JP2015056416A - n型熱電変換材料、熱電変換モジュール、n型熱電変換材料の製造方法 - Google Patents
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Bi及びSbのうち少なくとも一方の元素と、Te及びSeのうち少なくとも一方の元素とを含むn型熱電変換材料であって、
さらに、Cuをドーパントとして含み、
短辺長さが10〜150μm、長辺長さが300〜1000μm、アスペクト比が5以上である結晶粒を有することを特徴とするn型熱電変換材料である。
上記n型熱電変換材料から作られるn型熱電変換素子と、
前記n型熱電変換素子と電気的に接続されるp型熱電変換素子と、を備えることを特徴とする熱電変換モジュールである。
n型熱電変換材料の製造方法であって、
Bi及びSbのうちの少なくとも一方の元素と、Te及びSeのうちの少なくとも一方の元素とを含む原料粉末に対し、前記熱電変換材料がn型半導体の特性を有するようCuを添加する工程と、
前記原料粉末及びCuを加熱溶融する工程と、
溶融した原料粉末及びCuを10分で400℃以上の降温速度で冷却する工程と、を備えることを特徴とする熱電変換材料の製造方法である。
以下、本発明のn型熱電変換材料について詳細に説明する。
本実施形態のn型熱電変換材料は、Bi及びSbのうち少なくとも一方の元素と、Te及びSeのうち少なくとも一方の元素とを含み、さらに、Cuをドーパントとして含み、短辺長さが10〜150μm、長辺長さが300〜1000μm、アスペクト比が5以上である結晶粒を有する。なお、本明細書において結晶粒とは、Bi及びSbのうち少なくとも一方の元素と、Te及びSeのうち少なくとも一方の元素とを含む結晶粒をいう。
出力因子PF(W/m・K2)=(ゼーベック係数α(μV/K))2×導電率σ(S/m)
本実施形態のn型熱電変換材料は、例えば、後で説明するn型熱電変換材料の製造方法によって作成できる。
次に、本発明の熱電変換モジュールについて説明する。
図1に、本実施形態の熱電変換モジュール11の概念図を示す。
熱電変換モジュール11は、上述したn型熱電変換材料から作られるn型熱電変換素子13(以下、n型素子13、単に素子13ともいう)と、n型熱電変換素子13と電気的に接続される複数のp型熱電変換素子15(以下、p型素子15、単に素子15ともいう)と、をそれぞれ複数備える。n型素子13とp型素子15とは、交互に直列に並ぶよう接続される。具体的には、n型素子13とp型素子15はそれぞれ銅電極17に接続されて、電気的に接続される。銅電極17は、後述する絶縁基板19上に形成されたパターン電極である。
素子13の上面及び底面は、後述するスライド方向と直交するよう切削加工されることが好ましい。これにより、モジュール1に組み込まれたときの素子13に対する通電方向と、素子13中の結晶粒のc軸の多くがそろう方向と垂直な方向とがほぼ一致して、n型熱電変換材料が高い性能を示す。また、素子13の上面及び底面(2mm×2mmの領域の部分)には、銅電極17中のCuの素子13中への拡散を防止する等の観点から、図示されないめっき層が形成されることが好ましい。めっき層には、例えば無電解ニッケルが用いられる。
素子13,15は、上方及び下方の両側から絶縁基板19に挟み込まれている。絶縁基板19は、例えばアルミナ製である。絶縁基板19の実装面には熱伝導性樹脂の層が設けられ、その上に、複数の銅電極パターンが形成されている。このように絶縁基板19で挟み込む構造によって、熱電変換モジュール11を発電に利用した場合に、熱源を介した電極の短絡を防止できる。
本実施形態の熱電変換モジュール11は、2つの絶縁基板19に対し温度差が生じるよう熱を与えることにより、熱エネルギーが電気エネルギーに変換され、電圧が取り出される。これを利用して、例えば、地熱、温泉等での排熱利用発電、特に、常温から200℃程度までの温度範囲での排熱利用発電に、熱電変換モジュール11を用いることができる。
次に、本発明のn型熱電変換材料の製造方法について説明する。
図2に、本実施形態のn型熱電変換材料の製造方法を説明するフローチャートを示す。
この製造方法は、原料調整工程(S10)と、加熱溶融工程(S20)と、急冷工程(S30)と、を備える。原料調整工程(S10)では、Bi及びSbのうち少なくとも一方の元素、および、Te及びSeのうち少なくとも一方の元素を含む原料粉末に対し、前記熱電変換材料がn型半導体特性を有するようCuを添加する。加熱溶融工程(S20)では、前記原料粉末及びCuを加熱溶融する。急冷工程(S30)では、溶融した原料粉末及びCuを10分で400℃以上の降温速度で冷却する。
石英管2の内部空間には、不活性ガスや水素ガス等のガスの雰囲気又は真空が形成される。なお、不活性ガスや水素ガス等のガスの雰囲気又は真空を内部空間に形成可能であれば、他の部材を用いてもよい。
また、石英管2の長手方向他端側(図中右側)には、石英管2の内部に供給されたガスを石英管2の外部に排出するための排出管4が設けられている。排出管4は、石英管2の長手方向他端側に設けられたガス排出口(図示省略)に接続されている。
上部カバー20は、上部保持部30の上面を閉鎖するように形成されている。また、上部カバー20の下面には、上部カバー20の長手方向に延びる凹型の連通部21が形成されている。
下部保持部50は、摺動部材40の下方において、摺動部材40を摺動自在に保持する。以上が本実施形態のn型熱電変換材料製造装置1の概略構成である。
秤量されたCuは、原料粉末と混合され、原料収納部32に入れられる。なお、Cuは、原料収納部32に入れる代わりに、原料粉末を作成する際に添加されてもよい。その後、石英管2内は不活性ガスや水素ガス等のガスで置換される。なお、この工程とは別に、溶融原料Bとして揮発性原料を揮発性材料収容部31に入れておく。
以上、スライドボート法を用いてn型熱電変換材料を製造する方法を説明したが、上記降温速度で冷却が行われるのであれば、スライドボート法以外の方法によってn型熱電変換材料が作成されてもよい。
本発明の効果を確認するために、サンプル1〜13、および、参考用のサンプルAを製造した。サンプル1〜4、7〜13およびサンプルAはスライドボート法により作成し、サンプル5,6は焼結法により作成した。
次いで、石英管2内をアルゴンガスで置換した後、140℃/分の昇温速度で下部保持部50の温度が700℃となるまで加熱し、その後10分間700℃で保温した後に、黒鉛製の摺動部材40を移動させて、溶融原料Aを凝固部41に流入させた。保温後の冷却(急冷)では、10分間に300℃以上の速度で冷却した。なお、サンプルの製造プロセスにおける各温度は、下部保持部50の測定用穴(図示しない)に挿入した熱電対からなる温度センサによって測定した温度である。なお、これら各温度は、有限要素法による伝熱解析により、石英管2内の製造容器10を構成する各部材の温度がほぼ等しいものであることを確認した。
得られたサンプルのうち、サンプル1〜6の切削した断面(凝固部における横、高さ方向の断面)のSEM写真をそれぞれ図5〜図10に示す。また、各サンプルについて、1つのSEM画像中に任意に引いた直線と直交する別の直線上に存在する結晶粒の中から選択した10個の結晶粒につき、幅、長さ、アスペクト比を測定した。下記表1に、幅、長さ、アスペクト比の範囲を示す。
次に、サンプル7〜13およびサンプルAを、上面及び底面が、上記熱電変換材料製造装置におけるスライド方向と直交するように、縦3.5mm×横2mm×高さ8〜10mmのサイズにダイシングしたものを用いて、熱電特性として、ゼーベック係数α、導電率σを測定し、出力因子PFを計算した。測定は、サンプル作成後24時間の間に行った。ゼーベック係数αは、サンプルの両端に温度差を発生させ熱起電力を測定した(定常直流法)。導電率σは、サンプルに直流の定電流を流して測定した(直流4端子法)。ゼーベック係数α、導電率σの測定は、熱電特性測定装置(アルバック理工株式会社製、ZEM−3)を用いて約43℃にて行った。出力因子PFは、ゼーベック係数α、導電率σの値から、下記式に従って計算した。結果を下記表2に示す。また、サンプル7〜13についての結果を図11〜図13に示す。図13において、縦軸の0より上方の領域は、n型の材料(ゼーベック係数αが負の値である場合)の出力因子を示し、縦軸の0より下方の領域は、p型の材料(ゼーベック係数αが正の値である場合)の出力因子を示す。
出力因子PF(W/m・K2)=(ゼーベック係数α(μV/K))2×導電率σ(S/m)
また、Cu添加量が所定量以上である場合(サンプル8〜13)は、ゼーベック係数が負の値であり、n型の材料であることが確認された。一方、Cu添加量が0である熱電変換材料(サンプル7)は、ゼーベック係数が正の値であり、p型の材料であることが確認された。
さらに、ドーパントとしてCuとHgBr2を併用した場合は(サンプルA)、導電率σが200×103S/mを超えるとともに、同程度のCu添加量であるサンプル12と比べても熱電特性に優れていた。また、n型の材料であることも確認された。
次に、サンプル9、12を、常温で保管し、所定のタイミングで取り出して、熱電特性として比抵抗(導電率の逆数)を測定した。測定には、上記熱電特性測定装置を用いて行った。結果を図14に示す。図14は、各サンプルの比抵抗と日数との関係を示すグラフである。なお、図14には、比較のため、サンプル7、および、参考用のサンプルB、Cの比抵抗を併せて示す。サンプルB、Cはそれぞれ、下記文献に記載された、焼結法により作成された熱電変換材料である。図14において、◆はサンプル9、□はサンプル12、▲はサンプル7、■はサンプルB、●はサンプルCのプロットをそれぞれ示す。各サンプルについて、比抵抗が6.00×10−4Ωm以下である場合に、比抵抗が低く、導電率が十分に高いと評価した。
サンプルB:Wei-Shu Liu, Qinyong Zhang, Yucheng Lan, Shuo Chen, Xiao Yan, Qian Zhang, Hui Wang, Dezhi Wang, Gang Chen, and Zhifeng Ren, “Thermoelectric Property Studies on Cu-Doped n-type CuxBi2Te2.7Se0.3Nanocomposites”, Advanced Energy Materials 2011, 1, 577-587(非特許文献1)に記載されたサンプルであって、Bi2Te2.7Se0.3の組成となる原料に、Cu0.01Bi2Te2.7Se0.3となる割合のCu粉末を混合して合金を作成し、さらにこの合金を粉砕して作成した粉末を用いて、焼結法により作成したもの。
サンプルC:Shinichi Fujimoto, Seijirou Sano, Tsuyoshi Kajitani, “Protections of the again of n-type Bi-Te thermoelectric materials doped with Cu or Cu-halide” Journal of Alloys and Compounds 443, (2007) 182-190(非特許文献2)に記載されたサンプルであって、Bi2Te3の組成となる原料に、Cu粉末0.0618at%およびGe粉末2.5at%を混合して合金を作成し、さらにこの合金を粉砕して作成した粉末を用いて、焼結法により作成したもの。
S20 加熱溶融工程
S30 急冷工程
11 熱電変換モジュール
13 n型熱電変換素子
15 p型熱電変換素子
Claims (4)
- Bi及びSbのうち少なくとも一方の元素と、Te及びSeのうち少なくとも一方の元素とを含むn型熱電変換材料であって、
さらに、Cuをドーパントとして含み、
短辺長さが10〜150μm、長辺長さが300〜1000μm、アスペクト比が5以上である結晶粒を有することを特徴とするn型熱電変換材料。 - 請求項1に記載のn型熱電変換材料から作られるn型熱電変換素子と、
前記n型熱電変換素子と電気的に接続されるp型熱電変換素子と、を備えることを特徴とする熱電変換モジュール。 - n型熱電変換材料の製造方法であって、
Bi及びSbのうちの少なくとも一方の元素と、Te及びSeのうちの少なくとも一方の元素とを含む原料粉末に対し、前記熱電変換材料がn型半導体の特性を有するようCuを添加する工程と、
前記原料粉末及びCuを加熱溶融する工程と、
溶融した原料粉末及びCuを10分で400℃以上の降温速度で冷却する工程と、を備えることを特徴とするn型熱電変換材料の製造方法。 - 前記Cuを添加する工程では、前記原料粉末に対し、Cuを5モル%以下添加する請求項3に記載のn型熱電変換材料の製造方法。
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