JP5671804B2 - エタノールの製造方法 - Google Patents
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外樹皮は主に周皮あるいはコルク層からなり、木材組織を機械的損傷から守るとともに、温度と湿度の変動を小さくしている。
内樹皮は師要素、柔細胞および厚壁細胞からなり、師要素は液体と栄養素の運搬の機能を持ち、柔細胞はデンプン等の栄養素貯蔵の機能を持ち、内樹皮の師要素間に介在する。厚壁細胞は支持組織として機能し、木部の年輪と同じように層状に観察され、形によって靭皮繊維とスクレレイドとに区別される。
一方、地球温暖化防止の観点から化石燃料由来のCO2排出削減のため、バイオマスの有効利用が注目されている。しかし、近年、トウモロコシ等の食品系バイオマスからのバイオエタノールの製造は食品価格の上昇を引き起こし、発展途上国では食糧不足などの重大な問題を引き起こしている。そこで、食料と競合しない木質系バイオマス、すなわちリグノセルロースからのバイオエタノールの製造が注目されている。
また、化学的前処理としてはアルカリによる前処理が研究されている(特許文献5〜9参照)。
一方、リグノセルロースからのエタノール生産方法としては、リグノセルロースに対してセルラーゼを反応させてセルロースを酵素的にグルコースへ糖化する工程と、次にグルコースをエタノール酵母によって発酵させてエタノールを生成する方法が採用されていた。しかし、この方法は、糖化工程における糖化反応が、糖化が進行するに従って遅くなる欠点があるので、特許文献10〜13のように、糖化と発酵を同時に行う併行糖化発酵法が研究されていた。先の特許文献9にも併行糖化発酵の記載がある。
リグノセルロース原料として樹皮を用いた場合でも事情は同じで、併行糖化発酵法を採用することが好ましいと考えられる。
また、酵素は高価であるため、糖化発酵液から酵素を分離し酵素を再度糖化発酵槽に循環して使用することが必要である。そのため、糖化発酵槽にはアルカリイオンと対イオンが蓄積されることとなり、工業的に連続生産するには、イオン濃縮による糖化反応や発酵反応の阻害を防止することが重要な課題となる。
該微細樹皮スラリーを併行糖化発酵法により処理した後、生成エタノール及び酵素を含有する液体留分と発酵残渣留分とを分離する併行糖化発酵処理工程と、
生成エタノール及び酵素を含有する液体留分から生成エタノールを回収し、酵素含有液を前記併行糖化発酵処理工程に戻すエタノール及び酵素回収工程と、
前記併行糖化発酵処理工程で生成エタノール及び酵素を含有する液体留分から分離される発酵残渣留分に含まれるカルシウム分を水酸化カルシウムの状態として回収し、前記アルカル液用の水酸化カルシウムとして循環する水酸化カルシウム回収工程、
を有することを特徴とする、樹皮原料からエタノールを製造する方法。
を有することを特徴とする、(1)項記載の樹皮原料からエタノールを製造する方法。
本発明のエタノール製造方法においては、原料として木本植物の樹皮を使用する。樹皮原料としては、特に限定されないが、樹皮が厚く、かつ、糖分(セルロース)が多いという理由で、ユーカリ(Eucalyptus)属に属する樹木の樹皮を使用することが好ましい。前記ユーカリ属に属する樹種(ユーカリ)としては、グランディス(grandis)種、グロブラス(globulus)種、ナイテンス(nitens)種、カマルドレンシス(camaldulensis)種、デグラプタ(deglupta)種、ビミナリス(viminalis)種、ユーロフィラ(Urophylla)種、ダニアイ(dunnii)、及びこれらの交雑種等が挙げられる。
アルカリ処理のための温度は、樹皮を柔化せしめる温度であれば特に限定されないが、好ましくは10℃〜300℃、さらに好ましくは25℃〜95℃、最も好ましくは60〜95℃である。10℃未満の場合ではアルカリ処理効果が低下するおそれがある。
アルカリ処理時間は、原料を柔軟化せしめ、原料の糖化性を促進せしめるに十分な時間であれば特に限定されないが、好ましくは1分〜72時間、さらに好ましくは1分〜17時間、もっとも好ましくは1分〜2時間である。
本発明において、アルカリ化合物としての水酸化カルシウム含有水への浸漬とは、水にアルカリ化合物を予め溶解及び/又は混合した状態で樹皮原料を浸漬してもよく、また、樹皮原料とアルカリ化合物を同時に水に投入してもよく、樹皮原料とアルカリ化合物を予め混合した後、さらに水に浸漬してもよい。いずれにしても、最終的に樹皮原料がアルカリ化合物含有水に浸漬された状態で柔軟化されたものとなればよい。
水酸化カルシウムの場合は、アルカリ水溶液と言っても、溶解度が低いため、溶解していない固形分も同時に存在していること状態となる。
水酸化カルシウム含有水のアルカリ化合物濃度は0.05質量%以上、好ましくは0.05〜10質量%、より好ましくは1〜4質量%である。
水の添加量は、乾燥樹皮原料1質量部に対して5〜20質量部が好適である。水の添加量が20質量部より多いと、加熱のために必要なエネルギーが多くなり、エネルギー収支が悪化する。水の添加量が5質量部未満の場合は、樹皮原料と水酸化カルシウムとの接触が不十分となり、十分な糖化促進効果が得られないおそれがある。なお、水酸化カルシウムは溶解度が1.7g/Lと低いため、アルカリ処理工程においては、水酸化カルシウム水溶液が、原料樹皮及び固体の水酸化カルシウムが接触するには充分な量の水を添加することが重要である。
上記の磨砕処理とは、樹皮原料を剪断力により磨砕する処理である。装置としては、パルプ製造に使用されるグラインダー、レファイナーが使用可能である。グラインダーとしてはストーン型、石臼型のいずれでもよい。
また、メディア攪拌式湿式粉砕装置も使用できる。この装置は、粉砕容器に挿入した攪拌機を高速で回転させて、粉砕容器内に充填したメディアと繊維状セルロースを攪拌して剪断応力を発生させて粉砕する装置であり、例えばサンドグラインダーが代表的な装置である。
例えば、乾燥樹皮100質量部に対してアルカリ化合物0.1質量部以上、好ましくは1質量部以上、より好ましくは5質量部以上である。30質量部を超えて使用しても、効果は頭打ちとなり、薬品、洗浄水の無駄となるおそれがある。
混練処理による微細化処理時間は、樹皮を柔化せしめるに十分な時間であれば、特に限定されないが、好ましくは30秒〜10分の範囲である。
上記のような微細化処理を行うことによって、後の併行糖化発酵処理工程における酵素による糖化反応効率の向上を図ることができる。なお、樹皮原料はアルカリ処理によって柔化されているため、前記微細化処理に要するエネルギーコストは、収率の向上効果と比較すれば問題にならない程度である。
併行糖化発酵処理は、通常のリグノセルロース系バイオマスの糖化処理方法で採用されている酵素の種類や、反応時間、反応温度等の反応条件を採用して行われる。また、同時に、通常の糖を発酵する酵母と培地を投入して行われる。
各セルロース分解酵素は、夫々の活性を有する酵素を適宜の量で添加しても良いが、市販されているセルラーゼ製剤には、上記した各種のセルラーゼ活性を有すると同時に、ヘミセルラーゼ活性も有しているものが多ので、市販のセルラーゼ製剤を用いれば良い。
原料固形分100質量部に対するセルラーゼ製剤の使用量は、0.5〜100質量部が好ましく、1〜50質量部が特に好ましい。
殺菌工程は、酸やアルカリなど、菌の生育困難なpHに原料を晒す方法でも良いが、高温下で処理する方法でも良く、両方を組み合わせても良い。酸、アルカリ処理後の原料については、中性付近、もしくは、糖化及び/又は糖化発酵処理工程に適したpHに調整した後に原料として使用することが好ましい。また、高温殺菌した場合も、室温もしくは糖化発酵工程に適した温度まで降温させてから原料として使用することが好ましい。このように、温度やpHを調整してから原料を送り出すことで、好適pH、好適温度外に酵素が晒されて、失活することを防ぐことができる。
一軸破砕機とは、回転ロータ一に取り付けられた回転刃と、前記回転刃に対して原料を押圧するプッシャと、前記プッシャに取り付けられた固定刃を有し、前記回転刃と固定刃の間で原料を破砕する装置である。
樹皮原料は、一軸破砕機を用いて処理した場合、比較的少ない投入エネルギーで樹皮を繊維状にすることが可能である。繊維状とされた樹皮は、微細であるほど後の糖化効率が高くなるが、微細化のための所要エネルギー量も多くなるため、繊維の大きさは適度な範囲とすることが好ましい。具体的には、繊維分布として、繊維長3mm以上の繊維の割合が全体の20%以上であることが好適である。さらに繊維長3mm以上の繊維の割合が20%以上、かつ、繊維長10mm以下の割合が50%以下であることが好ましい。最も好ましくは、繊維長3mm以上の繊維の割合が20%以上、10mm以上の繊維の割合が10%以下である。
アルカリ処理後に樹皮とアルカリ液とを分離する方法としては、アルカリ処理した後に脱液する。脱液する方法としては、フィルター等を用いた常圧下での濾過のほか、加圧濾過、吸引濾過や、遠心分離手段を適宜用いることができる。
分離された脱液分には、溶解している水酸化カルシウム分の他、固形分としての水酸化カルシウムも存在する。本発明の場合、投入した水酸化カルシウムに対して20〜70質量%程度が脱液中に存在する。この液分はそのままアルカリ処理用として循環使用することもできる。
更に、場合によっては、分離された液分から、焼成等を経て、水酸化カルシウムを再生しても良い。
磨砕処理に際しては、必要に応じて水を供給しても良い。例えば、レファイナー処理の場合、樹皮絶乾固形分1質量部に対して、水は2質量部以上存在することが好ましい。より好ましくは、水が5〜20質量部である。
なお、アルカリ処理後に直ちに磨砕処理を行い、その後に濃縮処理を行っても良い。その場合、磨砕により発生する新たな繊維表面からもアルカリが浸透することになり、アルカリ処理の効果としては増大する反面、微細繊維が発生すると濃縮の効率が下がる危険性もある。
ここにおいて、固液分離前に、二酸化炭素をスラリーに供給して液を中和し、カルシウム固形分の回収を促進しても良い。
炭酸カルシウムを除去した液分は、アルカリ処理工程及び洗浄工程において使用する水として再利用することができる。また、環境負荷が低いものとなっているのでそのまま廃棄することもできる。
中和工程に使用する二酸化炭素は、気体でも固体でもよく、また液体に溶解した状態であってもよい。
なお、本発明の前処理を行った原料を併行糖化発酵処理してエタノールを製造する場合には、副産物として二酸化炭素が発生するため、この二酸化炭素を回収して中和に用いることがさらに好ましい。
蒸留温度は25〜60℃が好ましい。25℃未満であると、生成物の蒸留に時間がかかって生産性が低下する。また、60℃より高いと、酵素が熱変性して失活してしまい、新たに追加する酵素量が増加するため経済性が悪化する。
蒸留後の蒸留残渣留分中に残る発酵生成物濃度は0.1質量%以下であることが好ましい。このような濃度とすることによって、後段の固液分離工程において固形物とともに排出される発酵生成物量を低減することができ、収率を向上させることができる。
残渣の機械的処理は、任意の機械的手段によって、残渣をさらに磨砕して、糖化発酵に適した状態にすることである。磨砕処理に用いられる装置としては、グラインダー、レファイナー等、アルカリ処理工程の直後に行う機械的処理における磨砕処理(最初の磨砕処理)で用いられるものと同様の装置が使用可能である。発酵後の残渣は既に柔軟になっているため、上記の中でも特にレファイナーの使用が好ましい。また、最初の磨砕処理においてレファイナー処理を採用した場合、発酵残渣の磨砕処理としては最初の磨砕処理より磨砕の度合いを高めることが好ましい。最初の磨砕処理、発酵残渣の磨砕処理のいずれも同じレファイナーで行う場合には、発酵残渣の機械処理は最初の前処理に比較して、刃のクリアランスを0.1mm以上狭くすることが好ましい。
アルカリ処理については、前述した樹皮原料のアルカリ処理の場合と同様な薬品、処理条件が可能である。
併行糖化発酵処理工程から得られた発酵残渣を機械的処理したものを、さらに併行糖化発酵処理する場合、一回目の併行糖化発酵処理工程(最初の併行糖化発酵処理工程)とは別の併行糖化発酵処理工程(第二の併行糖化発酵処理工程)を設けて発酵させる第一実施形態(図1のフロー参照)と、発酵残渣を機械的処理したものを一回目の併行糖化発酵処理工程(最初の糖化発酵処理工程)に返送する第二実施形態が存在する。
第一実施形態の場合、最初の併行糖化発酵処理工程及び第二の併行糖化発酵処理工程は、夫々独立して、バッチ処理あるいは連続処理のいずれによっても行うことができる。
特に、前述した残渣の磨砕処理を行う方法においては、前述の第二の併行糖化発酵処理工程の残渣を焼成処理する方法が最も合理的である。
〔樹皮破砕処理〕
図1の工程図における「樹皮破砕工程1」において、10cmスクリーンを通過したチップ状のユーカリ・グロブラスの樹皮を、一軸破砕機(西邦機工製,SC−15)を用いて以下の条件で破砕した。
一軸破砕機のホッパーに、含水率30.8質量%の樹皮723g(絶乾質量で500g相当)の樹皮を投入し、丸穴φ20mmのスクリーンを使用して運転を行った。一軸破砕機で破砕された樹皮を10Lのステンレスバケツに取った。
図1の工程図における「前処理工程」中の「アルカリ処理工程2」において、上記の破砕樹皮に、水酸化カルシウム粉末を62.5g(対絶乾樹皮12.5質量%)を加えて良く混合した後、水の総量が5Lとなるように水を加えた。これも良く混合した後、90℃にて40分間保持してアルカリ処理を施した。
アルカリ処理後、図1の工程図における「前処理工程」中の「固液分離工程3」において、40メッシュの合成繊維メッシュを用いて、遠心脱水により固形分であるアルカリ処理物と液分とを分離する濃縮処理を行った。
アルカリ処理濃縮物(Wet)は約1.9Kgで、水分は73.2質量%であった。また、液の量は3.1kgであった。この液をろ液(a)として保管した。
図1の工程図における「前処理工程」中の「磨砕工程4」において、上記「固液分離工程」からのアルカリ処理濃縮物をレファイナー(熊谷理器工業製、KRK高濃度ディスクレファイナー)を用い、クリアランス0.5mmで磨砕した。
図1の工程図における「前処理工程」中の「洗浄工程5」において、前記磨砕処理物に5Lの純水を添加し、10分間攪拌した後、40メッシュのスクリーンにて固液分離して洗浄された前処理物〔これを前処理微細樹皮(b)とする〕を得た。また、分離された液はろ液(c)として保管した。
図1の工程図における「併行糖化発酵処理工程」中の「第一併行糖化発酵処理工程6」において、上記前処理微細樹皮(b)を反応容器に入れ、水を加えて濃度8%に調整したのち、ポリペプトン5g/L、酵母(MF−121)エキス3g/L、麦芽エキス3g/Lとなるようにそれぞれ添加し、前記液体培地3Lで前培養後の洗浄遠心で集菌した酵母菌体及び市販セルラーゼ(Multifect CX16L、ジェネンコア協和社製)250mLを添加し、37℃、20時間の条件で最初の糖化発酵処理(第一併行糖化発酵処理)し、発酵液のエタノール濃度を測定した。
「第一併行糖化発酵処理工程」で最初の併行糖化発酵処理後、図1の工程図における「固液分離工程7」で、40メッシュのスクリーンにて固液分離して発酵残渣(d)を得た。
図1の工程図における「第一併行糖化発酵処理工程6」で最初の併行糖化発酵処理した処理液を「固液分離工程7」で分離して得られる生成エタノール及び酵素を含有する発酵液(m)を、「蒸留工程8」で蒸留してエタノール(e)を得た。また、エタノールが除かれた酵素含有液(f)は最初の併行糖化発酵処理工程(第一併行糖化発酵処理工程6)に戻された。
蒸留工程でエタノールが除かれた酵素含有液(f)を「固液分離工程9」で処理して、酵素液(g)を最初の併行糖化発酵処理工程(第一併行糖化発酵処理工程6)用の酵素源として戻し、固形分は最終残渣(h)として「焼成工程10」に送った。
図1の工程図における「第二磨砕工程12」で、前記最初の併行糖化発酵処理工程からの発酵液から固液分離工程で分離された発酵残渣をレファイナーによりクリアランス0.3mmで処理した。
図1の工程図における「第二併行糖化発酵処理工程13」で、上記第二磨砕工程で処理した発酵残渣(d)を空の反応容器に入れ、水を加えて濃度8%に調整し、「第一併行糖化発酵処理工程6」で用いたものと同様の、ポリペプトン5g/L、酵母エキス3g/L、麦芽エキス3g/Lとなるようにそれぞれ添加し、前記液体培地1Lで前培養後の洗浄遠心で集菌した酵母菌体及び市販セルラーゼ70mLを添加して37℃、20時間の条件で併行糖化発酵処理(第二の併行糖化発酵処理)を行い、発酵液のエタノール濃度を測定し、第一併行糖化発酵処理で得られたエタノール量との合計量を算出した。エタノールの合計量は58gであった。
図1の工程図における前記第二の併行糖化発酵処理工程からの糖化発酵液を「固液分離工程14」で、40メッシュのスクリーンにて固液分離して最終残渣(k)と追加のエタノール及び酵素を含有する発酵液(j)を得た。分離された発酵液(j)は前記の最初の併行糖化発酵処理工程からの発酵液を固液分離工程で分離して得られる生成エタノール及び酵素を含有する発酵液(m)と一緒に「蒸留工程8」に送り蒸留した。
上記第二の併行糖化発酵処理工程13からの発酵液から分離した最終残渣(k)と、前記最初(第一)の併行糖化発酵処理工程6からの発酵液の蒸留工程8から得られる酵素含有液(f)から固液分離工程9で分離した最終残渣(h)とは、一緒にして「焼成工程10」焼成し、含まれるカルシウム分を酸化カルシウムに転化した。
また、前記樹皮原料の「アルカリ処理工程2」からの処理物の「固液分離工程3」から得た「ろ液(a)」と該「固液分離工程3」で得たアルカリ処理樹皮の「洗浄工程5」からの「ろ液(c)」は、一緒にして「沈殿工程15」に送り、炭酸ガスを吹き込んで炭酸カルシウムを沈殿物として分離した後、「焼成工程16」に送って焼成して酸化カルシウムに転化した。前記ろ液と発酵残渣の各焼成工程から得られた酸化カルシウムの合計量は約92gであった。この量は、投入した水酸化カルシウムから想定される量よりはるかに多く、樹皮原料中に含まれているシュウ酸カルシウム等のカルシウム分の大部分も酸化カルシウムに転化され、酸化カルシウムとして回収されたと推定される。前記両焼成工程10,16からの酸化カルシウムは消化(消和)工程11でそれぞれ水酸化カルシウムに転化した。
2:アルカリ処理工程
3:固液分離工程
4:磨砕工程
5:洗浄工程
6:第一併行糖化発酵処理工程
7:固液分離工程
8:蒸留工程
9:固液分離工程
10:焼成工程
11:消化(消和)工程
12:磨砕工程
13:第二併行糖化発酵処理工程
14:固液分離工程
15:沈殿工程
16:焼成工程
a:処理済みアルカリ液
b:前処理微細樹皮
c:洗浄液
d:発酵残渣e:回収エタノール
f:酵素含有液
g:酵素液
h:最終残渣
j:発酵液
k:発酵残渣
l:炭酸カルシウム
m:発酵液
Claims (9)
- ユーカリ(Eucalyptus)属に属する樹木の樹皮原料を水酸化カルシウムを含有するアルカリ液による柔軟化処理と機械的に微細化する処理により微細樹皮とし、該微細樹皮からpH4〜7の微細樹皮スラリーを調製する前処理工程と、
該微細樹皮スラリーを併行糖化発酵法により処理した後、生成エタノール及び酵素を含有する液体留分と発酵残渣留分とを分離する併行糖化発酵処理工程と、
生成エタノール及び酵素を含有する液体留分から生成エタノールを回収し、酵素含有液を前記併行糖化発酵処理工程に戻すエタノール及び酵素回収工程と、
前記併行糖化発酵処理工程で生成エタノール及び酵素を含有する液体留分から分離される発酵残渣留分に含まれるカルシウム分を水酸化カルシウムの状態として回収し、前記アルカル液用の水酸化カルシウムとして循環する水酸化カルシウム回収工程、
を有することを特徴とする、樹皮原料からエタノールを製造する方法。 - 前記前処理工程が、前記水酸化カルシウムを含有するアルカリ液による柔軟化処理と機械的に微細化する処理によって得られる微細樹皮スラリーから分離される処理済みアルカリ液と、微細樹皮を水洗した後の水洗処理液とを含むカルシウム分含有処理液に含まれるカルシウム分を水酸化カルシウムの状態として回収し、前記アルカリ液用の水酸化カルシウムとして循環する水酸化カルシウム回収工程、
を有することを特徴とする、請求項1記載の樹皮原料からエタノールを製造する方法。 - 前記前処理工程が、前記水酸化カルシウムを含有するアルカリ液による柔軟化処理と機械的に微細化する処理によって得られる微細樹皮スラリーを微細樹皮分と処理済みアルカリ液分とに分離し、微細樹皮分を水洗して洗浄処理液を分離した後、微細樹皮分を水中に分散させてpH4〜7の微細樹皮スラリーを調製する工程であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の樹皮原料からエタノールを製造する方法。
- 前記水酸化カルシウム回収工程は、前記アルカリ液による柔軟化処理と機械的に微細化する処理によって得られる微細樹皮スラリーから分離される処理済みアルカリ液と、微細樹皮を水洗した後の水洗処理液とを含むカルシウム分含有処理液に二酸化炭素を作用させて生成する炭酸カルシウム沈殿を分離し、焼成して酸化カルシウムに転化し、さらに、消和して水酸化カルシウムとして回収する処理を含む工程であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹皮原料からエタノールを製造する方法。
- 前記水酸化カルシウム回収工程は、前記併行糖化発酵処理工程において、生成エタノール及び酵素を含有する液体留分を分離して得られる発酵残渣留分を焼成して含まれるカルシウム分を酸化カルシウムに転化し、さらに硝和して水酸化カルシウムとして回収する処理を含む工程であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹皮原料からエタノールを製造する方法。
- 前記生成エタノール及び酵素を含有する液体留分から生成エタノールを回収し、酵素含有液を前記併行糖化発酵処理工程に戻すエタノール及び酵素回収工程は、該酵素含有液に随伴されている発酵残渣分を除去する処理を含む工程であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の樹皮原料からエタノールを製造する方法。
- 前記併行糖化発酵処理工程において生成エタノール及び酵素を含有する液体留分から分離された発酵残渣留分の少なくとも一部を、さらに機械的に微細化処理して微細発酵残渣スラリーを調製する工程と、該微細発酵残渣スラリーを併行糖化発酵処理して生成エタノール及び酵素を含有する液体留分と発酵残渣留分との分離する併行糖化発酵処理工程と、生成エタノール及び酵素を含有する液体留分から生成エタノールを回収し、酵素含有液留分を併行糖化発酵処理工程用の酵素源として戻す生成エタノール及び酵素回収工程と、前記併行糖化発酵処理工程で分離される発酵残渣留分からカルシウム分を水酸化カルシウムの状態として回収するカルシウム分回収工程からなる追加のエタノール製造工程において処理して追加のエタノール分を回収する工程を有することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の樹皮原料からエタノールを製造する方法。
- 前記追加のエタノール製造工程における生成エタノール及び酵素を含有する液体留分の少なくとも一部を、前記最初の併行糖化発酵処理工程から得られる生成エタノール及び酵素を含有する液体留分と合して前記最初の生成エタノール及び酵素回収工程で処理することを特徴とする、請求項7記載の樹皮原料からエタノールを製造する方法。
- 前記併行糖化発酵処理工程における発酵のための酵母として、イサチェンキア属オリエンタリス種(Issatchenkia orientalis)に属する微生物を用いることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の樹皮原料からエタノールを製造する方法。
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