JP7343853B2 - 熱電変換材料、熱電変換材料の焼結方法および熱電変換材料の製造方法 - Google Patents
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Description
ZT=(σ・S2/κ)・T
σ:電気伝導率 S:ゼーベック係数 κ:熱伝導率
T:絶対温度
充填スクッテルダイト材としては、例えば非特許文献3に開示されるように、充填材にYbに加えてさらにInを充填することも試みられている。非特許文献3は、In0.1YbyCo4Sb12において、y=0.00,0.05,0.10,0.20として特性の評価を行っている。非特許文献3によれば、In0.1Yb0.1Co4Sb12の組成において、750K(477℃)にて0.97の無次元性能指数ZTが得られている。
本発明における主相は、相対的に結晶粒径の大きい粗大組織領域と、相対的に結晶粒径の小さい微細組織領域と、が混在している、ことを特徴とする。
本発明における「主相」とはスクッテルダイト構造を構成する相をいい、本発明における粒界とは結晶方位が異なる同種類の結晶粒子の境界界面をいう。
本発明の微細組織領域において、好ましくは、粒径の小さい結晶粒の粒界にYb酸化物が析出している。
本発明の粗大組織領域において、好ましくは、結晶粒の粒界の一部に、InおよびYbが偏析している。
InxYbyCo4Sb12+z 式(1)
0<x≦0.3, 0<y≦0.3, -0.5≦z+0.5
本発明の焼結方法は、焼結用原料を第一温度で保持する第一保持工程と、第一温度より高い第二温度まで昇温するとともに第二温度で所定時間だけ保持する第二保持工程と、を備える。本発明の焼結方法は、第一保持工程と第二保持工程を通じて圧力が加えられる。また、第一保持工程において、異相を低減させ、第二保持工程において、緻密化を図ることを特徴とする。
また、本発明の焼結方法において、好ましくは、第一圧力が10~100MPaであり、第二圧力が、25~250MPaである。
[熱電変換モジュール1]
はじめに本発明に係る熱電変換材料が用いられる、熱変換モジュールの概略構成について説明する。図1は本願発明の熱電変換材料が用いられる熱変換モジュールの一例を示している。図1に示される熱電変換モジュール1は、複数のp型熱電変換素子3および複数のn型熱電変換素子4が、p型熱電変換素子3とn型熱電変換素子4は、p,n,p,nというように交互に配列されている。p型熱電変換素子3とn型熱電変換素子4は、絶縁基板5A,5Bの上に接合された電極7,7…により直列に接続される。電気的な接続における一端側の電極7と他端側の電極7のそれぞれにはリード線8A,8Bが接続されており、リード線8A,8Bの端部には端子9が設けられる。
熱電変換モジュール1において、端子9に直流電圧を印加して、リード線8A,8Bおよび電極7,7…を通して複数のp型熱電変換素子3および複数のn型熱電変換素子4に通電する。そうすると、電極7,7…を介して電流がp型熱電変換素子3からn型熱電変換素子4に流れる側が発熱し、反対にn型熱電変換素子4からp型熱電変換素子3に流れる側が吸熱する。この現象をペルチェ効果と呼ぶ。ペルチェ効果を得るために、発熱側に接合された絶縁基板5Aは加熱され、他方の吸熱側に接合された絶縁基板5Bは冷却される。熱電変換モジュール1では端子9に加える直流の極性を入れ替えれば、発熱側と吸熱側を入れ替えることができる。
n型熱電変換素子4に用いられる本実施形態の熱電変換材料について、以下詳しく説明する。なお、p型熱電変換素子3に用いられる熱電変換材料は任意である。
本実施形態に係る熱電変換材料は、充填スクッテルダイトからなる。
スクッテルダイトは、TX3(T:遷移金属(Co、Fe…)、X:プニクトゲン(第15族元素))で表される材料で、単純立方格子をつくる2×2×2倍の単位胞をもつ。8つの単位格子のうち6つの体心位置に4つのX(プニクトゲン)イオンが正方形のリング状に配置されており、残りの2つの単位胞は空、つまり隙間になっている。希土類元素などの他の種類の元素(R)が隙間に入ったものが充填スクッテルダイト(RyT4X12(y≦1)と称される。
この熱電変換材料は、焼結体からなり、スクッテルダイト構造をなす複数の結晶粒を有する主相と、隣接する結晶粒の間の粒界と、を備えている。
本実施形態に係る熱電変換材料は、元素RとしてYbとInを含み、式(1)で示される組成(原子比)を有することが好ましい。
InxYbyCo4Sb12+z … 式(1)
式(1)において、yは、0<y≦0.3であることが好ましく、0.05≦y≦0.3であることがより好ましく、0.1≦y≦0.3であることがさらに好ましい。
式(1)において、zは、-0.5≦z≦0.5であることが好ましく、-0.4≦z≦0.4であることがより好ましく、-0.3≦z≦0.3であることがさらに好ましい。
次に、本実施形態に係る熱電変換材料の特徴的な組織について説明する。
特徴的な組織は以下に示す第1要素~第3要素の3つの要素のうち少なくとも一つを含んでいる。第1要素~第3要素は、後述する実施例に基づいている。
第1要素:本実施形態に係る熱電変換材料は、結晶粒径の大きい粗大組織領域(A)と結晶粒径の小さい微細組織領域(B)が混在する組織を有している。
第2要素:本実施形態に係る熱電変換材料は、粗大組織領域(A)および微細組織領域(B)において、結晶粒内にYbの酸化物が析出している。
第3要素:本実施形態に係る熱電変換材料において、InおよびYbが、粗大組織領域(A)における粒界に析出しているとともに、スクッテルダイトの基本骨格の隙間に充填されている。
第1要素~第3要素の中では、第1要素が熱伝導率の低減のために支配的である。
第3要素の作用・効果:第3要素において、Ybに加えてInが基本骨格の空隙に充填される。これにより、本実施形態の熱電変換材料は、ラットリング運動によりフォノンの散乱が促進されることで熱伝導率を低くするのに寄与する。またこれらはドーパントとしても作用しキャリア濃度を増加させ、適切な添加量によりパワーファクタの向上に寄与する。
InおよびYbが、粗大組織領域(A)における粒界に析出する理由は以下の通りと推定される。
焼結過程で溶けだしたInがInSbを形成し、主相(マトリクス)からSbを奪うことでYb析出物が形成される。その後の焼結温度の上昇に伴ってこのInSbが主相に固溶し、スクッテルダイト相となる。このため、異相であるCoSb2は低減、好ましくは消失する一方で、取り残されたYb析出物が酸化し、Yb酸化物が析出物を形成すると推定される。この過程で一部のIn,Ybが粒界に残存し偏析していると推定される。
格子熱伝導率κlat=l/3Cvl
C:格子比熱 v:音速 l:フォノン平均自由行程
次に、本実施形態に係る熱電変換材料の製造方法について、図2を参照して説明する。
本実施形態に係る製造方法は、図2に示すように、出発原料を秤量・混合する工程(S101)と、混合された出発原料を溶解・凝固する工程(S103)と、凝固体から焼結用原料を生成する工程(S105)と、焼結用原料を焼結する工程(S107)と、を備えている。以下、各工程について説明するが、本実施形態においては、焼結工程(S107)を二段階で行うところに特徴を有している。
上述した式(1)で示される組成を有するように、Yb,In,Co,Sbの各出発原料を秤量するとともに、配合する。
出発原料の形態は、粉末状、塊状など任意であり、制限はない。また、出発原料の純度は高いほうが好ましいが、例えば2N程度の純度を有していれば足りる。
ここでは、Yb,In,Co,Sbの4種類の出発原料を例示した。しかし、本実施形態は、例えばInとCoの合金のように複数の元素を含む出発原料と単一の元素を含む出発原料を組み合わせることもできるし、複数の元素を含む出発原料と複数の元素を含む出発原料を組み合わせることもできる。
次に、配合された出発原料を溶解及び凝固する。
溶解及び凝固は、出発原料の酸化を防ぐために、例えば、Arなどの不活性ガス雰囲気下などの非酸化性雰囲気で行うのが好ましい。
溶解温度は、出発原料が溶解し、均一な溶湯が得られ、組成が気化などで大きく変動しない温度であれば制限はなく、目標とされる組成にもよるが、1000℃~1200℃の範囲とされる。
次に、得られた凝固体から焼結用原料を得る。この工程については、焼結用原料の酸化を防ぐために、非酸化性雰囲気下で行うことが好ましい。
焼結用原料を得るには、凝固体を機械的に粉砕して得る手法のほか、凝固体を再度溶解して溶湯を急冷凝固して得る手法を適用できる。急冷凝固としては、高速で回転するロールに溶湯を滴下するメルトスピニング(melt-spinning)法、ガスアトマイズ(gas-atomization)法などが適用できる。
ここで、スクッテルダイト相とは結晶質の物質の名称であり、同じ化学組成を有する非晶質の物質は厳密な意味ではスクッテルダイト相に該当しない。したがって、急冷凝固により得られる非晶質の原料は、スクッテルダイト相を有していないが、上述した不可避的な異相を含んでいる。つまり、本実施形態における焼結用原料は、結晶質のみで構成される場合、非晶質のみで構成される場合、および、結晶質と非晶質の混相から構成される場合があり得る。
次に、焼結用原料は焼結工程に供される。
本実施形態における焼結工程は、緻密な焼結体を生成する過程で焼結用原料をスクッテルダイトの単相組織にする役割を果たす。そのために、本実施形態は、第一温度で保持する第一保持工程と第一温度よりも高い第二温度で保持する第二保持工程とを備える二段階焼結を行う。第一温度による所定時間の保持により焼結用原料に生じていた異相を低減させて、実質的にスクッテルダイトの単相とし、その後に昇温して第二温度で保持することにより緻密な焼結体を得る。第一工程では第二工程よりも低く、結晶成長が進行しない温度で原料を保持することで、スクッテルダイト単相化する。その後連続して第二工程に進み焼結を行うことで、微細粒組織形態を保持したまま、緻密な焼結体を得ることができる。
本実施形態における焼結工程は、焼結対象に圧力を加えて行われることが好ましい。加圧を伴う焼結手段としては、ホットプレス(HP:Hot Pressing)、熱間静水圧プレス(HIP:Hot Isostatic Pressing)、放電プラズマ焼結(SPS:Spark Plasma Sintering)を用いることができる。ただし、最適な加熱条件は焼結手段によって相違することもある。
HPは、典型的には黒鉛製の型に焼結用原料を充填、一軸加圧しながら加熱する方法であり、常圧焼結法に緻密化が容易とされる。HIPは、アルゴンなどのガスを圧力媒体として圧力を加えながら加熱する方法であり、処理物に対して等方的な圧力を加えることができる。したがって、HIPは一軸加圧によるHPに比べて処理物の部位にかかわらず均等な圧力を加えることができる利点がある。なお、HPとHIPは電気ヒータによって加熱する点では共通する。
[加熱条件]
本実施形態において、第一温度での保持は、固相反応により異相をスクッテルダイトに変化させることでスクッテルダイトの単相化を実現するために行われる。
第一温度は300~700℃から選択される。第一温度が低すぎれば固相反応が進まないためにスクッテルダイトの単相化が不十分になるおそれがあるか、単相化に必要以上の時間を要する。また、第一温度が高すぎれば、固相反応の温度域を超えて緻密化が進行してしまうために、やはりスクッテルダイトの単相化が不十分になるおそれがある。好ましい第一温度は350~600℃であり、より好ましい第一温度は375~500℃である。
また、保持温度は一定である必要はなく、第一温度の範囲の中で変動させてもよい。これは第二温度においても同様である。
本実施形態の焼結工程において、焼結対象は加圧される。
圧力は好ましくは10~3000MPaの範囲から選択される。圧力は焼結工程を通じて一定でもよいが、焼結の過程で変動させることもできる。例えば、スクッテルダイトの単相化を担う第一温度で保持するのが終えるまでは圧力を小さくする。この圧力を第一圧力という。これは、圧力が高くなると単相化のための異相のスクッテルダイトへの変化を抑制するおそれがあるためである。第一温度、第一圧力での保持を終えると、焼結体の緻密化を促進するために、圧力を高くすることが好ましい。この圧力を第二圧力という。つまり、本実施形態の焼結工程においては、温度のみならず圧力についても二段階焼結が行われる。
次に、本発明をより具体的な実施例に基づいて説明する。
出発原料として純度99.9%のYb、In、CoおよびSbを用意し、所定組成の熱電変換材料を得るためにそれぞれの出発原料を以下の式(2)の組成になるように秤量した。酸化の影響を避けるため、秤量は酸素濃度が10ppm以下のグローブボックス内で行った。
InxYb0.25Co4Sb12.2 … 式(2)
x:0,0.05,0.10,0.15
秤量後、グローブボックス内で秤量した出発原料を石英管に封入した。石英管の内面はグラファイトでコーティングがされている。出発原料を封入した後に、石英管は1100℃で24時間保持することで出発原料を溶解し、24時間経過後に石英管を水冷して、インゴット(凝固体)を得た。
この焼結用原料をグラファイト製ダイスに充填して、住友石炭鉱業(株)製の放電プラズマ焼結(SPS)装置を用いて焼結した。焼結パターン(温度、圧力)の一例を図3に示す。
第一温度(400℃)で保持を行った後に、第二温度(550℃)まで昇温してから保持を行う二段階焼結を行った。また、圧力については、昇温の開始から第一温度の保持が終わるまでの間は第一圧力(50MPa)を保持し、その後に第一温度から第二温度に昇温を開始するのに伴って圧力を第二圧力まで上げている。第二圧力は、50MPa、100MPa、150MPa、200MPaの四種類とされた。
7.14g/cm3(50MPa) 7.60g/cm3(100MPa)
7.50g/cm3(150MPa) 7.50g/cm3(200MPa)
メルトスピニング法により得られたリボン状の試料の相構成および第一温度(400℃)での保持後の試料の相構成をX線回折により観察した。その結果を図4に示す。図4の上段に示すように、焼結用原料粉末の段階ではスクッテルダイト(CoSb3)の他に、CoSb相、CoSb2相およびSb相が確認された。これに対して、第一温度保持後には、異相であるCoSb相、CoSb2相およびSb相などが低減する。好ましくはこれら異相は消失し、スクッテルダイト(CoSb3)の単相化がなされる。なお、第一温度保持後の試料は、その後の昇温を行わずにSPS装置から取り出したものである。
第二温度(550℃)における保持、降温後の焼結体からなる熱電変換材料の特性を測定した。第二圧力は、50MPa、100MPa、150MPa、200MPaの四種類で行った。その結果を図5に示す。なお、この結果は、式(2)において、X=0.1の熱電変換材料のものである。
図5(a)に示すように、電気抵抗率ρは、焼結時の圧力が高くなるほど低くなる傾向にあり、150MPaおよび200MPaの圧力でもっとも低くなる。
図5(b)に示すように、ゼーベック係数Sは、電気抵抗率と同様の傾向を示し、150MPaおよび200MPaの保持でもっとも低くなる。
図5(d)に格子熱伝導率κlatの結果を示すが、圧力が150MPaおよび200MPaのときに格子熱伝導率κlatが低くなる。
PF=σ・S2 … 式(3)
最後に、熱電変換材料の性能を示す無次元性能指数ZTを求めた。その結果、圧力が200MPaの焼結体において、723K(450℃)で1.25、673K(400℃)で1.18の無次元性能指数ZTが得られた。また、圧力が150MPaの焼結体でも同様の無次元性能指数ZTが得られている。さらに、圧力が100Mpaの焼結体において、700Kの近傍で1.0を超える無次元性能指数ZTが得られている。
第二温度(550℃)における保持、降温後の焼結体からなる熱電変換材料の特性を測定した。ここでは、下記の式(2)のxを0,0.05,0.10,0.15の四種類とした。その結果を図6に示す。この結果は、第二圧力が100MPaによる熱電変換材料のものである。
InxYb0.25Co4Sb12.2 … 式(2)
次に、Ybの他に充填元素としてInを含むことによる効果を確認するために、Inを含まない熱電変換材料γとInを含む熱電変換材料δのTEM観察を行った。結果を図7に示す。
熱電変換材料γ:Yb0.25Co4Sb12.2
熱電変換材料δ:In0.10Yb0.25Co4Sb12.2
これに対して、Inを含む熱電変換材料γについては、焼結時の圧力に関わらずに、図7(c)および図7(d)に示すように、粒径が大きい領域と粒径が小さい領域に区分される。粒径が大きい領域は、Inを含まない熱電変換材料γと同程度の粒径を有しており、領域(A)と称する。粒径が小さい領域は、領域(B)と称する。
Inを含まない熱電変換材料γは、図8(a),(b)に示すように、領域(A)だけが観察された。これに対して、Inを含む熱電変換材料は、図8(c),(d)に示すように、領域(A)の他に領域(B)と、が混在している。
領域(B)における粒径の小さい結晶粒の平均粒径(円相当径)は90~120μm程度であり、領域(A)における粒径の大きい結晶粒の平均粒径(円相当径)は160~210μm程度である。今回確認した一形態においては、円相当径において、領域(B)における結晶粒は、領域(A)における結晶粒の40~80%の平均粒径を有している。この40~80%という値は本発明の範囲を特定するものではなく、40%未満または80%を超えることもあり得る。
この析出物の正体を確認するために、TEMによるEDX観察を行った。その結果を図10に示す。結晶粒のマトリックス(Matrix)に比べて析出物(Pr)はYbとO(酸素)の割合が高く、析出物はYb酸化物と推察された。図10は領域(B)についてのものであるが、領域(A)についても図10と同様の結果が得られている。
Yb酸化物は本実施形態における第2要素に対応する。そして、領域(A)および領域(B)において、結晶粒内にYb酸化物が析出することで、フォノンの散乱が促進されるために、熱伝導率が低くなるものと推察される。
図11(c)に示すように、領域(B)のHAADF-STEM像において、粒界のコントラストが高くなっている。HAADF-STEM像においては、原子番号の二乗に比例したコントラストが得られる。したがって、粒界には原子番号の最も大きいYb(原子番号70)が偏析していることが推察される。
領域(B)において、図12(a)と図12(b)および図12(c)とを対比することにより、粒界にYbおよびO(酸素)が偏析していることが解る。領域(B)において、図11(g)に示すように、粒内にはYbは検出されなかった。
また、マッピング像は省略するが、領域(B)および領域(A)のいずれにおいても、Inは検出されなかった。
図13および図14より、領域(A)の粒界にInが偏析していることが分かった。ただし、図13および図14より、Inが偏析していない粒界も存在していることから、Inは領域(A)の一部の粒界にだけ偏析している。
図14より、圧力が100MPaおよび150MPaのいずれにおいてもInを含む熱電変換材料δの方がInを含まない熱電変換材料γよりも格子定数(a)が大きいことが分かる。この結果より、スクッテルダイト構造の空隙にInが充填されているであろうことが確認された。
図14に示すように、Inを含まない熱電変換材料γの充填率は、その格子定数から、0.16(100MPa加圧),0.17(150MPa加圧)と推定される。
また、Inを含む熱電変換材料δの充填率が0.18(100MPa加圧),0.26(150MPa加圧)であることから、熱電変換材料γとの差分(0.02(100MPa),0.09(150MPa)がInの充填率と推察される。
本実施例に係る熱電変換材料δによれば、格子熱伝導率が低下し、無次元性能指数ZTが向上している。これは、微細組織領域(B)に粒界が数多く存在することでフォノンの散乱を促進しているためと推定される。一方で、熱電変換材料δによれば、粗大組織領域(A)が存在しており、この領域は結晶粒界が少ないので、高い電気伝導率が得られる。つまり、熱電変換材料δは熱伝導率が低い領域と電気伝導率が高い領域が適度に混在していることにより、高い無次元性能指数ZTを得ることができる。
さらに、格子状数の確認結果より、スクッテルダイトの空隙内にYbに加えてInが充填され、これが空隙内におけるラットリングおよびフォノンの散乱の促進に寄与する。このYbに加えてInが充填されるのは以下の焼結過程におけるメカニズムによるものと推定される。
3 p型熱電変換素子
4 n型熱電変換素子
5A,5B 絶縁基板
7 電極
8A,8B リード線
9 端子
Claims (5)
- InおよびYbを含み、スクッテルダイト構造をなす複数の結晶粒を有する主相と、隣接する前記結晶粒の間の粒界と、を有する焼結体からなり、
前記主相は、
相対的に結晶粒径の大きい粗大組織領域と、相対的に結晶粒径の小さい微細組織領域と、が混在し、
前記粗大組織領域において、
前記結晶粒の粒界の一部に、InおよびYbが偏析している、
ことを特徴とするスクッテルダイト系熱電変換材料。
- 前記微細組織領域における前記結晶粒は、前記粗大組織領域における前記結晶粒の、円相当径において、40~80%の平均粒径を有する、
請求項1に記載のスクッテルダイト系熱電変換材料。
- 前記微細組織領域および前記粗大組織領域において、
YbおよびOを周囲より多く含む析出物が複数の前記結晶粒の少なくとも一部の粒内に析出している、
請求項1または請求項2に記載のスクッテルダイト系熱電変換材料。
- 前記微細組織領域において、
粒径の小さい前記結晶粒の粒界にYb酸化物が析出している、
請求項1~請求項3のいずれか一項に記載のスクッテルダイト系熱電変換材料。
- 下記の式(1)で表される組成(原子比)を有する、
請求項1~請求項4のいずれか一項に記載のスクッテルダイト系熱電変換材料。
InxYb0.25Co4Sb12.2 式(1)
x=0.10,0.15
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J. Y. Peng,外7名,Thermoelectric properties of (In, Yb) double-filled CoSb3 skutterudite,Journal of Applied. Physics ,米国,American Institute of Physics,2008年,Vol. 104,p. 053710-1 - 053710-5 |
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Publication number | Publication date |
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JP2020057676A (ja) | 2020-04-09 |
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