以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明すると、実施形態のフード跳ね上げ装置(以下、適宜、「跳ね上げ装置」と略す)Uは、図1〜3に示すように、車両Vにおけるフードパネル10の後端10c側のヒンジ機構11に、アクチュエータ21を設けて構成されている。
なお、本明細書では、特に断らない限り、前後と上下の方向は、それぞれ、車両V(図1参照)の前後と上下の方向に一致し、左右の方向は、車両Vの前方側を見た際の左右の方向に一致させている。
また、実施形態の場合、車両Vのフロントバンパ5には、図1に示すように、歩行者との衝突を検知若しくは予測可能なセンサ6が、配設されており、センサ6からの信号を入力させている図示しない制御回路が、センサ6からの信号に基づいて車両Vと歩行者との衝突を検知した際に、跳ね上げ装置Uのアクチュエータ21におけるガス発生器70(図3〜5参照)を作動させるように、構成されている。
フードパネル10は、図1,2に示すように、車両VにおけるエンジンルームERの上方を覆うように配設されるもので、左右方向の両縁10d,10e側における後端10c近傍に配置されるヒンジ機構11により、車両Vの車体(ボディ)1側に対して、前開きで開閉可能に連結されている。フードパネル10は、アルミニウム合金等からなる板金製として、上面側のアウタパネル10aと、下面側に位置してアウタパネル10aより強度を向上させたインナパネル10bと、から構成されている。フードパネル10は、歩行者を受け止めた際に、歩行者の運動エネルギーを吸収できるように、塑性変形可能に構成されている。そして、実施形態では、車両Vと歩行者との衝突時に、アクチュエータ21が作動されて、図3に示すように、上昇したフードパネル10の後端10cと、エンジンルームERと、の間に、変形スペースSを形成できることから、曲げ塑性変形時の塑性変形量を増大させることができ、フードパネル10は、歩行者の運動エネルギーを多く吸収できる。
ヒンジ機構11は、フードパネル10の左縁10dと右縁10eとの後端10c側に、それぞれ、配設される。そして、ヒンジ機構11は、フードパネル10の後端10cの下方におけるボディ1側に固定されるヒンジベース12と、フードパネル10の後端10cの下面側に配置される取付プレート15と、ヒンジベース12と取付プレート15とに軸支されるヒンジアーム14と、を備えて構成される。ヒンジベース12は、詳しくは、ボディ1側のフードリッジリインホース2に連結された取付フランジ2aに、固定されている。そして、ヒンジ機構11は、フードパネル10の通常使用の開き時に、ヒンジアーム14のヒンジベース12側となる元部端14a側の軸支部位を回転中心として開く構成としている(図2の二点鎖線参照)。
なお、このヒンジアーム14は、元部端14aから先端14bを前方に延ばすように配設されて、元部端14aが、支持軸13を利用してヒンジベース12の後端側に連結され、この支持軸13を回転中心として、回動可能とし、また、先端14b側も、支持軸16を利用して、取付プレート15の前端側に連結され、この支持軸16を回転中心として、回動可能である。左右の支持軸13,16は、それぞれ、軸方向を、車両Vの左右方向に沿わせるように、配設されている。但し、通常使用時には、ヒンジアーム14と取付プレート15との各連結部14c,15aに連結されるアクチュエータ21が、実施形態の場合、伸長防止用の係止機構(ロック機構)FR(FR1)によって伸長しないので、ヒンジアーム14は、取付プレート15に対して回動しない。そのため、フードパネル10は、通常使用の開閉時、支持軸13の部位を回転中心として、開閉することとなる。すなわち、フードパネル10を開く際には、図2の実線から二点鎖線に示すように、左右の支持軸13を回転中心として、各ヒンジアーム14の先端14b側とともに、フードパネル10の前端10f側が上昇することとなって、フードパネル10を前開きで開くことができ、そして、前端10f側を下せば、支持軸13を回転中心として回転して、フードパネル10が閉じることとなる。
また、左右のヒンジ機構11は、左右対称形として配設され、ヒンジアーム14と取付プレート15とのエンジンルームER側の面の連結部14c,15aに、それぞれ、アクチュエータ21の両端(連結部25,65)が連結されている。ヒンジアーム14のアクチュエータ21との連結部14cは、元部端14aと先端14bとの間の中間部位より、先端14b側に接近して配置され、取付プレート15のアクチュエータ21との連結部15aは、支持軸16より後方に配置されている。
なお、フードパネル10の前端10f側には、公知のフードロック機構8が配設されている。フードロック機構8は、フードパネル10の前端10f下面に固定されるロックストライカ8aと、ボディ1側に配設されてロックストライカ8aを係止するラッチ8bと、を備えて構成される。ラッチ8bは、図示しないレバーを操作しなければ、係止したロックストライカ8aを係止解除できないように構成されており、フードパネル10の後端10cの上昇時でも、フードパネル10の前端10fは、ロックストライカ8aを係止するラッチ8bにより、ボディ1側から離れるように上昇しない。
さらに、フードパネル10の後方には、図2,3に示すように、ボディ1側の剛性の高いカウルパネル7aと、カウルパネル7aの上方における合成樹脂製のカウルルーバ7bと、からなるカウル7が、配設されている。カウルルーバ7bは、後端側をフロントウィンドシールド3の下部3a側に連ならせるように配設されている。また、フロントウィンドシールド3の左右には、図1に示すように、フロントピラー4,4が、配設されている。
実施形態のアクチュエータ21は、図4,5に示すように、作動時に作動用ガスGを発生させるガス発生器70と、ガス発生器70を収納して保持する収納側部22と、ガス発生器70から発生する作動用ガスGに押圧されて、収納側部22から離れるように相対的に前進移動して、アクチュエータ21を伸長させる押圧側部(移動側部とも言える)52と、を備えて構成される。なお、実施形態では、アクチュエータ21は、作動時、ガス発生器70が作動用ガスGを発生させると、収納側部22に対して押圧側部52が斜め上後方に前進移動して伸長し(図2,3参照)、ヒンジアーム14と取付プレート15との連結部14c,15a相互を離隔させる。そして、この時、ヒンジアーム14と取付プレート15と相互の交差角度θ0が大きくなり、フードパネル10は、ラッチ8bに係止された前端10fを上昇させずに、後端10cを上昇させることとなる。
ガス発生器70は、作動時に、図示しない所定の火薬を点火させ、火薬自体の燃焼により、あるいは、さらに火薬に着火させるガス発生剤の燃焼により、作動用ガスを発生させるスクイブやマイクロガスジェネレータ等が使用されており、作動用ガスGを吐出する先端70aから離れた元部側に、図示しない制御回路からの点火電気信号を入力させるリード線70cが、接続されている。そして、ガス発生器70は、図示しない制御回路からの点火電気信号を入力すると、内蔵されている火薬に点火して燃焼させ、さらに適宜、ガス発生剤を燃焼させて燃焼ガスを発生させ、その燃焼ガスを作動用ガスGとして、先端70aから吐出させて押圧側部52の天井壁部53へ供給する。また、実施形態の場合、ガス発生器70は、リード線70cを突出させた状態で、収納側部22のインナケース27内に収納されるように、ポリアミド等からなる合成樹脂製の樹脂部72と一体成形される組付体75として構成され、そして、組付体75として、インナケース27に収納される構成としている。
この組付体75は、インナケース27(収納側部22)の元部端24a側の開口27cから挿入させて、ガス発生器70の鍔部70bを、インナケース27の後述する段差38に当て、そして、樹脂部72に設けられた貫通孔72aに、楕円管状の止め具44を嵌め込んで抜け止めして、収納側部22(インナケース27)に収納保持されている。なお、止め具44は、インナケース27に開口している組付孔40に嵌め込まれて固定される。
そして、収納側部22は、略円筒状の鋼等からなる金属製のインナケース27から形成されて、先端側(図4,5に示す上端側)に作動用ガスGを流出させるために円形に開口した開口端23を備え、開口端23から離れた元部24側にガス発生器70を配設させるとともに、元部端24a側を、ヒンジアーム14側に、連結させている。ヒンジアーム14側に連結される連結部25は、連結孔部25aを備えて構成され、そして、連結孔部25aに挿入される軸支具(軸支ピン)18を利用して、ヒンジアーム14の連結部14cに対して、回動自在に連結されている。軸支具18は、連結孔部25aを貫通して、ヒンジアーム14の連結部14cに回動自在に連結される。なお、連結孔部25aは、実施形態の場合、組付体75を収納保持(抜け止め)するためのインナケース27の組付孔40に固定された止め具44の内周側の貫通孔を、利用している。
収納側部22を構成するインナケース27は、外周面27aの先端(開口端23)側に、フランジ部28を突出させ、内周面27bの元部24側に、開口端23側に向かって内径を狭める段差38を設けて構成されている。段差38には、既述したように、樹脂部72で被覆されたガス発生器70の鍔部70bが当接されている。なお、インナケース27の内周面27bと組付体75との間には、ガス発生器70側の気密性を確保するためのゴム製の円環状のパッキン47が配設されている。
外周面27a側のフランジ部28には、図4,7,10に示すように、環状溝29が形成されて、環状溝29には、押圧側部52の前進移動時のガスシール性を確保するためのゴム製の円環状のシール材(パッキン、Oリング)46が嵌め込まれている。
外周面27a側のフランジ部28の近傍には、図4,7,10,11に示すように、アクチュエータ21の作動完了時に、押圧側部52の後退を防止するための後退防止用ロック機構BRを構成する環状溝(係止段部)30が形成されている。環状溝30は、フランジ部28から離れた側の環状溝30の底面(内周規制面)32から立ち上がる段差面を、後述するロックリング(後退規制材・ストッパリング)63を係止する係止規制面31としている。
なお、フランジ部28の環状溝30側の段差面は、アクチュエータ21の作動時に、押圧側部52の先端54a側を止めて押圧側部52の抜け止め用の規制面28aとなり、アクチュエータ21の最大伸長(最大作動ストローク)を制限することとなる。そのため、フランジ部28は、押圧側部52の前進移動時のストッパとしての機能を果たす。
インナケース27の外周面27aにおけるガス発生器70より元部端24a側の位置には、環状溝35が形成されている。環状溝35には、弾性変形可能なばね板製のEリング(図8参照)からなる仮止め係止部としての係止リング37が配設されている。
この係止リング37は、アクチュエータ21の伸長防止用のロック機構としての係止機構FR1を構成するものであり、フードパネル10の通常使用の開閉時には、環状溝35内への収納状態として、押圧側部52の先端54a側におけるリングホルダ55の先端側鍔部56と当接し、押圧側部52の前進移動を規制する。そして、ガス発生器70が作動用ガスGを発生させた際には、先端側鍔部56が、係止リング37を押し、環状溝35の前進移動側の縁35aを利用して、係止リング37を拡径させて環状溝35から離脱させて、押圧側部52の前進移動を規制していた係止状態を、解除させることとなる。そして、押圧側部52は、作動用ガスGの圧力を受けて、前進移動することとなる。なお、係止リング37は、押圧側部52の前進完了時、先端側鍔部56に押されて環状溝30の位置まで押され、そして、環状溝30内に収納されることとなる(図10,11参照)。
すなわち、実施形態の場合、伸長防止用ロック機構としての係止機構FR1は、仮止め係止部としての係止リング37と、拡径させる縁35aを有して係止リング37を収納する収納側部22の環状溝35と、環状溝35に収納された係止リング37に係止され、かつ、係止リング37の係止を解除するように係止リング37に当接する係止解除兼用の被係止部としての先端側鍔部56と、から構成されている。そして、係止リング37が係止解除兼用の被係止部としての先端側鍔部56に押圧されて環状溝35から離脱するように拡径する変形応力は、フードパネル10の通常使用の開閉時に加わるヒンジアーム14と取付プレート15との連結部14c,15a相互が離れるモーメントに、十分対抗でき、そして、ガス発生器70の作動時には、先端側鍔部56に押圧されて拡径できるように、設定されている。
また、インナケース27には、既述したように、止め具44を嵌め込んで固定できるように、元部端24a側に、アクチュエータ21の軸心Cと直交する組付孔40が、形成されている。
さらに、インナケース27の外周面27aには、押圧側部52の先端54aの端縁54aeの内周に圧接されて、押圧側部52の内部側の防水性とゴミの進入防止を図る円環状のゴム等からなるパッキン48が、配設されている。
アクチュエータ21の押圧側部(移動側部)52は、鋼等の金属製として、収納側部22の開口端23側を覆う天井壁部53と、天井壁部53の外周縁から、少なくとも、ガス発生器70の配置位置の元部24側までの収納側部22の外周を覆うように、押圧側部52の後退側、すなわち、図4,5の下方側、に延びる略円筒状の周壁部54と、を備えて構成されている。
天井壁部53には、丸穴状の連結孔部65aを有して取付プレート15に連結される連結部65が、開口端23と離れた上面側に配設されている。この連結部65は、連結孔部65aに挿入される軸支具(軸支ピン)19を利用して、取付プレート15の連結部15aに対して、回動自在に連結されている。軸支具19は、連結孔部65aを貫通して、取付プレート15の連結部15aに回動自在に連結される。
周壁部54は、天井壁部53から離れる先端54aの内周面側に設けたリングホルダ55までの内周面54bを、収納側部22の外周面側のシール材46と摺動可能として、ガスシール性を確保して前進移動できるように、アクチュエータ21の軸心Cと同心的に、平滑な円形の弧面状に構成されている。
リングホルダ55は、鋼等の金属製の略円筒状部材として、周壁部54の先端54aの内周側にかしめて固定されており、押圧側部52の前進移動側(上部側)から順に、先端側鍔部56と、内周側にロックリング63を収納した収納溝57と、軸心Cと同心とした平滑な円形弧面状のガイド面61と、を備えて構成されている。
先端側鍔部56は、内径寸法を、収納側部22の環状溝30,35間の外径寸法より若干大きく構成されて、アクチュエータ21の非作動時に、環状溝35に収納された係止リング37に当接し、かつ、アクチュエータ21の作動時に、係止リング37を環状溝35から離脱させるように押すことができるように設定され、さらに、前進移動完了時には、収納側部22のフランジ部28に、係止リング37を介在させて、当接するように、設定されている(図10,11参照)。
ガイド面61は、収納側部22の環状溝30,35間の外周面27aに摺動可能として、軸心Cに沿う押圧側部52の前進移動を案内する。
収納溝57は、図6,7,10,11に示すように、アクチュエータ21の作動完了後の押圧側部52の後退移動を規制する後退防止用ロック機構BRを構成するロックリング63を収納するものである。収納溝57は、先端側鍔部56側から拡径するテーパ規制面58と、テーパ規制面58の後退側(図4〜7の下側)の縁からアクチュエータ21の軸心Cと略平行とした底面59と、底面59の後退側の縁から軸心C側に延びる段差面60と、を備えて構成されている。
テーパ規制面58は、底面59から前進側(図4〜7の上側)にかけて、縮径する傾斜面として、実施形態の場合、軸心Cに対して、傾斜角度θ1(図11のA参照)を45°としている。
ロックリング(ストッパリング)63は、円形断面の弾性変形可能なばね鋼等からなるCリングから構成され(図9参照)、縮径可能に、収納側部22の外周面27aに接触した拡径状態で収納溝57に収納されており、押圧側部52の前進移動完了時、縮径して収納側部22の環状溝30に収納される。そして、ロックリング63は、断面の直径寸法D1を、収納側部22の環状溝30の係止規制面31の幅寸法(内周規制面32と外周面27aとの間の幅寸法)B1より大きく、かつ、直径寸法D1の半分(半径寸法)R1を係止規制面31の幅寸法B1と略同等、あるいは、若干小さく、設定されている(図11参照)。
すなわち、ロックリング63が環状溝30に収納された際、環状溝30の内周規制面32に当たって、ロックリング63が収納側部22の外周面27aから突出するように、直径寸法D1が係止規制面31の幅寸法B1より大きく設定されている。また、ロックリング63が環状溝30に収納されて、前進移動完了後に押圧側部52が後退移動しようとする際、押圧側部52の先端側鍔部56のテーパ規制面58が環状溝30に収納されたロックリング63に当たっても、ロックリング63の内周側部位63aの内側面63aaが係止規制面31に当たって係止され、係止規制面31から外れないように、半径寸法R1が、係止規制面31の幅寸法B1と略同等、あるいは、若干小さく設定されている。
そして、前進移動完了後の押圧側部52が後退移動しようとしても、押圧側部52の先端側鍔部56のテーパ規制面58が環状溝30に収納されたロックリング63の外周側部位63bの外側面63baに当たり、そして、ロックリング63の内周側部位63aが係止規制面31から外れないように係止されることから、押圧側部52の後退移動が防止される。すなわち、実施形態の場合、収納側部22における係止規制面31と内周規制面32とを備えた環状溝30、押圧側部52の収納溝57に収納された縮径方向に付勢されるロックリング(後退規制材、ストッパリング)63、及び、押圧側部52の収納溝57のテーパ規制面58により、押圧側部52の前進移動完了後の後退を防止する後退防止用ロック機構BRが構成されている。
実施形態では、アクチュエータ21のリード線70c,70cを図示しない制御回路に結線するとともに、連結部25,65を、軸支具18,19を利用して、フードパネル10の左右のヒンジ機構11におけるヒンジアーム14と取付プレート15との連結部14c,15aに連結させれば、アクチュエータ21をヒンジ機構11に配設できて、跳ね上げ装置Uを車両Vに搭載することができる。
車両Vへの搭載後、実施形態の跳ね上げ装置Uでは、アクチュエータ21が作動すれば、ガス発生器70が作動用ガスGを発生させ、その作動用ガスGの押圧力によって、図3の二点鎖線から実線に示すように、あるいは、図3から図4に示すように、アクチュエータ21の押圧側部52が収納側部22から離れて、アクチュエータ21が伸長する。そして、伸長するアクチュエータ21が、取付プレート15とヒンジアーム14との交差角度θ0を広げることから、フードパネル10の後端10c側が上昇し、フードパネル10が、変形スペースSを広く確保できて、変形量を多くした塑性変形により、衝撃を緩和させて歩行者を受け止めることができる。
そして、アクチュエータ21は、収納側部22と押圧側部52との間に、作動用ガスGの発生時の収納側部22に対する押圧側部52の前進移動を許容して、収納側部22に対して押圧側部52を係止する係止機構FR1が、配設されている。すなわち、アクチュエータ21は、この係止機構FR1により、不要な伸長が防止されて、取付プレート15とヒンジアーム14との交差角度θ0を広げないことから、フードパネル10の通常使用の開閉を支障なく行える。
また、アクチュエータ21の伸長を防止するロック機構は、アクチュエータ21自体に設けられる係止機構FR1であって、ヒンジ機構11の周囲に、別途、係止フック等のスペースを確保せずに、跳ね上げ装置Uに搭載することができる。
したがって、実施形態のフード跳ね上げ装置Uでは、フードパネル10の通常使用時におけるアクチュエータ21の伸長防止用のロック機構としての係止機構FR1を備えていても、省スペースで構成でき、異なった車種へ搭載することとなっても、容易に搭載することができて、搭載自由度を向上させることができる。
そして、実施形態のフード跳ね上げ装置Uでは、アクチュエータ21の収納側部22が、先端側に作動用ガスGを流出させる開口端23を設けてガス発生器70を収納保持するとともに、開口端23から離れた元部24側を、ヒンジアーム14側の連結部14cに連結させている。また、アクチュエータ21の押圧側部52が、収納側部22の開口端23側を覆う天井壁部53と、天井壁部53の外周縁から、少なくとも、ガス発生器70の配置位置付近の元部24側までの収納側部22の外周を覆うように、延び、かつ、ガスシール性を確保して、収納側部22の外周側のシール材46に摺動する周壁部54と、を備えて、天井壁部53側を、取付プレート15側の連結部15aに連結させている。
そのため、実施形態では、アクチュエータ21が作動すると、収納側部22の元部24側に配置されたガス発生器70が作動用ガスGを発生し、作動用ガスGが収納側部22の開口端23から押圧側部52の天井壁部53を押圧するように流れることから、押圧側部52が、周壁部54を収納側部22の外周側(シール材46)に摺動させつつ、周壁部54の先端54aを、収納側部22のガス発生器70を配置させた元部24側から、先端54aの先端側鍔部56をストッパとしてのフランジ部28に当てる開口端23付近まで、移動させることができ、そして、アクチュエータ21を伸長させることができる。
すなわち、このような構成のアクチュエータ21では、作動ストロークSLを、少なくとも、収納側部22のガス発生器70の配置位置付近から開口端23付近まで、確保できて、シリンダタイプのシリンダ内に、ガス発生器を配置させ、かつ、そのガス発生器に対向させるようにピストンロッドを配設させる仕様に比べて、少なくともガス発生器70の長さ分、作動ストロークSLを長く確保できる。
換言すれば、実施形態では、軸心Cの直交方向で、ガス発生器70の図示しない火薬や点火装置等を内蔵した本体71とリード線70cの一部とが、押圧側部52の部位52bと、重なり、そして、その重なり状態を軸心Cに沿って長くしている分、作動ストロークSLを長く確保でき、逆に、従来タイプと作動ストロークSLを同等としても、アクチュエータ21の長さ寸法Lを短くできることとなる。
ちなみに、実施形態の場合、作動ストロークSLを約40mmとして、フードパネル10の後端10cを約80mm上昇させることができる。
なお、実施形態では、押圧側部52の連結部65を天井壁部53から軸心Cに沿って突出させた構成を示した。しかし、ヒンジ機構11のヒンジアーム14と取付プレート15との相互の連結部14c,15aの離隔距離が短く設定できるような場合、天井壁部53近傍における天井壁部53側の周壁部54の外周面から軸支具19を一体的に突出させて、押圧側部52に一体的に固定された軸支具19からなる連結部65を、取付プレート15の連結部15aに対して、回動自在に連結させてもよい。このような構成では、押圧側部52の連結部65が、天井壁部53から軸心Cに沿って突出していない分、長さ寸法Lを短くすることができる。勿論、この場合にも、収納側部22の連結部25を取付プレート15の連結部15a側に連結し、押圧側部52の連結部65をヒンジアーム14の連結部14cに連結させてもよい。
また、実施形態では、作動時の作動用ガスGの押圧力を直接受ける部位が、ガス発生器70を配置させた収納側部22の開口端23を覆うように、その開口端23より外径寸法の大きな押圧側部52の天井壁部53であり、ガス発生器70の外径寸法が等しければ、その受圧面積は、従来のシリンダタイプのアクチュエータにおけるシリンダの内径寸法のピストン部の受圧面積より、大きくなる。そのため、火薬を燃焼させて瞬間的に高い圧力の作動用ガスGを発生させるガス発生器70を使用する場合、受圧面積が大きな分、アクチュエータ21を小径としても大きな出力を確保し易い。
その結果、実施形態の構成では、アクチュエータ21を短くしても、長い作動ストロークSLを確保でき、かつ、アクチュエータ21を太くしなくとも、大きな出力を確保できることから、逆に、アクチュエータ21を小径にできる。すなわち、実施形態の構成では、アクチュエータ21を、小径で短い長さのコンパクトに構成できて、フードパネル10のヒンジ機構11付近に搭載し易くなり、一層、搭載自由度を向上させることができる。
特に、実施形態では、作動前のアクチュエータ21を、ヒンジアーム14側の連結部14cから取付プレート15側の連結部15aまで、上下方向でなく、斜め後上向きの水平方向に接近させるように、搭載できることから、上下方向の搭載スペースを小さくできて、エンジンルームERが大きく、ヒンジ機構11の周囲に高さ方向のスペースのない車両Vに、好適に、跳ね上げ装置Uを搭載できる。
また、実施形態では、収納側部22の開口端23の外周側には、押圧側部52の周壁部54の内周面54bに摺動するシール材46が、配設されている。
そのため、実施形態では、押圧側部52の前進移動時において、吐出された作動用ガスの貯留部位は、押圧側部52の天井壁部53、周壁部54、及び、開口端23側の収納側部22で囲まれる部位で構成されて、収納側部22の開口端23の外周側に配置されて周壁部54の内周面54bに摺動するシール材46により、ガスシール性が確保される状態となる。そして、そのシール材46は、ガス発生器70を収納した収納側部22の内周面27b側でなく、開口端23の外周側のフランジ部28に配置されており、高温の作動用ガスGに曝され難く、性能の低下を抑制できて、良好なガスシール性を維持し、押圧側部52は、安定した押圧力で前進移動でき、アクチュエータ21は、安定した出力を確保できる。
また、実施形態では、ガス発生器70の作動用ガスGを吐出させる先端70aが、収納側部22の開口端23と距離を開けているが、開口端23からガス発生器70を突出させないように、開口端23から元部24側に離れてガス発生器70の本体部位が配設されれば、開口端23を先端70aに接近させて、例えば、図12に示すアクチュエータ21´のように、開口端23と先端70aとを一致させるように、配設してもよい。但し、実施形態のように、ガス発生器70の先端70aと開口端23との間に、すなわち、ガス発生器70の先端70aと押圧側部52の天井壁部53との間に、押圧側部52の前進移動前に、作動用ガスGを貯留できる貯留室80を設けるように、開口端23から天井壁部53を大きく離す構成であると、押圧側部52の前進移動に伴なう先端70aと天井壁部53との間の容積変化率が、前進移動前に大きな容積の貯留室80がある分、小さくなって、押圧側部52の前進途中における燃焼ガスからなる作動用ガスGの圧力の低減を抑制できて、アクチュエータ21は、押圧側部52の前進完了位置付近でも、大きな押圧力を発揮して、押圧側部52を前進移動させることができる。
なお、実施形態では、アクチュエータ21の収納側部22の連結部25をヒンジアーム14側に連結し、押圧側部52の連結部65を取付プレート15側に連結したが、逆の構成として、収納側部22の連結部25を取付プレート15の連結部15aに連結し、押圧側部52の連結部65をヒンジアーム14の連結部14cに連結してもよい。
また、実施形態のアクチュエータ21では、後退防止用ロック機構BRが配設されており、前進完了時には、図10のA,Bや図11のA,Bに示すように、押圧側部52の前進移動に伴なって、ロックリング63が、先端54a側のリングホルダ55の収納溝57に収納保持されて、収納側部22の外周面27aに摺動しつつ前進移動し、そして、環状溝30に収納される。ロックリング63が縮径して環状溝30に収納された後では、前進移動完了後の押圧側部52が後退移動しようとしても、図10のCや図11のCに示すように、押圧側部52の先端側鍔部56のテーパ規制面58が環状溝30に収納されたロックリング63の外周側部位63bに当たり、そして、ロックリング63の内周側部位63aが係止規制面31から外れないように係止されることから、押圧側部52の後退移動が防止される。そのため、押圧側部52の後退移動が防止されて、フードパネル10は、歩行者を受け止めても、上昇した後端10cを下降させずに、広い変形スペースSを活用して、大きく塑性変形できて、好適に歩行者を受け止めることができる。
また、実施形態では、アクチュエータ21自体に設ける伸長防止用の係止機構FR1として、離脱可能な仮止め係止部としての係止リング37を収納側部22の環状溝35に設け、押圧側部52の先端54a側に設けた係止解除兼用の被係止部としての先端側鍔部56を、係止リング37に係止可能で、かつ、係止解除可能に配設させた。しかし、係止機構FRは、アクチュエータ自体に配設されれば、実施形態に限定させるものではなく、例えば、インナケース27の外周面27aと押圧側部52の先端54aの端縁54aeの内周に圧接されるパッキン48を、材質や寸法を変えた連結充填材とし、ガス発生器70の作動時以外には、押圧側部52の先端54a側の端縁54aeが、その内周側のインナケース27の外周面27a側の位置から、ずれないように、構成してもよい。
あるいは、図13,14に示すアクチュエータ21Aのように構成してもよい。このアクチュエータ21Aでは、仮止め係止部としての断面逆U字形の塑性変形可能な金属等からなる係止部37Aを、収納側部22Aとしてのインナケース27Aの外周面27aに固着させ、押圧側部52Aの端縁54aeに、係止部37Aの先端の係止フック部37aを周縁に係止させる係止孔56aを設けるように構成している。そして、係止部37Aと、係止フック部37aを係止させる係止孔56a周縁の被係止部56Aと、によって係止機構FR2を構成している。これらの係止部37Aと被係止部56Aとは、アクチュエータ21Aの軸心Cの回りで、二箇所若しくは三箇所等の複数個所に形成する。さらに、係止孔56aは、挿入孔56abと本体係止孔56aaとから構成され、各係止部37Aを挿入孔56ab側から挿入して、押圧側部52A若しくは収納側部22Aを回して、係止フック部37aを本体係止孔56aaの周縁の被係止部56Aに係止させるように、配置させる。
このアクチュエータ21Aでは、非作動時には、収納側部22A側の各係止部37Aの係止フック部37aが押圧側部52A側の被係止部56Aを係止して、伸長を防止する。そして、ガス発生器70が作動されて、押圧側部52Aが前進移動する際、図13のBに示すように、各係止部37Aが、係止孔56aから抜けるように塑性変形し(あるいは、各被係止部56Aを塑性変形させて、各係止部37Aを係止孔56aから離脱させてもよい)、被係止部56Aの係止を解除することから、押圧側部52Aが前進完了位置まで、前進移動できる。そのため、係止機構FR2としては、上記のように構成してもよい。