JP3916585B2 - 自動車用安全装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車用安全装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、自動車が衝突した歩行者の二次衝突の衝撃を緩和するために自動車側に設けられた自動車用安全装置において、例えばフロントエンジン車のエンジンフードを持ち上げかつその持ち上げた状態に保持して、歩行者の衝突時のフード変形量を大きく確保するようにしたものがある(例えば、特許文献1参照。)。このものにあっては、エンジンフードの車両後方側端部を持ち上げ可能なフード持ち上げ保持機構として、シリンダ及びピストンロッドを有する直動型アクチュエータを用いている。そして、シリンダの内部に高圧ガスを発生させ、そのガス圧力によりピストンロッドをシリンダによりガイドして上方に変位させるようにしている。
【0003】
【特許文献1】
特開2000−33850号公報(第2−3頁、図3)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記したような自動車用安全装置にあっては、エンジンフードの変形量をより一層大きく確保するためには、そのアクチュエータが固定シリンダとピストンロッドとの単純な構成であるため、ピストンロッドを長ストローク化するとアクチュエータが大型化してしまう。それにより、アクチュエータの大きな取り付けスペースが必要になり、レイアウトの設計が難しくなるという問題があった。また、エンジンフードを持ち上げるための充分な推力が必要であるため、シリンダ径を小さくすることもできず、コンパクト化が困難であった。
【0005】
【課題を解決するための手段】
このような課題を解決して、シリンダアクチュエータを用いる自動車用安全装置においてコンパクト化及び充分な推力を実現するために、本発明に於いては、車体表面の一部を形成する部材(3)を衝突時に外方に突出させるための自動車用安全装置であって、前記部材(3)が変位可能に車体本体(1)に支持されていると共に、前記部材(3)を外方に突出させる向きに作動させるためのシリンダアクチュエータ(6)を前記部材(3)と前記車体本体(1)との間に設け、前記シリンダアクチュエータ(6)が、ピストン(19)と、前記ピストン(19)を外囲するインナシリンダ(17)及び当該インナシリンダ(17)を外囲するアウタシリンダ(18)からなる少なくとも2段以上の多段シリンダと、前記衝突時に前記多段シリンダ内に高圧ガスを発生するガス発生器(13)とを有し、前記高圧ガスが発生して前記インナシリンダ(17)から突出した状態の前記ピストン(19)を保持するべく前記ピストン(19)と前記インナシリンダ(17)との間に設けられたピストンロック手段(19b・22a)と、前記高圧ガスが発生して前記アウタシリンダ(18)から突出した状態の前記インナシリンダ(17)を保持するべく前記インナシリンダ(17)と前記アウタシリンダ(18)との間に設けられたシリンダロック手段(17b・22b)とが設けられ、前記ピストンロック手段が、前記ピストン(19)に設けられた周方向溝(19b)と、前記インナシリンダ(17)の所定位置に受容されかつ前記ピストン(19)が前記突出した状態で前記周方向溝(19b)に半径方向の一部が入り込むように縮径方向に弾発力を有するCリング(22a)と、前記突出した状態の前記ピストン(19)の下降を前記Cリング(22a)との係合により止めるべく前記インナシリンダ(17)の前記Cリング(22a)を受容する部分に設けられた係合手段(17a)とを有するものとした。
【0006】
これによれば、インナシリンダとピストンとを突出させる多段構造としたことから、ピストンの突出高さとなる全ストロークを長くしても、非作動状態の高さを低くすることができるため、長ストローク作動可能であって車両搭載性に優れた小型のアクチュエータとすることができる。
【0007】
特に、前記ピストン(19)に前記インナシリンダ(17)の突出方向端と係合するピストンヘッド(23)を一体的に設けると共に、前記ピストン(19)の作動力よりも前記インナシリンダ(17)の作動力の方を大きくすると良い。ここで、作動力の大きさとしては、ピストン及びインナシリンダの高圧ガスを受ける受圧面積や各質量などを変えることにより調整可能である。ピストンよりもインナシリンダの作動力を大きくすることにより、インナシリンダが先行して突出しようとした場合にはピストンヘッドに係合するため、インナシリンダとピストンとが同時に突出し得る。これにより、ピストンとインナシリンダとを合わせた大きな突出力が得られるため、例えばエンジンフードの持ち上げ開始時には通常使用状態における留め具などによる大きな抵抗があったり大きな慣性質量のものを動かすことになるのに対して、大きな力で持ち上げることができる。
【0008】
また、前記ピストン(19)と前記インナシリンダ(17)と前記アウタシリンダ(18)との各間であって、前記各ロック手段(19b・22a・17b・22b)による前記ピストン(19)及び前記インナシリンダ(17)を保持する各手前に突出力を緩和する緩衝手段(17d・19c)が設けられていると良い。これによれば、インナシリンダ及びピストンが突出限度位置に達して停止する時の衝撃力が緩和されるため、ストッパ部の強度を極端に高める必要がなくなる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に添付の図面に示された具体例に基づいて本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0010】
図1は、本発明が適用された自動車の全体を示す斜視図である。図に示されるように、車体本体1の前部にエンジン(図示せず)を搭載したエンジンルーム2が設けられており、その上部には開閉自在なエンジンフード3が取り付けられている。エンジンフード3は、図示例の場合にはエンジンルーム2の車両後端部(フロントウィンドウの近傍)における左右の2点でヒンジ4により傾動自在に支持されていると共に、車両前端の中央部(フロントグリルの近傍)にて車体本体1との間に設けられたフードロック機構5により閉じた状態に保持されるようになっている。
【0011】
そして、上記各ヒンジ4の近傍のエンジンフード3の下部には左右一対のアクチュエータ6が配設されている。各アクチュエータ6は同一構造のため、以下に一方についてのみ示す。
【0012】
本アクチュエータ6は、車体本体1への取り付け状態の姿勢に対応する図2に示されるように、上下方向に伸びるシリンダ部6aとその下部で曲折されて水平方向に伸びるガス発生部6bとを有するL字形に形成されており、ガス発生部6bのケーシングとなる部分を、例えばブラケットを介したり、直接ねじ止めしたり、クランプにより保持したりして、車体に固定されている(図示せず)。
【0013】
また、車体本体1の前端部の適所には、車両の前端部に人などが衝突した場合の衝撃を検出する衝突検知センサ7が設けられている。この衝突検知センサ7と上記ガス発生部6bとは、それぞれワイヤハーネス8a・8bを介して制御ユニット(ECU)9に接続されている。
【0014】
ガス発生部6bのL字形の角部に当たる部分にはエルボ形のホルダ11が設けられている。アクチュエータの非作動状態を示す図3に示されるように、ホルダ11の内部にはL字形の貫通孔12が形成されている。そのホルダ11の一端部である図における水平方向側端部には、貫通孔12内に頭部を没入させた状態でインフレータ等のガス発生器13が装着されている。ガス発生器13の軸線方向中間部には拡径部13aが形成されていると共に、貫通孔12の対応する開口部分が拡径部13aを受容する大きさに拡径されている。貫通孔12の拡径形状による段部に拡径部13aがOリング14aを介して係合しており、ガス発生器13の貫通孔12への没入深さが決められている。
【0015】
ホルダ11の上記水平方向側端部にはガス発生器13の拡径部13aを外囲する袋ナット15がねじ結合されており、これによりガス発生器13が固定されている。袋ナット15と拡径部13aとの軸線方向当接面間にはパッキン14dが介装されており、このパッキン14dと上記Oリング14aとによりガス発生器13の頭部における外部に対する気密性及び防水性が確保されている。また、袋ナット15のねじ結合部には防水や緩み止めのための例えば液状シール材(嫌気性硬化型)が塗布されている。なお、ガス発生器13の後部が袋ナット15の開口から外方に突出し、その突出部分にワイヤハーネス8bのコネクタ16が接続されている。
【0016】
これらホルダ11及び袋ナット15はアルミニウム合金からなる。また、ガス発生器13からの高圧ガスの爆発力に耐えられるように、それぞれ充分な肉厚で形成されている。このようにアルミニウム合金製とすることにより、長期に亘る高い防錆性が確保され、図示例のように雨水が付着する可能性のある所に設置される装置として好適である。
【0017】
また、ホルダ11の他端部である図3における上下方向側端部には、貫通孔12と連通しかつ貫通孔12よりも大径のねじ孔11aが設けられている。そのねじ孔11aにアウタシリンダ18の一端部(図3における下端部)がねじ結合されかつねじ孔11の底部となる段部によりねじ込み深さ位置を決められており、これによりアウタシリンダ18がホルダ11に対して立設状態に保持されている。なお、ねじ結合部には防水や緩み止めのための例えば上記と同様の液状シール材がそれぞれ塗布されている。
【0018】
アウタシリンダ18の内部にはインナシリンダ17が同軸的に受容され、そのインナシリンダ17の内部にピストン19が同軸的に受容されている。なお、ホルダ11の貫通孔12を形成する壁には半径方向内向き突部11bが例えば周方向に当角度ピッチで3箇所に設けられており、これら突部11bにインナシリンダ17の図における下端位置が決められている。
【0019】
図示例では、インナシリンダ17が、貫通孔12と連通する筒内に高圧ガス発生時の高圧力が加わることから、高剛性材として例えば鋼材からなる。このように鋼製とすることにより、必要な強度に対して、アルミニウム合金製のものよりも薄肉にすることができる。なお、押し出し工法などにより製作し、また、めっき処理すると良い。
【0020】
それに対して、アウタシリンダ18は、外気にさらされる部品であり、防錆材として例えばアルミニウム合金により形成される。それにより、上記ホルダ11などと同様の効果を奏し得る。なお、アウタシリンダ18にあっては、高圧ガスの圧力に耐えられる肉厚で形成されている。アウタシリンダ18が肉厚であっても、上記したようにインナシリンダ17を薄肉化し得ることから、全体の大径化にはならない。
【0021】
ピストン19の図3における下側の一端部にはインナシリンダ17の内径より若干小径にされた拡径部19aが形成されており、その拡径部19aの外周面に設けた周方向溝にOリング14bが装着されており、ピストン19の下端部とインナシリンダ17との間の気密性が確保されている。ピストンの図3における上側の他端部には、インナシリンダ17の上端部に形成された縮径部17aにより軸線方向スライド自在にガイドされるようになっている。この縮径部17aにあって、上記したインナシリンダ17を製作する押し出し工法にて同時に形成することができるため、部品点数を削減し得ると共に、肉厚形状を一体的に形成しており、強度も向上する。
【0022】
なお、インナシリンダ17の上部にはインナシリンダ17の突出方向である図3における上方に拡開されたテーパ孔が設けられており、テーパ孔の開口面を閉塞する平座金形状のインナカバー21aが取り付けられている。なお、インナカバー21aは、インナシリンダ17の上部におけるテーパ孔の縁部を半径方向内向きにかしめることにより固定されている。そのテーパ孔内にはインナカバー21aにより抜け止めされたCリング22aが受容されている。また、ピストン19の図3における下部の適所には、軸線方向に所定の長さ(幅)を有する周方向溝19bが設けられている。この周方向溝19bの深さ(半径方向長さ)は、上記Cリング22aの半径方向幅よりも小さくされている。これにより、ピストンロック手段が構成されている。
【0023】
また、インナシリンダ17及びアウタシリンダ18の図3における各上端部にあっては、アウタシリンダ18の方よりもインナシリンダ17の方が下方に位置している。ピストン19の上端部がインナシリンダ17から上方に突出しており、その突出部にピストンヘッド23が同軸的にねじ結合されている。ピストンヘッド23は、アウタシリンダ18の内径より若干小さい外径の円形駒状に形成されていると共にその上端面を凸面状に形成されている。ピストンヘッド23はアウタシリンダ18の内径よりも大径であり、アウタシリンダ18の図3における上端部に形成された大径孔18a内に受容され、その底となる段部18bに係合して没入方向深さを規制されている。これにより、ピストン19の没入方向への変位が止められている。
【0024】
なお、ピストンヘッド23の外周面には周方向溝が形成されており、その周方向溝にOリング14cが嵌装されている。これにより、アウタシリンダ18のピストンヘッド23側の防水性が確保されている。シール部材として用いた各Oリング14a・14b・14cにあっては、パッキンや、一体成形の焼き付けゴムなどの弾性体や、液状シール材などに代えても良く、気密性の要求を満たすものであれば良い。
【0025】
また、アウタシリンダ18の大径孔18aの図3における下側部分にはカラー31が例えばねじ結合されて固設されている。カラー31の上部にはアウタシリンダ18の突出方向である図3における上方に拡開されたテーパ孔が設けられており、テーパ孔の開口面を閉塞する平座金形状のインナカバー21bが取り付けられている。なお、インナカバー21bは、アウタシリンダ18の上部におけるテーパ孔の縁部の適所(例えば3箇所)を図4に示されるようにかしめ治具32により図の矢印に示されるように突くことにより半径方向内向きにかしめて固定されている。そのテーパ孔内にはインナカバー21bにより抜け止めされたCリング22bが受容されている。インナシリンダ17の図3における下部の適所には、軸線方向に所定の長さ(幅)を有する周方向溝17bが設けられている。この周方向溝17bの深さ(半径方向長さ)は、上記Cリング22bの半径方向幅よりも小さくされている。これにより、シリンダロック手段が構成されている。
【0026】
また、ピストンヘッド23の突出方向端面(図3における上面)の縁部が、上記と同様のかしめ要領によりアウタシリンダ18の開口縁部の一部を半径方向内向きに変形させたかしめ部18c(複数箇所)により、ピストン19の突出方向変位が止められている。かしめ部18cと上記段部18bの係合とを合わせて、ピストンヘッド23の軸線方向変位が固定されるため、走行時の振動などによりピストン19などが変位して飛び出したりすることがない。
【0027】
なお、インナシリンダ17の図3における下側の一端部にはアウタシリンダ18の内径より若干小径にされた拡径部17cが形成されており、その拡径部17cの外周面に設けた周方向溝にOリング14eが装着されており、インナシリンダ17の下端部とアウタシリンダ18との間の気密性が確保されている。
【0028】
このようにして構成されたアクチュエータ6にあっては、車両の前端部の衝突を衝突検知センサ7により検出したら、制御ユニット9からガス発生器13に発火信号を出力して、ガス発生器13から高圧ガスが発生する。その高圧ガスの圧力によりピストン19及びインナシリンダ18が図3における上方に向けて押し出され、図5に示されるようになる。
【0029】
図5はインナシリンダ17が最上昇位置に達した状態であり、その状態では図に示されるように、拡径部17cの肩部がカラー31に衝当してインナシリンダ17の上昇が止められている。それと合わせて、周方向溝17bがカラー31のテーパ孔に臨むようになり、その状態で、Cリング22bが自身の縮径方向の弾発力により周方向溝17b内に入り込む。これにより、Cリング22bを介して周方向溝17bと係合手段としてのカラー31とが係合状態になって、インナシリンダ17の下降が止められるため、ガス圧力が弱まった後でもインナシリンダ17の最上昇状態が保持される。
【0030】
このように、作動開始時にピストン19とインナシリンダ18とを同時に上昇させるのは、エンジンフード3を持ち上げる時にはフードストッパを解除したり静止状態の重量物であるエンジンフード3を動かしたりするため、大きな力が必要なためである。このように同時に上昇させるためには、ピストン19の作動力をF1とし、インナシリンダ17の作動力をF2とした場合に、各作動力F1・F2が同等になるようにすれば良い。
【0031】
以下に、同時上昇における作動要領について示す。ここで、高圧ガスによるホルダ11の内圧をP1、ピストン19の質量をm1及びその作動時の加速度をa1とし、インナシリンダ17の質量をm2及びその作動時の加速度をa2とし、ピストン19の高圧ガスを受ける面積をS1、インナシリンダ17の高圧ガスを受ける面積をS2とする。なお、Oリングなどによる摩擦抵抗は無視する。
【0032】
高圧ガスの発生により、ホルダ内圧P1が生じると、ピストン19及びインナシリンダ17には受圧面積に応じた作動力F1・F2が生じる。作動力Fは質量mと加速度aの積となることから、各作動力に応じた加速度a1・a2が発生することになる。加速度の積分値は速度であり、大きな加速度が発生するほど速度(変位速度)が高くなる。図の構造では、ピストン19の加速度a1が大きい場合(a1>a2)にはピストン19みが単独で先行し得るが、インナシリンダ17の加速度が大きい場合(a1<a2)にはインナシリンダ17の突出端がピストンヘッド23に衝当するため、インナシリンダ17のみが先行することはない。
【0033】
したがって、加速度をa1<a2の関係になるようにすれば、両者が同時に移動(突出)し得る。そのための1つとして、受圧面積S1及びS2に差を付ければ良い。
F1=S1×P1=m1×a1 …(1)
F2=S2×P1=m2×a2 …(2)
上記式(1)・(2)より、
a1=(S1/m1)×P1 …(3)
a2=(S2/m2)×P1 …(4)
となる。よって、S1/m1<S2/m2となる関係が成立する設計とすれば、ピストン19とインナシリンダ17とを同時に作動させることができる。
【0034】
ピストン19とインナシリンダ17とを同時に作動させることにより、それらの作動力の和がエンジンフード3の持ち上げ力F3(=F1+F2)となるため、大きな持ち上げ力を得ることができる。したがって、慣性質量の大きな静止状態のものを変位させるのに好適である。
【0035】
また、ピストンヘッド19が上記したようにかしめ部18cにより固定されていることから、ピストン19が単独で移動する作動力F1に対して、かしめ部18cによる抵抗力が発生する。そのため、より一層ピストン19が単独で作動することがなく、インナシリンダ17の作動力F2がピストン19の作動力F1に加わって大きな作動力F3が生じたらかしめ部18cによる係止が解除されるため、ピストン19とインナシリンダ17との同時移動(上昇)がより確実に行われる。
【0036】
かしめ部18cによる係止が解除された後には、ピストン19とインナシリンダ17とが突出していくため、ホルダ内圧P1が低減する。しかしながら、上記受圧面積の関係(a1<a2)は維持されるため、ピストン19とインナシリンダ17との同時移動(上昇)が維持される。
【0037】
上記したように、インナシリンダ17の拡径部17cがカラー31に衝当してインナシリンダ17の突出方向移動が停止し、かつCリング22bを介してインナシリンダ17とカラー31(アウタシリンダ18)とが係合することにより、インナシリンダ17が突出限度位置に保持される。その後は、ピストン19が単独で移動(上昇)し続けることができる。
【0038】
ピストン19が単独で移動(上昇)してピストン19の拡径部19aが縮径部17aに衝当すると、ピストン19の突出方向移動が停止する(図6)。この状態が本図示例の最大ストロークとなる。この最大ストローク状態においては、図に示されるように、拡径部19aの肩部が縮径部17aに衝当してピストン19の上昇が止められる。それと合わせて、周方向溝19bが縮径部17aのテーパ孔に臨むようになり、その状態で、Cリング22aが自身の縮径方向の弾発力により周方向溝19b内に入り込む。これにより、Cリング22aを介して周方向溝19bと係合手段としての縮径部17aとが係合状態になって、ピストン19の下降が止められるため、ガス圧力が弱まった後でもピストン19の最上昇状態が保持される。
【0039】
衝突時には、エンジンフード3の車両後方側が図6に示されるようにピストン19により持ち上げられるため、エンジンフード3上に落下したものに対する衝撃をエンジンフード3の大きな変形代をもって大きく吸収することができる。
【0040】
また、各拡径部17c・19aの突出方向側にはそれぞれテーパ面17d・19cが形成されている。これにより、各テーパ面17d・19cが縮径部17a及びカラー31の対応する角部に衝当するため半径方向力が生じて、軸線方向力の低減により衝撃力が緩和される。したがって、インナシリンダ17及びピストン19が突出限度位置に達して停止する時の衝撃力が緩和されるため、ストッパ部としての縮径部17a及びカラー31の強度を極端に高める必要はなく、軽量化や設計の簡略化が可能になる。
【0041】
このように、多段(図示例では2段)シリンダ構造としたことにより、1段構造のものよりも容易に長ストローク化し得る。例えば、1段シリンダ構造のものよりも非作動状態におけるシリンダ長さ(アクチュエータの長さ)に対して短いシリンダ長さとしても、作動状態の全長にあっては容易に長くし得る。これにより、アクチュエータ6をコンパクト化し得ると共に長ストローク作動可能なため、車両搭載性に優れた(レイアウト性の良い)小型であって長ストローク可能なアクチュエータを実現することができる。
【0042】
多段化したことにより、フルストロークで停止する時の衝撃力が分散されるため(本図示例では2箇所)、アクチュエータの破壊強度を低減できるため、薄肉化、小径化、ねじ込み量の低減、ストッパ部材のせん断に対する長さの短縮化などにより、より一層の小型化が可能である。なお、多段化することにより、部品点数が増えるが、個々の部品の小型化により部品の加工性が向上するため、製品全体のコストを低減し得る。また、部品点数の増大に伴って箇所が増える摺動部や結合部のシール性(防水性)が重要になるが、Oリング、パッキン、液状シール材などによって内部への浸水防止構造が達成され、何ら問題なくシール性を確保できるため、外装用アクチュエータとしての性能が長期に亘って維持される。
【0043】
上記構造によりピストン19及びインナシリンダ17の同時移動を何ら問題なく実現し得るが、例えば図7に示されるようにしても良い。この図示例にあっては、インナシリンダ17のホルダ11側端部をピストン19よりも長く形成し、そこに孔付きカラー33を例えばねじ結合して取り付けている。これにより、カラー33の端面を合わせてインナシリンダ17の受圧面積S2とすることができるため、拡径部17cによる面積が狭くても上記値(S2/m2)を大きくすることができる。
【0044】
【発明の効果】
このように本発明によれば、インナシリンダとピストンとを突出させる多段構造としたことから、ピストンの突出高さとなる全ストロークを長くしても、非作動状態の高さを低くすることができるため、長ストローク作動可能であって車両搭載性に優れた小型のアクチュエータとすることができる。
【0045】
特に、ピストンとインナシリンダとを同時に突出させるようにすることにより、ピストンとインナシリンダとを合わせた大きな突出力が得られるため、例えばエンジンフードの持ち上げ開始時には通常使用状態における留め具などによる大きな抵抗があったり、大きな慣性質量のものを動かしたりすることになるのに対して、大きな力で持ち上げることができ、アクチュエータを小型化し得る。
【0046】
また、ピストン及びインナシリンダが突出限度位置に達する時に突出力を緩和することにより、インナシリンダ及びピストンが突出限度位置に達して停止する時の衝撃力が緩和されるため、ストッパ部の強度を極端に高める必要がなくなる。これにより、ストッパ部の形状を厚肉化したり特殊な構造で高強度化したりする必要がなく、軽量化や設計の簡略化が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用された自動車の全体を示す斜視図。
【図2】アクチュエータを示す斜視図。
【図3】アクチュエータの側断面図。
【図4】かしめの要領を示す要部拡大側断面図。
【図5】アクチュエータの中間作動状態を示す要部破断側面図。
【図6】アクチュエータの最終突出状態を示す要部破断側面図。
【図7】第2の例を示す要部拡大断面図。
【符号の説明】
1 車体本体
3 フード(部材)
6 アクチュエータ
17 インナシリンダ
17b 周方向溝(シリンダロック手段)
17d テーパ面(緩衝手段)
18 アウタシリンダ
19 ピストン
19b 周方向溝(ピストンロック手段)
19c テーパ面(緩衝手段)
22a Cリング(ピストンロック手段)
22b Cリング(シリンダロック手段)
23 ピストンヘッド

Claims (3)

  1. 車体表面の一部を形成する部材を衝突時に外方に突出させるための自動車用安全装置であって、
    前記部材が変位可能に車体本体に支持されていると共に、前記部材を外方に突出させる向きに作動させるためのシリンダアクチュエータを前記部材と前記車体本体との間に設け、
    前記シリンダアクチュエータが、ピストンと、前記ピストンを外囲するインナシリンダ及び当該インナシリンダを外囲するアウタシリンダからなる少なくとも2段以上の多段シリンダと、前記衝突時に前記多段シリンダ内に高圧ガスを発生するガス発生器とを有し、
    前記高圧ガスが発生して前記インナシリンダから突出した状態の前記ピストンを保持するべく前記ピストンと前記インナシリンダとの間に設けられたピストンロック手段と、前記高圧ガスが発生して前記アウタシリンダから突出した状態の前記インナシリンダを保持するべく前記インナシリンダと前記アウタシリンダとの間に設けられたシリンダロック手段とが設けられ、
    前記ピストンロック手段が、前記ピストンに設けられた周方向溝と、前記シリンダの所定位置に受容されかつ前記ピストンが前記突出した状態で前記周方向溝に半径方向の一部が入り込むように縮径方向に弾発力を有するCリングと、前記突出した状態の前記ピストンの下降を前記Cリングとの係合により止めるべく前記シリンダの前記Cリングを受容する部分に設けられた係合手段とを有することを特徴とする自動車用安全装置。
  2. 前記ピストンに前記インナシリンダの突出方向端と係合するピストンヘッドを一体的に設けると共に、前記ピストンの作動力よりも前記インナシリンダの作動力の方を大きくしたことを特徴とする請求項1に記載の自動車用安全装置。
  3. 前記ピストンと前記インナシリンダと前記アウタシリンダとの各間であって、前記各ロック手段による前記ピストン及び前記インナシリンダを保持する各手前に突出力を緩和する緩衝手段が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の自動車用安全装置。
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