JP7392715B2 - ポリエステル系シーラントフィルムおよびそれを用いた包装体 - Google Patents

ポリエステル系シーラントフィルムおよびそれを用いた包装体 Download PDF

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Description

本発明は、包装容器用の蓋材に好適に使用されるポリエステル系シーラントフィルムに関するもので、特にポリエステル系容器へのヒートシール強度に優れている。また、本発明のポリエステル系シーラントフィルムを用いた蓋材は適度な熱収縮性を有するため、容器へヒートシールした後に加熱することで、容器外観が良好となる。さらに本発明は、該蓋材を用いた包装体にも関する。
従来、食品、医薬品および工業製品に代表される流通物品の多くに、包装体が用いられている。包装体の中には、プラスチックフィルムやシートを成型した容器がある。このようなプラスチック製の容器には、プラスチックからなるシーラントフィルムが蓋材として使用されることが多い。この場合、内容物が容器に充填された後、容器のフランジ部に蓋材がヒートシールによって接着されて包装体が完成し、内容物の保護、漏洩防止といった機能が備わる。容器としては、透明性や光沢感といった外観の美麗さだけでなく、リサイクルできる素材であることを考慮して、ポリエチレンテレフタレート(PET)をはじめとするポリエステル系素材からなるものが幅広く使用されている。容器がポリエステル系素材である場合、その蓋材も同系統のポリエステル系素材からなることが多い。これは、異素材同士のヒートシールが成立しにくいという技術的な問題による。
従来のシーラントとしては、シール性能やコストといった観点から、ポリプロピレンやポリエチレンといったポリオレフィン系素材からなるシーラントが蓋材として、広く使用されてきた(例えば、特許文献1)。しかし、上述の理由からポリエステル系容器の使用が普及してきており、ポリエステル系からなるシーラントを蓋材として使用されるケースが増えてきている。さらに、ポリオレフィン系シーラントは、内容物の成分(油脂や香気成分等の有機化合物)を吸着・透過しやすいといった欠点を有しており、改善が望まれていた。内容物の成分の保香性(非透過性)を改善するため、例えば特許文献2には、ヒートシール層と環状ポリオレフィンからなる樹脂層を有した保香性フィルムが開示されている。ただし、内容物と直接接触するヒートシール層には、食品等の包装材のヒートシール層として使用されている(すなわち一般的な)ポリオレフィン系樹脂が用いられているため、内容物を吸着する問題は解決されていない。
一方、ポリエステル系シーラントは、ポリエステル系の容器と接着しやすいだけでなく、内容物の成分を吸着・透過させにくいという特徴を有する。ポリエステル系シーラントとして、例えば特許文献3には、二軸延伸PETフィルムの片面又は両面に押出し積層されたPET樹脂層からなる積層材が開示されている。また、特許文献4には、二軸延伸ポリエステルフィルムから成るベース層と、当該ベース層上にオフラインで形成された少なくとも一つの剥離性被覆層とから成る透明剥離ポリエステルフィルムが開示されている。これらに開示されているフィルムはヒートシール性に優れるものの、一度製膜して巻き取られた二軸延伸ポリエステルフィルムを巻き出して製造するため、製造ラインを2回経なければならず、生産性に劣るという問題があった。また、例えば特許文献5には、溶解度パラメータが9以上のポリエステル樹脂を含む、未延伸シーラントフィルムが開示されている。しかし、特許文献5のシーラントは未延伸であり、実質的に分子が配向していない点に起因した問題を有していた。すなわち、未延伸のフィルムは機械強度が低いため、印刷や蒸着、ラミネートといった二次加工時に製造ラインで巻き出す際、パスラインから受ける張力によって容易に伸長・破断するという加工性に劣る問題点があった。
一方、本発明の出願人はこれまで、上記の問題点を解決するため、ポリエステル系素材を二軸延伸したシーラントを検討してきている。例えば特許文献6には、非晶性のポリエステル原料を用いて、一軸又は二軸延伸されたシーラントフィルムを開示している。特許文献6のシーラントフィルムは機械強度に優れるものの熱収縮率が大きいため、ヒートシールしたときにシーラントが熱変形するだけでなく、ボイル処理等の高温処理が必要な包装体には使用できないという問題があった。延伸フィルムは分子配向を有するため、それに伴って生じた熱収縮性を抑制することが技術的に重要な課題の一つであった。そこで、本発明者らは特許文献7にて、ヒートシール層と基材層の各層を少なくとも1層有し、熱収縮応力を抑制したポリエステル系の蓋材を開示している。特許文献7の蓋材は未延伸のポリエチレンテレフタレートシートとヒートシール可能であるが、実施例ではヒートシール層と基材層をラミネートする必要があり、特許文献3、4と同じく、生産性には改良の余地があった。
本発明者らは改良を検討し、特許文献8において、ヒートシール層と基材層の各層を少なくとも1層以上有しており、これらの層は同一の製造工程で積層・製膜されるポリエステル系シーラントフィルムを開示している。特許文献8のフィルムは、高いヒートシール強度と低い熱収縮率を有しており、従来見られた問題点を解消したものであった。ただし、特許文献8の実施例における140℃ヒートシール強度は最高でも16N/15mm(実施例6)であり、さらなる向上が望まれている。さらに、特許文献8の実施例6のフィルムはヒートシール層の滑り性が極端に悪いため、ロールとして巻き取ったときに巻きズレや凹凸、ブロッキングといった問題が起きていた。
また、シーラントフィルムを蓋材として容器へヒートシールした後、フィルムの素材種によらず、蓋材のたるみが外観上の不良として指摘されており、特許文献1~7に記載のシーラントフィルムはいずれもこの問題点有するものであった。
特許第6003380号公報 特開2016-117227号公報 特許第6009500号公報 特開2018-75835号公報 特開2017-165871号公報 特許第6384324号公報 特開2018-114992号公報 国際公開第2018/150997号
本発明は、前記のような従来技術の問題点を解消することを課題とするものである。すなわち、本発明の課題は、内容物の成分吸着が少なく、機械強度と低温域でのヒートシール強度に優れており、ロールとして巻き取ったときに巻き不良の起こりにくいシーラントフィルムを提供しようとするものである。また同時に本発明の課題は、容器の蓋材として使用したときに容器と蓋材をヒートシールした後の加熱によってシーラントフィルムが適度に熱収縮することにより、適度な張り感を持たせることで外観が美麗となるシーラントフィルムを提供しようとするものである。
本発明は、以下の構成よりなる。
1.少なくともヒートシール層を1層有しており、前記ヒートシール層がエチレンテレフタレートを主たる構成成分とするポリエステルにより形成されてなり、下記要件(1)~(4)を満たすことを特徴とするポリエステル系シーラントフィルム。
(1)ヒートシール層同士を140℃、0.2MPa、2秒でシールしたときのシール強度が、フィルム厚み10μmあたりで5N/15mm以上10N/15mm以下
(2)熱機械分析(TMA)により30℃から220℃まで10℃/分で昇温したとき、長手方向または幅方向の少なくとも一方向における最大熱収縮率が1%以上12%以下
(3)TMAにより30℃から220℃まで10℃/分で昇温したとき、長手方向または幅方向の少なくとも一方向おける最大熱収縮応力が0.2MPa以上3MPa以下
(4)ヒートシール層同士の動摩擦係数が0.1以上0.9以下
2.ヒートシール層の長手方向または幅方向の少なくとも一方向において、偏光ATR法で測定した赤外スペクトル中の1340cm-1と1410cm-1とのピーク強度比が0.05以上0.6以下であることを特徴とする1.に記載のポリエステル系シーラントフィルム。
3.ヒートシール層をH-NMRで測定した、エチレングリコールとブタンジオールのエステル交換度が8%以上25%以下であることを特徴とする1.または2.いずれかに記載のポリエステル系シーラントフィルム。
4.ヒートシール層と未延伸のポリエチレンテレフタレート(APET)シートを140℃、0.2MPa、2秒でシールしたときのシール強度が10N/15mm以上40N/15mm以下であることを特徴とする1.~3.いずれかに記載のポリエステル系シーラントフィルム。
5.長手方向または幅方向の少なくとも一方向の引張破断強度が80MPa以上200MPaであることを特徴とする1.~4.いずれかに記載のポリエステル系シーラントフィルム。
6.ヒートシール層を温度変調DSCで測定したときのノンリバースヒートフローから得られる融点が195℃以上230℃以下であることを特徴とする1.~5.いずれかに記載のポリエステル系シーラントフィルム。
7.印刷層が設けられていることを特徴とする、1.~6.いずれかに記載のポリエステル系シーラントフィルム。
8.前記1.~7.いずれかに記載のポリエステル系シーラントフィルムに、ガスバリア層を設けていることを特徴とするガスバリア性積層体。
9.前記8.に記載のガスバリア性積層体において、ガスバリア層が無機薄膜層であることを特徴とするガスバリア性積層体。
10.前記1.~7.のいずれかに記載のポリエステル系シーラントフィルムまたは8.、9.のいずれかに記載のガスバリア性積層体に、オーバーコート層が設けられていることを特徴とするガスバリア性積層体。
11.水蒸気透過度が0.05[g/(m・d)]以上4g/m以下であることを特徴とする8.~10.いずれかに記載のガスバリア性積層体。
12.酸素透過度が0.05[cc/(m・d・atm)]以上4[cc/(m・d・atm)]以下であることを特徴とする8.~11.いずれかに記載のガスバリア性積層体。
13.前記1.~7.のいずれかに記載のポリエステル系シーラントフィルムまたは8.~12.に記載のガスバリア性積層体のうち、いずれかを少なくとも1層有していることを特徴とする積層体。
14.前記1.~7.のいずれかに記載のポリエステル系シーラントフィルム、8.~12.に記載のガスバリア性積層体または13.に記載の積層体のうち、いずれかを少なくとも一部に用いたことを特徴とする包装体。
15.前記1.~7.のいずれかに記載のポリエステル系シーラントフィルム、8.~12.に記載のガスバリア性積層体または13.に記載の積層体のうち、いずれかを少なくとも蓋材の一部として用いたことを特徴とする包装体。
16.前記1.~7.のいずれかに記載のポリエステル系シーラントフィルム、8.~12.に記載のガスバリア性積層体または13.に記載の積層体のうち、いずれかを少なくとも蓋材の一部に用い、容器へヒートシールした後に加熱処理によって該蓋材を熱収縮させる包装体の製造方法。
本発明のポリエステル系シーラントフィルムは、内容物の成分吸着が少なく、機械強度と低温域でのヒートシール強度に優れているため、蓋材をはじめとした包装体として用いたときに優れた適性を有する。また、容器の蓋材として使用したときに張り感を持たせることができるよう、適度な熱収縮特性を有している。
実施例1と比較例4のヒートシール層におけるプロトン型核磁気共鳴分光測定(H-NMR)結果 実施例1と比較例4のヒートシール層における温度変調示差走査熱量計(DSC)から得られたノンリバースヒートフロー 実施例における容器へのヒートシール・加熱評価に用いた容器の模式図 実施例1と比較例5における容器へのヒートシール・加熱後のたるみ量評価(圧縮試験)結果
以下、本発明のポリエステル系シーラントフィルムについて説明する。
本発明のポリエステル系シーラントフィルムは、少なくともヒートシール層を1層有すると共に、以下の好ましい特性及び好ましい構成を有する。
1.シーラントフィルムの特性
1.1.フィルム厚み10μmあたりのヒートシール強度
本発明のポリエステル系シーラントフィルム(以下、単に「フィルム」と記載する場合がある)は、温度140℃、シールバー圧力0.2MPa、シール時間2秒でヒートシール層同士をヒートシールした際のヒートシール強度が、フィルム厚み10μmあたりで5.0N/15mm以上10.0N/15mm以下の必要がある。本発明のフィルムを140℃でヒートシールすると、ヒートシールの破壊モードは界面剥離ではなく、エッジ切れ(ヒートシール部端部でのフィルム破れ)が起きるため、ヒートシール強度はフィルムの引張強さに依存する。そのため本発明では、フィルムの厚みが増加することによってヒートシール強度も増加する。フィルム厚み10μmあたりのヒートシール強度が5N/15mm未満であると、シール部分が容易に破壊されるため、包装体として用いることができない。フィルム厚み10μmあたりのヒートシール強度は5.2N/15mm以上がより好ましく、5.4N/15mm以上がさらに好ましい。ヒートシール強度は大きいほど好ましいが、現状の技術水準から得られるフィルム厚み10μmあたりの上限は10.0N/15mm程度である。実用上は9.0N/15mmが上限であっても十分好ましいものといえる。
さらに本発明のポリエステル系シーラントフィルムは、ヒートシール層と未延伸のポリエチレンテレフタレート(APET)シートとを温度140℃、シールバー圧力0.2MPa、シール時間2秒でヒートシールした際のフィルム厚み10μmあたりのヒートシール強度が3.0N/15mm以上10.0N/15mm以下であると好ましい。このヒートシール強度が3.0N/15mm未満であると、シール部分が容易に破壊されるため、包装体として用いることができない。フィルム厚み10μmあたりのヒートシール強度は3.5N/15mm以上がより好ましく、4.0N/15mm以上がさらに好ましい。ヒートシール強度は大きいほど好ましいが、現状の技術水準から得られる上限は10.0N/15mm程度である。実用上は9.0N/15mmが上限であっても十分好ましいものといえる。
なお、以下の説明で「140℃ヒートシール強度」と記載する場合、特に断りがない限りはフィルム自身のヒートシール層同士をシールしたときのものとする。
1.2.最大熱収縮率
本発明のフィルムは長手方向または幅方向いずれか一方において、熱機械分析(TMA)を用いて30℃から220℃まで10℃/分で昇温したときの最大熱収縮率が1%以上12%以下となる必要がある。本発明における最大熱収縮率は、主に蓋材として用いたときの外観を左右する。すなわち、本発明のフィルムを蓋材として容器にヒートシールした後、加熱することによって生まれる熱収縮により、蓋材のたるみを解消して張り感をもたせ、外観が美麗となる。最大熱収縮率が1%未満であると、加熱による熱収縮がほとんど起こらないため、蓋材のたるみを解消することができなくなる。一方、最大熱収縮率が12%を超えると、ヒートシールやボイル処理等の高温処理の際に熱変形しやすくなるだけでなく、容器へヒートシールした後の加熱処理において、蓋材が過剰に収縮して容器を変形させやすくなるため好ましくない。最大熱収縮率は2%以上11%以下であるとより好ましく、3%以上10%以下であるとさらに好ましい。本発明のフィルムは、長手方向および幅方向の両方向において、最大熱収縮率が上記範囲内であることが好ましい。
1.3.最大熱収縮応力
本発明のフィルムは長手方向または幅方向いずれか一方において、TMAを用いて30℃から220℃まで10℃/分で昇温したときの最大熱収縮応力が0.2MPa以上3MPa以下となる必要がある。本発明の最大熱収縮応力は、上記の最大熱収縮率と同様、蓋材として用いて加熱したときの外観に影響する。最大熱収縮応力が小さければ小さいほど、蓋材の過剰な熱収縮による容器の変形を抑制できるため好ましいが、0.2MPaを下回ると、最大熱収縮率が1%未満となりやすくなるため好ましくない。一方、最大熱収縮応力が3MPaを超えると、容器へヒートシールした後に加熱することで生じる蓋材の熱変形が過剰となり、容器を変形させやすくなるため好ましくない。最大熱収縮応力は0.3MPa以上2.9MPa以下であるとより好ましく、0.4MPa以上2.8MPa以下であるとさらに好ましい。本発明のフィルムは、長手方向および幅方向の両方向において、最大熱収縮応力が上記範囲内であることが好ましい。
1.4.ヒートシール層の動摩擦係数
本発明のヒートシール層は、動摩擦係数が0.1以上0.9以下となる必要がある。動摩擦係数が0.1未満であるとフィルムが滑りすぎるため、例えばヒートシール層同士を重ねてヒートシールするときや、フィルムを枚葉重ねしたときに位置が容易にずれてしまうおそれがある。一方、動摩擦係数が0.9を超えると、フィルムが滑りにくくなり、ロールとして巻き取ったときに巻きズレや凹凸、ブロッキングといった問題が起こりやすくなる。動摩擦係数は0.2以上0.8以下であるとより好ましく、0.3以上0.7以下であるとさらに好ましい。
1.5.ヒートシール層の赤外ピーク強度比
本発明のヒートシール層は、偏光ATR法で測定した赤外スペクトル中の1340cm-1と1410cm-1とのピーク強度比ピーク(以下、赤外ピーク強度比と記載する場合がある)が、長手方向または幅方向のいずれか大きい方向において、0.05以上0.6以下であることが好ましい。1340cm-1の赤外ピークは、エチレングリコールのトランス配座を示している。1410cm-1の赤外ピークはフィルムの厚み等に影響を受けない、規格化に用いるピークである。この1340cm-1と1410cm-1とのピーク強度比はトランス配座の相対量を示しており、ピーク強度比が高いほど分子主鎖が配向しているといえる。以下では、フィルムをヒートシールしたときと製膜工程中に起こる分子構造の変化を考慮しながら、ヒートシール強度の発現する理由を説明する。
フィルムをヒートシール(加熱)すると、フィルムを構成する高分子はガラス転移または融解を起こす。これらの現象により分子鎖は運動し、互いに食い込みや絡み合いを起こしてヒートシールが完成すると考えられる。つまり、ヒートシール強度を発現させるためには、熱エネルギーによってヒートシール層の分子鎖を運動させる必要があるといえる。ヒートシール層を構成する分子鎖の配向度を考えたとき、配向度が高い(分子鎖が規則正しく整列している)と分子間力が高くなっており、ヒートシール強度を発現させるために必要な熱量は相対的に高い(分子鎖が運動しにくい)と考えられる。一方、配向度が低いと熱エネルギーによって容易に分子鎖が運動するため、ヒートシールが完成しやすい分子構造になっていると考えられる。この赤外ピーク強度比によって示される分子鎖の配向度は、後述するエステル交換度や製膜中の延伸、中間・最終熱処理の工程条件によって決まる。製膜中において、最終熱処理よりも前段階の延伸工程においてはヒートシール層の分子鎖は配向するが、最終熱処理工程でヒートシール層を部分的に融解させることにより生じた分子配向を崩壊させることができる。最終熱処理工程の詳しい条件については後述する。
ヒートシール層の赤外ピーク強度比が0.6を超えると、この層を構成する分子の配向度が高いため、フィルムの機械強度は向上するものの、フィルム厚み10μmあたりの140℃ヒートシール強度を5.0N/15mm以上とすることが困難となる。赤外ピーク強度比が0.05未満であると、フィルム厚み10μmあたりの140℃ヒートシール強度を5.0N/15mm以上としやすくなるが、ヒートシール層の動摩擦係数を0.9以下に抑えることが難しくなる。これは、最終熱処理工程でヒートシール層が融解しすぎることにより、ヒートシール層の表面近傍にある滑剤で生じた突起が沈みこんで平滑化してしまい、表面の平均長さRSm(後述)を18μm以上としにくくなるためである。赤外ピーク強度比は0.1以上0.55以下であるとより好ましく、0.15以上0.5以下であるとさらに好ましい。
1.6.ヒートシール層のエステル交換度
本発明のフィルムのヒートシール層は、プロトン核磁気共鳴(H-NMR、以下、単にNMRと記載)スペクトルから得られるピーク面積より算出したエステル交換度が5%以上25%以下であると好ましい。
一般的に、2種以上の異なるポリエステルを混合して加熱溶融すると、エステル交換反応を起こしてブロック共重合体を生成することが知られている。本発明におけるエステル交換度とは、エステルユニットにおける三つの連続する(二つのカルボン酸を挟む)ジオールモノマーの並びのうち、ブタンジオールの三連鎖(B-B-B)がどれだけエチレングリコールに置き換えられている(B-B-E)かを示す指標である。NMRスペクトルにおいて、オルトクロロフェノールの最も高磁場側のピークを6.6ppmとしたときの4.54~4.62ppmのピーク群は、低磁場側から順にB-B-B、B-B-E(BD側)、B-B-E(EG側)の連鎖由来ピークであると帰属される。エステル交換度は、これら4.54~4.62ppmのピーク群の積分値の総和に対して、B-B-Eピークの積分値の占める割合を求める(比をとる)ことで得られる。
エステル交換が促進することにより、ヒートシール層の融点が低下する。これは、エステル交換によって、1本の高分子鎖の中に異なるジオールモノマーが存在する割合が増えることになるため、分子鎖が均一に整列しにくくなり、結果として融点が低下すると考えられる。これは、上記の1.4.「赤外ピーク強度比」で示されるエチレングリコールのトランス配座とも関連があると考えられる。エチレングリコール-ブタンジオール間のエステル交換が促進すると、相対的にE-E-Eの並びとなる分子鎖が少なくなるため、赤外ピーク強度比が0.6以下に低下しやすくなるといえる。
ヒートシール層のエステル交換度が5%未満であると、エステル交換が進んでいないため、最終熱処理工程でヒートシール層が融解しにくくなるおそれがある。結果として、赤外ピーク強度比が0.6を超え、フィルム厚み10μmあたりの140℃ヒートシール強度が5.0N/15mm未満となってしまうため好ましくない。一方、エステル交換度が25%を超えると、赤外ピーク強度比を0.6以下、フィルム厚み10μmあたりの140℃ヒートシール強度を5.0N/15mm以上としやすくなるものの、上述のようにヒートシール層が融解しすぎることにより、表面の平均長さ(RSm:後述)が29μm以上、動摩擦係数が0.9を超えるおそれがある。または、ヒートシール層の融解を避けるために最終熱処理温度を融点-10℃よりも低くする(最終熱処理温度の好ましい範囲は後述)と、最大熱収縮率と最大熱収縮応力が所定の範囲を超えるおそれがある。エステル交換度は6%以上24%以下であるとより好ましく、7%以上23%以下であるとさらに好ましい。
1.7.引張破断強度
本発明のフィルムは、長手方向または幅方向いずれか一方の引張破断強度が80MPa以上200MPaであると好ましい。引張破断強度が80MPa未満であると、印刷や蒸着、ラミネートといった二次加工時に製造ラインで巻き出す際、パスラインから受ける張力によって容易に破断してしまうため好ましくない。一方、引張破断強度が高ければ高いほどフィルムの機械強度が向上するため好ましいが、本発明の技術水準では200MPaが上限である。実用上は上限が190MPaであっても十分である。
1.8.ヒートシール層の融点
本発明のフィルムは、ヒートシール層を温度変調示差走査熱量計(温度変調DSC)で測定したときのノンリバースヒートフローから得られる融点が195℃以上230℃以下であると好ましい。融点は、上述のエステル交換度だけでなく、原料組成にも影響を受ける。好ましい原料組成は後述する。なお、融点の詳細な測定方法は後述の実施例で記載するが、融解ピークが2つ以上観察される場合は、最も低温側にあらわれるピークを融点とする。
ヒートシール層の融点が195℃未満であると、最終熱処理工程でヒートシール層が容易に融解してしまうため、フィルムの熱収縮特性と滑り性を両立できなくなる。具体的には、最終熱処理によってヒートシール層の融解が進行しすぎると、上記「1.2.ヒートシール層のエステル交換度」で述べたメカニズムによってヒートシール層の動摩擦係数が0.9を超えるおそれがある。この不具合を避けるために最終熱処理温度を低く設定すると、延伸工程で生じたフィルムの熱収縮性を十分に抑制できなくなるため、最大熱収縮率を12%以下、最大熱収縮応力を3MPa以下にすることが困難となる。一方、ヒートシール層の融点が235℃を超える場合、最終熱処理工程でヒートシール層の融解が起きにくくなるため、赤外ピーク強度比を0.6以下、フィルム厚み10μmあたりの140℃ヒートシール強度を5N/15mm以上とすることが困難となる。ヒートシール層の融点は193℃以上228℃以下であるとより好ましく、191℃以上226℃以下であるとさらに好ましい。
1.9.ヒートシール層の表面粗さの要素の平均長さ(RSm)
本発明のヒートシール層は、カットオフ0.25mm、測定速度0.2mm/秒で測定したヒートシール層の表面粗さの要素の平均長さ(RSm)が18μm以上35μm以下であると好ましい。ヒートシール層のRSmが大きいほど凹凸が少なくなる(平滑化する)ため、ヒートシール層同士を接触させたときに互いの接触面積が大きくなる傾向にある。それゆえ、ヒートシール層のRSmが35μmを超えると、動摩擦係数が0.9を超えやすくなるため好ましくない。一方、RSmが18μm未満であると、ヒートシール面同士の接触面積が極端に小さくなるため、フィルム厚み10μmあたりの140℃ヒートシール強度を5N/15mmとすることが困難となる。ヒートシール層のRSmは19μm以上34μm以下であるとより好ましく、20μm以上33μm以下であるとさらに好ましい。
1.10.ヒートシール層の固有粘度(IV)
本発明のヒートシール層は、固有粘度(IV)が0.55dL/g以上0.9dL/gであると好ましい。ヒートシール層のIVが0.55dL/g未満であると、フィルムの引張破壊強度を80MPa以上とするのが困難となるだけでなく、製膜中の延伸工程で破断が起きる可能性が高くなるため好ましくない。一方、ヒートシール層のIVが0.9dL/gを超えると、原料となる樹脂を混合して溶融押し出しするときに、メルトライン中の樹脂圧力が高くなりすぎてしまい、溶融樹脂中の異物を取り除くフィルターの変形が起こりやすくなるため好ましくない。ヒートシール層のIVは0.57dL/g以上0.88dL/g以下であるとより好ましく、0.59dL/g以上0.86dL/g以下であるとさらに好ましい。
1.11.ヘイズ
本発明のフィルムは、ヘイズが1%以上15%以下であることが好ましい。ヘイズが15%を超えるとフィルムの透明性が悪くなるため、包装体とした場合に中身の視認性が劣ることになる。ヘイズの上限は13%以下であるとより好ましく、11%以下であるとさらに好ましい。ヘイズは低くければ低いほど透明性が高くなって好ましいが、現状の技術水準では1%が下限であり、2%以上であっても実用上十分といえる。
1.12.厚み
本発明のフィルムの厚みは特に限定されないが、3μm以上200μm以下が好ましい。フィルムの厚みが3μmより薄いとヒートシール強度の不足や印刷等の加工が困難になるおそれがあり好ましくない。また、フィルム厚みが200μmより厚くても構わないが、フィルムの使用重量が増えてケミカルコストが高くなるので好ましくない。フィルムの厚みは5μm以上160μm以下であるとより好ましく、7μm以上120μm以下であるとさらに好ましい。
1.13.包装体内容物の種類と吸着量
本発明のフィルムは、化成品、医薬品、食品等に含まれる有機化合物を吸着しにくい特徴がある。前記の有機化合物としては、例えばd-リモネン、シトラール、シトロネラール、p-メンタン、ピネン、テルピネン、ミルセン、カレン、ゲラニオール、ネロール、シトロネラール、テルピネオール、l-メントール、ネロリドール、ボルネオール、dl-カンファー、リコピン、カロテン、トランス-2-ヘキセナール、シス-3-ヘキセノール、β-イオノン、セリネン、1-オクテン-3-オール、ベンジルアルコール、オクタールツロブテロール塩酸塩、酢酸トコフェロールなどの香気成分や薬効成分が挙げられる。
シーラントへの吸着量は、吸着条件(吸着物質の濃度、保管期間、温度等)によって異なるが、後述の実施例に示す方法で1週間保管した場合の吸着量が0μg/cm以上2μg/cmであると好ましい。吸着量0μg/cmは、内容物がシーラントに全く吸着していないことを示す。吸着量は1.8μg/cm以下であるとより好ましく、1.6μg/cm以下であるとさらに好ましい。
本発明のフィルムは、ポリエステル系成分からなるヒートシール層を有しているため、類似した化学構造をもつ有機化合物に対しては吸着量が高くなる恐れがある。具体的には、ヒートシール層を構成するポリエステル系成分が酸素原子を4つ有するため、有機化合物の化学構造として、酸素原子数が多い(4つに近づく)ほど、ヒートシール層に対する有機化合物の溶解度が増加して吸着量が高くなる傾向にある。例えば、酸素原子が2つあるオイゲノールや酸素原子が3つあるサリチル酸メチルを含んだ内容物を包装すると、吸着量が2μg/cmを超えやすくなってしまうため好ましくない。
2.フィルムの層構成、層比率
本発明のフィルムは、エチレンテレフタレートを主たる構成成分とするポリエステルからなるヒートシール層を少なくとも1層有している必要がある。このヒートシール層とは別に、基材層を設けることによりフィルムの耐熱性や機械強度が向上するため好ましい。この場合、エチレンテレフタレート成分含有量が最も多い層が基材層となる。前記の2層に加えて、ガスバリア層を設けた3層構成であると、フィルムとしてのガスバリア性が向上し、包装体として用いたときに内容物のシェルフライフが向上するためより好ましい。ガスバリア層は金属または金属酸化物を主たる構成成分とする無機薄膜から構成されることが好ましく、最表層、中間層いずれに位置しても構わない。また、ガスバリア層は透明であると好ましい。さらに本発明は、前記の3層に加え、無機薄膜層の下に設けるアンカーコート層、無機薄膜層の上に設けるオーバーコート層を有していてもよい。これらの層を設けることにより、ガスバリア層とフィルム層との密着性の向上、ガスバリア性の向上等が期待できるため、さらに好ましい。各層に関する構成要件は後述する。
本発明のフィルムは上記の機能層とは別に、包装体としての意匠性を向上させるため、文字や図柄を記載した印刷層を設けてもよい。印刷層を構成する材料としては、グラビア印刷用のインキやフレキソ印刷用のインキ等、公知のものを用いることができる。印刷層数は1層であってもよく、複数層であってもよい。印刷を複数色にして意匠性を向上させるためには、複数層からなる印刷層があると好ましい。印刷層は、最表層、中間層いずれに位置しても構わない。ただし、ヒートシール層の上に印刷層を設けると、印刷層がヒートシールを阻害して140℃ヒートシール強度を15N/15mm以上とすることが困難となる可能性もあるため好ましくない。
フィルム全体の厚みに対するヒートシール層の比率は、20%以上80%以下であることが好ましい。ヒートシール層の層比率が20%より少ない場合、ヒートシール強度が低下してしまうため好ましくない。ヒートシール層の層比率が80%を超えると、ヒートシール強度は向上するが、耐熱性や機械強度が低下してしまうため好ましくない。ヒートシール層の層比率は、30%以上~70%以下がより好ましい。
また、本発明のフィルムの最表層(ヒートシール層を含む)には、フィルム表面の印刷性や滑り性を良好にするためにコロナ処理、コーティング処理や火炎処理などを施した層を設けることも可能であり、本発明の要件を逸しない範囲で任意に設けることができる。
3.フィルムを構成する原料
以下では、本発明の好ましい実施態様である、ヒートシール層と基材層からなる2種2層構成を想定して説明する。
3.1.ポリエステル原料の種類
本発明のフィルムを構成するポリエステル原料の種類は、エチレンテレフタレートユニットを主たる構成成分とするものである。ここで、「主たる構成成分とする」とは、全構成成分量を100モル%としたとき、50モル%以上含有することを指す。エチレンテレフタレートユニットにはカルボン酸由来のベンゼン環を含むため、分子の剛直性が向上し、結果として引張破断強度を80MPa以上、最大熱収縮率を12%以下としやすくなる。
本発明のポリエステル系樹脂層に使用するポリエステルには、エチレンテレフタレート以外の成分を1種以上含むことが好ましい。エチレンテレフタレート以外の成分が存在することによって、ヒートシール強度が向上する(ヒートシールの破壊モードをエッジ切れとしやすくなる)ためである。基材層においては、エチレンテレフタレート以外の成分は少ない方が好ましいが、エチレンテレフタレート以外の成分を含むことによって、ヒートシール層との収縮率差を少なくすることができ、積層体のカールを小さくする効果がある。各成分の含有量はヒートシール層と基材層で異なるため後述する。
エチレンテレフタレートを構成するテレフタル酸以外の成分となりうるジカルボン酸モノマーとしては、例えばイソフタル酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、オルトフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、および脂環式ジカルボン酸が挙げられる。ただし、3価以上の多価カルボン酸(例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸およびこれらの無水物等)はポリエステル中に含有させないことが好ましい。上記のカルボン酸成分の中でも、イソフタル酸を用いることでフィルム厚み10μmあたりの140℃ヒートシール強度を5.0N/15mm以上としやすくなるので好ましい。
エチレンテレフタレートを構成するエチレングリコール以外の成分となりうるジオールモノマーとしては、例えばネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、2,2-ジエチル1,3-プロパンジオール、2-n-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,2-イソプロピル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジ-n-ブチル-1,3-プロパンジオール、ヘキサンジオール、1,4-ブタンジオール等の長鎖ジオール、ヘキサンジオール等の脂肪族ジオール、ビスフェノールA等の芳香族系ジオール等を挙げることができる。これらの中でも、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオールのいずれか1種以上を用いることでフィルム厚み10μmあたりの140℃ヒートシール強度を5.0N/15mm以上としやすくなるので好ましく、特にネオペンチルグリコール、1,4-ブタンジールの使用が好ましい。ただし、ポリエステルには炭素数8個以上のジオール(例えば、オクタンジオール等)、または3価以上の多価アルコール(例えば、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリン、ジグリセリンなど)を含有させないことが好ましい。
さらに、ポリエステルを構成する成分として、ε-カプロラクトンやテトラメチレングリコールなどを含むポリエステルエラストマーを含んでいてもよい。ポリエステルエラストマーは、ポリエステル系樹脂層の融点を下げる効果があるため、特にヒートシール層に好適に使用することができる。
上記に挙げたポリエステル原料は、カルボン酸モノマーとジオールモノマーが1種対1種で重合されているホモポリエステルを、複数種混合(ドライブレンド)して使用してもよいし、2種以上のカルボン酸モノマーまたは2種以上のジオールモノマーを共重合して使用してもよい。また、ホモポリエステルと共重合ポリエステルを混合して使用してもよい。さらに、ホモポリエステルまたは/および共重合ポリエステルをドライブレンドし、加熱溶融させて混合(メルトブレンド)したポリエステルを冷却固化させ、これを原料として用いてもよい。2つ以上の異なるポリエステルをメルトブレンドした原料は、各モノマーのエステル交換が促進されてエステル交換度を5%以上としやすくなるため、好ましい態様の1つである。
2つ以上の異なるポリエステルをメルトブレンドする方法としては特に限定されず、押出機や加熱式の攪拌機等、公知の方法を用いることができる。これらの中でも、バレルとスクリューが具備された押出機を用いる方法が好ましい。押出機を用いる場合、2種以上のポリエステルを投入し、バレル内部からの加熱と、バレル壁とスクリュー壁との摩擦による加熱によってメルトブレンドし、さらにメルトラインとストランドダイ等の吐出装置を経て、1つとなったポリエステル原料を得ることができる。ポリエステルを加熱溶融させる前には、ホッパードライヤー、パドルドライヤー等の乾燥機、または真空乾燥機を用いて水分率を100ppm以下に乾燥するのが好ましい。ポリエステルの水分率が100ppmを超えると、ポリエステルの溶融中に加水分解が進行してIVを0.55dL/g以上に保持するのが困難となるため好ましくない。水分率は90ppm以下であるとより好ましく、80ppm以下であるとさらに好ましい。なお、水分率の下限は0ppmであり、低ければ低いほど好ましいが、実用上の下限は30ppm程度で十分である。メルトブレンド時の加熱温度は200℃以上300℃以下であると好ましい。加熱温度が200℃未満だとエステル交換が十分に進行しないだけでなく、ポリエステルの溶融粘度が高くなりすぎて樹脂圧力が増加し、メルトライン中のフィルターが変形してしまうため好ましくない。加熱温度が300℃を超えるとエステル交換は促進されて好ましいが、ポリエステルの熱分解が進行してIVを0.55dL/g以上とすることが困難となる。加熱温度は210℃以上290℃以下であるとより好ましく、220℃以上280℃以下であるとさらに好ましい。メルトラインにおける滞留時間は、1分以上15分以下であると好ましい。滞留時間が1分未満であると、エステル交換が十分に進行しにくくなるため好ましくない。滞留時間が15分を超えると、ポリエステルの熱分解が進行してIVが0.55dL/g未満となりやすくなるため好ましくない。上記にように2種以上のポリエステルを溶融させてエステル交換を進行させる操作は1回だけでなく2回以上実施してもよく、エステル交換度が25%以下、IVが0.55dL/g以上となる範囲を目安として自由に設けることができる。
本発明のフィルムを構成するポリエステル樹脂の中には、必要に応じて各種の添加剤、例えば、ワックス類、酸化防止剤、帯電防止剤、結晶核剤、減粘剤、熱安定剤、着色用顔料、着色防止剤、紫外線吸収剤などを添加することができる。また、フィルムの滑り性を良好にする滑剤としての微粒子を、少なくともフィルムの最表層に添加することが好ましい。微粒子としては、任意のものを選択することができる。例えば、無機系微粒子としては、シリカ、アルミナ、二酸化チタン、炭酸カルシウム、カオリン、硫酸バリウムなどをあげることができ、有機系微粒子としては、アクリル系樹脂粒子、メラミン樹脂粒子、シリコーン樹脂粒子、架橋ポリスチレン粒子などを挙げることができる。微粒子の平均粒径は、コールターカウンタにて測定したときに0.05~3.0μmの範囲内で必要に応じて適宜選択することができる。フィルム中の微粒子含有率の下限は好ましくは0.01重量%であり、より好ましくは0.015重量%であり、さらに好ましくは0.02重量%である。0.01重量%未満であると滑り性が低下することがある。上限は好ましくは1重量%であり、より好ましくは0.2重量%であり、さらに好ましくは0.1重量%である。1重量%を超えると透明性が低下することがあり、あまり好ましくない。
本発明のフィルムを構成するポリエステル樹脂の中に粒子を配合する方法として、例えば、ポリエステルレジンを製造する任意の段階において添加することができるが、エステル化の段階、もしくはエステル交換反応終了後、重縮合反応開始前の段階でエチレングリコールなどに分散させたスラリーとして添加し、重縮合反応を進めるのが好ましい。また、ベント付き混練押出し機を用いてエチレングリコールや水、そのほかの溶媒に分散させた粒子のスラリーとポリエステル系樹脂原料とをブレンドする方法や、乾燥させた粒子とポリエステルとを混練押出機を用いてブレンドする方法なども挙げられる。
3.2.ヒートシール層に含まれるポリエステル原料の成分量
ヒートシール層に用いるポリエステルは、エチレンテレフタレートを構成するテレフタル酸およびエチレングリコール以外の成分となるジカルボン酸モノマーおよび/又はジオールモノマーの含有量が30モル%以上であることが好ましく、32モル%以上がより好ましく、34モル%以上が特に好ましい。また、前記エチレンテレフタレート以外の成分となるモノマー含有量の上限は50モル%である。
ヒートシール層に含まれる前記エチレンテレフタレート以外の成分となるモノマーが30モル%より低い場合、溶融樹脂をダイから押し出した後に例え急冷固化したとしても、後の延伸および熱固定工程で結晶化してしまうため、フィルム厚み10μmあたりの140℃ヒートシール強度を5.0N/15mm以上とすることが困難となってしまうため好ましくない。
一方、ヒートシール層に含まれる前記エチレンテレフタレート以外の成分となるモノマーが50モル%以上である場合、フィルムのヒートシール強度を高くすることができるものの、ヒートシール層の耐熱性が極端に低くなり、ヒートシールするときにシール部の周囲がブロッキング(加熱用部材からの熱伝導によって、意図した範囲よりも広い範囲でシールされてしまう現象)してしまうため、適切なヒートシールが困難となる。エチレンテレフタレート以外の成分となるモノマーの含有量は48モル%以下であるとより好ましく、46モル%以下であると特に好ましい。
3.3.基材層に含まれるポリエステル原料の成分量
基材層に用いるポリエステルは、エチレンテレフタレートを構成するテレフタル酸およびエチレングリコール以外の成分となるジカルボン酸モノマーおよび/又はジオールモノマーの含有量が9モル%以上であることが好ましく、10モル%以上がより好ましく、11モル%以上が特に好ましい。また、前記エチレンテレフタレート以外の成分となるモノマー含有量の上限は20モル%である。
基材層に含まれる前記エチレンテレフタレート以外の成分となるモノマーが9モル%より低い場合、ヒートシール層との熱収縮率差が大きくなり、フィルムのカールが大きくなってしまうため好ましくない。基材層とヒートシール層に含まれる前記エチレンテレフタレート以外の成分となるモノマー含有量の差が大きくなると、熱処理熱中の各層における熱収縮率差が大きくなってしまい、たとえ熱処理後の冷却を強化してもヒートシール層側への収縮が大きくなり、カールが大きくなってしまう。
一方、基材層に含まれる前記エチレンテレフタレート以外の成分となるモノマーが20モル%以上である場合、最大熱収縮率を12%以下とすることが困難となるため好ましくない。前記エチレンテレフタレート以外の成分となるモノマーの含有量は19モル%以下であるとより好ましく、18%以下であると特に好ましい。
また、カールを制御するための前記エチレンテレフタレート以外の成分となるモノマー含有量は、上記の各層単体での量に加えて、ヒートシール層と基材層との差が10モル%以上45モル%以下であるとより好ましく、11モル%以上44モル%以下であるとさらに好ましい。
4.フィルムの製造条件
4.1.溶融押し出し
本発明のフィルムは、上記3.1.「ポリエステル原料の種類」で記載したポリエステル原料を、押出機により溶融押し出しして未延伸のフィルムを形成し、それを以下に示す所定の方法により延伸することによって得ることができる。なお、フィルムがヒートシール層と基材層、またはそれ以外の層を含む場合、各層を積層させるタイミングは延伸の前後いずれであっても構わない。延伸前に積層させる場合、各層の原料となる樹脂をそれぞれ別々の押し出し機によって溶融押し出しし、樹脂流路の途中でフィードブロック等を用いて接合させる方法を採用するのが好ましい。延伸後に積層させる場合、それぞれ別々に製膜したフィルムを接着剤によって貼りあわせるラミネート、単独または積層させたフィルムの表層に溶融させたポリエステル樹脂を流して積層させる押出ラミネートを採用するのが好ましい。生産性の観点からは、延伸前に各層を積層させる方法が好ましい。
ポリエステル樹脂は、前記のように、エチレンテレフタレート以外の成分となり得るモノマーを適量含有するように、ジカルボン酸成分とジオール成分の種類と量を選定して重縮合させることで得ることができる。また、チップ状のポリエステルを2種以上混合してポリエステル系樹脂層の原料として使用することもできる。
原料樹脂の溶融押出の方法としては、上記3.1.「ポリエステル原料の種類」で記載した内容と同じく公知の方法を用いることができ、バレルとスクリューが具備された押出機を用いる方法が好ましい。各層のポリエステル原料はあらかじめ、ホッパードライヤー、パドルドライヤー等の乾燥機、または真空乾燥機を用いて水分率が100ppm以下、より好ましくは90ppm以下、さらに好ましくは80ppm以下となるまで乾燥するのが好ましい。そのように各層のポリエステル原料を乾燥させた後、押出機によって200~300℃の温度で溶融して積層したフィルムとして押し出す。押し出しはTダイ法、チューブラー法等、既存の任意の方法を採用することができる。押出温度は200℃以上300℃以下であると好ましい。押出温度が200℃未満だとエステル交換が十分に進行しないだけでなく、ポリエステル樹脂の溶融粘度が高くなりすぎて押出圧力が増加し、メルトライン中のフィルターが変形してしまうため好ましくない。加熱温度が300℃を超えるとエステル交換は促進されて好ましいが、樹脂の熱分解が進行してしまいIVを0.55dL/g以上とすることが困難となる。押出温度は210℃以上290℃以下であるとより好ましく、220℃以上280℃以下であるとさらに好ましい。メルトラインにおける滞留時間は、1分以上15分以下であると好ましい。滞留時間が1分未満であると、エステル交換が十分に進行しにくくなるため好ましくない。滞留時間が15分を超えると、ポリエステル樹脂の熱分解が進行してIVが0.55dL/g未満となりやすくなるため好ましくない。
その後、押し出しで溶融されたフィルムを急冷することにより、未延伸のフィルムを得ることができる。なお、溶融樹脂を急冷する方法としては、溶融樹脂を口金から回転ドラム上にキャストして急冷固化することにより実質的に未配向の樹脂シートを得る方法を好適に採用することができる。
フィルムは、無延伸、一軸延伸(縦(長手)方向、横(幅)方向のいずれか少なくとも一方向への延伸)、二軸延伸いずれの方式で製膜されてもよい。機械強度や生産性の観点からは、一軸延伸であることが好ましく、二軸延伸であるとより好ましい。以下では、最初に縦延伸、次に横延伸を実施する縦延伸-横延伸による逐次二軸延伸法に主眼を置いて説明するが、順番を逆にする横延伸-縦延伸であっても、主配向方向が変わるだけなので構わない。また、縦方向と横方向を同時に延伸する、同時二軸延伸法でも構わない。
4.2.第一(縦)延伸
第一方向(縦または長手方向)の延伸は、未延伸フィルムを複数のロール群を連続的に配置した縦延伸機へと導入するとよい。縦延伸にあたっては、予熱ロールでフィルム温度が65℃~90℃になるまで予備加熱することが好ましい。フィルム温度が65℃より低いと、縦方向に延伸する際に延伸しにくくなり、破断が生じやすくなるため好ましくない。また90℃より高いとロールにフィルムが粘着しやすくなり、ロールへのフィルムの巻き付きや連続生産によるロールの汚れやすくなるため好ましくない。
フィルム温度が65℃~90℃になったら縦延伸を行う。縦延伸倍率は、1倍以上5倍以下とすると良い。1倍は縦延伸をしていないということなので、横一軸延伸フィルムを得るには縦の延伸倍率を1倍に、二軸延伸フィルムを得るには1.1倍以上の縦延伸となる。縦延伸倍率を1.1倍以上とすることにより、フィルムの長手方向に分子配向を与えて機械強度を増すことができるため、引張破断強度が80MPa以上としやすくなる。また、縦延伸倍率の上限は何倍でも構わないが、あまりに高い縦延伸倍率だと横延伸しにくくなって破断が生じやすくなるので5倍以下であることが好ましい。
4.3.中間熱処理
第一(縦)延伸の後は、延伸によって生じたフィルムの収縮率を低減させるため、フィルムを加熱する工程(中間熱処理)があると好ましい。この中間熱処理の際には、フィルムの長さを一定に保ったまま加熱する定長加熱、またはフィルムを長手方向へ弛緩しながら加熱するリラックス処理等を採用することができる。これらの中でも、縦延伸で生じたフィルム長手方向の収縮率を低減するためには、リラックス処理を採用することが好ましい実施態様である。
長手方向へのリラックスにより、フィルム長手方向の収縮率を低減できるだけなく、テンター内で起こるボーイング現象(歪み)を低減することもできる。後工程の第二(横)延伸や最終熱処理ではフィルム幅方向の両端が把持された状態で加熱されるため、フィルムの中央部だけが長手方向へ収縮するためである。長手方向へのリラックス率は0%以上70%以下(リラックス率0%はリラックスを行わないことを指す)であることが好ましい。長手方向へのリラックス率の上限は、使用する原料や縦延伸条件よって決まるため、これを超えてリラックスを実施することはできない。本発明においては、長手方向へのリラックス率は70%が上限である。長手方向へのリラックスは、縦延伸後のフィルムを65℃~100℃以下の温度で加熱し、ロールの速度差を調整する(下流側のロール速度を遅くする)、またはクリップ間距離を縮める(下流側の移動速度を遅くする)ことで実施できる。加熱手段はロール、近赤外線、遠赤外線、熱風ヒータ等のいずれも用いる事ができる。また、長手方向へのリラックスは縦延伸直後でなくとも、例えば横延伸(予熱ゾーン含む)や最終熱処理でも長手方向のクリップ間隔を狭めることで実施することができ(この場合はフィルム幅方向の両端も長手方向へリラックスされるため、ボーイング歪みは減少する)、任意のタイミングで実施できる。
長手方向へのリラックス(リラックスを行わない場合は縦延伸)の後は、一旦フィルムを冷却することが好ましく、表面温度が20~40℃の冷却ロールで冷却することが好ましい。
4.4.第二(横)延伸
第一(縦)延伸の後、テンター内でフィルムの幅方向(長手方向と直交する方向)の両端際をクリップによって把持した状態で、65℃~110℃で3~5倍程度の延伸倍率で横延伸を行うことが好ましい。横方向の延伸を行う前には、予備加熱を行っておくことが好ましく、予備加熱はフィルム表面温度が75℃~120℃になるまで行うとよい。
横延伸の後は、フィルムを積極的な加熱操作を実行しない中間ゾーンを通過させることが好ましい。テンターの横延伸ゾーンに対し、その次の最終熱処理ゾーンでは温度が高いため、中間ゾーンを設けないと最終熱処理ゾーンの熱(熱風そのものや輻射熱)が横延伸工程に流れ込んでしまう。この場合、横延伸ゾーンの温度が安定しないため、フィルムの厚み精度が悪化するだけでなく、ヒートシール強度や熱収縮率などの物性にもバラツキが生じてしまう。そこで、横延伸後のフィルムは中間ゾーンを通過させて所定の時間を経過させた後、最終熱処理を実施するのが好ましい。この中間ゾーンにおいては、フィルムを通過させていない状態で短冊状の紙片を垂らしたときに、その紙片がほぼ完全に鉛直方向に垂れ下がるように、フィルムの走行に伴う随伴流、横延伸ゾーンや最終熱処理ゾーンからの熱風を遮断することが重要である。中間ゾーンの通過時間は、1秒~5秒程度で充分である。1秒より短いと、中間ゾーンの長さが不充分となって、熱の遮断効果が不足する。一方、中間ゾーンは長い方が好ましいが、あまりに長いと設備が大きくなってしまうので、5秒程度で充分である。
4.5.最終熱処理
中間ゾーンの通過後は最終熱処理ゾーンにて、融点-30℃以上融点-10℃以下で熱処理を行うことが好ましい。最終熱処理工程には主に2つの役割がある。すなわち、(1)延伸で生じた最大熱収縮率と最大熱収縮応力の低減、(2)ヒートシール層の融解である。前者に関して、最終熱処理工程でフィルムが受ける熱量(温度と滞留時間の積の総和)が増加するほど最大熱収縮率と最大熱収縮応力は低下する。最大熱収縮率を1%以上12%以下、最大熱収縮応力を0.2MPa以上3MPa以下とするためには、最終熱処理工程における熱量を調整する必要がある。後者に関しては、ヒートシール層の融点-30℃を目安として、ヒートシール層の融解がはじまる。本発明においてヒートシール強度を発現させるためには、上記「1.シーラントフィルムの特性」の一連で説明したように、延伸によって生じたヒートシール層の分子配向を適切に崩壊させる必要がある。最終熱処理温度がヒートシールの融点-30℃未満であると、ヒートシール層の融解が起こらないので、赤外ピーク強度比を0.6以下、フィルム厚み10μmあたりの140℃ヒートシール強度を5.0N/15mm以上とすることが困難となる。一方、最終熱処理温度がヒートシール層の融点-10℃を超えると融解が促進されすぎてしまい、赤外ピーク強度比を0.05以上、ヒートシール層のRSmを29μm以上、動摩擦係数を0.9以下とすることが困難となる。最終熱処理温度は融点-29℃以上融点-11℃以下がより好ましく、融点-28℃以上融点-12℃以下がさらに好ましい。
最終熱処理の際、テンターのクリップ間距離を任意の倍率で縮めること(幅方向へのリラックス)によって幅方向の熱収縮率を低減させることができる。そのため、最終熱処理では、0%以上10%以下の範囲で幅方向へのリラックスを行うことが好ましい(リラックス率0%はリラックスを行わないことを指す)。幅方向へのリラックス率が高いほど幅方向の収縮率は下がるものの、リラックス率(横延伸直後のフィルムの幅方向への収縮率)の上限は使用する原料や幅方向への延伸条件、熱処理温度によって決まるため、これを超えてリラックスを実施することはできない。本発明のフィルムにおいては、幅方向へのリラックス率は10%が上限である。また、最終熱処理の際に、前述のとおり、長手方向において、テンターのクリップ間距離を任意の倍率で縮めること(長手方向へのリラックス)もできる。
最終熱処理ゾーンの通過時間は2秒以上20秒以下が好ましい。通過時間が2秒以下であると、フィルムの表面温度が設定温度に到達しないまま熱処理ゾーンを通過してしまうため、熱処理の意味をなさなくなる。通過時間は長ければ長いほど熱処理の効果が上がるため、2秒以上であることが好ましく、5秒以上であることがさらに好ましい。ただし、通過時間を長くしようとすると、設備が巨大化してしまうため、実用上は20秒以下であれば充分である。
4.6.冷却
最終熱処理ゾーン通過後は、冷却ゾーンにて10℃以上30℃以下の冷却風でフィルムを冷却することが好ましい。このとき、テンター出口のフィルムの実温度が、ヒートシール層もしくは基材層いずれか低い方のガラス転移温度より低い温度になるよう、冷却風の温度を下げたり風速を上げたりして冷却効率を向上させることが好ましい。なお実温度とは、非接触の放射温度計で測定したフィルム表面温度のことである。テンター出口のフィルムの実温度がガラス転移温度を上回ると、クリップで把持していたフィルム両端部が解放されたときにフィルムが熱収縮してしまう。このとき、フィルムは熱収縮率の大きいヒートシール層へカールしてしまうため好ましくない。
冷却ゾーンの通過時間は2秒以上20秒以下が好ましい。通過時間が2秒以下であると、フィルムの表面温度がガラス転移温度に到達しないまま冷却ゾーンを通過してしまうため、カールが大きくなってしまう。通過時間は長ければ長いほど冷却効果が上がるため、2秒以上であることが好ましく、5秒以上であることがさらに好ましい。ただし、通過時間を長くしようとすると、設備が巨大化してしまうため、実用上は20秒以下であれば充分である。
後は、フィルム両端部を裁断除去しながら巻き取れば、フィルムロールが得られる。
5.ガスバリア層
本発明のフィルムは、主に無機薄膜からなるガスバリア層を設けてもよい。以下の説明では、本発明のシーラントにガスバリア層を設けたものを単に「積層体」あるいは「ガスバリア層積層体」と称する。
5.1.ガスバリア層積層体の特性
5.1.1.水蒸気透過度
本発明のフィルムを用いた積層体は、温度40℃、相対湿度90%RH環境下での水蒸気透過度が0.05[g/(m・d)]以上4[g/(m・d)]以下であると好ましい。水蒸気透過度が4[g/(m・d)]を超えると、内容物を含む包装体として使用した場合に、内容物のシェルフライフが短くなってしまうため好ましくない。一方、水蒸気透過度が0.05[g/(m・d)]より小さい場合はガスバリア性が高まり、内容物のシェルフライフは長くなるため好ましいが、現状の技術水準では0.05[g/(m・d)]が下限である。水蒸気透過度の下限が0.05[g/(m・d)]であっても実用上は十分といえる。水蒸気透過度の上限は3.8[g/(m・d)]であると好ましく、3.6[g/(m・d)]であるとより好ましい。
5.1.2.酸素透過度
本発明のフィルムを用いた積層体は、温度23℃、相対湿度65%RH環境下での酸素透過度が0.05[cc/(m・d・atm)]以上4[cc/(m・d・atm)]以下であると好ましい。酸素透過度が4[cc/(m・d・atm)]を超えると、内容物のシェルフライフが短くなってしまうため好ましくない。一方、酸素透過度が0.05[cc/(m・d・atm)]より小さい場合はガスバリア性が高まり、内容物のシェルフライフは長くなるため好ましいが、現状の技術水準では酸素透過度が0.05[cc/(m・d・atm)]が下限である。酸素透過度の下限が0.05[cc/(m・d・atm)]であっても実用上は十分といえる。酸素透過度の上限は3.8[cc/(m・d・atm)]であると好ましく、3.6[cc/(m・d・atm)]であるとより好ましい。
5.2.ガスバリア層の原料種、組成
ガスバリア層の原料種は特に限定されず、従来から公知の材料を使用することができ、所望のガスバリア性等を満たすために目的に合わせて適宜選択することができる。ガスバリア層の原料種としては、例えば、ケイ素、アルミニウム、スズ、亜鉛、鉄、マンガン等の金属、これら金属の1種以上を含む無機化合物があり、該当する無機化合物としては、酸化物、窒化物、炭化物、フッ化物等が挙げられる。これらの無機物または無機化合物は単体で用いてもよいし、複数で用いてもよい。特に、酸化ケイ素(SiOx)、酸化アルミニウム(AlOx)を単体(一元体)または併用(二元体)で使用することにより、ガスバリア層を設けたフィルムの透明性を向上させることができるため好ましい。無機化合物の成分が酸化ケイ素と酸化アルミニウムの二元体からなる場合、酸化アルミニウムの含有量は20質量%以上80質量%以下であると好ましく、25質量%以上70質量%以下であるとより好ましい。酸化アルミニウムの含有量が20質量%以下の場合、ガスバリア層の密度が下がり、ガスバリア性が低下する恐れがあるため好ましくない。また、酸化アルミニウムの含有量が80質量%以上であると、ガスバリア層の柔軟性が低下してクラックが発生しやすくなり、結果としてガスバリア性が低下する恐れが生じるため好ましくない。
ガスバリア層に使用する金属酸化物の酸素/金属の元素比は、1.3以上1.8未満であればガスバリア性のバラツキが少なく、常に優れたガスバリア性が得られるため好ましい。酸素/金属の元素比は、酸素および金属の各元素の量をX線光電子分光分析法(XPS)で測定し、酸素/金属の元素比を算出することで求めることができる。
5.3.ガスバリア層の成膜方法
ガスバリア層の成膜方法は特に限定されず、本発明の目的を損なわない限り公知の製造方法を採用することができる。公知の製造方法の中でも、蒸着法を採用することが好ましい。蒸着法としての例は、真空蒸着法、スパッター法、イオンブレーティングなどのPVD法(物理蒸着法)、あるいは、CVD法(化学蒸着法)などが挙げられる。これらの中でも、真空蒸着法と物理蒸着法が好ましく、生産の速度や安定性の観点からは特に真空蒸着法が好ましい。真空蒸着法における加熱方式としては、抵抗加熱、高周波誘導加熱、電子ビーム加熱等を用いることができる。また、反応性ガスとして、酸素、窒素、水蒸気等を導入したり、オゾン添加、イオンアシスト等の手段を用いた反応性蒸着を用いたりしてもよい。また、基板にバイアス等を加える、基板温度を上昇あるいは冷却する等、本発明の目的を損なわない限りは成膜条件を変更してもよい。
以下では、真空蒸着法によるガスバリア層の成膜方法を説明する。ガスバリア層を成膜する際、本発明のフィルムをガスバリア層の製造装置へ金属ロールを介して搬送する。ガスバリア層の製造装置の構成例としては、巻き出しロール、コーティングドラム、巻き取りロール、電子ビーム銃、坩堝、真空ポンプからなる。フィルムは巻き出しロールにセットされ、コーティングドラムを経て巻き取りロールで巻き取られる。フィルムのパスライン(ガスバリア層の製造装置内)は真空ポンプによって減圧されており、坩堝にセットされた無機材料が電子銃から発射されたビームによって蒸発し、コーティングドラムを通るフィルムへと蒸着される。無機材料の蒸着の際、フィルムには熱がかかり、さらに巻き出しロールと巻き取りロールの間で張力も加えられる。フィルムにかかる温度が高すぎると、フィルムの熱収縮が大きくなるだけでなく、軟化が進むため、張力による伸長変形も起こりやすくなる。さらに、蒸着工程を出た後にフィルムの温度降下(冷却)が大きくなり、膨張後の収縮量(熱収縮とは異なる)が大きくなり、ガスバリア層にクラックが生じて所望のガスバリア性を発現しにくくなるため好ましくない。一方、フィルムにかかる温度は低いほど、フィルムの変形は抑制されるため好ましいものの、無機材料の蒸発量が少なくなることでガスバリア層の厚みが低下するため、所望のガスバリア性を満たせなくなる懸念が生じる。フィルムにかかる温度は100℃以上180℃以下であると好ましく、110℃以上170℃以下であるとより好ましく、120℃以上160℃以下であるとさらに好ましい。また、フィルムにかかる張力が高すぎると、フィルムが伸長変形しやすくなるため好ましくない。一方、フィルムにかかる張力が低すぎると、フィルムが加熱されたことで生じる熱収縮を抑制できなくなり、やはり変形が大きくなるため好ましくない。フィルムにかかる単位断面積(幅×厚み)あたりの張力は、0.2N/mm以上3N/mm以下であると好ましく、0.6N/mm以上2.6N/mm以下であるとより好ましく、1N/mm以上2.2N/mm以下であるとさらに好ましい。
6.オーバーコート層
6.1.オーバーコート層の種類
本発明のフィルム、または本発明のフィルムを用いたガスバリア性積層体(この項6.では、これらをまとめて基材フィルムと呼ぶ)は、上記の「5.ガスバリア層」で挙げたガスバリア層を成膜した上に、耐擦過性やさらなるガスバリア性の向上等を目的としてオーバーコート層を設けることもできる。オーバーコート層の種類は特に限定されないが、ウレタン系樹脂とシランカップリング剤からなる組成物、有機ケイ素およびその加水分解物からなる化合物、ヒドロキシル基またはカルボキシル基を有する水溶性高分子等、従来から公知の材料を使用することができ、所望のガスバリア性等を満たすために目的に合わせて適宜選択することができる。
また、オーバーコート層は、本発明の目的を損なわない範囲で、帯電防止性、紫外線吸収性、着色、熱安定性、滑り性等を付与する目的で、各種添加剤が1種類以上添加されていてもよく、各種添加剤の種類や添加量は、所望の目的に応じて適宜選択することができる。
6.2.オーバーコート層の成膜方法
オーバーコート層を成膜する際、基材フィルムをコーティング設備へ金属ロールを介して搬送する。設備の構成例としては、巻き出しロール、コーティング工程、乾燥工程、巻き取り工程が挙げられる。オーバーコートの際、巻き出しロールにセットされた積層体が金属ロールを介してコーティング工程と乾燥工程を経て、最終的に巻き取りロールまで導かれる。コーティング方法は特に限定されず、グラビアコート法、リバースコート法、ディッピング法、ローコート法、エアナイフコート法、コンマコート法、スクリーン印刷法、スプレーコート法、グラビアオフセット法、ダイコート法、バーコート法等、従来公知の方法を採用でき、所望の目的に応じて適宜選択することができる。これらの中でも、グラビアコート法、リバースコート法、バーコート法が生産性の観点で好ましい。乾燥方法は、熱風乾燥、熱ロール乾燥、高周波照射、赤外線照射、UV照射など、加熱する方法を1種類あるいは2種類以上組み合わせて用いることができる。
乾燥工程では基材フィルムが加熱され、さらに金属ロール間で張力も加えられる。乾燥工程で基材フィルムが加熱される温度が高すぎると、基材フィルムの熱収縮が大きくなるだけでなく、軟化が進むため、張力による伸長変形も起こりやすくなり、基材フィルムのガスバリア層にクラックが生じやすくなる。さらに、乾燥工程を出た後に積層体の温度降下(冷却)が大きくなり、その分だけ膨張後の収縮量(熱収縮とは異なる)が大きくなり、ガスバリア層やオーバーコート層にクラックが生じて所望のガスバリア性を満たしにくくなるため好ましくない。一方、基材フィルムが加熱される温度は低いほど、基材フィルムの変形は抑制されるため好ましいものの、コーティング液の溶媒が乾燥されにくくなるため、所望のガスバリア性を満たせなくなる懸念が生じる。基材フィルムが加熱される温度は60℃以上200℃以下であると好ましく、80℃以上180℃以下であるとより好ましく、100℃以上160℃以下であるとさらに好ましい。また、基材フィルムにかかる張力が高すぎると、基材フィルムが伸長変形しやすくなるため好ましくない。一方、基材フィルムにかかる張力が低すぎると、基材フィルムが加熱されたことで生じる熱収縮を抑制できなくなり、やはり変形が大きくなるため好ましくない。基材フィルムにかかる単位断面積(幅×厚み)あたりの張力は、0.2N/mm以上3N/mm以下であると好ましく、0.6N/mm以上2.6N/mm以下であるとより好ましく、1N/mm以上2.2N/mm以下であるとさらに好ましい。
7.包装体の構成、製造方法
上記特性を有するフィルム、または「5.ガスバリア層」で挙げたガスバリア層を設けた積層体、「6.オーバーコート層」で挙げたオーバーコート層を設けた積層体(この項7.では、これらをまとめて「本発明のフィルム」と記載する)は、包装体として好適に使用することができる。本発明のフィルムは単独で袋にすることもできるが、他の材料を積層してもよい。他の層としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートを構成成分に含む無延伸フィルム、他の非晶性ポリエステルを構成成分に含む無延伸、一軸延伸または二軸延伸フィルム、ナイロンを構成成分に含む無延伸、一軸延伸または二軸延伸フィルム、ポリプロピレンを構成成分に含む無延伸、一軸延伸または二軸延伸フィルム等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。包装体にシーラントを用いる方法は特に限定されず、塗布形成法、ラミネート法、ヒートシール法といった従来公知の製造方法を採用することができる。
包装体は、少なくとも一部が本発明のフィルムで構成されていればよい。また、包装体は、本発明のフィルムがどの層にきてもよいが、内容物に対する非吸着性、袋を製袋するときのシール強度を考慮すると、本発明のヒートシール層が袋の最内層となる構成が好ましい。
本発明のフィルムを有する包装体を製造する方法は特に限定されず、ヒートバー(ヒートジョー)を用いたヒートシール、ホットメルトを用いた接着、溶剤によるセンターシール等の従来公知の製造方法を採用することができる。
本発明のフィルムを蓋材として使用する場合、上記に挙げた製造方法によって容器へ接着させた後、蓋材を熱収縮させることで、張り感が生まれて外観が美麗となるため好ましい。蓋材を熱収縮させる方法としては特に限定されず、加熱トンネルを用いた熱風または/および蒸気の吹き付け、温水への浸漬、熱板との接触、雰囲気加熱、マイクロ波等、公知の方法を採用することができる。これらの方法の中でも、内容物に対する影響を考慮すると、熱風の吹き付け、熱板との接触、雰囲気加熱が好ましい。また、蓋材を熱収縮させる際、ベルトコンベアー等の搬送装置を併用すると生産性が向上するため好ましい。これらの因子を考慮すると、ベルトコンベアーに熱風の吹き付け機構を有した熱風トンネルを使用することが最も好ましい。熱風の吹き付け条件としては特に限定されず、容器の変形が起こらない限りは自由に変更することができる。熱風の温度は、フィルムの熱収縮特性を勘案して設定する必要がある。本発明における一例として、熱風の温度は100℃以上220℃以下であると好ましい。熱風の温度が100℃未満であると、蓋材が収縮するのに十分な温度に達しない可能性がある。熱風の温度が220℃を超えると蓋材の熱収縮が過剰となって容器が変形しやすくなるだけでなく、容器自身の熱変形も起こりやすくなってしまうため好ましくない。熱風の温度は110℃以上210℃以下であるとより好ましく、120℃以上200℃以下であるとさらに好ましい。また、熱風の風速は1m/秒以上20m/秒以下であると好ましい。熱風の風速が1m/秒未満であると、蓋材が収縮するのに十分な温度に達しない可能性がある。熱風の風速が20m/秒を超えると、蓋材の過剰な熱収縮による容器の変形が起こりやすくなってしまうだけでなく、容器が熱風によって吹き飛びやすくなるため生産性が低下してしまう懸念がある。熱風の風速は2m/秒以上19m/秒以下であるとより好ましく、3m/秒以上18m/秒以下であるとさらに好ましい。加熱トンネル内での滞留時間は2秒以上50秒以下であると好ましい。滞留時間が2秒未満であると、蓋材が収縮するのに十分な温度に達しない可能性がある。滞留時間が50秒を超えると、蓋材の過剰な熱収縮による容器の変形が起こりやすくなってしまうだけでなく、生産性が低下してしまうため好ましくない。滞留時間は3秒以上49秒以下であるとより好ましく、4秒以上48秒以下であるとさらに好ましい。これらの熱風吹き付け条件の他に、蓋材のみに熱風が当たるように吹き付け位置(気流)を調整すると、容器自身の加熱変形を抑制できるため好ましい。
本発明のフィルムを有する包装体は、食品、医薬品、工業製品等の様々な物品の包装材料として好適に使用することができる。
次に、実施例および比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はかかる実施例の態様に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
<ポリエステル原料の調製>
[合成例1]
撹拌機、温度計および部分環流式冷却器を備えたステンレススチール製オートクレーブに、ジカルボン酸成分としてジメチルテレフタレート(DMT)100モル%と、多価アルコール成分としてエチレングリコール(EG)100モル%とを、エチレングリコールがモル比でジメチルテレフタレートの2.2倍になるように仕込み、エステル交換触媒として酢酸亜鉛を0.05モル%(酸成分に対して)用いて、生成するメタノールを系外へ留去しながらエステル交換反応を行った。その後、重縮合触媒として三酸化アンチモン0.225モル%(酸成分に対して)を添加し、280℃で26.7Paの減圧条件下、重縮合反応を行い、固有粘度0.75dl/gのポリエステルAを得た。このポリエステル(A)は、ポリエチレンテレフタレートである。ポリエステルAの組成を表1に示す。
[合成例2]
合成例1と同様の手順でモノマーを変更したポリエステルB~Fを得た。各ポリエステルの組成を表1に示す。表1において、TPAはテレフタル酸、IPAはイソフタル酸、BDは1,4-ブタンジオール、NPGはネオペンチルグリコール、CHDMは1,4-シクロヘキサンジメタノール、DEGはジエチレングリコールである。なお、ポリエステル(G)の製造の際には、滑剤としてSiO2(富士シリシア社製サイリシア266)をポリエステルに対して7,000ppmの割合で添加した。各ポリエステルは、適宜チップ状にした。なお、各ポリエステルの固有粘度IVは、(B)0.73dL/g、(C)0.72dL/g、(D)0.73dL/g、(E)0.8dL/g、(F)0.75dL/gであった。ポリエステルB~Fの組成を表1に示す。
[混合例1]
ポリエステルAとポリエステルBとポリエステルEとポリエステルFを質量比28:49:15:8で混合(ドライブレンド)し、スクリュー押出機に投入し、いずれも275℃で加熱して溶融・混合させた。この溶融樹脂をストランドダイから円柱状に連続的に吐出し、ストランドカッターで裁断することによってチップ状のポリエステルGを得た。なお、ポリエステルGの固有粘度IVは0.63dL/gであった。ポリエステルGの組成を表1に示す。
[混合例2]
ポリエステルAとポリエステルBとポリエステルEとポリエステルFを質量比2:66:24:8でドライブレンド後に溶融・混合し、混合例1と同様の方法でポリエステルHを得た。なお、ポリエステルHの固有粘度IVは0.65dL/gであった。ポリエステルHの組成を表1に示す。
Figure 0007392715000001
[実施例1]
ヒートシール層(A層)の原料としてポリエステルBとポリエステルEとポリエステルFとポリエステルGを質量比46:19:5:30で混合し、基材層(B層)の原料としてポリエステルAとポリエステルBとポリエステルEとポリエステルFを質量比48:38:6:8で混合した。
A層及びB層の混合原料はそれぞれ別々のスクリュー押出機に投入し、A層は272℃、B層は283℃で溶融させた。それぞれの溶融樹脂は、流路の途中でフィードブロックによって接合させてTダイより吐出し、表面温度30℃に設定したチルロール上で冷却することによって未延伸の積層フィルムを得た。積層フィルムは片側がA層、もう片側がB層(A層/B層の2種2層構成)となるように溶融樹脂の流路を設定し、A層とB層の厚み比率が50/50となるように吐出量を調整した。
冷却固化して得た未延伸の積層フィルムを複数のロール群を連続的に配置した縦延伸機へ導き、予熱ロール上でフィルム温度が82℃になるまで予備加熱した後に4.1倍に延伸した。縦延伸直後のフィルムを熱風ヒータで100℃に設定された加熱炉へ通し、加熱炉の入口と出口のロール間の速度差を利用して、長手方向に20%リラックス処理を行った。その後、縦延伸したフィルムを、表面温度25℃に設定された冷却ロールによって強制的に冷却した。
リラックス処理後のフィルムを横延伸機(テンター)に導いて表面温度が115℃になるまで5秒間の予備加熱を行った後、幅方向(横方向)に4.1倍延伸した。横延伸後のフィルムはそのまま中間ゾーンに導き、1.0秒で通過させた。なお、テンターの中間ゾーンにおいては、フィルムを通過させていない状態で短冊状の紙片を垂らしたときに、その紙片がほぼ完全に鉛直方向に垂れ下がるように、最終熱処理ゾーンからの熱風と横延伸ゾーンからの熱風を遮断した。
その後、中間ゾーンを通過したフィルムを最終熱処理ゾーンに導き、198℃で7秒間熱処理した。このとき、熱処理を行うと同時にフィルム幅方向のクリップ間隔を狭めることにより、幅方向に3%リラックス処理を行った。最終熱処理ゾーンを通過後はフィルムを30℃の冷却風で5秒間冷却した。このとき、テンター出口のフィルム実温度は45℃であった。両縁部を裁断除去して幅600mmでロール状に巻き取ることによって、厚さ30μmの二軸延伸フィルムを長さ1000mにわたって連続的に製造した。得られたフィルムの特性は上記の方法によって評価した。製造条件と評価結果を表2と表3に示す。
[実施例2~6]
実施例2~6も実施例1と同様にして、原料の配合比率、第一延伸、中間熱処理、第二延伸、最終熱処理条件を種々変更したポリエステル系フィルムを連続的に製造した。これらのフィルムは実施例1と同様、幅600mm、長さ1000mのロール状に巻き取ったものである。各フィルムの製造条件と評価結果を表2と表3に示す。なお、実施例4~6は縦方向と横方向へ同時に延伸した同時二軸延伸フィルムである(表2中の実施例4~6については便宜上、縦延伸と横延伸の欄に延伸条件を記載しているが、これらは同一条件で同時に延伸している)。
[実施例7]
実施例7も実施例1と同様にして、原料の配合比率、第一延伸、中間熱処理、第二延伸、最終熱処理条件を種々変更したポリエステル系フィルムを連続的に製膜した。このフィルムは実施例1と同様、幅600mm、長さ1000mのロール状に巻き取ったものである。このフィルムロールの基材層側に、蒸着源としてアルミニウムを用いて、真空蒸着機にて酸素ガスを導入しながら真空蒸着法で酸化アルミニウム(AlOx)からなるガスバリア層を積層させてガスバリア性積層体を連続的に作製して幅600mm、長さ1000mのロールを得た。なお、ガスバリア層の厚みは10nmであった。得られた積層体の特性は後述の評価方法によって評価した。製造条件と評価結果を表2と表3に示す。
[実施例8]
実施例8も実施例1と同様にして、原料の配合比率、第一延伸、中間熱処理、第二延伸、最終熱処理条件を種々変更したポリエステル系フィルムを連続的に製膜した。このフィルムは実施例1と同様、幅600mm、長さ1000mのロール状に巻き取ったものである。このフィルムロールの基材層側に、実施例7と同様にして、酸化アルミニウム(AlOx)と酸化ケイ素(SiOx)からなるガスバリア層を積層させてガスバリア性積層体を連続的に作製して幅600mm、長さ1000mのロールを得た。なお、ガスバリア層の厚みは30nmであった。
この積層体のガスバリア層側に、テトラエトキシシラン加水分解溶液とポリビニルアルコールとを50:50の割合で混合した溶液を連続的に塗布した後、温度120℃、風速15m/秒に設定した乾燥炉へ導いて連続的にオーバーコート層を成膜した。なお、オーバーコート層の厚みは300nmであった。
[比較例1~4]
比較例1~4も実施例1と同様にして、原料の配合比率、第一延伸、中間熱処理、第二延伸、最終熱処理条件を種々変更したポリエステル系フィルムを連続的に製膜した。これらのフィルムは実施例1と同様、幅600mm、長さ1000mのロール状に巻き取ったものである。各フィルムの製造条件と評価結果を表2と表3に示す。
[比較例5]
ヒートシール層(A層)の原料としてポリエステルAとポリエステルFを質量比92:8で混合し、この混合原料をスクリュー押出機に投入して285℃で溶融させた。この溶融樹脂を単独でTダイより吐出し、表面温度30℃に設定したチルロール上で冷却した後、両縁部を裁断除去して幅600mmでロール状に巻き取ることによって、厚さ50μmの無延伸フィルムを所定の長さにわたって連続的に製造した。
上記のフィルムとは別に、基材層(B層)の原料としてポリエステルAとポリエステルFを質量比92:8で混合し、この混合原料をスクリュー押出機に投入して285℃で溶融させた。この溶融樹脂を単独でTダイより吐出し、表面温度30℃に設定したチルロール上で冷却することによって未延伸の単層フィルムを得た。
冷却固化して得た未延伸の単層フィルムを複数のロール群を連続的に配置した縦延伸機へ導き、予熱ロール上でフィルム温度が90℃になるまで予備加熱した後に3.5倍に延伸した。その後、縦延伸したフィルムを、表面温度25℃に設定された冷却ロールによって強制的に冷却した。
冷却後のフィルムを横延伸機(テンター)に導いて表面温度が115℃になるまで5秒間の予備加熱を行った後、幅方向(横方向)に3.9倍延伸した。横延伸後のフィルムはそのまま中間ゾーンに導き、1.0秒で通過させた。なお、テンターの中間ゾーンにおいては、フィルムを通過させていない状態で短冊状の紙片を垂らしたときに、その紙片がほぼ完全に鉛直方向に垂れ下がるように、最終熱処理ゾーンからの熱風と横延伸ゾーンからの熱風を遮断した。
その後、中間ゾーンを通過したフィルムを最終熱処理ゾーンに導き、230℃で7秒間熱処理した。このとき、熱処理を行うと同時にフィルム幅方向のクリップ間隔を狭めることにより、幅方向に2%リラックス処理を行った。最終熱処理ゾーンを通過後はフィルムを30℃の冷却風で5秒間冷却した。このとき、テンター出口のフィルム実温度は45℃であった。両縁部を裁断除去して幅600mmでロール状に巻き取ることによって、厚さ12μmの二軸延伸フィルムを長さ1000mにわたって連続的に製造した。
得られたA層とB層をドライラミネーション用接着剤(三井化学社製タケラック(登録商標)A-950)を用いて積層することによって、2層のフィルムを作製した。このフィルムの合計厚みは62μmであった。得られたフィルムの特性は上記の方法によって評価した。製造条件と評価結果を表2と表3示す。
[比較例6]
比較例6は、東洋紡株式会社製パイレンフィルム-CT(登録商標)P1128-30μmを使用した。評価結果を表2と表3に示す。
<フィルムの評価方法>
フィルムの評価方法は以下の通りである。なお、フィルムの面積が小さいなどの理由で長手方向と幅方向が直ちに特定できない場合は、仮に長手方向と幅方向を定めて測定すればよく、仮に定めた長手方向と幅方向が真の方向に対して90度違っているからといって、とくに問題を生ずることはない。なお、以下に示す、ヒートシール層のエステル交換度、融点、固有粘度(IV)を求める際、フィルムの表層からヒートシール層のみをフェザー刃で削り取ってサンプリングした。なお、削った後のフィルムサンプルは、電子走査顕微鏡(SEM)により断面を観察し、ヒートシール層以外の層が削られていないかを確認した。
[エステル交換度(ヒートシール層)]
ヒートシール層のエステル交換度は、共鳴周波数600MHzのプロトン型核磁気共鳴分光測定(H-NMR)にて、BDの2, 3位メチレンプロトンのホモデカップル測定から求めた。測定装置はBRUKER社製NMR装置AVANCE-NEOを用い、積算回数は32回とした。溶媒は重クロロホルム/オルトクロロフェノール=25/75(重量比)を用いた。
得られたNMRスペクトルの解析には日本電子製Deltaを用いた。オルトクロロフェノールの最も高磁場側のピークを6.6ppmとしたとき、4.54~4.62ppmのピーク群がBDの1, 4位メチレンピークである。低磁場側から順に、B-B-B、B-B-E(BD側)、B-B-E(EG側)の連鎖由来であると帰属される。実施例1と比較例3のヒートシール層のNMRチャートを図1に示す。各ピークの積分値をα, β, γとし、以下式1によってエステル交換度を算出した。

エステル交換度=(β+γ)/(α+β+γ) 式1
[融点(ヒートシール層)]
ヒートシール層の融点は、温度変調示差走査熱量計(DSC)「DSC250」(TA instruments社製)を用いて決定した。サンプルをT-zero(登録商標)パン内に2.0±0.2mgで秤量し、MDSC(登録商標)ヒートオンリーモードにて平均昇温速度2℃/min、変調周期40秒で測定し、ノンリバースヒートフローのチャートを得た。リバースヒートフローのチャートにおいて、あらわれる吸熱ピークの極小値を示す温度を融点とした。ここでの吸熱ピークとは、160~280℃の温度帯にあらわれるものを指す。また、融点が160~280℃の温度帯において2つ以上あらわれる場合、最も低温側のものを融点とした。なお、これら一連の解析には、DSCに付属の解析ソフト(TA instruments社製「Trios」)を用いた。実施例1と比較例4のヒートシール層のノンリバースヒートフローを図2に示す。
[固有粘度(IV)(ヒートシール層)]
ヒートシール層の固有粘度(IV)は、JIS K 7367-5に準拠して求めた。ウベローデ粘度管を用いて30±0.1℃で測定して得られた粘度数に対して、溶液の質量濃度(c)に対する粘度数の関係から質量濃度(c)=0としたときの値をIVとした。なお、測定溶媒にはフェノールと1,1,2,2-テトラクロロエタンを60/40(wt%)で混合したものを用いた。
[赤外ピーク強度比(ヒートシール層)]
ヒートシール層の赤外ピーク強度比は、FT-IR装置「FTS 60A/896」(バリアン社製)により求めた。ダイアモンドゲートを用いて、測定波数領域650~4000cm-1、積算回数128回、ATR法で偏光をかけて赤外吸収スペクトルを測定した。得られた赤外吸収スペクトルより、1340cm-1での赤外ピーク強度A1と1410cm-1での赤外ピーク強度A2との比A1/A2を赤外ピーク強度比とした。なお、測定時の偏光方向がフィルムの長手方向または幅方向となるようにし、それぞれ別々に測定した。
[表面粗さ 要素の平均長さSRm(ヒートシール層)]
JIS B0601:2013に準拠して、小坂研究所社製の三次元微細形状測定器「ET4000A」を使用し、測定速度0.2mm/秒、カットオフ0.25mmの条件でヒートシール面を測定した。
[動摩擦係数(ヒートシール層)]
JIS K7125に準拠し、引張試験機(ORIENTEC社製テンシロン)を用い
、23℃・65%RH環境下で、ヒートシール面同士を接合させた場合の動摩擦係数μdを求めた。なお、上側のフィルムを巻き付けたスレッド(錘)の重量は、1.5kgであり、スレッドの底面積の大きさは、縦63mm×横63mmであった。また、摩擦測定の際の引張速度は、200mm/min.であった。
[ヒートシール強度(ヒートシール層同士)]
ヒートシール層同士のヒートシール強度をJIS Z1707に準拠して測定した。具体的な手順を示す。ヒートシーラーにて、サンプルのヒートシール層同士を接着した。ヒートシール条件は、上バー温度140℃、下バー温度30℃、圧力0.2MPa、時間2秒とした。接着サンプルは、シール幅が15mmとなるように切り出した。剥離強度(ヒートシール強度)は、万能引張試験機「オートグラフAG-Xplus」(島津製作所製)を用いて引張速度200mm/分で測定した。剥離強度は、15mmあたりの強度(N/15mm)で示す。シーラントフィルム10μm当たりに換算した剥離強度の値も求めた。
[ヒートシール強度(ヒートシール層 対 A-PET)]
ヒートシール層とA-PETのヒートシール強度をJIS Z1707に準拠して測定した。具体的な手順を簡単に示す。ヒートシーラーにて、サンプルのヒートシール層と無延伸のポリエチレンテレフタレート(A-PET)シート(200μm、コーティング処理やコロナ処理等の表面処理は行っていない)を接着した。ヒートシール条件は、上バー温度140℃、下バー温度30℃、圧力0.2MPa、時間2秒とした。接着サンプルは、シール幅が15mmとなるように切り出した。剥離強度(ヒートシール強度)は、万能引張試験機「オートグラフAG-Xplus」(島津製作所製)を用いて引張速度200mm/分で測定した。剥離強度は、15mmあたりの強度(N/15mm)で示す。シーラントフィルム10μm当たりに換算した剥離強度の値も求めた。
[最大熱収縮率]
30mm×4mmサイズのサンプルを切り出し、熱機械分析装置(TMA、セイコーインスツルメンツ社製)を用いて最大熱収縮率を測定した。なお、測定方向は長手方向と幅方向の両方で行い、測定方向が30mmとなるようにした。チャック間距離は20mmとし、専用のチャックを用いてサンプルをプローブに取り付けた。サンプルをセットした後、炉内温度を30℃から220℃まで10℃/分で昇温した。この測定により、全温度帯の中で最も大きい変形量Lを用い、下記式2に従って最大熱収縮率を算出した。

最大熱収縮率=[{30(mm)-L(mm)}/30(mm)]×100(%) 式2
[最大熱収縮応力]
30mm×4mmサイズのサンプルを切り出し、TMAを用いて最大熱収縮応力を測定した。なお、測定方向は長手方向と幅方向の両方で行い、測定方向が30mmとなるようにした。チャック間距離は20mmとし、専用のチャックを用いてサンプルをプローブに取り付けた。サンプルをセットした後、炉内温度を30℃から220℃まで10℃/minで昇温したときの熱収縮応力を記録し、ピーク応力を最大熱収縮応力とした。
[引張破断強度]
JIS K7113に準拠し、測定方向が140mm、測定方向と直交する方向(フィルム幅方向)が20mmの短冊状のフィルムサンプルを作製した。万能引張試験機「オートグラフAG-Xplus」(島津製作所製)を用いて、試験片の両端をチャックで片側20mmずつ把持(チャック間距離100mm)して、雰囲気温度23℃、引張速度200mm/minの条件にて引張試験を行い、引張破壊時の強度(応力)を引張破壊強度(MPa)とした。なお、測定方向は長手方向と幅方向とした。
[ヘイズ]
JIS-K-7136に準拠し、ヘイズメータ(日本電色工業株式会社製、300A)を用いて測定した。測定は2回行い、その平均値を求めた。
[水蒸気透過度]
水蒸気透過度はJIS K7126 B法に準じて測定した。水蒸気透過度測定装置(PERMATRAN-W3/33MG MOCON社製)を用いて、温度40℃、湿度90%RHの雰囲気下において、ヒートシール層側から調湿ガスが透過する方向で水蒸気透過度を測定した。なお、測定前には湿度65%RH環境下で、サンプルを4時間放置して調湿した。
[酸素透過度]
酸素透過度はJIS K7126-2法に準じて測定した。酸素透過量測定装置(OX-TRAN 2/20 MOCON社製)を用いて、温度23度、湿度65%RHの雰囲気下において、ヒートシール層側から酸素が透過する方向で酸素透過度を測定した。なお、測定前には湿度65%RH環境下で、サンプルを4時間放置して調湿した。
[吸着性]
フィルムを10cm×10cmの正方形に裁断し、ヒートシール層を内側にした状態で2枚を重ね、フィルム端部より1cmの位置をヒートシールして袋を作成した。袋に内容物0.5mlの入ったアルミカップを入れ、フィルム端部より1cmの位置をヒートシールして袋を閉じて密閉した。前記内容物にはD-リモネン(東京化成工業株式会社製)、L-メントール(ナカライテスク株式会社製)を使用した。30℃環境下で20時間保持した後、フィルム袋のアルミカップの口部に接する面より5cm×5cmの正方形を切り取り、切り取ったフィルムを抽出溶媒4mlに浸した状態で、超音波で30分間抽出した。抽出溶媒には99.8%エタノール(富士フイルム和光純薬株式会社製)を用いた。島津製作所社製のガスクロマトグラフ「GC-14B」を用いて抽出溶液中の内容物の濃度を定量した。ガスクロマトグラフは、カラムに「GC-14A Glass I.D.2.6φx1.1m PET-HT 5% Uniport HP 80/100(ジーエルサイエンス社製)」、検出器にFID,キャリアガスにNを用い、キャリアガス流量35ml/分、注入量1μlにて面積百分率法で定量した。吸着量はヒートシール層における1cmあたりの吸着量(μg/cm)で示し、低吸着性を以下のように判定した。

判定○ 0μg/cm以上 5μg/cm未満
判定× 5μg/cm以上
[容器へのヒートシール・加熱評価]
<評価用サンプル作製方法>
フィルムを長手方向8cm×幅方向13cmのサイズに切り出し、エーシンパック工業株式会社製のハンドシーラーを使用し、図3に示したポリエチレンテレフタレート製の容器にヒートシールして包装体を作製した。前記ポリエチレンテレフタレート製の容器は、口部が短辺7.5cm×長辺12cmの長方形、高さが14cmであった。なお、ヒートシールの際、フィルムの長手方向が容器の短辺、フィルムの幅方向が容器の長辺となるようにし、フィルムのヒートシール層(面)を容器と接触させた。ヒートシール条件は、温度140℃、シール圧力0.2MPa、シール時間2秒とした。ヒートシール後、アイロン(東芝ライフスタイル株式会社製 東芝裁縫こて TA-A20)を出力「高」に設定して3秒間フィルムに当て、フィルムを加熱収縮させた。
<容器の変形評価>
上記で作製した評価用サンプルについて、フィルムの熱収縮による容器の変形度合いを評価した。容器の変形量は、変形の最も大きい部分を採用した。判定基準は以下の通りである。

判定○ 容器開口部の変形量が1cm未満
判定× 容器開口部の変形量が1cm以上
<フィルムのたるみ量評価>
容器へヒートシールした後に加熱収縮させたフィルム(上記<評価用サンプル作製方法>と<容器の変形評価>を経て作製)のたるみ量を、万能引張試験機オートグラフ「AG-Xplus」(島津製作所製)の圧縮試験モードによって評価した。オートグラフの試験部分に取り付ける冶具には固定式圧盤を用い、下部は直径200mmΦ、上部は直径50mmΦとした。下部の圧盤の中央部に、評価用サンプルの天面(フィルム面)が上部の圧盤に向かい合うように置き、フィルム面と上部の圧盤との距離は10mm(上下の圧盤間距離は150mm)とした。上記で作製した評価用サンプルを置いた後、上部の圧盤をフィルム面に向かって速度50mm/分で下降させ、フィルム面に当たってから発生する試験力が0.5Nを超えたときの変位を求めた。得られた変位から10mm(フィルム面と上部の圧盤との距離)を差し引いた値をたるみ量とし、以下の基準で判定した。実施例1と比較例5の圧縮試験結果を図4に示す。

判定○ たるみ量2mm未満
判定× たるみ量2mm以上
Figure 0007392715000002
Figure 0007392715000003
Figure 0007392715000004
[フィルムの製造条件と評価結果]
実施例1から8までのフィルムはいずれも表2に掲載した物性に優れており、フィルムロールの巻取り外観も良好であり、良好な評価結果が得られた。
一方、比較例1~6は以下の理由により、いずれも好ましくない結果となった。
比較例1は、フィルム厚み10μmあたりのヒートシール強度(ヒートシール層同士、対A-PET)が低いため、シーラントフィルムとしては適さなかった。
比較例2は、ヒートシール層の赤外ピーク強度比が所定の範囲よりも低くなり、動摩擦係数が0.9を超えてしまった。そのため、このフィルムを巻き取ったロールには凹凸が多数発生し、実用に耐えないものとなった。
比較例3は、ヒートシール層の赤外ピーク強度比が所定の範囲よりも低く、動摩擦係数が0.9を超えたため、このフィルムを巻き取ったロールには凹凸が多数発生してしまった。さらに比較例3は、最大熱収縮率と最大熱収縮応力が極端に低くなったため、容器へヒートシールした後に加熱してもたるみ量が大きくなり、実施例1~8と比較して外観(見栄え)に劣っていた。
比較例4は、最大熱収縮率と最大熱収縮応力が高すぎたため、容器へヒートシールして加熱すると、フィルムの熱収縮によって容器が変形してしまった。
比較例5は、フィルム厚み10μmあたりのヒートシール強度(ヒートシール層同士、対A-PET)が低くなっただけでなく、最大熱収縮率と最大熱収縮応力が極端に低くなったため、容器へヒートシールして使用する蓋材としては適さなかった。
比較例6は、素材がオレフィン系のため、リモネンとメントールの吸着量が大きくなった。また、異素材であるA-PET容器とは接着することができなかった。
本発明のポリエステル系シーラントフィルムは、内容物の成分吸着が少なく、機械的強度に優れ、低温域で高いヒートシール強度を有し、ガスバリア層を設けたときに優れたガスバリア性を有すると共に、フィルムロール巻取り性に優れ、適度な熱収縮性を有するので、シーラントフィルムとして蓋材に好適に使用できる。また、本発明のポリエステル系シーラントフィルムを少なくとも1層有する積層体および包装体を提供することができる。

Claims (15)

  1. 少なくともヒートシール層を1層有しており、前記ヒートシール層がエチレンテレフタレートを主たる構成成分とするポリエステルにより形成されてなり、下記要件(1)~()を満たすことを特徴とするポリエステル系シーラントフィルム。
    (1)ヒートシール層同士を140℃、0.2MPa、2秒でシールしたときのシール強度が、フィルム厚み10μmあたりで5N/15mm以上10N/15mm以下
    (2)熱機械分析(TMA)により30℃から220℃まで10℃/分で昇温したとき、長手方向または幅方向の少なくとも一方向における最大熱収縮率が1%以上12%以下
    (3)TMAにより30℃から220℃まで10℃/分で昇温したとき、長手方向または幅方向の少なくとも一方向おける最大熱収縮応力が0.2MPa以上3MPa以下
    (4)ヒートシール層同士の動摩擦係数が0.1以上0.9以下
    (5)ヒートシール層の長手方向または幅方向の少なくとも一方向において、偏光ATR法で測定した赤外スペクトル中の1340cm -1 と1410cm -1 とのピーク強度比が0.05以上0.6以下である
  2. ヒートシール層を1H-NMRで測定した、エチレングリコールとブタンジオールのエステル交換度が8%以上25%以下であることを特徴とする請求項1記載のポリエステル系シーラントフィルム。
  3. ヒートシール層と未延伸のポリエチレンテレフタレート(APET)シートを140℃、0.2MPa、2秒でシールしたときのシール強度が10N/15mm以上40N/15mm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリエステル系シーラントフィルム。
  4. 長手方向または幅方向の少なくとも一方向の引張破断強度が80MPa以上200MPaであることを特徴とする請求項1~いずれかに記載のポリエステル系シーラントフィルム。
  5. ヒートシール層を温度変調DSCで測定したときのノンリバースヒートフローから得られる融点が195℃以上230℃以下であることを特徴とする請求項1~いずれかに記載のポリエステル系シーラントフィルム。
  6. 印刷層が設けられていることを特徴とする、請求項1~いずれかに記載のポリエステル系シーラントフィルム。
  7. 請求項1~いずれかに記載のポリエステル系シーラントフィルムに、ガスバリア層を設けていることを特徴とするガスバリア性積層体。
  8. 請求項に記載のガスバリア性積層体において、ガスバリア層が無機薄膜層であることを特徴とするガスバリア性積層体。
  9. 請求項1~のいずれかに記載のポリエステル系シーラントフィルムまたは請求項のいずれかに記載のガスバリア性積層体に、オーバーコート層が設けられていることを特徴とするガスバリア性積層体。
  10. 水蒸気透過度が0.05[g/(m・d)]以上4g/m以下であることを特徴とする請求項いずれかに記載のガスバリア性積層体。
  11. 酸素透過度が0.05[cc/(m・d・atm)]以上4[cc/(m・d・atm)]以下であることを特徴とする請求項10いずれかに記載のガスバリア性積層体。
  12. 請求項1~のいずれかに記載のポリエステル系シーラントフィルムまたは請求項11に記載のガスバリア性積層体のうち、いずれかを少なくとも1層有していることを特徴とする積層体。
  13. 請求項1~のいずれかに記載のポリエステル系シーラントフィルム、請求項11に記載のガスバリア性積層体または請求項12に記載の積層体のうち、いずれかを少なくとも一部に用いたことを特徴とする包装体。
  14. 請求項1~のいずれかに記載のポリエステル系シーラントフィルム、請求項11に記載のガスバリア性積層体または請求項12に記載の積層体のうち、いずれかを少なくとも蓋材の一部として用いたことを特徴とする包装体。
  15. 請求項1~のいずれかに記載のポリエステル系シーラントフィルム、請求項11に記載のガスバリア性積層体または請求項12に記載の積層体のうち、いずれかを少なくとも蓋材の一部に用い、容器へヒートシールした後に加熱処理によって該蓋材を熱収縮させる包装体の製造方法。
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