(第1の実施の形態)
以下、図1〜図5を用いて第1の実施の形態に係る車両用ポップアップフード装置10について説明する。なお、これらの図において適宜示される矢印FRは車両前方を示し、矢印UPは車両上方を示し、矢印RHは車両右方(車両幅方向一方側)を示している。
図2に示されるように、車両用ポップアップフード装置10は、エンジンルームを開閉するフード12の後端側両サイドにそれぞれ配設された左右一対のポップアップ機構部20を主要部として構成されている。左右のポップアップ機構部20はいずれも同一の構成であるので、以下の説明では車両右側に配置されたポップアップ機構部20の構成について説明し、車両左側に配置されたポップアップ機構部20の構成の説明は省略する。
ポップアップ機構部20は、フード12を開閉可能に支持するフードヒンジ22と、歩行者等の衝突体との衝突時に作動するアクチュエータ40(図4参照)及びエネルギー吸収機構60(図1参照)と、このアクチュエータ40が作動することによりフード上方側へ軸方向移動するロッド46(図4参照)と、を含んで構成されている。また、ポップアップ機構部20は、フード12の所定角度以上の開きを制限するためのリンク機構50を備えている。以下、初めにフード12の構成について説明し、次いで上記各構成について説明する。
図3に示されるように、フード12は、車両外側に配置されて意匠面を構成するフードアウタパネル14と、エンジンルーム側に配置されると共にフードアウタパネル14を補強するフードインナパネル16と、を含んで構成されており、その両者の端末部がヘミング加工によって結合されている。また、フードインナパネル16の後端側(後部側)はフード下方側へ膨らんでおり、これによりフード12の後端側に後端膨らみ部18が形成されている。
<フードヒンジ22の構成>
図2及び図3に示されるように、フードヒンジ22は、ヒンジベース24とヒンジアーム30とを含んで構成されている。ヒンジベース24は、車両正面視で略逆L字形状に形成されており、車両前後方向に沿って延在する板状の取付部24Aと、取付部24Aの車両幅方向内側の端部から車両上方側へ屈曲されかつ板状に形成された支持部24Bと、を備えている。そして、取付部24Aが、車体側構成部材であるカウルトップサイド26の上面部26A(図3参照)に取付ボルト(図示省略)よって固定されている。このカウルトップサイド26は、フード12の後端側とウインドシールドガラスの下端部との間に車両幅方向に沿って延在するカウルの両サイドに設けられている。
ヒンジアーム30は、車両前後方向に沿って延在する長尺状の部材であり、側面視で略L字形状に形成されている。ヒンジアーム30は、ヒンジベース24の支持部24Bに対して平行に配置される側壁部30Aを備えており、ヒンジアーム30の側壁部30Aの後端部が、ヒンジピン28によってヒンジベース24の支持部24Bの上端部にヒンジ結合されている。したがって、ヒンジアーム30は、ヒンジピン28を回転中心として車両上下方向(図3の矢印A方向及び図4の矢印B方向)へ回転可能とされている。
また、ヒンジアーム30は、頂壁部30Bを備えており、頂壁部30Bは、側壁部30Aの上縁部からフード幅方向中央側へ折り曲げられて形成されると共に、フード12の後端膨らみ部18に対して略平行に配置されている。これにより、ヒンジアーム30の一般断面の縦断面形状は上下逆向きのL字形状とされている。また、頂壁部30Bの前部下面(図3に矢印Eで示す範囲)が、押上面32とされており、押上面32は、後述するロッド46の先端部(押圧部48)によって押し上げられるようになっている。
また、ヒンジアーム30の頂壁部30Bにおける前部は、フード12の後端膨らみ部18の下面に沿って略車両前後方向に延出されており、図示しないヒンジボルト及びウエルドナットによって後端膨らみ部18に締結(固定)されている。これにより、ヒンジベース24とフード12の後端膨らみ部18とが、ヒンジアーム30によって連結されている。なお、ヒンジボルトのボルト締結方向はフード上下方向であり、組付に際してはフード下方側からヒンジボルトがウエルドナットに螺入されるようになっている。したがって、ヒンジボルトの締結後の状態では、ヒンジボルトのボルト頭部が頂壁部30Bの下面からフード下方側へ突出した状態で配置されるようになっている。
さらに、上述した側壁部30Aには、側面視で矩形状とされた切欠34(広義には低剛性部として把握される要素である)が形成されている。切欠34は、側壁部30Aの下縁側から上縁側へ向けて切り欠かれており、側壁部30Aと頂壁部30Bとの接続部位である稜線にかかるように設定されている。これにより、ヒンジアーム30の側壁部30Aでは、切欠34の形成部位の剛性が他の部位の剛性に比べて低くなっている。
なお、フードヒンジ22は、本来的にはフード12をボディーに開閉可能に支持するためのヒンジ部品であるが、本実施形態では、車両用ポップアップフード装置10の構成要素でもある。
<アクチュエータ40の構成>
図3及び図4に示されるように、アクチュエータ40は、略円柱状に形成されており、平面視でヒンジアーム30の頂壁部30Bにおける押上面32の下方に略車両上下方向を軸方向として配置されている。アクチュエータ40にはブラケット42が一体的に設けられており、ブラケット42がカウルトップサイド26の側面部26Bに固定されている。また、アクチュエータ40のハウジング44の内部には、図示しないガス発生装置が収容されている。このガス発生装置は、図示しないECU(制御手段)と電気的に接続されており、ECUは、フロントバンパ等に配設されて歩行者等の衝突体との衝突を検知又は予知する衝突検知センサ(衝突検知手段)と電気的に接続されている。
<ロッド46の構成>
ロッド46は、アクチュエータ40のハウジング44内に同軸上に収容されている。図4に示されるように、ロッド46は真直棒状の部材とされており、その下端部にはハウジング44内に緊密に収容されたピストン(図示省略)が設けられている。そして、アクチュエータ40のガス発生装置によって発生したガスがハウジング44内へ供給されて、ハウジング44内のガス圧によってピストンが上昇するようになっている。また、ロッド46の上端部には、ロッド46よりも大径とされた押圧部48が取り付けられている。この押圧部48の先端部は緩やかな曲面形状に形成されており、頂壁部30Bの押上面32と上下に対向して配置されている。より正確には、押圧部48は、ヒンジボルトのボルト頭部と干渉しない位置に配置されている。
そして、ピストンの上昇に伴ってロッド46が上方側へ移動すると、フード12の押上面32がロッド46の押圧部48によってフード上方側へ押し上げられるように構成されている(図4に示される位置であり、以下この位置を「押上位置」という)。また、押上位置では、ピストンはハウジング44にロックされておらず、フード下方側への荷重がロッド46に作用することで、ロッド46がハウジング44内をフード下方側へ後退するように構成されている。
<リンク機構50の構成>
図3に示されるように、リンク機構50は、リンクとしての第1リンク52と第2リンク54とを含んで構成されており、第1リンク52及び第2リンク54は、ヒンジベース24の支持部24Bとヒンジアーム30の側壁部30Aとの間に配置されて、ヒンジベース24とヒンジアーム30とを連結している。第1リンク52は、略矩形板状に形成されて、車両幅方向を板厚方向にしてヒンジベース24の支持部24Bの車両幅方向内側に配置されている。図1に示されるように、第1リンク52の長手方向一端部には、略D字形状を成す支持孔52Aが貫通形成されており、支持孔52A内に支持軸56の先端部が挿入されている。この支持軸56は、車両幅方向を軸方向にしてヒンジベース24の支持部24Bに回転可能に支持されており、支持軸56の先端部が断面略D字形状に形成されている。これにより、第1リンク52は支持軸56の軸回りに支持軸56と一体的に回転するように構成されている。
図3に示されるように、第2リンク54は、略矩形板状に形成されて、第1リンク52とヒンジアーム30の側壁部30Aとの間に車両幅方向を板厚方向にして配置されている。そして、第2リンク54の長手方向一端部が、車両幅方向を軸方向とした軸57によって第1リンク52の長手方向他端部と相対回転可能に連結されている。一方、第2リンク54の長手方向他端部は、車両幅方向を軸方向とした軸58によってヒンジアーム30の側壁部30Aと相対回転可能に連結されている。
これにより、フード12を開く場合には、ヒンジアーム30が開方向側(図3の矢印A方向)へ回転されると共に、ヒンジアーム30の回転と連動して第1リンク52が開方向側(図3の矢印C方向側)へ回転される。一方、フード12を閉じる場合には、ヒンジアーム30が閉方向側(図4の矢印B方向側)へ回転されると共に、ヒンジアーム30の回転と連動して第1リンク52が支持軸56の軸回りに閉方向側(図4の矢印D方向側)へ回転される。
なお、リンク機構50は、フード12の所定角度(フード12が押上位置よりさらに開方向へ開かれた角度)以上の開きを制限するための機構であるが、本実施形態では、車両用ポップアップフード装置10の構成要素でもある。
<エネルギー吸収機構60の構成>
図1に示されるように、エネルギー吸収機構60は、回転体としてのラチェット62と、規制部材としてのロックパウル70と、ロックピン74(広義には、「保持部材」として把握される要素である)と、を含んで構成されている。
ラチェット62は、略円板状に形成されると共に、ヒンジベース24の支持部24Bと第1リンク52との間に車両幅方向を板厚方向にして配置されている。ラチェット62の略中央部には、略D字形状を成す挿入孔64が貫通形成されており、挿入孔64内に支持軸56の先端部が挿入されている。これにより、ラチェット62は、支持軸56及び第1リンク52と一体的に回転される。すなわち、ラチェット62はヒンジアーム30の回転に連動して支持軸56の軸回りを回転するように構成されている。
図5(A)〜(D)にも示されるように、ラチェット62の外周部には、係合歯としての一対のラチェット歯66とカム面68とが形成されている。カム面68は、側面視で略円弧状に形成されて、ラチェット歯66に対して閉方向側(図1の矢印D方向側)に隣接して配置されると共に、ラチェット歯66と滑らかに接続されている。また、カム面68の半径は、ラチェット62の回転中心からラチェット歯66の先端までの距離に比して大きく設定されている。なお、図5(A)〜(D)では、便宜上ラチェット62の挿入孔64を円形に記載している。
ロックパウル70は、略楔形板材により形成されて、車両幅方向を板厚方向にしてラチェット62の側方に配置されている。このロックパウル70の一端部は、車両幅方向を軸方向にした軸71によってヒンジベース24の支持部24Bに回転可能に支持されている。これにより、ロックパウル70は、軸71の軸回りに、図5(A)に示される待機位置と図5(B)に示される係合位置との間を回転するように構成されている。また、ロックパウル70には、図示しないバネが係合されており、このバネの付勢力によってロックパウル70は係合位置側へ付勢されている。
一方、ロックパウル70の他端部には、ロック歯72が形成されており、ロック歯72は、ラチェット62のラチェット歯66と係合可能に構成されている。そして、ヒンジアーム30が押上位置に押し上げられた状態において、ロックパウル70のロック歯72がラチェット62のラチェット歯66と係合することで、ラチェット62の閉方向側(図1及び図5(B)の矢印D方向側)への回転が規制されるようになっている(図5(B)参照)。
また、ロック歯72とラチェット歯66との係合状態において、所定値以上のフード下方側への衝突荷重がフード12(ヒンジアーム30)に作用した場合には、ロック歯72とラチェット歯66との係合状態が解除されて、ラチェット62の閉方向側への回転が許容されるようなっている。一方、ロック歯72とラチェット歯66との係合状態(図5(B)の状態)からラチェット62が開方向側(図5(B)の矢印C方向側)へ回転されると、ロック歯72がラチェット62のカム面68に当接されて、ロックパウル70が係合位置から待機位置へ回転されるようになっている(図5(C)参照)。
ロックピン74は、略円柱状に形成されて、車両幅方向を軸方向にしてラチェット62とロックパウル70との間に配置されている。そして、ロックピン74は、待機位置におけるロックパウル70の外周部と係合されて、ロックパウル70を待機位置に保持している。
また、ロックピン74は、車両幅方向に移動可能に構成されており、ロックピン74が車両幅方向外側へ移動されることで、ロックピン74によるロックパウル70に対する保持状態が解除されるようになっている。具体的には、図1に示されるように、車両幅方向を長手方向とするシリンダ76内にピストン78が収容されており、このピストン78にロックピン74の基端部(車両幅方向外側端部)が結合されている。また、シリンダ76の側壁にはガス発生装置80が装着されており、ガス発生装置は上述したECUと電気的に接続されている。さらに、シリンダ76内には、比較的荷重の低いバネ(図示省略)が収容されており、このバネの付勢力によってピストン78が車両幅方向内側へ付勢されている。
そして、ガス発生装置80が作動してシリンダ76内にガスが供給されると、シリンダ76内のガス圧によって、ピストン78がバネの付勢力に抗してシリンダ76内を車両幅方向外側へ移動することで、ロックピン74が車両幅方向外側へ瞬時に移動するようになっている。また、ガス発生装置80の作動後にシリンダ76内のガスが抜けると、バネの付勢力によってピストン78が車両幅方向内側へ移動されて、ロックピン74が元の位置に復帰されるようになっている。なお、ロックパウル70が係合位置に配置された状態では、ロックピン74の先端(車両幅方向内側端)がロックパウル70の側面に当接して、ロックピン74の車両幅方向内側への移動が制限されるようになっている。
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
図3に示される状態が車両用ポップアップフード装置10の非作動状態である。この状態のときには、アクチュエータ40が非作動状態にあるため、ロッド46はアクチュエータ40のハウジング44内に収容されている。また、ロッド46の先端部の押圧部48は、ヒンジアーム30の頂壁部30Bにおける押上面32の直下に対向して配置されている。さらに、エネルギー吸収機構60のロックパウル70はロックピン74によって待機位置に保持されており、ロックパウル70とラチェット62との係合は解除された状態にされている(図5(A)参照)。
この状態から、歩行者等の衝突体と前面衝突すると、衝突検知手段によって衝突体と前面衝突したことが検知され、ECUに衝突信号が出力される。ECUでは、入力された衝突信号に基づいて車両用ポップアップフード装置10を作動させるべきか否かを判断し、車両用ポップアップフード装置10を作動させるべきと判断すると、アクチュエータ40に作動信号が出力される。これにより、アクチュエータ40のガス発生装置が作動して、ハウジング44内にガスが供給される。
ハウジング44内にガスが供給されると、ハウジング44内のガス圧によってピストンがハウジング44の軸方向先端側(即ち、フード上方側)へ移動される。ピストンには、ロッド46の下端部が連結されているので、ピストンがハウジング44内を上昇すると、ロッド46がフード上方側へ向けて軸方向移動する。その結果、ロッド46の先端部の押圧部48がヒンジアーム30の押上面32に当接し、ヒンジアーム30をヒンジピン28回りに開方向(図3の矢印A方向)へ回転させることにより、フード12の後端側(後端膨らみ部18)がフード上方側(押上位置)へ押し上げられる。このとき、ヒンジアーム30の側壁部30Aでは、切欠34の形成部位の剛性が他の部位の剛性に比べて低くなっているため、切欠34を起点としてヒンジアーム30が屈曲される(図4参照)。
また、ロッド46によるヒンジアーム30の押し上げ時には、ヒンジアーム30が開方向側へ回転されるため、ヒンジアーム30に連結されたリンク機構50の第1リンク52及び支持軸56がヒンジアーム30の回転に連動して開方向側(図3の矢印C方向側)へ回転される。さらに、エネルギー吸収機構60のラチェット62は支持軸56及び第1リンク52と一体的に回転するため、ヒンジアーム30の開方向側への回転に連動してラチェット62が支持軸56の軸回りに開方向側へ回転される(図5(A)の状態から図5(B)の状態になる)。
一方、ECUが車両用ポップアップフード装置10を作動させるべきと判断すると、エネルギー吸収機構60のガス発生装置80に作動信号が出力される。これにより、ガス発生装置80が作動してエネルギー吸収機構60のシリンダ76内にガスが供給される。そして、シリンダ76内のガス圧によってピストン78が車両幅方向外側へ移動することで、ロックピン74が車両幅方向外側へ瞬時に移動される。これにより、ロックピン74によるロックパウル70に対する保持状態が解除されて、ロックパウル70が軸71の軸回りを待機位置から係合位置へ回転して、ロックパウル70のロック歯72がラチェット62のラチェット歯66と係合される(図5(B)参照)。したがって、ロックパウル70が、ラチェット62及びリンク機構50を介してヒンジアーム30に連結されて、ヒンジアーム30の閉方向側への回転が規制される。その結果、フード12が押上位置に保持される。
フード12が押上位置に保持された状態において、フード上方側から衝突荷重がフードヒンジ22に作用すると、ヒンジアーム30は閉方向側へ回転しようとするが、ロックパウル70によってラチェット62の閉方向側への回転が規制されているため、ヒンジアーム30の閉方向側への回転が規制される。そして、ヒンジアーム30が切欠34の位置でさらに屈曲されることによって、衝突エネルギーが吸収されて衝突体への入力荷重(反力)が低減される。
さらに、フードヒンジ22に作用する衝突荷重が所定値以上である場合には、ラチェット62とロックパウル70との係合状態が解除されて、ラチェット62が閉方向側(図5(B)の矢印D方向側)へ回転される。このとき、ロックパウル70はバネによってラチェット62の外周部に押し付けられるため、ロックパウル70とラチェット62との間に摺動摩擦(摺動抵抗)が発生する。これにより、ロックパウル70とラチェット62との間で発生する摺動摩擦(摺動抵抗)によって衝突エネルギーが吸収されて、衝突体への入力荷重(反力)が低減される。
なお、ラチェット62が閉方向側へ回転されると、ヒンジアーム30の押上面32がロッド46の押圧部48をフード下方側へ押圧するが、アクチュエータ40のピストンはハウジング44にロックされていないため、ロッド46は当該押圧力によってフード下方側へ後退していく。
このように、本実施の形態の車両用ポップアップフード装置10によれば、エネルギー吸収機構60が作動すると、ロックパウル70がラチェット62及びリンク機構50を介してヒンジアーム30に連結されて、押上位置におけるヒンジアーム30のフード下方側への回転が規制される。このため、フード12の後端側(後部側)を押し上げたロッド46のフード下方側への移動を規制するためのロック機構を用いる必要がなくなる。すなわち、所定値以上の衝突荷重が作用した場合にロッド46をフード下方側へ後退させることができる。
また、所定値以上の衝突荷重がフード12(ヒンジアーム30)に作用した場合には、ヒンジアーム30のフード下方側への回転が許容され、ロックパウル70のロック歯72とラチェット62の外周部とによって摺動摩擦を発生させることで、衝突エネルギーが吸収される。すなわち、ロッド46とは別のエネルギー吸収機構60によって衝突エネルギーが吸収されるため、従来技術のようにロッド46を曲げ変形させて衝突エネルギーを吸収する必要がなくなる。
以上により、比較的重いフード12を用いる場合には、例えばロッド46の径寸法を大きくしてロッド46の剛性を高くすることで、フード12を所定の押上位置に押し上げることができる。また、ロッド46の剛性を高くしても、ロッド46とは別のエネルギー吸収機構60によって衝突エネルギーを吸収できる。その結果、フード12の押上性能と歩行者保護性能とを両立できる。
また、上述したように、所定値以上の衝突荷重がフード12(ヒンジアーム30)に作用した場合には、ラチェット62のラチェット歯66とロックパウル70のロック歯72との係合状態が解除され、ロックパウル70がラチェット62の外周部を摺動することで摺動摩擦が発生する。このため、簡易な構成によって、ヒンジアーム30の回転を規制できると共に、ラチェット62とロックパウル70との間に摺動摩擦を発生させることができる。
さらに、ヒンジアーム30には、フード12の所定角度以上の開きを制限するリンク機構50が連結されており、ラチェット62が、リンク機構50を構成する第1リンク52と一体的に回転するように構成されている。このため、リンク機構50を活用して、ヒンジアーム30の回転と連動してラチェット62を回転させることができる。
また、ヒンジアーム30が押上位置からフード上方側(開方向側)へ回転されると、ラチェット62が開方向側へ回転される(図5(B)の状態から図5(C)の状態になる)。このため、ロックパウル70のロック歯72がラチェット62のカム面68に当接されて、ロックパウル70が係合位置から待機位置へ回転される。これにより、ロックパウル70とラチェット62との係合状態が解除される。そして、待機位置にロックパウル70が回転されると、シリンダ76内に収容されたバネの付勢力によってロックピン74がロックパウル70と係合される位置に復帰されて、ロックピン74によってロックパウル70が待機位置に保持される。これにより、ロックパウル70とラチェット62との係合解除状態が維持される。そして、この状態からフード12(ヒンジアーム30)を閉方向側へ回転させると(図5(D)参照)、ロックパウル70とラチェット62との係合解除状態が維持されているため、フード12を閉じることができる。以上により、本実施の形態の車両用ポップアップフード装置10によれば、押上位置に押し上げられたフード12を一旦開方向側へ回転させることで、フード12を閉じることができる。
また、上述したように、所定値以上のフード下方側への衝突荷重がフード12(ヒンジアーム30)に作用した場合には、ロック歯72とラチェット歯66との係合状態が解除されるように構成されている。このため、ロック歯72又はラチェット歯66の形状を適宜変更することで、ロック歯72とラチェット歯66との係合を解除する荷重を調整できる。
なお、第1の実施の形態では、エネルギー吸収機構60のラチェット62がリンク機構50の第1リンク52と一体に回転するように構成されている。これに代えて、ラチェット62をリンク機構50の第2リンク54と一体に回転するように構成してもよい。例えば、第2リンク54と第1リンク52との連結部分の軸57において又は第2リンク54とヒンジアーム30との連結部分の軸58において、ラチェット62を第2リンク54と一体に回転するように構成してもよい。また、例えば、ヒンジピン28を回転中心としてラチェット62をヒンジアーム30と一体的に回転するように構成してもよい。この場合には、リンク機構50を省略することができる。
また、第1の実施の形態では、所定値以上のフード下方側への衝突荷重がフード12(ヒンジアーム30)に作用した場合には、ロックパウル70のロック歯72とラチェット62のラチェット歯66との係合状態が解除されるように構成されている。これに代えて、所定値以上のフード下方側への衝突荷重がフード12(ヒンジアーム30)に作用した場合には、ロックパウル70が曲げ変形して、ロック歯72とラチェット歯66との係合状態を解除するように構成してもよい。
(第2の実施の形態)
以下、図6及び図7を用いて第2の実施の形態に係る車両用ポップアップフード装置100について説明する。第2の実施の形態では、第1の実施の形態に係る車両用ポップアップフード装置10と比べて、以下に示す点を除いて同様に構成されている。なお、第1の実施の形態と同様に構成されている部材には、同一の符号を付している。
すなわち、第2の実施の形態では、エネルギー吸収機構60のラチェット62、ロックパウル70、及びロックピン74が省略されており、エネルギー吸収機構60は、規制部材としてのロックプレート102を備えている。ロックプレート102は略直方体状に形成されて、シリンダ76の車両幅方向内側部分にシールされた状態で収容されている。シリンダ76は、略矩形筒形状に形成されると共に、リンク機構50に対して車両幅方向外側に配置されている。また、シリンダ76の車両幅方向外側端部にガス発生装置80が装着されている。
そして、ECUが車両用ポップアップフード装置100を作動させるべきと判断すると、エネルギー吸収機構60のガス発生装置80に作動信号が出力される。これにより、ガス発生装置80が作動してエネルギー吸収機構60のシリンダ76内にガスが供給される。そして、シリンダ76内のガス圧によってロックプレート102が車両幅方向内側へ瞬時に突出されると、ロックプレート102が第1リンク52と第2リンク54との連結部分の下方側に配置されて、当該連結部分に当接されるようになっている(図7(A)及び(B)参照)。これにより、ロックプレート102が、リンク機構50を介してヒンジアーム30に連結されて、押上位置におけるヒンジアーム30のフード下方側(閉方向側)への回転が規制される。
また、所定値以上の衝突荷重がフード12(ヒンジアーム30)に作用した際には、ロックプレート102がフード下方側へ曲げ変形するようになっている。その結果、ロックプレート102が曲げ変形することによって衝突エネルギーが吸収される。したがって、第2の実施の形態においても第1の実施の形態と同様の作用及び効果を奏する。
また、第2の実施の形態では、所定値以上の衝突荷重がフード12(ヒンジアーム30)に作用した際には、ロックプレート102が曲げ変形することによって衝突エネルギーが吸収されるため、衝突エネルギーを安定して吸収できる。
なお、第2の実施の形態では、ロックプレート102が第1リンク52及び第2リンク54の連結部分に当接されるように構成されているが、ロックプレート102をヒンジアーム30に直接当接するように構成してもよい。
また、第2の実施の形態では、ロックプレート102が曲げ変形することによって衝突エネルギーが吸収されるが、衝突エネルギーを吸収する方法はこれに限らない。例えば、ロックプレート102をダンパとして構成してダンパの減衰によって衝突エネルギーを吸収してもよい。