化珪素の吹込速度(kg/min−溶銑トン)が(1)式を満たすよう該フラックス粉を吹込むことを特徴とする溶銑の脱マンガン方法。
(フラックス中CaOの吹込速度)/{(溶銑中Siの酸化によるSiO2 の生成速度)+(フラックス中SiO2 の吹込速度)}<2 …(1) - 上記(1)式のSiO2 生成速度の瞬間値を、事前に溶銑中珪素濃度の経時変化より求め、それより予測して定めることを特徴とする請求項1記載の溶銑の脱マンガン方法。
- 全吹込み期間を通じ溶銑上のスラグ塩基度を2以上としたことを特徴とする請求項1又は2記載の溶銑の脱マンガン方法。
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| JP29441695A JP3680385B2 (ja) | 1995-11-13 | 1995-11-13 | 溶銑の脱マンガン方法 |
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| JP29441695A JP3680385B2 (ja) | 1995-11-13 | 1995-11-13 | 溶銑の脱マンガン方法 |
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| JPH09137212A JPH09137212A (ja) | 1997-05-27 |
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