以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において、フィルムの原料として用いられるポリエステルは、主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレ−トであるポリエステルであって、好ましくはエチレンテレフタレ−ト単位を70モル%以上含む線状ポリエステルであり、さらに好ましくは80モル%以上、特に好ましくは95モル%以上含む線状ポリエステルである。
前記のポリエステルとして、テレフタル酸以外の1種以上のジカルボン酸成分、エチレングリコール以外の1種以上のグリコール成分、環状エステル、または多官能化合物を共重合成分として導入された共重合ポリエステルを使用してもよい。
共重合成分として使用することができる、テレフタル酸以外のジカルボン酸成分としては、オルソフタル酸、イソフタル酸、1,3−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニル−4,4−ジカルボン酸、4,4′−ビフェニルエーテルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−p,p′−ジカルボン酸、パモイン酸、アントラセンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸およびその機能的誘導体、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、ヒドロキシ酢酸、3−ヒドロキシ酪酸、p−ヒドロキシ安息香酸、p−(2−ヒドロキシエトキシ)安息香酸、4−ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸、またはその機能的誘導体、蓚酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、テトラデカンジカルボン酸などの脂肪族ジカルボン酸およびその機能的誘導体、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸およびその機能的誘導体などが挙げられる。
また、共重合成分として使用することができる、エチレングリコール以外のグリコール成分としては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,10−デカメチレングリコール、1,12−ドデカンジオール、ポリエチレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどの脂肪族グリコール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジエタノールなどの脂環族グリコール、ヒドロキノン、4,4′−ジヒドロキシビスフェノール、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシフェニル)スルホン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メタン、1,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)エタン、ビスフェノールA、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物などの芳香族グリコールなどが挙げられる。
また、共重合成分として使用することができる環状エステルとしては、ε−カプロラクトン、β−プロピオンラクトン、β−メチル−β−プロピオンラクトン、γ−バレロラクトン、グリコリド、ラクチドなどが挙げられる。
さらに、共重合成分として使用することができる多官能化合物としては、酸成分として、トリメリット酸、ピロメリット酸などをあげることができ、グリコール成分としてグリセリン、ペンタエリスリトールを挙げることができる。以上の共重合成分の添加量は、ポリエステルが実質的に線状を維持する程度でなければならない。また、単官能化合物、たとえば安息香酸、ナフトエ酸などを共重合させてもよい。
また、本発明でフィルム原料として用いるポリエステルには公知のリン化合物を共重合成分として含むことができる。リン系化合物としては二官能性リン系化合物が好ましく、たとえば(2−カルボキシルエチル)メチルホスフィン酸、(2−カルボキシエチル)フェニルホスフィン酸、9,10−ジヒドロ−10−オキサ−(2,3−カルボキシプロピル)−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイドなどが挙げられる。これらのリン系化合物を共重合成分として含むことで、得られるポリエステルの難燃性などを向上させることが可能である。
本発明において、ポリエステルの重縮合触媒を構成するアルミニウム化合物は溶媒に溶解するものであれば限定されないが、ギ酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、プロピオン酸アルミニウム、シュウ酸アルミニウム、アクリル酸アルミニウム、ラウリン酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、安息香酸アルミニウム、トリクロロ酢酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、クエン酸アルミニウム、酒石酸アルミニウム、サリチル酸アルミニウムなどのカルボン酸塩、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、炭酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、ホスフォン酸アルミニウムなどの無機酸塩、アルミニウムメトキサイド、アルミニウムエトキサイド、アルミニウムn−プロポキサイド、アルミニウムiso−プロポキサイド、アルミニウムn−ブトキサイド、アルミニウムt−ブトキサイドなどアルミニウムアルコキサイド、アルミニウムアセチルアセトネート、アルミニウムアセチルアセテ−ト、アルミニウムエチルアセトアセテ−ト、アルミニウムエチルアセトアセテ−トジiso−プロポキサイドなどのアルミニウムキレ−ト化合物、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物及びこれらの部分加水分解物、アルミニウムのアルコキサイドやアルミニウムキレ−ト化合物とヒドロキシカルボン酸からなる反応生成物、酸化アルミニウム、超微粒子酸化アルミニウム、アルミニウムシリケ−ト、アルミニウムとチタンやケイ素やジルコニウムやアルカリ金属やアルカリ土類金属などとの複合酸化物などが挙げられる。これらのうちカルボン酸塩、無機酸塩及びキレ−ト化合物が好ましく、これらの中でもさらに酢酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化塩化アルミニウム及びアルミニウムアセチルアセトネートが特に好ましい。
これらのアルミニウム化合物の中でも、アルミニウム含有量が高い酢酸アルミニウム、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化塩化アルミニウムが好ましく、さらに溶解度の観点から酢酸アルミニウム、塩化アルミニウム、水酸化塩化アルミニウムが好ましい。さらに、装置を腐食しない観点から、酢酸アルミニウムの使用が特に好ましい。
ここで、水酸化塩化アルミニウムは一般にポリ塩化アルミニウムや塩基性塩化アルミニウムなどとも呼ばれるものの総称であり、水道用に使われるものなどが使用できる。これらは、例えば一般構造式[Al2(OH)nCl6−n]m(ただし1≦n≦5)で表される。これらの中でも、装置を腐食しない観点から塩素含有量の少ないものが好ましい。
前記の酢酸アルミニウムは、塩基性酢酸アルミニウム、トリ酢酸アルミニウム、酢酸アルミニウム溶液などに代表される酢酸のアルミニウム塩の構造を有するものの総称であり、これらの中でも、溶解性および溶液の安定性の観点から、塩基性酢酸アルミニウムの使用が好ましい。塩基性酢酸アルミニウムの中でも、モノ酢酸アルミニウム、ジ酢酸アルミニウム、あるいはこれらがホウ酸で安定化されたものが好ましい。塩基性酢酸アルミニウムの安定剤としては、ホウ酸以外に尿素、チオ尿素などが挙げられる。
前記のアルミニウム化合物は、水やグリコールなどの溶媒に可溶化したものが好ましい。前記の溶媒としては、水およびアルキレングリコール類が好ましい。アルキレングリコール類には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、トリメチレングリコール、ジトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ジテトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコールなどが挙げられる。好ましくは、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、さらに好ましくはエチレングリコールである。水および/またはエチレングリコールに可溶化したものを用いることが本発明の効果を顕著に発現することができるので好ましい。
本発明で、ポリエステルを製造する際のアルミニウム化合物の添加量としては、得られるポリエステルのジカルボン酸や多価カルボン酸などのカルボン酸成分の全構成ユニットのモル数に対してアルミニウム原子として0.001〜0.05モル%が好ましく、更に好ましくは0.005〜0.02モル%である。添加量が0.001モル%未満であると触媒活性が十分に発揮されない場合があり、添加量が0.05モル%より多いと、熱安定性や熱酸化安定性の低下、アルミニウムに起因する異物の発生や着色の増加が問題になる場合が発生する。この様にアルミニウム成分の添加量が少なくても前記の重縮合触媒は十分な触媒活性を示す点に大きな特徴を有する。その結果熱安定性や熱酸化安定性が優れ、アルミニウムに起因する異物や着色が低減される。
前記の重縮合触媒を構成するリン化合物としては、特に限定はされないが、リン酸ならびにトリメチルリン酸、トリエチルリン酸、フェニルリン酸、トリフェニルリン酸等のリン酸エステル、亜リン酸ならびにトリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)4,4′−ビフェニレンジホスファイト等の亜リン酸エステルなどが挙げられる。
前記の重合触媒を構成するリン化合物としては、特に限定はされないが、リン酸、ならびにトリメチルリン酸、トリエチルリン酸、フェニルリン酸、トリフェニルリン酸等のリン酸エステル、亜リン酸、ならびにトリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)4,4′−ビフェニレンジホスファイト等の亜リン酸エステルなどが挙げられる。
より好ましいリン化合物は、ホスフォン酸系化合物、ホスフィン酸系化合物、ホスフィンオキサイド系化合物、亜ホスフォン酸系化合物、亜ホスフィン酸系化合物、ホスフィン系化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種のリン化合物である。これらのリン化合物を用いることで触媒活性の向上効果が見られるとともに、ポリエステルの熱安定性等の物性が改善する効果が見られる。これらの中でも、ホスフォン酸系化合物を用いると物性改善効果や触媒活性の向上効果が大きく好ましい。前記のリン化合物の中でも、芳香環構造を有する化合物を用いると物性改善効果や触媒活性の向上効果が大きく好ましい。
前記のホスフォン酸系化合物、ホスフィン酸系化合物、ホスフィンオキサイド系化合物、亜ホスフォン酸系化合物、亜ホスフィン酸系化合物、ホスフィン系化合物とは、それぞれ下記化学式(化1)〜(化6)で表される構造を有する化合物のことを言う。
前記のホスフォン酸系化合物としては、例えば、メチルホスフォン酸ジメチル、メチルホスフォン酸ジフェニル、フェニルホスフォン酸ジメチル、フェニルホスフォン酸ジエチル、フェニルホスフォン酸ジフェニル、ベンジルホスフォン酸ジメチル、ベンジルホスフォン酸ジエチルなどが挙げられる。前記のホスフィン酸系化合物としては、例えば、ジフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸メチル、ジフェニルホスフィン酸フェニル、フェニルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸メチル、フェニルホスフィン酸フェニルなどが挙げられる。前記のホスフィンオキサイド系化合物としては、例えば、ジフェニルホスフィンオキサイド、メチルジフェニルホスフィンオキサイド、トリフェニルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。
ホスフィン酸系化合物、ホスフィンオキサイド系化合物、亜ホスフォン酸系化合物、亜ホスフィン酸系化合物、ホスフィン系化合物の中では、前記のリン化合物としては、下記化学式(化7)〜(化12)で表される化合物が好ましい。
前記のリン化合物の中でも、芳香環構造を有する化合物を用いると物性改善効果や触媒活性の向上効果が大きく好ましい。
また、前記のリン化合物としては、下記化学式(化13)〜(化15)で表される化合物を用いると物性改善効果や触媒活性の向上効果が特に大きく好ましい。
(化学式(化13)〜(化15)中、R1、R4、R5、R6はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはハロゲン基またはアルコキシル基またはアミノ基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R2、R3はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。ただし、炭化水素基はシクロヘキシル等の脂環構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)
前記のリン化合物としては、上記化学式(化13)〜(化15)中、R1、R4、R5、R6が芳香環構造を有する基である化合物が特に好ましい。
前記のリン化合物としては、例えば、メチルホスフォン酸ジメチル、メチルホスフォン酸ジフェニル、フェニルホスフォン酸ジメチル、フェニルホスフォン酸ジエチル、フェニルホスフォン酸ジフェニル、ベンジルホスフォン酸ジメチル、ベンジルホスフォン酸ジエチル、ジフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸メチル、ジフェニルホスフィン酸フェニル、フェニルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸メチル、フェニルホスフィン酸フェニル、ジフェニルホスフィンオキサイド、メチルジフェニルホスフィンオキサイド、トリフェニルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。これらのうちで、フェニルホスフォン酸ジメチル、ベンジルホスフォン酸ジエチルが特に好ましい。
上述したリン化合物の中でも、本発明では、リン化合物としてリンの金属塩化合物が特に好ましい。リンの金属塩化合物とは、リン化合物の金属塩であれば特に限定はされないが、ホスフォン酸系化合物の金属塩を用いると、ポリエステルの物性改善効果や触媒活性の向上効果が大きく好ましい。リン化合物の金属塩としては、モノ金属塩、ジ金属塩、トリ金属塩などが含まれる。
また、前記のリン化合物の中でも、金属塩の金属部分が、Li、Na、K、Be、Mg、Sr、Ba、Mn、Ni、Cu、Znから選択されたものを用いると触媒活性の向上効果が大きく好ましい。これらのうち、Li、Na、Mgが特に好ましい。
前記のリンの金属塩化合物としては、下記化学式(化16)で表される化合物から選択される少なくとも一種を用いると物性改善効果や触媒活性の向上効果が大きく好ましい。
(化学式(化16)中、R1は水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはハロゲン基またはアルコキシル基またはアミノ基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R2は、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R3は、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基またはカルボニルを含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。lは1以上の整数、mは0または1以上の整数を表し、l+mは4以下である。Mは(l+m)価の金属カチオンを表す。nは1以上の整数を表す。炭化水素基はシキロヘキシル等の脂環構造や分岐構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)
前記のR1としては、例えば、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、9−アンスリル、4−ビフェニル、2−ビフェニルなどが挙げられる。前記のR2としては例えば、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、長鎖の脂肪族基、フェニル基、ナフチル基、置換されたフェニル基やナフチル基、−CH2CH2OHで表される基などが挙げられる。R3O−としては例えば、水酸化物イオン、アルコラ−トイオン、アセテ−トイオンやアセチルアセトンイオンなどが挙げられる。
上記化学式(化16)で表される化合物の中でも、下記化学式(化17)で表される化合物から選択される少なくとも一種を用いることが好ましい。
(化学式(化17)中、R1は水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはハロゲン基またはアルコキシル基またはアミノ基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R3は、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基またはカルボニルを含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。lは1以上の整数、mは0または1以上の整数を表し、l+mは4以下である。Mは(l+m)価の金属カチオンを表す。炭化水素基はシキロヘキシル等の脂環構造や分岐構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)
前記のR1としては、例えば、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、9−アンスリル、4−ビフェニル、2−ビフェニルなどが挙げられる。R3O−としては例えば、水酸化物イオン、アルコラ−トイオン、アセテ−トイオンやアセチルアセトンイオンなどが挙げられる。
前記のリン化合物の中でも、芳香環構造を有する化合物を用いると、物性改善効果や触媒活性の向上効果が大きく好ましい。
上記の化学式(化17)の中でも、Mが、Li,Na、K、Be、Mg、Sr、Ba、Mn、Ni、Cu、Znから選択されたものを用いると触媒活性の向上効果が大きく好ましい。これらのうち、Li、Na、Mgが特に好ましい。
前記のリンの金属塩化合物としては、リチウム[(1−ナフチル)メチルホスフォン酸エチル]、ナトリウム[(1−ナフチル)メチルホスフォン酸エチル]、マグネシウムビス[(1−ナフチル)メチルホスフォン酸エチル]、カリウム[(2−ナフチル)メチルホスフォン酸エチル]、マグネシウムビス[(2−ナフチル)メチルホスフォン酸エチル]、リチウム[ベンジルホスフォン酸エチル]、ナトリウム[ベンジルホスフォン酸エチル]、マグネシウムビス[ベンジルホスフォン酸エチル]、ベリリウムビス[ベンジルホスフォン酸エチル]、ストロンチウムビス[ベンジルホスフォン酸エチル]、マンガンビス[ベンジルホスフォン酸エチル]、ベンジルホスフォン酸ナトリウム、マグネシウムビス[ベンジルホスフォン酸]、ナトリウム[(9−アンスリル)メチルホスフォン酸エチル]、マグネシウムビス[(9−アンスリル)メチルホスフォン酸エチル]、ナトリウム[4−ヒドロキシベンジルホスフォン酸エチル]、マグネシウムビス[4−ヒドロキシベンジルホスフォン酸エチル]、ナトリウム[4−クロロベンジルホスフォン酸フェニル]、マグネシウムビス[4−クロロベンジルホスフォン酸エチル]、ナトリウム[4−アミノベンジルホスフォン酸メチル]、マグネシウムビス[4−アミノベンジルホスフォン酸メチル]、フェニルホスフォン酸ナトリウム、マグネシウムビス[フェニルホスフォン酸エチル]、亜鉛ビス[フェニルホスフォン酸エチル]などが挙げられる。これらの中で、リチウム[(1−ナフチル)メチルホスフォン酸エチル]、ナトリウム[(1−ナフチル)メチルホスフォン酸エチル]、マグネシウムビス[(1−ナフチル)メチルホスフォン酸エチル]、リチウム[ベンジルホスフォン酸エチル]、ナトリウム[ベンジルホスフォン酸エチル]、マグネシウムビス[ベンジルホスフォン酸エチル]、ベンジルホスフォン酸ナトリウム、マグネシウムビス[ベンジルホスフォン酸]が特に好ましい。
上述したリン化合物の中でも、P−OH結合を少なくとも1つ有するリン化合物が特に好ましい。これらのリン化合物を含有することでポリエステルの物性改善効果が特に高まることに加えて、ポリエステルの重合時に、これらのリン化合物を前記のアルミニウム化合物と共存して用いることで触媒活性の向上効果が大きく見られる。
P−OH結合を少なくとも1つ有するリン化合物とは、分子内にP−OHを少なくとも1つ有するリン化合物であれば特に限定はされない。これらのリン化合物の中でも、P−OH結合を少なくとも1つ有するホスフォン酸系化合物を用いるとアルミニウム化合物との錯体形成が容易になり、ポリエステルの物性改善効果や触媒活性の向上効果が大きく好ましい。
前記のリン化合物の中でも、芳香環構造を有する化合物を用いると物性改善効果や触媒活性の向上効果が大きく好ましい。
前記のP−OH結合を少なくとも1つ有するリン化合物としては、下記一般式(化18)で表される化合物から選択される少なくとも一種を用いると物性改善効果や触媒活性の向上効果が大きく好ましい。
(化学式(化18)中、R1は水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはハロゲン基またはアルコキシル基またはアミノ基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R2は、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。nは1以上の整数を表す。炭化水素基はシキロヘキシル等の脂環構造や分岐構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)
前記のR1としては、例えば、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、9−アンスリル、4−ビフェニル、2−ビフェニルなどが挙げられる。前記のR2としては例えば、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、長鎖の脂肪族基、フェニル基、ナフチル基、置換されたフェニル基やナフチル基、−CH2CH2OHで表される基などが挙げられる。
前記のリン化合物の中でも、芳香環構造を有する化合物を用いると物性改善効果や触媒活性の向上効果が大きく好ましい。
前記のP−OH結合を少なくとも1つ有するリン化合物としては、(1−ナフチル)メチルホスフォン酸エチル、(1−ナフチル)メチルホスフォン酸、(2−ナフチル)メチルホスフォン酸エチル、ベンジルホスフォン酸エチル、ベンジルホスフォン酸、(9−アンスリル)メチルホスフォン酸エチル、4−ヒドロキシベンジルホスフォン酸エチル、2−メチルベンジルホスフォン酸エチル、4−クロロベンジルホスフォン酸フェニル、4−アミノベンジルホスフォン酸メチル、4−メトキシベンジルホスフォン酸エチルなどが挙げられる。これらの中で、(1−ナフチル)メチルホスフォン酸エチル、ベンジルホスフォン酸エチルが特に好ましい。
前記の好ましいリン化合物としては、化学式(化19)であらわされるリン化合物が挙げられる。
(化学式(化19)中、R1は炭素数1〜49の炭化水素基、または水酸基またはハロゲン基またはアルコキシル基またはアミノ基を含む炭素数1〜49の炭化水素基を表し、R2,R3はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。炭化水素基は脂環構造や分岐構造や芳香環構造を含んでいてもよい。)
また、更に好ましくは、化学式(化19)中のR1,R2,R3の少なくとも1つが芳香環構造を含む化合物である。
これらのリン化合物の具体例を以下に示す。
また、前記のリン化合物は、分子量が大きいものの方が重合時に留去されにくいため効果が大きく好ましい。
前記のリン化合物は、フェノール部を同一分子内に有するリン化合物であることが好ましい。フェノール部を同一分子内に有するリン化合物を含有することでポリエステルの物性改善効果が高まることに加えて、ポリエステルの重合時にフェノール部を同一分子内に有するリン化合物を用いることで触媒活性を高める効果がより大きく、したがってポリエステルの生産性に優れる。
フェノール部を同一分子内に有するリン化合物としては、フェノール構造を有するリン化合物であれば特に限定はされないが、フェノール部を同一分子内に有する、ホスフォン酸系化合物、ホスフィン酸系化合物、ホスフィンオキサイド系化合物、亜ホスフォン酸系化合物、亜ホスフィン酸系化合物、ホスフィン系化合物からなる群より選ばれる一種または二種以上の化合物を用いるとポリエステルの物性改善効果や触媒活性の向上効果が大きく好ましい。これらの中でも、一種または二種以上のフェノール部を同一分子内に有するホスフォン酸系化合物を用いるとポリエステルの物性改善効果や触媒活性の向上効果が特に大きく好ましい。
前記のフェノール部を同一分子内に有するリン化合物としては、下記化学式(化26)〜(化28)で表される化合物が好ましい。
(化学式(化26)〜(化28)中、R1はフェノール部を含む炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはハロゲン基またはアルコキシル基またはアミノ基などの置換基およびフェノール部を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R4,R5,R6はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはハロゲン基またはアルコキシル基またはアミノ基などの置換基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R2,R3はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基などの置換基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。ただし、炭化水素基は分岐構造やシクロヘキシル等の脂環構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。R2とR4の末端どうしは結合していてもよい。)
前記のフェノール部を同一分子内に有するリン化合物としては、例えば、p−ヒドロキシフェニルホスフォン酸、p−ヒドロキシフェニルホスフォン酸ジメチル、p−ヒドロキシフェニルホスフォン酸ジエチル、p−ヒドロキシフェニルホスフォン酸ジフェニル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(p−ヒドロキシフェニル)ホスフィン酸メチル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)ホスフィン酸フェニル、p−ヒドロキシフェニルフェニルホスフィン酸、p−ヒドロキシフェニルフェニルホスフィン酸メチル、p−ヒドロキシフェニルフェニルホスフィン酸フェニル、p−ヒドロキシフェニルホスフィン酸、p−ヒドロキシフェニルホスフィン酸メチル、p−ヒドロキシフェニルホスフィン酸フェニル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)ホスフィンオキサイド、トリス(p−ヒドロキシフェニル)ホスフィンオキサイド、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メチルホスフィンオキサイド、および下記化学式(化29)〜(化32)で表される化合物などが挙げられる。これらのうちで、下記化学式(化31)で表される化合物およびp−ヒドロキシフェニルホスフォン酸ジメチルが特に好ましい。
前記の化学式(化31)にて示される化合物としては、SANKO−220(三光株式会社製)が市販されており、入手可能である。
前記のフェノール部を同一分子内に有するリン化合物の中でも、下記化学式(化33)で表される特定のリンの金属塩化合物から選択される少なくとも一種が特に好ましい。
(化学式(化33)中、R1、R2はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜30の炭化水素基を表す。R3は、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R4は、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基またはカルボニルを含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R4O−としては例えば、水酸化物イオン、アルコラ−トイオン、アセテ−トイオンやアセチルアセトンイオンなどが挙げられる。lは1以上の整数、mは0または1以上の整数を表し、l+mは4以下である。Mは(l+m)価の金属カチオンを表す。nは1以上の整数を表す。炭化水素基はシキロヘキシル等の脂環構造や分岐構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)
これらの中でも、下記化学式(化34)で表される化合物から選択される少なくとも一種が好ましい。
(化学式(化34)中、Mn+はn価の金属カチオンを表す。nは1,2,3または4を表す。)
上記の化学式(化33)または(化34)の中でも、Mが、Li,Na、K、Be、Mg、Sr、Ba、Mn、Ni、Cu、Znから選択されたものを用いると触媒活性の向上効果が大きく好ましい。これらのうち、Li、Na、Mgが特に好ましい。
前記の特定のリンの金属塩化合物としては、リチウム[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスフォン酸エチル]、ナトリウム[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスフォン酸エチル]、ナトリウム[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスフォン酸]、カリウム[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスフォン酸エチル]、マグネシウムビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスフォン酸エチル]、マグネシウムビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスフォン酸]、ベリリウムビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスフォン酸メチル]、ストロンチウムビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスフォン酸エチル]、バリウムビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスフォン酸フェニル]、マンガンビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスフォン酸エチル]、ニッケルビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスフォン酸エチル]、銅ビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスフォン酸エチル]、亜鉛ビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスフォン酸エチル]などが挙げられる。これらの中で、リチウム[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスフォン酸エチル]、ナトリウム[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスフォン酸エチル]、マグネシウムビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスフォン酸エチル]が特に好ましい。
前記のフェノール部を同一分子内に有するリン化合物の中でも、下記化学式(化35)で表されるP−OH結合を少なくとも1つ有する特定のリン化合物から選択される少なくとも一種が特に好ましい。
(化学式(化35)中、R1、R2はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜30の炭化水素基を表す。R3は、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。nは1以上の整数を表す。炭化水素基はシキロヘキシル等の脂環構造や分岐構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)
これらの中でも、下記化学式(化36)で表される化合物から選択される少なくとも一種が好ましい。
(化学式(化36)中、R3は、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。炭化水素基はシキロヘキシル等の脂環構造や分岐構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)
前記のR3としては例えば、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、長鎖の脂肪族基、フェニル基、ナフチル基、置換されたフェニル基やナフチル基、−CH2CH2OHで表される基などが挙げられる。
前記のP−OH結合を少なくとも1つ有する特定のリン化合物としては、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスフォン酸エチル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスフォン酸メチル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスフォン酸イソプロピル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスフォン酸フェニル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスフォン酸オクタデシル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスフォン酸などが挙げられる。これらの中で、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスフォン酸エチル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスフォン酸メチルが特に好ましい。
前記のフェノール部を同一分子内に有するリン化合物の中でも、下記化学式(化37)で表される特定のリン化合物から選ばれる少なくとも一種のリン化合物が好ましい。
(上記化学式(化37)中、R1、R2はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜30の炭化水素基を表す。R3、R4はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。nは1以上の整数を表す。炭化水素基はシクロヘキシル等の脂環構造や分岐構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)
上記化学式(化37)の中でも、下記化学式(化38)で表される化合物から選択される少なくとも一種を用いると、ポリエステルの物性改善効果や触媒活性の向上効果が高く好ましい。
(上記化学式(化38)中、R3、R4はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。炭化水素基はシクロヘキシル等の脂環構造や分岐構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)
上記の化学式のR3、R4としては例えば、水素、メチル基、ブチル基等の短鎖の脂肪族基、オクタデシル等の長鎖の脂肪族基、フェニル基、ナフチル基、置換されたフェニル基やナフチル基等の芳香族基、−CH2CH2OHで表される基などが挙げられる。
前記の特定のリン化合物としては、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスフォン酸ジイソプロピル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスフォン酸ジ−n−ブチル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスフォン酸ジオクタデシル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスフォン酸ジフェニルなどが挙げられる。これらの中で、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスフォン酸ジオクタデシル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスフォン酸ジフェニルが特に好ましい。
前記のフェノール部を同一分子内に有するリン化合物の中でも、本発明で特に好ましい化合物は、化学式(化39)、(化40)で表される化合物から選ばれる少なくとも一種のリン化合物である。
前記の化学式(化39)にて示される化合物としては、Irganox1222(チバ・スペシャルティ−ケミカルズ社製)が市販されており、また化学式(化40)にて示される化合物としてはIrganox1425(チバ・スペシャルティ−ケミカルズ社製)が市販されており、入手可能である。
本発明で使用できるその他のリン化合物としては、下記の化学式(化41)、(化42)で表される連結基(X)を有するホスフォン酸系あるいは(化43)で表される連結基(X)を有さないホスフォン酸系などが挙げられる。
前記の広範な連結基(X)を有するリン化合物である下記の化学式(化41)で表されるリン化合物は次のようなものである。
R1−X−(P=O)(OR2)(OR3) (化41)
(連結基を有する前記化学式(化41)中、R1は炭素数6〜50の芳香環構造あるいは炭素数4〜50の複素環構造を表し、該芳香環構造あるいは複素環構造は置換基を有していてもよい。Xは連結基であり、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素(直鎖状あるいは分岐構造あるいは脂環構造であってもかまわない)、あるいは置換基を含有する炭素数1〜10の脂肪族炭化水素(直鎖状あるいは分岐構造あるいは脂環構造であってもかまわない)、−O−、−OCH2−、−SO2−、−CO−、−COCH2−、−CH2OCO−、−NHCO−、−NH−、−NHCONH−、−NHSO2−、−NHC3H6OCH2CH2O−から選ばれる。また、R2およびR3はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜20の炭化水素基を表す。炭化水素基は脂環構造や分岐構造や芳香環構造を有していてもよい。)
化学式(化41)で表されるリン化合物の芳香環構造および複素環構造の置換基が、炭素数1〜50の炭化水素基(直鎖状であっても脂環構造、分岐構造、芳香環構造であってもよく、これらがハロゲン置換されたものであってもよい)または水酸基またはハロゲン基または炭素数1〜10のアルコキシル基またはアミノ基(炭素数1〜10のアルキルあるいはアルカノール置換されていてもかまわない)あるいはニトロ基あるいはカルボキシル基あるいは炭素数1〜10の脂肪族カルボン酸エステル基あるいはホルミル基あるいはアシル基あるいはスルホン酸基、スルホン酸アミド基(炭素数1〜10のアルキルあるいはアルカノール置換されていてもかまわない)、ホスホリル含有基、ニトリル基、シアノアルキル基、から選ばれる1種もしくは2種以上である。
化学式(化41)で表されるリン化合物には次のようなものが挙げられる。具体的には、ベンジルホスフォン酸、ベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、1−ナフチルメチルホスフォン酸、1−ナフチルメチルホスフォン酸モノエチルエステル、2−ナフチルメチルホスフォン酸、2−ナフチルメチルホスフォン酸モノエチルエステル、4−フェニル,ベンジルホスフォン酸、4−フェニル,ベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、2−フェニル,ベンジルホスフォン酸、2−フェニル,ベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、4−クロル,ベンジルホスフォン酸、4−クロル,ベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、4−クロル,ベンジルホスフォン酸ジエチルエステル、4−メトキシ,ベンジルホスフォン酸、4−メトキシ,ベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、4−メトキシ,ベンジルホスフォン酸ジエチルエステル、4−メチル,ベンジルホスフォン酸、4−メチル,ベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、4−メチル,ベンジルホスフォン酸ジエチルエステル、4−ニトロ,ベンジルホスフォン酸、4−ニトロ,ベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、4−ニトロ,ベンジルホスフォン酸ジエチルエステル、4−アミノ,ベンジルホスフォン酸、4−アミノ,ベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、4−アミノ,ベンジルホスフォン酸ジエチルエステル、2−メチル, ベンジルホスフォン酸、2−メチル, ベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、2−メチル, ベンジルホスフォン酸ジエチルエステル、10−アンスラニルメチルホスフォン酸、10−アンスラニルメチルホスフォン酸モノエチルエステル、10−アンスラニルメチルホスフォン酸ジエチルエステル、(4−メトキシフェニル−,エトキシ−)メチルホスフォン酸、(4−メトキシフェニル−,エトキシ−)メチルホスフォン酸モノメチルエステル、(4−メトキシフェニル−,エトキシ−)メチルホスフォン酸ジメチルエステル、(フェニル−,ヒドロキシ−)メチルホスフォン酸、(フェニル−,ヒドロキシ−)メチルホスフォン酸モノエチルエステル、(フェニル−,ヒドロキシ−)メチルホスフォン酸ジエチルエステル、(フェニル−,クロル−)メチルホスフォン酸、(フェニル−,クロル−)メチルホスフォン酸モノエチルエステル、(フェニル−,クロル−)メチルホスフォン酸ジエチルエステル、(4−クロルフェニル)−イミノホスフォン酸、(4−クロルフェニル)−イミノホスフォン酸モノエチルエステル、(4−クロルフェニル)−イミノホスフォン酸ジエチルエステル、(4−ヒドロキシフェニル−,ジフェニル−)メチルホスフォン酸、(4−ヒドロキシフェニル−,ジフェニル−)メチルホスフォン酸モノエチルエステル、(4−ヒドロキシフェニル−,ジフェニル−)メチルホスフォン酸ジエチルエステル、(4−クロルフェニル−,ヒドロキシ−)メチルホスフォン酸、(4−クロルフェニル−,ヒドロキシ−)メチルホスフォン酸モノメチルエステル、(4−クロルフェニル−,ヒドロキシ−)メチルホスフォン酸ジメチルエステル、その他、複素環を含有するリン化合物としては、2−ベンゾフラニルメチルホスフォン酸ジエチルエステル、2−ベンゾフラニルメチルホスフォン酸モノエチルエステル、2−ベンゾフラニルメチルホスフォン酸、2−(5−メチル)ベンゾフラニルメチルホスフォン酸ジエチルエステル、2−−(5−メチル)ベンゾフラニルメチルホスフォン酸モノエチルエステル、2−−(5−メチル)ベンゾフラニルメチルホスフォン酸などが挙げられる。前記の連結基を有するリン化合物は、重合活性の点で好ましい態様である。
また、連結基(X=−(CH2)n−)を有する化学式(化42)で表されるリン化合物とは次のようなものである。
(R0)m−R1−(CH2)n−(P=O)(OR2)(OR3) (化42)
化学式(化42)中、R0は、水酸基、C1〜C10のアルキル基、−COOH基あるいは−COOR4(R4は、C1〜C4のアルキル基を表す)、アルキレングリコール基あるいはモノアルコキシアルキレングリコール基を表す。なお、モノアルコキシはC1〜C4を、アルキレングリコールはC1〜C4のグリコールを表す。
化学式(化42)において、R1はベンゼン、ナフタレン、ビフェニル、ジフェニルエーテル、ジフェニルチオエーテル、ジフェニルスルホン、ジフェニルメタン、ジフェニルジメチルメタン、ジフェニルケトン、アントラセン、フェナントレンおよびピレンなどの芳香環構造を表す。R2およびR3は、それぞれ独立に、水素原子、C1〜C4の炭化水素基を表す。mは1〜5の整数を表し、R0が複数個の場合、同一置換基あるいは異なる置換基の組合せであってもかまわない。nは0あるいは1〜5の整数を表す。
前記の化学式(化42)で表されるリン化合物の中で、置換基を有する芳香環構造がベンゼンであるリン化合物としては次のようなものが挙げられる。すなわち、2−ヒドロキシベンジルホスフォン酸ジエチルエステル、2−ヒドロキシベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、2−ヒドロキシベンジルホスフォン酸、4−ヒドロキシベンジルホスフォン酸ジエチルエステル、4−ヒドロキシベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、4−ヒドロキシベンジルホスフォン酸、6−ヒドロキシベンジルホスフォン酸ジエチルエステル、6−ヒドロキシベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、6−ヒドロキシベンジルホスフォン酸などのベンゼン環に水酸基を導入したベンジルホスフォン酸類が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
2−n−ブチルベンジルホスフォン酸ジエチルエステル、2−n−ブチルベンジルホスフォン酸モノメチルエステル、2−n−ブチルベンジルホスフォン酸、3−n−ブチルベンジルホスフォン酸ジエチルエステル、3−n−ブチルベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、3−n−ブチルベンジルホスフォン酸、4−n−ブチルベンジルホスフォン酸ジエチルエステル、4−n−ブチルベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、4−n−ブチルベンジルホスフォン酸、2,5−n−ジブチルベンジルホスフォン酸ジエチルエステル、2,5−n−ジブチルベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、2,5−n−ジブチルベンジルホスフォン酸、3,5−n−ジブチルベンジルホスフォン酸ジエチルエステル、3,5−n−ジブチルベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、3,5−n−ジブチルベンジルホスフォン酸などのベンゼン環にアルキルを導入したベンジルホスフォン酸類が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
さらに、2−カルボキシベンジルホスフォン酸ジエチルエステル、2−カルボキシベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、2−カルボキシベンジルホスフォン酸、3−カルボキシベンジルホスフォン酸ジエチルエステル、3−カルボキシベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、3−カルボキシベンジルホスフォン酸、4−カルボキシベンジルホスフォン酸ジエチルエステル、4−カルボキシベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、4−カルボキシベンジルホスフォン酸、2,5−ジカルボキシベンジルホスフォン酸ジエチルエステル、2,5−ジカルボキシベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、2,5−ジカルボキシベンジルホスフォン酸、3,5−ジカルボキシベンジルホスフォン酸ジエチルエステル、3,5−ジカルボキシベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、3,5−ジカルボキシベンジルホスフォン酸、2−メトキシカルボニルベンジルホスフォン酸ジエチルエステル、2−メトキシカルボニルベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、2−メトキシカルボニルベンジルホスフォン酸、3−メトキシカルボニルベンジルホスフォン酸ジエチルエステル、3−メトキシカルボニルベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、3−メトキシカルボニルベンジルホスフォン酸、4−メトキシカルボニルベンジルホスフォン酸ジエチルエステル、4−メトキシカルボニルベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、4−メトキシカルボニルベンジルホスフォン酸、2,5−ジメトキシカルボニルベンジルホスフォン酸ジエチルエステル、2,5−ジメトキシカルボニルベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、2,5−ジメトキシカルボニルベンジルホスフォン酸、3,5−ジメトキシカルボニルベンジルホスフォン酸ジエチルエステル、3,5−ジメトキシカルボニルベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、3,5−ジメトキシカルボニルベンジルホスフォン酸などのベンゼン環にカルボキル基あるいはカルボン酸エステル基を導入したベンジルホスフォン酸類が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
さらに、2−(2−ヒドロキシエトキシ)ベンジルホスフォン酸ジエチルエステル、2−(2−ヒドロキシエトキシ)ベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、2−(2−ヒドロキシエトキシ)ベンジルホスフォン酸、3−(2−ヒドロキシエトキシ)ベンジルホスフォン酸ジエチルエステル、3−(2−ヒドロキシエトキシ)ベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、3−(2−ヒドロキシエトキシ)ベンジルホスフォン酸、4−(2−ヒドロキシエトキシ)ベンジルホスフォン酸ジエチルエステル、4−(2−ヒドロキシエトキシ)ベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、4−(2−ヒドロキシエトキシ)ベンジルホスフォン酸、2,5−ジ(2−ヒドロキシエトキシ)ベンジルホスフォン酸ジエチルエステル、2,5−ジ(2−ヒドロキシエトキシ)ベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、2,5−ジ(2−ヒドロキシエトキシ)ベンジルホスフォン酸、3,5−ジ(2−ヒドロキシエトキシ)ベンジルホスフォン酸ジエチルエステル、3,5−ジ(2−ヒドロキシエトキシ)ベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、3,5−ジ(2−ヒドロキシエトキシ)ベンジルホスフォン酸、2−(2−メトキシエトキシ)ベンジルホスフォン酸ジエチルエステル、2−(2−メトキシエトキシ)ベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、1−(2−メトキシエトキシ)ベンジルホスフォン酸、3−(2−メトキシエトキシ)ベンジルホスフォン酸モノメチルエステル、3−(2−メトキシエトキシ)ベンジルホスフォン酸ジエチルエステル、3−(2−メトキシエトキシ)ベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、3−(2−メトキシエトキシ)ベンジルホスフォン酸、4−(2−メトキシエトキシ)ベンジルホスフォン酸ジエチルエステル、4−(2−メトキシエトキシ)ベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、4−(2−メトキシエトキシ)ベンジルホスフォン酸、2,5−ジ(2−メトキシエトキシ)ベンジルホスフォン酸ジエチルエステル、2,5−ジ(2−メトキシエトキシ)ベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、2,5−ジ(2−メトキシエトキシ)ベンジルホスフォン酸、3,5−ジ(2−メトキシエトキシ)ベンジルホスフォン酸ジエチルエステル、3,5−ジ(2−メトキシエトキシ)ベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、3,5−ジ(2−メトキシエトキシ)ベンジルホスフォン酸などのベンゼン環にアルキレングリコール基あるいはモノアルコキシ化アルキレングリコール基を導入したベンジルホスフォン酸類が挙げられる。
前記のベンジル系リン化合物は、上述した単一置換基種に限定されるものではなく、上述した置換基、ヒドロキシル基、アルキル基、カルボキシル基、カルボキシエステル基、2−ヒドロキシエトキシ基、2−メトキシエトキシ基の混成されたものも使用できる。
前記の化学式(化42)で表されるリン化合物の中で、置換基を有する芳香環構造がナフタレンであるリン化合物としては次のようなものが挙げられる。すなわち、1−(5−ヒドロキシ)ナフチルメチルホスフォン酸ジエチルエステル、1−(5−ヒドロキシ)ナフチルメチルホスフォン酸モノエチルエステル、1−(5−ヒドロキシ)ナフチルメチルホスフォン酸、1−(5−ヒドロキシ)ナフチルメチルホスフォン酸ジエチルエステル、1−(5−ヒドロキシ)ナフチルメチルホスフォン酸モノエチルエステル、1−(5−ヒドロキシ)ナフチルメチルホスフォン酸、1−(5−n−ブチル)ナフチルメチルホスフォン酸ジエチルエステル、1−(5−n−ブチル)ナフチルメチルホスフォン酸モノエチルエステル、1−(5−n−ブチル)ナフチルメチルホスフォン酸、1−(4−カルボキシ)ナフチルメチルホスフォン酸ジエチルエステル、1−(4−カルボキシ)ナフチルメチルホスフォン酸モノエチルエステル、1−(4−カルボキシ)ナフチルメチルホスフォン酸、1−(4−メトキシカルボニル)ナフチルメチルホスフォン酸ジエチルエステル、1−(4−メトキシカルボニル)ナフチルメチルホスフォン酸モノエチルエステル、1−(4−メトキシカルボニル)ナフチルメチルホスフォン酸、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)]ナフチルメチルホスフォン酸ジエチルエステル、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)]ナフチルメチルホスフォン酸モノエチルエステル、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)]ナフチルメチルホスフォン酸、1−(4−メトキシエトキシ)ナフチルメチルホスフォン酸ジエチルエステル、1−(4−メトキシエトキシ)ナフチルメチルホスフォン酸モノエチルエステル、1−(4−メトキシエトキシ)ナフチルメチルホスフォン酸、1−(5−ヒドロキシ)ナフチルメチルホスフォン酸ジエチルエステル、2−(6−ヒドロキシ)ナフチルメチルホスフォン酸ジエチルエステル、2−(6−ヒドロキシ)ナフチルモノエチルホスフォン酸、2−(6−ヒドロキシ)ナフチルメチルホスフォン酸、2−(6−n−ブチル)ナフチルメチルホスフォン酸ジエチルエステル、2−(6−n−ブチル)ナフチルメチルホスフォン酸モノエチルエステル、2−(6−n−ブチル)ナフチルメチルホスフォン酸、2−(6−カルボキシ)ナフチルメチルホスフォン酸ジエチルエステル、2−(6−カルボキシ)ナフチルメチルホスフォン酸モノエチルエステル、2−(6−カルボキシ)ナフチルメチルホスフォン酸、2−(6−メトキシカルボニル)ナフチルメチルホスフォン酸ジエチルエステル、2−(6−メトキシカルボニル)ナフチルメチルホスフォン酸モノエチルエステル、2−(6−メトキシカルボニル)ナフチルメチルホスフォン酸、2−[6−(2−ヒドロキシエトキシ)]ナフチルメチルホスフォン酸ジエチルエステル、2−[6−(2−ヒドロキシエトキシ)]ナフチルメチルホスフォン酸モノエチルエステル、2−[6−(2−ヒドロキシエトキシ)]ナフチルメチルホスフォン酸、2−(6−メトキシエトキシ)ナフチルメチルホスフォン酸ジエチルエステル、2−(6−メトキシエトキシ)ナフチルメチルホスフォン酸モノエチルエステル、2−(6−メトキシエトキシ)ナフチルメチルホスフォン酸などのナフタレン環にアルキル基、カルボキキシル基、カルボン酸エステル基、アルキレングリコール基、モノアルコキシアルキレングリコール基などが導入されたホスフォン酸類などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
前記のナフタレン系リン化合物は、上述した単一置換基種に限定されるものではなく、上述した置換基、ヒドロキシル基、アルキル基、カルボキシル基、カルボキシエステル基、2−ヒドロキシエトキシ基、2−メトキシエトキシ基の混成されたものも使用できる。
前記の化学式(化42)で表されるリン化合物の中で、置換基を有する芳香環構造がビフェニルであるリン化合物としては次のようなものが挙げられる。すなわち、4−(4−ヒドロキシフェニル)ベンジルホスフォン酸ジエチルエステル、4−(4−ヒドロキシフェニル)ベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、4−(4−ヒドロキシフェニル)ベンジルホスフォン酸、4−(4−n−ブチルフェニル)ベンジルホスフォン酸ジエチルエステル、4−(4−n−ブチルフェニル)ベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、4−(4−n−ブチルフェニル)ベンジルホスフォン酸、4−(4−カルボキシフェニル)ベンジルホスフォン酸ジエチルエステル、4−(4−カルボキシフェニル)ベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、4−(4−カルボキシフェニル)ベンジルホスフォン酸、4−(4−メトキシカルボニルフェニル)ベンジルホスフォン酸ジエチルエステル、4−(4−メトキシカルボニルフェニル)ベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシカルボニルフェニル)ベンジルホスフォン酸、4−(4−ヒドロキシエトキシフェニル)ベンジルホスフォン酸ジエチルエステル、4−(4−ヒドロキシエトキシフェニル)ベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、4−(4−ヒドロキシエトキシフェニル)ベンジルホスフォン酸、4−(4−メトキシエトキシフェニル)ベンジルホスフォン酸ジエチルエステル、4−(4−メトキシエトキシフェニル)ベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシエトキシフェニル)ベンジルホスフォン酸などのビフェニル環にアルキル基、カルボキキシル基、カルボン酸エステル基、アルキレングリコール基、モノメトキシアルキレングリコール基などが導入されたホスフォン酸類などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
前記のビフェニル系リン化合物は、上述した単一置換基種に限定されるものではなく、上述した置換基、ヒドロキシル基、アルキル基、カルボキシル基、カルボキシエステル基、2−ヒドロキシエトキシ基、2−メトキシエトキシ基の混成されたものも使用できる。
前記の化学式(化42)で表されるリン化合物の中で、置換基を有する芳香環構造がジフェニルエーテルであるリン化合物としては次のようなものが挙げられる。すなわち、4−(4−ヒドロキシフェニルオキシ)ベンジルホスフォン酸ジエチルエステル、4−(4−ヒドロキシフェニルオキシ)ベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、4−(4−ヒドロキシフェニルオキシ)ベンジルホスフォン酸、4−(4−n−ブチルフェニルオキシ)ベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、4−(4−n−ブチルフェニルオキシ)ベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、4−(4−ブチルフェニルオキシ)ベンジルホスフォン酸、4−(4−カルボキシフェニルオキシ)ベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、4−(4−カルボキシフェニルオキシ)ベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、4−(4−カルボキシフェニルオキシ)ベンジルホスフォン酸、4−(4−メトキシカルボニルフェニルオキシ)ベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシカルボニルフェニルオキシ)ベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシカルボニルフェニルオキシ)ベンジルホスフォン酸、4−(4−ヒドロキシエトキシフェニルオキシ)ベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、4−(4−ヒドロキシメトキシフェニルオキシ)ベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、4−(4−ヒドロキシメトキシフェニルオキシ)ベンジルホスフォン酸、4−(4−メトキシエトキシフェニルオキシ)ベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシエトキシフェニルオキシ)ベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシエトキシフェニルオキシ)ベンジルホスフォン酸などのジフェニルエーテル環にアルキル基、カルボキキシル基、カルボン酸エステル基、アルキレングリコール基、モノメトキシアルキレングリコール基などが導入されたホスフォン酸類などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
前記のジフェニルエーテル系リン化合物は、上述した単一置換基種に限定されるものではなく、上述した置換基、ヒドロキシル基、アルキル基、カルボキシル基、カルボキシエステル基、2−ヒドロキシエトキシ基、2−メトキシエトキシ基の混成されたものも使用できる。
前記の化学式(化42)で表されるリン化合物の中で、置換基を有する芳香環構造がジフェニチオエーテルであるリン化合物としては次のようなものが挙げられる。すなわち、4−(4−ヒドロキシフェニルチオ)ベンジルホスフォン酸ジエチルエステル、4−(4−ヒドロキシフェニルチオ)ベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、4−(4−ヒドロキシフェニルチオ)ベンジルホスフォン酸、4−(4−n−ブチルフェニルチオ)ベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、4−(4−n−ブチルフェニルチオ)ベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、4−(4−ブチルフェニルチオ)ベンジルホスフォン酸、4−(4−カルボキシフェニルチオ)ベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、4−(4−カルボキシフェニルチオ)ベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、4−(4−カルボキシフェニルチオ)ベンジルホスフォン酸、4−(4−メトキシカルボニルフェニルチオ)ベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシカルボニルフェニルチオ)ベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシカルボニルフェニルチオ)ベンジルホスフォン酸、4−(4−ヒドロキシエトキシフェニルチオ)ベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、4−(4−ヒドロキシメトキシフェニルチオ)ベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、4−(4−ヒドロキシメトキシフェニルチオ)ベンジルホスフォン酸、4−(4−メトキシエトキシフェニルチオ)ベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシエトキシフェニルチオ)ベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシエトキシフェニルチオ)ベンジルホスフォン酸などのジフェニルチオエーテル環にアルキル基、カルボキキシル基、カルボン酸エステル基、アルキレングリコール基、モノメトキシアルキレングリコール基などが導入されたホスフォン酸類などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
前記のジフェニルチオエーテル系リン化合物は、上述した単一置換基種に限定されるものではなく、上述した置換基、ヒドロキシル基、アルキル基、カルボキシル基、カルボキシエステル基、2−ヒドロキシエトキシ基、2−メトキシエトキシ基の混成されたものも使用できる。
前記の化学式(化42)で表されるリン化合物の中で、置換基を有する芳香環構造がジフェニルスルホンであるリン化合物としては次のようなものが挙げられる。4−(4−ヒドロキシフェニルスルホニル)ベンジルホスフォン酸ジエチルエステル、4−(4−ヒドロキシフェニルスルホニル)ベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、4−(4−ヒドロキシフェニルスルホニル)ベンジルホスフォン酸、4−(4−n−ブチルフェニルスルホニル)ベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、4−(4−n−ブチルフェニルスルホニル)ベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、4−(4−ブチルフェニルスルホニル)ベンジルホスフォン酸、4−(4−カルボキシフェニルスルホニル)ベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、4−(4−カルボキシフェニルスルホニル)ベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、4−(4−カルボキシフェニルスルホニル)ベンジルホスフォン酸、4−(4−メトキシカルボニルフェニルスルホニル)ベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシカルボニルフェニルスルホニル)ベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシカルボニルフェニルスルホニル)ベンジルホスフォン酸、4−(4−ヒドロキシエトキシフェニルスルホニル)ベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、4−(4−ヒドロキシメトキシフェニルスルホニル)ベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、4−(4−ヒドロキシメトキシフェニルスルホニル)ベンジルホスフォン酸、4−(4−メトキシエトキシフェニルスルホニル)ベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシエトキシフェニルスルホニル)ベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシエトキシフェニルスルホニル)ベンジルホスフォン酸などのジフェニルスルホン環にアルキル基、カルボキキシル基、カルボン酸エステル基、アルキレングリコール基、モノメトキシアルキレングリコール基などが導入されたホスフォン酸類などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
前記のジフェニルスルホン系リン化合物は、上述した単一置換基種に限定されるものではなく、上述した置換基、ヒドロキシル基、アルキル基、カルボキシル基、カルボキシエステル基、2−ヒドロキシエトキシ基、2−メトキシエトキシ基の混成されたものも使用できる。
前記の化学式(化42)で表されるリン化合物の中で、置換基を有する芳香環構造がジフェニルメタンであるリン化合物としては次のようなものが挙げられる。すなわち、4−(4−ヒドロキシベンジル)ベンジルホスフォン酸ジエチルエステル、4−(4−ヒドロキシベンジル)ベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、4−(4−ヒドロキシベンジル)ベンジルホスフォン酸、4−(4−n−ブチルベンジル)ベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、4−(4−n−ブチルベンジル)ベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、4−(4−ブチルベンジル)ベンジルホスフォン酸、4−(4−カルボキシベンジル)ベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、4−(4−カルボキシベンジル)ベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、4−(4−カルボキシベンジル)ベンジルホスフォン酸、4−(4−メトキシカルボニルベンジル)ベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシカルボニルベンジル)ベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシカルボニルベンジル)ベンジルホスフォン酸、4−(4−ヒドロキシエトキシベンジル)ベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、4−(4−ヒドロキシメトキシベンジル)ベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、4−(4−ヒドロキシメトキシベンジル)ベンジルホスフォン酸、4−(4−メトキシエトキシベンジル)ベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシエトキシベンジル)ベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシエトキシベンジル)ベンジルホスフォン酸などのジフェニルメタン環にアルキル基、カルボキキシル基、カルボン酸エステル基、アルキレングリコール基、モノメトキシアルキレングリコール基などが導入されたホスフォン酸類などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
前記のジフェニルメタン系リン化合物は、上述した単一置換基種に限定されるものではなく、上述した置換基、ヒドロキシル基、アルキル基、カルボキシル基、カルボキシエステル基、2−ヒドロキシエトキシ基、2−メトキシエトキシ基の混成されたものも使用できる。
前記の化学式(化42)で表されるリン化合物の中で、置換基を有する芳香環構造がジフェニルジメチルメタンであるリン化合物としては次のようなものが挙げられる。すなわち、4−(4−ヒドロキシフェニルジメチルメチル)ベンジルホスフォン酸ジエチルエステル、4−(4−ヒドロキシフェニルジメチルメチル)ベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、4−(4−ヒドロキシフェニルジメチルメチル)ベンジルホスフォン酸、4−(4−n−ブチルフェニルジメチルメチル)ベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、4−(4−n−ブチルフェニルジメチルメチル)ベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、4−(4−ブチルフェニルジメチルメチル)ベンジルホスフォン酸、4−(4−カルボキシフェニルジメチルメチル)ベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、4−(4−カルボキシフェニルジメチルメチル)ベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、4−(4−カルボキシフェニルジメチルメチル)ベンジルホスフォン酸、4−(4−メトキシカルボニルフェニルジメチルメチル)ベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシカルボニルフェニルジメチルメチル)ベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシカルボニルフェニルジメチルメチル)ベンジルホスフォン酸、4−(4−ヒドロキシエトキシフェニルジメチルメチル)ベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、4−(4−ヒドロキシメトキシフェニルジメチルメチル)ベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、4−(4−ヒドロキシメトキシフェニルジメチルメチル)ベンジルホスフォン酸、4−(4−メトキシエトキシフェニルジメチルメチル)ベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシエトキシフェニルジメチルメチル)ベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシエトキシフェニルジメチルメチル)ベンジルホスフォン酸などのジフェニルメタン環にアルキル基、カルボキキシル基、カルボン酸エステル基、アルキレングリコール基、モノメトキシアルキレングリコール基などが導入されたホスフォン酸類などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
前記のジフェニルジメチルメタン系リン化合物は、上述した単一置換基種に限定されるものではなく、上述した置換基、ヒドロキシル基、アルキル基、カルボキシル基、カルボキシエステル基、2−ヒドロキシエトキシ基、2−メトキシエトキシ基の混成されたものも使用できる。
前記の化学式(化42)で表されるリン化合物の中で、置換基を有する芳香環構造がジフェニルケトンであるリン化合物としては、次のようなものが挙げられる。
例えば、4−(4−ヒドロキシベンゾイル)ベンジルホスフォン酸ジエチルエステル、4−(4−ヒドロキシベンゾイル)ベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、4−(4−ヒドロキシベンゾイル)ベンジルホスフォン酸、4−(4−n−ブチルベンゾイル)ベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、4−(4−n−ブチルベンゾイル)ベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、4−(4−ブチルベンゾイル)ベンジルホスフォン酸、4−(4−カルボキシベンゾイル)ベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、4−(4−カルボキシベンゾイル)ベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、4−(4−カルボキシベンゾイル)ベンジルホスフォン酸、4−(4−メトキシカルボニルベンゾイル)ベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシカルボニルベンゾイル)ベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシカルボニルベンゾイル)ベンジルホスフォン酸、4−(4−ヒドロキシエトキシベンゾイル)ベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、4−(4−ヒドロキシメトキシベンゾイル)ベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、4−(4−ヒドロキシメトキシベンゾイル)ベンジルホスフォン酸、4−(4−メトキシエトキシベンゾイル)ベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシエトキシベンゾイル)ベンジルホスフォン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシエトキシベンゾイル)ベンジルホスフォン酸などのジフェニルケトン環にアルキル基、カルボキキシル基、カルボン酸エステル基、アルキレングリコール基、モノメトキシアルキレングリコール基などが導入されたホスフォン酸類などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
前記のジフェニルケトン系リン化合物は、上述した単一置換基種に限定されるものではなく、上述した置換基、ヒドロキシル基、アルキル基、カルボキシル基、カルボキシエステル基、2−ヒドロキシエトキシ基、2−メトキシエトキシ基の混成されたものも使用できる。
前記の化学式(化42)で表されるリン化合物の中で、置換基を有する芳香環構造がアンスラセンであるリン化合物としては、次のようなものが挙げられる。すなわち、9−(10−ヒドロキシ)アンスリルメチルホスフォン酸ジエチルエステル、9−(10−ヒドロキシ)アンスリルメチルホスフォン酸モノエチルエステル、9−(10−ヒドロキシ)アンスリルメチルホスフォン酸、9−(10−n−ブチル)アンスリルメチルホスフォン酸ジエチルエステル、9−(10−n−ブチル)アンスリルメチルホスフォン酸モノエチルエステル、9−(10−n−ブチル)アンスリルイルメチルホスフォン酸、9−(10−カルボキシ)アンスリルメチルホスフォン酸ジエチルエステル、9−(10−カルボキシ)アンスリルメチルホスフォン酸モノエチルエステル、9−(10−カルボキシ)アンスリルメチルホスフォン酸、9−(10−カルボキシ)9−(2−ヒドロキシエトキシ)アンスリルメチルホスフォン酸ジエチルエステル、9−(2−ヒドロキシエトキシ)アンスリルメチルホスフォン酸モノエチルエステル、9−(2−ヒドロキシエトキシ)アンスリルメチルホスフォン酸、9−(2−メトキシエトキシ)アンスリルメチルホスフォン酸ジエチルエステル、9−(2−メトキシエトキシ)アンスリルメチルホスフォン酸モノエチルエステル、9−(2−メトキシエトキシ)アンスリルメチルホスフォン酸、9−(2−メトキシカルボニル)アンスリルメチルホスフォン酸ジエチルエステル、9−(2−メトキシカルボニル)アンスリルメチルホスフォン酸モノエチルエステル、9−(2−メトキシカルボニル)アンスリルメチルホスフォン酸などのアンスラセン環にアルキル基、カルボキキシル基、カルボン酸エステル基、アルキレングリコール基、モノメトキシアルキレングリコール基などが導入されたホスフォン酸類などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
前記のアンスラセン系リン化合物は、上述した単一置換基種に限定されるものではなく、上述した置換基、ヒドロキシル基、アルキル基、カルボキシル基、カルボキシエステル基、2−ヒドロキシエトキシ基、2−メトキシエトキシ基の混成されたものも使用できる。
前記の化学式(化42)で表されるリン化合物の中で、置換基を有する芳香環構造がフェナントレンであるリン化合物としては次のようなものが挙げられる。すなわち、1−(7−n−ブチル)フェナントリルメチルホスフォン酸ジエチルエステル、1−(7−n−ブチル)フェナントリルメチルホスフォン酸モノエチルエステル、1−(7−n−ブチル)フェナントリルメチルホスフォン酸、1−(7−カルボキシ)フェナントリルメチルホスフォン酸ジエチルエステル、1−(7−カルボキシ)フェナントリルメチルホスフォン酸モノエチルエステル、1−(7−カルボキシ)フェナントリルメチルホスフォン酸、1−(7−ヒドロキシエトキシ)フェナントリルメチルホスフォン酸ジエチルエステル、1−(7−ヒドロキシエトキシ)フェナントリルメチルホスフォン酸モノエチルエステル、1−(7−ヒドロキシエトキシ)フェナントリルメチルホスフォン酸、1−(7−メトキシエトキシ)フェナントリルメチルホスフォン酸ジエチルエステル、1−(7−メトキシエトキシ)フェナントリルメチルホスフォン酸モノエチルエステル、1−(7−メトキシエトキシ)フェナントリルメチルホスフォン酸、1−(7−メトキシカルボニル)フェナントリルメチルホスフォン酸ジエチルエステル、1−(7−メトキシカルボニル)フェナントリルメチルホスフォン酸モノエチルエステル、1−(7−メトキシカルボニル)フェナントリルメチルホスフォン酸などのフェナントレン環にアルキル基、カルボキキシル基、カルボン酸エステル基、アルキレングリコール基、モノメトキシアルキレングリコール基などが導入されたホスフォン酸類などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
前記のフェナントレン系リン化合物は、上述した単一置換基種に限定されるものではなく、上述した置換基、ヒドロキシル基、アルキル基、カルボキシル基、カルボキシエステル基、2−ヒドロキシエトキシ基、2−メトキシエトキシ基の混成されたものも使用できる。
前記の化学式(化42)で表されるリン化合物の中で、置換基を有する芳香環構造がピレンであるリン化合物としては次のようなものが挙げられる。すなわち、1−(5−ヒドロキシ)ピレニルメチルホスフォン酸ジエチルエステル、1−(5−ヒドロキシ)ピレニルメチルホスフォン酸モノエチルエステル、1−(5−ヒドロキシ)ピレニルメチルホスフォン酸、1−(5−n−ブチル)ピレニリルメチルホスフォン酸ジエチルエステル、1−(5−n−ブチル)ピレニルメチルホスフォン酸モノエチルエステル、1−(5−n−ブチル)ピレニルメチルホスフォン酸、1−(5−カルボキシ)ピレニルメチルホスフォン酸ジエチルエステル、1−(5−カルボキシ)ピレニルメチルホスフォン酸モノエチルエステル、1−(5−カルボキシ)ピレニルメチルホスフォン酸、1−(5−ヒドロキシエトキシ)ピレニルメチルホスフォン酸ジエチルエステル、1−(5−ヒドロキシエトキシ)ピレニルメチルホスフォン酸モノエチルエステル、1−(5−ヒドロキシエトキシ)ピレニルメチルホスフォン酸、1−(5−メトキシエトキシ)ピレニルメチルホスフォン酸ジエチルエステル、1−(5−メトキシエトキシ)ピレニルメチルホスフォン酸モノエチルエステル、1−(5−メトキシエトキシ)ピレニルメチルホスフォン酸、1−(5−メトキシカルボニル)ピレニルルメチルホスフォン酸ジエチルエステル、1−(5−メトキシカルボニル)ピレニルメチルホスフォン酸モノエチルエステル、1−(5−メトキシカルボニル)ピレニルメチルホスフォン酸などのピレン環にアルキル基、カルボキキシル基、カルボン酸エステル基、アルキレングリコール基、モノメトキシアルキレングリコール基などが導入されたホスフォン酸類などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
前記のピレン系リン化合物は、上述した単一置換基種に限定されるものではなく、上述した置換基、ヒドロキシル基、アルキル基、カルボキシル基、カルボキシエステル基、2−ヒドロキシエトキシ基、2−メトキシエトキシ基の混成されたものも使用できる。
上記の一連の芳香環に導入されるヒドロキシル基、アルキル基、カルボキシル基、カルボキシエステル基、2−ヒドロキシエトキシ基、2−メトキシエトキシ基などの置換基は、ポリエステルの重合時のアルミニウム原子との錯体形成に深く関わるものと推定される。また、ポリエステル形成時の官能基であるカルボキシル基あるいは水酸基と類似のものも含まれており、ポリエステルマトリックス中に溶解または取り込まれやすいため、重合活性、異物低減などに特に有効であると考えられる。
芳香環構造(R1)に結合したR0が水素原子である未置換基に比べ、前記のC1〜C10のアルキル基、−COOH基あるいは−COOR4(R4は、C1〜C4のアルキル基を表す)、アルキレングリコール基あるいはモノアルコキシアルキレングリコール基(モノアルコキシはC1〜C4を、アルキレングリコールはC1〜C4のグリコールを表す)で置換されたリン化合物は、触媒活性を改善するだけでなく、異物低減効果の点で好ましい。
芳香環構造に結合した置換基は、C1〜C10のアルキル基、カルボキシルおよびカルボキシルエステル基、アルキレングリコールおよびモノアルコキシアルキレングリコールなどが挙げられる。異物低減効果の点でより好ましくは、カルボキシルおよびカルボキシルエステル基、アルキレングリコールおよびモノアルコキシアルキレングリコールである。その理由は不明であるが、ポリエステルおよび触媒の媒体であるアルキレングリコールとの相溶性が改善されることによると推測している。
本発明で使用できる連結基(X)を持たないリン化合物である化学式(化43)で表されるリン化合物は次のようなものである。
R1−(P=O)(OR2)(OR3) (化43)
一方、連結基(X)のない上記化学式(化43)で表されるリン化合物中、R1は炭素数6〜50の芳香環構造あるいは炭素数4〜50の複素環構造を表し、該芳香環構造あるいは複素環構造は置換基を有していてもよい。R2およびR3はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜20の炭化水素基を表す。炭化水素基は脂環構造や分岐構造や芳香環構造を有していてもよい。
化学式(化43)で表されるリン化合物の芳香環構造および複素環構造の置換基としては、炭素数1〜50の炭化水素基(直鎖状であっても脂環構造、分岐構造、芳香環構造であってもよい。また、これらがハロゲン置換されたものであってもよい)、水酸基、ハロゲン基、炭素数1〜10のアルコキシル基、アミノ基(炭素数1〜10のアルキルあるいはアルカノール置換されていてもかまわない)、ニトロ基、カルボキシル基、炭素数1〜10の脂肪族カルボン酸エステル基、ホルミル基、アシル基、スルホン酸基、スルホン酸アミド基(炭素数1〜10のアルキルあるいはアルカノール置換されていてもかまわない)、ホスホリル含有基、ニトリル基、シアノアルキル基から選ばれる1種もしくは2種以上、が例示される。
また、前記の化学式(化43)の芳香環構造がベンゼン、ナフタレン、ビフェニル、ジフェニルエーテル、ジフェニルチオエーテル、ジフェニルスルホン、ジフェニルメタン、ジフェニルジメチルメタン、アントラセン、フェナントレンおよびピレンから選ばれる。および前記複素環構造がフラン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ジベンゾフラン、ナフタランおよびフタリドから選ばれる。また、上記の化学式(化43)中のR2およびR3の少なくとも一方が水素原子であることが好ましい。
化学式(化43)で表されるリン化合物としては、下記のリン化合物などが挙げられる。例えば、(3−ニトロ,5−メチル)−フェニルホスフォン酸ジエチルエステル、(3−ニトロ,5−メチル)−フェニルホスフォン酸モノエチルエステル、(3−ニトロ,5−メチル)−フェニルホスフォン酸、(3−ニトロ,5−メトキシ)−フェニルホスフォン酸ジエチルエステル、(3−ニトロ,5−メトキシ)−フェニルホスフォン酸モノエチルエステル、(3−ニトロ,5−メトキシ)−フェニルホスフォン酸、(4−クロル)−フェニルホスフォン酸ジエチルエステル、(4−クロル)−フェニルホスフォン酸モノエチルエステル、(4−クロル)−フェニルホスフォン酸、(5−クロル)−フェニルホスフォン酸ジエチルエステル、(5−クロル)−フェニルホスフォン酸モノエチルエステル、(5−クロル)−フェニルホスフォン酸、(3−ニトロ,5−メチル)−フェニルホスフォン酸ジエチルエステル、(3−ニトロ,5−メチル)−フェニルホスフォン酸モノエチルエステル、(3−ニトロ,5−メチル)−フェニルホスフォン酸、(4−ニトロ)−フェニルホスフォン酸ジエチルエステル、(4−ニトロ)−フェニルホスフォン酸モノエチルエステル、(4−ニトロ)−フェニルホスフォン酸、(5−ニトロ)−フェニルホスフォン酸ジエチルエステル、(5−ニトロ)−フェニルホスフォン酸モノエチルエステル、(5−ニトロ)−フェニルホスフォン酸、(6−ニトロ)−フェニルホスフォン酸ジエチルエステル、(6−ニトロ)−フェニルホスフォン酸モノエチルエステル、(6−ニトロ)−フェニルホスフォン酸、(4−ニトロ,6−メチル)−フェニルホスフォン酸ジエチルエステル、(4−ニトロ,6−メチル)−フェニルホスフォン酸モノエチルエステル、(4−ニトロ,6−メチル)−フェニルホスフォン酸、が挙げられる。
その他、式(化43)で表されるリン化合物において、上述のベンゼン、ナフタレン、ビフェニル、ジフェニルエーテル、ジフェニルチオエーテル、ジフェニルスルホン、ジフェニルメタン、ジフェニルジメチルメタン、ジフェニルケトン、アントラセン、フェナントレンおよびピレンなどの芳香環構造を有するそれぞれの構造式から連結基であるメチレン鎖すなわち、−CH2−を取り除いたリン化合物群、さらに複素環含有リン化合物として、5−ベンゾフラニルホスフォン酸ジエチルエステル、5−ベンゾフラニルホスフォン酸モノエチルエステル、5−ベンゾフラニルホスフォン酸、5−(2−メチル)ベンゾフラニルホスフォン酸ジエチルエステル、5−(2−メチル)ベンゾフラニルホスフォン酸モノエチルエステル、5−(2−メチル)ベンゾフラニルホスフォン酸などが挙げられる。上述の連結基を有しないリン化合物は、前述の連結基を有するリン化合物に比べ重合活性は若干劣るが、前記の触媒調製法を使用した場合、ポリエステル重合触媒として使用することは可能である。
リン化合物は、ポリエステルの熱安定剤としては知られていたが、これらの化合物を従来の金属含有ポリエステル重合触媒と組み合わせて使用しても、溶融重合を大きく促進することはこれまで知られていなかった。実際に、ポリエステル重合の代表的な触媒であるアンチモン化合物、チタン化合物、スズ化合物あるいはゲルマニウム化合物を重合触媒としてポリエステルを溶融重合する際に、前記のリン化合物を添加しても、実質的に有用なレベルまで重合が促進されることは認められない。
上記のリン化合物が、予め水およびアルキレングリコールからなる群から選ばれた少なくとも1種の溶媒中で加熱処理されたものを用いることが好ましい実施態様である。該処理により前記のアルミニウムやアルミニウム化合物に前記のリン化合物を併用することによる重縮合触媒活性が向上すると共に、該重縮合触媒起因の異物形成性が低下する。
リン化合物を予め加熱処理する時に使用する溶媒としては、水およびアルキレングリコールからなる群から選ばれる少なくとも1種であれば限定されず任意であるが、リン化合物を溶解する溶媒を用いることが好ましい。アルキレングリコールとしては、エチレングリコール等の目的とするポリエステルの構成成分であるグリコールを用いることが好ましい。溶媒中での加熱処理は、リン化合物を溶解してから行うのが好ましいが、完全に溶解していなくてもよい。また、加熱処理の後に、化合物がもとの構造を保持している必要はなく、加熱処理による変性で溶媒に対する溶解性が向上するものであっても構わない。
加熱処理の温度は特に限定はされないが、20〜250℃の範囲であることが好ましい。より好ましくは、100〜200℃の範囲である。温度の上限は、用いる溶媒の沸点付近とすることが好ましい。加熱時間は、温度等の条件によっても異なるが、溶媒の沸点付近の温度だと1分〜50時間の範囲であることが好ましく、より好ましくは30分〜10時間、さらに好ましくは1〜5時間の範囲である。加熱処理の系の圧力は常圧、もしくはそれ以上あるいは以下であってもよく特に限定されない。溶液の濃度は、リン化合物として1〜500g/lであることが好ましく、より好ましくは5〜300g/l、さらに好ましくは10〜100g/lである。加熱処理は窒素等の不活性気体の雰囲気下で行うことが好ましい。加熱後の溶液もしくはスラリーの保管温度は特に限定はされないが、0℃〜100℃の範囲であることが好ましく、20℃〜60℃の範囲であることがより好ましい。溶液の保管は窒素等の不活性気体の雰囲気下で行うことが好ましい。
リン化合物を予め溶媒中で加熱処理する際に、前記のアルミニウムまたはその化合物を共存してもよい。また、リン化合物を予め溶媒中で加熱処理したものに、前記のアルミニウムまたはその化合物を粉状、溶液状、あるいはスラリー状として添加してもよい。さらに、添加後の溶液またはスラリーを加熱処理してもよい。これらの操作で得られた溶液もしくはスラリーを本発明で用いるポリエステルの重縮合触媒として用いることが可能である。95質量%以上がグリコール成分よりなる溶媒に溶解あるいは分散して添加するのが好ましい。
前記のリン化合物の添加量としては、得られるポリエステルのカルボン酸成分の全構成ユニットのモル数に対して0.0001〜0.1モル%が好ましく、0.005〜0.05モル%であることがさらに好ましい。
前記のアルミニウムもしくその化合物とリン化合物を併用すれば実用性の高い重縮合触媒活性を発現することができるが、さらに少量のアルカリ金属、アルカリ土類金属並びにその化合物から選択される少なくとも1種を第2金属含有成分として共存させることが好ましい態様である。かかる第2金属含有成分を触媒系に共存させることは、ジエチレングリコールの生成を抑制する効果に加えて触媒活性を高め、したがって反応速度をより高めた触媒成分が得られ、生産性向上に有効である。
アルミニウム化合物にアルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物を添加して十分な触媒活性を有する触媒とする技術は公知である。かかる公知の触媒を使用すると熱安定性に優れたポリエステルが得られるが、アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物を併用した公知の触媒は、実用的な触媒活性を得ようとするとそれらの添加量が多く必要であり、アルカリ金属化合物を使用したときは得られるポリエステルの耐加水分解性が低下すると共にアルカリ金属化合物に起因する異物量が多くなり、フィルムに使用したときはフィルム物性などが悪化する。またアルカリ土類金属化合物を併用した場合には、実用的な活性を得ようとすると得られたポリエステルの熱安定性が低下し、加熱による着色が大きく、異物の発生量も多くなり、耐加水分解性も低下する。
アルカリ金属、アルカリ土類金属並びにその化合物を添加する場合、その添加量M(モル%)は、ポリエステルを構成する全ポリカルボン酸ユニットのモル数に対して、1×10−6以上0.1モル%未満であることが好ましく、より好ましくは5×10−6〜0.05モル%であり、さらに好ましくは1×10−5〜0.03モル%であり、特に好ましくは、1×10−5〜0.01モル%である。アルカリ金属、アルカリ土類金属の添加量が少量であるため、熱安定性低下、異物の発生、着色、耐加水分解性の低下等の問題を発生させることなく、反応速度を高めることが可能である。アルカリ金属、アルカリ土類金属並びにその化合物の添加量Mが0.1モル%以上になると熱安定性の低下、異物発生や着色の増加、並びに耐加水分解性の低下が製品加工上問題となる場合が発生する。Mが1×10−6未満では、添加してもその効果が明確に得られない。
本発明において、アルミニウムもしくはその化合物に加えて使用することが好ましい第2金属含有成分を構成するアルカリ金属、アルカリ土類金属としては、Li,Na,K,Rb,Cs,Be,Mg,Ca,Sr,Baから選択される少なくとも1種であることが好ましく、このうちLi,Na,Mgないしその化合物から選択される少なくとも1種の使用がより好ましい。アルカリ金属やアルカリ土類金属の化合物としては、例えば、これら金属のギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、蓚酸などの飽和脂肪族カルボン酸塩、アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和脂肪族カルボン酸塩、安息香酸などの芳香族カルボン酸塩、トリクロロ酢酸などのハロゲン含有カルボン酸塩、乳酸、クエン酸、サリチル酸などのヒドロキシカルボン酸塩、炭酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホスフォン酸、炭酸水素、リン酸水素、硫化水素、亜硫酸、チオ硫酸、塩酸、臭化水素酸、塩素酸、臭素酸などの無機酸塩、1−プロパンスルホン酸、1−ペンタンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸などの有機スルホン酸塩、ラウリル硫酸などの有機硫酸塩、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、iso−プロポキシ、n−ブトキシ、tert−ブトキシなどのアルコキサイド、アセチルアセトネートなどとのキレ−ト化合物、水素化物、酸化物、水酸化物などが挙げられる。
これらのアルカリ金属、アルカリ土類金属またはそれらの化合物のうち、水酸化物等のアルカリ性の強いものを用いる場合、これらはエチレングリコール等のジオールもしくはアルコール等の有機溶媒に溶解しにくい傾向があるため、水溶液で重合系に添加しなければならず重合工程上問題となる場合が有る。さらに、水酸化物等のアルカリ性の強いものを用いた場合、重合時にポリエステルが加水分解等の副反応を受け易くなるとともに、重合したポリエステルは着色し易くなる傾向があり、耐加水分解性も低下する傾向がある。したがって、前記のアルカリ金属またはそれらの化合物あるいはアルカリ土類金属またはそれらの化合物として好適なものは、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属の飽和脂肪族カルボン酸塩、不飽和脂肪族カルボン酸塩、芳香族カルボン塩、ハロゲン含有カルボン酸塩、ヒドロキシカルボン酸塩、硫酸、硝酸、リン酸、ホスフォン酸、リン酸水素、硫化水素、亜硫酸、チオ硫酸、塩酸、臭化水素酸、塩素酸、臭素酸から選ばれる無機酸塩、有機スルホン酸塩、有機硫酸塩、キレ−ト化合物、及び酸化物である。これらの中でもさらに、取り扱い易さや入手のし易さ等の観点から、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属の飽和脂肪族カルボン酸塩、特に酢酸塩の使用が好ましい。
前記の重縮合触媒は、アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物、チタン化合物などの他の重縮合触媒を、これらの成分の添加が前記のようなポリエステルの特性、加工性、色調等製品に問題を生じない添加量の範囲内において共存させて用いることは、重合時間の短縮による生産性を向上させる際に有効であり、好ましい。
アンチモン化合物は、重合して得られるポリエステルに対してアンチモン原子として50ppm以下の量で添加することが好ましい。より好ましい添加量は、30ppm以下である。アンチモンの添加量を50ppm以上にすると、金属アンチモンの析出が起こり、ポリエステルに黒ずみや異物が発生するため好ましくない。
ゲルマニウム化合物は、重合して得られるポリエステルに対してゲルマニウム原子として20ppm以下の量で添加することが好ましい。より好ましい添加量は10ppm以下である。ゲルマニウムの添加量を20ppm以上にすると、コスト的に不利になるため好ましくない。
チタン化合物は、重合して得られるポリエステルに対してチタン原子として5ppm以下の量で添加することが好ましい。より好ましい添加量は3ppm以下であり、さらに好ましくは1ppm以下である。チタンの添加量を5ppm以上にすると、得られるポリエステルの着色が顕著になり、さらに熱安定性が顕著に低下するため好ましくない。
本発明において、フィルム原料のポリエステルの重合触媒として使用可能なアンチモン化合物としては、特に限定はされないが、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、酢酸アンチモン、アンチモングリコキサイドなどが好適であり、特に三酸化アンチモンが好ましい。また、ゲルマニウム化合物としては、特に限定はされないが、二酸化ゲルマニウム、四塩化ゲルマニウムなどが挙げられ、特に二酸化ゲルマニウムが好ましい。二酸化ゲルマニウムとしては、結晶性、非晶性のいずれも使用できる。
本発明において、フィルム原料のポリエステルの重合触媒として使用可能なチタン化合物としては、特に限定はされないが、テトラ−n−プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトライソブチルチタネート、テトラ−tert−ブチルチタネート、テトラシクロヘキシルチタネート、テトラフェニルチタネート、テトラベンジルチタネート、蓚酸チタン酸リチウム、蓚酸チタン酸カリウム、蓚酸チタン酸アンモニウム、酸化チタン、チタンとケイ素やジルコニウムやアルカリ金属やアルカリ土類金属などとの複合酸化物、チタンのオルトエステルまたは縮合オルトエステル、チタンのオルトエステルまたは縮合オルトエステルとヒドロキシカルボン酸からなる反応生成物、チタンのオルトエステルまたは縮合オルトエステルとヒドロキシカルボン酸とリン化合物からなる反応生成物、チタンのオルトエステルまたは縮合オルトエステルと少なくとも2個のヒドロキシル基を有する多価アルコール、2−ヒドロキシカルボン酸および塩基からなる反応生成物などが挙げられる。このうち、チタンとケイ素の複合酸化物、チタンとマグネシウムの複合酸化物、チタンのオルトエステルまたは縮合オルトエステルとヒドロキシカルボン酸とリン化合物からなる反応生成物が好ましい。
また、スズ化合物としては、ジブチルスズオキサイド、メチルフェニルスズオキサイド、テトラエチルスズ、ヘキサエチルジスズオキサイド、トリエチルスズハイドロオキサイド、モノブチルヒドロキシスズオキサイド、トリイソブチルスズアセテート、ジフェニルスズジラウレート、モノブチルスズトリクロライド、ジブチルスズサルファイド、ジブチルヒドロキシスズオキサイド、メチルスタンノン酸、エチルスタンノン酸などが挙げられ、特にモノブチルヒドロキシスズオキサイドが好ましい。
本発明でフィルム原料として用いるポリエステルには、色調改善等の目的でコバルト化合物をコバルト原子としてポリエステルに対して10ppm未満の量で添加することが好ましい態様である。より好ましくは5ppm以下であり、さらに好ましくは3ppm以下である。コバルト化合物としては特に限定はないが、具体的には例えば、酢酸コバルト、硝酸コバルト、塩化コバルト、コバルトアセチルアセトネート、ナフテン酸コバルトおよびそれらの水和物等が挙げられる。その中でも特に酢酸コバルト四水和物が好ましい。
本発明でフィルム原料として用いるポリエステルの色調を改善するために、コバルト化合物以外の色調改善剤を含有させることも好ましい態様である。色調改善剤とは、ポリエステル中に含有させることで、ポリエステルの色調を変化させることができる物質を意味する。前記の色調改善剤としては、特に限定はされないが、無機および有機の顔料、染料、蛍光増白剤などが好ましい。
色調改善剤として顔料または染料を使用する場合、ポリエステル中の含有量が増えると、ポリエステルの明度が低下し、多くの用途で許容できなくなる。そのため、顔料および染料の総含有量は、得られるポリエステルに対して20ppm以下であることが好ましく、より好ましくは10ppm以下、さらに好ましくは5ppm以下である。かかる領域ではポリエステルの明度を低下させることなく、着色を効果的に消去することができる。
さらに、蛍光増白剤を単独もしくは他の色調改善剤と併用して用いると、ポリエステルの色調が良好になるため、使用する顔料または染料の量を少なくすることができる。蛍光増白剤は、1種もしくは2種以上を併用してもよい。蛍光増白剤の含有量は、得られるポリエステルに対して50ppm以下とすることが好ましく、5〜25ppmとすることがさらに好ましい。
無機顔料としては、色調を変化できるものであれば特に規定はされないが、例えば二酸化チタン、カ−ボンブラック、鉄黒、ニッケルチタンイエロ−、黄色酸化鉄、カードミウムイエロ−、黄鉛、クロムチタンイエロ−、亜鉛フェライト顔料、弁柄、カードミウムレッド、モリブデンレッド、酸化クロム、スピネルグリ−ン、クロムオレンジ、カードミウムオレンジ、群青、紺青、コバルトブル−、などが挙げられる。このうち酸化クロム、群青、紺青、コバルトブル−が好ましく、群青、コバルトブル−がさらに好ましい。またこれら無機顔料の一種もしくは二種以上を必要に応じて組み合わせて使用しても良い。
有機顔料および染料としては、色調を変化できるものであれば規定はされないが、例えばカラ−インデックスで表示されている、Pigment Red 5, 22, 23, 31, 38, 48:1, 48:2, 48:3, 48:4, 52, 53:1, 57:1, 122, 123, 144, 146, 151, 166, 170, 177, 178, 179, 187, 202, 207, 209, 213, 214, 220, 221, 247, 254, 255, 263, 272、Pigment Orange 13, 16, 31, 36, 43, 61, 64, 71、Pigment Brown 23、Pigment Yellow 1, 3, 12, 13, 14, 17, 55, 73, 74, 81, 83,93, 94, 95, 97, 109, 110, 128, 130, 133, 136, 138, 147, 150, 151, 154,180, 181, 183, 190, 191, 191:1, 199、Pigment Green 7, 36、Pigment Blue 15, 15:1, 15:2, 15:3, 15.4, 15:6, 29, 60, 64, 68、Pigment Violet 19, 23, 37, 44、Solvent Red 52, 117, 135, 169, 176、Disperse Red 5、Solvent Orange 63, 67, 68, 72, 78、Solvent Yellow 98, 103, 105, 113, 116、Disperse Yellow 54, 64, 160、Solvent Green 3, 20, 26、Solvent Blue 35, 45, 78, 90, 94, 95, 104, 122, 132、Solvent Violet 31、などが挙げられる。また、その他のアンスラキノン系、フタロシアニン系、キナクリドン系、イソインドリノン系、ジオキサジン系、キノフタロン系、ペリレン系、ペリノン系、ベンズイミダゾロン系、ジアリライド系、バット系、インジゴ系、キノフタロン系、ジケトピロロピロ−ル系、アントラピロリドン系の染料/顔料等を挙げることができる。
このうち、Pigment Red 187, 263、Pigment Blue 15:1, 15:3, 29,60、Pigment Violet 19、Solvent Red 135、Solvent Blue 45, 90,104, 122、またはアンスラキノン系とフタロシアニン系の染料/顔料が好ましい。さらに、アンスラキノン系とフタロシアニン系の染料/顔料は特に好ましい。
顔料および/または染料を選択する際には、下記の条件を満足するものを選択することが好ましい。
(1)安全性の点から、重縮合体から非抽出性であること。
(2)日光に対しておよび広範囲の温度および湿度条件に対して安定であること。
(3)ポリエステルの製造の間に遭遇する極めて高い温度の結果として昇華や、色相の変化を生じないこと。
(4)ポリエステルポリマ−の物理的性質に悪影響を及ぼさないもの。
これらの条件を満たす顔料および/または染料で、ポリエステルの色調を改善するものであれは特に限定されないが、例えば、特表2000−511211号では、ある種の青色1,4−ビス(2,6−ジアルキルアニリノ)アントラキノンを主に用い赤色アンスラキノンおよびアントラピリドン(3H−ジベンゾ[f,i,j]イソキノリン−2,7−ジオン)化合物を色相に応じて組み合わせた色調改善剤などが例示されており、これらを用いることができる。これらの染料は適当な色特性を有し、熱、光、湿度および種々の環境要因に対して安定であると共に重縮合の合間にポリエステルポリマ−構造中に含ませることができ、公知の有機染料で遭遇する問題の多くを克服する。また、紫外光、高温、解糖および加水分解に対して安定である。さらに、青色成分および赤色成分の量は、着色度の異なったポリエステルに有効に働くように、必要に応じて変化させることができる。
蛍光増白剤としては、一般に用いられているものを単独もしくは組み合わせて使用することができる。例えば、ベンズオキサゾリン系蛍光増白剤、好ましくはチバ・スペシャルティ−ケミカルズ社製のUVITEX OB、UVITEX OB−P、UVITEX OB−ONE、クラリアント社製のHOSTアルミニウムUX KSや、特開平10−1563に記載のものなどが好ましく使用できる。
前記の色調改善剤は無彩色の色相を達成するため、その種類や含有量を任意に組み合わせ使用することができる。また、色調改善剤の添加時期は重縮合のどの段階であってもよく、重縮合反応終了後であっても構わなく、重縮合反応終了後からフィルム製造時の溶融押し出し工程までのどの段階であってもかまわない。また添加方法は重縮合中であれば粉末や、ポリエステルのモノマ−の1つに溶解させて添加することが好ましい。さらに、重縮合反応終了後では粉末やマスタ−バッチとして添加することが好ましい。
また、顔料等の分散性に問題が生じる場合は、必要に応じて分散剤を使用すると好ましい場合がある。分散剤は顔料の分散を助けるものであれば特に規定はされないが、例えばN,N′−エチレンビスミリスチン酸アミド、N,N′−エチレンビスステアリン酸アミド、N,N′−エチレンビスオレイン酸アミド、N,N′−メチレンビスミリスチン酸アミド、N,N′−メチレンビスステアリン酸アミド、N,N′−メチレンビスオレイン酸アミドなどのN,N′−アルキレンビス脂肪酸アミドなどがある。その中でもN,N′−メチレンビスステアリン酸アミドが好ましい。分散剤の添加量は、性能にも左右されるが、顔料に対して10〜200質量%が好ましく、さらに好ましくは40〜150質量%である。
本発明の積層ポリエステルフィルム及び積層ポリエステルフィルムの製造に用いられるポリエステル樹脂は、以下に示す評価法で定量されるポリエステルに不溶なアルミニウム系異物が3500ppm以下であることが重要である。
ポリエステルに不溶なアルミニウム系異物は以下の方法で評価したものである。
[ポリエステルに不溶なアルミニウム系異物評価法]
ポリエステルフィルムあるいは樹脂30gおよびパラクロロフェノール/テトラクロロエタン(3/1:質量比)混合溶液300mlを攪拌機付き丸底フラスコに投入し、該ポリエステルを混合溶液に100〜105℃、2時間で攪拌・溶解する。該溶液を室温になるまで放冷し、直径47mm/孔径1.0μmのポリテトラフルオロエチレン製のメンブレンフィルター(Advantec社製PTFEメンブレンフィルター、品名:T100A047A)を用い、全量を0.15MPaの加圧下で異物を濾別する。有効濾過直径は37.5mmとした。濾過終了後、引き続き300mlのクロロホルムを用い洗浄し、次いで、30℃で一昼夜減圧乾燥する。該メンブレンフィルターの濾過面を走査型蛍光X線分析装置(RIGAKU社製、ZSX100e、Rh管球4.0kW)でアルミニウム元素量を定量した。定量はメンブレンフィルターの中心部直径30mmの部分について行なう。なお、該蛍光X線分析法の検量線はアルミニウム元素含有量が既知のポリエチレンテレフタレート樹脂を用いて求め、見掛けのアルミニウム元素量をppmで表示する。測定はX線出力50kV−70mAで分光結晶としてペンタエリスリトール、検出器としてPC(プロポーショナルカウンター)を用い、PHA(波高分析器)100−300の条件でアルミニウム−Kα線強度を測定することにより実施する。検量線用ポリエチレンテレフタレート樹脂中のアルミニウム元素量は、高周波誘導結合プラズマ発光分析法で定量する。
本発明においては、上記評価法で測定されたポリエステルに不溶なアルミニウム系異物量は2500ppm以下が好ましい。1500ppm以下がより好ましい。1000ppm以下が特に好ましい。ポリエステルに不溶なアルミニウム系異物量が3500ppmを超えた場合は、該ポリエステルに不溶性の微細な異物が原因となり、フィルムの透明性が低下するので好ましくない。
上記評価法で測定されたポリエステルに不溶なアルミニウム系異物量は、あくまでも換算値であり、上記評価に用いたポリエステルの全量に対する含有量ではppbレベルの極微量となる。この極微量の異物量によりフィルムの透明性が悪化するのは、上記評価法で測定されるポリエステルに不溶なアルミニウム系異物は、ポリエステルに対する親和性が低いために、製膜時の延伸応力によりポリエステルとアルミニウム系異物の界面にボイドが形成されて、該ボイドにより光の散乱が起こりフィルムの透明性が低下することが原因となっていると推定している。
本発明において、前記の積層ポリエステルフィルム中のポリエステルに不溶なアルミニウム系異物量を3500ppm以下にする方法は限定されないが、例えば、原料ポリエステル樹脂中のポリエステルに不溶なアルミニウム系異物量を3500ppm以下にすることにより達成できる。
該原料ポリエステル樹脂中のポリエステルに不溶なアルミニウム系異物量を3500ppm以下にする方法は限定されないが、例えば、下記の方法が挙げられる。
(1)前記の重縮合触媒を構成するアルミニウム化合物の品質を最適化する。
例えば、アルミニウム化合物を水に溶解した時の不溶分量を特定化する、アルミニウム化合物の結晶化度を特定化する、アルミニウム化合物の結晶水量を特定化する等の方法が挙げられる。また、アルミニウム化合物の水等の溶媒に対する溶解性を向上する添加剤や、アルミニウム化合物の加水分解等に対する安定性を向上する化合物を併用する等も好ましい実施態様である。
例えば、アルミニウム化合物を水に溶解した時の不溶分量を特定化する方法に関しては、下記に記載したアルミニウム化合物の水に対する不溶分量がその尺度となる。
[アルミニウム化合物の水に対する不溶分量測定法]
200rpmで攪拌した室温の純水1500mlにアルミニウム化合物30gを添加し、室温で6時間攪拌を続ける。引き続き液温を95℃に加温し、同温度で更に3時間攪拌を続行しアルミニウム化合物を溶解さる。得られた溶液を室温になるまで放冷し、孔径0.2μmのセルロースアセテート製のメンブレンフィルター(Advantec社製セルロースアセテートタイプのメンブレンフィルター、品名:C020A047A)で濾過し、50mlの純水で洗浄する。得られた不溶分を濾過したフィルターを60℃の真空乾燥器で12時間乾燥し不溶分質量(W)を求める。アルミニウム化合物の水に対する不溶分量は下記式で算出する。
アルミニウム化合物が水溶液の場合は、水溶液の一部を採取し、該水溶液を蒸発乾固することにより水溶液中の固形分を測定し、該固形分をアルミニウム化合物質量として水溶液中のアルミニウム化合物濃度を求め、水溶液中のアルミニウム化合物量が30gとなる量の水溶液を濾過することにより求める。該水溶液の場合は、水溶液中のアルミニウム化合物濃度が2質量%より濃い場合は、2質量%になるように純水を加えアルミニウム希釈して濾過を行った。該希釈は前記の固形アルミニウム化合物の溶解と同じ条件で行う。なお、上記操作はクリ−ンベンチ中で実施する。
水に対する不溶分量(ppm)=[W(mg)/30000(mg)]×106
上記方法で測定される水に対する不溶分量が700ppm以下のものを用いることが好ましい実施態様である。ただし、以下に示すような実施態様を最適化することにより、該水に対する不溶分量が700ppmを超えたアルミニウム化合物を用いても、ポリエステルに不溶なアルミニウム系異物量を3500ppm以下にすることも可能となるので、本範囲に限定はされない。
(2)前記の重縮合触媒を構成するもう一つの構成成分であるリン化合物の構造を最適化したり、アルミニウム化合物とリン化合物とを事前に反応させたりする。
(3)前記のアルミニウム化合物やリン化合物のポリエステルの製造工程での添加時期や添加方法等を最適化する。
上記原料ポリエステル樹脂は、以下に示す評価法で評価される一軸延伸フィルムのヘイズ値が2%以下であることが好ましい。
[一軸延伸フィルムのヘイズ値]
ポリエステル樹脂を真空下、130℃で12時間乾燥し、ヒ−トプレス法で1000±
100μmのシートを作成する。ヒ−トプレス温度、圧力および時間はそれぞれ320℃、100kgf/cm2および3秒とする。プレス後シートは水中に投入し急冷却する。得られたシートをバッチ式延伸機(T.M.LONG CO.,INC製、FILM STRETCHER)で3.5倍に一軸延伸し300±20μmの一軸延伸フィルムを得る。延伸温度はブロ−温度95℃/プレ−ト温度100℃とする。また、延伸速度は1.5万%/分で行う。
前記の一軸延伸フィルムのヘイズをJIS−K7136に準拠し、ヘイズメータ(日本電色工業株式会社製、300A)を用いて測定する。なお、測定は5回行い、その平均値を求める。ヘイズ値はフィルム厚み300μmの換算値で表示する。一軸延伸フィルムのヘイズは1.8%以下がより好ましく、1.6%以下がさらに好ましい。ヘイズ値が2%を超える場合は、得られるフィルムの透明性が低下するので好ましくない。
前記の一軸延伸フィルムのヘイズ値を2%以下にする方法は限定されないが、該ヘイズ値は、前記のポリエステルに不溶なアルミニウム系異物量や昇温結晶化温度(Tc1)の影響を大きく受けるので該特性値を最適化するのが好ましい。
上記特性を有するポリエステル樹脂を得るには、本発明における重縮合触媒として、前記したアルミニウム化合物として、下記方法で定量される27アルミニウム−NMRスペクトルにおいて−15〜30ppmに現れるピークの積分値が基準ピークの積分値に対する比で1.0以上であるアルミニウム化合物のエチレングリコール溶液を用いて重縮合反応系に添加するのが好ましい。
アルミニウム化合物エチレングリコール溶液のNMRスペクトルは以下の方法で測定した。
[アルミニウム化合物エチレングリコール溶液のNMRスペクトルの測定法]
下記方法でアルミニウム化合物のエチレングリコール溶液のNMRスペクトルを測定する。
試料 :アルミニウム化合物のエチレングリコール溶液(濃度:アルミニウ元
素量として2.65g/l)
装置 :フ−リエ変換核磁気共鳴装置(BRUKER製AVANCE500)
測定溶液 :上記試料80容量部に対して20容量部の重水素化ジメチルスルホキ
シドを添加
27アルミニウム共鳴周波数 :130.33MHz
検出パルスのフリップ角 :90°
デ−タ取り込み時間 :1.0秒
遅延時間 :1.0秒
プロトンデカップリング :実施せず
積算回数 :500〜1000回
測定温度 :室温
一方、塩化アルミニウム・六水和物(アルミニウムCl3・6H2O) 1.3ミリモル/lの重水溶液を前記の条件で測定したときのピーク積分値を基準の1.0とし、上記方法で測定されるアルミニウム化合物のエチレングリコール溶液の−15〜30ppmに現れるピーク積分値の比(以後、Al化合物のNMRピーク積分値比と略す)で表示する。
Al化合物のNMRピーク積分値比は1.0以上がより好ましく、1.3以上がさらに好ましく、1.6以上が特に好ましい。該ピークの積分値比が1.0未満では後述のポリエステルに不溶なアルミニウム系異物量が増大し1000ppm以下を確保することができなくなるので好ましくない。
Al化合物のNMRピーク積分値比を1.0以上にする方法は限定されないが、アルミニウム化合物を溶液化する際に該溶液の温度が110℃以上にならないようにすることが好ましい実施態様である。105℃以下がより好ましく、100℃以下がさらに好ましい。該アルミニウム化合物は前記のごとく最終的にはエチレングリコール溶液として反応系に添加するのが好ましい。該エチレングリコール溶液の調製方法も限定されないが、アルミニウム化合物を一旦水に溶解させた後に、該水溶液にエチレングリコールを添加し、得られた水/エチレングリコールの混合溶媒よりなる溶液を加熱し水を留去させる液置換法で実施するのが好ましい実施態様である。
なお、ここで溶液化とは、溶解あるいは液置換等の溶液化に係る全ての工程を含む。液置換における低温化の方法としては減圧下で行い、低温化と時間短縮の両立を行うのが好ましい実施態様である。液置換の効率化を考慮すると55〜105℃が好ましく、60〜100℃で行うのが特に好ましい。
また、Al化合物のNMRピーク積分値比を1.0以下にする方法として、溶解に用いるアルミニウム化合物の品質も重要である。会合度の低いものを選択するのも有効な方法である。この溶解前のアルミニウム化合物の会合を抑制する方法も限定されない。例えば、アルミニウム化合物を調製する際に会合を抑制する添加剤を添加したり、該調製工程におけるアルミニウム化合物を取り出す時の乾燥温度を低くしたり、該乾燥時の乾燥度合を低くし水分を含んだ状態で製品とする等が有効である。また、アルミニウム化合物を単離せずに水溶液等の溶液状で入手することも好ましい実施態様である。
会合度の少ないアルミニウム化合物の選択基準としては、例えば、アルミニウム化合物を水に溶解した時の不溶分量を特定化する、アルミニウム化合物の結晶化度を特定化する、アルミニウム化合物の結晶水量を特定化する等の方法が挙げられる。また、アルミニウム化合物の水等の溶媒に対する溶解性を向上する添加剤や、アルミニウム化合物の加水分解等に対する安定性を向上する化合物を併用する等も好ましい実施態様である。
以下にアルミニウム化合物の溶解方法を例示する。
(1)塩基性酢酸アルミニウムの水溶液の調製例
塩基性酢酸アルミニウムに水を加え50℃以下で3時間以上攪拌する。攪拌時間は、6時間以上であることが更に好ましい。その後、60℃以上で数時間以上攪拌を行う。この場合の温度は、60〜100℃の範囲であることが好ましい。攪拌時間は、1時間以上であることが好ましい。水溶液の濃度は、10g/l〜30g/lが好ましく、特に15g/l〜20g/lが好ましい。
(2)塩基性酢酸アルミニウムのエチレングリコール溶液の調製例
前記の水溶液に対してエチレングリコールを加える。エチレングリコールの添加量は水溶液に対して容量比で0.5〜5倍量が好ましい。より好ましくは1〜3倍量である。該溶液を数時間常温で攪拌することで均一な水/エチレングリコール混合溶液を得る。その後、該溶液を加熱し、水を留去することでエチレングリコール溶液を得ることができる。温度は50℃以上が好ましく、110℃以下が好ましい。より好ましくは55〜105℃で数時間攪拌して水を留去することが好ましい。60〜100℃で行うのが特に好ましい。留去の際に系を減圧にすることが好ましい。減圧にすることで、より低温で迅速にエチレングリコールを留去することができる。つまり減圧下では80℃以下でも留去が可能となり、系に与える熱履歴をより少なくすることができる。
(3)乳酸アルミニウムのエチレングリコール溶液の調製例
乳酸アルミニウムの水溶液を調製する。調製は室温下でも加熱下でもよいが室温下が好ましい。水溶液の濃度は20g/l〜100g/lが好ましく、50〜80g/lが特に好ましい。該水溶液にエチレングリコールを加える。エチレングリコールの添加量は水溶液に対して容量比で1〜5倍量が好ましい。より好ましくは2〜3倍量である。該溶液を常温で攪拌し均一な水/エチレングリコール混合溶液を得た後、該溶液を加熱し、水を留去することでエチレングリコール溶液を得ることができる。温度は50℃以上が好ましく、110℃以下が好ましい。より好ましくは55〜105℃で数時間攪拌して水を留去することが好ましい。60〜100℃で行うのが特に好ましい。塩基性酢酸アルミニウムの場合と同様に、エチレングリコール溶液への液置換を減圧下で行うのが好ましい。
上記方法で得られたアルミニウム化合物溶液を濾過、遠心分離あるいは超遠心分離等の方法により、該溶液中に存在するコンタミ等の不溶性異物を除去することは好ましい実施態様である。
さらに、前記特性を付与するには、前記の重縮合触媒の構成成分であるアルミニウム化合物とリン化合物とを溶液中で混合し重縮合反応系に添加することが好ましい。このことにより、ポリエステルに不溶なアルミニウム系異物量が前記した好ましい範囲であるポリエステルを安定して得ることができる。すなわち、重縮合触媒のポリエステル製造工程への添加時期、場所および重縮合触媒が添加される折のポリエステルオリゴマーの特性等が変化してもポリエステルに不溶なアルミニウム系異物量が前記した好ましい範囲で制御可能となる。
この場合、リン化合物は水酸基を含有していることが好ましい実施態様である。したがって、リン化合物一分子中に少なくとも一個以上の水酸基を有する構造化合物であることが好ましい。例えば、前記のリン化合物の中で酸化合物や酸とエステルとの酸/エステル混合化合物が該当する。リン化合物の水酸基が全てエステル化された全エステル化化合物の場合は、リン化合物を水やアルキレングリコール等の含水溶媒で事前に処理し、エステル結合の加水分解を行いエステル結合の一部を水酸基に変換したものを用いるのが好ましい実施態様である。
この場合の水酸基への変換量は限定されないが、ポリエステルに対する不溶性異物量は極微量であり、該水酸基導入によるポリエステルに対する不溶性異物量低減効果は極微量で発現されるので、全エステル結合の数モル%程度の量でも有効である。したがって、リン化合物中の全水酸基がエステル化されたエステルタイプのリン化合物を用いてもアルミニウム化合物溶液と混合処理する際に形成される水酸基によってもその効果が発現されるので、エステルタイプのリン化合物を用いることも排除されない。
前記のごとく予め水およびアルキレングリコールからなる群から選ばれた少なくとも1種の溶媒中で加熱処理されたものを用いることにより本発明の効果をより効率的に発現することができるので好ましい実施態様であるが、該加熱処理をすることにより、重縮合触媒活性が向上するという効果も発現されるので特に好ましい実施態様として推奨される。
リン化合物を予め加熱処理する時に使用する溶媒としては、水およびアルキレングリコールからなる群から選ばれる少なくとも1種であれば限定されず任意であるが、リン化合物を溶解する溶媒を用いることが好ましい。アルキレングリコールとしては、エチレングリコールを用いることが好ましい。溶媒中での加熱処理は、リン化合物を溶解してから行うのが好ましいが、完全に溶解していなくてもよい。また、加熱処理の後に、化合物がもとの構造を保持している必要はなく、加熱処理による変性で溶媒に対する溶解性が向上するものであっても構わない。
加熱処理の温度は特に限定はされないが、20〜250℃の範囲であることが好ましい。より好ましくは、100〜200℃の範囲である。温度の上限は、用いる溶媒の沸点付近とすることが好ましい。加熱時間は、温度等の条件によっても異なるが、溶媒の沸点付近の温度だと1分〜50時間の範囲であることが好ましく、より好ましくは30分〜10時間、さらに好ましくは1〜5時間の範囲である。加熱処理の系の圧力は常圧、もしくはそれ以上あるいは以下であってもよく特に限定されない。溶液の濃度は、リン化合物として1〜500g/lであることが好ましく、より好ましくは5〜300g/l、さらに好ましくは10〜100g/lである。加熱処理は窒素等の不活性気体の雰囲気下で行うことが好ましい。加熱後の溶液もしくはスラリーの保管温度は特に限定はされないが、0℃〜100℃の範囲であることが好ましく、20℃〜60℃の範囲であることがより好ましい。溶液の保管は窒素等の不活性気体の雰囲気下で行うことが好ましい。
また、上記混合液の水酸基が結合したリン原子のNMRスペクトルピークが混合前のリン化合物単独溶液の水酸基が結合したリン原子のNMRスペクトルピークより高磁場側にシフトすると共に該ピークがブロ−ドになることが好ましい。さらに、上記混合溶液の水酸基が結合したリン原子のNMRスペクトルピークの積分値の、混合前のリン化合物単独溶液の水酸基が結合したリン原子のNMRスペクトルピークの積分値に対するピーク面積比(以後、Al/P混合液のNMRピークの積分値比と略す)が、0.1以上であることが好ましい実施態様である。
Al/P混合液のNMRピークの積分値比は0.2以上がより好ましく、0.35以上がさらに好ましい。Al/P混合液のNMRピークの積分値比が0.1未満ではアルミニウム重縮合触媒起因のポリエステルに不溶性の異物の生成を抑制する効果が低減し、ポリエステルに不溶性の異物含有量が多くなり、フィルムとした際にフィルムのヘイズが悪化する場合があるので好ましくない。さらに、ポリエステルの重縮合工程やフィルム製造時の溶融押し出し工程でのポリエステルの濾過時のフィルター詰まりが多くなる場合がある。なお、前記の混合溶液の溶媒は90モル%以上がエチレングリコールであることが好ましい。
前記のアルミニウム化合物のエチレングリコール溶液とリン化合物溶液との混合の方法は限定されないが、リン化合物溶液を攪拌しながらアルミニウム化合物を滴下し添加するのが好ましい。該添加時の条件も限定されない。
水酸基が結合したリン化合物の場合は、室温混合が好ましい。一方、全水酸基がエステル化されたエステルタイプのリン化合物の場合は、水酸基の生成を引起す必要があるので加温が必要となる。該加温の温度は限定されないが50〜200℃が好ましい。該混合の条件は用いるリン化合物やアルミニウム化合物の構造等で適宜設定される。該条件の設定は、両溶液を混合した時のNMRスペクトルの変化を追跡し上記要件を満たす混合条件を設定するのが好ましい実施態様である。
また、水酸基が結合していないリン化合物を用いる場合は、アルミニウム化合物のエチレングリコール溶液と混合する前に、リン化合物単独でエチレングリコール溶液として加熱処理し水酸基を形成させたものを用いるのが好ましい。該事前処理の折に少量の水を添加し水酸基の形成を促進してもよい。
前記のアルミニウム化合物のエチレングリコール溶液とリン化合物溶液を混合する場合のアルミニウム化合物とリン化合物との混合割合はアルミニウム原子およびリン原子のモル比が、式(1)になるように混合するのが好ましい。
0.5 ≦ P/アルミニウム(モル比)≦ 10 ・・・(1)
上記(1)式の範囲を超えた場合は、重縮合触媒活性が低下し、かつポリエステルに不溶性の異物の生成抑制効果が低下しやすくなるので好ましくない。P/アルミニウム(モル比)は、0.8〜10であることがさらに好ましく、特に好ましくは1.0〜5である。
前記のアルミニウム化合物のエチレングリコール溶液とリン化合物溶液とを混合することにより水酸基が結合したリン原子のNMRスペクトルピークが高磁場側にシフト現象はリン化合物中の水酸基がアルミニウム化合物中のアルミニウム原子に配位し錯体を形成することにより引起されているものと推察される。
前記のアルミニウム化合物とリン化合物との混合溶液の保存方法も特に限定されないが、例えば保存用タンクの設備を省くために、ポリエステル製造工程に供給する直前に混合するのが好ましい。該混合方法は限定されないが、例えば、各溶液を定量ポンプで所定の量を押し出し、攪拌式のミキサ−で攪拌しながら混合する方法や、スタティックミキサ−や配管中で混合する方法が挙げられる。
事前に混合して供給する場合は、該混合液の保存は10〜45℃で行うのが好ましく、15〜40℃がより好ましい。該温度範囲より高温側で保存すると、アルミニウム化合物あるいはアルミニウム化合物とリン化合物との錯体のゲル化が起こる場合や、低温側においては、リン化合物の析出等により、混合溶液の流動性が低下し重縮合反応系への供給の定量性が低下する場合がある。特に、保存方法は限定されないが、アルミニウム化合物のエチレングリコール溶液とリン化合物のエチレングリコールとを所定の混合比になるように30分間攪拌混合してなる溶液を一旦取り出し、前記の好ましい温度範囲内になるような恒温槽または恒温室で保管する方法が挙げられる。
本発明において、上記要件を満たすことによりポリエステルに不溶性の異物含有量が少なくなるという機構は明確化できていないが、アルミニウム化合物のアルミニウム原子に対してリン化合物中の水酸基が配位しアルミニウム化合物とリン化合物の錯体が形成されることにより、アルミニウム化合物起因のポリエステルに対して不溶性の異物形成が抑制されために引起されるものと推察される。
本発明で用いるポリエステルの固有粘度は0.55〜1.50dl/g、好ましくは0.58〜1.30dl/g、さらに好ましくは0.60〜1.00dl/gの範囲である。固有粘度が0.55dl/g未満では、得られたフィルムの機械的特性が低下しやすくなる。また、固有粘度が1.50dl/gを越える場合は、フィルム製造時の溶融押し出し工程において、溶融時に樹脂温度が高くなって熱分解が激しくなり、透明性や欠点に影響を及ぼす遊離の低分子量化合物が増加する場合や、フィルムが黄色に着色する場合がある。
本発明のフィルム原料として用いるポリエステルの製造は、触媒として前記のアルミニウム系重縮合触媒を用いる点以外は従来公知の工程を備えた方法で行うことができる。例えば、PETを製造する場合は、テレフタル酸とエチレングリコール、必要により他の共重縮合成分を直接反応させて水を留去してエステル化した後、減圧下に重縮合を行う直接エステル化法、または、テレフタル酸ジメチルとエチレングリコール、必要により他の共重縮合成分を反応させてメチルアルコールを留去してエステル交換させた後、減圧下に重縮合を行うエステル交換法により製造される。さらに必要に応じて固有粘度を増大させる為に固相重縮合を行ってもよい。固相重縮合前の結晶化促進のため、溶融重縮合ポリエステルを吸湿させたあと加熱結晶化させたり、また水蒸気を直接ポリエステルチップに吹きつけて加熱結晶化させたりしてもよい。
前記溶融重縮合反応は、回分式反応装置で行っても良いし、また連続式反応装置で行っても良い。これらいずれの方式においても、エステル化反応、あるいはエステル交換反応は1段階で行っても良いし、また多段階に分けて行っても良い。溶融重縮合反応も1段階で行っても良いし、また多段階に分けて行っても良い。固相重縮合反応は、溶融重縮合反応と同様、回分式装置や連続式装置で行うことが出来る。溶融重縮合と固相重縮合は連続で行っても良いし、分割して行ってもよい。
前記の触媒は、重縮合反応のみならずエステル化反応及びエステル交換反応にも触媒活性を有する。例えば、テレフタル酸ジメチルなどのジカルボン酸のアルキルエステルとエチレングリコールなどのグリコールとのエステル交換反応による重縮合は、通常チタン化合物や亜鉛化合物などのエステル交換触媒の存在下で行われるが、これらの触媒に代えて、もしくはこれらの触媒に共存させて前記の触媒を用いることもできる。また、前記の触媒は、溶融重縮合のみならず固相重縮合や溶液重縮合においても触媒活性を有しており、いずれの方法によってもポリエステルを製造することが可能である。
前記の触媒は、重縮合反応の任意の段階、例えばエステル化反応もしくはエステル交換反応の開始前及び反応途中の任意の段階もしくは重縮合反応の開始直前あるいは反応途中に反応系へ添加することができる。
本発明で用いるポリエステルの製造方法は連続式重縮合法で行うのが好ましい。連続式重縮合法は回分式重縮合法に比して品質の均一性や経済性において有利である。エステル化、エステル交換および重縮合工程の反応器の個数やサイズおよび各工程の製造条件等は限定なく適宜選択できる。前述のごとく直接エステル化法が経済性の点で有利であり好ましい。
直接エステル化法による製造法を以下に例示する。
テレフタル酸1モルに対して1.02〜1.5モル、好ましくは1.03〜1.4モルのエチレングリコールが含まれたスラリーを調製し、これをエステル化反応工程に連続的に供給する。
エステル化反応は、1〜3個のエステル化反応槽を直列に連結した多段式装置を用いて、反応によって生成した水を精留塔で系外に除去しながら実施する。第1段目のエステル化反応の温度は240〜270℃、好ましくは245〜265℃、圧力は常圧〜0.29MPa、好ましくは0.005〜0.19MPaである。最終段目のエステル化反応の温度は通常250〜290℃好ましくは255〜275℃であり、圧力は通常0〜0.15MPa、好ましくは0〜0.13MPaである。
3段階以上でエステル化反応を実施する場合には、中間段階のエステル化反応の反応条件は、上記第1段目の反応条件と最終段目の反応条件の間の条件である。これらのエステル化反応の反応率の上昇は、それぞれの段階で滑らかに分配されることが好ましい。最終的にはエステル化反応率は90%以上、好ましくは93%以上に達することが望ましい。これらのエステル化反応により分子量500〜2000程度の低次縮合物が得られる。引き続き、重縮合反応槽に移送し重縮合を行う。該重縮合工程の反応槽数も限定されない。
重縮合工程は、一般には初期重縮合、中期重縮合および後期重縮合の3段階方式が取られている。重縮合反応条件は、第1段階目の重縮合の反応温度は250〜290℃、好ましくは260〜280℃であり、圧力は0.065〜0.0026MPa、好ましくは200〜30Torrで、最終段階の重縮合反応の温度は265〜300℃、好ましくは275〜295℃であり、圧力は0.0013〜0.000013MPa、好ましくは0.00065〜0.000065MPaである。3段階以上で実施する場合には、中間段階の重縮合反応の反応条件は、上記第1段目の反応条件と最終段目の反応条件の間の条件である。これらの重縮合反応工程の各々において到達される固有粘度の上昇の度合は滑らかに分配されることが好ましい。
前記の方法により得られたポリエステルを前述のごとく固相状態で減圧下あるいは不活性ガス気流下でポリエステル樹脂を加熱し、さらに重縮合を進めてもよいし、あるいは該ポリエステル樹脂中に含まれている環状三量体等のオリゴマーやアセトアルデヒド等の副生成物を除去する等の手段を取ることも何ら制約を受けない。また、例えば、超臨界圧抽出法等の抽出法でポリエステル樹脂を精製し前記の副生成物等の不純物を除去する等の処理を行うことを取り入れても良い。
本発明で用いるポリエステル中には、他の任意の重縮合体や制電剤、消泡剤、染色性改良剤、染料、顔料、艶消剤、蛍光増白剤、安定剤、酸化防止剤、その他の添加剤が含有されていてもよい。酸化防止剤としては、芳香族アミン系、フェノール系等の酸化防止剤が使用可能であり、安定剤としては、リン酸やリン酸エステル系等のリン系、硫黄系、アミン系等の安定剤が使用可能である。
これらの添加剤は、ポリエステルの重縮合時もしくは重縮合後、あるいはポリエステルフィルム製造時の溶融押し出し工程の任意の段階で添加することが可能であり、どの段階が好適かは対象とするポリエステルの構造や得られるポリエステルの要求性能に応じてそれぞれ適宜選択すれば良い。
以下、上記方法により得られたポリエステル樹脂を汎用ポリエステル樹脂と称する。
本発明の積層ポリエステルフィルムは、フィルムの表面の環状三量体が0.20mg/m2以下が好ましい。0.18mg/m2以下がより好ましく、0.16mg/m2以下がさらに好ましい。0.20mg/m2を超えた場合は、該フィルムに各種機能を有した機能層や機能フィルムを積層する時の接着阻害や欠陥が発生するので好ましくない。
また、本発明の積層ポリエステルフィルムは、ポリエステルフィルムの全光線透過率が89.5%以上、ヘイズが0.3%以下であることが好ましい。全光線透過率は91.0%以上がより好ましく、93.0%以上がさらに好ましい。上限は限定されないが、通常の方法で製造した場合は98%未満である。ヘイズは、0.28%以下がより好ましく、0.26%以下がさらに好ましい。下限は限定されないが通常の方法で製造した場合は0.1%超である。全光線透過率が89.5%未満でヘイズが0.3%超の場合は、積層フィルムの透明性が低下するので好ましくない。
さらに、本発明の積層ポリエステルフィルムは、積層ポリエステルフィルムを170℃で10分間加熱したときの少なくとも一方のフィルム表面の環状3量体が3.0mg/m2以下であり、ヘイズが6%以下であることが好ましい。ポリエステルフィルムを170℃で10分間加熱したときのフィルム表面の環状3量体が1.8mg/m2以下であり、ヘイズが3%以下であることがより好ましく、ポリエステルフィルムを170℃で10分間加熱したときのフィルム表面の環状3量体が1.5mg/m2以下であり、ヘイズが2%以下であることがさらに好ましい。上記加熱処理をしても上記特性が変化しないのが最も好ましい。
上記特性を満足しない場合には、積層ポリエステルフィルムを高温下で使用する際、あるいは高温で加工する際に、フィルム表面への環状三量体の移行が増大して、接着性を阻害したり、光学特性が低下したりする場合があるので好ましくない。
上記特性を満たすための方法は限定されないが、初期の全光線透過率に関しては、前述したポリエステルに不溶性のアルミニウム系異物量を本発明の範囲にすることが重要である。
また、環状三量体に関する特性や、加熱処理による全光線透過率の増大を抑制するためには、原料ポリエステル樹脂中の環状三量体含有量を5000ppm以下にすることが好ましい。ポリエステル樹脂中の環状三量体の含有量は4500ppm以下がより好ましく、4000ppm以下がさらに好ましい。
該原料ポリエステル中の環状三量体含有量を低減させる手法としては、例えば、固有粘度が0.40〜0.60dl/gの溶融重合ポリエステルプレポリマ−(汎用ポリエステル樹脂)を固相重合する方法がある。また、所定の固有粘度の汎用ポリエステル樹脂を不活性気体雰囲気下または減圧下に固有粘度が実質的に変化しない条件で加熱処理する方法がある。さらに、環状三量体を溶解する溶媒で抽出する方法がある。
また、製膜工程でのポリエステル樹脂の溶融状態での環状三量体の生成を抑制することが重要である。溶融状態での環状三量体の再生を出来るだけ抑制するためには、ポリエステル樹脂中に残存する活性な重合触媒量を出来るだけ減少さすことが重要である。このような活性な重合触媒量を減らす代表的な手段としては、下記の方法が挙げられる。
一つの手段としては、ポリエステルを水と接触処理することによって重合触媒の不活性化を行う方法が挙げられる。
ポリエステルの重縮合触媒を失活処理する方法としては、溶融重縮合後や固相重合後にポリエステルチップを水や水蒸気または水蒸気含有気体と接触処理する方法が挙げられる。
水処理方法としては、水中に浸ける方法やシャワ−でチップ上に水をかける方法等が挙げられる。処理時間としては5分〜2日間、好ましくは10分〜1日間、さらに好ましくは30分〜10時間で、水の温度としては20〜180℃、好ましくは40〜150℃、さらに好ましくは50〜120℃である。
以下に水処理を工業的に行う方法を例示するが、これに限定するものではない。また処理方法は連続方式、バッチ方式のいずれであっても差し支えないが、工業的に行うためには連続方式の方が好ましい。
ポリエステルのチップをバッチ方式で水処理する場合は、サイロタイプの処理槽が挙げられる。すなわちバッチ方式でポリエステルのチップをサイロへ受け入れ水処理を行う。ポリエステルのチップを連続方式で水処理する場合は、塔型の処理槽に継続的又は間欠的にポリエステルのチップを上部より受け入れ、水処理させることができる。
またポリエステルのチップと水蒸気または水蒸気含有ガスとを接触させて処理する場合は、50〜150℃、好ましくは50〜110℃の温度の水蒸気または水蒸気含有ガスあるいは水蒸気含有空気を好ましくは粒状ポリエチレンテレフタレート1kg当り、水蒸気として0.5g以上の量で供給させるか、または存在させて粒状ポリエチレンテレフタレートと水蒸気とを接触させる。
この、ポリエステルのチップと水蒸気との接触は、通常10分間〜2日間、好ましくは20分間〜10時間行われる。
以下に粒状ポリエチレンテレフタレートと水蒸気または水蒸気含有ガスとの接触処理を工業的に行なう方法を例示するが、これに限定されるものではない。また処理方法は連続方式、バッチ方式のいずれであっても差し支えない。
ポリエステルのチップをバッチ方式で水蒸気と接触処理をする場合は、サイロタイプの処理装置が挙げられる。すなわちポリエステルのチップをサイロへ受け入れ、バッチ方式で、水蒸気または水蒸気含有ガスを供給し接触処理を行なう。
ポリエステルのチップを連続的に水蒸気と接触処理する場合は塔型の処理装置に連続で粒状ポリエチレンテレフタレートを上部より受け入れ、並流あるいは向流で水蒸気を連続供給し水蒸気と接触処理させることができる。
前記の如く、水又は水蒸気で処理した場合は粒状ポリエチレンテレフタレートを必要に応じて振動篩機、シモンカ−タ−などの水切り装置で水切りし、コンベヤ−によって次の乾燥工程へ移送する。
水又は水蒸気と接触処理したポリエステルのチップの乾燥は通常用いられるポリエステルの乾燥処理を用いることができる。連続的に乾燥する方法としては、上部よりポリエステルのチップを供給し、下部より乾燥ガスを通気するホッパ−型の通気乾燥機が通常使用される。
バッチ方式で乾燥する乾燥機としては大気圧下で乾燥ガスを通気しながら乾燥してもよい。
乾燥ガスとしては大気空気でも差し支えないが、ポリエステルの加水分解や熱酸化分解による分子量低下を防止する点からは乾燥窒素、除湿空気が好ましい。
また別の手段として、前記の環状三両体の含有量を低減したポリエステル樹脂(以下ポリエステル樹脂(1)と称する)と主として芳香族ジカルボン酸とエチレングリコール成分とからなり、リン化合物をリン元素として100〜5000ppmを含む重縮合触媒失活用ポリエステル樹脂(以下、ポリエステル樹脂(2)と称する)を混合して溶融押し出しする方法が挙げられる。
ポリエステル樹脂(1)とポリエステル樹脂(2)との混合は製膜工程で行ってともよいし、事前に両ポリエステル樹脂を混合して溶融押出しをした混合ポリエステル樹脂を用いて行ってもよい。
前記のポリエステル樹脂(2)に含まれるリン化合物としては、リン酸系化合物、ホスフォン酸系化合物、ホスフィン酸系化合物、亜リン酸系化合物、亜ホスフォン酸系化合物、亜ホスフィン酸系化合物が挙げられる。
リン酸系化合物の具体例としては、例えば、リン酸、ジメチルホスフェ−ト、ジエチルホスフェ−ト、ジプロピルホスフェ−ト、ジブチルホスフェ−ト、ジアミルホスフェ−ト、ジヘキシルホスフェ−ト、トリメチルホスフェ−ト、トリエチルホスフェ−ト、トリプロピルホスフェ−ト、トリブチルホスフェ−ト、トリアミルホスフェ−ト、トリヘキシルホスフェ−ト、リン酸とアルキレングリコールとのエステルなどが挙げられる。
ホスフォン酸系化合物の具体例としては、例えば、メチルホスフォン酸、メチルホスフォン酸ジメチル、メチルホスフォン酸ジフェニル、フェニルホスフォン酸、フェニルホスフォン酸ジメチル、フェニルホスフォン酸ジフェニル、ベンジルホスフォン酸ジメチル、ベンジルホスフォン酸ジエチル、トリエチルホスホノアセテ−ト、トリブチルホスホノアセテ−ト、トリ(ヒドロキシエチル)ホスホノアセテ−ト、トリ(ヒドロキシプロピル)ホスホノアセテ−ト、トリ(ヒドロキシブチル)ホスホノアセテ−トなどがあげられる。
ホスフィン酸系化合物の具体例としては、例えば、ジフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸メチル、ジフェニルホスフィン酸フェニル、フェニルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸メチル、フェニルホスフィン酸フェニル、2−カルボキシエチル−メチルホスフィン酸、2−カルボキシエチル−エチルホスフィン酸、2−カルボキシエチル−プロピルホスフィン酸、2−カルボキシエチル−フェニルホスフィン酸、2−カルボキシエチル−m−トルイルホスフィン酸、2−カルボキシエチル−p−トルイルホスフィン酸、2−カルボキシエチル−キシリルホスフィン酸、2−カルボキシエチル−ベンジルホスフィン酸、2−カルボキシエチル−m−エチルベンジルホスフィン酸、2−カルボキシメチル−メチルホスフィン酸、2−カルボキシメチル−エチルホスフィン酸、2−カルボキシエチル−プロピルホスフィン酸、2−カルボキシメチル−フェニルホスフィン酸、2−カルボキシメチル−m−トルイルホスフィン酸、2−カルボキシメチル−p−トルイルホスフィン酸、2−カルボキシメチル−キシリルホスフィン酸、2−カルボキシメチル−ベンジルホスフィン酸、2−カルボキシメチル−m−エチルベンジルホスフィン酸、及びこれらの環状酸無水物、或いはこれらのメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル、エチレングリコールエステル、プロピオングリコールエステル、ブタンジオールとのエステルなどが挙げられる。
亜リン酸系化合物の具体例としては、例えば、亜リン酸ならびにジメチルホスファイト、ジエチルホスファイト、ジプロピルホスファイト、ジブチルホスファイト、ジアミルホスファイト、ジヘキシルホスファイト、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)4,4‘−ビフェニレンジホスファイト、亜リン酸とアルキレングリコールとのエステルなどが挙げられる。
亜ホスフォン酸系化合物の具体例としては、例えば、メチル亜ホスフォン酸、メチル亜ホスフォン酸ジメチル、メチル亜ホスフォン酸ジフェニル、フェニル亜ホスフォン酸、フェニル亜ホスフォン酸ジメチル、フェニル亜ホスフォン酸ジフェニルなどがあげられる。
上記リン化合物は、前記のポリエステル樹脂(1)に用いたものと同種、異種のいずれでも構わない。リン酸およびその誘導体の使用が好ましい。
前記のポリエステル樹脂(2)は、主として芳香族ジカルボン酸成分とグリコール成分とから得られる熱可塑性ポリエステルであり、好ましくは、芳香族ジカルボン酸単位が酸成分の70モル%以上含むポリエステルであり、さらに好ましくは、芳香族ジカルボン酸単位が酸成分の85モル%以上含むポリエステルであり、特に好ましくは、芳香族ジカルボン酸単位が酸成分の95モル%以上含むポリエステルであって、前記のリン化合物を共重合または配合したものである。
前記のポリエステル樹脂(2)を構成する芳香族ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、2、6−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニ−ル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸及びその機能的誘導体等が挙げられる。
また、前記のポリエステル樹脂(2)を構成するグリコール成分としては、エチレングリコール、1,3−トリメチレングリコール、テトラメチレングリコールなどの脂肪族グリコール、シクロヘキサンジメタノール等の脂環族グリコール等が挙げられる。
前記のポリエステル樹脂(2)として、テレフタル酸以外の1種以上のジカルボン酸成分、エチレングリコール以外の1種以上のグリコール成分、環状エステル、または多官能化合物を共重合成分として導入された共重合ポリエステルを使用してもよい。
ポリエステル樹脂(2)の共重合成分として使用することができる、テレフタル酸以外のジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、ジフェニ−ル−4,4′−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4′−ジフェニルケトンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸及びその機能的誘導体、p−オキシ安息香酸、オキシカプロン酸等のオキシ酸及びその機能的誘導体、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、グルタル酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸及びその機能的誘導体、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸及びその機能的誘導体などが挙げられる。
また、ポリエステル樹脂(2)の共重合成分として使用することができる、エチレングリコール以外のグリコール成分としては、ジエチレングリコール、1,3−トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、オクタメチレングリコール、デカメチレングリコール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、ダイマ−グリコール等の脂肪族グリコール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,1−シクロヘキサンジメチロ−ル、1,4−シクロヘキサンジメチロ−ル、2,5−ノールボルナンジメチロ−ル等の脂環族グリコール、キシリレングリコール、4,4′−ジヒドロキシビフェニル、2,2−ビス(4′−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−β−ヒドロキシエトキシフェニル)スルホン酸、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等の芳香族グリコール、ポリエチレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリアルキレングリコールなどが挙げられる。
さらに、前記ポリエステル樹脂(2)の共重合成分として使用することができる多官能化合物としては、酸成分として、トリメリット酸、ピロメリット酸等を挙げることができ、グリコール成分としてグリセリン、ペンタエリスリト−ルを挙げることができる。以上の共重合成分の添加量は、ポリエステルが実質的に線状を維持する程度でなければならない。また、単官能化合物、例えば安息香酸、ナフトエ酸等を共重合させてもよい。
前記のポリエステル樹脂(2)の好ましい一例は、主たる構成単位がエチレンテレフタレ−トから構成されるポリエステルであり、さらに好ましくはエチレンテレフタレ−ト単位を70モル%以上含み、共重合成分としてイソフタル酸、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどを含む共重合ポリエステルであり、特に好ましくはエチレンテレフタレ−ト単位を90モル%以上含むポリエステルである。
本発明でフィルム原料として用いるポリエステル樹脂(2)は、重縮合時に前記リン化合物を添加して共重合する方法あるいは汎用のポリエステル樹脂と前記リン化合物から選ばれた少なくとも一種を押出機、例えば二軸押出機で混練する方法によって製造することが可能であるが、これらに限定されるものではない。
前記のポリエステル樹脂(2)として、例えば、エチレンテレフタレート鎖にリン化合物を導入してなるポリエステルを用いる場合には、以下のような方法により製造することができる。
テレフタル酸及び/またはそのエステル形成性誘導体とエチレングリコールとのエステル化反応生成物を重縮合して、ポリエステルにする際に採用される任意の方法で合成することができる。前記リン化合物はポリエステルの製造時に添加されるが、その添加時期は、エステル化工程初期から、初期縮合後期までの任意の段階で添加できるが、重縮合反応機台の腐食の問題などから、エステル化工程終了後から初期縮合後期に添加するのが好ましい。
好ましい製造条件は、次のようである。すなわち、エステル化反応は、230〜250℃で常圧〜加圧下に0.5〜5時間実施してエステル化反応率を少なくとも95%、好ましくは98%以上にする。次いで、240〜255℃、好ましくは240〜250℃、さらに好ましくは240〜248℃で300〜0.1Torrで0.5〜2時間第一段の重縮合を実施し、さらに、250〜290℃、好ましくは250〜280℃、さらに好ましくは250〜275℃で10〜0.1Torr、好ましくは5〜0.1Torrで目的の重合度まで重縮合を行う。リン化合物はエステル化終了後から第一段の重縮合終了までの任意の段階で添加する。また、第一段目の重縮合反応を250℃以下で実施することも重要である。
前記の出発原料であるテレフタル酸またはエチレングリコールとしては、パラキシレンから誘導されるバ−ジンのテレフタル酸あるいはエチレンから誘導されるエチレングリコールは勿論のこと、使用済みPETボトルからメタノール分解やエチレングリコール分解などのケミカルリサイクル法により回収したテレフタル酸、ビスヒドロキシエチルテレフタレ−トあるいはエチレングリコールなどの回収原料も、出発原料の少なくとも一部として利用することが出来る。前記回収原料の品質は、使用目的に応じた純度、品質に精製されていなければならないことは言うまでもない。
本発明でフィルム原料として用いるポリエステル樹脂(2)の重縮合触媒としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、インジウム、タリウム、ゲルマニウム、錫、鉛、ビスマス、スカンジウム、イットリウム、ニオブ、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、テルル、タンタル、タングステン、ガリウム、アルミニウム、アンチモン、ゲルマニウム、チタン、ケイ素、銀などからなる群より選ばれる1種以上の金属化合物が用いられる。これらの重縮合触媒の中でも、特に、前記のリン化合物によって触媒作用が失活され難い、アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物、タングステン化合物が最適である。
アンチモン化合物としては、具体的には、三酸化アンチモン、酢酸アンチモン、酒石酸アンチモン、酒石酸アンチモンカリ、オキシ塩化アンチモン、アンチモングリコレ−ト、五酸化アンチモン、トリフェニルアンチモン等が挙げられる。
ゲルマニウム化合物としては、具体的には、無定形二酸化ゲルマニウム、結晶性二酸化ゲルマニウム、四酸化ゲルマニウム、水酸化ゲルマニウム、蓚酸ゲルマニウム、塩化ゲルマニウム、ゲルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウムテトラ−n−ブトキシド、亜リン酸ゲルマニウム等の化合物が挙げられる。
タングステン化合物としては、タングステン酸、タングステン酸リチウム、タングステン酸カリウム、タングステン酸ナトリウム、タングステン酸カルシウム、タングステン酸バリウム、タングステン酸コバルト、タングステン酸銅、タングステン酸マンガン、タングステンエトキシド、タングステン酸アンモニウム等の化合物が挙げられる。
また、前記のポリエステル樹脂(1)と同じ重縮合触媒を用いてもよい。
また、前記のポリエステル樹脂(2)の製造において、ジエチレングリコール含有量の生成抑制のために、塩基性窒素化合物を用いることができる。塩基性窒素化合物としては、脂肪族、脂環式、芳香族および複素環式窒素化合物のいずれでもかまわない。
具体例としては、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルアニリン、ジメチルアニリン、ピリジン、キノリン、ジメチルベンジルアミン、ピペリジン、テトラエチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラブチルアンモニウムハイドロオキサイド、トリエチルベンジルアンモニウムハイドロオキサイド、イミダゾ−ル、イミダゾリン等が挙げられる。これらの化合物は遊離形で用いてもよいし、低級脂肪酸やTPAの塩として用いてもよい。またこれらの塩基性窒素化合物の反応系への添加は、初期重縮合反応が終了するまでの任意の段階で適宜選ぶことが出来、単独で使用してもよいし2種以上を併用してもよい。これらの塩基性窒素化合物の添加量は、ポリエステル当り0.01〜1モル%、好ましくは0.05〜0.7モル%、更に好ましくは0.1〜0.5モル%である。
また、ポリエステル樹脂(2)の製造を、汎用のポリエステル樹脂にリン化合物を配合する方法を用いて行う場合は、乾燥したポリエステル樹脂と前記リン化合物を二軸押出機で溶融混練してチップ化する方法、ポリエステル樹脂粒状体をリン化合物の水溶液や有機溶媒の溶液に浸漬させる方法、あるいはこれらの溶液を表面に付着させる方法などが好適である。
前記のポリエステル樹脂(2)の固有粘度は、0.45〜1.00dl/gであることが好ましく、より好ましくは0.48〜0.90dl/g、さらに好ましくは0.50〜0.85dl/g、最も好ましくは0.55〜0.80dl/gの範囲である。また、固有粘度を0.70dl/g以上とすることが要望される場合は、溶融重縮合したポリマ−を固相状態で重合する、いわゆる固相重合法を用いることが好ましい。
固有粘度が0.45dl/g未満の場合は、得られたフィルムの透明性が悪くなり、また機械的強度が実用的な範囲を満たさず問題となる。一方、固有粘度が1.00dl/gを越えるポリエステル樹脂を生産する場合、重縮合時間が非常に長くなるためコストアップになり、経済性の面から実用的でないことと、ポリエステル樹脂(2)との組成物を溶融押し出しする際に、混練が不完全となり均一な品質のフィルムが得られにくくなる。
また、前記のポリエステル樹脂(2)は、ポリマーカラー、加水分解性など物性を損なわない程度に従来公知の紫外線吸収剤、酸化防止剤、酸素捕獲剤、外部より添加する滑剤や反応中に内部析出させた滑剤、離型剤、核剤、安定剤、帯電防止剤、青み付け剤、染料、顔料などの各種の添加剤を併用することも可能である。
また、ポリエステル樹脂(1)とポリエステル樹脂(2)のポリエステル骨格は、同種あるいは異種のどちらでも構わない。
さらに、前記のポリエステル樹脂(1)に前記したリン化合物を直接混合して、ポリエステル樹脂(1)の重縮合触媒活性の失活を行ってもよい。該方法で実施する場合は、製膜工程でポリエステル樹脂(1)にリン化合物を混合しても良いし、事前にポリエステル樹脂(1)とリン化合物を混合して溶融押出しをしたポリエステル樹脂を用いて行ってもよい。どちらの場合においても、ポリエステル樹脂(1)にリン化合物を混合して溶融押出しをしてもよいし、溶融状態のポリエステル樹脂(1)にリン化合物を添加して実施しても構わない。
また、前記のポリエステル樹脂(1)とポリエステル樹脂(2)を混合する方法とポリエステル樹脂(1)に直接リン化合物を混合する方法を併用しても構わない。
以上のリン化合物による重縮合触媒を失活させる方法においては、製膜して得られるポリエステルフィルムのAl原子およびP原子の残存するモル比(P/Al)およびP原子の残存量が、下記式(1)および(2)を満足するように、ポリエステル樹脂(1)、ポリエステル樹脂(2)、リン化合物の配合比を調整することが好ましい。
2.4 ≦ P/Al(モル比) ≦ 20 ・・・(1)
20 ≦ P(ppm) ≦ 200 ・・・(2)
両式ともに、P/Alモル比またはP原子の残存量が下限値未満の場合、重縮合触媒の失活効果が不十分であり、フィルム製造時の溶融押し出し工程において、ポリエステル樹脂の溶融状態での環状三量体の生成抑制効果が小さくなるので好ましくない。一方、P/Alモル比またはP原子の残存量が上限値を超える場合は、重縮合触媒の失活効果が飽和するだけでなく、ポリエステル樹脂の固有粘度が低下する場合がある等の好ましくない現象に繋がるので好ましくない。
上記の環状三量体は、フィルムの表面に存在するものは前述の問題点を有するが、フィルムの内部に存在すれば、その問題点は大幅に抑制される。従って、フィルム内部に存在する環状三量体は、例えば、加熱処理等によるフィルム表面への移行が抑制されれば、その存在量の大小の影響は殆ど無視できる。
フィルム表面に存在する環状三量体は主として、フィルムの内部に存在する環状三量体の表面への移行により増大する。従って、フィルムの表面層中の環状三量体の量を減少させてやれば、フィルム表面への環状三量体の移行量を抑制し、表面の環状三量体の析出を抑えることができる。すなわち、積層フィルム全体の環状三量体量を下げなくても、表面層付近の環状三量体量を減少させてやれば、表面環状三量体の析出を抑制することができる。
また、該フィルムの表面環状三量体は、該フィルムの使用目的により、フィルム両面の量を抑制する必要はなく、どちらか一方の表面の環状三量体量を低下させればよい場合がある。従って、本発明においては、積層フィルムの少なくとも一方の表面層について上記の環状三量体低減の対策を取り入れることが必須である。勿論、両方の表面層について環状三量体低減対策をとってもよいし、該積層フィルムの全構成層に環状三量体低減対策をとっても構わない。両方の表面層について環状三量体低減対策を施すことがより好ましい実施態様である。
上記背景より、本発明の積層ポリエステルフィルムは、該積層ポリエステルフィルムを170℃で10分間加熱したときの少なくとも一方の表面に析出する粒子の占有面積比率が0.3%以下であることが好ましい。
上記表面析出粒子は、主として環状三量体等の低重合オリゴマーやモノマーからなる低分子量物であり、従来は、前述したフィルム表面の環状三量体量により評価されてきた。該評価方法は、ポリエステルフィルム表面の該析出物を溶解する溶媒で洗浄あるいは溶出させ、該溶媒に溶解された環状三量体等を定量することにより実施される。従って、該方法では片面の表面層における環状三量体量を評価するのは難しい。また、該方法はフィルム表面のみでなく、フィルム内部に存在するオリゴマーをも抽出してしまうために実用特性との対応がよくない場合がある。そこで、本発明者等は、表面析出物は粒子として存在することを見出し、さらに、顕微鏡により表面に析出したこれらの粒子の占める面積を直接計数することで定量できることを見出し、フィルムの各表面に析出している主として環状三量体よりなる析出粒子量を個別に定量できる方法を見出し、上記特性を満たすことが重要であることを見出した。
すなわち、上記表面に析出する粒子の占有面積比率は以下の方法で評価される。
測定すべきフィルムの任意の5箇所より小片を切り取り、端部を蛇の目クリップで把持して170℃の熱風中で10分間加熱する。この際、フィルムが他のフィルムや器具と触れないように保持して、キズなどが生じないように取り扱う。加熱後は室温中へ取り出して、十分に自然冷却した後、次の観察を行う。
測定すべきフィルム小片から除電ブロワーによって塵などを注意深く取り除く。この表面を非接触型三次元形状測定装置(Micromap社製;Micromap557)で測定した。光学系にはミロー型二光束干渉対物レンズ(50倍)とズームレンズ(Body Tube,0.5倍)を使用し、5600オングストロームの光源を用いて、2/3インチCCDカメラで受光した。測定はWAVEモードで行い、245μm四方の視野を480ピクセル四方のデジタル画像として処理をする。画像の解析には解析ソフトウェア(Micromap123、バージョン4.0)を用いて、4次関数モードで傾斜除去(Detrending)し、表面形状データを得る。
当該形状データから解析ソフトウェア(SX−Viewer、バージョン3.4.2)を用いて粒子解析を行った。ソフトウェアの補正機能により、直平面補正と補間を行った後、最長径が0.01から2000μm、高さが0.1μmから1000μmの突起を解析する。該突起解析のパラメータとして、二値化閾値0.01と再二値化閾値50、ブロックサイズ4を与え、突起を二値化して抽出する。得られた解析結果から突起の占有面積を求め、上記加熱処理の前後で増加した突起の占有面積と視野の面積(6.0×104μm2)の比率より占有面積割合を求める。なお測定はフィルム小片中、明確なキズや異物などを避けた任意の3箇所で行い、5片都合15視野での平均値を求めて用いる。
上記表面に析出する粒子の占有面積比率の評価方法を確立することにより、フィルムの各表面に析出している主として環状三量体よりなる析出粒子量を個別に定量できることが実現化された。さらに、該評価法は前記した従来のフィルム表面の環状三量体量評価法の課題が解決されており、各種のフィルム加工や使用状態における加熱を想定した環状3量体等のオリゴマーの表面移行により引き起こされる表面汚染の問題をモデル的に評価する評価法を確立することができた。
上記の粒子の占有面積比率が0.25%以下であることがより好ましく、0.2%以下がさらに好ましい。0.3%を超えた場合は、前述した表面析出した環状三量体による問題発生が増大するので好ましくない。
従って、本発明においては、少なくとも一方の表面層が、前記のポリエステル樹脂(1)から構成されることが好ましい。さらに、表面層を構成するポリエステル樹脂として、ポリエステル樹脂(2)を配合して用いるのがより好ましい実施態様である。また、表面層の厚みが5〜20μmであることが好ましい。表面層の厚みは7〜18μmがより好ましい。
表面層の厚みが5μm以下では、表面層によるフィルムの基材層あるいはもう一方の表面層に存在する環状三量体の該表面への移行の抑制効果が低下し、フィルム表面の環状三量体量が増大するので好ましくない。逆に、20μmを超えた場合は、上記の環状三量体の表面への移行の抑制効果が飽和し、かつ積層ポリエステルを製造する場合のポリエステル樹脂(1)やポリエステル樹脂(2)の使用量が増加し、積層ポリエステルフィルムの製造コストの増大に繋がるので好ましくない。すなわち、該ポリエステル樹脂(1)やポリエステル樹脂(2)は、低環状三量体処理を行わない汎用のポリエステル樹脂に比べて製造コストが高くなるので、これらのポリエステル樹脂の使用量の増加は積層ポリエステルフィルムの製造コスト増大に繋がる。
本発明においては、基材層または環状三量体量の低減を必要としない表面層は前記した方法で得られた汎用ポリエステル樹脂を用いるのが好ましい。該汎用ポリエステル樹脂中の環状3量体は8000〜11000ppmである。前述のごとく、該汎用ポリエステル樹脂はポリエステル樹脂(1)やポリエステル樹脂(2)よりも製造コストが安価であるので、積層ポリエステルの製造コストの低減に繋がる。
また、本発明においては、基材層または環状三量体量の低減を必要としない表面層を構成する樹脂としてはポリエステルフィルムの製造工程で得られた回収ポリエステル樹脂を用いるのが好ましい実施態様である。該回収ポリエステル樹脂は汎用ポリエステル樹脂よりもさらに安価であるので、積層ポリエステルフィルムの製造コストをさらに低減させることができる。
該回収ポリエステル樹脂の使用割合は限定されない。例えば、内層を形成するポリエステル樹脂の全量を用いても本発明の効果は維持できる。従って、積層ポリエステルフィルムの製造工程の状況において適宜設定すればよい。該回収ポリエステル樹脂は、本発明の積層ポリエステルフィルムの製造工程で得られたものに限定はされない。他の方法で製造されたポリエステルフィルムで得られたものであっても構わない。
本発明の積層ポリエステルフィルム中に含有される環状3量体量は限定されないが、前述のごとく製造コスト低減より、回収ポリエステル樹脂や環状三量体量の低減処理をしないポリエステル樹脂の使用割合を高めることが好ましい。ポリエチレンテレフタレート樹脂における該樹脂中の環状三量体量は約1質量%前後である。従って、できるだけ該含有量に近いのが好ましい。積層ポリエステルフィルム中に含有される環状3量体量は5500〜9000ppmが好ましい。6500〜9000ppmがより好ましく、7500〜9000ppmがさらに好ましい。
本発明の積層ポリエステルフィルムは、2層以上、好ましく3層以上の積層構造を有し、配向されたものが好ましい。配向ポリエステルフィルムは、公知の方法を用いて、ポリエステルのガラス転移温度以上結晶化温度未満で、少なくとも一軸方向に1.1〜6倍に延伸することにより得ることができる。
例えば、二軸配向ポリエステルフィルムを製造する場合、縦方向または横方向に一軸延伸を行い、次いで直交方向に延伸する逐次二軸延伸方法、縦方向及び横方向に同時に延伸する同時二軸延伸する方法、さらに同時二軸延伸する際の駆動方法としてリニアモーターを用いる方法のほか、横・縦・縦延伸法、縦・横・縦延伸法、縦・縦・横延伸法な、同一方向に数回に分けて延伸する多段延伸方法を採用することができる。
さらに、延伸終了後、フィルムの熱収縮率を低減させるために、(融点−50℃)〜融点未満の温度で30秒以内、好ましくは10秒以内で熱固定処理を行い、0.5〜10%の縦弛緩処理、横弛緩処理などを施すことが好ましい。
得られた配向ポリエステルフィルムは、総厚みが10μm以上1000μm以下が好ましく、より好ましくは15μm以上500μm以下である。10μm未満では多層化による表面環状三量体の抑制効果の発現が困難となる。多層化による表面環状三量体の抑制の発現効果は層厚みが大きくなる程大きくなる。従って、総厚みは30μm以上がさらに好ましい。また1000μmを超えると硬すぎて取り扱いが困難である。
多層化は共押出し法により行うのが好ましい。層数は片面のみの表面環状三量体量を低減させる場合は2層でも構わないが、3層で行いその表面層側の1層または2層の低環状三量体化を実施して、片面あるいは両面の表面環状三量体量低減を行うことが好ましい。
また、接着性、離型性、制電性、赤外線吸収性、抗菌性、耐擦り傷性、などの各種機能を付与するために、配向ポリエステルフィルム表面にコーティング法により高分子樹脂を被覆してもよい。また、被覆層にのみ無機及び/又は有機粒子を含有させて、易滑高透明ポリエステルフィルムとしてもよい。さらに、無機蒸着層を設け、酸素、水、オリゴマーなどの各種バリア機能を付与することもできるし、スパッタリング法などで導電層を設けて導電性を付与することもできる。また、配向ポリエステルフィルムの滑り性、走行性、耐摩耗性、巻き取り性などのハンドリング特性を向上させるために、ポリエステル樹脂の製造工程で、無機粒子、有機塩粒子、又は耐熱性高分子樹脂粒子を添加して、フィルム表面に凹凸を形成させてもよい。また、これらの粒子は無機・有機又は親水・疎水等の表面処理がされたもの、されていないもの、どちらを使っても良いが、例えば分散性を向上させる等の目的で、表面処理した粒子を用いる方が好ましい場合がある。
無機粒子としては、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、リン酸リチウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、フッ化リチウム、ソジュウムカルシウムアルミシリケ−ト等が挙げられる。
有機塩粒子としては、蓚酸カルシウムやカルシウム、バリウム、亜鉛、マンガン、マグネシウム等のテレフタル酸塩等が挙げられる。
架橋高分子粒子としては、ジビニルベンゼン、スチレン、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸またはメタクリル酸のビニル系モノマ−の単独または共重合体が挙げられる。その他に、ポリテトラフルオロエチレン、ベンゾグアナミン樹脂、熱硬化エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、熱硬化性尿素樹脂、熱硬化性フェノール樹脂などの耐熱性有機粒子を用いても良い。
上記不活性粒子を基材フィルムとなるポリエステル樹脂中に含有させる方法は限定されないが、(a)ポリエステル構成成分であるジオール中で不活性粒子をスラリー状に分散処理し、該不活性粒子スラリーをポリエステルの重縮合反応系へ添加する方法、(b)ポリエステルフィルムの溶融押出し工程においてベント式二軸押出し機で、溶融ポリエステル樹脂に分散処理した不活性粒子の水スラリーを添加する方法、(c)ポリエステル樹脂と不活性粒子を溶融状態で混練する方法(d)ポリエステル樹脂と不活性粒子のマスタ−レジンを溶融状態で混練する方法などが例示される。
重縮合反応系に添加する方法の場合、不活性粒子のジオールスラリーを、エステル化反応またはエステル交換反応前から重縮合反応開始前の溶融粘度の低い反応系に添加することが好ましい。また、不活性粒子のジオールスラリーを調整する際には、高圧分散機、ビ−ズミル、超音波分散などの物理的な分散処理を行うとことが好ましい。さらに、分散処理したスラリーを安定化させるために、使用する粒子の種類に応じて適切な化学的な分散安定化処理を併用することが好ましい。
分散安定化処理としては、例えば無機酸化物粒子や粒子表面にカルボキシル基を有する架橋高分子粒子などの場合には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ化合物をスラリーに添加し、電気的な反発により粒子間の再凝集を抑制することができる。また、炭酸カルシウム粒子、ヒドロキシアパタイト粒子などの場合には、トリポリ燐酸ナトリウムやトリポリ燐酸カリウムをスラリー中に添加することが好ましい。
また、不活性粒子のジオールスラリーをポリエステルの重縮合反応系へ添加する際、スラリーをジオールの沸点近くまで加熱処理することも、重縮合反応系へ添加した際のヒ−トショック(スラリーと重縮合反応系との温度差)を小さくすることができるため、粒子の分散性の点で好ましい。
これらの添加剤は、ポリエステルの重縮合時もしくは重縮合後、あるいはポリエステルフィルムの製膜後の任意の段階で添加することが可能であり、どの段階が好適かは化合物の特性やポリエステルフィルムの要求性能に応じてそれぞれ異なる。
本発明の配向ポリエステルフィルムは、好ましくは帯電防止性フィルム、易接着性フィルム、カード用、ダミー缶用、農業用、建材用、化粧材用、壁紙用、OHPフィルム用、印刷用、インクジェット記録用、昇華転写記録用、レーザービームプリンタ記録用、電子写真記録用、熱転写記録用、感熱転写記録用、プリント基板配線用、メンブレンスイッチ用、マスキングフィルム用、写真製版用、レントゲンフィルム用、写真ネガフィルム用、、感光性樹脂フィルム用、導電性フィルム用、セパレータ用、紫外線防止用、バックグラインドテープ用、ハードコートフィルム用、近赤外線吸収フィルター用、電磁波遮蔽フィルム用、タッチパネル用、位相差フィルム用、偏光フィルム用、偏光膜保護(TAC)用、プロテクトフィルム用、視野拡大フィルム用、拡散シート用、反射フィルム用、反射防止フィルム用などの基材として用いられる。
帯電防止用フィルムとしては、例えば特許第2952677号公報、特開平6−184337号公報に記載の技術を用いることができる。易接着性フィルムとしては、例えば特公平07−108563、特開平10−235820、特開平11−323271号公報に、カード用としては例えば特開平10−171956、特開平11−010815号公報に記載の技術を本発明のフィルムに適用できる。ダミー缶用としては例えば特開平10−101103号公報に記載のシート状筒体の替わりに、本発明のフィルム上に意匠を印刷し筒状、半筒状にしたものを用いることができる。建材用、建材用化粧版、化粧材用としては、例えば特開平05−200927号公報に記載の基材シート、特開平07−314630号公報に記載の透明シートとして本発明のフィルムを用いることができる。OHP用(オーバーヘッドプロジェクタ用)としては特開平06−297831号公報に記載の透明樹脂シート、特開平08−305065号公報に記載の透明高分子合成樹脂フィルムとして本発明のフィルムを用いることができる。インクジェット記録用としては、例えば特開平05−032037号公報に記載の透明基材として本発明のフィルムを用いることができる。昇華転写記録用としては例えば特開2000−025349号公報に記載の透明なフィルムとして本発明のフィルムを用いることができる。レーザービームプリンタ用、電子写真記録用としては例えば特開平05−088400号公報に記載のプラスチックフィルムとして本発明のフィルムを用いることができる。熱転写記録用としては例えば特開平07−032754号公報に感熱記録用としては特開平11−034503号公報にそれぞれ記載の方法で本発明のフィルムを用いることができる。プリント基板用としては例えば特開平06−326453号公報に記載のポリエステルフィルムとして本発明のフィルムを用いることができる。メンブレンスイッチ用としては例えば特開平05−234459号公報に記載の方法で本発明のフィルムを用いることができる。光学フィルター(熱線フィルター、プラズマディスプレイ用)としては、例えば特開平11−231126号公報に記載の方法で本発明のフィルムを用いることができる。透明導電性フィルム、タッチパネル用としては例えば特開平11−224539号公報に記載の方法で本発明のフィルムを用いることができる。マスキングフィルム用としては、例えば特開平05−273737号公報に記載の方法で本発明のフィルムを用いることができる。写真製版用としては例えば特開平05−057844号公報に記載の方法で本発明のフィルムを用いることができる。写真用ネガフィルムとしては例えば特開平06−167768号公報の段落番号(0123)に記載のポリエチレンテレフタレートフィルムとして本発明のフィルムを用いることができる。位相差フィルム用としては例えば特開2000−162419号公報に記載のフィルムとして本発明のフィルムを用いることができる。セパレータ用としては、例えば特開平11−209711号公報の段落番号(0012)に記載のフィルムとして本発明のフィルムを用いることができる。紫外線防止用としては例えば特開平10−329291号公報に記載のポリエステルフィルムとして本発明のフィルムを用いることができる。農業用フィルムとしては、特開平10−166534号公報に記載のポリエチレンテレフタレートフィルムに本発明のフィルムを適用することにより得ることができる。粘着シートとしては例えば特開平06−122856号公報に記載のポリエチレンテレフタレートフィルムに本発明の配向ポリエステルフィルムを適用することにより得られる。本発明で用いるポリエステルフィルムは前述のような特性を有するので、例えば、液晶表示、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ等の各種表示装置部材のベースフィルム等の光学用途において特に好適に用いることができる。