例えば、特許文献1に記載のように、マグネシア質粉、金属Si粉及びシリカ質粉を含む溶射材においては、金属Si粉が搬送ガスの酸素との反応によりSiO2成分を生成した後、さらにこのSiO2成分とマグネシア質粉との反応(MgO+SiO2→MgO・SiO2)によって発熱するためシリカ質粉の溶融が促進され、付着性及び接着性が向上する。上記において、金属Si粉が酸素と反応してSiO2を生成する反応は燃焼発熱を伴う。このため、金属Si粉を大量に添加することで発熱量を上昇させ、施工体の付着性及び接着性を向上させることが考えられる。しかし、本溶射法においては、装置構成上、酸素量が制限される。これは、本溶射法では、吹付けられた耐火原料粉及び金属Si粉が被施工面に衝突してから発熱反応を起こすため、酸素量を増やし、酸素による搬送流速を増大させることは、かえって耐火原料粉及び金属Si粉の冷却やリバウンド量を増やすことになるからである。このため、限られた酸素量の下で金属Si粉を添加し、いかに効率良く燃焼反応を起こさせるかが重要となってくる。
仮に、金属Si粉を大量に添加すると、燃焼反応に必要な酸素量が不十分となり、発熱反応に寄与しない未燃の金属Si粉が施工体中に残存してしまう。一方、金属Si粉の添加量が不足した場合、骨材であるシリカ質粉及びマグネシア質粉を溶かすことができず、被施工面に対する施工体の接着性が低下してしまう。
また、金属Si粉と酸素との発熱反応によりSiO2が生じた後、上記式のようにSiO2とMgOとが反応する。この反応を効率良く生じさせるためには、特許文献1(段落0024及び段落0026)でも指摘されているように、反応の元となる原料である金属Si粉及びマグネシア質粉の粒径を小さくする必要がある。
しかし、本発明者らが上記の反応について詳細に検討した結果、金属Si粉及びマグネシア質粉の粒径を単に小さくするだけでは効率的な反応を行うには十分でないことが判明した。すなわち、粒径は小さくても金属Si粉とマグネシア質粉との添加量のバランスが悪いと問題が生じる。例えば、マグネシア質粉の添加量が金属Si粉の添加量に対して過剰であると、発熱して生成するSiO2が少ないため、施工体中に未反応のマグネシア質粉が残存してしまう。また、添加する金属Si粉及びマグネシア質の粒径分布が適正でない場合も問題が生じる。例えば、マグネシア質粉の粒径分布において粒径の大きいマグネシア質粉が多く、粒径の小さいマグネシア質粉が少ない場合、粒径の大きなマグネシア質粉が多く含まれるので、未反応のマグネシア質粉が施工体中に残存してしまう。なお、これらの問題は、耐火原料粉がマグネシア質粉の場合にのみ生じるものではなく、特許文献2にようにカルシア質粉を使用した場合もマグネシア質粉がカルシア質粉に置き換わるだけで同様の問題が生じる。
上述のように、未燃の金属Si粉や未反応のマグネシア質粉(又はカルシア質粉)が施工体中に残存すると、施工体の剥落が顕著になる。その理由は以下のとおりである。
工業窯炉の稼働は定期的に繰り返し行われるため、工業窯炉の炉壁、特に炉口の内張り材は加熱と冷却が繰り返される環境下に曝される。この環境下において、金属Si粉が施工体中に残存していると、加熱と冷却の繰り返しによりSiが酸化してSiO2が生じることで膨張が生じ、膨張により施工体に亀裂が生じる。そうすると、亀裂による施工体の剥落が顕著になる。同様に、マグネシア質粉(又はカルシア質粉)が施工体中に残存していると、マグネシア質粉(又はカルシア質粉)は熱膨張が大きいため、加熱冷却の繰り返しにより施工体に亀裂が生じる。そうすると、亀裂による施工体の剥落が顕著になる。このため、特許文献1、2に記載の溶射材を用いて溶射を行った場合であっても、未燃の金属Si粉や未反応のマグネシア質粉(又はカルシア質粉)が施工体中に多量に含まれると、加熱と冷却の繰り返し後に、施工体の剥落が顕著になるという問題がある。
また、金属粉Siの燃焼発熱を利用した溶射法は、吹付け開始時に種火又は炉壁残熱で溶射材中の金属Si粉の燃焼によって溶射材が着火し、次いでこの金属Si粉の燃焼による発熱が火種となって順次吹付けられる溶射材が連続して燃焼し、溶射材が溶融付着される施工法である。したがって、吹付け開始時における溶射材の着火性(以下「初期の着火性」という。)が十分でないと、耐火原料粉を被施工面に強固に接着させることができない。
この点、特許文献3には、初期の着火性を確保するために、着火促進剤として鉄粉を添加する実施例が記載されているが、鉄粉を添加すると、低融物又は別の鉱物相が生成することで膨張特性が大きく変動するため、加熱と冷却の繰り返し後の接着性(以下「繰り返し後の接着性」という。)が低下する。
また、特許文献3には、着火促進剤による着火促進効果を確保するため、着火促進剤としての金属粉末の粒径は100μm以下が好ましい旨の記載がある(段落0037)。しかし、単に金属粉末を微粒化するだけでは、溶射材の発塵性が高くなるという問題が生じる。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、工業窯炉の炉壁補修等のために溶射施工した際、被施工面との良好な繰り返し後の接着性を維持して施工体の剥落を防止するとともに、初期の着火性を向上させ、かつ発塵性を抑えることができる溶射材を提供することにある。
本発明者らは、検討の結果、粒径10μm以下の超微粉の金属Si粉が初期の着火性に寄与する重要なパラメータであるという知見を得た。また、溶射材中の特定粒径以下の金属Si粉とマグネシア質粉等の塩基性化合物との添加量のバランスを保つことで溶射材の反応性が向上して繰り返し後の接着性が向上し、かつ、溶射材の反応性が向上することで粒径10μm以下の超微粉の金属Si粉も効率的に燃焼し、発塵性が抑えられるという知見も得た。さらに、微粒化すると発塵性が悪くなるという技術常識に反して、粒径10μm以下の金属Si粉が多くなると、金属Siが効率的に燃焼することで未燃の金属Siが少なくなり、発塵性が抑えられるという知見も得た。
すなわち、本発明の一観点によれば、酸素又は酸素を含有するガスを搬送ガスとして被施工面に吹付け、金属Si粉の燃焼発熱で被施工面に溶融付着させる溶射材であって、Ca成分及びMg成分の少なくとも一つを含む塩基性化合物を2質量%以上25質量%以下、金属Si粉を10質量%以上30質量%以下、シリカ質粉及びアルミナーシリカ質粉の群に含まれる耐火物粉から選択される1種又は2種以上を50質量%以上86質量%以下含み、前記塩基性化合物100質量%中に占める粒径0.15mm以下の塩基性化合物の割合が30質量%以上であり、溶射材100質量%中の粒径20μm以下の金属Si粉の割合が10質量%以上25質量%以下であり、(溶射材100質量%中の粒径20μm以下の金属Si粉の割合(質量%))/(溶射材100質量%中の粒径0.15mm以下の前記塩基性化合物の割合(質量%))が0.8以上10以下であり、前記金属Si粉100質量%中に占める粒径10μm以下の金属Si粉の割合が60質量%以上である溶射材が提供される。
本発明によれば、粒径10μm以下の超微粉を60質量%以上含む金属Si粉を使用したことで、初期の着火性を向上させることができる。
また、本発明によれば、溶射材中の特定粒径以下の金属Si粉と塩基性化合物との添加量のバランスを適正範囲にし、かつ金属Si粉及び塩基性化合物に占める特定粒径以下の金属Si粉及び塩基性化合物の割合を適正範囲としたことで、金属Si粉の燃焼反応が効率良く生じ、さらに金属Si粉の燃焼反応により生じたSiO2と塩基性化合物に由来するMgO又はCaOとの反応も効率良く進む。したがって、金属Si粉及び塩基性化合物が施工体中に多量に残存するのを防止することができ、溶射後及びその後の加熱と冷却の繰り返し後においても被施工面との繰り返し後の接着性が良好となり、施工体の剥落を防止することができる。加えて、金属Si粉の燃焼反応が効率良く進むことで、粒径10μm以下の超微粉を60質量%以上含む金属Si粉を使用したとしても、発塵性を抑えることができる。
さらに、本発明によれば、粒径10μm以下の超微粉を60質量%以上含む金属Si粉を使用することで、金属Siが効率的に燃焼することで、反応しない未燃の金属Siが少なくなり、発塵性を抑えることができる。
本発明の溶射材は、Ca成分及びMg成分の少なくとも一つを含む塩基性化合物(以下、単に「塩基性化合物」という。)を2質量%以上25質量%以下、金属Si粉を10質量%以上30質量%以下、シリカ質粉及びアルミナ−シリカ質粉の群に含まれる耐火物粉から選択される1種又は2種以上を50質量%以上86質量%以下含んでなる。
塩基性化合物としては、典型的にはマグネシア質粉又はカルシア質粉を使用する。マグネシア質粉の具体例は、マグネシア粉、マグネシア−カルシア粉、MgO−Al2O3系スピネル粉、マグネシア−カルシア−シリカ粉から選択される1種又は2種以上である。カルシア質粉の具体例は、カルシア粉、マグネシア−カルシア粉、カルシア−シリカ粉などから選択される1種又は2種以上である。これらは焼結品、電融品のいずれでもよいが、マグネシア質粉のMgO含有量は25質量%以上であることが好ましく、カルシア質原料粉のCaO含有量は75質量%超であることが好ましい。さらに、塩基性化合物としては、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム等を使用することもできる。
塩基性化合物の使用割合は2質量%以上25質量%以下とする。2質量%未満では被施工面の温度が低い場合は連続燃焼が安定せず、付着性及び繰り返し後の接着性に劣る。25質量%を超えるとその分、金属Si粉あるいはシリカ質粉が減り、金属Si粉、シリカ質粉の各特性が損なわれる。塩基性化合物の使用割合は4.5質量%以上20質量%以下とすることが好ましい。
また、粒径分布の面で塩基性化合物としては、粒径0.15mm以下の微粒の割合が30質量%以上であるものを使用する。粒径0.15mm以下の微粒の割合が30質量%未満では施工体中に残存するMgO又はCaOが多くなり、繰り返し後の接着性に劣る。
金属Si粉としては、一般的に耐火物原料として使用されているものを使用できる。具体的には、金属Si粉は、溶射材100質量%中に粒径20μm以下の金属Si粉が10質量%以上25質量%以下含まれるように使用する。粒径20μm以下の金属Si粉が10質量%未満では、燃焼発熱に劣り、付着性、繰り返し後の接着性、施工強度ともに劣る。また、25質量%を超えると、施工体中に残存する金属Siが多くなり、繰り返し後の接着性に劣る。また、粒径20μm以下の金属Si粉が25質量%を超えると、施工時に金属Si粉の発塵が著しくなり、作業環境の悪化を招く。
金属Si粉は、上記の粒径20μm以下以外の粒径を含んでもよい。溶射材全体における金属Si粉の使用割合は、10質量%以上30質量%以下とする。10質量%未満では、上記同様、付着性、繰り返し後の接着性、施工強度に劣る。また、溶射材全体における金属Si粉の使用量が30質量%を超えた場合、上記同様、施工時に金属Si粉の発塵が著しくなり、作業環境の悪化を招く。
また、粒径分布の面で金属Si粉としては、粒径10μm以下の超微粉の割合が60質量%以上であるものを使用する。60質量%未満では、十分な初期の着火性を確保することができない。また、60質量%未満では、粒径10μm超の金属Si粉が多くなるので、反応しない未燃の金属Siが多くなり、この未燃の金属Siが浮遊して発塵が多くなる。
本発明において使用するシリカ質粉の具体例は、珪砂、天然石英粉、溶融シリカ粉、珪石粉あるいはこれらの成分を主体とした耐火物粉等が挙げられる。アルミナ−シリカ質粉の具体例は、蝋石、シャモット、粘土、焦宝石、アンダリュサイト、シリマナイト、カイヤナイト、ムライト等が挙げられる。
本発明では、これらのシリカ質粉及びアルミナ−シリカ質粉の群に含まれる耐火物粉から選択される1種又は2種以上を合量で溶射材100質量%中に50質量%以上86質量%以下使用する。50質量%未満では施工体の容積安定性に劣り、繰り返し後の接着性が低下する。86質量%を超えると吹付け時の跳ね返り損失が大きくなり付着性が低下する。
また、シリカ質粉及びアルミナ−シリカ質粉の粒径は溶融性の面で2mm以下であることが好ましい。粒径2mm以下の範囲であれば、例えば1.5mm以下あるいは1mm以下に限定しても溶融において大差がない。さらに、シリカ質粉及びアルミナ−シリカ質粉の粒径分布は、粒径0.3mm以下を0質量%以上15質量%以下に調整することが好ましい。
また、本発明の溶射材では、「(溶射材100質量%中の粒径20μm以下の金属Si粉の割合(質量%))/(溶射材100質量%中の粒径0.15mm以下の塩基性化合物の割合(質量%))」(以下「微粉比」という。)を0.8以上10以下に調整する。微粉比が0.8未満では粒径20μm以下の金属Si粉の割合に対する粒径0.15mm以下の塩基性化合物の割合が多すぎ、施工体中に残存するMgO又はCaOが多くなり、繰り返し後の接着性に劣る。微粉比が10超では粒径20μm以下の金属Si粉の割合に対する粒径0.15mm以下の塩基性化合物の割合が少なすぎ、金属Siが燃焼しSiO2になっても反応する微粒の塩基性化合物(MgO又はCaO)が少ないためMgO又はCaOとSiO2との反応が効率的に行われない。したがって施工時の発熱量自体が不足し、施工体中に残存する金属Siも多くなり、繰り返し後の接着性も悪くなる。また、微粉比10超では、金属Si粉が多すぎるため、発塵性も悪くなる。微粉比は1以上3.6以下であることが好ましい。
本発明の溶射材は本発明の効果を阻害しない範囲において、前記した以外の耐火性原料粉、その他の原料を組み合わせて使用してもよい。その他の原料としてはセメント類、製鋼スラグ、製銑スラグ等である。これらを例えば10質量%以下の範囲で組み合わせてもよい。
表1に本発明の実施例、表2に比較例を示す。表1及び表2には各例の評価結果も併せて示す。なお、表1及び表2においてシリカ質粉としては珪石粉、アルミナ−シリカ質粉としてはシャモット、マグネシア質粉としてはマグネシア粉、カルシア質粉としてはカルシア粉、マグネシア−カルシア質粉としては、マグネシア−カルシア粉を使用した。
各例の溶射材の施工に使用した溶射装置においては、ノズル先端等からの逆火による材料タンク内での溶射材の燃焼の危険性に備えるため、材料タンク内に不活性ガスである窒素ガスを導入した。溶射材は、タンクの底部に備え付けたテーブルフィーダーをもって切り出し、酸素で搬送した。その際、酸素には材料タンク内からの不活性ガスが混入するが、その量は僅かであり、溶射材の燃焼発火に支障はない。
各例では、粉体供給速度50kg/h、被施工面とノズル先端の距離50〜70mmをもって、溶射材3kgを被施工面に吹付けた。
繰り返し後の接着性として、溶射した施工体を1000℃から300℃に繰り返し10回熱昇降した後のれんが(被施工面)との接着性を評価した。この評価では、繰り返し後の接着性が良好な方から◎(優)、○(良)、△(可)及び×(不可)の4段階で評価した。すなわち、施工体を打撃により取り外した際にれんがと一緒に壊れた場合を◎(優)、外観で接着不良は見られず、施工体を打撃により取り外そうとした際に接着界面から剥落した場合を○(良)、外観で部分的に外れた箇所が見られた場合を△(可)、外観で接着不良が顕著に見られた場合を×(不可)とした。
また、被施工面に接着した後の施工体中に残存する金属Siの量を定量分析により評価した。
初期の着火性は、被施工面に対して施工を開始してから5秒以内に着火が目視で確認された場合を◎(優)、5秒超10秒以内で着火が目視で確認された場合を○(良)、10秒超15秒以内に着火が目視で確認された場合を△(可)、15秒超で着火が目視で確認された場合又は着火が確認されなかった場合を×(不可)とした。
発塵性の評価は、溶射施工時に発塵がほとんどなく視界が良好の場合を◎(優)、発塵が少しあるが視界が良好の場合を○(良)、発塵があり視界は少し悪いが施工に問題ない場合を△(可)、発塵があり視界が悪く施工ができない場合を×(不可)とした。
そして、総合評価は、繰り返し後の接着性、初期の着火性、発塵性の各評価が全て◎(優)であり、かつ、施工体中に残存するSiが10質量%以下の場合を◎(優)、各評価における最低評価が○(良)であり、かつ、施工体中に残存するSiが10質量%以下の場合を○(良)、各評価における最低評価が△(可)であり、かつ、施工体中に残存するSiが10質量%以下の場合を△(可)、各評価の最低評価に×(不可)がある場合、又は施工体中に残存するSiが10質量%以下の場合を×(不可)とした。
実施例1〜16はいずれも本発明の範囲内の溶射材であり、総合評価は△(可)以上であった。
比較例1は、マグネシア質粉が多い例で、未反応のマグネシア質粉が施工体中に残存し、繰り返し後の接着性が×(不可)となった。また、未反応のマグネシア質粉は、発熱せずに金属Si粉から吸熱する。このため、金属Si粉の反応性が低下し、施工中に残存するSi量が10質量%以上となった。
比較例2は、マグネシア質粉が少ない例で、SiO2とマグネシア質粉との反応が不十分であり、繰り返し後の接着性が×(不可)となった。また、マグネシア質粉が少ないため、施工体中に残存するSi量も10質量%以上となった。
比較例3は、溶射材中における金属Si粉が多い例、比較例4は、粒径20μm以下の金属Si粉が多い例である。どちらも、繰り返し後の接着性が×(不可)となり、かつ、施工体中に残存するSi量も10質量%以上となった。また、発塵性も×(不可)となった。
比較例5は、金属Si粉が少ない例で、繰り返し後の接着性が×(不可)となった。また、繰り返し後の接着性に劣るため、被施工面に接着した施工体量は少量となった。この少量の施工体中に残存するSi量は10質量%以上となった。
比較例6は、粒径0.15mm以下のマグネシア質粉が少ない例で、未反応のマグネシア質粉が施工体中に残存し、繰り返し後の接着性が×(不可)となった。また、比較例1と同様に、未反応のマグネシア質粉が吸熱するため、施工体中に残存するSi量が10質量%以上となった。
比較例7は、微粉比が0.8未満の例で、繰り返し後の接着性が×(不可)となった。比較例8は、微粉比が10を超える例で、繰り返し後の接着性が×(不可)となり、かつ、施工体中に残存するSi量も10質量%以上となった。
比較例9は、金属Si粉100質量%中に占める粒径10μm以下の金属Si粉の割合が少ない例で、初期の着火性が×(不可)となった。また、粒径10μm超の金属Si粉が多くなるので、反応しない未燃の金属Si粉が多くなり、この未燃の金属Si粉が浮遊して発塵が多くなることで、発塵性が×(不可)となった。
比較例10も、金属Si粉100質量%中に占める粒径10μm以下の金属Si粉の割合が少ない例である。比較例9との違いは、比較例9は、20μm超45μm以下の金属Si粉を8質量%含むことで、粒径10μm以下の金属Si粉の割合が60質量%未満となっているのに対し、本比較例は、全ての金属Si粉は20μm以下であるが20μm以下の金属Si粉中に10μm以下の金属Si粉を30質量%しか含まないため、粒径10μm以下の金属Si粉の割合が60質量%未満となっていることにある。本比較例においても比較例9と同様に、初期の着火性が×(不可)となり、かつ、未燃のSi粉が浮遊して発塵が多くなることで、発塵性も×(不可)となった。
比較例11は、上記特許文献3に倣って着火促進剤として鉄粉を添加した例であり、鉄粉により低融物が生成され、この低融物により膨張特性が大きく変動するため、繰り返し後の接着性が×(不可)となった。また、鉄粉の酸化反応により、堰赤褐色の発塵が生じ、発塵性も×(不可)となった。