JP5281308B2 - 熱電材料及びその製造方法 - Google Patents
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Description
(1)エネルギー変換の際に余分な老廃物を排出しない、
(2)排熱の有効利用が可能である、
(3)材料が劣化するまで継続的に発電を行うことができる、
(4)モータやタービンのような可動装置が不要であり、メンテナンスの必要がない、
等の特徴を有していることから、エネルギーの高効率利用技術として注目されている。
(1)Bi−Te系、Pb−Te系、Si−Ge系等の化合物半導体、
(2)NaxCoO2(0.3≦x≦0.8)、(ZnO)mIn2O3(1≦m≦19)、Ca3Co4O9等のCo系酸化物セラミックス、
(3)Zn−Sb系、Co−Sb系、Fe−Sb系等のスクッテルダイト化合物、
(4)ZrNiSn等のハーフホイスラー化合物、
(5)FeSi2、MnSixなどのケイ化物
などが知られている。
同文献には、マンガンシリサイドの熱電特性の異方性は、ドーパントの濃度が高くなるほど、減少する点が記載されている。
同文献には、FeSi2にBを添加すると、熱衝撃性が著しく改善される点が記載されている。
同文献には、このような方法により、p型良導体であるマンガンモノシリサイドMnSiをほとんど含有しない単結晶が得られる点が記載されている。
また、MnSix相を凝固法により作製した場合、溶湯からMnSix相が生成する際の反応は包晶反応であるため、材料中には不可避的にMnSi(マンガンモノシリサイド)相が生成する場合が多い。MnSi相は、金属に近いp型半導体相であり、電気伝導度σは高いが、ゼーベック係数Sは低いという特徴がある。そのため、その含有量や形態によっては、材料全体の熱電特性や耐熱衝撃性を低下させる原因となる。
また、本発明が解決しようとする他の課題は、このような熱電材料を低コストで製造することが可能な熱電材料の製造方法を提供することにある。
鋳塊全体を一方向凝固させることにより得られる前記MnSi x 相のab面が一方向に配向した多結晶体からなる。
(Mn1-y[M1]y)(Si1-z[M2]z)x ・・・(1)
但し、1.7≦x≦1.85
0.001≦y≦0.020
0.001≦z≦0.020
M1は、Cr、Fe、及び、Niから選ばれるいずれか1以上の元素。
M2は、Ge、B、及び、Alから選ばれるいずれか1以上の元素。
本発明に係る熱電材料は、次の(2)式で表される組成を有するMnSix相を主相とし、
鋳塊全体を一方向凝固させることにより得られる前記MnSi x 相のab面が一方向に配向した多結晶体からなるものが好ましい。
(Mn1-yCry)(Si1-zGez)x ・・・(2)
1.7≦x≦1.85
0.001≦y≦0.020
0.001≦z≦0.020
本発明に係る熱電材料が得られるように原料を配合する配合工程と、
前記原料を溶解させて溶湯とし、鋳塊全体において前記MnSix相のab面が一方向に配向するように、前記溶湯を一方向凝固させ、前記MnSi x 相のab面が一方向に配向した多結晶体を得る凝固工程と
を備えている。
前記凝固工程は、固液界面近傍部に40℃/mm以下の温度勾配を設け、15℃/min以下の冷却速度で一方向凝固させるものが好ましい。
さらに、このような組成を有する材料を製造する場合において、MnSix相のab面が配向するように凝固させると、配向方向の熱電特性を向上させることができる。しかも、M1元素置換により耐熱衝撃性が改善されているので、相対的に大きな冷却速度で冷却しても試料に割れが発生することもない。
[1. 熱電材料]
本発明に係る熱電材料は、(1)式で表される組成を有するMnSix相を主相とする。
(Mn1-y[M1]y)(Si1-z[M2]z)x ・・・(1)
但し、1.7≦x≦1.85
0.001≦y≦0.020
0.001≦z≦0.020
M1は、Va族元素、VIa族元素、VIIa族元素、VIIIa族元素、及び、ランタノイド元素から選ばれるいずれか1以上の元素。
M2は、IIIb族元素、IVb族元素、及び、ランタノイド元素から選ばれるいずれか1以上の元素。
一方、M1置換量が過剰になると、逆に電気伝導度σが低下する。従って、M1置換量は、0.020(2.0at%)以下が好ましい。M1置換量は、さらに好ましくは、0.010(1.0at%)以下、さらに好ましくは、0.007(0.7at%)以下である。
一方、M2置換量が過剰になると、逆に電気伝導度σが低下する。従って、M2置換量は、0.020(2.0at%)以下が好ましい。M2置換量は、さらに好ましくは、0.010(1.0at%)以下、さらに好ましくは、0.007(0.7at%)以下である。
(Mn1-yCry)(Si1-zGez)x ・・・(2)
1.7≦x≦1.85
0.001≦y≦0.020
0.001≦z≦0.020
高い熱電特性を得るためには、MnSix相の含有量は、95wt%以上が好ましく、さらに好ましくは、98wt%以上である。
一方、熱電材料がMnSix相の多結晶体からなる場合であっても、MnSix相のab面を一方向に配向させることにより、熱電特性を単結晶に近づけることができる。
高い熱電特性を得るためには、ab面の配向度fは、f>0.5が好ましい。ab面の配向度fは、さらに好ましくは、f>0.7、さらに好ましくは、f>0.8である。
なお、「配向度f」とは、MnSix相のすべての回折ピークの積分強度の総和(ΣI)に対するab面の回折ピークの積分強度(Iab)の比(Iab/ΣI)をいう。
本発明に係る熱電材料の製造方法は、配合工程と、凝固工程と、熱処理工程とを備えている。
配合工程は、本発明に係る熱電材料が得られるように原料を配合する工程である。
出発原料の種類は、特に限定されるものではなく、目的の組成が得られる限りにおいて、純金属、合金などを用いることができる。
凝固工程は、所定の比率で配合された原料を溶解させて溶湯とし、MnSix相のab面が一方向に配向するように、溶湯を凝固させる工程である。
高い熱電特性を有する鋳塊を得るためには、鋳塊全体に渡ってab面が配向しているのが好ましい。しかしながら、熱電素子は、一般に素子寸法が小さいので、少なくとも素子を切り出す領域においてab面が配向していれば良い。
(1) 所定の冷却能を持つ鋳型(例えば、水冷銅鋳型など)に溶湯を鋳込み、鋳型壁面から内部に向かって一方向に凝固させる方法(広義の一方向凝固法)、
(2) 浮融帯溶融(FZ)法、ゾーンメルティング法などを用いて、鋳塊全体を一方向凝固させる方法(狭義の一方向凝固法)、
(3) チョクラルスキー法などの公知の方法を用いて、種結晶から単結晶を成長させる方法、
などがある。本発明においては、いずれの方法を用いても良い。
同様に、冷却速度が大きくなりすぎると、MnSix相を一方向に凝固させるのが困難となる。また、凝固時の熱収縮によって、鋳塊に亀裂が生じやすくなる。従って、冷却速度は、15℃/min以下が好ましい。なお、冷却速度が遅くなるほど、ab面が配向している健全な鋳塊を得るのが容易化するが、冷却速度が遅くなりすぎると、生産性が低下する。本発明においては、Mnサイトの一部をCrで置換しているので、従来の材料に比べて耐熱衝撃性が高い。そのため、従来よりも大きな冷却速度であっても、健全な鋳塊が得られる。具体的には、冷却速度が1.5℃/min超、2.0℃/min以上、3.0℃/min以上、あるいは、4℃/min以上であっても、健全で、熱電特性の高い鋳塊が得られる。
熱処理工程は、凝固工程で得られた鋳塊を、非酸化性雰囲気又は真空雰囲気中において、600℃以上1155℃以下の温度で20分以上170時間以下の熱処理を行う工程である。熱処理工程は、必ずしも必要ではないが、鋳塊に対して熱処理を行うと、熱電特性が向上する。これは、
(1) 鋳造後の熱処理によって、成分の不均一が解消されるため、あるいは、
(2) MnSix相と不純物相(例えば、MnSi相)との間の熱膨張係数差に起因する内部応力やミクロクラックが熱処理によって消滅するため、
と考えられる。
熱処理温度が低すぎると、十分な効果が得られない。従って、熱処理温度は、600℃以上が好ましい。
一方、熱処理温度が高すぎると、材料が溶融する。従って、熱処理温度は、1155℃以下が好ましい。
熱処理時間は、熱処理温度に応じて、最適な時間を選択する。一般に、熱処理時間が短すぎると、十分な効果が得られない。従って、熱処理時間は、20分以上が好ましい。
一方、必要以上の熱処理は、実益がない。従って、熱処理時間は、170時間以下が好ましい。
MnSix相が得られるように配合された原料を溶解・鋳造すると、通常、MnSix相のab面に対して平行に板状のMnSi相が析出する。MnSi相は、金属的性質を持つp型半導体であるため、MnSi相の含有量や形態によっては、材料全体の熱電特性を低下させる場合がある。
また、MnSix相は、熱膨張係数が大きいために、冷却中に大きな内部応力が発生しやすい。しかも、板状に析出したMnSi相は、内部欠陥となりやすい。そのため、溶解・鋳造法で得られる多結晶体は、冷却中に割れてしまい、健全な試料が得られない。
さらに、MnSix相は、熱電特性に異方性があるので、ab面がランダムな方向を向いた多結晶体では、実用レベルの性能指数は、得られない。
また、MnサイトをM1元素で置換することに加えて、Siサイトの一部を特定のM2元素(特に、Ge)で置換すると、出力因子が向上する。これは、SiサイトをM2元素で置換することによって、ゼーベック係数Sを低下させることなく、電気伝導度σが増大するためである。
さらに、このような組成を有する材料を製造する場合において、MnSix相のab面が配向するように凝固させると、配向方向の熱電特性を向上させることができる。しかも、M1元素(特に、Cr)置換により耐熱衝撃性が改善されているので、相対的に大きな冷却速度で冷却しても試料に割れが発生することもない。
[1. 試料の作製]
[1.1 ボタン試料(試料I)の作製]
組成が(Mn1-y[M1]y)(Si1-z[M2]z)x(x=1.73、1.80)となり、総重量が10gとなるように、塊状Mn、Si、及び、置換元素を秤量し、これをArガスプラズマボタン溶解した。溶解は、以下の手順により行った。すなわち、底部が平面で水冷された銅製ルツボ上に原料を置き、チャンバー内を真空引きして、Arガス置換した。その後、Arガスプラズマを発生させて原料を溶解し、半球状のボタン試料(試料I)(直径20mm、高さ7〜8mm)を得た。原料の溶け残りを無くし、均質化するために、ボタン試料の上下を反転させて再溶解する操作を4回行った。ボタン試料は、各組成ごとにそれぞれ3〜4個作製した。
赤外線加熱単結晶製造装置を使用した浮融帯溶融(FZ)法により、所定の組成を有するボタン試料を再溶解させながら一方向凝固させ、結晶成長方向に組織配向させた一方向凝固試料(試料II)を作製した。溶解は、Arガスフロー(2L/min)雰囲気中で、赤外線加熱の出力を調整しながら行った。固液界面の温度勾配は、33℃/minと推定される。結晶成長速度は、主に10mm/hとし、成長速度の影響を検討する場合には、5mm/h又は20mm/hとした。得られた試料は、直径6〜7mm、長さ30〜40mmの棒状であった。
MnSi1.73となるように塊状Mn及びSiを秤量した。これを溶解し、鏡面に仕上げた金型(RZ>6.3)に溶湯を鋳込んで凝固させた(比較例8)。
試料IIを石英管に真空封入し、1000℃で5時間の熱処理を施した。
[2.1 耐熱衝撃性]
耐熱衝撃性は、プラズマボタン溶解を4回繰り返した試料Iを用いて、下記の(1)又は(2)の方法により評価した。
(1) 溶融した状態で試料の形状を半球のボタン状に整えた後、Arガスプラズマの照射を停止させ、水冷銅製ルツボ上で試料を冷却した。試料が凝固する過程で試料に割れが生じるか否かを評価した。
(2) 凝固した試料IにArガスプラズマを照射した。その時の急激な熱応力の発生によって、割れが生じるか否かを評価した。
試料II又は試料IIIの縦断面を研磨して組織観察を行い、板状MnSi相の析出方向を調べた。その方向に平行となるように、試料IIから2×2×10mmの直方体試料を切り出した。この直方体試料を用いて、電気伝導度σ及びゼーベック係数Sを測定し、出力因子PF(=σS2)を算出した。熱電特性の測定温度は、500℃とした。
試料II又は試料IIIから切り出した直方体試料の長手方向の面を研磨した(研磨紙研磨#600→アルミナ研磨:6μm→0.3μm→0.005μm)。研磨面の光顕組織観察及びEBSD観察を行った。
表1に、試験結果を示す。
図1(a)及び図1(b)に、それぞれ、一方向凝固MnSi1.73(比較例1)の光顕組織写真及びEBSD観察結果を示す。
一方向凝固(比較例1)の場合、板状のMnSi相は、層状となって、マトリックスのMnSix相のab面とほぼ平行に析出していることがわかった(図1(a))。また、EBDS観察結果より、観察面においてMnSi1.73(マトリックス)相の配色が(001)面のそれと同色であることから、マトリックスのMnSi1.73結晶面は、ほぼ(001)面となっており、結晶成長方向(凝固方向)に配向していることが確認された(図1(b))。
一方向凝固MnSi1.73(比較例1)の出力因子PFは、1.11×10-3W/K2mであり、電気伝導度σは277S/cm、ゼーベック係数Sは200μV/Kであった。一方、金型鋳造MnSi1.73(比較例8)は、凝固時に割れが生じている(図1(c)参照)ため、熱電特性は、一方向凝固試料より低い値であった。
図2及び図3に、それぞれ、一方向凝固(Mn0.995Cr0.005)Si1.73(比較例5)及び一方向凝固(Mn0.990Cr0.010)Si1.73(比較例6)の光顕組織写真を示す。
y=0.005である場合、図2に示すように、MnSi相は、結晶成長方向に平行に配向しているものと、球状化して配向しているものとが観察された。一方、y=0.010である場合、図3に示すように、MnSi相がさらに分断され、マトリックスのMnSi1.73相の配向性が低下する傾向が認められた。
一方、電気伝導度σは、置換元素M1の種類及び置換量により変化した。すなわち、Cr置換(比較例5〜7)は電気伝導度σを増大させ、Fe置換(比較例2)及びNi置換(比較例3)は低下させることがわかった。また、過剰なCr置換は、電気伝導度σを低下させることがわかった。その結果、出力因子PFは、Cr(y=0.010)置換(比較例6)の時に比較的大きな値(1.77×10-3W/K2m)が得られた。
SiサイトをB、Ge、又は、Al置換したボタン試料は、いずれもプラズマ照射時の昇温過程や凝固時の冷却過程で割れてしまい、熱衝撃性に劣ることがわかった。図4に、一方向凝固Mn(Si0.995Ge0.005)1.73(比較例10)の光顕組織写真を示す。Ge置換した試料は、MnSi相が微細化して配向した組織を有していた。
一方、電気伝導度は、置換元素M2の種類及び置換量により著しく変化した。すなわち、B置換(比較例4)及びGe置換(比較例10〜11)は電気伝導度σを増大させ、Al置換(比較例9)は電気伝導度σを低下させることが分かった。また、過剰なGe置換は、電気伝導度σを低下させることが分かった。その結果、出力因子PFは、Ge(z=0.005)置換(比較例10)の時に最大値(2.34×10-3W/K2m)が得られた。
[3.4.1 耐熱衝撃性]
耐熱性の向上に最も有効な置換元素Crと、電気伝導度σの向上に最も有効な置換元素Geの複合添加を行い、その熱電特性を評価した。
図5に、Cr(y=0.005)及びGe(0.005)で同時に置換した試料(実施例2)の光顕組織写真を示す。MnSi相は、分断され、「#」状に析出していた。
Cr及びGeで同時置換したボタン試料(実施例1〜8)は、Ge置換量zが0.020である試料(実施例5)を除き、プラズマ照射時の昇温過程や凝固時の冷却過程で割れることがなく、耐熱衝撃性に優れていることがわかった。これは、Cr添加によって、MnSi相の分断が促進されたためと考えられる。
Cr置換量y=0.005、Ge置換量z=0.005とし、成長速度を5〜20mm/hに変化させた場合(実施例1〜3)、ゼーベック係数Sは、成長速度によらずほぼ一定の値を示した。一方、電気伝導度σは、成長速度が大きくなるほど低下する傾向が見られた。その結果、成長速度を10mm/h以下にすると、2.20〜2.22×10-3W/K2mの高いPFが安定して得られることがわかった。
固液界面の温度勾配は、33℃/minと推定されるので、成長速度10mm/hは、約5.5℃/minの冷却速度に相当する。これは、従来の約3倍の冷却速度であり、複合添加によって、製造条件の面でも簡便化が図れ、低コスト化が可能であることがわかった。
図6に、冷却速度と出力因子PFとの関係を示す。図6より、Cr置換量y=0.005、Ge置換量z=0.005である場合、MnSi1.73(比較例1)と同等以上の出力因子PFを得るためには、冷却速度は、15℃/min以下であれば良いことがわかる。
成長速度を10mm/h一定とし、Cr置換量yを0.005一定とし、Ge置換量zを0.005〜0.020に変化させた場合(実施例2、4、5)、ボタン試料は、Ge置換量が多くなるほど、割れやすくなる傾向が認められた。
一方、ゼーベック係数Sは、Ge置換量によりほとんど変化しないが、電気伝導度σは、Ge置換量が多くなると低下した。その結果、出力因子PFは、z=0.005の時に最大となった。
よって、Geの最適置換量は、0.001≦z≦0.007と推定される。
一方、ゼーベック係数Sは、Cr置換量によりほとんど変化しないが、電気伝導度σは、Cr置換量が多くなるほど低下した。その結果、出力因子PFは、y=0.005の時に最大となった。
よって、Crの最適置換量は、0.001≦y≦0.007と推定される。
(Mn0.995Cr0.005)(Si0.990Ge0.010)1.80組成を有する試料(実施例7)を作製し、耐熱衝撃性及び熱電特性の評価を行った。
xを1.80に増加させた場合であっても、ボタン試料が割れることはなく、耐熱衝撃性が良好であることがわかった。
一方、xを1.80に増加させた場合、ゼーベック係数Sは、実施例4に比べて若干低下し、電気伝導度σは、実施例4に比べて低下した。その結果、出力因子PFは、実施例4に比べて低下した。
実施例7で得られた一方向凝固(Mn0.995Cr0.005)(Si0.990Ge0.010)1.80に対して、さらに1000℃×5hの熱処理を行った(実施例8)。その結果、熱電特性(σ、S、PF)は、いずれも向上した。特に、電気伝導度σは、26%と大きな改善が認められ、PFの大幅向上(約40%)となった。他の組成においても同様に、熱処理により電気伝導度σが大きく向上した。これは、試料の作製時に発生したミクロな欠陥(割れ等)が熱処理によって消滅し、健全な組織状態になったためと考えられる。
Claims (6)
- (1)式で表される組成を有するMnSix相を主相とし、
鋳塊全体を一方向凝固させることにより得られる前記MnSi x 相のab面が一方向に配向した多結晶体からなる熱電材料。
(Mn1-y[M1]y)(Si1-z[M2]z)x ・・・(1)
但し、1.7≦x≦1.85
0.001≦y≦0.020
0.001≦z≦0.020
M1は、Cr、Fe、及び、Niから選ばれるいずれか1以上の元素。
M2は、Ge、B、及び、Alから選ばれるいずれか1以上の元素。 - (2)式で表される組成を有するMnSix相を主相とし、
鋳塊全体を一方向凝固させることにより得られる前記MnSi x 相のab面が一方向に配向した多結晶体からなる熱電材料。
(Mn1-yCry)(Si1-zGez)x ・・・(2)
1.7≦x≦1.85
0.001≦y≦0.020
0.001≦z≦0.020 - 前記ab面の配向度fは、f>0.5である請求項1又は2に記載の熱電材料。
- 請求項1又は2に記載の熱電材料が得られるように原料を配合する配合工程と、
前記原料を溶解させて溶湯とし、鋳塊全体において前記MnSix相のab面が一方向に配向するように、前記溶湯を一方向凝固させ、前記MnSi x 相のab面が一方向に配向した多結晶体を得る凝固工程と
を備えた熱電材料の製造方法。 - 前記凝固工程は、固液界面に40℃/mm以下の温度勾配を設け、15℃/min以下の冷却速度で一方向凝固させるものである請求項4に記載の熱電材料の製造方法。
- 前記凝固工程で得られた鋳塊を、非酸化性雰囲気又は真空雰囲気中において、600℃以上1155℃以下の温度で20分以上170時間以下の熱処理を行う熱処理工程をさらに備えた請求項4又は5に記載の熱電材料の製造方法。
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