JP5644742B2 - 車両用ポップアップフード装置 - Google Patents

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Description

本発明は、車両用ポップアップフード装置に関する。
近年、歩行者保護等の観点から、車両が歩行者等の衝突体に衝突した際にフードの後端部を持ち上げて衝突体をフードで受け止めて衝撃を緩和する車両用ポップアップフード装置が開発されている。車両用ポップアップフード装置では、フードの後端部両サイドに左右一対のフードヒンジが配設されている。衝突体との衝突時になると、フードヒンジ近傍に配設されたアクチュエータが作動し、突き上げロッドでフードヒンジが突き上げられる。
車両用ポップアップフード装置において、フードの後端部を持ち上げただけでは、衝突体がフードの突き上げ位置付近に衝突した場合に、突き上げロッドが突っ張り、衝突体に作用する荷重反力が大きくなる可能性がある。このため、車両用ポップアップフード装置に別途エネルギー吸収機構を付加して、このような場合には所定の荷重反力以下で所定のエネルギー吸収がなされるようにすることが望ましい。
下記特許文献1には、衝突体がフードの突き上げ位置付近に衝突した場合に、アクチュエータのロッドを折り曲げてエネルギー吸収を行う車両用ポップアップフード装置が開示されている。この車両用ポップアップフード装置では、フードヒンジのロッドの突き上げ部位がフード幅方向内側よりも外側を高くするように変形し、ロッドの折れ曲がり方向を車両後方側に導き、ロッドの折れ曲がり変形の安定化が図られている。
特開2009−73273号公報
しかしながら、上記車両用ポップアップフード装置では、衝突した場合、フード後部側が持ち上げられると、フード後部側の中央部が凹んだ状態になる。フード後部側は自重によっても凹んだ状態になるので、フードヒンジがロッドの突き上げにより変形し、ロッドが変形したフードヒンジを介してフード後部側を押し上げると、フード後部側の中央部の凹みは助長される。このため、フード表面と衝突体との接触面積が増えて、荷重反力を効果的に抑制することができないことが考えられる。
本発明は上記事実を考慮し、衝突体との衝突時にフードが衝突体に及ぼす荷重反力を効果的に抑制することができる車両用ポップアップフード装置を得ることが目的である。
請求項1に係る発明は、車両用ポップアップフード装置において、車体のフード後部側において車両に搭載され、作動することによりロッドを伸長してフード後部側をフード上方側へ押し上げかつその押し上げ位置にフードを保持するアクチュエータと、車体に対してフード後部側を開閉可能に支持し、ロッドが当接してフード後部側を上方側に押し上げる部位がフード幅方向外側よりもフード幅方向内側の方をフード上方側に高くなるように変形させるフードヒンジとを備える。
請求項2に係る発明は、請求項1に係る車両用ポップアップフード装置において、フード後部側を上方側に押し上げる部位はそれよりもフード後部側に一端をヒンジボルトにより回転可能に支持したフードヒンジのヒンジアームの前部であり、ヒンジアームの前部とヒンジボルトとの間に押し上げる部位を変形させる基点としての最弱部が配設されていることを特徴とする。
請求項3に係る発明は、請求項2に係る車両用ポップアップフード装置において、最弱部は、ヒンジアームのフード幅方向外側からフード幅方向内側の車両前方側に亘って配設されており、車両平面視においてヒンジアームの回転軸線に対して非平行で設定されていることを特徴とする。
請求項4に係る発明は、請求項3に係る車両用ポップアップフード装置において、ヒンジアームは、フード幅方向外側においてフード下方側に折り曲げた第1フランジと、フード幅方向内側においてフード下方側に折り曲げた第2フランジとを有し、最弱部は、第1フランジの一部を切り欠いて形成された第1切欠部と、第2フランジの一部を切り欠いて形成された第2切欠部とを有することを特徴とする。
請求項1に係る発明によれば、車両に搭載されたアクチュエータのロッドが作動することにより伸長すると、フード後部側がフード上方側に押し上げられてその位置に保持される。フードヒンジのフード後部側を上方側に押し上げる部位はフード幅方向内側をフード幅方向外側よりもフード上方側に高くなるように変形させる。
これにより、アクチュエータのロッドが伸長してフードヒンジに当接し更にロッドが伸長すると、フード後部側を上方側に押し上げる部位が変形し、この変形した部位がフード後部側のフード幅方向内側を上方側に押し上げる。このため、フードヒンジがフード後部側の中央部をフード上方側に突出させながらフード後部側をその上方側に押し上げる。
請求項2に係る発明によれば、フードヒンジのヒンジアームにおいて前部とヒンジボルトとの間に押し上げる部位を変形させる基点としての最弱部が配設されている。このため、最弱部によって押し上げる部位を狙い通りに変形させることができる。
請求項3に係る発明によれば、ヒンジアームのフード幅方向外側よりもフード幅方向内側の車両前方側に亘って最弱部が配設されている。ヒンジアームにはその回転軸線に対して非平行に設定された最弱部が配設されているので、ヒンジアームの強度を上げることができる。すなわち、フードを過度に強開したり、強閉したりする場合、ヒンジアームの押し上げ部位はヒンジアームの回転軸線に対して平行に折れ曲がろうとする。これに対し、ヒンジアームの押し上げ部位に設定された最弱部が車両平面視においてヒンジアームの回転軸線に対して非平行に設定されているので、最弱部と回転軸線とが交差する関係に立つ。このため、回転軸線に対して非平行な最弱部が、回転軸線に対して平行な折れ曲がりに対して抵抗となり、ヒンジアームの押し上げ部位は回転軸線に対して平行に折れ曲がり難くなる。
請求項4に係る発明によれば、ヒンジアームのフード幅方向外側に第1フランジ、フード幅方向内側に第2フランジが配設されている。第1フランジ及び第2フランジは、ヒンジアームを下方向に折り曲げて形成されており、ヒンジアームの車両前後方向に延伸している。このため、衝突時においてロッドの伸長又は折れ曲がりに対して、ロッドを脱落することなくヒンジアームに沿って摺動することができる。また、最弱部は、第1フランジの一部を切り欠いて形成された第1切欠部と、第2フランジの一部を切り欠いて形成された第2切欠部とを有している。このため、ヒンジアームの板厚を薄くする等の構成に比べれば、第1切欠部及び第2切欠部は最弱部を容易に製作可能である。
請求項1に記載の本発明に係る車両用ポップアップフード装置は、衝突体との衝突時にフード後部側の中央部を突出させながらフード後部側を上方側に押し上げる。このため、フード後部側と衝突体との接触面積を減少することができるので、衝突体に及ぼす荷重反力を効果的に減少することができるという優れた効果が得られる。
請求項2に記載の本発明に係る車両用ポップアップフード装置は、フードヒンジのヒンジアームの変形の基点を明確にし、ヒンジアームを変形させることに対する精度を高められるという優れた効果を有する。
請求項3に記載の本発明に係る車両用ポップアップフード装置は、フードヒンジのヒンジアームにおける正確な変形の基点の形成とヒンジアームの剛性確保の両立を図ることができるという優れた効果を有する。
請求項4に記載の本発明に係る車両用ポップアップフード装置は、ロッドの車両後方側への摺動を円滑に行って狙い通りにロッドを曲げ変形させられる。その結果、衝突時のエネルギーを効率良く吸収することができるという優れた効果を有する。また、フードヒンジの最弱部を低コストにおいて製作することができるという優れた効果が得られる。
本発明の一実施形態に係る車両用ポップアップフード装置においてドライバ側から見て右側に配置されたポップアップ機構部を示す側面図である。 ドライバ側から見て右側に配置されたポップアップ機構部を示す平面図である。 図1及び図2に示すポップアップ機構部を示す斜視図である。 図1〜図3に示す車両用ポップアップフード装置の全体構成を示す平面図である。 押し上げ位置保持状態のときのポップアップ機構部の状態を示す図1に対応する側面図である。 (A)押し上げる前のポップアップ機構部のヒンジアームの状態を示す斜視図、(B)押し上げ位置に保持状態のときのポップアップ機構部のヒンジアームの状態を示す斜視図である。 ドライバ側から見て右側に配置されたポップアップ機構部において押し上げ位置に保持状態のときに車両前方向から車両後方向を見た断面図である。 押し上げ位置に保持状態のときにポップアップ機構部のヒンジアームの変形状態とフードの形状との関係を示す、車両前方向から車両後方向を見た模式的断面図である。 フード上方側から衝突荷重が作用したときの作動状態を示す図5に対応する側面図である。
以下、図1〜図4及び図6(A)を用いて、本発明に係る車両用ポップアップフード装置の一実施形態について説明する。なお、図において適宜示される矢印FRは車両前方側を示しており、矢印UPは車両上方側を示しており、矢印INは車両幅方向内側を示している。
図4には実施形態に係る車両用ポップアップフード装置の全体構成を示す平面図が示されている。また、図2には右ハンドル車でドライバ側から見て右側(以下、単に「ドライバ側から見て右側」と略す。)に配置されたポップアップ機構部を拡大して示す平面図が示されている。更に、図1にはドライバ側から見て右側に配置されたポップアップ機構部をエンジンルーム側から見て示す拡大側面図が示されている。
これらの図に示すように、車両用ポップアップフード装置10は、エンジンルームを開閉するフード12の後端側両サイドにそれぞれ配設された左右一対のポップアップ機構部14を主要部として構成されている。左右のポップアップ機構部14はいずれも同一構成であるので、以下の説明においてはドライバ側から見て右側に配置されたポップアップ機構部14の構成について説明し、ドライバ側から見て左側に配置されたポップアップ機構部14の構成の説明は省略する。
ポップアップ機構部14は、フード12を開閉可能に支持するフードヒンジ16と、歩行者等の衝突体との衝突時に作動するアクチュエータ18と、によって構成されている。アクチュエータ18はその作動によりフード上方側へ軸方向に移動するロッド20(図5及び図7参照)を備えている。以下、この順に各構成要素について説明する。
<フードヒンジ16の構成>
フードヒンジ16は、ヒンジベース26と、ヒンジアーム30と、によって構成されている。ヒンジベース26は、フード12の後端側とウインドシールドガラスの下端部との間に車両幅方向に沿って延在するカウルの両サイドに設けられた車体側構成部材であるカウルトップサイド22の上面部22Aに後述する取付ボルト36で固定される。ヒンジアーム30は、ヒンジベース26にヒンジピン(回転中心軸)28によって相対回転可能に連結され、ヒンジベース26とフード12の後述する後端膨らみ部34Aとを連結する。
なお、フード12は、車両外側に配置されて意匠面を構成するフードアウタパネル32と、エンジンルーム側に配置されると共にフードアウタパネル32を補強するフードインナパネル34と、を含んで構成されている。フードアウタパネル32及びフードインナパネル34はその端末部がヘミング加工されることによって結合されている。また、フードインナパネル34の後端側はフード下方側へ膨らんでおり、これによりフード12の後端側に後端膨らみ部34Aが形成されている。更に、フードヒンジ16は、本来的にはフード12をボディーに開閉可能に支持するためのヒンジ部品であるが、本実施形態では車両用ポップアップフード装置10の構成要素でもある。
各部の構成についてより具体的に説明すると、図1〜図3に示すように、ヒンジベース26は車両正面視で略L字状に形成されている。このヒンジベース26は、車両前後方向に沿って延在する狭幅板状の取付部26Aと、取付部26Aの車両幅方向内側の端部から車両上方側へ屈曲されかつ側面視で略三角形状に形成された支持部26Bと、を備えている。取付部26Aは、カウルトップサイド22の上面部22Aに取付ボルト36により固定されている。
一方、ヒンジアーム30は、車両前後方向に沿って延在する長尺状の部材であり、側面視で略L字状(上下逆向きの「V」の字状)に形成されている。構造的には、ヒンジアーム30は、ヒンジベース26の支持部26Bに対して平行に配置される側壁部(第1フランジ)30Aと、側壁部30Aの上縁部からフード幅方向中央側(内側)へ向けて折り曲げられて形成されるとともにフード12の後端膨らみ部34Aに対して平行に配置される頂壁部30Bと、を含んで構成されている。一般断面の縦断面形状は上下逆向きのL字状とされている。このうち、頂壁部30Bの前部下面(図1に矢印Aで示す範囲)が、後述するロッド20の先端部(押圧部54)によって押し上げられて当該先端部(押圧部54)が摺動していく押し上げ部位(摺動面)38とされている。但し、実際には、後述するロッド20がフード上方側へ軸方向移動してその先端部の押圧部54が当接する位置よりもフード前方側の面は、摺動面としては使用しない。
また、頂壁部30Bの前端部の内側縁はフード下方側へ折り曲げられており、側壁部30Aと平行な一対のフランジを形成している(以下、この部分を「追加側壁部(第2フランジ)30C」と称す)。ヒンジアーム30は、追加側壁部30Cが形成された部位では、コ字状の断面形状とされている。
図1〜図3に示すように、上記フードヒンジ16の側壁部30Aは、ヒンジベース26の支持部26Bの車両幅方向内側に隣接して配置される後部30A1と、後部30A1に対してフード幅方向中央側へオフセットして配置されかつフード前方側へ延設された前部30A2と、後部30A1と前部30A2とを斜めに繋ぐ中間部30A3と、によって構成されている。フードヒンジ16の頂壁部30Bも同様に構成されており、ヒンジベース26の支持部26B側に配置される後部30B1と、フード12の後端膨らみ部34Aの下面に当接状態で重ねられる前部30B2と、後部30B1と前部30B2とを斜めに繋ぐ中間部30B3とを備えている。
ヒンジアーム30の側壁部30Aの後端部は、ヒンジピン28によってヒンジベース26の支持部26Bの上端部にヒンジ結合されている。従って、ヒンジアーム30は、ヒンジピン28を回転中心として車両上下方向へ回動可能(回転可能)とされている。なお、側壁部30Aの後端部には、鉤状に屈曲された開度規制用のストッパ40が半径方向に突出されている。更に、ストッパ40に対応してヒンジベース26の支持部26Bの上端部には、ストッパ40と干渉してそれ以上のヒンジアーム30の回動を規制する開度規制用の規制部42が一体に形成されている。
また、ヒンジアーム30の頂壁部30Bの前部30B2は、フード12の後端膨らみ部34Aの下面に沿って略車両前後方向に延出されている。この前部30B2は、前後2箇所において締結具であるヒンジボルト44及び図示しないウエルドナットによってフード12の後端膨らみ部34Aに締結(固定)されている。なお、ヒンジボルト44のボルト締結方向はフード上下方向であり、組付に際してはフード下方側からヒンジボルト44が図示しないウエルドナットに螺入されるようになっている。従って、ヒンジボルト44の締結後の状態では、ヒンジボルト44のボルト頭部44Aが頂壁部30Bの下面からフード下方側へ突出した状態において配置されている(図1参照)。
更に、上述した側壁部(第1フランジ)30Aには、フード後方側に配置されたヒンジボルト44のボルト頭部44Aよりも車両後方側の位置に、側面視で矩形状とされた最弱部(低剛性部)を構築する切欠部(第1切欠部)46Aが形成されている。切欠部46Aは、側壁部30Aの下縁側から上縁側へ向けて切り欠かれている。なお、切欠部46Aは、側壁部30Aと頂壁部30Bとの接続部位である稜線にかかるように設定されている。
また、追加側壁部(第2フランジ)30Cには、フード後方側に配置されたヒンジボルト44のボルト頭部44Aよりも車両前方側であって切欠部46Aに対してオフセットされた位置に、側面視で矩形状とされた上記最弱部を構築する切欠部(第2切欠部)46Cが形成されている。切欠部46Cは、追加側壁部30Cの下縁側から上縁側へ向けて切り欠かれている。なお、切欠部46Cは、追加側壁部30Cと頂壁部30Bとの接続部位である稜線にかかるように設定されている。
図2及び図3に示すように、ヒンジアーム30のフード幅方向外側の側壁部30Aに配設された切欠部46Aからフード幅方向内側の追加側壁部30Cに配設された切欠部46Cに亘る頂壁部30Bは、折れ曲がり変形の基点とされる最弱部になる。同図には便宜的に符号Qを付けた折れ曲がり線としての最弱部が示されている。この折れ曲がり線Qと、この折れ曲がり線Qをフード幅方向に投影した側壁部30Aとがなす角度は例えば30度〜60度の範囲内に設定されている。本実施形態においては、折れ曲がり線Qの角度は40度〜50度の範囲内に設定されている。
なお、上記の如く構成されたヒンジアーム30を機能的に見た場合、側壁部30Aの後部30A1がヒンジ側連結部として機能し、頂壁部30Bの前部30B2がフード側連結部として機能し、両機能を併有した部品がヒンジアーム30といえる。
<アクチュエータ18の構成>
図1及び図5に示すように、アクチュエータ18は、略円柱状に形成されており、平面視においてヒンジアーム30の頂壁部30Bにおける押し上げ部位(押し上げ面)38の前部下方に略車両上下方向を軸方向として配置されている。アクチュエータ18にはブラケット48が一体的に設けられており、ブラケット48がカウルトップサイド22の側面部22Bにボルト50によって固定されている。また、図示を省略するが、アクチュエータ18のハウジング52の内部には、ガス発生剤を用いて構成されたガス発生手段及びガス発生剤を燃焼させてガスを発生させる点火装置が配設されている。なお、ガス発生剤を使ったタイプの他に、ハウジング52内に高圧ガスが封入されて点火装置が作動することにより高圧ガスを隔成している隔壁を破断させるタイプを利用することも可能である。
また、上記アクチュエータ18を作動させる点火装置は、コンソールボックスの下方等に配設された図示しないECU(制御手段)と接続されている。ECUは、フロントバンパ等に配設されて歩行者等の衝突体との衝突を検知又は予知する衝突検知センサ(衝突検知手段)と接続されている。
<ロッド20の構成>
ロッド20はアクチュエータ18のハウジング52内に同軸上に収容されている。ロッド20は真直棒状の部材とされており、その下端部にはハウジング52内に緊密に収容されたピストン(図示省略)が設けられている。ハウジング52内において発生したガスは、このピストンの推進力として作用するようになっている。また、ロッド20の上端部には、ロッド20よりも大径とされた押圧部54が取り付けられている。この押圧部54の先端部は緩やかな曲面形状に形成されており、頂壁部30Bの押し上げ部位38の前端部近傍部位と上下に対向して配置されている。より正確には、図2及び図3に示すように、押圧部54(の押し上げ位置)は、押し上げ部位38の、ヒンジボルト44よりもフード幅方向内側に配置されている。換言すれば、押圧部54は、車両平面視において前後一対のヒンジボルト44の略中間であって、一対のヒンジボルト44に対してフード幅方向内側にオフセットされた位置(オーバーラップしない位置)に配置されている。
更に、図5に示すように、フード12の押し上げ位置保持状態において、ロッド20の軸線とヒンジアーム30の押し上げ部位38とのなす角度θは95度〜140度の範囲内に設定されている。なお、単に「ロッド20の軸線とヒンジアーム30の押し上げ部位38とのなす角度」というとロッド20の軸線に対して車両後方側の角度と車両前方側の角度の2つがある。ここでいう「ロッド20の軸線とフードヒンジ30の押し上げ部位38とのなす角度θ」は、前者の方の角度のことを指しており、鈍角の方である。
(本実施形態の作用並びに効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
図1、図3及び図6(A)に示す状態が車両用ポップアップフード装置10の非作動状態である。この状態のときには、アクチュエータ18が非作動状態にあるため、ロッド20はアクチュエータ18のハウジング52内に収容された状態にある。また、図2に示すように、ロッド20の先端部の押圧部54は、ヒンジアーム30の頂壁部30Bにおける押し上げ部位38の前端側の直下に対向して配置されており、かつヒンジボルト44に対してフード幅方向内側にオフセットされた位置にある。
この状態から、歩行者等の衝突体と前面衝突すると、図示しない衝突検知手段によって衝突体と前面衝突したことが検知され、図示しないECUに衝突信号が出力される。ECUでは、入力された衝突信号に基づいて車両用ポップアップフード装置10を作動させるべきか否かを判断し、車両用ポップアップフード装置10を作動させるべきと判断すると、アクチュエータ18に作動信号が出力される。これにより、アクチュエータ18内の図示しない点火装置が点火し、ガス発生剤を燃焼させて所定量のガスをハウジング52内に発生させる。なお、アクチュエータ18が高圧ガス封入タイプの場合には、点火装置が作動することにより隔壁が破断等されることにより所定量のガスがハウジング52内に発生する。また、プリクラッシュセンサを搭載している場合には、前面衝突が予知された段階において上記の作動となる。
上記の如くして発生したガスは、ハウジング52内に緊密に収容されたピストンに作用し、ピストンをハウジング52の軸方向先端側(すなわち、フード上方側)へ押圧する。ピストンにはロッド20の下端部が連結されているので、ピストンがハウジング52内を上昇するとロッド20がフード上方側へ向けて軸方向移動する。その結果、図5に示すように、ロッド20の先端部の押圧部54がヒンジアーム30の押し上げ部位38に当接し、ヒンジアーム30をヒンジピン28回りに、図5中、時計方向(矢印B方向)へ回動させることにより、フード12の後端側(後端膨らみ部34A)がフード上方側へ押し上げられる。
このとき、ヒンジアーム30の側壁部30Aの前部30A2側は切欠部(第1切欠部)46Aの形成部位の剛性が他の部位に比べて低くなっており、更に追加側壁部30Cに配設された切欠部(第2切欠部)46Cの形成部位の剛性が他の部位に比べて低くなっている。この結果、図6(B)及び図7に示すように、切欠部46A及び46Cと、それらを結ぶ頂壁部30Bの折れ曲がり線Q部分とにより構築される最弱部が折れ曲がりの基点となり、ヒンジアーム30が変形により屈曲される。
ヒンジアーム30の押し上げ部位38(頂壁部30Bの前部30B2)は、図7に示すように、フード幅方向外側すなわち丁度ヒンジボルト44とフード12との締結箇所よりもフード幅方向内側が高くなるように屈曲される。図8に示すように、フード12の両サイドに配設されたそれぞれのヒンジアーム30の押し上げ部位38がいずれもフード12のフード幅方向内側をフード上方側に押し上げるので、フード12の後部側の中央部は矢印Cを用いて示すように突出形状(凸形状)を維持しながら押し上げられる。フード12の突出形状が維持される結果、フード12の表面(フードアウタパネル32の表面)と衝突体との接触面積を減少することができるので、衝突体に及ぼす荷重反力を効果的に抑制することができる。これは、衝突体に対する傷害値の悪化を改善することができるといえる。
なお、ヒンジアーム30の回動ストロークは側壁部30Aの後端部に形成されたストッパ40をヒンジベース26の規制部42に当接することによって規制しているので、ヒンジアーム30は所定量以上に回動しない。すなわち、フード12の後端側のポップアップ量(リフトアップ量)は、予め決められている。
図5に示すフード12の押し上げ位置保持状態において、フード上方側から所定値以上の衝突荷重が、ロッド20によるフード12の押し上げ位置付近に作用した場合、図9に示すように、ロッド20の先端部の押圧部54がヒンジアーム30の押し上げ部位38に沿って車両後方側へ摺動される。そして、ロッド20の押圧部54がヒンジアーム30の押し上げ部位38上を車両後方側へ摺動するのに伴ってロッド20の根元が折れ曲がり変形する(塑性変形する)。このときのロッド20の曲げ変形により、衝突エネルギーが吸収されて、衝突体への荷重反力(入力荷重)を低減することができる。なお、押し上げ部位38上をロッド20の押圧部54が摺動していく際に、ヒンジアーム30の側壁部30A及び追加側壁部30Cは、押圧部54の摺動を導くガイド部材とされており、押し上げ部位38上からの押圧部54の脱落を防止することができる。
以上説明したように、本実施形態に係る車両用ポップアップフード装置10によれば、車両に搭載されたアクチュエータ18のロッド20が作動により伸長すると、フード後部側がフード上方側に押し上げられてその位置に保持される。フードヒンジ16のフード後部側を上方側に押し上げる部位38はフード幅方向内側をフード幅方向外側よりもフード上方側に高くなるように変形される。これにより、アクチュエータ18のロッド20が伸長してフードヒンジ16に当接し更にロッド20が伸長すると、フード後部側を上方側に押し上げる部位38が変形し、この変形した部位38がフード後部側のフード幅方向内側を上方側に押し上げる。このため、フードヒンジ16がフード後部側の中央部をフード上方側に突出させながらフード後部側をその上方側に押し上げる。従って、車両用ポップアップフード装置10は、フード後部側と衝突体との接触面積を減少することができるので、衝突体に及ぼす荷重反力を効果的に減少することができるという優れた効果が得られる。
また、車両用ポップアップフード装置10は、フードヒンジ16のヒンジアーム30において前部30A2、30B2及び30C2とヒンジボルト28との間に押し上げる部位38を変形させる最弱部が配設されている。最弱部は変形の基点(折れ曲がりの基点)となるので、押し上げる部位38を狙い通りに変形させることができる。従って、車両用ポップアップフード装置10は、フードヒンジ16のヒンジアーム30の変形の基点を明確にし、ヒンジアーム30を変形させることに対する精度を高められるという優れた効果を有する。
また、車両用ポップアップフード装置10は、ヒンジアーム30のフード幅方向外側よりもフード幅方向内側の車両前方側に亘って最弱部が配設されている。ヒンジアーム30にはその回転軸線に対して非平行に設定された最弱部が配設されているので、ヒンジアーム30の強度を上げることができる。すなわち、フード12を過度に強開したり、強閉したりする場合、ヒンジアーム30の押し上げ部位38はヒンジアーム30の回転軸線に対して平行に折れ曲がろうとする。これに対し、ヒンジアーム30の押し上げ部位38に設定された最弱部が車両平面視においてヒンジアーム30の回転軸線に対して非平行に設定されているので、最弱部と回転軸線とが交差する関係に立つ。このため、回転軸線に対して非平行な最弱部が、回転軸線に対して平行な折れ曲がりに対して抵抗となり、ヒンジアーム30の押し上げ部位38は回転軸線に対して平行に折れ曲がり難くなる。従って、車両用ポップアップフード装置10は、フードヒンジ16のヒンジアーム30における正確な変形の基点の形成とヒンジアーム30の剛性確保の両立を図ることができるという優れた効果を有する。
更に、車両用ポップアップフード装置10は、ヒンジアーム30のフード幅方向外側に側壁部(第1フランジ)30A、フード幅方向内側に追加側壁部(第2フランジ)30Cが配設されている。側壁部30A、追加側壁部30Cは、いずれもヒンジアーム30を下方向に折り曲げて形成されており、ヒンジアーム30の車両前後方向に延伸している。このため、衝突時においてロッド20の伸長又は折れ曲がりに対して、ロッド20を脱落することなくヒンジアーム30に沿って摺動することができる。また、最弱部は、側壁部30Aの一部を切り欠いて形成された切欠部(第1切欠部)46Aと、追加側壁部30Cの一部を切り欠いて形成された切欠部(第2切欠部)46Cとを有している。このため、ヒンジアーム30の板厚を薄くする等の構成に比べれば、切欠部46A及び46Cは最弱部を容易に製作可能である。従って、車両用ポップアップフード装置10は、ロッド20の車両後方側への摺動を円滑に行って狙い通りにロッド20を曲げ変形させられる。その結果、衝突時のエネルギーを効率良く吸収することができるという優れた効果を有する。また、フードヒンジ16の最弱部を低コストにおいて製作することができるという優れた効果が得られる。
〔上記実施形態の補足説明〕
(1)上述した実施形態では、フードヒンジ16をカウルトップサイドに固定したが、これに限らず、フードヒンジ16をエプロンアッパメンバ等の車体側構成部材に固定するようにしてもよい。
(2)上述した実施形態では、フード12の後端側をロッド20が押し上げる構成を採ったが、これに限らず、フード後部側をロッドが押し上げる構成であればよい。すなわち、本発明における「フード後部側」とは、フード12の前後方向中間部よりも車両後方側に位置する部分を指している。好ましくは、フード後端からフード全長の1/3程度までの部分をロッド20で押し上げるとよい。なお、フードの前後方向中間部を除いているのは、フードの前後方向中間部にはフード12の折れビードが設定されていることがあり、この部分をフード上方側へ押し上げると、フードが折れ変形し、フード後端側が上がらないためである。
10 車両用ポップアップフード装置
12 フード
16 フードヒンジ
18 アクチュエータ
20 ロッド
30 ヒンジアーム
30A 側壁部(第1フランジ)
30C 追加側壁部(第2フランジ)
34A 後端膨らみ部(フード後部側)
38 押し上げ部位
44 ヒンジボルト
44A ボルト頭部
46A 切欠部(第1切欠部、最弱部)
46C 切欠部(第2切欠部、最弱部)
54 押圧部

Claims (4)

  1. 車体のフード後部側において車両に搭載され、作動することによりロッドを伸長して前記フード後部側を前記フード上方側へ押し上げかつその押し上げ位置に前記フードを保持するアクチュエータと、
    前記車体に対して前記フード後部側を開閉可能に支持し、前記ロッドが当接して前記フード後部側を上方側に押し上げる部位が前記フード幅方向外側よりも前記フード幅方向内側の方を前記フード上方側に高くなるように変形させるフードヒンジと、
    を備えた車両用ポップアップフード装置。
  2. 前記フード後部側を上方側に押し上げる部位はそれよりも前記フード後部側に一端をヒンジボルトにより回転可能に支持した前記フードヒンジのヒンジアームの前部であり、
    前記ヒンジアームの前記前部と前記ヒンジボルトとの間に前記押し上げる部位を変形させる基点としての最弱部が配設されている請求項1に記載の車両用ポップアップフード装置。
  3. 前記最弱部は、前記ヒンジアームの前記フード幅方向外側から前記フード幅方向内側の車両前方側に亘って配設されており、車両平面視において前記ヒンジアームの回転軸線に対して非平行で設定されている請求項2に記載の車両用ポップアップフード装置。
  4. 前記ヒンジアームは、フード幅方向外側においてフード下方側に折り曲げた第1フランジと、フード幅方向内側においてフード下方側に折り曲げた第2フランジとを有し、
    前記最弱部は、前記第1フランジの一部を切り欠いて形成された第1切欠部と、前記第2フランジの一部を切り欠いて形成された第2切欠部とを有する請求項3に記載の車両用ポップアップフード装置。
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