JP5655201B2 - ホイスラー型鉄系熱電材料粉末及びホイスラー型鉄系熱電材料の製造方法 - Google Patents

ホイスラー型鉄系熱電材料粉末及びホイスラー型鉄系熱電材料の製造方法 Download PDF

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Description

この発明はホイスラー化合物、特にFeVAlを基本組成とするホイスラー型鉄系熱電材料粉末の製造方法及び同粉末を用いたホイスラー型鉄系熱電材料の製造方法に関する。
熱電材料(熱電変換材料)は熱エネルギーを電気エネルギーに(若しくはその逆に)変換する機能を持った材料で、この熱電材料に温度差を与えると高温部と低温部との間にゼーべック効果にて電位差(電圧)を生ぜしめる。
従って熱電材料に温度差を与えることで電力を得ることができる。
熱電材料を用いた熱電発電では、火力発電所でタービンを回して発電するのと異なって直接熱エネルギーを電気エネルギーに変換することができ、工場や自動車等から個々に出る廃熱を有効利用して発電することができ、またこの熱電発電では発電機等の可動部分を要しないので騒音や振動を生ぜしめず、メンテナンスフリーであり、更に200℃以下の低い温度でも発電が可能である等の利点を有することから将来への期待が高まっている。
従来、熱電材料にはBi-Te系等の化合物半導体,Co系酸化物セラミックス,Co-Sb系等のスクッテルダイト化合物,Zr-Ni-Sn等のハーフホイスラー化合物,FeVAl等のホイスラー化合物等が知られており、その熱電物性はゼーベック係数S,電気抵抗率ρ,熱伝導率κからなる性能指数Z=S/ρκで表される。この性能指数Zが大きいほどエネルギー変換効率の高い有利な材料となる。
ここでゼーべック係数Sは、単位温度差(1Kの温度差)当り発生する熱起電力の大きさを表す。ゼーべック係数は電子がキャリアの場合には負(n型)、正孔がキャリアの場合には正(p型)となる。p型とn型の熱電材料の両端部を導電材料で繋げると熱電素子となる。p型とn型の熱電材料の組合せでは、ゼーべック係数の符号が逆となるので発生する起電力は大きくなる。
上記性能指数のうちS/ρは出力因子(パワーファクターPF)で、熱電材料として取出し得る最大電力の指標となる。
現在、300℃程度までの熱電材料ではBi-Te系熱電材料が優れているが、このBi-Te系熱電材料の場合、Teが希少且つ高価な元素であり、製造コストが高くなる上に有害元素であるため、限られた部位にしか使用されていないのが実情である。
そこでBi-Te系熱電材料の代替として、有害且つ希少元素を含まず、資源的な制約の少ない鉄系熱電材料として、比較的安価な元素で構成されたFeVAl基ホイスラー化合物が注目されている。
FeVAlはFe,V,Alを他の元素で部分置換することで価電子濃度を制御することができる。FeVAlは化学式当りの総価電子数が24で1原子当りの平均価電子数、つまり価電子濃度は6であるが、Fe,V,Alを他の元素で部分置換することで価電子濃度を6よりも大きくし(この場合にはn型の熱電材料となる)、或いは逆に6よりも小さくする(この場合にはp型の熱電材料となる)ことができる。
また置換する元素を異ならせたり置換量を変えることで価電子濃度を種々に変化させ制御することができる。
FeVAl基ホイスラー化合物は、このような元素の部分置換やその組成を化学量論組成からずらすことによって室温においてBi-Te系熱電材料に匹敵する出力因子を示し、低温における熱電材料の候補として期待されている。
現在FeVAl基のホイスラー型鉄系熱電材料の製造方法として、鋳造法と粉末治金法とがある。
鋳造法は、熱電材料を直接製造することができるが偏析が大きいため、偏析除去のための鋳造後の均質化熱処理が必要で且つ処理に時間を要し、また粒界が単純な直線形状且つ大きくなるために粒界脆性を呈して粒界破断を起し易く、粒界破断に起因して加工・成形工程における歩留りが低下してしまう問題がある。
更に材料が硬質の材料であるために研削・切断の際に長時間を要することが問題となる。
一方粉末治金法では、従来、原料粉末をメカニカルアロイングにて粉砕及び合成する工程を経て、若しくは合金インゴットを粉砕する工程を経てFeVAl基ホイスラー化合物の微細粉末を作製した後、これを焼結することによって熱電材料を製造している。
前者,後者何れの場合も長時間かけての粉砕工程を含むもので、そのことが生産性を低下させる要因となっている。
また粉砕した微細粉末の一部は粉砕装置の容器その他に強固に付着して回収できないため歩留りの低下を招く。
更には、微細粉末を得る過程で行われる粉砕工程が不純物の混入の原因となるといった問題がある。
本発明者らがこのような粉砕工程を行って、その後に微細粉末の不純物の含有量を調べたところ、OやN等の不純物が多く微細粉末に取り込まれてしまうことが確認された。
而してこのようにしてO,N等の不純物が微細粉末に取り込まれてしまうと、結果として熱電材料の熱電特性(出力因子)が悪化してしまう問題をもたらす。
尚、本発明に対する先行技術として、下記特許文献1には「熱電材料及びその製造方法」についての発明が示され、そこにおいてFeVAl基ホイスラー化合物の熱伝導率κが高いことの問題点を解決することを狙いとして、Feサイトに格子欠陥(空孔)を導入すると同時に何れか1以上のサイトで元素置換を行い、また置換元素の種類及び量を最適化することで、出力因子を高く維持したまま熱伝導率κを低下させる点が開示されている。
但しこの特許文献1には、粉末冶金にて熱電材料を製造するに際しての具体的な問題点の指摘及びその解決手段についての開示はなされていない。
他の先行技術として、下記特許文献2には「熱電材料及びその製造方法」についての発明が示され、そこにおいて(1)AgAsMg型結晶構造を有し、(2)原子当りの価電子数が6であり、(3)AgAsMg型結晶構造の3つのサイトの内、少なくとも2サイトには、それぞれ価電子数の異なる2種以上の原子を含み、(4)O濃度[O]及びSi濃度[Si]は、2.5≦3.305−5.10[O]−0.540[Si]を満たすハーフホイスラー化合物を含む熱電材料及びその製造方法が開示されている。
しかしながらこの特許文献2に開示のものは、ハーフホイスラー化合物を主成分とする熱電材料に関するもので、本発明と対象を異にしており、また粉末冶金法にて熱電材料を製造するに際しての本発明が課題とするところの問題点についての開示及び解決手段が示されていない点で、本発明とは別異のものである。
特開2008−21982号公報 特開2008−311247号公報
西野 洋一、まてりあ、44(2005)、648−653
本発明は以上のような事情を背景とし、熱電材料を製造するに際して製造時間を短縮化し得て生産性を高めるとともに製造コストを低減でき、また製造工程中に粉砕工程を含むことによって不純物元素が混入する問題を解決し、不純物が少なく熱電特性の良好なホイスラー型鉄系熱電材料を得ることのできる熱電材料粉末及びこれを用いた熱電材料の製造方法を提供することを目的としてなされたものである。
而して請求項1は、下記式(1)で表されるFeVAl基ホイスラー化合物が得られるように配合された原料を1torr以下で真空引きした後にAr雰囲気中で溶解する溶解工程と、溶解により得た溶湯を、噴霧ガス圧20〜40kgf/cm 、噴霧ガス流量10〜100L/分、注湯ノズル口径2.5〜6mmの条件でガスアトマイズ法により急冷凝固させて粉末化する粉末化工程と、を経て不可避的不純物元素としてのO,Nが、O≦0.1質量%,N≦0.05質量%に規制されて成る熱電材料の粉末を製造することを特徴とする。
(Fe1-aM12−x−y(V1−bM21+x(Al1−cM31+y・・・式(1)
但し、M1は3d,4d,5d遷移金属元素(Feを除く)からなる群から選ばれた1種以上の元素、M2は3d,4d,5d遷移金属元素(Vを除く)からなる群から選ばれた1種以上の元素、M3はIIIb(Alを除く),IVb,Vb族元素からなる群から選ばれた1種以上の元素で、a≦0.2,b≦0.4,c≦0.4,|x|≦0.2,|y|≦0.2である。
請求項2のものは、請求項1において、アスペクト比:(長軸)/(短軸)が5以下の粉末を70質量%以上含むことを特徴とする。
請求項3のものは、請求項1,2の何れかにおいて、短軸が400μm未満であることを特徴とする。
請求項4のものは、請求項3において、粉末の体積平均粒径が25μm以上であることを特徴とする。
請求項5のものは、請求項1〜4の何れかにおいて、前記M1がCo,Ni,Cuからなる群から選ばれた1種以上の元素、前記M2がTi,Zr,Ta,Cr,Mn,Mo,Wからなる群から選ばれた1種以上の元素、前記M3がSi,Ga,Ge,Sn,Sbからなる群から選ばれた1種以上の元素、であることを特徴とする。
請求項はホイスラー型鉄系熱電材料の製造方法に関するもので、請求項1〜の何れかに記載の粉末を粉砕処理することなくホイスラー構造を保持する1140℃以下の温度で直接焼結することを特徴とする。
発明の作用・効果
本発明では、FeVAl基ホイスラー化合物(合金)として以下を対象とする。
(Fe1-aM12−x−y(V1−bM21+x(Al1−cM31+y・・・式(1)
ここでM1はFeを置換する元素で、3d,4d,5d遷移金属元素(Feを除く)から成る群から選ばれた1種以上の元素であり、式中a≦0.2である。
M2はVを置換する元素で、3d,4d,5d遷移金属元素(Vを除く)の群から選ばれた1種以上の元素であり、式中b≦0.4である。
M3はAlを置換する元素で、IIIb(Alを除く),IVb,Vb族元素から成る群から選ばれた1種以上の元素であり、式中c≦0.4である。
これらの元素を置換して下記の式(2)で示される価電子濃度を制御することで、ホイスラー化合物の熱電材料のゼーベック係数を制御できることは知られている(特開平2004−253618に開示)。
(価電子濃度)=Σ[(元素のモル分率)×(価電子数)]・・・式(2)
式(1)中添え字のxおよびyは化学量論組成からのずれを示す。ホイスラー化合物はある程度化学量論組成から外れてもその構造を保つことができ、高いゼーベック係数を保つことができる(J Alloys Comp.329(2001)63-68,Phys Rev B66(2002)085121、Mater Trans 42(2001)902-910に開示)。
本発明に係る熱電材料では、|x|および|y|を増やすことにより材料に軟化および延性を持たせることができ、材料の焼結および成形を容易にすることができる。
但し|x|および|y|が高すぎるとホイスラー構造が不安定になり、ゼーベック係数が低下するので|x|,|y|は何れも0.2以下とする。
元素置換によりゼーベック係数の絶対値を大きくできること、電気抵抗率、熱伝導度を抑制できること、特に重元素を添加することで熱伝導率を著しく抑制できることは知られている(例えば特開平2004−253618に開示)。このため原料コストのかからない元素を添加することは、熱電特性の向上に有効である。
FeVAlのFeサイトに置換する元素M1としては、上記に示した元素の内Co,Ni,Cuからなる群から選ばれた1以上の元素が好ましい。
これら元素Co,Ni,Cuは何れも周期表でFeよりも右側にある元素で、Feサイトの一部をこれら元素で置換すると合金全体の総価電指数が増加し、キャリアに占める電子の割合が増加してゼーペック係数は負の値を示すようになる。
これらの元素は何れも原材料コストをさほど上げることなく効果的にゼーベック係数を増大させあるいは電気抵抗率若しくは熱伝導率を減少させる作用がある。
Vサイトに置換する元素M2としては、上記に示した元素の内Ti,Zr,Ta,Cr,Mn,Mo,Wからなる群から選ばれた何れか1以上の元素であることが望ましい。
このうちTiとZrは周期表でVよりも左側にある元素で、これらでVを部分置換すると総価電子数は減少し、キャリアに占める正孔の割合が増加してゼーベック係数は正の値を示すようになる。またCr,Mn,Mo,WはVよりも右側にある元素で、置換によりゼーべック係数は負の値を示すようになる。
これら置換元素のうちTi,Cr,Mnはいずれも原材料コストを下げ、かつゼーベック係数を増大させあるいは電気抵抗率若しくは熱伝導率を減少させる作用がある。
また、それ以外の元素は原材料コストをさほど上げることなく効果的にゼーベック係数を増大させあるいは電気抵抗率若しくは熱伝導率を減少させる作用がある。
Alに置換する元素M3としては、上記に示した元素の内Si,Ga,Ge,Sn,Sbからなる群から選ばれた1以上の元素が望ましい。
このうちSi,Ge,Sn,Sbは電子の割合が増加してゼーベック係数は負の値を示すようになる。
Siは原材料コストを下げ、かつゼーベック係数を増大させあるいは電気抵抗率および熱伝導率を減少させる作用がある。
また、それ以外の元素は原材料コストをさほど上げることなく効果的にゼーベック係数を増大させあるいは電気抵抗率若しくは熱伝導率を減少させる作用がある。
FeVAlの化学量論組成では、(価電子濃度)=[(Feのモル分率=0.5)×(Feの価電子数8)+(Vのモル分率=0.25)×(Vの価電子数3)+(Alのモル分率=0.25)×(Alの価電子数5)]=6であり、p型とn型の境界であるためゼーベック係数は低い。
高い熱電特性を得るには価電子濃度が6からわずかに大きい、若しくは小さい必要があるため、Feを置換する元素の量a、Vを置換する元素の量b、Alを置換する元素の量cのうち、少なくとも1つ以上は0より大きいことが好ましく、より好ましくは0.004以上である。
但し価電子濃度が6から大きくずれるとゼーベック係数は低下するため、置換最大量はaが0.2以下、bおよびcが0.4以下であることが必要である。
本発明では、不可避的不純物元素としてのOの含有量を0.1質量%以下に、Nの含有量を0.05質量%以下に規制する。
不可避的不純物元素のOおよびNはV,Alおよび置換元素と結合して母相内の成分を変化させ、ゼーベック係数を低下させる。また不純物相を形成して電気抵抗率を増加させる。これをできるだけ防ぐ観点で、本発明ではOは0.1%以下、Nは0.05%以下とする。
本発明では、不純物元素量の増加を防ぐために1torr以下で真空引きした後にAr雰囲気中で原料の溶解を行う。
一方粉末化の手段として、本発明では偏析が少なく、加工工程での成形が容易であり、また不純物元素を付着抑制でき、球体粉末を得易いガスアトマイズ法を用いる。
このガスアトマイズ法では、溶湯をノズルから流出させて溶湯流に窒素,アルゴン,ヘリウムの何れか1種若しくは2種以上による高圧ガス噴射を行い、溶湯を粉末化する。
溶湯に対して水流ジェットを作用させる水アトマイズ法にて溶湯を粉末化した場合、粉末中に酸素,窒素等の不純物が多く含有されてしまう。しかるにガスアトマイズ法にて粉末化した場合、これら酸素,窒素等の不純物の含有を少なく抑制することができる。
ガスアトマイズ法にて溶湯を粉末化した場合にこれら酸素,窒素の不純物含有を少なくすることのできる理由は、ガス中の活性な酸素の量が低く、また回収まで乾燥雰囲気で冷却可能かつ回収後に乾燥などの工程が不要であることによる。
本発明では、アスペクト比:(長軸)/(短軸)が5以下の粉末を70質量%以上含むように粉末の形態を制御することが望ましい(請求項2)。
即ち本発明の熱電材料の粉末の製造方法は、ガスアトマイズにて生成した粉末から上記の条件を満たす粉末を選別する選別工程を含むものとしておくことができる。
アスペクト比の高い粉末は表面積が広くなり、焼結材の不純物相が増加してゼーベック係数の低下および電気抵抗率の増加をもたらす。
また、焼結の際に緻密化を妨げて粒界面積を増加させ、電気抵抗率を増加させる。
更に焼結前のかさ密度を増加させ、これにより焼結後の寸法誤差を増加させる。
このため(長軸)/(短軸)が5以下の粉末が70%以上を占めるように粉末の形態を制御することが望ましい。
本発明ではまた、粉末(粒子)の大きさを短軸が400μm未満のものとなしておくことが望ましい(請求項3)。
即ち本発明の熱電材料の粉末の製造方法は、このような条件を満たす粉末を選別する工程を含むものとなしておくことができる。
粒径が大きい粉末は、粒子と粒子との間に多くの空隙を生ぜしめ、焼結前のかさ密度を低下させる。そのため電気抵抗率を増加させ、また焼結後の寸法誤差を増加させる。また焼結温度が高くなり、ゼーベック係数を低下させる。
この観点から、本発明ではふるいの網目の間隔(目開き)400μmを通過可能な粉末、即ち短軸が400μm未満の粉末となしておくことが望ましい。より好ましくは短軸寸法で250μm未満とする。
本発明では、粉末の体積粒度分布の累積カーブを求め、粉末の全体積を100%として累積カーブが50%となる点の粒子径を体積平均粒径d50としたとき、粉末の粒径を体積平均粒径で25μm以上となしておくことが望ましい(請求項4)。
即ち本発明の熱電材料粉末の製造方法は、このような条件を満たすように粉末を選別する工程を含むものとなしておくことができる。
体積平均粒径がこれよりも小さいと、粉末界面の面積率が高くなって粉末表面からの不純物元素の侵入が多くなり、焼結材の不純物相が増加して電気抵抗率が増加してしまう。このようなことを防ぐため、本発明では粉末の体積平均粒径を25μm以上としておくことが好ましい。より好ましくは45μm以上、更に好ましくは60μm以上である
請求項は、上記粉末を用いて熱電材料を製造する方法に関するもので、この請求項の熱電材料の製造方法では、上記にて得られた粉末を、その後において粉砕処理することなく直接焼結することで、FeVAl基ホイスラー化合物を主成分とする熱電材料を製造する。
前述したように粉末冶金法を用いた従来の熱電材料の製造方法では、FeVAl基ホイスラー化合物の粉末を得た後に、更にこれを粉砕工程で微細粉末に粉砕し、しかる後これを焼結して目的とする熱電材料を製造していた。
この粉砕工程は、多大の時間を要して生産性低下、歩留り低下をもたらす問題の外に、得られた熱電材料の熱電特性を低下させる要因となることが本発明者らの研究にて判明した。
研究の結果、このような粉砕工程を経ることで熱電特性が低下するのは、長い時間かけて粉末を粉砕している間に、粉砕装置の構成材中に含まれるO等の不純物成分が粉末に付着して表面から粉末中に侵入したりすること、とりわけ長時間の粉砕中に生成した活性を帯びた粉末粒子の新生面が、粉砕後に粉末を大気中に放置しておく間に不純物元素O等で汚染し、そのことが粉末に含有されるO等の不純物成分の含有量増大に繋がり、その後の焼結にて得られる熱電材料の熱電特性を低下せしめるとの知見が得られた。
そこで請求項の製造方法では、ガスアトマイズ法にて溶湯を粉化し、更にはその中から粉末を選別して粉末の粒子形状,粒子形態を制御した上で、上記のような粉末の粉砕工程を経ることなく、直接粉末焼結を行って目的とする熱電材料を製造する。
尚、溶湯をガスアトマイズ法にて粉化した後、通常は直ちに粉末焼結を行うとは限らず、場合によってそのまま放置ないし保管しておくことがある。
そこで本発明の粉末の製造方法では、ガスアトマイズにて粉化した粉末を、一旦非酸化性の雰囲気中に保持、保管しておくことが望ましい。
即ち本発明の粉末の製造方法では、粉末を非酸化性の雰囲気中に保管する処理(工程)を含むものとなしておくことができる。
この場合粉末を酸素および窒素の濃度を0.1%(体積%)以下の雰囲気中に保管するようになしておくことが望ましい。
本発明の熱電材料の製造方法において、焼結方法としては様々な方法を用いることができるが、不純物元素の混入を防ぐために真空中での成形及び焼結が好ましい。中でも通電焼結は真空雰囲気もしくは不活性雰囲気中にて材料に直接通電することができ、短時間で緻密な焼結体が得られるので焼結方法として特に好適である。
ここで成形・焼結体は材料の安定化熱処理を施してもよい。熱処理をすることで温度による材料変化を抑制でき、安定して出力を得ることができる。
尚、FeVAl基ホイスラー化合物の粉末を用いて熱電材料を製造するに際し、そのFeVAl基ホイスラー化合物に他の材料を複合化しておいても良い。
例えば、特開2008−192652に開示のようにFeVAlにBiを混ぜた複合材料にすることで、熱伝導率を大幅に低下させることが期待できる。また特開2007−35857に開示のように、熱電材料に強化繊維を分散させることで加工性を高めるようになすことができる。
以上のような本発明の熱電材料粉末の製造方法及び熱電材料の製造方法によれば、粉末冶金法を用いた熱電材料の製造に際して、製造工程,製造時間を短縮し得て製造コストを安価とすることができ、また粉末の粉砕工程を排除することで、O,N等の不純物成分の含有量を低減し得て、熱電特性の良好なFeVAl系熱電材料を得ることができる。
通電焼結装置を示した図である。 アトマイズ粉末のX線回折の結果を示した図である。 アトマイズ粉末の示差熱分析の結果を示した図である。 1100℃で熱処理した焼結体のX線回折の結果を示した図である。 1200℃で熱処理した焼結体のX線回折の結果を示した図である。
<検討I>(焼結温度の検討)
A. 準備
所定量の原料を目的の組成になるように秤量し、1torr以下で真空引きした後に0.5気圧の減圧Ar雰囲気中、耐火物坩堝内で高周波誘導加熱にて溶解した後に、タンディッシュを通じてArガス噴霧中に注ぎ急冷凝固してアトマイズ粉末を得た。
粉末を得るためのアトマイズ条件として、噴霧ガス圧を20〜40kgf/cm,噴霧ガス流量10〜100L/分,注湯ノズル口径2.5〜6mmとした。
この粉末の一部を用いてX線回折を行った。X線回折はCu管球を用いて初めに90°〜20°の角度の範囲を0.05°毎に2秒間測定した。結果が図2(A)に示してある。
更に33°〜25°の角度の範囲を0.02°毎に4秒間測定した。即ち測定のスピードを落として精度を高め、再度この角度の範囲を測定した。
結果が図2(B)に示してある。
尚、図2(A)と図2(B)とでは縦軸の強度レベルが異なったレベルで示してある。
またこの粉末のうち250μm未満(250μmアンダー)の粉末、つまり網目250μmを通過した粉末を、図1に示す内径がφ10mmのカーボン型10を有する通電焼結装置11を用いて通電焼結(SPS:放電プラズマ焼結)した。
図1において12はダイス型、14はその内部に挿入されたパンチ型、16はパンチ電極で、この通電焼結装置11では一対のパンチ型14をダイス型12内に挿入して粉末5を加圧した状態で、パンチ電極16間にパルス電流を流し、粉末5を短時間焼結する。
ここで焼結は温度1100℃,1200℃,圧力40MPa,焼結時間3分,真空雰囲気中の条件で行った。
焼結体から1.5mm×2mm×10mm程度の棒状の試料を切出し、343K大気中にて試料の両端に1〜5℃だけ温度差ΔTを与えたときの電圧Vを5点測定して、そのときのΔTとVを最小二乗法によりV=aΔT+b(a,bは定数)で示したときのaの値をゼーベック係数とした。
また同時に両端に電流を流したときの試料中の電圧を測定することで電気抵抗を測定し、電圧測定端子間の距離と試料の断面積とから電気抵抗率を算出した。
結果が出力因子(P.F.)及びかさ密度とともに表1に示してある。
Figure 0005655201
また5℃/minの加熱速度中で示差熱分析することにより、加熱曲線からホイスラー規則化温度を調査した。
結果が図3に示してある。
また示差熱分析結果で検出した相変態を確認するため、表1のA-1,A-2の焼結体の一部を1100℃および1200℃で30分熱処理後、水冷した焼結体をコロイダルシリカを含む研磨剤で研磨してX線回折を実施した。
尚表1のかさ密度は、ゼーベック係数を測定した試料の寸法と質量を測定して算出した。
B. 結果
表1に示しているように、焼結温度1100℃で焼結したものに比較して1200℃で焼結したものでは、電気抵抗率は同程度であるものの、ゼーベック係数が低下しており、これによって出力因子(P.F.)が低下している。
粉末のX線回折を行った結果、ホイスラー構造を確認した(図2)。
また示差熱分析によりA-1,A-2ともに約1140℃で相変態を検出した(図3)。
またA-1,A-2の焼結体(焼結は粉末を粉砕することなく直接焼結を行っている。以下も同様)のX線回折により、1100℃で熱処理した焼結体のホイスラー構造を確認した(図4)。一方1200℃で熱処理した焼結体に関してはB2相の結晶構造であった(図5)。
つまり1140℃以上ではホイスラー構造を保てないことが分かった。
AlとVの原子配列が規則的であるためホイスラー化合物は、ゼーベック係数が高いことが知られており、B2相はAlとVの配列に乱れが生じて生成した相である。
表1の結果より、1200℃で焼結した焼結体は最高温度が1140℃を超えるためにホイスラー構造を保てず、その後の冷却中に形成されるホイスラー構造には欠陥が多いためにゼーベック係数が低下して、出力因子は半減すると考えられる。このため焼結温度は1140℃以下が望ましい。
このことはつまり、粉末粒子間に多く生じた空隙を無くそうとして焼結温度を高くしようとしても、一定以上には焼結温度を高めることはできず、従って粉末粒子間に空隙が多く生じてしまうと、その空隙を無くすことが難しいことを意味している。
<検討II>(粉末粉砕の影響についての検討)
A.準備
粉砕法により製造した鉄粉、アルミ粉末、フェロバナジウム粉末、チタン粉末、シリコン粉末をFe(V0.9Ti0.1)Al、FeV(Al0.9Si0.1)になるように秤量し、金属粉末合計10gを150gのクロム鋼製ボールと共にボールミルにより減圧Ar雰囲気中で280rpm、1時間の機械粉砕を行った後30分冷却するサイクルを150サイクル行ってメカニカルアロイング(MA)処理により合金粉末を製造した。
また上記の検討Iで得た250μm未満の合金の分級粉末のうち、10gは150gのクロム鋼製ボールと共にボールミルにより減圧Ar雰囲気中で280rpm、1時間の機械粉砕を行った後30分冷却するサイクルを30サイクル行って粉末を粉砕する処理を実施した。
それらはその後、通常工程を想定して大気中(温度20℃、湿度60%)に3時間放置してから粉末の一部を使用して酸素・窒素濃度への影響を調査した。
また粉末を内径φ10mmの図1のカーボン型10を有する通電焼結装置11を用いて通電焼結して特性測定を行った。尚焼結は温度1100℃、圧力40MPa、焼結時間3分、真空雰囲気中の条件とした。
また測定は以下のようにして行った。即ち焼結体から1.5mm×2mm×10mm程度の棒状の試料を切出し、343K大気中にて試料の両端に1〜5℃だけ温度差ΔTを与えたときの電圧Vを5点測定して、そのときのΔTとVを最小二乗法によりV=aΔT+b(a,bは定数)で示したときのaの値をゼーベック係数とした。また同時に両端に電流を流したときの試料中の電圧を測定することで電気抵抗を測定し、電圧測定端子間の距離と試料の断面積から電気抵抗率を算出した。
結果が粉砕処理(MA処理又は機械粉砕処理)しなかったものと比較して表2,表3に示してある。
尚粉砕処理しなかったものについても大気中放置を3時間以上している。
Figure 0005655201
Figure 0005655201
B.結果
表2,表3の結果に示しているように、粉砕処理した粉末の酸素・窒素濃度は粉砕処理しなかったものに比べて著しく増大していること、またゼーベック係数の低下と電気抵抗率の上昇が確認された。
これは粉砕により活性を帯びた新生面が生成した、粒径が微細な粉末を大気中に放置したためと考えられ、従って粉砕工程を省くことにより、コスト高の要因となる特別管理を不要としつつ、粉末の酸素・窒素濃度を抑えることができると考えられる。
ゼーベック係数、電気抵抗率は測定誤差が最大10%あることが知られている。そのため誤差を考慮すると出力因子はP.F.=(S×1.1)/(ρ×0.9)=((1.1)/0.9)×S/ρ=1.34×S/ρより、最大で1.34倍までが誤差の範囲となる。すなわち従来の粉砕処理(MA処理)をした材料との有意差を得るには、p型では粉砕処理(MA処理)をしたD-1の出力因子は0.7であるので、その1.34倍以上である。すなわちp型では出力因子が1.0以上のとき粉砕処理材と比較して有意差が得られる。
同様にn型では粉砕処理(MA処理)をしたD-2の出力因子は1.5であるのでその1.34倍以上である2.1以上が条件となる。
より好ましくは、測定誤差の2倍を考慮してP.F.=(S×1.2)/(ρ×0.8)=((1.2)/0.8)×S/ρ=1.8×S/ρより、p型では出力因子が1.3、n型では出力因子が2.7以上で、粉砕処理(MA処理)した材料との有意差が得られる。
表2,表3の結果からは、また、従来の粉砕処理した材料との有意差を得るために粉末中のOの含有量を0.1%以下とするのが望ましいことが確認できる。
<検討III>(水アトマイズ,溶解雰囲気の比較検討)
A.準備
所定量の原料をFe(V0.9Ti0.1)AlとFeV(Al0.9Si0.1)とになるように秤量して1torr以下で真空引きした後に0.5気圧の減圧Ar雰囲気中、耐火物坩堝内で高周波誘導加熱にて溶解した後に、タンディッシュを通じて水噴霧中に注ぎ、急冷凝固して水アトマイズ粉末を得た。
水アトマイズの条件は、噴霧水圧が50〜150kgf/cm、噴霧水流量600〜800L/分、注湯ノズル口径6〜8mmとした。
また、所定量の原料をFe(V0.9Ti0.1)AlおよびFeV(Al0.9Si0.1)になるように秤量し大気中、窒素フロー中および0.1気圧減圧中、耐火物坩堝内で高周波誘導加熱にて溶解した後にタンディッシュを通じてArガス噴霧中に注ぎ急冷凝固して粉末を得た。粉末を得るためのアトマイズ条件は噴霧ガス圧が20〜40kgf/cm、噴霧ガス流10〜100L/分、注湯ノズル口径2.5〜6mmとした。
粉末はふるいにて250μm以下の粉末を採取した。そして採取した粉末の酸素・窒素濃度分析を行った。
また、粉末を内径φ10mmの図1のカーボン型10を有する通電焼結装置11を用いて通電焼結した。焼結は温度1100℃、圧力40MPa、焼結時間3分、真空雰囲気中の条件とした。
焼結体から1.5mm×2mm×10mm程度の棒状の試料を切出し、343K大気中にて試料の両端に1〜5℃だけ温度差ΔTを与えたときの電圧Vを5点測定して、そのときのΔTとVを最小二乗法によりV=aΔT+b(a,bは定数)で示したときのaの値をゼーベック係数とした。また同時に両端に電流を流したときの試料中の電圧を測定することで電気抵抗を測定し、電圧測定端子間の距離と試料の断面積から電気抵抗率を算出した。
結果が表4に示してある。
Figure 0005655201
B.結果
水アトマイズ粉末の酸素・窒素濃度を測定したところ、ガスアトマイズ粉末より高いことが分かった。また、ゼーベック係数の低下と電気抵抗率の上昇とが確認された。
また表4の結果では、粉末の酸素・窒素濃度が高いほどゼーベック係数の低下と電気抵抗率の上昇が著しい。
溶解条件については、Ar雰囲気での溶解粉末が酸素・窒素濃度が最も低い結果となっている。
大気中での溶解粉末、窒素フロー中での溶解粉末及び0.1気圧減圧中での溶解粉末は、何れもAr雰囲気中での溶解粉末よりも酸素・窒素濃度が高いが、0.1気圧減圧中での溶解粉末では酸素・窒素濃度が大気中での溶解粉末,窒素フロー中での溶解粉末に比べて低い値であり、P.F.値もAr雰囲気での溶解粉末の半減値より大で、結果としては良好である。
これに対し大気中での粉末溶解は酸素濃度が高く、また窒素フロー中での溶解粉末は酸素濃度、窒素濃度がともに高く(0.05%より高い)、P.F.値も従来の粉砕処理した材料との有意差が得られていない。
これらの結果から、焼結体の熱電特性が優れた粉末を大量に製造するのに溶解中、大気成分が10%以下、より好ましくは1%以下に雰囲気制御若しくは溶湯が直接大気に触れないよう処理したガスアトマイズが好適であることが分かる。
<検討IV>(合金組成の検討)
A.準備
所定量の原料を表5に示す各種組成となるように秤量し、上記検討Iにおけるのと同様にして粉末製造及び焼結を行って各種特性を評価した。
但しここでは焼結温度は何れも1100℃とした。
結果が表5に併せて示してある。
Figure 0005655201
B.結果
合金組成に関しては、表5に示しているように成分範囲が|x|≦0.2,|y|≦0.2,a≦0.2,b≦0.4,c≦0.4で請求項1の条件を満たしているA-1〜A-2,A-5〜A-11は出力因子(P.F.)が高いのに対して、x=-1のD-5、c=0.5のD-6、c=1のD-7は出力因子(P.F.)がほとんどないのが分かる。
<検討V>(分級・粉末サイズ上限の検討)
A.準備
上記検討Iにおける粉末の一部は、ふるいにて所定の粒度となるように分級を行った。尚250μm以上の分級した粉末にはアスペクト比が5より大きい板状の粉末が混入していたため、その板状粉末を除去した。また250μm未満に分級した粉末についてはアスペクト比が5より大きい板状粉末は混入していなかった。
分級を行った粉末は酸素,窒素濃度分析(LECO(社)製のTC600を使用)を行った。
またレーザー散乱/回折法にて体積平均粒径d50の測定(日機装(社)製のMT3300EXを使用)を行った。
また、粉末は内径φ10mmの図1のカーボン型10を有する通電焼結装置11を用いて通電焼結した。
焼結は温度1100℃,圧力40MPa,焼結時間3分,真空雰囲気中の条件とした。
焼結体から1.5mm×2mm×10mm程度の棒状の試料を切出し、343K大気中にて試料の両端に1〜5℃だけ温度差ΔTを与えたときの電圧Vを5点測定して、そのときのΔTとVを最小二乗法によりV=aΔT+b(a,bは定数)で示したときのaの値をゼーベック係数とした。また同時に両端に電流を流したときの試料中の電圧を測定することで電気抵抗を測定し、電圧測定端子間の距離と試料の断面積から電気抵抗率を算出した。また、かさ密度はゼーベック係数を測定した試料の寸法と質量を測定して算出した。
B.結果
表6,表7に示しているように分級した結果、酸素濃度は63〜125μmの分級サイズのA-14,A-19で最小値となり、これよりも粒径が小さくても、また大きくても酸素濃度が増加する傾向であった。
一方かさ密度は粒径が大きいほど減少した。
また分級サイズが〜25μmと、400〜1000μmの焼結材ではゼーベック係数の低下と電気抵抗率の著しい増大を生じた。
Figure 0005655201
Figure 0005655201
表6及び表7の結果では、出力因子P.F.は分級サイズが125〜250μmのA-15及びA-20で最大の2.0,4.2の値となり、また分級サイズが400μmよりも小さいサイズのA-12〜A-16,A-17〜A-21で従来の粉砕処理した材料と有意差を得ている。一方分級サイズが400μmを超えたC-6,C-7及びC-9,C-10では、その値は従来の粉砕処理した材料との有意差が得られていない。
以上のことから粉末のサイズとしては400μmの網目を通過可能な、短軸が400μm未満であることが望ましいこと、また250μm未満であることがより望ましいことが分る。
表8及び表9は、最大粒径を調整した粉末の焼結材についての各種特性の測定結果を示している。
これら表8,表9において、最大粒径を調整した粉末の焼結材に関しては、最大粒径が250μmを超える場合、最大粒径が大きいほどかさ密度は低下し、電気抵抗率が上昇している。
一方、最大粒径が250μm以下では粒径が小さい程、電気抵抗率が上昇する傾向となる。
Figure 0005655201
Figure 0005655201
表8の結果において、P.F.の最大値はA-1,A-23の1.9であり、このA-23の体積平均粒径d50は67.5である。
P.F.値はこれよりもd50が小さくなるのに連れて減少する傾向で、d50が21.6のC-5ではP.F.値は従来の粉砕処理した材料の出力因子との誤差範囲を脱していない。
但しd50が25μm以上では、従来の粉砕処理した材料の出力因子を1.34倍以上、上回っており、d50は25μm以上であることが望ましい。
体積平均粒径d50のより望ましい値は45μm以上、更に望ましい値は60μm以上であり、d50を45μm以上、60μm以上とすることでP.F.値の値が効果的に高くなることが、表8,表9の結果から見て取れる。
次に分級サイズの上限を250μmとして、分級サイズの下限を変えたところ(表10,表11参照)、分級サイズの下限が高いほどゼーベック係数の増加を示したが、大きな特性の変化は認められなかった。
Figure 0005655201
Figure 0005655201
電気抵抗率は粒界や旧粉末粒界(粉末の界面)、不純物の存在およびかさ密度の低下により増大する。粒径が小さい粉末の焼結体では粒界や粉末界面、不純物濃度、粒径が大きい粉末ではかさ密度の低下が電気抵抗率の増大の原因と考えられる。
ゼーベック係数は材料の成分に依存するが、粒径が小さいと表面の不純物の影響で、粒径が大きいと粒内の成分の濃度むらにより粉末の成分が変化する。これらがゼーベック係数の低下の原因と考えられる。
以上のことから熱電特性に関して粉末の適正な最大粒径が存在し、従って粉末の最大粒径は分級により制限することが望ましいが、最小粒径については、最小粒径のものがあまり多いのは望ましくはないが多少存在していても良く、特別な制限は特に要しないと考えられる。要するに粒径に関しては平均体積粒径d50が高いことが第一義的に重要であると考えられる。
<検討VI>(アスペクト比の検討)
A.準備
上記125〜250μmに分級した粉末の一部に、分級により採取した板状粉末(400μmの網目を通過したもの)を粉末全体基準で25%,35%,50%(質量%)の割合で混合した。板状粉末のアスペクト比は5超、長さは20mm以下であった。
また、粉末は内径φ10mmの図1のカーボン型10を有する通電焼結装置11を用いて通電焼結した。焼結は温度1100℃、圧力40MPa、焼結時間3分、真空雰囲気中の条件とした。
焼結体から1.5mm×2mm×10mm程度の棒状の試料を切出し、343K大気中にて試料の両端に1〜5℃だけ温度差ΔTを与えたときの電圧Vを5点測定して、そのときのΔTとVを最小二乗法によりV=aΔT+b(a,bは定数)で示したときのaの値をゼーベック係数とした。また同時に両端に電流を流したときの試料中の電圧を測定することで電気抵抗を測定し、電圧測定端子間の距離と試料の断面積から電気抵抗率を算出した。
結果が表12に示してある。
Figure 0005655201
B.結果
C-13、C-15のようにアスペクト比が5より大きな板状粉末を50%混入した粉末ではゼーベック係数が低下し、電気抵抗率が増加するため出力因子P.F.は低下する。
これは、アスペクト比の大きな板状粉末は体積に対する表面積の割合が増加するために不純物の付着が多く、焼結体の旧粉末粒界(粉末の界面)が増え、さらに緻密化を妨げるため電気抵抗率が増加したと考えられる。
ゼーベック係数の低下も、表面の不純物の影響で生じたものと考えられる。
この試験結果では、板状粉末の混入量が望ましい30%未満であればP.F.値は従来の粉砕処理材料の1.34倍以上である一方、30%以上になると従来の粉砕処理材料の1.34倍以下である。即ちアスペクト比が5以下の粉末を全粉末中に70%(質量%)以上含むようにしておくことで良好な結果が得られる。

Claims (6)

  1. 下記式(1)で表されるFeVAl基ホイスラー化合物が得られるように配合された原料を1torr以下で真空引きした後にAr雰囲気中で溶解する溶解工程と、溶解により得た溶湯を、噴霧ガス圧20〜40kgf/cm 、噴霧ガス流量10〜100L/分、注湯ノズル口径2.5〜6mmの条件でガスアトマイズ法により急冷凝固させて粉末化する粉末化工程と、を経て不可避的不純物元素としてのO,Nが、O≦0.1質量%,N≦0.05質量%に規制されて成る熱電材料の粉末を製造することを特徴とするホイスラー型鉄系熱電材料粉末の製造方法。
    (Fe1-aM12−x−y(V1−bM21+x(Al1−cM31+y・・・式(1)
    但し
    M1は3d,4d,5d遷移金属元素(Feを除く)からなる群から選ばれた1種以上の元素、
    M2は3d,4d,5d遷移金属元素(Vを除く)からなる群から選ばれた1種以上の元素、
    M3はIIIb(Alを除く),IVb,Vb族元素からなる群から選ばれた1種以上の元素で、
    a≦0.2
    b≦0.4
    c≦0.4
    |x|≦0.2
    |y|≦0.2
    である。
  2. アスペクト比:(長軸)/(短軸)が5以下の粉末を70質量%以上含む請求項1に記載のホイスラー型鉄系熱電材料粉末の製造方法。
  3. 短軸が400μm未満である請求項1,2の何れかに記載のホイスラー型鉄系熱電材料粉末の製造方法。
  4. 粉末の体積平均粒径が25μm以上である請求項3に記載のホイスラー型鉄系熱電材料粉末の製造方法。
  5. 前記M1がCo,Ni,Cuからなる群から選ばれた1種以上の元素、
    前記M2がTi,Zr,Ta,Cr,Mn,Mo,Wからなる群から選ばれた1種以上の元素、
    前記M3がSi,Ga,Ge,Sn,Sbからなる群から選ばれた1種以上の元素、
    である請求項1〜4の何れかに記載のホイスラー型鉄系熱電材料粉末の製造方法。
  6. 請求項1〜の何れかに記載の粉末を粉砕処理することなくホイスラー構造を保持する1140℃以下の温度で直接焼結することを特徴とするホイスラー型鉄系熱電材料の製造方法。
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