JP5655380B2 - 硬化性樹脂積層用二軸延伸ポリエステルフィルム - Google Patents

硬化性樹脂積層用二軸延伸ポリエステルフィルム Download PDF

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Description

本発明は、硬化性樹脂を積層する基材フィルムに好適な二軸延伸ポリエステルフィルムを提供する。詳しくは、優れた平面性と優れた加熱白化防止性を有する硬化性樹脂積層体の基材フィルムに適した二軸延伸ポリエステルフィルムに関する。
ポリエチレンテレフタレート系樹脂よりなる二軸延伸ポリエステルフィルムは、優れた透明性、寸法安定性、耐薬品性から、各種積層体の基材フィルムとして利用されている。特に、硬化性樹脂を積層する基材フィルム等の用途には、優れた強度、寸法安定性が要求されるため、比較的厚手のフィルムが用いられている。
このような硬化性樹脂としては、乾燥、熱、化学反応により硬化反応が起こる熱硬化性樹脂や、電子線、放射線、紫外線などの照射により硬化反応が起こる電離放射線硬化型樹脂がある。硬化性樹脂としては、アクリレート系、メラミン系、アクリル系、シリコン系などの硬化性樹脂が用いられる。
上記のような硬化性樹脂積層体としては、ハードコートフィルムや液晶表示装置の用いられる反射板や拡散シート、レンズシート、太陽電池用保護シートなどが挙げられる(特許文献1など)。このような分野では光学設計の高度化により高い面精度が要求される。しかしながら、上記のように硬化性樹脂からなる層を設けることにより、硬化性収縮が生じるため、硬化性樹脂の積層面側に反りが生じる場合という問題があった。
そこで、これまで硬化性樹脂の硬化性収縮による反りの発生を低減する方法として、以下のような提案がなされている。(1)反りを低減できるような特殊な樹脂型を用いること(特許文献2)、(2)反りが生じにくい特殊な硬化性樹脂を用いること(特許文献3)、(3)反りを抑制するような特別な支持体を設けること(特許文献4)。
さらに、近年、硬化性樹脂の種類が多様化するにつれ、フィルムの加工条件、使用条件も多様化し、例えば、加熱加工時のフィルム表面へのオリゴマー析出は、光学用途等の高度に透明性が要求される場合に大きな問題となっている。
そこでポリエステルフィルム中オリゴマーを低減させるため、固相重合法によりポリエステル原料のオリゴマー量を提言することが提案されている(特許文献5〜8)。
特開2003−188394号公報 特開2008―221643号公報 特開2008―281614号公報 特開2009−48152号公報 特開平9−99530号公報 特開2000−141570号公報 特開2003−191413号公報 特開2003−301057号公報
上記の方法は硬化性樹脂積層体の反りの低減に一定の成果がある。しかしながら、特許文献3や特許文献4では、硬化性樹脂の選択や積層体の層構成に制限が生じる問題があり、また、特許文献2では、硬化性樹脂層の構造に制限が生じる問題がある。そのため、より高い生産性を求める為には、従前の硬化性樹脂および層構成を有しながら、かつ、反りの低減を図ることが求められた。
また、特許文献1〜4に提案の方法では、これらではオリゴマー量の低減が図れるものの、フィルム溶融製膜での熱履歴により副生成物としてオリゴマーが生成することは避けられなかった。
本発明は、硬化性樹脂を積層する基材フィルムに好適な二軸延伸ポリエステルフィルムを提供する。詳しくは、優れた平面性と加熱加工後の透明性に優れ、オリゴマーの析出が少ないフィルム、および低オリゴマー性に優れた硬化性樹脂積層体の基材フィルムに適した二軸延伸ポリエステルフィルムに関する。
前記課題を解決することができる、本発明における第1の発明は、ポリエチレンテレフタレート系樹脂よりなる二軸延伸ポリエステルフィルムであって、
下記要件(1)〜(6)を満たす硬化性樹脂積層用二軸延伸ポリエステルフィルムである。
(1)170℃、20分間加熱したときのフィルムヘイズ変化量△Hz(△Hz=加熱後ヘイズ−加熱前ヘイズ)が1.0未満
(2)ヒドロキシル(OH)末端量が70eq/ton以下
(3)環状三量体含有量が0.45質量%以下
(4)厚みが30〜500μmであること
(5)面配向度ΔPが、0.150〜0.180であること
(6)下記方法により求めた表面軸配向度YmaxもしくはYminの少なくともいずれかの表裏の比が、0.80〜0.98であること
(表面軸配向度の表裏の比)
フィルム試料について、偏光ATR法により波長1340cm−1付近の吸光度A1340と波長1410cm−1付近の吸光度A1410を求め、下記式で表される比Yを求める。最初に測定した点を起点としてフィルム試料を10°毎に面内回転させ、0°〜170°の範囲でそれぞれ同様に測定する。得られた18点の中での最大値および最小値を表面軸配向度Ymax、Yminとする。係る表面軸配向度Ymax、Yminをフィルム試料の表裏で測定し、表裏いずれか大きい方の値を分母として表面軸配向度YmaxおよびYminの表裏の比を求める。
Y=A1340/A1410
本発明における第2の発明は、前記硬化性樹脂積層用二軸延伸ポリエステルフィルムの少なくとも片面に被覆層を有する被覆層付き硬化性樹脂積層用二軸延伸ポリエステルフィルムであって、前記被覆層は、共重合ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂及びポリウレタン系樹脂の内、少なくとも1種を主成分とする、被覆層付き硬化性樹脂積層用二軸延伸ポリエステルフィルムである。
本発明における第3の発明は、前記硬化性樹脂積層用二軸延伸ポリエステルフィルムを基材フィルムとして硬化性樹脂層を有する硬化性樹脂積層体である。
本発明における第4の発明は、前記被覆層付き硬化性樹脂硬化性樹脂積層用二軸延伸ポリエステルフィルムを基材フィルムとして硬化性樹脂層を有する硬化性樹脂積層体である。
本発明における第5の発明は、前記ポリエチレンテレフタレートフィルムの製造方法であって、下記要件(7)〜(10)を満たすポリエチレンテレフタレート樹脂を用いたポリエチレンテレフタレートフィルムの製造方法である。
(7)ジカルボン酸成分とグリコール成分との重縮合反応によって得られた固有粘度が0.50〜0.70dl/gの粗製ポリエステルを、含水量が3.5〜30.0g/Nmである調湿不活性ガスを、粗製ポリエステル1kg当たり毎時1リットル以上、10,000リットル以下の流量で流通させる。
(8)190℃〜260℃で加熱処理を行う。
(9)ポリエステルの極限粘度の変化が下記式を満足するように加熱処理を行う。
−0.05dl/g≦(加熱処理前の極限粘度−加熱処理後の極限粘度
≦0.05dl/g
本発明の硬化性樹脂積層用二軸延伸ポリエステルフィルムは、オリゴマーの析出が少なく、硬化性樹脂積層体の基材フィルムとした際に、平面性が良好である。
よって、ハードコートフィルムや液晶表示装置の用いられる反射板や拡散シート、レンズシートなどといった高い面精度が求められる用途に好適である。好ましい実施態様として、収縮性の異なる、もしくは収縮性を有する素材を、積層、もしくは張り合わせても、積層体全体としての平面性が良好である。
また、加熱加工後の透明性に優れ、環状三量体の析出が少ない機能を有する。そのため、高温での後加工処理が可能で、且つ、製膜工程内の汚染も少ないことからフィルム自体の欠点も少ないため、高品位が必要とされる光学用途をはじめとした工業用途において好適である。
本発明に使用されるポリエステルフィルムは、機械的強度、耐薬品性、耐熱性などの点から、ポリエチレンテレフタレート系樹脂よりなる二軸延伸ポリエステルフィルムである必要がある。
本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムを170℃、20分間加熱したときのフィルムヘイズ変化量△Hz(△Hz=加熱後ヘイズ−加熱前ヘイズ)は0.5未満である必要がある。△Hzが0.5以上である場合には、フィルムの後加工工程においてオリゴマーが析出し、工程を汚染する場合がある。逆に、△Hzが0.5未満である場合は、後加工での熱処理においても加熱白化が抑制され、光学用途などにおいても好適に用いることができる。発明における好ましい△Hzの上限は0.3であり、より好ましくは0.1である。△Hzは小さいことが好ましいく、△Hzの下限は0である。
本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムのヒドロキシル(OH)末端量は70eq/ton以下であることが重要である。本発明のポリエステルフィルムはヒドロキシル(OH)末端量が上記範囲に低減されることから、環状三量体の生成を好適に低減することができる。そのため、フィルム製膜時の溶融工程における環状三量体の再生を抑制することができ、フィルム原料の低オリゴマー量を好適に保持しやすい。上記ヒドロキシル(OH)末端量は68eq/ton以下がより好ましく、65eq/ton以下がよりさらに好ましい。上記ヒドロキシル(OH)末端量は少ないことが好ましいが、少なすぎる場合はポリエステル樹脂の加水分解が生じやすくなる。よって、フィルムの耐久性の点からは、上記ヒドロキシル(OH)末端量の下限は40eq/ton以上が好ましく、50eq/ton以上がより好ましい。本発明はポリエステル樹脂中のヒドロキシル(OH)末端のオリゴマー再生に及ぼす影響を見出したことが重要であり、ポリエステルフィルムのヒドキシル(OH)末端量を制御する方法は特に問わないが、フィルム原料を水雰囲気下で熱処理を施すことにより好適にヒドキシル(OH)末端量を制御することができる。
本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムの環状三量体含有量は0.45質量%以下である必要がある。環状三量体含有量が0.45質量%以上である場合には、フィルム製膜工程においてオリゴマーが析出し、加熱白化が生じやすくなったり、フィルム製膜工程や後工程を汚染する場合がある。ポリエステルフィルムの環状三量体量を上記範囲にするためには、ポリエステル原料に熱処理などを施すことが好ましいが、本発明ではヒドロキシル(OH)末端量を低減させることにより、フィルム中の環状三量体量を上記範囲に好適に低減することができる。本発明における好ましい環状三量体含有量の上限は0.40質量%である。環状三量体量は少ないことが好ましいが、生産性の点を考えると、上記環状三量体量の下限は0.05質量%が好ましく、0.10質量%がより好ましく、0.20質量%よりさらに好ましい。
本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムの固有粘度は、0.40dl/gから0.68dl/gの範囲が好ましい。固有粘度が0.40dl/gよりも低いと、フィルムが裂けやすくなり、0.70dl/gより大きいと濾圧上昇が大きくなって高精度濾過が困難となる。PETの固有粘度の上限は0.65dl/gが好ましく、0.63dl/gがより好ましい。さらに、上記下限は0.50dl/gが好ましく、0.55dl/gがより好ましい。
ポリエチレンテレフタレート(以下、単にPETという)の重合法としては、テレフタル酸とエチレングリコール、および必要に応じて他のジカルボン酸成分およびジオール成分を直接反応させる直接重合法、およびテレフタル酸のジメチルエステル(必要に応じて他のジカルボン酸のメチルエステルを含む)とエチレングリコール(必要に応じて他のジオール成分を含む)とをエステル交換反応させるエステル交換法等の任意の製造方法が利用され得る。
また、前記ポリエステルの固有粘度は、0.45dl/gから0.70dl/gの範囲が好ましい。固有粘度が0.45dl/gよりも低いと、フィルムが裂けやすくなり、0.70dl/gより大きいと濾圧上昇が大きくなって高精度濾過が困難となる。PETの固有粘度の上限は0.68dl/gが好ましく、0.65dl/gがより好ましい。さらに、上記下限は0.48dl/gが好ましく、0.50dl/gがより好ましい。
粗製ポリエステル調製時の触媒として、従来公知のMn、Mg、Ca、Ti、Ge、Al、Sb、Co化合物、リン化合物、アンチモン化合物などが使用される。ポリエステル溶融時にオリゴマーの再生を抑制する方法として触媒を失活させる方法が提案されているが、本発明では係る工程を経ることなく好適にオリゴマーの再生を抑制することができる。なお、ここで「粗製ポリエステル」とは後述の熱処理前のポリエステルを区分して表現するものである。
上記ジカルボン酸成分とグリコール成分とを含む組成物には、ポリエステルの最終用途に応じて、安定剤、顔料、染料、核剤、充填剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、抗菌剤、帯電防止剤、滑剤、離型剤などの添加剤が含有され得る。
次に、得られた粗製ポリエステルをシートカット法、ストランドカット法などにより、適宜、チップ状(例えば、円柱状)、粒子状などに成形する。例えば、チップの成形は、粗製ポリエステルの溶融体をギヤーポンプでダイスから押出しストランドを形成し、このストランドをカッターで切断して、長軸×短軸×長さが約2.2×3.1×3.4mmの楕円柱状のチップを成形する。係るチップ形状に成型することにより、後述の熱処理により好適にフィルム原料のオリゴマー量の低減を図りつつ、チップ内部まで調湿効果を好適に及ぼすことができる。
ポリエステルのヒドロキシル(OH)末端量を低減させる方法としては、ポリエステルの分子量を大きくして単位当たりの末端量を低減させる方法や、原料チップを水飽和させる方法などが挙げられる。なかでも、本発明ではフィルム原料となる粗製ポリエステルを水雰囲気下で熱処理を施すことにより、オリゴマー含有量を好適に低減させるとともに、ヒドロキシル(OH)末端量を好適に低減させることができるので好ましい。係る熱処理は、水含有の湿調不活性ガスの流量下で190〜260℃での高温の熱処理を施すことを特徴とする。熱処理を不活性ガスの流量下で行うことにより、PET固有粘度を必要以上に上昇させることなく、好適にオリゴマーの低減を図ることができる。この点が従来の固相重合と相違する点である。また、従来、バッチ法で行なわれる固相重合法と異なり、流量下で連続的に処理ができる点で生産性にも優れる。
さらに、係る熱処理を所定の水雰囲気下で行うことにより、ポリエステル樹脂中のヒドロキシル(OH)末端量を好適に低減させることができる。水雰囲気下でヒドロキシル(OH)末端量が低減する理由については、以下のように考えている。すなわち、加熱処理によりヒドロキシル(OH)末端同士が脱エチレングリコール反応により結合し、ヒドロキシル(OH)末端が消費される。一方、水雰囲気下によりエステル反応の逆反応が生じ、ポリエステル分子量が低減し、新たな分子鎖末端が生じる。これらの反応が混合して生じるため、結果としてヒドロキシル(OH)末端が低減することになると考えられる。
以下に、本発明における粗製ポリエステルの熱処理条件について詳細に述べる。
熱処理においては不活性ガス中の含水量は好ましくは3.5〜30.0g/Nmであり、より好ましくは4.0〜20.0g/Nmである。調湿不活性ガス中の含水量が3.5g/Nm未満の場合には、得られるポリエステルの固有粘度の上昇が著しい。調湿不活性ガス中の含水量が過剰である場合には、加水分解反応が起こり、得られるポリエステルの固有粘度が低下するおそれがある。
不活性ガスとしては、ポリエステルに対して不活性なガスが用いられ、例えば、窒素ガス、炭酸ガス、ヘリウムガスなどが挙げられる。特に、窒素ガスが安価であるため好ましい。
加熱処理装置としては、上記粗製ポリエステルと不活性ガスとを均一に接触し得る装置が望ましい。このような加熱処理装置としては、例えば、静置型乾燥機、回転型乾燥機、流動床型乾燥機、攪拌翼を有する乾燥機などが挙げられる。
また、熱処理を実施する前にポリエステルの水分は適度に除去しておくことと、熱処理時におけるポリマー同士の融着を防止するためにもポリマーを一部結晶化させておくのがより好ましい。
熱処理において、加熱処理温度は好ましくは190℃〜260℃であり、より好ましくは200℃〜250℃である。加熱処理温度が190℃未満の場合には、粗製ポリエステル中のオリゴマーの減少速度が小さくなる場合がある。加熱処理温度がポリエステルの融点を越える温度の場合には、ポリエステルが融解してしまい、接着が起こりやすい。そのため、得られるポリエステルを加熱処理装置から取り出すことが困難となり、また、成形操作も困難となる場合がある。
加熱処理時間は、通常、1〜70時間が好ましく、さらに好ましくは2〜60時間、さらに好ましくは、4〜50時間である。1時間未満の場合には、粗製ポリエステル中のオリゴマーが充分に減少せず、70時間を越える場合には、粗製ポリエステル中のオリゴマーの減少速度が小さく、逆に熱劣化などの問題が生じるおそれがあり、色調が損なわれる。
不活性気体の流量は、ポリエステルの固有粘度と密接な関係がある。また、調湿不活性気体中に含まれる含水量もポリエステルの固有粘度の変化に影響する。そのため、不活性気体の流量は、含水量および所望のポリエステルの固有粘度、加熱処理温度などに応じて適宜選択されるべきである。
例えば、調湿不活性気体の含水量が高い場合、水による加水分解などの悪影響を回避するために、流量は多くすることが好ましい。また、加熱処理温度を高温とする場合、ポリエステルの固有粘度の上昇を抑制するために、不活性気体の流量は少なくすることが好ましい。
不活性気体の流量は、好ましくはポリエステル1kg当たり毎時1リットル以上、より好ましくは5リットル以上である。不活性気体の流量がポリエステル1kg当たり毎時1リットルより少ない場合には、酸素の混入などにより、得られる樹脂が黄色味を帯びるなどの悪影響が生じるおそれがある。不活性気体の流量の上限は、不活性気体中に含まれる含水量および加熱処理温度によって決定されるが、ポリエステル1kg当たり毎時10,000リットル以下、好ましくは5,000リットル以下、さらに好ましくは2,000リットル以下である。不活性気体の流量を、10,000リットル以上としても、本発明の目的から逸脱するようなことはないが、経済的な面を考慮すれば、むやみに流量を多くする必要はない。
本発明の熱処理は、常圧から微加圧状態下で不活性ガスを流通させながら、加熱処理することにより実施される。
この場合、加圧は、加熱処理中に大気中の水分や酸素が反応機に混入するのを抑制することが目的であるから、加圧条件は5.0kg/cm以下で充分である。加圧条件が5.0kg/cmを越える場合でも、本発明の目的を逸脱することはないが、設備にコストがかかるため、必要以上に圧力を高くすることは意味がない。
さらに、色調の面から流通させる不活性ガス中の酸素濃度は、50ppm以下、好ましくは25ppm以下が必要である。酸素濃度が50ppm以上では、本発明のポリエステルの劣化による色調悪化、具体的には黄変が激しく製品品質上問題となる。
このようにして得られたポリエステルは、好適には次式を満たす。
−0.05dl/g≦加熱処理前の極限粘度−加熱処理後の極限粘度≦0.05dl/g
これらの処理によって、加熱処理後のポリエステル組成物の固有粘度(B)は0.50dl/g以上、0.70dl/g以下が好ましく、さらに加熱処理前のポリエステル組成物(粗製ポリエステル)の固有粘度(A)との間に、−0.05dl/g≦{(A)−(B)}≦0.05dl/gを満足することが好ましく、さらに、−0.02dl/g≦{(A)−(B)}≦0.02dl/gを満足することが好ましい。加熱処理後の固有粘度(B)を0.50dl/g以上とすることで製膜時の膜破れなどの発生が軽減され有利である。また、0.70dl/g以下とすることで、溶融成形時の剪断発熱で温度が上昇するのを軽減でき、製品中のオリゴマー量を抑えるのに有利である。
また、−0.05dl/g≦{(A)−(B)}≦0.05dl/gを満足することで、フィルム成形時の不必要な温度上昇が無く、ポリエステルのオリゴマー量が少なく色調の良好なフィルムが得られる他、加熱処理前のポリエステル組成物(粗製ポリエステル)に関して、特別に低粘度又は高粘度の銘柄を新たに設ける必要が無く、他の製品として利用可能な既存のポリマーを用いてオリゴマー量を低くすることが可能となり、経済的に有利である。
また、加熱処理後のポリエステル組成物の環状三量体の含有量は0.4質量%以下とする必要がある。さらに好ましくは0.35質量%である。0.4質量%を超える場合は、フィルム成形時にオリゴマーが再生し、フィルム製造時やフィルム加工工程でオリゴマーがフィルム表面に析出して工程を汚しフィルム製品欠点となるなどの問題を生じる場合がある。
さらに、加熱処理後のポリエステル組成物のヒドロキシル(OH)末端量は65eq/ton以下である必要がある。ヒドロキシル(OH)末端量が低いほど、ポリエステル原料のフィルム化工程における溶融押出し時のオリゴマー再生成を抑制できる。60eq/ton以下がさらに好ましい。
上記態様に加え、本発明者は、硬化性樹脂積層体の面精度保持について鋭意検討を行なった結果、基材とする二軸延伸ポリエステルフィルムの表裏に特定の配向差を設けることで、基材フィルムとしても硬化性樹脂積層体としても良好な面精度を保持しうることを見出した。すなわち、本発明はフィルム表裏における表面軸配向度の比が特定範囲の二軸延伸ポリエステルフィルムであることを特徴とする。
フィルム表裏に配向差を設けることで、硬化性樹脂を積層した際に良好な面精度が保持される機構については以下のように考えている。
硬化性樹脂積層体の作製に際して、基材フィルムに硬化性樹脂組成物を塗布、積層した後、熱もしくは紫外線などの電離照射線を照射して硬化性樹脂を硬化させる。硬化反応の進行により硬化性樹脂に硬化収縮が生じ、硬化性樹脂積層面側で面方向に収縮する力が発生する。この際、基材フィルムの表裏に配向差があることにより、片面に生じる力と拮抗しうる。加えて、基材フィルムが熱もしくは紫外線などの電離照射線の照射により加熱される際に、フィルム表裏の配向差により表裏の収縮のアンバランス化が発生し、フィルムに反る力が生じる。これが硬化性樹脂の硬化収縮による力作用と表裏で拮抗することで、硬化性樹脂積層体として良好な面精度が保持される。
本発明のフィルムは、ポリエチレンテレフタレート系樹脂よりなり、係るフィルムの表裏の配向差は、表面軸配向度YmaxもしくはYminの表裏の比で特定することができる。ここで、表面軸配向YmaxおよびYmin表裏の比は次のようにして求めるものである。
フィルム試料について、偏光ATR法により波長1340cm−1付近の吸光度A1340と波長1410cm−1付近の吸光度A1410を求め、下記式で表される比Yを求める。最初に測定した点を起点としてフィルム試料を10°毎に面内回転させ、0°〜170°の範囲でそれぞれ同様に測定する。得られた18点の中での最大値および最小値を表面軸配向度Ymax、Yminとする。係る表面軸配向度Ymax、Yminをフィルム試料の表裏で測定し、表裏いずれか大きい方の値を分母として表面軸配向度YmaxおよびYminの表裏の比を求める。
Y=A1340/A1410
ここで、波長1340cm−1付近の吸光度A1340は、ポリエチレンテレフタレート分子鎖のエチレングリコール単位に含まれるCHの縦ゆれ振動に由来する。これは、ポリエチレン分子鎖中にあるCH単位のトランス位の存在を示し、係るシグナルの強度はトランス体の濃度、すなわちポリエステル分子が伸張されたことによる配向の強さの状態を定量的に示すものである。一方、波長1410cm−1付近の吸光度A1410は、ポリエチレン分子鎖中のベンゼン環構造に含まれるC=Cの面内変角振動に由来する。これは、ポリエチレンテレフタレートの配向に関わらず、面内回転での吸収強度が一定となるために、基準バンドとして波長1340cm−1付近の吸収強度を規格化するために用いるものである。各吸収は、偏光子により偏光を持たせたATR法により測定するため、吸光度A1340を吸光度A1410で規格化した比Yによって、特定方向でのポリエチレンテレフタレートのフィルム表面付近における配向の強さを定量的に表すことができる。
係る比Yについてフィルム試料を面内回転させて測定し、得られた値のうち最大値および最小値を表面軸配向度Ymax、Yminとする。通常、Ymax、Yminが得られる方向は、フィルム試料の延伸軸方向とほぼ合致している。これは、フィルムを二軸に延伸した場合に、延伸を行った長手方向および横方向の2つの機械軸方向を軸に楕円系の配向挙動を示すためである。これにより、2つの直交する機械軸方向が規定され、これらが上記表面軸配向度Ymax、Yminが得られる方向とほぼ同じになる。
本発明のフィルムは、上記により得られた表面軸配向度YmaxもしくはYminの少なくともいずれかの表裏の比が、0.80〜0.98である。前記いずれかの表面軸配向度の表裏の比が、0.98以下であれば、硬化性樹脂を積層した際に拮抗しうる潜在的な反りが生じうる。また、前記いずれかの表面軸配向度の表裏の比が、0.80以上であれば、基材フィルムとして加工性に適した平面性を保持することができる。前記いずれかの表面軸配向度の表裏の比の上限は、0.97が好ましく、0.96がより好ましく、0.95がさらに好ましく、0.94がよりさらに好ましい。前記いずれかの表面軸配向度の表裏の比の下限は、0.82が好ましく、0.83がより好ましく、0.85がさらに好ましく、0.86がよりさらに好ましい。
このように本発明のフィルムは、表裏で配向差を有するため、硬化性樹脂積層体として良好な面精度を保持しうるのであるが、さらに、特定の面配向度と厚みを有することにより、表裏の配向差を有しながら基材フィルムとして良好な平面性を有する。これにより加工性面でも良好な作業性を奏する。
本発明のフィルムは、硬化性樹脂による硬化収縮に抗し、さらに、表裏の配向差を有しながら基材フィルムとしての平面性を保持するために、フィルムの厚みは、30〜500μm、より好ましくは50〜500μmである。フィルムの厚みが500μm以下であれば、特定の配向差により、硬化性樹脂の硬化収縮に拮抗する潜在的な反りが生じやすくなり、硬化性樹脂の効果収縮に抗して積層体の面精度を良好にすることができる。また、フィルムの厚みが30μm以上、より好ましくは50μm以上であれば、特定の配向度を有しながら、基材フィルムとしての平面性を維持することができる。また、後述するフィルムの製造中にフィルム表裏に温度差を設けて表裏の配向差をつける場合は、フィルムの厚みが厚いほど、フィルム表裏の温度差をつけ易くなるため、上記特定の配向差を設ける上で好ましい。本発明のフィルムの厚みの上限は、450μmが好ましく、400μmがより好ましく、370μmがさらに好ましい。また、本発明のフィルムの厚みの下限は、75μmがさらに好ましく、80μmがよりさらに好ましく、100μmがさらによりさらに好ましい。
また、フィルム表裏の配向差を好適に設けるためには、フィルムの厚みを上記一定の範囲に制御することが好ましい。例えば、後述のようにフィルム表裏での熱量付加に差異を設けるによりフィルム表裏の配向差を設ける場合、フィルム内部の熱伝達性を考慮した場合、フィルムの厚みが大きい方がフィルム表裏の熱量付加の差異を維持し易い。そのため、フィルムの厚みとしては上記下限以上であると、フィルム表裏の配向差を設けやすく好ましい。
本発明のフィルムの面配向度ΔPが0.150〜0.180である。フィルムの前記の面配向度ΔPを係る範囲にすることのより、上記範囲での表裏の配向差を有する場合において、硬化性樹脂の硬化収縮に抗しえるフィルムとしての腰の強さ(強度)を保持することができる。ここで、面配向度ΔPは以下の式にして求めるものである。
ΔP=(nx+ny)/2 − nz
ここで、nx、ny、nzは夫々、長手方向の屈折率、幅方向の屈折率、厚み方向の屈折率を表す。なお、長手方向、幅方向は前述のとおりYmin、Ymaxが得られる方向と同一もしくは略同一であるので、かかる方向をもって係る方向をもって長手方向、幅方向を特定することも可能である。
面配向度ΔPは、フィルム面全体としての配向強度を示すものである。面配向度ΔPが0.150以上の場合は、上記範囲での表裏の配向差を有する場合において、硬化性樹脂の硬化収縮に抗しえるフィルムとしての腰の強さ(強度)を保持しえる。また、面配向度ΔPが0.180以下であれば、特定の配向差により、硬化性樹脂の硬化収縮に拮抗する潜在的な反りが生じやすくなり、硬化性樹脂の効果収縮に抗して積層体の面精度を良好にすることができる。本発明の面配向度ΔPの上限は、0.178が好ましく、0.176がより好ましく、0.175がさらに好ましく、0.173がよりさらに好ましい。また、本発明の面配向度ΔPの下限は、0.153が好ましく、0.155がより好ましく、0.158がさらに好ましく、0.160がよりさらに好ましく、0.163が特に好ましい。また、後述のようにインラインのフィルム製造工程においてフィルム表裏の配向差を設ける場合、フィルムの面配向度△Pが小さすぎると配向を設けにくく、逆に大きすぎる配向の差異を設けにくくなる場合がある。そのため、フィルムの面配向度△Pを上記所定の範囲に設けることは、フィルム表裏の配向差を好適に設ける上で好ましい。
本発明のフィルムは、基材フィルムとしての平面性が良好であることが望ましい。ここで基材フィルムの平面性は次のように評価することができる。フィルムから長手方向に300mm、それと直角な幅方向に210mmの長方形のフィルム試料を切り出し、フィルム試料を温度23±2℃、湿度65±5%に管理された室内で30分以上静置する。そして、フィルム四隅の反りあがりの高さを静置面を基準に垂直方向に測定する。この際、本発明のフィルムは、四隅の反りの高さの最大値がフィルム厚み以下であることが好ましい。
反りの高さの最大値は、フィルム厚み以下であることが好ましく、フィルム厚みの90%以下であることがより好ましく、80%以下であることがさらに好ましく、50%以下であることが特に好ましい。反りの高さ最大値がフィルム厚み以下である場合は、硬化性樹脂の塗布などのフィルムの加工時において平面性の歪みが少なく加工特性に優れる。
本発明のフィルムは、単層でも、2層以上の多層構造を有するフィルムでも良い。2層以上の層構成を有する場合は、基材フィルムとしての平面性の点から、フィルム表裏の層(両最外層)を構成する樹脂は同種であることが望ましい。ここで、同種の樹脂とは、ポリエチレンテレフタレート系樹脂であって、固有粘度および/もしくは融点が同一もしくは略同一であるものをいう。最外層を構成するPETの固有粘度および/もしくは融点が同一もしくは略同一であると、2層以上の多層構造であっても、基材フィルムとして良好な平面性を奏することができる。ここで、固有粘度が略同一とは、下記測定方法により測定した固有粘度の両最外層での差が0.1g/dl以下、好ましくは0.05g/dl以下であることをいう。また、融点が略同一とは、下記測定法により測定した融点の両最外層での差が3℃以下、好ましくは2℃以下であることをいう。
本発明におけるポリエチレンテレフタレート系樹脂には、微粒子を添加してフィルムの作業性(滑り性)を良好なものとすることが好ましい。微粒子としては任意のものが選べるが、たとえ炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、不定形シリカ、球状シリカ、結晶性のガラスフィラー、カオリン、タルク、二酸化チタン、アルミナ、シリカ−アルミナ複合酸化物粒子、硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、ゼオライト、硫化モリブデン、マイカなどの無機粒子や、架橋ポリスチレン粒子、架橋アクリル系樹脂粒子、架橋メタクリル酸メチル系粒子、ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド縮合物粒子、メラミン・ホルムアルデヒド縮合物粒子、ポリテトラフルオロエチレン粒子などの耐熱性高分子微粒子が挙げられる。特に透明性の観点から、樹脂成分と屈折率が比較的近い、シリカ粒子、特に不定形シリカが好適である。
なお、上記の粒子の平均粒径の測定は下記方法により行う。
粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)で写真を撮り、最も小さい粒子1個の大きさが2〜5mmとなるような倍率で、300〜500個の粒子の最大径(最も離れた2点間の距離)を測定し、その平均値を平均粒径とする。
ポリエチレンテレフタレート系樹脂に上記粒子を配合する方法としては、たとえば、ポリエチレンテレフタレート系樹脂を製造する任意の段階において添加することができるが、好ましくはエステル化の段階、もしくはエステル交換反応終了後、重縮合反応開始前の段階でエチレングリコール等に分散させたスラリーとして添加し、重縮合反応を進めても良い。また、ベント付き混練押出し機を用いてエチレングリコールまたは水等に分散させた粒子のスラリーとポリエチレンテレフタレート系樹脂原料とをブレンドする方法、または混練押出し機を用いて、乾燥させた粒子とポリエチレンテレフタレート系樹脂原料とをブレンドする方法等によって行うことができる。
また、本発明のフィルムを拡散シートやレンズシートなど光学用途部材として用いる場合は、高い透明性が求められる。このように高い透明性を得るためには、フィルムを構成するポリエステルには、実質的に粒子を含有させないことが好ましい。ここで、「粒子を実質的に含有させない」とは、例えば無機粒子の場合、ケイ光X線分析で無機元素を定量した場合に50ppm以下、好ましくは10ppm以下、特に好ましくは検出限界以下となる含有量を意味する。
本発明の好ましい実施態様として、良好な透明性と安定な作業性(特に表面摩擦特性)を得るためには、多層構成を有するフィルムであって最外層にのみ微粒子を含有するポリエステル層を用いることもできる。このような基材フィルムとしては、中心層(b層)の両面に不活性粒子を含有する最外層(a層)が共押出法により積層されてなる多層構成(a/b/a)を有するポリエステルフィルムを用いることが好ましい。表裏の最外層を構成する層は、同種であっても、異種であっても良いが、基材フィルムの平面性を保持する為には、表裏の最外層のポリエステル樹脂は同構成とすることが望ましい。
最外層中に含まれる微粒子の平均粒径は1〜10μmが好ましく、より好ましくは1.5〜7μmの範囲であり、更に好ましくは2〜5μmの範囲である。微粒子の平均粒径が1.0μm以上であれば、表面に易滑性付与に好適な凹凸構造を付与することができ好ましい。一方、微粒子の平均粒径が10μm以下であれば、高い透明性が維持されるので好ましい。また、最外層中の不活性粒子の含有量は、0.005〜0.1質量%であることが望ましく、好ましくは0.008〜0.07%であり、更に好ましくは0.01〜0.05%である。微粒子の含有量が0.005質量%以上であれば、最外層表面に易滑性付与に好適な凹凸構造を付与することができ好ましい。一方、微粒子の含有量が0.1質量%以下であれば、高い透明性が維持されるので好ましい。
上記いずれかの態様により、本発明のフィルムは、高い透明性を奏することができ、光学用途へも好適に利用可能である。本発明のフィルムおよび後述する被覆層付きフィルムのヘイズは、全体として、3.0%以下であることが好ましく、2.0%以下であることがより好ましく、1.5%以下であることがさらに好ましい。さらに、フィルムおよび後述する被覆層付きフィルムの全光線透過率は85%以上であることが好ましく、更に好ましくは88%以上である。ヘイズもしくは全光線透過率が上記範囲であると、ディスプレイ部材として用いた場合にも高い輝度が得られる。なお、上記ヘイズおよび全光線透過率は、JIS−K7105に準じ、濁度計を使用して、測定することができる。
さらに、本発明のフィルムには、硬化性樹脂を積層した際にフィルム表面の接着性を良好にするためにコロナ処理、コーティング処理や火炎処理等を施したりすることも可能である。
本発明においては、硬化性樹脂との接着性を改良のために、本発明のフィルムの少なくとも片面に、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂またはポリアクリル樹脂の少なくとも1種類を主成分とする被覆層を有することが好ましい。ここで、「主成分」とは被覆層を構成する固形成分のうち50質量%以上である成分をいう。本発明の被覆層の形成に用いる塗布液は、水溶性又は水分散性の共重合ポリエステル樹脂、アクリル樹脂及びポリウレタン樹脂の内、少なくとも1種を含む水性塗布液が好ましい。これらの塗布液としては、例えば、特許第3567927号公報、特許第3589232号公報、特許第3589233号公報、特許第3900191号公報、特許第4150982号公報等に開示された水溶性又は水分散性共重合ポリエステル樹脂溶液、アクリル樹脂溶液、ポリウレタン樹脂溶液等が挙げられる。
被覆層は、前記塗布液を縦方向の1軸延伸フィルムの片面または両面に塗布した後、100〜150℃で乾燥し、さらに横方向に延伸して得ることができる。最終的な被覆層の塗布量は、0.05〜0.20g/mに管理することが好ましい。塗布量が0.05g/m未満であると、得られる硬化性樹脂との接着性が不十分となる場合がある。一方、塗布量が0.20g/mを超えると、耐ブロッキング性が低下する場合がある。ポリエステルフィルムの両面に被覆層を設ける場合は、両面の被覆層の塗布量は、同じであっても異なっていてもよく、それぞれ独立して上記範囲内で設定することができる。
被覆層には易滑性を付与するために粒子を添加することが好ましい。微粒子の平均粒径は2μm以下の粒子を用いることが好ましい。粒子の平均粒径が2μmを超えると、粒子が被覆層から脱落しやすくなる。被覆層に含有させる粒子としては、前述した微粒子と同様のものが例示される。
また、塗布液を塗布する方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、リバースロール・コート法、グラビア・コート法、キス・コート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ワイヤーバーコート法、パイプドクター法、などが挙げられ、これらの方法を単独であるいは組み合わせて行うことができる。
本発明のフィルムのいずれの面にも被覆層を設けることができるが、表面軸配向度Ymax、Yminの表裏いずれか小さい方の面の設けることが好ましい。配向度の小さい面に硬化性樹脂層を設けることが、表裏の配向差による力学強度保持性、または加熱による潜在的な反りの発生により、表裏の拮抗を保持し易い傾向にあるからである。
本発明において、フィルム表裏の表面軸配向度の比を上記特定の範囲にするためには、インラインで、もしくは製造した後にオフラインで熱処理を加えることで表面配向を緩和させる方法、製造されたフィルムの少なくとも一方の面に熱エネルギーを付与し、表面配向を緩和させる方法、さらには揮発性の有機溶媒を一方の面に塗布することで表面配向を緩和させる方法などが挙げられる。本発明では、フィルムの製造工程において表裏の熱量付加に差異を設けることで積極的にフィルム表裏における分子配向差を設けることにより、好適に本発明のフィルムを得ることができる。フィルムの製造工程において表裏の熱量付加に差異を設ける方法としては、より具体的には、例えば、以下のような(1)〜(3)に記載する方法が好ましい。これらの手段を単独もしくは相互に関連させることにより、基材フィルムとしては平面であるにもかかわらず、硬化性樹脂の硬化収縮に抗しえる本発明のフィルムを得ることができる。
(1)未延伸シートの表裏の温度差
本発明のフィルムの製造において、まず溶融した樹脂を口金より押出し、冷却したキャスティングドラムに巻き取ることで急冷固化し、未延伸シートを得る。未延伸シートの冷却はシート表面から行われるため、キャスティングドラムに接した面と、その反対面とで冷却効率が異なり、未延伸シートの表裏で温度差が生じる。
本発明では、キャスティングドラムに続く第二冷却ロール(引き離しロール)の離れ際において、未延伸シート表裏の表面温度差は3℃以上33℃以下が望ましい。第二冷却ロールの出口でシート表裏の表面温度差は5℃以上がより好ましく、8℃以上がさらに好ましく、10℃以上が特に好ましい。またシート表裏の表面温度差は、30℃以下がより好ましく、28℃以下がさらに好ましく、25℃以下が特に好ましい。上記温度差が30℃を超える場合は、基材フィルムとしての平面性が悪くなる場合がある。
未延伸シート表裏の表面温度差を上記範囲に制御する方法としては、冷却時間や、冷却ロールの温度を適宜制御することが望ましい。また、冷却エアを用いて裏面を冷却させたり、キャスティングドラム径を小さくすることで早めに第二冷却ロールによる裏面の冷却を行うことにより、シート表裏の表面温度差を制御するのができる。さらに、冷却に要する時間は、シートの厚みや冷却ロールの速度などに依存するので、適宜、冷却エアの温度、冷却範囲、第二冷却ロールの温度などを調整するのが好ましい。
(2)縦延伸における表裏の温度差
本発明のフィルムを得るためには、縦延伸工程においてフィルム表裏に温度差を設け、フィルム表裏において分子の配向の程度を変えることが望ましい。縦延伸工程においてフィルム表裏の温度差を設けると、表面温度の高い側より表面温度が低い側の方が、配向歪みが残存し、延伸による配向差が生じやすくなる。本発明のフィルムの製造での縦延伸時において、表裏の温度差を設けるために、表裏におけるロールの温度設定や、非接触の赤外線照射、高速加熱エアによる加熱、その他、延伸工程の前処理として加熱または冷却手段を用いることが可能である。
さらに、縦延伸は一段でも、多段でも構わないが、好適に表裏の配向差を設ける点で、2段以上の多段で行うことが好ましい。2段以上で縦延伸を行い場合は、延伸配向が進んだ状態で更に、温度差を設けた延伸を行うことができ、表裏の配向差を設けることが容易になる。そのため、一段よりの2段の方が掛けるべき熱量付加の差異を小さくでき、フィルム基材としての平面性維持により好適である。この場合、一段で延伸した後に、一旦、冷却し、再度、表裏の温度差を設けた縦延伸を行うことは、効果的に配向差を設ける点でより好ましい。
具体的には、周速差を設けたロール間において赤外線ヒータなどの加熱手段を用いて縦延伸を行う場合は、表裏の加熱量もしく冷却量を変化させることで、フィルムの表裏の温度差が0.3℃以上5℃以下となるように調整することが好ましい。表裏の温度差が5℃以下であれば基材フィルムとして平面性を好適に保持しえる。(なお、縦延伸工程におけるフィルム表裏の温度とはフィルムを厚み方向に三分割した中央以外の二つをいう。具体的には、伝熱計算により求めることが可能である。)
延伸工程においてフィルム表裏に温度差を設けて配向差を設ける場合は、延伸変形速度が高い方が適している。そのため、表裏の配向差を設ける上では、上記のように縦延伸工程の方が、横延伸工程よりも適している。ただし、横延伸工程においても上下に温度差を設け、フィルム表裏の配向差を設けることは可能である。
(3)熱固定温度の上下の温度差
本発明おいて、二軸延伸後のフィルムを熱固定する熱固定工程において、フィルムの表裏の温度を0.1℃以上、0.5℃以下の温度差を設けることが好ましい。これは表裏の熱処理の程度に差異を設けることで、実質的に表裏の収縮率を変更することにある。熱固定工程において表裏の温度差を設けるには、例えば、熱固定装置のフィルムを介した上下で温度を変更する、または/そして風速差を設けることで可能となる。フィルムの表裏に上記温度差を設けるためには、熱固定装置の上下の温度差は3℃以上30℃以下が好ましい。3℃未満ではフィルムの温度差を付けるのに固定装置内の上下の風速差が大きくなり、フィルムに歪み力が働くため、平面性の不均一が生じる場合があり好ましくない。また、30℃超の温度ではフィルム上下の空気の密度差によりエアバランスの崩れが生じやすく好ましくない。
上記に詳述した方法以外、例えば製膜中に片面熱処理を行う加熱ロールを通過させたり、片面冷却反対面を赤外線加熱、熱風加熱など他の方法を用いることも可能である。また、インラインの製造工程において、曲率の高いロールに沿わせながら表裏に収差を設けながら長手方向の延伸を行うなどの方法により表裏の配向差を設けることもできる。いずれにしても、フィルム表裏の配向差を、本発明特定の範囲内に制御するものであれば、その製造方法は特定するものではない。
本発明のフィルムおいて、面配向度ΔPを上記範囲に制御するためには、延伸倍率および熱固定処理温度を適宜設定することが好ましい。すなわち、面配向係数を低下させるためには、縦延伸または横延伸の延伸温度を高く設定するか、延伸倍率を低く設定する、あるいは熱処理温度を高めに設定すればよい。
縦−横延伸を行う際に、縦延伸ではフィルムの平均温度(表裏の温度の平均)が80〜125℃、横延伸では80〜180℃に加熱しつつ、縦、横、両方向に延伸倍率を2.5倍以上4.5倍以下に調整するのが好ましく、3.0倍以上4.2倍以下に調整することがより好ましく、3.2倍以上4.1倍以下に調整することがさらに好ましい。に調整するのが好ましい。縦延伸倍率が4.5倍以下であれば、潜在的な反りが生じやすく、硬化収縮との表裏の拮抗を好適に制御しうる。また、延伸倍率が2.5倍以上であれば、基材フィルムとしての平面性を保持しうる、腰の強さを奏しやすい。
また、本発明では、横延伸工程に引き続き、熱固定処理を行う。熱固定処理工程の温度は180℃以上240℃以下が好ましい。熱固定処理の温度が180℃未満では、熱収縮率の絶対値が大きくなってしまうので好ましくない。反対に、熱固定処理の温度が240℃を超えると、フィルムが不透明になり易く、また破断の頻度が多くなり好ましくない。
熱固定処理で把持具のガイドレールを先狭めにして、弛緩処理することは熱収縮率、特に幅方向の熱収縮率の制御に有効である。弛緩処理する温度は熱固定処理温度からポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムのガラス移転温度Tgまでの範囲で選べるが、好ましくは(熱固定処理温度)−10℃〜Tg+10℃である。この幅弛緩率は1〜6%が好ましい。1%未満では効果が少なく、6%を超えるとフィルムの平面性が悪化して好ましくない。
本発明は、硬化に伴い収縮性を有する樹脂組成物を積層するのに好適である。本発明のフィルムに樹脂組成物を塗布、積層し、乾燥、熱、化学反応、もしくは紫外線などの電離放射線を照射して硬化性樹脂を硬化させることにより硬化性樹脂積層体を得る。本発明で硬化性樹脂とは、乾燥、熱、化学反応、もしくは電子線、放射線、紫外線のいずれかを照射することによって重合、および/または反応する樹脂化合物のことをいう。本発明で用いられる硬化性樹脂としては、メラミン系、アクリル系、シリコン系、ポリビニルアルコール系の硬化性樹脂が挙げられるが、高い表面硬度もしくは光学設計を得る点でアクリレート系硬化性樹脂が好ましい。アクリレート系硬化性樹脂を含む上記硬化性樹脂組成物としては、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、反応希釈剤、光重合開始剤、増感剤の成分を含む組成物があげられる。
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、例えば、エチレングリコール、1,4ブタンジオール、ネオペンチグリコール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネイトジオール、ポリテトラメチレングリコール等のポリオール類とヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシレンイソシアネート等の有機ポリイソシアネート類とを反応させて得ることができる。しかし、特に限定されるものではない。
エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型プロピレンオキサイド付加物の末端グリシジルエーテル、フルオレンエポキシ樹脂等のエポキシ樹脂類と(メタ)アクリル酸とを反応させて得ることができる。しかし、特にこれらに限定されるものではない
このような硬化性樹脂は、硬化反応により架橋構造を形成し、硬化収縮が生じる。本発明の基材フィルムを用いることにより、硬化性樹脂により硬化収縮が生じても、積層体として高い面精度を保持しうる。本発明に用いる硬化性樹脂は任意に選択しうるが、好ましくは硬化収縮率が1〜20%、より好ましくは2〜18%、さらに好ましくは3〜15%の範囲から適宜調整して用いることができる。例えば、官能基数の異なる複数の硬化性樹脂化合物の混合した硬化性収縮樹脂組成物を用いる場合は、それら混合比率を調製することで硬化収縮率を制御しうる。ここで、硬化収縮率は以下の式により求めることができる。ここで、比重は、JIS−K−6833に準じて測定することができる。
(硬化収縮率)=[{(硬化物比重)−(硬化前比重)}/(硬化前比重)]×100
また、本発明の積層体における硬化性樹脂層の層厚みは、特に限定しないが、好ましくは1〜300μm、より好ましくは2〜200μm、さらに好ましくは2〜150μm、よりさらに好ましくは3〜100μmの範囲から適宜調整して用いることができる。
電離放射線を照射により硬化反応を起させる場合は、例えば、ケミカルランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、無電極UVランプ、可視光ハロゲンランプ、キセノンランプ、太陽光等の光源が使用できる。電離放射線照射時の雰囲気は、空気中でもよいし、窒素、アルゴン等の不活性ガス中でもよい。照射エネルギーとしては、例えば、波長200〜600nm、好ましくは320〜390nmの範囲における積算エネルギーが、例えば、0.01〜10J/cm、好ましくは0.4〜8J/cmとなるように照射することが適当である。さらに、積層体をキュアーリング処理することは、本発明のフィルムが有する潜在的な反りによる拮抗力をつけるうえで好適である。
積層体の硬化性樹脂層の構造も、特に限定しないが、例えば以下に例示された構造を有することができる。ハードコート層や反射防止層のように略均一な層厚みを有するもの、プリズムレンズのように特定のピッチ間隔で山形のプリズムを形成するもの、マイクロレンズのように不定形の凸構造を有するもの、エンボス加工などにより凹凸が付与されたもの、拡散層のように粒子を含むことで表面凹凸構造もしくは内部空洞構造等を有するもの、複数の樹脂により海島構成を有するもの。これらの場合、硬化性樹脂層の最大厚み(例えば、プリズムレンズであればレンズ頂点)が上記層厚みの範囲内にあることが好ましい。
本発明の硬化性樹脂積層体は、良好な平面性を有する。ここで硬化性樹脂積層体の平面性は次のように評価することができる。硬化性樹脂積層体から長手方向に300mm、それと直角な幅方向に210mmの長方形の試料を切り出し、試料を温度23±2℃、湿度65±5%に管理された室内で30分以上静置する。そして、フィルム四隅の反りあがりの高さを静置面を基準に垂直方向に測定する。この際、本発明の積層体は、四隅の反りの高さが0.5mm以下であることが好ましい。
本発明のフィルムは、基材フィルムとしても良好な平面性を有し、硬化性樹脂積層体としても高度な面精度を保持しうる。また、好ましい実施態様として、収縮性の異なる、もしくは収縮性を有する素材を、積層、もしくは張り合わせても、積層体全体としての平面性が良好である。そのため、本発明のフィルムは、例えば、レンズフィルム、拡散フィルム、ハードコートフィルム、NIRフィルムなどの各種光学フィルム、タッチパネル、ITO、太陽電池用保護フィルム、太陽電池用バックシート、偏光板保護フィルム、偏光子保護フィルム、有機EL、電子ペーパーなど積層体のベースフィルムとして好適である。また、硬化性塗剤などを塗布、積層する建材用途、硬化性樹脂インキなどを用いる記録材用途、2枚以上のフィルムを張り合わせて用いる張り合わせ部材用途などのベースフィルムとしても好適である。
次に、本発明の効果を実施例および比較例を用いて説明する。まず、本発明で使用した特性値の評価方法を下記に示す。
[評価方法]
(1)ポリエステルフィルム、ポリエステル樹脂のヒドロキシル(OH)末端量
ポリエステルフィルム、または樹脂を細かく粉砕し、15mgを秤量した。0.1mlのヘキサフルオロイソプロパノールール(HFIP)−d2に完全に溶解させた後、重クロロホルム0.6mlで希釈した。さらに、HFIPのOH基ピークをシフトさせるために、ピリジン−d5を30μl添加し、H−NMR(BBO−5mmプローブ)で測定した。
(2)環状三量体量
ポリエステルフィルム、またはポリエステル樹脂を細かく粉砕し、0.1gをヘキサフルオロイソプロパノールール(HFIP)/クロロホルム(2/3(容量比))の混合溶媒3mlに溶解した。得られた溶液にクロロホルム20mlを加えて均一に混合した。得られた混合液にメタノール10mlを加え、線状ポリエステルを再沈殿させた。次いで、この混合液を濾過し、沈殿物をクロロホルム/メタノール(2/1(容量比))の混合溶媒30mlで洗浄し、さらに濾過した。得られた濾液をロータリーエバポレーターで濃縮乾固した。濃縮乾固物にジメチルホルムアミド10mlを加え、環状三量体測定溶液とした。この測定溶液を横河電機(株)社製LC100型の高速液体クロマトグラフィーを使用して定量した。
(3)固有粘度
ポリエステル0.2gをフェノール/1,1,2,2−テトラクロルエタン(60/40(重量比))の混合溶媒50ml中に溶解し、30℃でオストワルド粘度計を用いて測定した。単位はdl/g。
(4)融点測定
セイコ−電子工業株式会社製の示差熱分析計(DSC)、RDC−220で測定した。試料10mgを使用し、昇温速度20℃/分で昇温し、290℃で3分間保持した。昇温時に観察される融解ピ−クの頂点温度を融点(Tm)とした。
(5)フィルムの厚み
フィルムの厚みは、電子マイクロメーターMILLITRON(精工精密機械販売)を用いて長手方向300mm、それに直角な方向に210mmに切り出したフィルム試料の長手方向に直角な方向に約20mmずつの位置で10回計測し、その平均値を求める。
(6)ヘイズ、全光線透過率
フィルム試料のヘイズ(曇価)および全光線透過率は、日本電色工業社製NDH−300A型濁度計を用い、JIS K 7105「プラスチックの光学的特性試験方法」に準拠して測定した。測定の結果、ヘイズが3%以下のものを○、3%をこえるものを×とした。また、全光線透過率については、90%以上のものを○、90%未満のものを×とした。
(7)面配向係数(ΔP)
JIS K 7142−1996 5.1(A法)により、ナトリウムD線を光源としてアッベ屈折計によりフィルム長手方向の屈折率(nx)、幅方向の屈折率(ny)、厚み方向の屈折率(nz)を測定し、下記式によって面配向係数(ΔP)を算出した。
ΔP=(nx+ny)/2−nz
(8)表面軸配向度
偏光ATR法の1回反射における赤外線吸収スペクトル解析による。試料フィルムの測定面を1回反射ATR付属装置にセットし、1回反射のスペクトルを測定した後に、ベースラインを適正化した後に波長1340cm−1付近における吸光度A1340と波長1410cm−1における吸光度A1410を数値化する。得られた測定値をもとに下記式に表される比Yを求める。フィルム試料を最初の測定位置を基点に、10°毎に面内回転させ、0°〜170°の範囲でそれぞれ同様に測定する。
Y=A1340/A1410
その18点の配向パラメータの中での最大値をYmax, 最小値をYminとしてYmax/Yminを表面軸配向度とする。係る表面軸配向度Ymax、Yminをフィルム試料の表裏で測定し、表裏いずれか大きい方の値を分母として表面軸配向度YmaxおよびYminの表裏の比を求めた。表中に示した表面軸配向度の表裏の比は、YmaxおよびYminのいずれかで求めた比のうち小さい方を示す。
測定装置、条件は次のとおりである。
分光器:FTS−60A/896(BioRad DIGILAB社製FTIR)
付属装置:高感度1回反射ダイヤモンド水平ATR装置(SPECAC)
光源:高輝度ニューセラミック
検出器:MCT(HgCdTe)
分解能:4cm−1
積算回数:64回
IRE:Ge
入射角:45°
偏光子:ワイヤーグリッド,偏光
理論検出深度:約0.7μm(1000cm−1において)
ベースラインについては、吸光度A1340については1380〜1300cm−1の間にある2つのボトムピークを結んだ線をベースラインとし、吸光度A1410については1350〜1450cm−1の間にある2つのボトムピークを結んだ線をベースラインとしてトップピーク高さを求めて測定する。なお、共存する含有物質や塗布物質の赤外線吸収バンドと、1340cm−1における吸収バンド、もしくは1410cm−1における吸収バンドが重なってしまう場合は、差分スペクトル法を用いることで、強度比を算出する方法を採用する。
(9)フィルムの平面性1
フィルムから長手方向300mm×幅方向210mmの試料を50枚採取する。この試料を、温度23±2℃、湿度65±5%に管理された室内で、水平なガラス板(厚さ5mm)の上に載せてフィルム試料の四隅の反りの高さ(水平面から垂直方向の高さ)をマイクロスコープ(商品名:VH−6300、キーエンス社製)を用いて測定する。四隅の高さが「0」もしくは、断面がM字状に見える時は反対面を上にして反りを測定する。全試料において測定した四隅の反りあがりの高さの最大値を表示する。
(10)硬化性樹脂積層体の平面性2
下記いずれかの樹脂組成物を、下記記載の層厚みになるようにアプリケーターを用いて、表面軸配向度の小さい方の面に塗布した。ランプ発光長50cm、160W/cmの高圧水銀灯を光源とし、照射量1J/cm(測定機器:(株)オーク製作所製、UV−350)の紫外線を塗布面よりに照射し、前記樹脂組成物を硬化させた。こうして得た硬化性樹脂積層体から長手方向300mm×幅方向210mmの大きさにカットした試料を5枚採取した。樹脂組成物面を上にして水平なガラス板(厚さ5mm)の上に置き、温度23±2℃、湿度65±5%に管理された室内で、積層体試料の四隅の反りの高さ(水平面から垂直方向の高さ)をマイクロスコープ(商品名:VH−6300、キーエンス社製)を用いて測定する。全試料において測定した四隅のソリの高さを平均して表示する。
(11)硬化収縮率
実施例及び比較例で得られたハードコート層の硬化前と硬化後の比重を測定した。比重は、JIS−K−6833に従い測定する。そして硬化収縮率は、下記式により測定した。
(硬化収縮率)=[{(硬化物比重)−(硬化前比重)}/(硬化前比重)]×100
[硬化性樹脂]
(硬化樹脂組成物A)
M−315(東亜合成社製) 100質量部
ノナブチレングリコールジメタクリレート(PBOM) 100質量部
ウレタンアクリレート(U−2PHA)(新中村化学社製) 40質量部
イルガキュア184(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 3質量部
下記測定方法による硬化性樹脂組成物Bの硬化収縮率は8.0%であった。係る硬化性樹脂組成物Bを硬化後の積層厚みが30μmになるように塗布、積層した。
(硬化性樹脂組成物B)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA) 100質量部
メチルエチルケトン 100質量部
トルエン 100質量部
イルガキュア184(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 4質量部
下記測定方法による硬化性樹脂組成物Bの硬化収縮率は11.5%であった。係る硬化性樹脂組成物Bを硬化後の積層厚みが10μmになるように塗布、積層した。
(12)ヘイズ変化量(△Hz)評価
フィルムを50mm四方に切り出し、JIS K 7105「プラスチックの光学的特性試験方法」ヘイズ(曇価)に準拠して加熱前ヘイズを測定した。測定器には、日本電色工業社製NDH−300A型濁度計を用いた。測定後、フィルムを170℃に加熱したオーブン内にセットし、20分間経過後フィルムを取り出す。その加熱後フィルムを上記と同様の方法でヘイズを測定し、加熱後ヘイズを得る。この加熱前後ヘイズ差を△Hzとする。
△Hz=(加熱後ヘイズ)−(加熱前ヘイズ)
[塗布層]
(塗布液の調製)
常法によりエステル交換反応および重縮合反応を行って、ジカルボン酸成分として(ジカルボン酸成分全体に対して)テレフタル酸46モル%、イソフタル酸46モル%および5−スルホナトイソフタル酸ナトリウム8モル%、グリコール成分として(グリコール成分全体に対して)エチレングリコール50モル%およびネオペンチルグリコール50モル%の組成の水分散性スルホン酸金属塩基含有共重合ポリエステル樹脂を調製した。次いで、水51.4質量部、イソプロピルアルコール38質量部、n−ブチルセルソルブ5質量部、ノニオン系界面活性剤0.06質量部を混合した後、加熱撹拌し、77℃に達したら、上記水分散性スルホン酸金属塩基含有共重合ポリエステル樹脂5質量部を加え、樹脂の固まりが無くなるまで撹拌し続けた後、樹脂水分散液を常温まで冷却して、固形分濃度5.0質量%の均一な水分散性共重合ポリエステル樹脂液を得た。さらに、凝集体シリカ粒子(富士シリシア(株)社製、サイリシア310)3質量部を水50質量部に分散させた後、上記水分散性共重合ポリエステル樹脂液99.46質量部にサイリシア310の水分散液0.54質量部を加えて、撹拌しながら水20質量部を加えて、塗布液を得た。
(実施例1)
ジメチルテレフタレート1,000部、エチレングリコール700部、および酢酸亜鉛・2水塩0.3部をエステル交換反応缶に仕込み、120〜210℃でエステル交換反応を行い、生成するメタノールを留去した。エステル交換反応が終了した時点で、リン酸0.13および三酸化アンチモン0.3部を加え、系内を徐々に減圧にし、75分間で1mmHg以下とした。同時に徐々に昇温し、280℃とした。同条件で70分間重縮合反応を実施し、溶融ポリマーを吐出ノズルより水中に押し出し、カッターによって、直径約3mm、長さ約5mmの円柱状チップとした。得られた粗製ポリエステルの固有粘度は0.610dl/gであり、ヒドロキシル(OH)末端量は70eq/tonであり、環状三量体の含有量は1.05質量%、融点は252℃であった。なお、実施例中にある「部」とは全て重量部を表す。得られた粗製ポリエステルをポリエステル樹脂(A)とする。
PET樹脂(A)を減圧下160℃にて乾燥し、次いで、含水量が6.4g/Nmに調湿された窒素ガスを粗製ポリエステル1kg当たり、毎時70リットルの割合で流通し、207℃で48時間加熱処理を行った。得られたポリエステルの固有粘度は0.631dl/gであり、ヒドロキシル(OH)末端量は59eq/tonであり、環状三量体の含有量は0.27質量%であった。得られた粗製ポリエステルをポリエステル樹脂(B)とする。
ポリエステル樹脂(B)を、135℃で6時間減圧乾燥(1Torr)した後、押出機に供給した。押出機に供給された原料を、押出機の溶融部、混練り部、ポリマー管、ギアポンプ、フィルターまでの樹脂温度は280℃、その後のポリマー管では275℃とし、口金よりシート状に溶融押し出した。また、前記のフィルターには、いずれもステンレス焼結体の濾材(公称濾過精度:10μm粒子を95%カット)を用いた。また、口金の温度は、押出された樹脂温度が275℃になるように制御した。
押し出した樹脂を、表面温度22℃に保った金属ロール上で急冷固化し、未延伸シートを得た。
得られた未延伸シートを、加熱されたロール群でフィルム温度を昇温した後、前後に配置した第一ニップロールと第二ニップロールとの間で、ニップロールの間に設けた赤外線ヒータ(第一赤外線ヒータ)によって加熱しながら、長手方向(縦方向)に2.77倍延伸した(一段目の縦延伸)。このとき、第一赤外線ヒータにおいて、表の側の赤外線出力を100%とすると、裏側の赤外線の出力を90%とした。ここで後側の第二ニップロールは冷却をした。
しかる後、その縦延伸後のフィルムを、第二ニップロールとその直後に配置した第三ニップロールとの間で、ニップロールの間に設けた赤外線ヒータ(第二赤外線ヒータ)によって加熱しながら、長手方向(縦方向)に1.17倍延伸した(二段目の縦延伸)。更に、第三ニップロールとその直後に配置した第四ニップロールとの間で、ニップロール間に設けた赤外線ヒータ(第三赤外線ヒータ)によって加熱しながら、長手方向(縦方向)に1.08倍延伸した(三段目の縦延伸)。第二、第三赤外線ヒータにおいて、表の側の赤外線出力を100%とすると、裏側の赤外線の出力を95%とした。なお、赤外線ヒータの出力と表面温度の関係を予めモデル機で測定をしておき、上記の設定により、フィルムの平均温度がいずれも100℃になるよう調整しながら、フィルム表面の温度差が表裏で、第一段目は2℃、第二段目は3℃、第三段目は3℃となるように調節した。
得られた一軸延伸ポリエステルフィルムの両面に前記塗布液を最終被覆層膜厚が0.08g/mとなるように塗布した後、135℃で乾燥させた。
塗布したフィルムをテンターに導き、135℃で4倍の横延伸を施した。その後、233℃で熱固定処理を施し、225℃で2.2%の横緩和処理を行った。これにより厚さ125μmの被覆層付き硬化樹脂積層用ポリエステルフィルムを得た。さらに、硬化性樹脂組成物Aを用いて硬化性樹脂積層体を作製した。得られたフィルムおよび積層体の特性を表1に示す。
(実施例2)
未延伸シートの引取速度を調整して未延伸シートの厚みを変更し、縦延伸を一段目に2.53倍、二段目に1.17倍、三段目に1.08倍と各延伸倍率を変更した以外は実施例1と同様に実施し、厚さ125μmの被覆層付き硬化樹脂積層用ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムおよび積層体の特性を表1に示す。
(実施例3)
未延伸シートの引取速度を調整して未延伸シートの厚みを変更し、縦延伸を一段目に2.6倍、二段目に1.27倍の二段の延伸に変更し、1.7%の横緩和処理を行ない、表1の様に表裏の温度差を設けた以外は実施例1と同様に実施し、厚さ188μmの被覆層付き硬化樹脂積層用ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムおよび積層体の特性を表1に示す。
(実施例4)
未延伸シートの引取速度を調整して未延伸シートの厚みを変更し、表1の様に表裏の温度差を設けた以外は実施例3と同様に実施し、厚さ250μmの被覆層付き硬化樹脂積層用ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムおよび積層体の特性を表1に示す。
(実施例5)
実施例4で得たフィルムを用いて積層体を作成する際に、硬化性樹脂組成物Bを用いた以外は、実施例4と同様にフィルムおよび積層体を得た。得られたフィルムおよび積層体の特性を表1に示す。
(実施例6)
(ポリエステル樹脂(C)の作成)
平均粒径2.3μm、細孔容積1.6ml/gの不定形塊状シリカ粒子をエチレングリコールに分散させ、不定形塊状シリカ粒子を濃度15質量%含有するエチレングリコールスラリーを作製した。
テレフタル酸を86.4部及びエチレングリコールを64.4部、および三酸化アンチモン、酢酸マグネシウム(4水和物)を、生成ポリエチレンテレフタレート(PET)に対してSb原子として250ppm、Mg原子として65ppmを添加した後、攪拌した。その後、30℃以下に保持した状態で上記グリコールスラリーを、生成PETに対して2000ppmとなるよう添加してから、窒素で加圧し昇温を開始した。エステル化反応は、3.5Kg/cmG(ゲージ圧:0.34MPa)の加圧下で、240℃で2時間行った。得られたエステル化反応生成物を重縮合反応缶に移送し、減圧下260℃から280℃へ徐々に昇温し、285℃で重縮合反応を行った。
重縮合反応終了後、ノズルからストランド状に押出し、予め濾過処理(孔径:1μm以下)を行った冷却水を用いて冷却、固化させ、ペレット状にカットし、不活性粒子を含有する固有粘度0.621dl/gであり、ヒドロキシル(OH)末端量は71eq/tonであり、環状三量体の含有量は1.03質量%、融点は253℃であった。得られた粗製ポリエステルをポリエステル樹脂(C)とする。
(ポリエステル樹脂(D)の作成)
ポリエステル樹脂(C)を減圧下160℃にて乾燥し、次いで、含水量が6.4g/Nmに調湿された窒素ガスを粗製ポリエステル1kg当たり、毎時70リットルの割合で流通し、207℃で48時間加熱処理を行った。得られたポリエステルの固有粘度は0.639dl/gであり、ヒドロキシル(OH)末端量は58eq/tonであり、環状オリゴマーの含有量は0.28質量%であった。得られた粗製ポリエステルをポリエステル樹脂(D)とする。
A層用原料として、ポリエステル樹脂(B)を、135℃で6時間減圧乾燥(1Torr)し、をA層用押出機(1)に供給した。B層用原料として、ポリエステル樹脂(B)とポリエステル樹脂(D)を、80:20の比率で混合した後、135℃で6時間減圧乾燥(1Torr)し、乾燥後のPETペレットをB層用押出機(2)に供給した。押出機に供給したポリマーを、285℃に溶融した後、それぞれ濾過粒子サイズ(初期濾過効率95%)が15μmの濾過材でろ過し、B層/A層/B層となるように積層し、積層比率が5/90/5となるように押出機の吐出量を調整した後、285℃でTダイスから層状に共押出し、未延伸シートの引取速度を調整して未延伸シートの厚みを変更し、表面温度22℃に保った金属ロール上で急冷固化し、未延伸シートを得た。得られた未延伸シートを用いた以外は実施例1と同様にして、厚さ300μmの被覆層付き硬化樹脂積層用ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムおよび積層体の特性を表1に示す。
(実施例7)
実施例1と同様にして得た未延伸フィルムを第一ニップロールの直前に設けた赤外線ヒータにより、表面のみ加熱し、表1に記載のようなフィルム表裏の温度差を設けた。しかる後、縦延伸した以外は実施例1と同様にして被覆層付き硬化性樹脂積層用フィルムを得た。得られたフィルムおよび積層体の特性を表1に示す。
(実施例8)
実施例4と同様にして得た未延伸フィルムを第一ニップロールの直前に設けた高速加熱エアにより、表面のみ加熱し、表1に記載のようなフィルム表裏の温度差を設けた。しかる後、縦延伸した以外は実施例4と同様にして被覆層付き硬化性樹脂積層用フィルムを得た。得られたフィルムおよび積層体の特性を表1に示す。
(実施例9)
未延伸シートの引取速度を調整して未延伸シートの厚みを変更し、縦延伸を一段目に3.00倍、二段目に1.17倍、三段目に1.08倍と各延伸倍率を変更した以外は実施例1と同様に実施し、厚さ125μmの被覆層付き硬化樹脂積層用ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムおよび積層体の特性を表1に示す。
(実施例10)
未延伸シートの引取速度を調整して未延伸シートの厚みを変更し、表1の様に表裏の温度差を設けた以外は実施例1と同様に実施し、厚さ75μmの被覆層付き硬化樹脂積層用ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムおよび積層体の特性を表1に示す
(実施例11)
未延伸シートの引取速度を調整して未延伸シートの厚みを変更し、縦延伸を一段目で3.5倍の延伸に変更し、表1の様に表裏の温度差を設けた以外は実施例4と同様に実施し、厚さ250μmの被覆層付き硬化樹脂積層用ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムおよび積層体の特性を表1に示す。
(実施例12)
ポリエステル樹脂(A)を減圧下160℃にて乾燥し、次いで、含水量が15.3g/Nmに調湿された窒素ガスを粗製ポリエステル1kg当たり、毎時300リットルで流通し、230℃で12時間加熱処理を行った。得られたポリエステルの固有粘度は0.617dl/gであり、ヒドロキシル(OH)末端量は63eq/tonであり、環状三量体の含有量は0.28質量%であった。新たに得られたポリエステル樹脂を用いること以外は実施例1と同様にして二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。得られたフィルムおよび積層体の特性を表1に示す。
(実施例13)
実施例1と同様にして、固有粘度が0.648dl/gであり、ヒドロキシル(OH)末端量は64eq/tonであり、環状三量体の含有量が1.2質量%、融点が245℃であるポリエステル樹脂(E)を得た。得られたポリエステルを、減圧下160℃にて乾燥し、次いで、含水量が15.3g/Nmに調湿された窒素ガスをポリエステル樹脂1kg当たり、毎時300リットルで流通し、220℃で24時間加熱処理を行った。得られたポリエステルをポリエステル樹脂(F)とする。固有粘度は0.623dl/gであり、ヒドロキシル(OH)末端量は57eq/tonであり、環状三量体の含有量は0.27質量%であった。ポリエステル樹脂(B)の代わりにポリエステル樹脂(F)を用いること以外は実施例1と同様にして二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。得られたフィルムおよび積層体の特性を表1に示す。
(比較例1)
ポリエステル樹脂(B)の代わりにポリエステル樹脂(A)を用いること以外は実施例1と同様に未延伸シートを得た後、縦延伸の一段目および二段目以降の赤外線ヒータの出力を調整して表裏の出力差が無い様に縦延伸を実施した以外は実施例1と同様にして被覆層付き硬化性樹脂積層用フィルムを得た。得られたフィルムおよび積層体の特性を表2に示す。
(比較例2)
ポリエステル樹脂(B)の代わりにポリエステル樹脂(A)を用い、未延伸シートの引取速度を調整して未延伸シートの厚みを変更し、表1の様に表裏の温度差を設けた以外は実施例3と同様に実施し、厚さ25μmの被覆層付き硬化樹脂積層用ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムおよび積層体の特性を表2に示す。
(比較例3)
ポリエステル樹脂(B)の代わりにポリエステル樹脂(A)を用い、未延伸シートの引取速度を調整して未延伸シートの厚みを変更し、縦延伸を一段目に2.37倍、二段目に1.17倍、三段目に1.08倍と各延伸倍率を変更し、縦延伸時のフィルムの平均延伸温度をいずれも115℃に変更し、横延伸を140℃で4倍延伸した以外は実施例1と同様に実施し、厚さ125μmの被覆層付き硬化樹脂積層用ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムおよび積層体の特性を表2に示す。
(比較例4)
A層用原料として、不活性粒子を含有していない、固有粘度が0.571dl/g、ヒドロキシル(OH)末端量は84eq/tonのポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂(G)を、135℃で6時間減圧乾燥(1Torr)した。次いで、乾燥後のPET樹脂をA層用押出機(1)に供給した。B層用原料として、ポリエステル樹脂(A)を135℃で6時間減圧乾燥(1Torr)した。次いで、乾燥後のポリエステル樹脂(A)をB層用押出機(2)に供給した。押出機に供給したポリマーを、285℃に溶融した後、それぞれ濾過粒子サイズ(初期濾過効率95%)が15μmの濾過材でろ過し、A層/B層となるように積層し、積層比率が30/70となるように押出機の吐出量を調整した後、285℃でTダイスから層状に共押出し、未延伸シートの引取速度を調整して未延伸シートの厚みを変更し、表面温度22℃に保った金属ロール上で急冷固化し、未延伸シートを得た。得られた未延伸シートを用いた以外は比較例1と同様にして、厚さ125μmの被覆層付き硬化樹脂積層用ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムおよび積層体の特性を表2に示す。
(比較例5)
実施例1と同様にして得られた粗製ポリエステルを減圧下160℃にて乾燥し、窒素雰囲気下0.1kg/cm2の微加圧に調整し、215℃で24時間加熱処理を行った。得られたポリエステルの固有粘度は0.622dl/gであり、ヒドロキシル(OH)末端量は73eq/tonであり、環状三量体の含有量は0.30質量%であった。
加熱処理後のポリエステルを実施例1と同様にして、厚さ125μmの被覆層付き硬化樹脂積層用ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムおよび積層体の特性を表2に示す。
(比較例6)
実施例1と同様にして得られた粗製ポリエステルを、減圧下160℃にて乾燥し、次いで、含水量が18.1g/Nmに調湿された窒素ガスを粗製ポリエステル1kg当たり、毎時40リットルで流通し、170℃で24時間加熱処理を行った。得られたポリエステル中の環状三量体の含有量は1.00質量%と全く減少しなかった。
加熱処理後のポリエステルを実施例1と同様にして、厚さ125μmの被覆層付き硬化樹脂積層用ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムおよび積層体の特性を表2に示す。
Figure 0005655380
Figure 0005655380
本発明の硬化性樹脂積層用二軸延伸ポリエステルフィルムは、平面性に優れ、積層体のベースフィルムとして好適である。例えば、レンズフィルム、拡散フィルム、ハードコートフィルム、NIRフィルムなどの各種光学フィルム、タッチパネル、ITO、太陽電池用保護フィルム、太陽電池用バックシート、偏光板保護フィルム、偏光子保護フィルム、等積層体のベースフィルムとして好適である。また、硬化性塗剤などを塗布、積層する建材用途、硬化性樹脂インキなどを用いる記録材用途、2枚以上のフィルムを張り合わせて用いる張り合わせ部材用途などのベースフィルムとしても好適である。

Claims (5)

  1. ポリエチレンテレフタレート系樹脂よりなる二軸延伸ポリエステルフィルムであって、
    下記要件(1)〜(6)を満たす硬化性樹脂積層用二軸延伸ポリエステルフィルム。
    (1)170℃、20分間加熱したときのフィルムヘイズ変化量△Hz(△Hz=加熱後ヘイズ−加熱前ヘイズ)が1.0未満
    (2)ヒドロキシル(OH)末端量が70eq/ton以下
    (3)環状三量体含有量が0.45質量%以下
    (4)厚みが30〜500μmであること
    (5)面配向度ΔPが、0.150〜0.180であること
    (6)下記方法により求めた表面軸配向度YmaxもしくはYminの少なくともいずれかの表裏の比が、0.80〜0.98であること
    (表面軸配向度の表裏の比)
    フィルム試料について、偏光ATR法により波長1340cm−1付近の吸光度A1340と波長1410cm−1付近の吸光度A1410を求め、下記式で表される比Yを求める。最初に測定した点を起点としてフィルム試料を10°毎に面内回転させ、0°〜170°の範囲でそれぞれ同様に測定する。得られた18点の中での最大値および最小値を表面軸配向度Ymax、Yminとする。係る表面軸配向度Ymax、Yminをフィルム試料の表裏で測定し、表裏いずれか大きい方の値を分母として表面軸配向度YmaxおよびYminの表裏の比を求める。
    Y=A1340/A1410
  2. 請求項1記載の硬化性樹脂積層用二軸延伸ポリエステルフィルムの少なくとも片面に被覆層を有する被覆層付き硬化性樹脂積層用二軸延伸ポリエステルフィルムであって、
    前記被覆層は、共重合ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂及びポリウレタン系樹脂の内、少なくとも1種を主成分とする、被覆層付き硬化性樹脂積層用二軸延伸ポリエステルフィルム。
  3. 請求項1記載の硬化性樹脂積層用二軸延伸ポリエステルフィルムを基材フィルムとして硬化性樹脂層を有する硬化性樹脂積層体。
  4. 請求項2記載の被覆層付き硬化性樹脂硬化性樹脂積層用二軸延伸ポリエステルフィルムを基材フィルムとして硬化性樹脂層を有する硬化性樹脂積層体。
  5. 請求項1〜4に記載のポリエチレンテレフタレートフィルムの製造方法であって、下記要件(7)〜(9)を満たす熱処理をしたポリエチレンテレフタレート樹脂を用いたポリエチレンテレフタレートフィルムの製造方法。
    (7)ジカルボン酸成分とグリコール成分との重縮合反応によって得られた固有粘度が0.50〜0.70dl/gの粗製ポリエステルを、含水量が3.5〜30.0g/Nmである調湿不活性ガスを、粗製ポリエステル1kg当たり毎時1リットル以上、10,000リットル以下の流量で流通させる。
    (8)190℃〜260℃で加熱処理を行う。
    (9)ポリエステルの極限粘度の変化が下記式を満足するように加熱処理を行う。
    −0.05dl/g≦(加熱処理前の極限粘度−加熱処理後の極限粘度)≦0.05dl/g
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