JP6816384B2 - ホイスラー型鉄系熱電材料 - Google Patents

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Description

この発明は、FeVAl基ホイスラー化合物を母材とするホイスラー型鉄系熱電材料に関する。
熱電材料(熱電変換材料)は熱エネルギーを電気エネルギーに(若しくはその逆に)変換する機能を持った材料で、この熱電材料に温度差を与えると高温部と低温部との間にゼーべック効果にて電位差(電圧)を生ぜしめる。従って熱電材料に温度差を与えることで電力を得ることができる。
熱電材料を用いた熱電発電では、火力発電所でタービンを回して発電するのと異なって直接熱エネルギーを電気エネルギーに変換することができ、工場や自動車等から個々に出る廃熱を有効利用して発電することができ、またこの熱電発電では発電機等の可動部分を要しないので騒音や振動を生ぜしめず、メンテナンスフリーであり、更に200℃以下の低い温度でも発電が可能である等の利点を有することから将来への期待が高まっている。
従来、熱電材料にはBi−Te系等の化合物半導体,Co系酸化物セラミックス,Co−Sb系等のスクッテルダイト化合物,Zr−Ni−Sn等のハーフホイスラー化合物,FeVAl等のホイスラー化合物(FeVAl基合金)等が知られており、その熱電物性はゼーベック係数S(V/K),電気伝導率σ(Ω−1−1),熱伝導率κ(W/mK)からなる性能指数Z=Sσ/κ、又はこれに絶対温度T(K)を乗じた無次元の性能指数ZT=(Sσ/κ)・Tで表される。これら性能指数Z又はZTが大きいほどエネルギー変換効率の高い有利な材料となる。
ここでゼーべック係数Sは、単位温度差(1Kの温度差)当り発生する熱起電力の大きさを表す。ゼーべック係数は電子がキャリアの場合には負(n型)、正孔がキャリアの場合には正(p型)となる。p型とn型の熱電材料の両端部を導電材料で繋げると熱電素子となる。p型とn型の熱電材料の組合せでは、ゼーべック係数の符号が逆となるので発生する起電力は大きくなる。
現在、300℃程度までの熱電材料ではBi−Te系熱電材料が優れているが、このBi−Te系熱電材料の場合、Teが希少且つ高価な元素であり、製造コストが高くなる上に有害元素であるため、限られた部位にしか使用されていないのが実情である。
そこでBi−Te系熱電材料の代替として、有害且つ希少元素を含まず、資源的な制約の少ない鉄系熱電材料として、比較的安価な元素で構成されたFeVAl基ホイスラー化合物が注目されている。
FeVAlは、Fe,V,Alを他の元素で部分置換することで価電子濃度を制御することができる。FeVAlは化学式当りの総価電子数が24で1原子当りの平均価電子数、つまり価電子濃度は6であるが、Fe,V,Alを他の元素で部分置換することで価電子濃度を6よりも大きくし(この場合にはn型の熱電材料となる)、或いは逆に6よりも小さくする(この場合にはp型の熱電材料となる)ことができる。
また置換する元素を異ならせたり、置換量を変えることで価電子濃度を種々に変化させ制御することができる。
FeVAl基ホイスラー化合物は、無毒且つ資源豊富な原料で作製可能な反面、Bi−Te系化合物等に比べて熱電性能が低い問題を有している。例えば、Bi−Te系化合物の性能指数ZTは1.0前後であるのに対し、FeVAl基ホイスラー化合物の性能指数ZTは0.05程度であり、熱電発電システムとして考えた場合、装置の大型化が避けられない。
FeVAl基ホイスラー化合物において、性能指数ZTを大きくするにはゼーべック係数Sを大きくするか、電気抵抗率ρ(電気伝導率σの逆数)及び熱伝導率κを小さくする必要がある。しかしながらゼーべック係数SはFe,V,Alの組成でほぼ決まってしまい大きく向上させることは難しい。また電気抵抗率ρと熱伝導率κは密接な関係を持っており、電気抵抗率ρを下げれば熱伝導率κは上がり、電気抵抗率ρを上げれば熱伝導率κは下がる関係にあるため、上記性能指数ZTを示す式の分母の値、(電気抵抗率ρ)×(熱伝導率κ)を効果的に下げることが困難であった。
尚、本発明に対する先行技術として、下記特許文献1には、FeVAl基ホイスラー化合物の熱伝導率が高いことの問題点を解決することを狙いとして、Feサイトに格子欠陥(空孔)を導入すると同時に何れか1以上のサイトで元素置換を行い、また置換元素の種類及び量を最適化することで、出力因子を高く維持したまま熱伝導率を低下させる点が開示されている。しかしながら、この特許文献1において、Cu添加されたFeVAl基ホイスラー化合物についての具体的な実施例は開示されていない。
一方、下記特許文献2及び特許文献3には、FeVAl基ホイスラー化合物を構成するFeの一部をCuで置換した熱電材料が開示されている。しかしながらこれら特許文献2,3に記載のものは、Feの一部を置換する目的でCuを添加したものであり、その添加量は本発明が規定するものに比べて少なく、Cu相の析出は生じない。またこれら特許文献には、析出物によって熱伝導率を低下させる点の記載もされておらず、本発明とは異なるものである。
特開2008−21982号公報 特開2011−233797号公報 特開2013−102002号公報
本発明は以上のような事情を背景とし、電気抵抗率ρの上昇を抑えて熱伝導率κを低下させることで電熱特性を向上させたホイスラー型鉄系熱電材料を提供することを目的としてなされたものである。
而して請求項1は、下記式(1)で表されるFe2VAl基ホイスラー化合物からなる結晶粒を有する母材と、前記結晶粒内に分散したCu相と、からなることを特徴とする。
(Fe1-aM1a2-x-y(V1-bM2b1+x(Al1-cM3c1+y・・・式(1)
但し、M1はCoまたはNiからなる群から選ばれた1種以上の元素、M2はTi、Zr、Cr、Mn、Mo、Wからなる群から選ばれた1種以上の元素、M3はSi、Ge、Sn、Sbからなる群から選ばれた1種以上の元素で、a≦0.2,b≦0.4,c≦0.4,|x|≦0.2,|y|≦0.2である(ただし、a,b,cのうち1つは0より大きい)
請求項2のものは、請求項1において、前記Cu相の平均析出間隔が27〜424nmであることを特徴とする。ここで平均析出間隔とは、選択したCu相についての最近接にあるCu相までの間隔(Cu相の中心同士の距離)を測定し、その値を平均して求めたものである。
請求項3のものは、請求項1,2の何れかにおいて、Cuの含有量が1.0〜10質量%であることを特徴とする。

一般に熱伝導率κは、電子移動に由来する熱伝導率κeと格子振動の伝播に由来する熱伝導率κphの和で表される。即ち、熱伝導率κ=κe+κphである。
先に述べた電気抵抗率ρと密接に結び付いているのは、このうち電子移動に由来する熱伝導率κeである。従って、電気抵抗率ρの上昇を抑えて熱伝導率κを低下させるには、格子振動の伝播に由来する熱伝導率κphを下げることが効果的であるとの着想の下、本発明者らは、格子振動の伝播を阻害するのに有効な手段を調査するなかで、FeVAl基ホイスラー化合物からなる母材の結晶粒内にCu相を分散析出させることで、熱伝導率κを低下させることが可能であることを突き止めた。本発明はこのような知見に基づいてなされたものである。
即ち本発明のホイスラー型鉄系熱電材料は、FeVAl基ホイスラー化合物からなる結晶粒を有する母材と、結晶粒内に分散したCu相と、からなるものである。本発明によれば、電気抵抗率ρの上昇を抑えて熱伝導率κを低下させることができる。この効果は、結晶粒内に分散析出したCu相が、格子振動の伝播を効果的に阻害したことによるものと推測される。そして本発明によれば、従来のホイスラー型鉄系熱電材料に対して、熱電特性としての性能指数ZTを向上させることができる。
本発明では、FeVAl基ホイスラー化合物(合金)として以下を対象とする。
(Fe1-aM12−x−y(V1−bM21+x(Al1−cM31+y・・・式(1)
ここでM1はFeを置換する元素で、3d,4d,5d遷移金属元素(Feを除く)から成る群から選ばれた1種以上の元素であり、式中a≦0.2である。
M2はVを置換する元素で、3d,4d,5d遷移金属元素(Vを除く)の群から選ばれた1種以上の元素であり、式中b≦0.4である。
M3はAlを置換する元素で、IIIb(Alを除く),IVb(Cを除く),Vb(Nを除く)族元素から成る群から選ばれた1種以上の元素であり、式中c≦0.4である。
これらの元素を置換して下記の式(2)で示される価電子濃度を制御することで、ホイスラー化合物の熱電材料のゼーベック係数を制御することができる。
(価電子濃度)=Σ[(元素のモル分率)×(価電子数)]・・・式(2)
式(1)中添え字のxおよびyは化学量論組成からのずれを示す。ホイスラー化合物はある程度化学量論組成から外れてもその構造を保つことができ、高いゼーベック係数を保つことができる。
本発明に係る熱電材料では、|x|および|y|を増やすことにより材料に軟化および延性を持たせることができ、材料の焼結および成形を容易にすることができる。
但し|x|および|y|が高すぎるとホイスラー構造が不安定になり、ゼーベック係数が低下するので|x|,|y|は何れも0.2以下とする。
元素置換によりゼーベック係数の絶対値を大きくできること、電気抵抗率、熱伝導度を抑制できること、特に重元素を添加することで熱伝導率を著しく抑制できることは知られている(例えば特開平2004−253618に開示)。このため原料コストのかからない元素を添加することは、熱電特性の向上に有効である。
FeVAlのFeサイトに置換する元素M1としては、上記に示した元素の内Co,Ni,Cuからなる群から選ばれた1以上の元素が好ましい。
これら元素Co,Ni,Cuは何れも周期表でFeよりも右側にある元素で、Feサイトの一部をこれら元素で置換すると合金全体の総価電指数が増加し、キャリアに占める電子の割合が増加してゼーペック係数は負の値を示すようになる。
これらの元素は何れも原材料コストをさほど上げることなく効果的にゼーベック係数を増大させあるいは電気抵抗率若しくは熱伝導率を減少させる作用がある。
Vサイトに置換する元素M2としては、上記に示した元素の内Ti,Zr,Ta,Cr,Mn,Mo,Wからなる群から選ばれた何れか1以上の元素であることが望ましい。
このうちTiとZrは周期表でVよりも左側にある元素で、これらでVを部分置換すると総価電子数は減少し、キャリアに占める正孔の割合が増加してゼーベック係数は正の値を示すようになる。またCr,Mn,Mo,WはVよりも右側にある元素で、置換によりゼーべック係数は負の値を示すようになる。
これら置換元素のうちTi,Cr,Mnはいずれも原材料コストを下げ、かつゼーベック係数を増大させあるいは電気抵抗率若しくは熱伝導率を減少させる作用がある。
また、それ以外の元素は原材料コストをさほど上げることなく効果的にゼーベック係数を増大させあるいは電気抵抗率若しくは熱伝導率を減少させる作用がある。
Alに置換する元素M3としては、上記に示した元素の内Si,Ga,Ge,Sn,Sbからなる群から選ばれた1以上の元素が望ましい。
このうちSi,Ge,Sn,Sbは電子の割合が増加してゼーベック係数は負の値を示すようになる。
Siは原材料コストを下げ、かつゼーベック係数を増大させあるいは電気抵抗率および熱伝導率を減少させる作用がある。
また、それ以外の元素は原材料コストをさほど上げることなく効果的にゼーベック係数を増大させあるいは電気抵抗率若しくは熱伝導率を減少させる作用がある。
FeVAlの化学量論組成では、(価電子濃度)=[(Feのモル分率=0.5)×(Feの価電子数8)+(Vのモル分率=0.25)×(Vの価電子数3)+(Alのモル分率=0.25)×(Alの価電子数5)]=6であり、p型とn型の境界であるためゼーベック係数は低い。
高い熱電特性を得るには価電子濃度が6からわずかに大きい、若しくは小さい必要があるため、Feを置換する元素の量a、Vを置換する元素の量b、Alを置換する元素の量cのうち、少なくとも1つ以上は0より大きいことが好ましく、より好ましくは0.004以上である。
但し価電子濃度が6から大きくずれるとゼーベック係数は低下するため、置換最大量はaが0.2以下、bおよびcが0.4以下であることが必要である。
上述のように本発明では、ホイスラー化合物からなる母材の結晶粒内にCu相を分散析出させることで、熱伝導率κを低下させることが可能であるが、その熱伝導率低下の効果は、結晶粒内に析出するCu相の平均析出間隔によっても左右されることが確認された。本発明者らの研究によれば、Cu相の平均析出間隔は10〜500nmの範囲内とすることが望ましい(請求項2)。更に好ましい析出間隔は10〜150nmである。
また本発明では、Cuの含有量を0.5〜10質量%とすることが望ましい(請求項3)。FeVAl基ホイスラー化合物においては、Feの一部をCuで置換する場合も考えられるが、Cuの固溶限界は0.5質量%よりも小さいため、Cuの含有量を0.5質量%以上とすれば、Feの一部をCuで置換する系であっても、またCuで置換しない系であっても、確実にCu相を析出させることができる。一方、Cuの含有量が10質量%を超えると粒界に粗大なCu相が析出して、熱伝導率低下の効果が薄れるため、Cu含有量の上限は10%に規定するのが望ましい。
以上のような本発明によれば、電気抵抗率ρの上昇を抑えて熱伝導率κを低下させることで、熱電特性を向上させたホイスラー型鉄系熱電材料を提供することができる。
本発明のホイスラー型鉄系熱電材料の製造工程のフローを示した図である。 通電焼結装置を示した図である。 Cu相の平均析出間隔の測定方法を示した図である。 実施例2のTEM写真を示した図である。
次に本発明の一実施形態のホイスラー型鉄系熱電材料について具体的に説明する。
本実施形態のホイスラー型鉄系熱電材料の母材は、上記式(1)で表される組成を有するFeVAl基ホイスラー化合物からなるものであるが、不可避的な不純物が含まれていても良い。
また、FeVAl基ホイスラー化合物からなる母材内に、詳しくは、その結晶粒内に分散析出するCu相は、Cuの単相よりなるものであるが、Cu相中には不可避的な不純物が含まれていても良い。Cu相の形状は、特に限定されるものではなく、その外形が比較的均一に整っていても良いし、その外形が不揃いであっても良い。
本実施形態のホイスラー型鉄系熱電材料は、例えば、図1(A)、(B)で示す製造工程を経て製造することができる。
同図(A)で示す製造方法では、溶解工程10と、インゴット作製工程12と、熱処理工程14と、切断・切り出し工程16とが設けられている。
溶解工程10は、上述した熱電材料が得られるように配合された原料を溶解する工程である。使用する原料は単一の元素のみ含むものであっても良く、あるいは2種以上の元素を含むものであっても良い。原料の溶解方法は、特に限定されるものではなく、アーク炉、高周波誘導炉、加熱炉などの溶解手段を用いることができる。溶解に際しては、酸化や不純物元素の増加を防ぐため真空または不活性雰囲気下で、溶湯が直接大気に触れないようにするのが望ましい。
インゴット作製工程12は、上記溶解工程10で得られた溶湯を凝固させてインゴットを作製する工程である。
熱処理工程14は、凝固したFeVAl基ホイスラー化合物のインゴットを加熱処理して、Cu相を分散析出させる工程である。
熱処理工程14では、温度:900〜1300℃で48時間加熱する均質化処理を行なった後、炉冷により24時間かけて室温まで冷却する。この熱処理工程14では、上記均質化処理により一旦母材内に固溶させたCuを、炉冷の過程で結晶粒界内に微細に分散析出させることができる。
その後、切断・切り出し工程16にて、インゴットを所定の形状に機械加工することで、所定形状の熱電材料を得ることができる。
一方、図1(B)で示す例によれば、アトマイズ法を用いて粉末を作製し、その後、焼結により熱電材料を得ることができる。
図1(B)において、粉末作製工程18は、アトマイズ法を用いて溶湯から粉末を作製する工程である。ここでは、溶湯をノズルから流出させて溶湯流にガス噴霧、例えば窒素,アルゴン,ヘリウムの何れか1種若しくは2種以上による高圧ガス噴射を行い、溶湯を粉末化するガスアトマイズ法、或いは溶湯に対して水流ジェットを作用させて粉末化する水アトマイズ法その他の方法を用いることができる。
また、得られた粉末を更に小径化したい場合には、適当な粉砕手段による粉砕工程を追加しても良い。また、必要に応じて、得られた合金粉末を分級処理して適当な粒度に調整する工程などを追加しても良い。
次に、図1(A)の例と同様に、熱処理工程14にて、FeVAl基ホイスラー化合物の粉末を加熱処理して、Cu相を分散析出させる。
焼結工程20は、熱処理された粉体を焼結させ、所定形状の焼結体を得る工程である。
焼結方法は種々の方法を用いることができる。具体的には常圧焼結法、ホットプレス、HIP、放電プラズマ焼結法(SPS)などがある。これらの中でも、放電プラズマ焼結法は、短時間で緻密な焼結体を得ることができる。
尚、焼結条件は、FeVAl基ホイスラー化合物の組成や、使用する焼結方法に応じて適宜選択することができる。
次に本発明の実施例を以下に説明する。
下記表1、表2に示す組成になるように秤量した原料を、1torr以下で真空引きした後に0.5気圧の減圧Ar雰囲気中、耐火物坩堝内で高周波誘導加熱にて溶解した後に、タンディッシュを通じてArガス噴霧中に注ぎ急冷凝固してアトマイズ粉末を得た。
粉末を得るためのアトマイズ条件として、噴霧ガス圧を20〜40kgf/cm,噴霧ガス流量10〜100L/分,注湯ノズル口径2.5〜6mmとした。
またこの粉末のうち250μm未満(250μmアンダー)の粉末、つまり網目250μmを通過した粉末について、温度1000℃、48時間の条件で加熱し、その後24時間かけて室温になるまで炉冷を行なった。
その後、熱処理が施された粉末を、図2に示す内径がφ10mmのカーボン型30を有する通電焼結装置31を用いて通電焼結(SPS:放電プラズマ焼結)した。
図2において32はダイス型、34はその内部に挿入されたパンチ型、36はパンチ電極で、この通電焼結装置31では一対のパンチ型34をダイス型32内に挿入して粉末25を加圧した状態で、パンチ電極36間にパルス電流を流し、粉末25を短時間焼結して、試験用の熱電材料(焼結体)を得た。
ここで焼結は温度1100℃,圧力40MPa,焼結時間3分,真空雰囲気中の条件で行った。
<焼結体の組織観察>
得られた焼結体を薄片状に切り出し、その断面組織をTEMにて観察した。観察したTEM像からランダムに選択した20箇所の析出相(Cu相)について、最近接にある析出相までの間隔(図3に示すL)を測定し、その値の平均値を平均析出間隔として求めた。ここで析出相同士の間隔Lとは、図3で示す、析出相40の中心同士の距離である。尚、析出相40が、長軸40aと、短軸40b(短軸40bは、長軸40aと直交する方向で、析出相の幅が最も長い位置に配される)と、を有している場合には、長軸40aと短軸40bの交点を析出相40の中心とする。
また上記20箇所の析出相について、析出相と同じ面積の円相当径を求め、その平均値を析出相の平均粒径とした。これらの結果が下記表1、表2に示してある。
<ゼーベック係数S及び電気抵抗率ρの測定>
焼結体から1.5mm×2mm×10mm程度の棒状の試料を切出し、大気雰囲気下、温度423K(150℃)で、試料の両端に1〜5℃だけ温度差ΔTを与えたときの電圧Vを5点測定して、そのときのΔTとVを最小二乗法によりV=aΔT+b(a,bは定数)で示したときのaの値をゼーベック係数Sとした。
また同時に両端に電流を流したときの試料中の電圧を測定することで電気抵抗を測定し、電圧測定端子間の距離と試料の断面積とから電気抵抗率ρを算出した。
<熱伝導率κの測定>
焼結体からΦ10mm×2mmの円板状の試験片を作製し、JIS H 7801に規定されるレーザーフラッシュ法により423K(150℃)で試験片の熱伝導率κ(W/m/K)を測定した。即ち、レーザー発振器から発射したレーザー光を試験片に対して直角に照射し、そのとき試験片の背面から放射される熱量を赤外線検出器で測定して、比熱と熱拡散率を求め、最終的に熱伝導率(=比熱×熱拡散率×密度)を算出した。
<性能指数ZTの算出>
上記のようにして得られたゼーベック係数S、電気抵抗率ρ、熱伝導率κ及び測定時の温度T(本例では423K)の値を用いて、ZT=(S/ρκ)・Tの式で表される性能指数ZTを算出した。その測定結果が表1、表2に示してある。
表1は、Vの一部をTiで置換したp型のホイスラー化合物Fe(V0.9Ti0.1)Al(比較例1)をベース組成として、Cu添加量を変化させた例を示している。
Cu添加量が0.2質量%の比較例2では、Cu相の析出は認められず、比較例1に対する熱伝導率κの低下率は2%程度と微差である。
一方、本発明にて規定するCu量(0.5〜10質量%)添加された実施例1〜3については、Cu相の析出が認められ、比較例1に対し、熱伝導率κは15%(実施例1)〜47%(実施例3)低下している。また、熱伝導率κの低下とともに性能指数ZTの向上が認められる。実施例1〜3を比較すると、Cu相の平均析出間隔が小さくなるほど、熱伝導率κが低下する傾向が認められ、特に平均析出間隔が150nm以下となった実施例2,3において、大きな熱伝導率低下効果が得られている。
因みに、図4はCu相の分散析出が認められる実施例2のTEM画像である。同図において、白若しくは灰色で点在しているのがCu相である。
表2は、Alの一部をSiで置換したn型のホイスラー化合物FeV(Al0.9Si0.1)(比較例3)をベース組成として、Cu添加量を変化させた例を示している。
Cu添加量が0.2質量%の比較例4では、Cu相の析出は認められず、比較例3に対する熱伝導率κの低下率は2%程度と微差である。
一方、本発明にて規定するCu量(0.5〜10質量%)添加された実施例4〜6については、Cu相の析出が認められ、比較例3に対し、熱伝導率κは19%(実施例4)〜46%(実施例6)低下している。また熱伝導率κの低下とともに性能指数ZTの向上が認められる。実施例4〜6を比較すると、Cu相の平均析出間隔が小さくなるほど、熱伝導率κが低下する傾向が認められ、特に平均析出間隔が150nm以下となった実施例5,6において、大きな熱伝導率低下効果が得られている。
以上本発明の実施例を詳述したがこれはあくまで一例示であり、本発明はその他様々な変更を加えた態様で実施可能である。

Claims (3)

  1. 下記式(1)で表されるFe2VAl基ホイスラー化合物からなる結晶粒を有する母材と、
    前記結晶粒内に分散したCu相と、からなるホイスラー型鉄系熱電材料。
    (Fe1-aM1a2-x-y(V1-bM2b1+x(Al1-cM3c1+y・・・式(1)
    但し
    M1はCoまたはNiからなる群から選ばれた1種以上の元素、
    M2はTi、Zr、Cr、Mn、Mo、Wからなる群から選ばれた1種以上の元素、
    M3はSi、Ge、Sn、Sbからなる群から選ばれた1種以上の元素で、
    a≦0.2
    b≦0.4
    c≦0.4
    |x|≦0.2
    |y|≦0.2
    である(ただし、a,b,cのうち1つは0より大きい)
  2. 前記Cu相の平均析出間隔が27〜424nmであることを特徴とする請求項1に記載のホイスラー型鉄系熱電材料。
  3. Cuの含有量が1.0〜10質量%であることを特徴とする請求項1,2の何れかに記載のホイスラー型鉄系熱電材料。
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