以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明すると、実施形態のアクチュエータ25が使用される自動車用安全装置は、フード跳ね上げ装置(以下「跳ね上げ装置」と省略する)Uである。この跳ね上げ装置Uは、図1,2に示すように、車両Vにおけるフードパネル10の後端10c側における左縁10d付近と右縁10e付近とに配設されるもので、それぞれ、アクチュエータ25と、フードパネル10の後端10cの下面に配置される受け座16と、を備えて構成されている。そして、跳ね上げ装置Uの作動時には、図4に示すように、アクチュエータ25がピストンロッド54を上昇させ、受け座16を介在させて、フードパネル10の後端10cを跳ね上げるように上昇させることとなる。
なお、本明細書では、特に断らない限り、前後と上下の方向は、それぞれ、車両V(図1参照)の前後と上下の方向に一致し、左右の方向は、車両Vの前方側から後方側を見た際の左右の方向に一致させている。
また、実施形態の場合、車両Vのフロントバンパ5(図1参照)には、歩行者との衝突を検知若しくは予測可能な図示しないセンサが、配設されている。そして、実施形態では、センサからの信号を入力させている図示しない作動回路が、このセンサからの信号に基づいて車両Vと歩行者との衝突を検知若しくは予測した際に、跳ね上げ装置Uのアクチュエータ25における駆動源としてのガス発生器39(図5,7参照)を作動させるように、構成されている。
さらに、フードパネル10は、図1,2に示すように、車両VにおけるエンジンルームERの上方を覆うように配設されるもので、左右方向の両縁側における後端10c近傍に配置されるヒンジ部11により、車両Vのボディ1側に対して、前開きで開閉可能に連結されている。フードパネル10は、アルミニウム合金等からなる板金製とされている。フードパネル10は、図3に示すように、上面側のアウタパネル10aと、下面側に位置してアウタパネル10aより強度を向上させたインナパネル10bと、を備えている。フードパネル10は、歩行者を受け止めた際に、歩行者の運動エネルギーを吸収できるように、塑性変形可能に構成されている。そして、実施形態では、車両Vと歩行者との衝突時に、アクチュエータ25が作動されて、図4に示すように、上昇したフードパネル10の後端10cと、エンジンルームERと、の間に、変形スペースSを形成できることから、塑性変形時の塑性変形量を増大させることができる。
ヒンジ部11は、フードパネル10の後端10c側における左縁10dと右縁10eとに配設されている(図1参照)。各ヒンジ部11は、それぞれ、ボディ1側のフードリッジリインホース2に連結された取付フランジ2aに固定されるヒンジベース12と、フードパネル10側に固定されるヒンジアーム14と、を備えて構成されている(図2,3参照)。各ヒンジアーム14は、図3に示すように、板金製のアングル材を下向きに突出させるように略半円弧状に湾曲させた形状として構成されている。各ヒンジアーム14は、ヒンジベース12側の元部端14aを、支持軸13を利用してヒンジベース12に対して回動可能に連結させている。また、各ヒンジアーム14は、元部端14aから離れる先端14b側に、先端14bから前後方向に略沿うように延びる連結板部15を備えている。そして、この連結板部15が、フードパネル10の後端10cにおける下面側に溶接等を利用して結合されている。
そして、実施形態の場合、連結板部15は、前部側の下面を、上昇時のピストンロッド54の先端(上端54a)(支持ロッド部62の頭部63における当接部63b)を当接させる受け座16としている。そして、この受け座16の下面が、ピストンロッド54の上端54aの受け面16aとされている。
各支持軸13は、それらの軸方向を、車両Vの左右方向に沿わせるように配設されている。そして、フードパネル10を開く際には、図3の実線から二点鎖線に示すように、左右の支持軸13を回転中心として、各ヒンジアーム14の先端14b側とともに、フードパネル10の前端10f側(図1参照)を上昇させれば、フードパネル10を前開きで開くことができる。
また、ヒンジアーム14の先端14b付近には、下縁を略円形状に切り欠くように構成される切欠凹部14cが、形成されており、ヒンジアーム14においてこの切欠凹部14cの周囲の部位が、塑性変形部14dとされる。そして、アクチュエータ25の作動時においてピストンロッド54によるフードパネル10の後端10cの押上時に、この塑性変形部14dが塑性変形することにより、フードパネル10の後端10cの上昇を可能にしている(図4参照)。なお、フードパネル10の前端10f側には、通常閉塞用として、前端10fに配置された図示しないフードロックストライカを係止するラッチ機構が配設されている。そして、フードパネル10の後端10cの上昇時でも、フードパネル10の前端10fは、図示しないフードロックストライカを係止するラッチ機構により、ボディ1側から外れない。
さらに、フードパネル10の後方には、図2,3に示すように、ボディ1側の剛性の高いカウルパネル7aと、カウルパネル7aの上方における合成樹脂製のカウルルーバ7bと、からなるカウル7が、配設されている。カウルルーバ7bは、後端側をフロントウィンドシールド3の下部3aに連ならせるように配設されている。また、フロントウィンドシールド3の左右には、図1,2に示すように、フロントピラー4,4が、配設されている。
実施形態のアクチュエータ25は、図1,2に示すように、フードパネル10の後端10c側における左縁10d及び右縁10eの下方となる各ヒンジ部11の下方に配設されている。各アクチュエータ25は、図3に示すように、フードリッジリインホース2に連結された取付フランジ2bに対してボルト19止めされる断面U字形状の取付ブラケット18に保持されて、ボディ1側のフードリッジリインホース2に取り付けられている。
各アクチュエータ25は、図5に示すように、シリンダ26と、シリンダ26内に作動用流体としてのガスを流入させるガス発生器39と、ピストンロッド54と、ロック機構Rと、を備えて構成されている。シリンダ26は、軸方向を上下方向に沿わせるように配置させてボディ1側に取り付けられている。ピストンロッド54は、ガス発生器39の作動時に、シリンダ26から上方へ突出するように構成されている。ロック機構Rは、前進移動後(上昇移動後)のピストンロッド54の後退移動(下降移動)を規制するためのものである。
実施形態では、アクチュエータ25として、後述するアクチュエータ(従来のアクチュエータ)25Lと比較して前進ストローク(上昇ストローク)の短い短アクチュエータ25Sが、使用されている。この短アクチュエータ25Sは、従来のアクチュエータである長い前進ストローク(上昇ストローク)の長アクチュエータ25L(図10参照)と、ピストンロッド54(54S,54L)のみを異ならせて、残りの部材は同一の部材を使用して、構成されている。実施形態のアクチュエータ25Sでは、短アクチュエータ25S用のピストンロッド54Sが使用されている。
ロック機構Rは、図8に示すように、係止部材としての係止リング77と、収納溝69のテーパ規制面72と、係止段部34(係止規制部)の係止規制面35及び外周規制面36と、から構成されている。収納溝69は、ピストンロッド54S(54)において係止リング77を保持させる保持部68に形成されている。係止段部34(係止規制部)は、シリンダ26の先端壁部30側に形成されている。
シリンダ26は、図5に示すように、ピストンロッド54(54S)のピストン部56を摺動させる円筒状の本体部27と、本体部27の上端側を塞ぐ先端壁部30と、本体部27の下端側を塞ぐ元部端壁部38と、を備えて構成されている。本体部27は、ピストン部56の外形形状に対応して円形状に開口した摺動孔28を、上下方向に貫通させている。そして、アクチュエータ25(25S)の作動時、ピストン部56が摺動孔28の内周面28aを摺動して、上昇(前進移動)することとなる。
なお、シリンダ26は、実施形態の場合、鋼製のパイプ材からなるパイプ部42と、先端壁部30を構成するヘッド部51と、元部端壁部38を構成するガス発生器39と、から構成されている。さらに、パイプ部42は、ピストン部56を摺動させる円筒状の小径部43と、小径部43の両端から拡径して略円筒状に延びる大径部44,47と、を備えて構成されている(図5参照)。ヘッド部51には、後述する挿通孔31、天井規制面32、外周規制面36等が、形成されている。このヘッド部51は、大径部44内に配置され、大径部44を縮径させるように、かしめ部45をかしめて塑性変形させることにより、大径部44に固定される。元部端壁部38を構成するガス発生器39は、大径部47内に配置された後、かしめ部48,49等を縮径させるようにかしめて塑性変形させることにより、大径部47に固定される。そして、パイプ部42にヘッド部51とガス発生器39とを固定させることにより、シリンダ26が形成されることとなる。なお、実施形態では、ヘッド部51を大径部44内に配置させる前には、ピストンロッド54(54S)をヘッド部51に挿通させて組み付けておく。そのため、このシリンダ26の形成時、同時に、短アクチュエータ25S(25)も形成されることとなる。なお、図5,7において符号40で示す部材は、パッキンである。また、実施形態の場合、先端壁部30の上面側には、支持ロッド部62の頭部63の一部を収納させる収納凹部30aが、形成されている(図5,6参照)。収納凹部30aは、具体的には、頭部63におけるフランジ部63aより下側の部位を収納させるように、構成されている。
そして、シリンダ26には、図5,6に示すように、本体部27における先端壁部30近傍に、係止規制部としての係止段部34が、シリンダ26の周方向の全周にわたって、形成されている。この係止段部34は、ピストン部56を摺動させる本体部27の内周面28aより拡径して凹むようにして、形成されている。この係止段部34(係止規制部)は、既述したように、ロック機構Rを構成する係止規制面35と外周規制面36とを配設させている部位であり、図8のCに示すように、保持部68のロック位置RPを規定する。すなわち、この係止段部34の配置位置は、ピストンロッド54(54S)の上昇時(前進移動時)において上死点UTに配置された後の後退時、係止リング77を介在させて、保持部68の後退移動を規制する位置である。そして、このロック位置RPで保持部68がロックされ、ピストンロッド54(54S)の後退移動が規制されれば、その位置が、ピストンロッド54(54S)とフードパネル10との歩行者の受止位置となる。そして、その位置で、支持ロッド部62が曲げ塑性変形すれば、安定した変形状態を確保できる。
係止規制面35は、図6及び図8のAに示すように、ピストンロッド54(54S)の前進移動や後退移動時の進退方向に沿うシリンダ26の本体部27の軸方向と略直交するように、形成されている。この係止規制面35は、係止リング77の下降移動(後退移動)の規制時に、係止リング77の後退移動側の部位(後退側面)に当接するように、配設されている。外周規制面36は、係止規制面35の外周縁から本体部27の軸方向に沿ってピストンロッド54(54S)の前進移動側(上方)に延びて形成されている。この外周規制面36は、係止リング77の後退移動の規制時に、拡径した係止リング77の外周面に当接するように、配設されている。
また、係止規制面35において、図8のAに示すように、本体部27の内周面28aの内縁35aから外周規制面36までの本体部27の軸直交方向に沿う幅寸法は、外周面を外周規制面36に当接させた状態の係止リング77の内周側部位を、本体部27の内周面28aより本体部27の軸心側へ突出させるような寸法に、設定されている(図8のC参照)。詳細には、係止規制面35の幅寸法は、係止規制面35により係止リング77を係止可能な状態として、かつ、係止リング77の円形断面における直径寸法D1(図9参照)の1/2未満として、設定されている。
また、シリンダ26の先端壁部30は、ピストンロッド54(54S)の支持ロッド部62における軸部64の後述する先端側部位64aを挿通可能な挿通孔31を、中央に配置させている(図5,6参照)。この挿通孔31は、ピストンロッド54(54S)の保持部68を挿通不能な大きさに、設定されている。
そして、係止段部34における先端壁部30側には、天井規制面32が、シリンダ26の周方向の全周にわたって、形成されている。天井規制面32は、外周規制面36から本体部27の内周面28aに一致する位置まで内側に延びるように、形成されている。この天井規制面32は、ピストンロッド54(54S)を上死点UTに配置させた状態で、保持部68のテーパ規制面72とともに、係止リング77の前進移動側の部位に、当接する部位である。
実施形態の場合、天井規制面32は、ピストンロッド54(54S)の後退移動側に拡径するテーパ状として形成されている。この天井規制面32は、上死点UTに配置された状態でのピストンロッド54(54S)における保持部68のテーパ規制面72と、ピストンロッド54(54S)の前進移動側の縁32a,72a相互を、シリンダ26の軸方向に沿って一致させるように、構成されている(図8のB参照)。さらに、実施形態では、天井規制面32は、テーパ規制面72とともに、拡径させる角度を、相互に等しい45°として、構成されている。
本体部27の下端側の元部端壁部38を構成するガス発生器39としては、マイクロガスジェネレータが使用されており、ガス発生器39の下端面には、図示しない制御回路からの電気信号を入力させるリード線のコネクタが、接続されている。そして、ガス発生器39は、図示しない制御回路からの電気信号を入力させると、内蔵されている火薬を燃焼させて燃焼ガスを発生させ、その作動用ガス(燃焼ガス)Gを作動用流体として、シリンダ26内のピストン部56の底面56b(下面)側へ供給することとなる。
ピストンロッド54S(54)は、図5に示すように、シリンダ26内に配置されるピストン部56と、ピストン部56から上方に延びる支持ロッド部62と、を備えて構成されている。なお、この短アクチュエータ25S用のピストンロッド54Sは、保持部68をピストン部56から離隔させるように、支持ロッド部62の先端62a(頭部63)に近づけて配置させている以外は、長アクチュエータ25L用のピストンロッド54Lと同一の構成である。
ピストン部56は、図7に示すように、シリンダ26の本体部27における摺動孔28の内周面28aに対して、Oリング74を介在させて、摺動可能な略円柱状とされている。ピストン部56は、外周面56aに、Oリング74を嵌合させる嵌合溝57を、備えている。また、ピストン部56の底面56b(元部側端面)には、底面56bを凹ませるようにして、凹部58が、形成されている。この凹部58は、支持ロッド部62の軸部64における先端側部位64aの先端側に頭部63をねじ込む際に使用される治具である六角レンチを嵌合させるためのものである。具体的には、凹部58は、断面六角形状に開口して、構成されている。また、実施形態のピストン部56では、凹部58は、図7に示すように、開口幅寸法W1を、ピストン部56自体の外径寸法D2の1/3程度として、かつ、ピストン部56の上側から延びる軸部64の元部側部位64bの外径寸法D3の5/8程度に設定されている。また、凹部58は、六角レンチを安定して嵌合可能に、深さ寸法H1を、ピストン部56の上下の幅寸法L1の3/5程度として、大きく開口して形成されている。しかしながら、実施形態のピストン部56では、この凹部58の周囲を構成する上側部位59(先端側部位)が、厚さ寸法を確保するように、先細り形状の断面略テーパ状として、厚肉に設定されている。
支持ロッド部62は、図5に示すように、ピストン部56から延びてシリンダ26外へ突出可能に構成されている。支持ロッド部62は、ピストン部56から延びる丸棒状の軸部64と、軸部64の上端側(先端側)にねじ込まれて配設される頭部63と、軸部64の中間部位に配置されて係止部材としての係止リング77を保持させる保持部68と、を備えている。
軸部64は、シリンダ26の軸方向(上下方向)に沿って配置されるもので、ピストン部56(保持部68)より小径の丸棒状とされている。実施形態の場合、軸部64は、保持部68から延びるように配置される先端側部位64aと、ピストン部56と保持部68との間に配置される元部側部位64bと、を備えている。そして、先端側部位64aと元部側部位64bとは、外径寸法を同一に設定されている。すなわち、軸部64の元部側部位64bは、支持ロッド部62において、保持部68をピストン部56に連結させる部位である。そして、この元部側部位64bは、外径寸法D3を、先端側部位64aの外径寸法D4と同一にされて、保持部68とピストン部56との間に隙間を設けるように(シリンダ26の本体部27における摺動孔28の内周面28aとの間に隙間を設けるように)、構成されている。
頭部63は、図4に示すように、ピストンロッド54Sの上昇移動時に、フードパネル10側に設けられた受け座16の受け面16aに当接して、フードパネル10の後端10cを上方に押し上げることとなる。頭部63は、外径寸法を、軸部64より大径とされている。実施形態の場合、頭部63は、フランジ部63aと、フランジ部63aの上側に配置されて受け面16aに当接される当接部63bと、を備えている。フランジ部63aは、頭部63の上下の中央よりやや下方となる位置から外方に突出するような略円板状として構成されている。実施形態の場合、頭部63は、フランジ部63aの上面を、外周側に配置される大径部44の上端面と略面一とするように、フランジ部63aより下部側の部位を、先端壁部30の収納凹部30a内に収納させて、配置されている。当接部63bは、フランジ部63aから上方に突出するように形成されるもので、実施形態の場合、略半球状に突出するように、上端面を湾曲させて形成されている。
また、支持ロッド部62は、ピストン部56とともに、鋼等の金属材から構成されており、係止リング77を保持させた保持部68の上死点UTへの到達後で、ロック位置RPでロック機構Rにロックされた際に、フードパネル10の後端10cを押し上げ完了位置まで上昇(前進移動)させることとなる。そして、支持ロッド部62は、先端壁部30から突出した挿通孔31の近傍の先端側部位64aの部位を屈曲点66として(図5のB参照)、ロック機構Rによるロック後に、この屈曲点66で、曲げ塑性変形可能に構成されている。
支持ロッド部62の軸部64の先端側部位64aにおける頭部63近傍には、Cリング73を嵌めるための凹溝65が、形成されている(図5,6参照)。この凹溝65に嵌められたCリング73は、作動前のアクチュエータ25Sのピストンロッド54Sの突出を防止するように、先端壁部30の下面30bに当接されている。すなわち、このCリング73は、アクチュエータ25Sの作動前には、図6に示すように、凹溝65に嵌った状態で先端壁部30の下面30bに当接されている。そのため、アクチュエータ25Sの作動前におけるピストンロッド54Sのシリンダ26からの飛び出しが防止されることとなる。そして、Cリング73は、アクチュエータ25Sの作動時、ピストンロッド54Sの前進移動(上昇)に伴い、拡径するように変形して凹溝65から外れて、円滑に、ピストンロッド54Sを前進移動させることとなる(図8参照)。なお、頭部63の外周側においてフランジ部63aの下面側となる位置には、アクチュエータ25Sの作動前のシリンダ26内のシール性を確保するために、Oリング75が、嵌められている(図5,6参照)。Oリング75は、頭部63と先端壁部30とに圧接されている。
保持部68は、間に軸部64の元部側部位64bを介在させて、ピストン部56から上方(前進移動側)に離隔した位置に配置されている。保持部68は、シリンダ26の本体部27における摺動孔28の内周面28aに対して、係止部材としての係止リング77を介在させて、摺動可能とされている。実施形態の場合、保持部68は、扁平な略円柱状とされている。保持部68の外周面68aには、係止リング77を収納可能な収納溝69が、形成されている。なお、実施形態の場合、保持部68は、外径寸法を、ピストン部56の外径寸法と同一に設定されている。
収納溝69は、係止リング77を収納した状態でピストンロッド54Sの前進移動(上昇)を可能とするように、保持部68の外周面68aを凹ませて形成される。実施形態の場合、収納溝69は、図7に示すように、収納溝69の底面側に配置される内周面(底面)70と、ピストンロッド54Sの後退移動側の面である後退側面71と、ピストンロッド54Sの前進移動側の面であるテーパ規制面72と、を備えて構成されている。内周面(底面)70は、ピストンロッド54Sの軸方向に沿うように形成されている。後退側面71は、内周面70の下縁からピストンロッド54Sの軸方向に直交して延びるように、形成されている。テーパ規制面72は、内周面70の上縁から前進移動側に向けて外開きのテーパ状とされている。テーパ規制面72は、ピストンロッド54Sの前進移動後の拡径した状態で、かつ、係止段部34の係止規制面35と外周規制面36とに当接させた状態の係止リング77の内側面に当接するように、構成されている。
また、収納溝69の配置位置は、既述したように、下記のようである。実施形態では、アクチュエータ25Sの作動に伴ってピストンロッド54Sが上昇し、保持部68の天井面68bを、Cリング73を介在させて、シリンダ26の先端壁部30の下面に当接させるような上死点UTに配置させた際に、テーパ規制面72の縁72aが、ピストンロッド54Sの軸方向に沿った方向側で、天井規制面32の縁32aに略一致されて配置されることとなる(図8のB参照)。
ロック機構Rを構成する係止リング77は、図7,9に示すように、断面を円形としたばね鋼からなる線材を円環状に曲げ加工して、形成されている。係止リング77は、リング形状の一部の端面相互に、縮径可能な隙間77aを設けて構成されている。この係止リング77は、シリンダ26内への保持部68の配置時に、収納溝69内に縮径させて収納されている(図7参照)。そして、係止リング77は、アクチュエータ25Sの作動時に、拡径して収納溝69から係止段部34に進入する際に、係止段部34の係止規制面35と、収納溝69のテーパ規制面72と、に跨ることとなる(図8のB参照)。そして、係止リング77は、ロック時に、図8のCに示すように、外周規制面36に当接して、ピストンロッド54Sの後退移動を規制できるように、寸法を設定されている。
次に、長アクチュエータ(従来のアクチュエータ)25L用のピストンロッド54Lについて、説明をする。長アクチュエータ25L用のピストンロッド54Lは、図10に示すように、保持部68の配置位置を、ピストンロッド54Sと異ならせている。ピストンロッド54Lでは、保持部68を、ピストン部56の直上に直接的に連結させて配置させている。すなわち、ピストンロッド54Lでは、軸部64が、元部側部位64bを備えず、保持部68とピストン部56とが一体的に構成されている。そして、ピストン部56の底面56bから保持部68の天井面68bまでの距離L4(図11参照)が、極力小さく設定されることとなる。また、ピストンロッド54Lのピストン部56は、外径寸法を、ピストンロッド54Sのピストン部56の外形寸法と同一に、設定されている。さらに、ピストンロッド54Sとピストンロッド54Lとは、図11に示すように、全長LW1,LW2(ピストン部56の底面56bから頭部63の上端(支持ロッド部62の先端62a)までの距離)を、同一として構成されている。そして、ピストンロッド54Sにおける支持ロッド部62の先端62a(頭部63の上端)から保持部68の天井面68bまでの距離L2と、ピストンロッド54Lにおける支持ロッド部62の先端62a(頭部63の上端)から保持部68の天井面68bまでの距離L3と、の寸法差LSが、短アクチュエータ25Sと長アクチュエータ25Lとの前進ストローク(上昇ストローク)の寸法差を、構成することとなる。すなわち、ピストンロッド54Sを使用した短アクチュエータ25Sでは、長アクチュエータ(従来のアクチュエータ)25Lと比較して、前進ストロークが、この寸法差LS分、短くなる。
実施形態の跳ね上げ装置Uでは、フロントバンパ5に配置される図示しないセンサからの信号により、図示しない作動回路が、車両Vの歩行者との衝突を検知若しくは予測した際に、アクチュエータ25Sにおけるガス発生器39が作動されることとなる。そして、シリンダ26内にガス発生器39から発生した作動用ガスが流入されれば、シリンダ26内の内圧が高まり、シリンダ26内に配置されるピストンロッド54Sのピストン部56が、その圧力を受けて、図5のBに示すように、支持ロッド部62とともに上昇する。そして、支持ロッド部62が、図4に示すように、頭部63の当接部63bを受け座16の受け面16aに当接させてフードパネル10の後端10cを上昇させることとなる。支持ロッド部62に形成される保持部68が、天井面68bを、Cリング73を介在させて、シリンダ26の先端壁部30に当接させれば、ピストンロッド54Sが、上死点UTに配置されることとなる(図8のB参照)。その後、ピストンロッド54Sが、後退移動してロック位置RPに配置されれば、係止リング77が、係止規制面35と当接してさらなる後退移動を規制されるように、ロック機構Rが作動される(図8のC参照)。そして、ピストンロッド54Sは、下降(後退移動)を規制されてロックされることとなる。
そして、ピストンロッド54Sの後退移動を規制されてロックされた状態で、フードパネル10が上方から斜め後下方向に移動する歩行者の荷重F(図4参照)を受け止めれば、フードパネル10が塑性変形することとなる。このとき、歩行者の受け止め時におけるフードパネル10の後端10cの下面(受け面)16aの下降に伴って、フードパネル10の受け面16aに当接部63bを当接させていた支持ロッド部62も、図4の二点鎖線に示すように、頭部63を後方に向けるように、軸部64の屈曲点66の部位で、安定して曲げ塑性変形されることとなる。そのため、この支持ロッド部62の曲げ塑性変形により、歩行者の運動エネルギーを的確に吸収することができる。
そして、実施形態のアクチュエータ25Sでは、ピストンロッド54Sにおいて、係止部材としての係止リング77を保持させる保持部68を、支持ロッド部62に形成して、ピストン部56から、ピストン部56の前進移動方向側(上方)に離隔させている。そして、実施形態のアクチュエータ25Sは、作動時の前進ストロークを、支持ロッド部62の先端62a(頭部63の上端)から保持部68までの離隔距離によって、設定されることとなる。そのため、従来のアクチュエータである長アクチュエータ25Lと比較して、支持ロッド部62の先端62a(頭部63の上端)から保持部68までの離隔距離の寸法差分(詳細には、頭部63の上端から保持部68の天井面68bまでの距離の寸法差LS分)、前進ストロークを短くすることができる。その結果、実施形態のアクチュエータ25Sでは、ピストンロッド54Sの保持部68の配置位置を変更するだけで、ピストンロッド54Sの前進ストロークを変更することができる。
したがって、実施形態のアクチュエータ25Sでは、ピストンロッド54Sの前進ストロークを容易に変更することができる。
また、実施形態のアクチュエータ25Sでは、保持部68が、支持ロッド部62の軸部64の中間部位に配置されており、保持部68とピストン部56との間には、軸部64の元部側部位64bが、配置されている。換言すれば、実施形態のアクチュエータ25Sでは、この元部側部位64bが、保持部68とピストン部56とを連結する部位であり、元部側部位64bは、外径寸法D3を、軸部64における先端側部位64aの外径寸法D4と同一として、保持部68とピストン部56との間に隙間を設けるように、外周面側を凹ませている。そのため、実施形態のアクチュエータ25Sに使用されるピストンロッド54Sは、長アクチュエータ25Lに使用されるピストンロッド54Lと比較して、重量を大きく増大させない。そのため、駆動源としてのガス発生器39として、長アクチュエータ25Lに使用されるものを援用しても、長アクチュエータ25Lと略同等の性能を確保することができる。また、ピストンロッド54Sにおけるピストン部56の外径寸法は、ピストンロッド54Lにおけるピストン部56の外径寸法と同一に設定されていることから、シリンダ26も共用化できて、製造コストを低減させることができる。特に、実施形態のアクチュエータ25では、長い前進ストロークのアクチュエータ25Lと、シリンダ26を構成するパイプ部42、ヘッド部51、及び、ガス発生器39を共用化できることから、製造コストの増加を極力抑制することができる。
なお、実施形態のアクチュエータ25Sでは、保持部68とピストン部56とを連結する元部側部位64bが、軸部64の先端側部位64aと外径寸法を同一に設定されているが、元部側部位64bの外径寸法は、先端側部位64aの外径寸法と厳密に同一でなくともよく、作用を阻害しない程度の範囲内では、先端側部位64aの外径寸法と比較して多少増減されていてもよい。また、このような点を考慮しなければ、支持ロッド部において、保持部とピストン部とを連結する部位の外径寸法を、支持ロッド部の軸部よりも大径あるいは小径としてもよい。
さらに、実施形態のアクチュエータ25Sでは、ピストン部56の底面(元部側端面)56bに、底面56bを凹ませるようにして、頭部63を軸部64に取り付ける際に使用する六角レンチ(治具)を嵌合可能な凹部58が、形成されているが、この凹部58の周囲を構成する上側部位(先端側部位)59を、断面略テーパ状として、厚肉に設定している。そのため、実施形態のアクチュエータ25Sでは、ピストン部56と保持部68とが間に隙間を有するように離隔して配置されて、かつ、ピストン部56に底面56bを凹ませるような凹部58が形成され、さらに、ピストン部56の外周面56aに、シールリング(Oリング74)嵌合用の凹溝(嵌合溝57)が形成されていても、保持部68とピストン部56との連結強度を低下させず、十分な強度を確保することができる。その結果、受止材としてのフードパネル10が保護対象物としての歩行者を受け止めた際において、シリンダ26から突出した支持ロッド部62の軸部64の先端側部位64aを、屈曲点66の部位で、安定して曲げ塑性変形させることができる。なお、このような点を考慮しなければ、ピストン部において、凹部の周囲を構成する先端側部位を、厚肉に設定しなくともよい。
なお、実施形態のアクチュエータ25では、前進移動を上昇させる移動とし、後退移動を下降させる移動とした場合を示したが、作動方向は実施形態に限定されるものではない。例えば、作動方向を水平方向に沿わせるようにして配置させて、本発明のアクチュエータを使用してもよい。また、本発明のアクチュエータが使用される自動車用安全装置は、フードパネル10を上昇させる跳ね上げ装置Uに限られるものではない。例えば、運転者や助手席に着座した乗員の膝をニーパネルにより受け止める構成の膝保護装置用のアクチュエータに、本発明を適用してもよい。
さらに、実施形態のアクチュエータ25では、作動信号の入力時に着火させてガスを発生させるガス発生器39を、作動用流体の発生源として使用し、シリンダ26の内部に配設させている。しかしながら、ピストンロッド54を移動させる駆動手段は、ガス発生器に限られるものではない。例えば、水、油、空気等を作動用流体として、それらの水圧、油圧、エア圧等を利用することにより、ピストンロッドを前進移動させる構成としてもよい。
さらにまた、ピストンロッドを前進移動させる駆動源としては、ソレノイドの吸引力を利用したり、圧縮させたばねの付勢力(復元力)等を利用することができる。例えば、ソレノイドの吸引力を利用する場合には、可動鉄心をピストンロッドとしてシリンダ内に配設し、シリンダ内の可動鉄心の周囲に配置させた励磁コイルに通電すれば、ピストンロッドを前進移動させることができる。また、ばねを利用する場合には、圧縮させたコイルばねの自由端側にピストンロッドを接続させるとともに、ソレノイド等から構成されて引き込み可能とされるストッパで、ピストンロッド若しくは圧縮コイルばねの先端を係止させておき、係止を解除させるようにストッパを引き込ませれば、ピストンロッドが圧縮コイルばねの復元する付勢力により、前進移動することとなる。