JP5781452B2 - 溶射材料 - Google Patents

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本発明は、例えばコークス炉炭化室のような工業窯炉等の補修に使用する溶射材料に関し、特に、その材料に含まれる金属粉末の酸化反応熱により耐火性粉末を溶融し、補修面に溶着させる溶射材料に関する。
工業窯炉や溶融金属容器等においては、その使用に伴って、耐火物からなる内張り等に損傷が発生する。このような損傷に対しては、適宜、補修が実施される。例えば、製鉄所のコークス炉は、建設してから20年以上のものが多く、特に、炭化室の壁は補修を繰り返しながら操業を継続している。
操業を継続しながら補修を実施する技術として溶射補修法がある。この溶射補修法には、例えば、プラズマ溶射、レーザー溶射、火炎溶射がある。しかしながら、これらの溶射方法には大掛かりな装置が必要である。そのため、近年、比較的簡易な装置で実現可能な、金属の酸化発熱反応を利用した溶射方法も利用されている(例えば、特許文献1〜4参照)。この溶射方法では、金属粉末(燃焼剤)と耐火性粉末の混合物を酸素で搬送し、高熱の補修面に吹き付ける。吹き付けられた混合物は、補修面からの受熱により起こる金属粉末の酸化発熱反応により耐火性組成物を形成するとともに溶融し、補修面に付着する。
例えば、特許文献1は、混合物として溶射する粒体の粒子径を、耐火性粒体(シリマナイト、ムライト、ジルコン、二酸化ケイ素、二酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムなど)の80%および20%粒径の平均が酸化性粒体(シリコン、アルミニウム、マグネシウム、ジルコニウムなど)の80%および20%粒径の平均よりも大きく、耐火性粒体の粒径分布範囲率が1.2以上になるようにした溶射材料を開示している。この溶射材料によれば、信頼性および堅牢性を向上させることができ、高い耐久性を有する耐火性溶着層が実現できるとされている。また、耐火性材料の少なくともいくつかを、ケルビン温度において、温度がその融点の0.7倍を越える前に着火させることで耐火性材料の結晶構造を改善し高品質の溶射耐火性溶着層が形成できるとされている。
また、特許文献2は、耐火性粉末(珪石れんがの2000μm以下の粉砕粉が主成分)と酸化性粉体である金属粉末(金属シリコン)とを含有する溶射材料を開示している。また、特許文献2は、結晶化促進剤としてナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩の1種または複数を溶射材料に対して外掛けで0.3〜5重量%添加すること、および、着火促進剤として、発火点が300〜800℃の炭素系粉末(コークス粉、木炭粉、コーンスターチ粉など)または金属粉末(鉄粉、マンガン粉、バナジウム粉など)を溶射材料に対して外掛けで0.3〜5重量%添加することを開示している。この溶射材料によれば、コークス炉の炭化室に使用されている珪石れんがと補修材の熱膨張率を近似させることができるため、長期間使用時のれんが面からの剥離損耗を抑制できるとされている。また、結晶化促進剤の添加により溶射と同時に結晶化させることができるため、溶射施工完了後の使用中に材料が膨張を伴って結晶化することを防止でき、れんがと補修材の接着強度低下を防止できるとされている。
さらに、特許文献3は、耐火原料粉(マグネシア質粉3〜30質量%、シリカ質粉50〜90質量%)と金属Si粉5〜30質量%を含み、化学成分値で組成全体に占めるMgO成分を1〜25質量%とした溶射材料を開示している。また、特許文献4は、耐火原料粉(CaO含有量75質量%超のカルシア質粉2〜25質量%、シリカ質粉50〜90質量%)と金属Si粉5〜30質量%を含む溶射材料を開示している。これらの技術では、マグネシア質粉やカルシア質粉との反応によってシリカ質粉の溶融が促進され、付着性および接着性が向上するとされている。
特開昭61−275170号公報 特開2006−098029号公報 特開2006−151771号公報 特開2009−120406号公報
上述の溶射材料による補修対象の1つであるコークス炉炭化室は、コークスを押出す際に扉を開閉するため、その扉近くでは、例えば、900℃〜1300℃間で炉内温度が変動する。また、炭化室を補修する際には扉を長時間開放するため、炉内温度が400℃近くまで低下することもある。このような大きな温度変動に曝される部位では、被施工体である炉壁の熱間膨張率と補修に使用される溶射施工体の熱間膨張率が大きく異なると、温度変動によって溶射施工体が炉壁から剥離損耗してしまう。そのため、被施工体である炉壁の熱間膨張率と同等の熱間膨張率を有する溶射施工体を使用することにより耐用性を確保する必要がある。
また、金属の酸化発熱反応を利用した溶射に使用される溶射材料は、金属粉末の酸化により生成される酸化物(結合相)や一部溶融した耐火性粉末がガラス質になっている。このような施工体に含まれるガラス質は、補修施工後の使用中に徐々に結晶化が進行する。この結晶化は膨張を伴うため、施工体が被施工体の補修面から剥離損耗してしまう。そのため、結晶化促進剤を添加し、溶射後速やかに結晶化させることが必要になる。
結晶化を促進するために、溶射材料にアルカリ金属イオン源が添加される。このようなアルカリ金属イオン源には、特許文献2が開示するように、爆発等の危険性のない安全な化合物であり、工業的にも入手が容易なアルカリ金属塩が利用されている。しかしながら、アルカリ金属塩は分解時に吸熱するため、400℃程度に温度が低下した扉付近の補修では、アルカリ金属塩を含む溶射材料では、着火が困難であったり、着火した場合でも燃焼の継続が困難であったりする。その結果、被施工体への溶射材料の付着率が低下し、施工効率が低下するという問題が発生する。また、被施工体表面において溶射材料の燃焼が継続し、結合相が十分に溶融した状態を実現できなければ、溶射層間の一体性が乏しくなるという問題も発生する。
上述した従来の溶射材料は、溶射材料に求められる以上のような特性のすべてを満足できるものではない。すなわち、特許文献1が開示する溶射材料は、酸化性粒体として金属シリコンを使用する場合、当該金属シリコンのみが燃焼材として機能するため、400℃程度に温度が低下した箇所の補修では着火し難く、また燃焼継続性も不足する可能性がある。また、特許文献2が開示する溶射材料は、アルカリ金属塩の分解時の吸熱に起因する着火性や燃焼継続性の低下が発生する。
また、特許文献3および特許文献4が開示する溶射材料は、溶射層間の一体性の向上が期待できるが、被施工体の補修面に溶射した際に生成されるMgO・SiOやCaO・SiOは1000℃以上での熱膨張が大きい。そのため、MgOやCaOの添加により溶射層間の一体性を向上させようとしても、添加量が多量になると十分な耐用性を確保することができなくなる。
本発明は、上記従来の事情を鑑みて提案されたものであって、多量の着火促進剤を添加することなく着火性および燃焼継続性を確保でき、かつ耐用性、溶射層間の一体性、安全性に優れる溶射材料を提供することを目的とする。
本願発明者らは耐用性を維持しつつ、着火促進剤を無添加または少量の添加で、着火性および燃焼継続性を確保する方法を鋭意研究し、本発明に至った。本願発明者らは、耐火性粉末と燃焼剤である金属粉末に、高温下において受熱した際に酸素を供給して燃焼材を酸化させることができる燃焼補助剤を使用することにより着火性と燃焼継続性を維持できることを見出した。また、比較的低温で酸化して燃焼材の酸化反応に必要な初期の熱量を補助する着火促進剤と燃焼補助剤とを併用すると、着火性と燃焼継続性をより好ましく維持できることを見出した。
すなわち、本発明に係る溶射材料は、酸素を搬送ガスとして被施工体に吹付けられ、金属粉末の酸化反応熱により溶融した耐火性粉末を補修面に溶着させることで、珪石れんがからなる被施工体の補修に使用される溶射材料であって、SiO成分の質量割合が90%(SiO純度90%)以上である耐火性粉末を80〜90質量%、金属シリコン粉末を10〜20質量%含む。また、リチウム塩を、耐火性粉末と金属シリコン粉末との全量に対して外掛け、かつ酸化物換算で0.3〜1.0質量%含む。さらに、被施工体に吹き付けられた際の受熱により金属シリコンへの酸素供給源となる金属酸化物の粉末からなる燃焼補助剤を、耐火性粉末と金属シリコン粉末との全量に対して外掛けで0.3〜2.0質量%含む。
上記溶射材料には、アルミニウムを主体とする金属を実質的に含まない金属粉末からなる着火促進剤を、耐火性粉末と金属シリコン粉末との全量に対して外掛けで1.5質量%以下の有限量を、必要に応じてさらに添加することができる。ここで、アルミニウムを主体とする金属は、アルミニウム(Al)やアルミニウム合金等、燃焼によりAl
生成する金属を意味する。また、アルミニウムを主体とする金属を実質的に含まない金属粉末とは、アルミニウムの含有量が15質量%以下、好ましくは4質量%以下の金属粉末である。
また、上記溶射材料には、CaO成分の質量割合が90%(CaO純度90%)以上である酸化カルシウム粉末およびMgO成分の質量割合が90%(MgO純度90%)以上である酸化マグネシウム粉末のうち1種以上を、耐火性粉末と金属シリコン粉末との全量に対して外掛けで合計4.0質量%以下の有限量を、さらに添加してもよい。
さらに、上記溶射材料には、ナトリウム塩、カリウム塩の1種以上を、リチウム塩、ナトリウム塩およびカリウム塩の総量が耐火性粉末と金属シリコン粉末との全量に対して外掛け、かつ酸化物換算で1.7質量%以下として添加することもできる。
以上の溶射材料において、耐火性粉末の最大粒子径が2000μm以下であることが好ましい。
なお、燃焼補助剤は、好ましくは、酸化スカンジウム、酸化チタン、酸化バナジウム、酸化クロム、酸化マンガン、酸化鉄、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化銅からなる群から選択される1種以上の金属酸化物である。また、着火促進剤は、好ましくは、鉄、マンガン、バナジウム、マグネシウム、チタンおよびこれらの合金からなる群から選択される1種以上の金属粉末である。
本発明によれば、着火促進剤を無添加あるいは少量の添加で着火性および燃焼継続性を確保でき、かつ溶射層間の一体性、耐用性および安全性に優れる溶射材料を得ることができる。
本発明に係る溶射材料は、酸素を搬送ガスとして被施工体に吹付けられ、金属粉末の酸化反応熱により溶融した耐火性粉末を補修面に溶着させることで、珪石れんがからなる被施工体の補修に使用される溶射材料であって、SiO成分の質量割合が90%以上である耐火性粉末(骨材)と、金属シリコン粉末(燃焼剤)とを含む。耐火性粉末と金属シリコン粉末との全量100質量%に含まれる耐火性粉末の割合は80〜90質量%(80質量%以上かつ90質量%以下)であり、金属シリコン粉末の割合は10〜20質量%(10質量%以上かつ20質量%以下)である。なお、以下では、耐火性粉末と金属シリコン粉末との混合物を主材料という。また、以下では、主材料の全量は、耐火性粉末と金属シリコン粉末とからなる100質量%の混合物を意味する。
また、本発明に係る溶射材料は、リチウム塩および燃焼補助剤を含む。リチウム塩は、溶射材料の溶射により被施工体に表面に生成された、溶融したシリカを速やかに結晶化させる機能を有する。リチウム塩の添加量は、酸化物(LiO)換算で、主材料の全量に対して外掛けで0.3〜1.0質量%(0.3質量%以上かつ1.0質量%以下)である。燃焼補助剤は、被施工体に吹き付けられた際の受熱に伴って酸素を放出する酸素供給源となる金属酸化物の粉末からなる。燃焼補助剤は、溶射材料の燃焼中に金属シリコン粉末へ酸素を供給して被施工体上で燃焼材である金属シリコン粉末を酸化させる機能を有する。燃焼補助剤の添加量は、主材料の全量に対して外掛けで0.3〜2.0質量%(0.3質量%以上かつ2.0質量%以下)である。
この溶射材料は、被施工体に吹き付けられた際の受熱に伴って、金属シリコン粉末への酸素供給源となる燃焼補助剤を使用した結果、被施工体が比較的低温であっても、着火性と燃焼継続性を確保することが可能である。また、燃焼剤である金属シリコン粉末の着火に必要な初期の熱量を補助する着火促進剤を併用すると、溶射層間の一体性、耐用性および安全性により優れる。以下、各成分についてより詳細に説明する。
(耐火性粉末)
本発明に係る溶射材料では、SiO成分の質量割合が90%以上である耐火性粉末を配合する。この溶射材料は、コークス炉炭化室の内壁等の、珪石れんがからなる被施工体の補修に使用されるため、耐火性粉末のSiO成分が90%未満であると、本溶射材料の溶射により形成された補修施工体の熱間膨張率と被施工体の熱間膨張率との差が大きくなり剥離が発生するからである。耐火性粉末として、珪石れんがの粉砕粉、珪石、珪砂等を使用することができる。特に、補修対象である被施工体の鉱物組成である珪石れんがの粉砕粉が好適に使用することができ、熱間膨張率を調整する目的で溶融シリカなどを添加することもできる。
耐火性粉末の最大粒子径は2000μmであることが好ましく、さらに好ましくは1000μm以下である。最大粒子径が2000μmより大きいと、施工時に大きい粒子が跳ね返るため被施工体への付着が困難となり、溶射効率が低下するからである。
また、耐火性粉末に含まれるAl成分の質量割合は、5%以下であることが好ましい。Al成分は、結晶化の際に異常膨張を引き起こす。そのため、耐火性粉末に含まれるAl成分の質量割合が5%より大きいと剥離損耗を引き起こすためである。加えて、耐火性粉末に不純物として低融点組成物が含まれていると、溶射時に低融点組成物が溶融してガラス化し、このガラスが施工後の使用中に徐々に結晶化し膨張することで剥離損耗を引き起こしてしまう。そのため、耐火性粉末に不純物として含まれる低融点組成物は極力少ないことが好ましい。
(金属シリコン粉末)
本発明に係る溶射材料では、金属シリコン粉末は燃焼剤として機能する。燃焼剤は、燃焼後に酸化物(結合相)になる。本発明では、補修対象である被施工体がシリカ主体である珪石れんがからなるため、燃焼剤として金属シリコン粉末を配合する。主材料の全量100質量%に含まれる金属シリコン粉末の添加量は10〜20質量%であり、好ましくは13〜17質量%(13質量%以上かつ17質量%以下)である。添加量が10質量%より少ないと、燃焼反応が弱くなり燃焼の継続性と被施工体への付着が著しく悪化する。また、添加量が20質量%を超えると、燃焼による発熱量が多く高温になりすぎる。その結果、溶射した材料の粘性が低下して溶射した材料が被施工体から流れ落ちてしまい良好な施工体を得ることができなくなる。金属シリコン粉末に含まれる金属Si成分の質量割合(Si純度)は90%以上であることが好ましい。Si純度が低い場合、シリカの結晶化を阻害するアルミニウムなどの元素が多く含まれることになるため好ましくない。
主材料の全量100質量%に含まれる、75μmより大きい金属シリコン粉末粒子は5質量%以下であり、20μm以下の金属シリコン粉末粒子は3〜14質量%(3質量%以上かつ14質量%以下)であり、他の径(20μmより大きく、かつ75μm以下の粒子)の金属シリコン粉末粒子が残りの量であることが好ましい。より好ましくは、主材料の全量100質量%に含まれる75μmより大きい金属シリコン粉末粒子は3質量%以下であり、20μm以下の金属シリコン粉末粒子は5〜12質量%(5質量%以上かつ12質量%以下)である。粒子径が75μm以上の金属シリコン粉末が5質量%より多くなると、燃焼反応が弱まり燃焼継続性が低下する。粒子径が20μm以下の金属シリコン粉末が3質量%未満である場合も、燃焼反応が弱まり燃焼継続性が低下する。さらに、粒子径が20μm以下の金属シリコン粉末が14質量%を超えると、粉体流動性が低下するため、被施工体までの搬送時に脈動を引き起こして逆火の危険性が大きくなるからである。
(結晶化促進剤)
続いて、結晶化促進剤であるリチウム塩について説明する。上述したように、被施工体上に溶射された溶射材料中では、金属シリコン粉末が酸化されてシリカが生成される。当該シリカは燃焼による高温で溶融状態にあり、その後冷却されると、通常シリカガラスが形成される。シリカガラスは非晶質であるため、補修が完了した被施工体の使用中に高温にさらされることにより、徐々に結晶化が進行する。シリカガラスは結晶化すると体積が膨張するため、当該膨張に起因して施工体が被施工体から剥離してしまう。本溶射材料では、このような膨張に起因する施工体の剥離を回避すべく、溶射後速やか(補修施工後の被施工体の冷却中)にシリカを結晶化させるための結晶化促進剤を添加する。
背景技術で述べたように、従来、アルカリ金属であれば結晶化促進効果を有するとされていたが、本願発明者らは、アルカリ金属の中でもリチウムが、特に効率よく結晶化を促進できることを見出した。すなわち、上述したように、アルカリ金属塩は分解時に吸熱するため、アルカリ金属塩の添加に伴い、着火性や燃焼継続性が低下し、施工体の付着性を低下させる。そのため、着火性や燃焼継続性が低下することのない範囲でアルカリ金属塩を添加し、結晶化促進効果を得る必要があるが、このような条件下では、リチウム塩を採用した場合に顕著な結晶化促進効果が得られたのである。
そこで、本発明では、結晶化促進剤としてリチウム塩を配合している。リチウム塩の添加量は、酸化物(LiO)換算で、主材料の全量に対して外掛けで0.3〜1.0質量%であり、より好ましくは、0.4〜0.7質量%(0.4質量%以上かつ0.7質量%以下)である。添加量が0.3質量%未満であると結晶化促進効果が得られず、添加量が1.0質量%を超えると、分解時の吸熱の作用により、着火性や燃焼継続性が顕著に低下するからである。なお、リチウム塩としては炭酸リチウム、硫酸リチウムなどを好適に使用することができる。
(燃焼補助剤)
本発明に係る溶射材料では、溶射材料の燃焼中に酸素を供給して被施工体上で、燃焼材である金属シリコン粉末を酸化させる機能を有する燃焼補助剤を配合する。燃焼補助剤は、被施工体に付着した際の受熱に伴い酸素を放出する酸素供給源となる金属酸化物の粉末からなる。このような金属酸化物としては、例えば、遷移金属酸化物、特に、第一遷移金属酸化物(酸化スカンジウム、酸化チタン、酸化バナジウム、酸化クロム、酸化マンガン、酸化鉄、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化銅)を好適に使用することができる。これらの金属酸化物は、被施工体に吹き付けられ燃焼する際に自身の酸化数を低下させることで金属シリコンを酸化する。燃焼剤である金属シリコン粉末が酸化されるため、被施工体上での燃焼が継続されることになる。なお、これらの金属酸化物は、単体で添加されてもよく、2種以上が組み合わされて添加されてもよい。金属シリコン粉末を効率よく酸化させる観点では、酸化鉄(Fe)が、金属シリコン粉末が酸化されて生成したシリカガラスに固溶した場合に酸素透過速度を上昇させる効果もあるため特に好適に使用できる。
燃焼補助剤の添加量は、主材料の全量に対して外掛けで0.3〜2.0質量%である。添加量が0.3質量%より少ないと燃焼剤の燃焼継続効果が少なく、2.0質量%より多いとシリカ結晶化を阻害する不純物として作用するため好ましくない。また、金属酸化物粉末の粒子径は100μm以下であることが好ましい。100μmより大きいと反応性が乏しくなり、燃焼の継続性を向上する効果が得られなくなる。
(着火促進剤)
本発明に係る溶射材料では、金属シリコン粉末の酸化反応に必要な初期の熱量を補助する機能を有する着火促進剤を必要に応じて配合する。着火促進剤の添加量は、主材料の全量に対して外掛けで1.5質量%以下である。着火促進剤は、アルミニウムを主体とする金属を実質的に含まない金属粉末からなる。ここでは、着火促進剤は、当該着火促進剤に含まれるアルミニウム(Al)の質量割合が15%以下、好ましくは4%以下の金属粉末からなる。従来、着火促進剤としてアルミニウム粉末やアルミニウム合金粉末が使用されているが、上述したように、アルミニウムを主体とする金属の燃焼によりAlが生成されると、施工体の剥離損耗を引き起こす可能性があり、また、シリカの結晶化も阻害される。本実施形態ではアルミニウムの含有量が15質量%以下の着火促進剤を配合することにより、被施工体温度が800℃以下の比較的低温である場合でも、溶射開始時の着火を促進しつつ、施工体の特性を改善することができる。なお、当該着火促進剤は、アルカリ金属、アルカリ土類金属を実質的に含まないことがより好ましい。
このような金属粉末としては、例えば、鉄粉、マンガン粉、バナジウム粉、マグネシウム粉、チタン粉、あるいはこれらの合金の粉末等を好適に使用することができる。これらの金属粉末は、単体で添加されてもよく、2種以上が組み合わされて添加されてもよい。
着火促進剤の添加量は、主材料の全量に対して外掛けで1.5質量%以下である。1.5質量%より多いとシリカの結晶化を阻害する上、爆発や逆火などの作業上の危険性が高まってしまうため好ましくない。また、金属粉末の粒子径は100μm以下であることが好ましい。100μmより大きいと反応性が乏しくなり、着火促進効果が得られなくなるからである。
(その他の添加物)
上述の各成分に加えて、CaO純度が90%以上である酸化カルシウム粉末、MgO純度が90%以上である酸化マグネシウム粉末の1種以上を、主材料の全量に対して外掛けで4.0質量%以下の有限量を添加してもよい。
溶射施工は、被施工体に溶射材料を吐出するノズルを、被施工面に対して移動(往復動)させながら実施される。そのため、施工体は複数の層が重なったものとして被施工体上に形成される。この場合、各層の一体性が乏しいと、施工体が層間で剥離する等の不具合が発生しやすくなる。CaO純度90%以上の酸化カルシウム粉末、MgO純度90%以上の酸化マグネシウム粉末の1種以上を添加すると、被施工体上で溶融したSiOの粘性を低下させることができ、層間の一体性を向上させることができる。
なお、添加量が4.0質量%を超えると、添加した酸化カルシウム粉末や酸化マグネシウム粉末に起因する結合相の組成変化が大きくなり、珪石れんがとの熱間膨張率の一致が図れなくなるため好ましくない。また、酸化カルシウム粉末、酸化マグネシウム粉末の、粒子径は200μm以下であることが好ましい。粒子径が200μmを超えると結合相となるシリカと反応し難くなり、粘性が低下せず層間の一体性を向上させる効果が期待できなくなるからである。
また、層間の一体性を向上させる観点では、ナトリウム塩、カリウム塩の1種以上を添加してもよい。上述したように、本発明において、ナトリウム塩、カリウム塩の少量の添加による結晶化促進効果は期待できないが、当該添加により、層間の一体性を高めることは可能であった。ただし、上述のように、ナトリウム塩やカリウム塩は、着火性や燃焼継続性の低下を招くため、その添加量は、リチウム塩、ナトリウム塩およびカリウム塩の総量が、主材料の全量に対して外掛け、かつ酸化物(LiO、NaO、KO)換算で1.7質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、1.3質量%以下である。なお、ナトリウム塩、カリウム塩としては炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウムなどを好適に使用することができる。
上記の他、本発明の効果を阻害しない範囲において、流動性改善や鉱物組成の調整を目的として、ヒュームドシリカや、マグネシウム、カルシウム、鉄から選択された元素の酸化物、炭化物、窒化物などを添加することもできる。
以下に実施例および比較例を提示して、本発明の溶射材料を説明する。
表1、表2に示す配合割合で溶射材料を作成し、各溶射材料を使用した溶射施工により形成した施工体を評価した。各溶射材料で使用した耐火性粉末は、SiO純度95%の珪石れんが粉である。当該耐火性粉末に含まれるAl成分の質量割合は2%であった。また、各溶射材料で使用した金属シリコン粉末のSi純度は97%である。なお、耐火性粉末の粒子径および金属シリコン粉末の粒子径も、表1、表2中に示している。表1、表2において、「1000〜2000μm」は、1000μmより大きく、かつ2000μm以下を意味する。「600〜1000μm」は、600μmより大きく、かつ1000μm以下を意味する。「200〜600μm」は、200μmより大きく、かつ600μm以下を意味する。「〜200μm」は、200μm以下を意味する。また、「75μm〜」は、75μmより大きい、を意味する。「20〜75μm」は、20μmより大きく、かつ75μm以下を意味する。「〜20μm」は、20μm以下を意味する。
また、結晶化促進剤として、硫酸リチウム一水和物を使用し、着火促進剤として、粒子径が100μm以下の鉄粉を使用した。燃焼補助剤は、粒子径が100μm以下である酸化第二鉄(酸化鉄(III))粉末である。酸化カルシウム粉末のCaO純度は95%であり、粒子径は75μm以下である。また、酸化マグネシウム粉末のMgO純度は97%であり、粒子径は150μm以下である。ナトリウム塩、カリウム塩としては、それぞれ、硫酸ナトリウム、硫酸カリウムを使用した。
溶射施工は、各溶射材2kgを、溶射装置のスクリューフィーダーで切り出し、被施工体に吹き付けることで実施した。搬送ガスは純度100%の酸素とした。材料供給速度は70kg/hである。被施工体とノズル先端との間の距離は150mmとし、被施工体に対するノズル走査速度は30mm/sとした。ここでは、各溶射材料による施工体の形成のみを目的としているため、表面温度が500〜600℃のシャモットれんが(耐火度SK36)を被施工体にしている。
各溶射材料による施工体について、溶射作業性(着火性、燃焼継続性、付着率)、施工体物性(珪石れんがとの熱間膨張率の一致、溶射層間の一体性)の試験を実施して、表1、表2中に記載した。表中の「◎」、「○」、「×」、「−」の記号は、各項目についての評価結果を示している。以下、各試験項目について簡単に説明する。
着火性は、溶射施工開始時の着火性を、目視観察により評価した。「◎」は、速やかに着火し材料が付着し始めたことを示し、「○」は、数秒で着火し材料が付着し始めたことを示し、「×」は、着火しないことを示している。燃焼継続性は、溶射施工時の燃焼継続性を、目視観察により評価した。「◎」は、失火の気配がなく強い光を発しながら燃焼が継続したことを示し、「○」は、失火の気配がないもののやや弱い光を発しながら燃焼が継続したことを示し、「−」は着火しなかったために評価できなかったことを示している。付着率は、溶射試験後に被施工体に付着した材料を採取して重量を測定し、ノズルから吐出した溶射材料の重量に対する当該付着質量の割合を算出している。珪石れんがとの熱膨張の一致は、施工体が冷えた状態で、施工体から円柱状の試料を切り出して当該試料の熱間線膨張率を測定し、当該熱間線膨張率と珪石れんがの熱間線膨張率とを400〜1300℃の範囲で比較し、その乖離具合をもって評価した。「○」は、実用上問題のない程度に一致することを示し、「×」は、乖離することを示し、「−」は着火しなかったために施工体が得られずに評価できなかったことを示している。溶射層間の一体性は、溶射施工後に、施工体が付着した被施工体を切断し、その切断面を目視観察することにより溶射層間の一体性を評価した。「○」は、溶射層間が不明確で一体性があることを示し、「−」は着火しなかったために施工体が得られずに評価できなかったことを示している。
Figure 0005781452
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表1に示す各実施例は、耐火性粉末、金属シリコン粉末、結晶化促進剤、燃焼補助剤、さらに適宜、着火促進剤、酸化マグネシウム粉末、酸化カルシウム粉末を使用し、燃焼補助剤である酸化第二鉄を外掛けで0.3〜2.0質量%添加した配合である。
表1において、実施例1、2および12〜17は、耐火性粉末を、「600〜1000μm」の粒子径を有する珪石れんが粉を0.5質量%、「200〜600μm」の粒子径を有する珪石れんが粉を56.5質量%、「〜200μm」の粒子径を有する珪石れんが粉を28.0質量%の配合としている。また、金属シリコン粉末を、「75μm〜」の粒子径を0.2質量%、「20〜75μm」の粒子径を2.8質量%、「〜20μm」の粒子径を12.0質量%の配合としている。
実施例1は、耐火性粉末、金属シリコン粉末、結晶化促進剤、燃焼補助剤および酸化マグネシウム粉末を使用し、燃焼補助剤である酸化第二鉄を外掛けで2.00質量%添加した配合である。実施例13、14は、実施例1の配合において燃焼補助剤である酸化第二鉄の配合を外掛けで1.00質量%に減量するとともに、酸化マグネシウム粉末に代えて酸化カルシウムを使用している。また、実施例2は、実施例1の配合において燃焼補助剤である酸化第二鉄の配合を外掛けで1.50質量%に減量するとともに、着火促進剤である鉄粉を外掛けで0.20質量%添加している。実施例12、15は、実施例2の配合において酸化第二鉄の配合を外掛けで1.00質量%に減量するとともに、酸化マグネシウム粉末に代えて酸化カルシウムを使用している。実施例16、17は、実施例12の配合からさらに着火促進剤である鉄粉を増量するとともに、燃焼補助剤である酸化第二鉄の配合を減量している。表1に示すように、これらの各実施例では、着火性、燃焼継続性、付着率、珪石れんがとの熱膨張の一致、溶射層間の一体性の全評価項目において、良好な結果が得られた。特に、燃焼補助剤と着火促進剤を併用する実施例2、12、15〜17では、着火性、燃焼継続性において、より良好な結果が得られた。
このように、施工体上で酸素を供給し金属シリコン粉末を酸化させることができる燃焼補助剤を適量添加することにより、着火性と燃焼継続性に優れた溶射材料を実現できる。また、比較的低温で酸化し、金属シリコン粉末の酸化反応に必要な初期の熱量を補助する着火促進剤を併用することで、より効果が得られる。
表1において、実施例3〜11は、実施例1、2および12〜17に比べて粒子径の大きな珪石れんが粉の配合比率を高めるとともに、着火促進剤を併用した実施例である。実施例3は、耐火性粉末、金属シリコン粉末、結晶化促進剤、着火促進剤、燃焼補助剤および酸化マグネシウム粉末を使用し、着火促進剤である鉄粉を外掛けで0.20質量%、燃焼補助剤である酸化第二鉄を外掛けで0.60質量%添加している。上述のように、燃焼補助剤と着火促進剤とを併用すると、着火性、燃焼継続性が向上する。そのため、この実施例では、燃焼補助剤である酸化第二鉄を実施例2の配合に比べて、より減量している。表1に示すように、着火性、燃焼継続性、付着率、珪石れんがとの熱膨張の一致、溶射層間の一体性の全評価項目において、良好な結果が得られた。なお、実施例3では、実施例2に比べて粒子径の大きな金属シリコン粉末の配合比率を高めているため、燃焼継続性の評価において実施例2に比べて発する光が弱くなっているが、結果としては良好である。
実施例4および実施例5は、実施例3の配合において、耐火性粉末である珪石れんが粉と、燃焼剤である金属シリコン粉末との配合比率を変更している。実施例4は、珪石れんが粉を90質量%にし、金属シリコン粉末を10質量%にしている。また、金属シリコン粉末比率の減少に起因する燃焼性の低下を補うため、実施例4では、鉄粉および酸化第二鉄の添加量を、それぞれ0.50質量%、1.50質量%に増量している。一方、実施例5は、珪石れんが粉を80質量%にし、金属シリコン粉末を20質量%にしている。また、金属シリコン粉末比率の増大に起因して燃焼が不要に激しくなることを避けるため、実施例5では、鉄粉および酸化第二鉄の添加量を、それぞれ0.10質量%、0.30質量%に減量している。これらの配合においても、全評価項目において、良好な結果が得られた。
実施例6および実施例7は、実施例3の配合において、珪石れんが粉の粒子径の配合比率を変更している。実施例6は、「1000〜2000μm」の粒子径を有する珪石れんが粉を15.0質量%、「600〜1000μm」の粒子径を有する珪石れんが粉を35.0質量%、「200〜600μm」の粒子径を有する珪石れんが粉を35.0質量%とした配合である。また、実施例7は、「600〜1000μm」の粒子径を有する珪石れんが粉を47.5質量%、「200〜600μm」の粒子径を有する珪石れんが粉を37.0質量%、「〜200μm」の粒子径を有する珪石れんが粉を0.5質量%とした配合である。実施例7では、結晶化促進剤であるリチウム塩の添加量を酸化物換算かつ外掛けで0.89質量%に増量している。また、リチウム塩の増量に起因する着火性の低下を補うため、実施例7では、鉄粉および酸化第二鉄の添加量を増量している。これらの配合においても、全評価項目において、良好な結果が得られた。
実施例8〜実施例11は、その他の添加剤である、酸化カルシウム粉末、酸化マグネシウム粉末、硫酸ナトリウム、硫酸カリウムの配合比率を変更している。これらの配合においても、全評価項目において良好な結果が得られた。これらの添加物の配合比率を変更することで、耐火性粉末、金属シリコン粉末、結晶化促進剤、着火促進剤および燃焼補助剤の配合比率を変更した結果、溶射層間の一体性が乏しい状況が仮に発生したとしても、一体性を向上させることができる。
以上のように、本発明では、耐火性粉末、金属シリコン粉末、結晶化促進剤、着火促進剤、燃焼補助剤、およびその他の添加剤の純度、粒子径、添加量などを最適に調整したことにより、各原料の特性を活かしつつ欠点を補うことができる。その結果、多量の着火促進剤を添加することなく着火性および燃焼継続性を確保し、かつ溶射層間の一体性、耐用性および安全性に優れる溶射材料を得ることができる。
比較例1および比較例2は、実施例3の配合について、珪石れんが粉と金属シリコン粉末との配合比率を変更している。比較例1は、珪石れんが粉を95質量%にし、金属シリコン粉末を5質量%にしている。また、金属シリコン粉末比率の減少に起因する燃焼性の低下を補うため、鉄粉および酸化第二鉄の添加量を、それぞれ0.50質量%、1.50質量%に増量している。また、比較例2は、珪石れんが粉を75質量%にし、金属シリコン粉末を25質量%にしている。比較例1では、着火性と燃焼継続性が著しく損なわれて施工することができなかった。また、比較例2では、燃焼が激しく、施工体が被施工体から流れ落ちる結果、付着率が著しく低下した。
比較例3〜5は、実施例3の配合について、鉄粉を添加しない配合にするとともに、酸化第二鉄の添加量をそれぞれ0質量%、0.10質量%、3.00質量%にしている。比較例3および4では、着火促進剤である鉄粉が添加されておらず、また、燃焼補助剤の添加量も適量より少ないため、着火性が悪く施工することができなかった。比較例5では、燃焼補助剤を多量に添加することで着火性を改善し施工ができたもの、結晶化不足に起因する珪石れんがとの熱膨張の一致の評価項目について満足できる結果は得られなかった。
比較例6では、比較例2〜5の配合について、鉄粉および酸化第二鉄の添加量を、それぞれ0.50質量%、2.00質量%にするとともに、結晶化不足を解消するために硫酸リチウムを2.0質量%に増量している。しかしながら、着火性が悪く施工することができなかった。また、比較例7では、比較例6の配合について、着火性改善のため、MgOを減量するとともに着火を阻害する硫酸リチウムを1.5質量%まで減量している。しかしながら、着火性が悪く施工することができなかった。
以上の結果より、耐火性粉末(シリカ系)と金属シリコン粉末に、被施工体に吹き付けられた際の受熱により酸素供給源となる燃焼補助剤を使用することにより、着火性と燃焼継続性に優れ、耐用性と安全性に優れる溶射材料を実現できる。さらに、燃焼補助剤に加えて、比較的低温で酸化し、金属シリコン粉末の酸化反応に必要な初期の熱量を補助する着火促進剤を使用すると、より着火性と燃焼継続性に優れ、耐用性と安全性に優れる溶射材料を実現できる。
本発明に係る溶射材料は、着火性および燃焼継続性に優れるとともに、耐用性と安全性に優れるため、コークス炉炭化室の補修等に使用する溶射部材として有用である。

Claims (6)

  1. 酸素を搬送ガスとして被施工体に吹付けられ、金属粉末の酸化反応熱により溶融した耐火性粉末を補修面に溶着させることで、珪石れんがからなる前記被施工体の補修に使用される溶射材料であって、
    SiO2成分の質量割合が90%以上である耐火性粉末を、80〜90質量%、
    金属シリコン粉末を、10〜20質量%、
    リチウム塩を、前記耐火性粉末と前記金属シリコン粉末との全量に対して外掛け、かつ酸化物換算で0.3〜1.0質量%、
    金属酸化物の粉末からなり、受熱した際に金属シリコンへの酸素供給源となる酸化スカンジウム、酸化チタン、酸化バナジウム、酸化クロム、酸化鉄、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化銅からなる群から選択される1種以上の金属酸化物からなる燃焼補助剤を、前記耐火性粉末と前記金属シリコン粉末との全量に対して外掛けで0.3〜2.0質量%、
    を含むことを特徴とする溶射材料。
  2. アルミニウムを主体とする金属を実質的に含まない金属粉末からなる着火促進剤を、前記耐火性粉末と前記金属シリコン粉末との全量に対して外掛けで1.5質量%以下の有限量を添加した請求項1に記載の溶射材料。
  3. CaO純度が90%以上である酸化カルシウム粉末およびMgO純度が90%以上である酸化マグネシウム粉末のうち1種以上を、前記耐火性粉末と前記金属シリコン粉末との全量に対して外掛けで合計4.0質量%以下の有限量を添加した請求項1または請求項2に記載の溶射材料。
  4. ナトリウム塩、カリウム塩の1種以上を、前記リチウム塩、ナトリウム塩およびカリウム塩の総量が前記耐火性粉末と前記金属シリコン粉末との全量に対して外掛け、かつ酸化物換算で1.7質量%以下として添加した請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の溶射材料。
  5. 前記耐火性粉末の最大粒子径が2000μm以下である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の溶射材料。
  6. 前記着火促進剤は、鉄、マンガン、バナジウム、マグネシウム、チタン、およびこれらの合金からなる群から選択される1種以上の金属粉末である、請求項2に記載の溶射材料。
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