JP2019218592A - 珪化物系合金材料及びそれを用いた素子 - Google Patents

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【課題】環境負荷低減が可能であり、かつ高い熱電性能を得ることが可能な珪化物系合金材料及びそれを用いた素子を開発することを目的とする。【解決手段】シリコンとルテニウムを主成分とし、構成する結晶粒径の平均が50μm以下である珪化物系合金材料を提供する。より好ましくは、構成する結晶粒径の平均が20μm以下1nm以上であり、さらに好ましくは構成する結晶粒径の平均が1μm以下3nm以上である珪化物系合金材料を提供する。【選択図】 なし

Description

本発明は、珪化物系合金材料及びそれを用いた素子に関するものである。
再生可能エネルギーの候補として、排熱を利用した熱電発電が古くから知られている。現在、200℃以下の排熱に関してはBiTeが実用化されているが、Bi−Te系材料はBi及びTeはともに高価であり、またTeは極めて毒性が強いという問題がある。このため、熱電変換素子として、低発電コスト化、環境負荷低減できるものが求められている。
また、ゴミ焼却場や自動車で発生する排熱は、前述の温度を上回る200℃〜600℃程度の温度域にある。これらの温度領域で使用される材料は、SbやAs等の毒性の強い元素を含むため、環境負荷が大きなものとなっている。
環境負荷が小さく、高性能の中温用熱電材料として金属とシリコンを化合させた合金材料が注目されている。特に、MgSiなどが知られており(例えば、特許文献1参照)、また同族元素を用いたp型の熱電材料としてMgSiとCaMgSiの混合物が提案されているが(例えば、特許文献2参照)、400℃におけるゼーベック係数は70μV/K以下と小さく、実用に耐えうる熱電特性を得られていない。
従って、低環境負荷及び低コストであり、かつ200℃を超える温度範囲を含む温度域において、高い熱電変換効率を得られる熱電変換材料が求められている。
非特許文献1、2には、高温領域において高い電気伝導度とゼーベック係数を有するシリコンとルテニウムの合金が報告されているが、FZ法で作製された単結晶試料に関する開示であり、熱伝導率が5.0W/K・mとなっており、熱電変換における性能の指標となる性能指数Zと絶対温度Tの値は低い数字にとどまっていた。ここでTは絶対温度、性能指数Zは以下の数式1で定義される。
Figure 2019218592
Sはゼーベック係数(V/K)、σは電気伝導率であり電気抵抗(Ω・m)の逆数である。また、κは熱伝導率(W/K・m)である。
本発明者らは、結晶粒径サイズを制御したシリコンとルテニウムを主成分とする珪化物系合金材料とすることで熱伝導率を抑制し、熱電性能を高めることができることを見出した。
特開2002−368291号公報 特開2008−147261号公報
L.Ivanenko et al. 22nd International Conference on Thermoelectrics 2003 157−160 L.Ivanenko et al.Microelectronic Engineering 70(2003) 209−214
本発明は、環境負荷低減が可能であり、かつ高い熱電性能を得ることが可能な珪化物系合金材料及びそれを用いた素子を開発することを目的とする。
本発明に係る珪化物系合金材料の実施形態としては、以下の特徴を有する。
すなわち
(1)シリコンとルテニウムを主成分とし、構成する結晶粒径の平均が50μm以下である珪化物系合金材料。
(2)シリコンとルテニウムを主成分とし、構成する結晶粒径の平均が20μm以下1nm以上である珪化物系合金材料。
(3)シリコンとルテニウムを主成分とし、構成する結晶粒径の平均が1μm以下1nm以上である珪化物系合金材料。
(4)シリコンとルテニウムを主成分とし、構成する結晶粒径の平均が500nm以下5nm以上である珪化物系合金材料。
(5)シリコンとルテニウムを主成分とする珪化物系合金材料であり、当該合金材料を構成する元素の原子比が、シリコン、ルテニウムの含有量をそれぞれSi、Ruとしたときに
50atm%≦Si/(Ru+Si)<70atm%
30atm%<Ru/(Ru+Si)≦50atm%
である(1)〜(4)に記載の珪化物系合金材料。
(6)(1)〜(5)に記載の珪化物系合金材料を用いた素子。
(7)(6)に記載の珪化物系合金材料を用いた素子からなる熱電変換素子。
以下に本発明について詳細に述べる。
本発明はシリコンとルテニウムを主成分とし、構成する結晶粒径の平均は50μm以下である。ただし、ここで主成分とは当該材料の80at%以上を占める成分を指す。
また、本発明の結晶粒径の平均は50μm以下である。これは、熱電変換素子の性能が低くとどまっている理由の大部分が、熱伝導率の高さに起因するためであり、平均結晶粒径を小さく抑えることで熱伝導率を低下させることが可能となる。しかしながら、効率的に熱伝導を抑制するのに適した平均結晶粒径は、物質の種類により異なる。これは熱を伝達するフォノンが、物質の種類によって異なる平均自由行程を有するためである。加えて、平均粒径が1nmを下回ると電気伝導が低くなる可能性が高いため熱電変換素子の性能を悪化させる問題も発生する。従って、本発明では、平均結晶粒径は好ましくは50μm以下1nm以上であり、さらに好ましくは20μm以下3nm以上であり、1μm以下3nm以上がより好ましく、平均結晶粒径400nm以下5nm以上がより一層好ましい。最も好ましくは、平均結晶粒径100nm以下5nm以上である。
ここで述べている平均結晶粒径とは、特定の領域において観測された結晶粒の個数に対して、特定のサイズを有する結晶粒の個数を数え上げて平均値を算出した数値を意味し、以下の数式2で表すことができる。
Figure 2019218592
また、熱伝導率の特性上、上記平均結晶粒径に加えて、面積加重平均による平均結晶粒径の数値も重要となる。面積加重平均による平均結晶粒径とは、測定領域に存在する結晶の粒径に、そのサイズの結晶粒群が占める面積を乗じて、測定面積で除した数値であり、以下の数式3で表される。
Figure 2019218592
平均結晶粒径と面積加重平均結晶粒径のとの差は小さいことが好ましい。これは、微細な結晶粒から構成される合金の組織中に粗大な結晶粒が混在していると、熱が伝導する際に、粗大な結晶粒を経由して伝熱してしまうためである。従って、平均結晶粒径と面積加重平均結晶粒径との差は、平均結晶粒径と面積加重平均結晶粒径の比をR(=面積加重平均結晶粒径/平均結晶粒径)としたとき、Rの値が10以下であることが好ましく、5以下であることがさらに好ましい。最も好ましくは2以下である。
また、シリコンとルテニウムの組成範囲は、シリコン、ルテニウムの含有量をそれぞれSi、Ruとしたときに以下の範囲であることが好ましい。
50atm%≦Si/(Ru+Si)<70atm%
30atm%<Ru/(Ru+Si)≦50atm%
これは、シリコンとルテニウムの珪化物系合金材料が上記の範囲内で、熱電変換性能に優れた半導体結晶相を発現するためであり、この組成範囲を外れると、珪化物系合金材料の物性が金属的な結晶相を示してしまい、熱電変換性能が著しく悪化する。
上記の組成のなかで、好ましい組成範囲としては
55atm%≦Si/(Ru+Si)<65atm%
35atm%<Ru/(Ru+Si)≦45atm%
である。さらに好ましくは
64atm%≦Si/(Ru+Si)<70atm%
30atm%<Ru/(Ru+Si)≦36atm%
または、
57atm%≦Si/(Ru+Si)<63atm%
37atm%<Ru/(Ru+Si)≦42atm%
である。最も好ましくは、
66atm%≦Si/(Ru+Si)<70atm%
30atm%<Ru/(Ru+Si)≦34atm%
または、
59atm%≦Si/(Ru+Si)<63atm%
37atm%<Ru/(Ru+Si)≦41atm%
である。
ただし、不可避的な微量の不純物を含んでいてもよい。このような不純物としては、Si、Ru以外の金属元素およびそれらの酸化物などの化合物が挙げられる。
熱電変換素子は、p型、n型半導体を用いて作製される。従って、用いる半導体材料はp型、n型制御ができることが望ましい。本発明では、特定の元素をシリコンとルテニウムの合金に添加することでp型、n型の制御をすることが可能である。
次に、本発明の製造方法について説明する。ここでは製造方法の一例を示すが、必ずしもその方法による必要はない。
本発明の製造方法は、ルテニウム及びシリコンから合金を合成する工程と、場合に応じて前記合金を粉砕して粉末とする工程と、前記合金粉末を900℃〜1700℃でホットプレス処理する工程とを含んでなる。
まず、ルテニウムとシリコンを所定の比率で用意し、アーク溶解炉で事前に溶融させることでルテニウムシリサイドを合成する。これは、粉末中の不純物除去のためと後述する合金組織の微細化のためである。さらに溶解条件として、低い放電パワーで長時間溶融するよりも、高いパワーで短時間処理する事が好ましい。その電流量は、単位サンプル量当たり電流値で30A/g以上が好ましく、さらに好ましくは200A以上である。20A/g以下の電流値では電流量が不足し、ルテニウムを溶融できず、結果として均質な合金にすることが困難であり好ましくない。
上記の好ましい条件から得られた合金は、ルテニウムシリサイドの合金となっている。
次に、必要に応じて得られた合金材料を粉砕して粉末状とする。合金の合成後から含有酸素量を増加させないように、粉砕作業は不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。そうすることで粉末表面の酸化を防ぎ、含有酸素量を低く抑えることができるからである。さらに、粉砕の方法により、合金バルク体とした際の組織構造を制御することができる。粉砕および造粒の方法としては、乳鉢での粉砕、ボールミル、ジェットミル、ビーズミル、スプレードライ、ガスアトマイズなどの方法を利用することができる。このとき得られる粉末の一次粒径は可能な限り小さいものが好ましい。また、造粒した場合の造粒粉末の平均造粒粒径は特に限定されるものではないが、10〜100μm程度であることが、取扱性等を考慮するとより好ましい。
次に、合金粉末を焼結するが、焼結方法としては雰囲気制御炉、加圧焼成に加えて、パルス通電加圧焼結に代表されるECAS(Electric current activated sintering)などの焼結方法を用いることができる。以下にホットプレスでの一例を説明する。ホットプレス法は粉末を加圧しながら温度を与えることで焼結を進める装置であり、加熱時に一軸加圧を行なうことで焼成時の拡散を補助し、拡散係数が低い場合や、金属など粒子径が大きい場合など焼結しにくい材料を焼結できるようにする焼成法である。ホットプレス法により焼成を行なうことで従来よりも密度が向上し、5.5g/cm以上のバルク体を得ることが可能となる。
ホットプレス処理における焼成温度は900℃以上1800℃以下であり、好ましくは、900℃以上1650℃以下で焼成する。900℃より低い温度では焼結が進まず密度が成形体密度と同程度にしか向上しない。また、1800℃よりも高い温度にて焼成を行なうとRuSiが溶融し、合金がホットプレスの型と接着し、歩留まりが悪化する可能性がある。
焼成時の圧力は10MPa以上100MPa以下である事が好ましい。バルク体の密度を向上させ、一般的に用いられるカーボン製の金型でも使用に耐えうるからである。焼結の雰囲気は酸素を含まない窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気や真空中で行なう事が好ましい。
ホットプレス処理の焼成温度における保持時間は特に限定されるものではないが、10分以上であることが望ましく、保持時間が短いと内部まで均一に加熱できず多結晶体として保形が難しい。一方、保持時間は1時間以内であることが好ましい。保持時間の延長は粒径の増大を誘起し、結果的に熱伝導度の増大を招く可能性がある。
更に添加元素を入れている場合、添加元素部分が割れの起点となるために望む多結晶体を得ることがさらに困難となる。
本発明のバルク体は、所定の寸法に加工してもよい。加工方法は特に限定しないが、平面研削法、ロータリー研削法または円筒研削法等を用いることができる。これらの方法を用いることで熱電変換素子用途に適した形状に加工することができる。
本発明の珪化物系合金材料を用いることで、高効率な熱電変換素子を作製することができる。
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
(結晶粒径の確認方法)
EBSP付属電解放出形操作電子顕微鏡JSM−7100F(日本電子製)により測定した。
(組成の確認方法)
ICP−MS質量分析法により定量した。
(電気特性の測定方法)
ホール効果測定装置(東陽テクニカ製ResiTest8400)を用いて測定を行った。
(ゼーベック係数の測定方法)
上記ホール効果測定装置にゼーベック係数測定システム(東陽テクニカ製ResiTest8400オプション)を取り付け、測定を行った。
(熱伝導度の測定方法)
レーザーフラッシュ法熱伝導測定装置(NETZSCH社製LFA−457)により測定を行った。
(実施例1)
シリコン粉末(純度4N、平均粒径300μm、高純度化学製)と、金属ルテニウム(純度99.9%、平均粒径150μm、フルウチ化学製)を、Si/(Ru+Si)=60atm%、Ru/(Ru+Si)=40atm%として混ぜ合わせた後、水冷鋳型に充填し、アーク溶融を行った。得られた原料塊を瑪瑙乳鉢内で乳鉢を用いて粉砕し粉末を作製した。得られた粉末を30mm×15mmサイズの、長方形のホットプレス用型に充填しホットプレスを行った。ホットプレス条件は、昇温速度200℃/hour、保持温度1400℃1時間保持、圧力は2.3tonとした。また、真空度は1.0e−2Paであった。焼結中合金試料付近に設置していたリファサーモ(型式L)は1250℃を示していた。
EBSD測定の結果、得られた合金試料に関して、面積比で0.001%程度のSi相が混在したRuSiの結晶相(空間群60)が観測された。
得られた合金試料の相対密度は、合金試料が純RuSi3であると想定すると、RuSiの真密度6.79g/cm3を用いては91.2%であった。
その後、合金試料は10mm×10mm×2mmtのサイズに加工して電気特性測定サンプル、10mmφ×2mmtのサイズに加工して熱伝導率測定サンプルとし、それぞれ測定を行った。測定条件は、ゼーベック係数と電気抵抗については600℃、真空条件で行った。一方、熱伝導率については室温、窒素雰囲気下と、600℃、Ar雰囲気下の二条件で測定した。各測定結果を表1に示す。
Figure 2019218592
得られた結果は非特許文献1,2に記載の熱伝導度5W/K・mより、低い値を示した。このことから、合金の組織粒径を微細化制御することで高い熱電変換性能を達成することが可能となる。
(比較例1)
原料をSi/(Ru+Si)=99atm%、Ru/(Ru+Si)=1atm%とした以外は、実施例1と同様の手法で合金を得た。
(比較例2)
原料にシリコン粉末を用いて、Si/(Ru+Si)=100atm%、ホットプレス時の温度を1200℃とした以外は実施例1と同様の方法で合金を得た。焼結中合金試料付近に設置していたリファサーモ(型式L)は1125℃を示していた。
本発明を用いることで、高い性能を有する熱電変換素子を作製可能となり、200℃〜600℃付近の排熱を効率的に利用できるようになる。

Claims (7)

  1. シリコンとルテニウムを主成分とし、構成する結晶粒径の平均が50μm以下である珪化物系合金材料。
  2. シリコンとルテニウムを主成分とし、構成する結晶粒径の平均が20μm以下1nm以上である珪化物系合金材料。
  3. シリコンとルテニウムを主成分とし、構成する結晶粒径の平均が1μm以下3nm以上である珪化物系合金材料。
  4. シリコンとルテニウムを主成分とし、構成する結晶粒径の平均が500nm以下5nm以上である珪化物系合金材料。
  5. シリコンとルテニウムを主成分とする珪化物系合金材料であり、当該合金材料を構成する元素の原子比が、シリコン、ルテニウムの含有量をそれぞれSi、Ruとしたときに
    50atm%≦Si/(Ru+Si)<70atm%
    30atm%<Ru/(Ru+Si)≦50atm%

    である請求項1〜4に記載の珪化物系合金材料。
  6. 請求項1〜5に記載の珪化物系合金材料を用いた素子。
  7. 請求項6に記載の珪化物系合金材料を用いた素子からなる熱電変換素子。
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