(第1の実施の形態)
図1〜図5を用いて、第1の実施の形態に係る車両用ポップアップフード装置30(以下、PUフード装置30という)について説明する。なお、図面において適宜示される矢印FR、矢印UP、矢印LHは、それぞれPUフード装置30が適用された車両Vの車両前側、車両上側、車両左側を示している。そして、以下、単に前後、上下、左右の方向を用いて説明する場合は、特に断りのない限り、車両前後方向の前後、車両上下方向の上下、車両左右方向(車幅方向)の左右を示すものとする。
図2及び図3に示されるように、第1の実施の形態では、PUフード装置30によってフード10の前端部を持上げるようになっている。このPUフード装置30は、車両Vの車体側構成部品であるラジエータサポート20(図3参照)に固定されたベースプレート32と、ベースプレート32に上下方向にスライド可能に支持された「移動部材」としてのフードロック装置34と、歩行者と車両Vとの衝突時に作動してフード10を持上げる左右一対のアクチュエータ50と、を含んで構成されている。また、図4及び図5に示されるように、PUフード装置30は、フードロック装置34をベースプレート32に固定する固定装置40と、フード10の持上時にフード10を保持するロック機構70と、を備えている。以下、先にフード10及びラジエータサポート20の構成について説明し、次いでベースプレート32、フードロック装置34、固定装置40、アクチュエータ50、及びロック機構70の構成について説明する。
(フード10の構成)
図2に示されるように、フード10は、平面視で略矩形状に形成されて、車両Vの前部に設けられたエンジンルーム(パワーユニット室)ERを上側から覆っている。そして、フード10は、その後端部における車幅方向両端部において、車体に固定されたフードヒンジ(図示省略)に回動可能に支持されている。
フード10の前端部における車幅方向中央部には、「ストライカ」としてのフードストライカ12が設けられており、フードストライカ12はフード10から下側へ突出されている。このフードストライカ12は、図示は省略するが、側面視で上側へ開放された略U字形状に形成されており、フードストライカ12の開放端部がフード10に結合されている。そして、フードストライカ12の下端部が係止部12Aとされており、係止部12Aは前後方向に延びている。また、フード10がエンジンルームERを閉じた状態(図2において実線で示される位置であり、以下この位置を「閉止位置」という)では、フードストライカ12が、後述するフードロック装置34に係止されている。これにより、フード10の前端部が車体に固定されている。
(ラジエータサポート20について)
図3に示されるように、ラジエータサポート20は、フード10(図3では不図示)の前端部に対して下側に配置されて、正面視で略矩形枠状に形成されている。そして、冷却水を冷却するラジエータ18をラジエータサポート20によって支持するように構成されている。
このラジエータサポート20の車幅方向両端部は、上下方向に延在された左右一対のラジエータサポートサイド22によって構成されている。また、一対のラジエータサポートサイド22の上端部には、ラジエータサポートアッパ24が車幅方向に沿って架け渡されている。このラジエータサポート20は、側面視で下側へ開放された凹状に形成されている。
図1にも示されるように、ラジエータサポートアッパ24の車幅方向中央部には、係合部26が一体に形成されている。この係合部26は、ラジエータサポートアッパ24の前壁24Aから前側へ突出されている。具体的には、係合部26は、前壁24Aから前側へ向かうに従い下側へ傾斜された傾斜壁26Aと、傾斜壁26Aの下端から下側へ延出された第1縦壁26Bと、第1縦壁26Bの下端から前側へ延出された保持壁26Cと、保持壁26Cの前端から下側へ延出された第2縦壁26Dと、を含んで構成されている。
(ベースプレート32について)
図4及び図5に示されるように、ベースプレート32は、鋼板製とされて、前後方向を板厚方向として配置されると共に、正面視で略ひし形状に形成されている。そして、ベースプレート32は、ラジエータサポートアッパ24(図4及び図5では不図示)における係合部26の前側に配置されており、ベースプレート32の下端部が係合部26における第2縦壁26Dの車幅方向中央部に固定ボルトB1によって固定されている。
ベースプレート32の上部には、左右一対のガイド孔32Aが形成されている。一対のガイド孔32Aは、上下方向を長手方向とする長孔とされると共に、車幅方向に間隔をあけて配置されている。
また、ベースプレート32の下端部における車両前方に向かって右側端部には、スプリング係止部32Bが形成されており、スプリング係止部32Bには、後述する固定装置40の一部を構成する引張コイルスプリング46の一端が係止されるようになっている。また、ベースプレート32の下端部における左側端部には、ケーブル係止部32Cが形成されており、ケーブル係止部32Cには、後述するケーブル48のアウタチューブが係止されるようになっている。
(フードロック装置34について)
フードロック装置34は、前後方向に所定の厚みを有する略矩形状に形成されると共に、ベースプレート32の前側に配置されている。フードロック装置34の下部には、左右一対の収容凹部34Aが形成されている。図1(A)及び(B)にも示されるように、収容凹部34Aは、後側へ開放された断面円形状に形成されると共に、ベースプレート32のガイド孔32Aの前側に対向して配置されている。そして、この収容凹部34A内に、後述するロック機構70のストッパ72が収容されて、ストッパ72がベースプレート32のガイド孔32Aに挿通されることによって、フードロック装置34がベースプレート32に上下方向にスライド可能に支持されている。
図4及び図5に示されるように、フードロック装置34の上部には、車幅方向中央部において、係止凹部34Bが形成されており、係止凹部34Bは正面視で上側へ開放された略U字状に形成されている。そして、係止凹部34Bに、フードストライカ12の係止部12Aが係止されるようになっている。また、フードロック装置34の下端部における車幅方向中間部には、固定ピン34Cが設けられており、固定ピン34Cは前後方向を軸方向にして配置されている。そして、固定ピン34Cには、後述する固定装置40の固定フック42が係合するようになっている。
さらに、フードロック装置34には、ラッチ36が取付けられており、ラッチ36によってフードストライカ12の係止部12Aを係止凹部34Bの下端端部に保持するようになっている。また、フードロック装置34には、オグジリアリレバー38が取付けられており、フード10に設けられたオグジリアリフック(図示省略)にオグジリアリレバー38が係合されることによって、フード10が不用意に開放されることを抑制するようになっている。
(固定装置40について)
固定装置40は、前述した固定ピン34Cに係合可能に構成された固定フック42と、固定フック42を付勢する引張コイルスプリング46と、を含んで構成されている。
固定フック42は、前後方向に所定の厚みを有するブロック状に形成されている。そして、固定フック42の長手方向中間部が、前後方向を軸方向とする支持ピン44によってベースプレート32に回動可能に支持されている。また、固定フック42の長手方向一方側の端部には、フック部42Aが形成されており、フック部42Aは、L字状に形成されると共に、フードロック装置34の固定ピン34Cに係合可能に構成されている。そして、フック部42Aが固定ピン34Cに係合した状態では、フードロック装置34のベースプレート32に対する上側への移動が阻止されて、フードロック装置34が閉止位置に固定されるようになっている。一方、フック部42Aと固定ピン34Cとの係合状態が解除された状態(図4において固定フック42が2点鎖線にて示された状態)では、フードロック装置34の上側への移動が許可されるようになっている。これにより、フード10のフードストライカ12がフードロック装置34に係合された状態において、フード10及びフードロック装置34が閉止位置から上側へ移動可能となっている。
また、固定フック42の長手方向他方側の端部には、スプリング係止孔42Bが形成されている。そして、引張コイルスプリング46が、スプリング係止孔42Bとベースプレート32のスプリング係止部32Bとの間に架け渡されている。これにより、固定フック42が引張コイルスプリング46によって固定ピン34Cに係合する方向へ付勢されている。また、固定フック42の長手方向他方側の端部には、ケーブル48の一端が係止されるケーブル係止部42Cが形成されている。そして、ケーブル48が車両左側へ引かれることにより、固定フック42が支持ピン44の軸回りに回動して、固定フック42のフック部42Aと固定ピン34Cとの係合状態が解除されるようになっている。
(アクチュエータ50について)
図2及び図3に示されるように、アクチュエータ50は、上下方向を軸方向とした略円柱状に形成されると共に、フードロック装置34に対して右側及び左側にそれぞれ設けられている。そして、アクチュエータ50は、略円筒形状に形成されたアクチュエータ本体52と、シリンダ54と、を含んで構成されている。
アクチュエータ本体52は、板状のブラケット56(図3参照)を介して、ラジエータサポートサイド22に固定されている。また、アクチュエータ本体52内には、その長手方向中間部において、図示しないガス発生装置が嵌入されている。ガス発生装置はスクイブ(点火装置)を備えると共に、ガス発生装置内には、ガス発生剤が充填されている。
シリンダ54は下側へ開放された略有底円筒状に形成されている。そして、アクチュエータ本体52の上部がシリンダ54内に挿入されている。また、アクチュエータ50の非作動状態では、シリンダ54の上端部が、ラジエータサポート20の上端部に形成された孔部20A(図3参照)内に挿通されると共に、フード10に対して下側へ僅かに離間して配置されている。
さらに、前述したガス発生装置は、ECU60(図2参照)と電気的に接続されて、ECU60の制御によって作動するように構成されている。そして、ガス発生装置が作動すると、ガス発生装置によって発生したガスがアクチュエータ本体52内に供給されるようになっている。これにより、シリンダ54が上昇してシリンダ54の上端部がフード10に当接することで、フード10の前端部が持上位置(図2において2点鎖線にて示される位置である)に持上げられるように構成されている。
さらに、図2に示されるように、フードロック装置34に対して左側に配置されたアクチュエータ50では、リンク機構58がシリンダ54に係合されており、リンク機構58には、前述したケーブル48の他端部が係止されている。そして、アクチュエータ50の作動時にシリンダ54が上昇すると、リンク機構58が作動して、ケーブル48が車両左側へ引かれるようになっている。これにより、前述した固定フック42のフック部42Aと固定ピン34Cとの係合状態が解除されるようになっている。
また、図3に示すように、前述したECU60(図3では不図示)には、衝突検知センサ62及び衝突予知センサ(図示省略)が電気的に接続されている。この衝突検知センサ62は、車両幅方向を長手方向とした略長尺状の圧力チューブ62Aを有している。圧力チューブ62Aは、車両の前端部に配設されたバンパリインフォースメント64の前面に隣接して配置されている。また、圧力チューブ62Aの長手方向両端部には、圧力センサ62Bが設けられており、圧力センサ62Bによって、圧力チューブ62A内の圧力変化に応じた信号がECU60へ出力されるようになっている。なお、衝突検知センサ62を、圧力チャンバや光ファイバによって構成してもよい。一方、衝突予知センサとしては、例えば、歩行者等の衝突体との衝突をミリ波レーダやステレオカメラを使って予知するプリクラッシュセンサ等が適用可能である。そして、ECU60では、衝突検知センサ62及び衝突予知センサから入力された信号に基づいて、アクチュエータ50を作動させるか否かを判断するようになっている。
(ロック機構70について)
図1(A)及び(B)に示されるように、ロック機構70は、左右一対のストッパ72(広義には、「阻止部材」として把握される要素である)と、圧縮コイルスプリング74(広義には、「付勢部材」として把握される要素である)と、を含んで構成されている。ストッパ72は、略円柱状に形成されて、フードロック装置34の収容凹部34A内に収容されている。また、ストッパ72の後端部には、その上部において、切欠き部72Aが形成されており、切欠き部72Aは、後側及び上側に開放されている。すなわち、ストッパ72の後端部における上部が側面視で段差状に形成されている。
圧縮コイルスプリング74はストッパ72と共に収容凹部34A内に収容されている。具体的には、圧縮コイルスプリング74が、自然状態(圧縮変形されていない状態)から圧縮されて、ストッパ72の前端と収容凹部34Aの底面との間に配置されている。これにより、ストッパ72が圧縮コイルスプリング74によって後側へ付勢されている。そして、ストッパ72の後端部がフードロック装置34から後側へ突出されており、前述したように、ストッパ72がベースプレート32のガイド孔32Aに挿通されている。
そして、フード10の閉止位置では、ストッパ72がベースプレート32におけるガイド孔32Aの下端部に配置されている(図1(A)において2点鎖線で示される位置である)。この位置では、ストッパ72は、ラジエータサポートアッパ24における係合部26の第2縦壁26Dの前側に配置されており、ストッパ72の後端が第2縦壁26Dの前面に当接されている(以下、この位置を「初期位置」という)。
一方、フードロック装置34がフード10と共に持上位置に持上げられた状態では、ストッパ72がラジエータサポートアッパ24における係合部26の第1縦壁26Bの前側に配置されるように設定されている(図1(A)において実線で示されるストッパ72を参照)。このときには、ストッパ72が、圧縮コイルスプリング74の付勢力によって初期位置から後側へ突出されて、ストッパ72の後端が第1縦壁26Bの前面に当接されると共に、ストッパ72の後端部の外周部が保持壁26Cの上面に当接(係合)されるようになっている(以下この位置を「ロック位置」という)。これにより、持上位置においてフードロック装置34(フード10)の下側への移動が阻止されて、フード10が持上位置に保持されるように構成されている。また、フードロック装置34が持上位置に持上げられた状態では、ストッパ72はガイド孔32Aの上端部よりも下側に位置するように設定されている。すなわち、フードロック装置34(フード10)は持上位置よりもさらに上側へ移動できるように構成されている。
さらに、フードロック装置34が持上位置よりもさらに上側へ移動されて、ストッパ72がガイド孔32Aの上端部に配置された状態では、ストッパ72がラジエータサポートアッパ24の前壁24Aの前側に配置されるように設定されている(図1(B)に示される位置であり、この位置を「仮ロック位置」という)。このときには、ストッパ72が、圧縮コイルスプリング74の付勢力によってロック位置よりもさらに後側へ突出されて、ストッパ72の後端がラジエータサポートアッパ24の前壁24Aに当接されるようになっている。具体的には、ストッパ72の後端縁部が、傾斜壁26Aに当接(係合)するように設定されている。そして、ストッパ72がガイド孔32Aの上端部に配置された状態におけるフード10(フードロック装置34)の位置を仮保持位置と称している。
また、上述したように、フードロック装置34(フード10)が持上位置に持上げられた状態では、ストッパ72が初期位置から後側へ突出されて、ストッパ72の後端部がフードロック装置34(ベースプレート32)とラジエータサポートアッパ24との間において手動操作可能に露出されている。換言すると、フード10の保持状態に対して、ロック機構70が解除操作可能に構成されている。具体的には、ストッパ72の切欠き部72Aに指を引っ掛けて、圧縮コイルスプリング74の付勢力に抗してストッパ72を前側(初期位置側)へ押し込むことにより、ストッパ72を収容凹部34A内に収容させることができるようになっている。これにより、持上位置におけるロック機構70よるフード10に対する保持状態を手動操作で解除して、フードロック装置34及びフード10を閉止位置に戻すことができるように構成されている。
次に、第1の実施の形態の作用及び効果について説明する。
PUフード装置30が非作動状態のときには、フード10が閉止位置に配置されて、フード10によってエンジンルームERが閉じられている。この状態から、歩行者等の衝突体と車両Vが前面衝突すると、衝突体と前面衝突したことが衝突検知センサ62によって検知され、衝突検知センサ62からECU60に信号が出力される。ECU60では、入力された信号に基づいてPUフード装置30を作動させるべきか否かを判断する。
そして、ECU60がPUフード装置30を作動させるべきと判断すると、ECU60の制御によってアクチュエータ50のガス発生装置が作動して、アクチュエータ本体52内にガスが供給される。アクチュエータ本体52内にガスが供給されると、アクチュエータ本体52内のガス圧によってシリンダ54が押圧されて、シリンダ54がアクチュエータ本体52の軸方向に沿って上側へ軸方向移動(上昇)する。シリンダ54が上側へ向けて軸方向移動すると、シリンダ54の移動に連動してPUフード装置30のケーブル48が車両左側へ引かれる。このため、固定装置40の固定フック42が回動されて、固定フック42のフック部42Aと固定ピン34Cとの係合状態が解除される。これにより、フードロック装置34のベースプレート32に対する上側への移動(スライド)が可能となると共に、フード10の前端部の持上げが可能となる。
また、シリンダ54が上側へ向けて軸方向移動すると、シリンダ54の上端部がフード10に当接してフード10の前端部を上側へ持上げる。これにより、フード10の前端部が持上位置へ持上げられると共に、フードロック装置34がベースプレート32に対して上側へ移動(スライド)される。このとき、フードロック装置34の上側への移動に伴ってストッパ72も上側へ移動する。そして、ストッパ72がラジエータサポート20の第2縦壁26Dよりも上側に配置されると、圧縮コイルスプリング74の付勢力によってストッパ72が初期位置からロック位置へ突出されて、ストッパ72の後端がラジエータサポート20の第1縦壁26Bに当接される。
また、フード10の前部では、持上位置において上側への変位が制限されていないため、持上位置に持上げられたフード10は、持上位置よりも上側の仮保持位置へ変位する。このため、フード10の変位に伴って、フードロック装置34が持上位置よりもさらに上側へ移動(スライド)する。そして、ストッパ72がガイド孔32Aの上端部に到達すると、フードロック装置34及びフード10の上側への移動が制限される。このとき、ストッパ72は仮ロック位置に配置されるため、ストッパ72の後端が、ラジエータサポート20の前壁24Aに当接されると共に、ストッパ72の後端縁部がラジエータサポート20の傾斜壁26Aに係合される(図1(B)の実線で示されるストッパ72を参照)。これにより、フードロック装置34がラジエータサポート20に仮保持されて、フード10が仮保持位置において仮保持される。
さらに、仮保持位置に変位したフード10は、反動によって仮保持位置から下側へ変位する。このとき、ストッパ72は、ラジエータサポート20の傾斜壁26A及び第1縦壁26Bを摺動しながら下側へ移動すると共に、圧縮コイルスプリング74の付勢力に抗して前側(ロック位置側)へ移動する。そして、ストッパ72がロック位置に到達すると、ストッパ72の後端部における外周部が保持壁26Cに当接(係合)されて、フードロック装置34の下側への移動が阻止される(図1(B)の2点鎖線で示されるストッパ72を参照)。その結果、フード10が持上位置に保持される。
ここで、フード10が持上位置に保持された状態では、ロック機構70のストッパ72が、フードロック装置34から後側へ突出されると共に、フードロック装置34とラジエータサポートアッパ24との間において手動操作可能に露出されている。このため、ストッパ72の切欠き部72Aに指を引っ掛けて、圧縮コイルスプリング74の付勢力に抗してストッパ72を前側に押し込むことにより、ストッパ72と保持壁26C(ラジエータサポート20)との係合状態を解除できる。したがって、持上位置に持上げられたフード10の保持状態を容易に解除して、当該フード10を閉止位置に戻すことができる。なお、フード10を持上後では、アクチュエータ50のアクチュエータ本体52内のガスは抜けているため、フード10を閉止位置に戻すときには、シリンダ54がアクチュエータ本体52に対して後退される。以上により、フード10の前端部をフードロック装置34によって閉止位置に固定させて、車両Vを再度走行させることができる。
また、本実施の形態のように、フード10の車幅方向両端部を左右一対のアクチュエータ50によって持上げる場合には、フード10に生じる振動の振幅が、フード10の車幅方向中央部において大きくなる傾向にある。これに対して、本実施の形態では、上述したように、フード10の車幅方向中央部に連結されるフードロック装置34にロック機構70のストッパ72が設けられており、フード10の仮保持位置において、ストッパ72がラジエータサポート20に係合されて、フード10が仮保持される。そして、ロック機構70による仮保持後にフード10が下側へ変位し、フード10の持上位置においてストッパ72がラジエータサポート20に係合されて、フード10が保持される。このため、フード10に生じる振動を効果的に抑制することができる。
さらに、ストッパ72が仮ロック位置からロック位置に移動するときには、ストッパ72の後端部がラジエータサポート20の係合部26(傾斜壁26A及び第1縦壁26B)上を摺動しながら移動する。これにより、フード10が仮保持位置から持上位置へ変位するときに、フード10をストッパ72によって減速させることができる。したがって、フード10に生じる振動を一層効果的に抑えることができる。
なお、第1の実施の形態では、フード10が持上位置よりも上側の仮保持位置まで変位できるように構成されている。これに代えて、フード10を閉止位置から持上位置まで変位可能に構成してもよい。すなわち、フード10が持上位置に持上げられたときに、ロック機構70のストッパ72が、ベースプレート32のガイド孔32Aの上端部に配置されるように、ガイド孔32Aの長手方向の長さを設定してもよい。
また、第1の実施の形態では、ストッパ72の後端部に切欠き部72Aが形成されており、切欠き部72Aは、上側且つ後側へ開放されて、側面視で段差状に形成されているが、切欠き部72Aの形状はこれに限らない。例えば、切欠き部72Aをストッパ72の後端から前側へ離間させて上側のみに開放するように形成してもよい。また、切欠き部72Aを省略して、ストッパ72の後端部に上側へ突出された突起を形成してもよい。
(第2の実施の形態)
以下、図6〜図8を用いて第2の実施の形態の車両用ポップアップフード装置100(以下、PUフード装置100という)について説明する。図6に示されるように、第2の実施の形態では、PUフード装置100によってフード10の後端部を持上げるようになっている。また、PUフード装置100は、フード10を開閉可能に支持するフードヒンジ102と、アクチュエータ140と、フードヒンジ102の外部に設けられたロック機構150と、を含んで構成されている。以下、各構成について説明する。なお、図6では、フード10が閉止位置に配置された状態が2点鎖線にて示されており、フード10が持上げられた状態が実線にて示されている。
(フードヒンジ102について)
図6に示されるように、フードヒンジ102は、フード10の後端部における車幅方向両側部分の下側にそれぞれ設けられている(図6では、車両右側に配置されたフードヒンジ102のみを図示している)。そして、車両右側及び車両左側にそれぞれ配置されたフードヒンジ102は車幅方向において左右対称に構成されている。このため、以下の説明では、車両右側に配置されたフードヒンジ102の構成について説明し、車両左側に配置されたフードヒンジ102の構成の説明は省略する。
フードヒンジ102は、車体に固定されたヒンジベース110と、ヒンジベース110に回動可能に連結された第1アーム120と、フード10に固定された「移動部材」及び「固定アーム」としての第2アーム130と、を含んで構成されている。
ヒンジベース110は、鋼板で製作されて、正面視で略逆L字形状に屈曲されている。ヒンジベース110の下端部は取付壁部112とされており、取付壁部112は、板厚方向を略上下方向にして、車体側構成部材であるカウルトップサイド14の上面部14Aに沿って前後方向に延在されている。なお、カウルトップサイド14は、フード10の後端側とウインドシールドガラスの下端部との間に車幅方向に沿って延在するカウルの両サイドに設けられている。そして、取付壁部112が取付ボルトB2よって上面部14Aに固定されている。
また、ヒンジベース110は側壁部114を有しており、側壁部114は取付壁部112の車幅方向内側端から上側へ延びている。この側壁部114は、車幅方向内側から見た側面視で上斜め前方へ開放された略V字形状に形成されている。
第1アーム120は、ヒンジベース110の車幅方向内側に配置されると共に、側面視で前後方向を長手方向とする略矩形板状に形成されている。そして、第1アーム120の後端部が、車幅方向を軸方向とした第1ヒンジピン116によってヒンジベース110の側壁部114の上端部に回動可能に支持されている。これにより、第1アーム120は、第1ヒンジピン116を回動中心としてヒンジベース110に対して相対回動可能に構成されている。
また、第1アーム120における前後方向中間部には、後述するアクチュエータ140を連結するための下側連結軸122が一体に設けられている。この下側連結軸122は、略円柱状に形成されて、第1アーム120から車幅方向内側へ突出されている。さらに、第1アーム120の下端部には、車幅方向内側へ折り曲げられたフランジ部124が形成されており、フランジ部124は第1アーム120の外周部に沿って略前後方向に延在されている。
第2アーム130は、第1アーム120の車幅方向内側に配置されると共に、略前後方向に延在されている。この第2アーム130は、第1アーム120と略平行に配置された側壁部132を備えており、側壁部132の前端部が、車幅方向を軸方向にした第2ヒンジピン118によって第1アーム120の前端部にヒンジ結合されている。具体的には、第2ヒンジピン118は、第1アーム120に回動可能に支持されると共に、第2アーム130と一体回動可能に第2アーム130に固定されている。これにより、第2アーム130及び第2ヒンジピン118が、第2ヒンジピン118の軸回りに第1アーム120に対して相対回動可能に構成されている。なお、第2アーム130は、シェアピン134によって第1アーム120と結合されており、後述するアクチュエータ140の非作動状態(2点鎖線で示される状態)では、第2アーム130の第1アーム120に対する相対回動が制限されている。
一方、第2アーム130は頂壁部136を備えている。頂壁部136は、側壁部132の上端から車幅方向内側へ延出されている。そして、頂壁部136が、フード10の後端部に形成された膨出部10Aの下面に沿ってフード10の前後方向に延在されている。この頂壁部136は、図示しないヒンジボルトによって膨出部10Aに締結(固定)されている。これにより、フード10とヒンジベース110とが、第1アーム120及び第2アーム130によって連結されている。
さらに、第2アーム130における側壁部132の後端部には、後述するアクチュエータ140を連結するための上側連結軸138が一体に設けられている。この上側連結軸138は、略円柱状に形成されて、側壁部132から車幅方向内側へ突出されている。
(アクチュエータ140について)
アクチュエータ140は、以下に示す点を除いて第1の実施の形態のアクチュエータ50と同様に構成されている。すなわち、アクチュエータ140は、第1の実施の形態と同様に構成された、アクチュエータ本体142と、シリンダ144と、を含んで構成されている。このアクチュエータ本体142には、ガス発生装置が嵌入されており、ガス発生装置は、第1の実施の形態と同様にECU60(図6では不図示)に電気的に接続されている。そして、アクチュエータ本体142の下端部には、第1連結部142Aが一体に設けられており、第1連結部142Aは、車幅方向を軸方向にした略円筒形状に形成されている。そして、第1連結部142A内に、第1アーム120の下側連結軸122が挿入されて、アクチュエータ本体142の下端部が第1アーム120に対して相対回動可能に連結されている。
また、シリンダ144の上端部には、第2連結部144Aが一体に設けられており、第2連結部144Aは、車幅方向を軸方向にした略円筒形状に形成されている。そして、第2連結部144A内に、第2アーム130の上側連結軸138が挿入されて、シリンダ144の上端部が第2アーム130に対して相対回動可能に連結されている。これにより、アクチュエータ140が、第1アーム120と第2アーム130との間に架け渡されている。また、アクチュエータ140では、第1の実施の形態のリンク機構58が省略されている。
そして、アクチュエータ140の作動時にシリンダ144がアクチュエータ140の軸方向に沿って上昇すると、第2アーム130が、閉止位置(図6において2点鎖線で示される位置)から第2ヒンジピン118の軸回り一方側(図6の矢印A方向)へ第1アーム120に対して相対回動して、フード10が持上げられるようになっている。また、詳細については後述するが、アクチュエータ140によってフード10を持上げるときには、フード10は仮保持位置(図6において実線で示される位置)に一旦持上げられて、その後にフード10が仮保持位置から下側へ変位して持上位置(図示省略)に位置するように構成されている。なお、フード10が持上げられるときには、第1アーム120は、ヒンジベース110に対して相対回動されると共に、第2ヒンジピン118が第2アーム130と共に第2ヒンジピン118の軸回り一方側に回動するようになっている。
(ロック機構150について)
ロック機構150は、第2ヒンジピン118に一体に形成されたカムプレート152(広義には、「係合部」として把握される要素である)と、第1アーム120に設けられたロックパウル154(広義には、「阻止部材」として把握される要素である)と、ロックパウル154を付勢するトーションスプリング158(広義には、「付勢部材」として把握される要素である)と、を含んで構成されている。
カムプレート152は、略円盤状を成すと共に、第2アーム130における側壁部132の車幅方向内側に配置されている。また、カムプレート152は、第2ヒンジピン118の車幅方向内側端部に一体に設けられると共に、第2ヒンジピン118と同軸上に配置されている。これにより、フード10の持上時は、カムプレート152が第2ヒンジピン118の軸回りに第2アーム130と一体回動するように構成されている。
図7(A)に示されるように、カムプレート152の外周部には、固定溝152Aが形成されている。また、カムプレート152の外周部には、固定溝152Aに対して第2ヒンジピン118の軸回り他方側(図7Aの矢印B方向側)の位置において、ロック溝152Bが形成されている。さらに、カムプレート152の外周部には、ロック溝152Bに対して第2ヒンジピン118の軸回り他方側に隣接する位置において、仮ロック溝152Cが形成されている。そして、固定溝152A、ロック溝152B、及び仮ロック溝152Cは、側面視でカムプレート152の径方向外側へ開放された略V字形状に形成されている。また、カムプレート152の外周部における固定溝152Aとロック溝152Bとの間の部分が当接部152Dとされている。
ロックパウル154は、カムプレート152の下側に配置されて、カムプレート152の外周部と同心円状を成すように略円弧状に湾曲されている。そして、ロックパウル154の一端部が、車幅方向を軸方向とした連結ピン156によって第2アーム130の前端部に回動可能に支持されている(図6参照)。また、ロックパウル154の他端部には、ロック歯154Aが形成されている。このロック歯154Aは、ロックパウル154からカムプレート152側へ突出されて、側面視で略V字形状に形成されている。そして、ロック歯154Aは、カムプレート152の固定溝152A、ロック溝152B、及び仮ロック溝152Cに係合可能に構成されている。これにより、ロックパウル154が、第2ヒンジピン118(カムプレート152)を介して、第2アーム130に係合可能に構成されている。
図6に示されるように、トーションスプリング158は連結ピン156に支持されている。このトーションスプリング158の一端部は第1アーム120のフランジ部124に係止されており、トーションスプリング158の他端部はロックパウル154に係止されている。これにより、ロックパウル154がトーションスプリング158によってカムプレート152側へ付勢されている。
そして、フード10の閉止位置では、ロックパウル154のロック歯154Aがカムプレート152の当接部152Dにおける固定溝152A側の端部に当接するように設定されている(図7(A)に示される位置であり、以下この位置を「初期位置」という)。また、フード10が仮保持位置に持上げられたときには、第2アーム130が第1アーム120に対して相対回動されて、カムプレート152の仮ロック溝152Cにロックパウル154のロック歯154Aが係合されるように設定されている(図7(B)に示される位置であり、以下この位置を「仮ロック位置」という)。これにより、仮保持位置においてフード10がロック機構150によって仮保持されるようになっている。さらに、詳細については後述するが、ロック機構150による仮保持後では、フード10が仮保持位置から下側へ変位することで、第2アーム130が第1アーム120に対して相対回動されて、カムプレート152のロック溝152Bにロックパウル154のロック歯154Aが係合するように設定されている(図7(C)に示される位置であり、以下この位置を「ロック位置」という)。そして、この状態におけるフード10の位置が保持位置とされており、持上位置においてフード10がロック機構150によって保持されるようになっている。
また、ロック機構150では、ロックパウル154が、第1アーム120の車幅方向内側に配置されて、手動操作可能に露出されている。具体的には、フード10が持上位置に持上げられた状態において、トーションスプリング158の付勢力に抗してロックパウル154をロック位置からカムプレート152の径方向外側へ移動させるように手動操作することで、ロックパウル154とカムプレート152との係合状態を解除できるようになっている。これにより、持上位置におけるロック機構150よるフード10に対する保持状態を手動操作で解除して、フード10及びフードヒンジ102を閉止位置に戻すことができるように構成されている。
次に第2の実施の形態の作用及び効果について説明する。
第1の実施の形態と同様に、ECU60がPUフード装置100を作動させるべきと判断すると、ECU60の制御によってアクチュエータ140が作動して、シリンダ144がアクチュエータ本体142に対して上側へ軸方向移動(上昇)する。これにより、シリンダ144が第2アーム130の後端部を持上げて、フード10の車幅方向両端部が持上げられる。このときには、カムプレート152及び第2アーム130が第1アーム120に対して第2ヒンジピン118の軸回り一方側(図7(A)の矢印A方向側)に相対回動されると共に、第1アーム120がヒンジベース110に対して上側へ相対回動される。
次に、図7及び図8を用いて、アクチュエータ140がフード10の車幅方向両端部を持上げたときの、フード10の挙動と、ロック機構150の作動状態と、の関係を説明する。なお、図8では、アクチュエータ140がフード10を持上げたときの後側から見たフード10の状態を時系列で模式的に示しており、フード10の車幅方向両端部が白抜きの丸印で示されている。
図8に示される(1)の状態は、アクチュエータ140がフード10を持上げる前の状態を示している。この状態では、フード10が閉止位置に配置されているため、ロック機構150のロックパウル154のロック歯154Aが、カムプレート152の当接部152Dにおける固定溝152A側の端部に当接されている(図7(A)参照)。
そして、アクチュエータ140が作動して第2アーム130が仮保持位置へ持上げられると、カムプレート152が、第2ヒンジピン118の軸回りの一方側(図7(A)の矢印A方向側)に第1アーム120(ロックパウル154)に対して相対回動される。具体的には、カムプレート152が初期位置から仮ロック位置に回動される。このため、ロックパウル154がトーションスプリング158の付勢力によってカムプレート152の径方向内側へ回動されて、ロックパウル154のロック歯154Aがカムプレート152の仮ロック溝152Cに係合される(図7(B)参照)。その結果、仮保持位置においてフード10がロック機構70によって仮保持される。
一方、アクチュエータ140(フードヒンジ102)によるフード10の持上時では、フード10の車幅方向中央部に慣性力が作用するため、アクチュエータ140によるフード10の持上初期では、フード10の車幅方向両端部のみが持上げられる(図8の(2)の状態を参照)。そして、フード10の車幅方向中央部がフード10の車幅方向両端部よりも遅れて上側へ変位する(図8の(3)の状態を参照)。
さらに、フード10の車幅方向中央部では、上下方向への変位は制限されていないため、持上げられたフード10の車幅方向中央部は慣性力によって仮保持位置よりも上側へ変位(オーバーシュート)する。またさらに、フード10の車幅方向両端部は、ロック機構150によって仮保持されている。このため、フード10の車幅方向中央部が上死点(図8の(4)の状態を参照)に到達した時点で、フード10の車幅方向中央部が反動によって下側への変位に反転される。これにより、後側から見て、フード10の車幅方向中央部が腹となり、フード10の車幅方向両端部が節となるように、フード10が単振動しようとする。
そして、反動によって下側へ変位するフード10の車幅方向中央部は、上死点から仮保持位置を通過して下死点(車両下側への変位から車両上側への変位に切り替わる点)側へ変位する(図8の(5)の状態を参照)。なお、図8の(4)の状態から(5)の状態へフード10の車幅方向中央部が変位している間では、ロックパウル154のロック歯154Aがカムプレート152の仮ロック溝152Cに係合されて、ロック機構150によるフード10に対する仮保持状態が維持されている(図7(B)参照)。つまり、フード10の車幅方向両端部は仮保持位置に配置されている。
そして、フード10の車幅方向中央部が下死点又は下死点付近に到達すると、ロック機構150よるフード10に対する仮保持状態が解除されて、フード10の車幅方向両端部が下側へ変位する(図8の(6)の状態を参照)。このとき、カムプレート152が第1アーム120(ロックパウル154)に対して第2ヒンジピン118の軸回り他方側(図7(B)の矢印B方向)に相対回動する。つまり、ロックパウル154のロック歯154Aがカムプレート152の外周部に当接した状態で、カムプレート152が仮ロック位置からロック位置に回動される。そして、カムプレート152がロック位置に到達すると、ロックパウル154のロック歯154Aがカムプレート152のロック溝152Bに係合されて、カムプレート152のロックパウル154に対する回動(移動)が阻止される(図7(C)参照)。これにより、第2アーム130の第1アーム120に対する相対回動が阻止されて、フード10が持上位置に保持される。
ここで、第2の実施の形態では、ロック機構150がフードヒンジ102の外部に設けられており、ロック機構150のロックパウル154が第1アーム120の車幅方向内側において手動操作可能に露出されている。これにより、持上位置に持上げられたフード10の保持状態を容易に解除して、当該フード10を閉止位置に戻すことができる。具体的には、フード10を開いた状態にして、トーションスプリング158の付勢力に抗してロックパウル154をロック位置からカムプレート152の径方向外側へ回動させるように手動操作する。これにより、ロックパウル154とカムプレート152との係合状態が解除され、ロック機構150によるフード10の保持状態が解除される。したがって、第2の実施の形態においても、持上位置に持上げられたフード10の保持状態を容易に解除して、当該フード10を閉止位置に戻すことができる。
また、第2の実施の形態では、カムプレート152の当接部152Dには、固定溝152Aが隣接して形成されている。このため、閉止位置に戻されたフード10を下側へさらに押し込むことによって、フード10を車体に固定させることができる。具体的には、閉止位置からフード10を下側へさらに押し込むと、カムプレート152が第2ヒンジピン118の軸回り他方側(図7(A)の矢印B方向側)へ回転される。これにより、カムプレート152の固定溝152A内にロックパウル154のロック歯154Aが係合される(図7(A)に示される状態から図7(D)に示される状態となる)。その結果、PUフード装置100の作動後において、閉止位置に戻されたフード10の後端部をロック機構150によって固定することができる。したがって、PUフード装置100の作動後において、車両Vを再度走行させるときにおいて、フード10を車体に固定させることができる。
さらに、第2の実施の形態では、上述したように、フード10が持上位置よりも上側の仮保持位置まで持上げられるようになっている。そして、仮保持位置にフード10が持上げられたときには、ロック機構150によってフード10の車幅方向両端部が仮保持される。さらに、フード10の持上時に生じるフード10の振動において、フード10の車幅方向中央部が上死点から下側へ変位して下死点又は下死点付近に到達するときに、ロック機構150によるフード10に対する仮保持状態が解除されて、フード10の車幅方向両端部が持上位置へ変位する。これにより、フード10の振動速度が略ゼロとなる時点でフード10の歪が解放されて、フード10が略水平状態となる。その結果、持上位置におけるフード10の振幅が減少されるため、フード10に生じた振動を早期に減衰させることができる。
なお、第2の実施の形態では、フード10が持上位置よりも上側の仮保持位置まで持上げられるようになっている。これに代えて、フード10を閉止位置から持上位置まで持上げるように構成してもよい。すなわち、アクチュエータ140によってフード10を持上位置まで持上げるようにして、ロック機構150のカムプレート152において、仮ロック溝152Cを省略してもよい。
(第3の実施の形態)
以下、図9及び図10を用いて第3の実施の形態の車両用ポップアップフード装置200について説明する。第3の実施の形態では、以下に示す点を除いて第2の実施の形態と同様に構成されている。
すなわち、図9に示されるように、第3の実施の形態では、フード10の後端部における車幅方向中央部に、規制機構202が追加して設けられている。また、フードヒンジ102においてロック機構150が省略されており、規制機構202の外部にロック機構150が設けられている。以下、具体的に説明する。なお、図9及び図10では、フード10が閉止位置に配置された状態が2点鎖線にて示されており、フード10が持上げられた状態が実線にて示されている。
図10に示されるように、規制機構202は、第1連結アーム204と、「移動部材」及び「連結アーム」としての第2連結アーム210と、を含んで構成されている。第1連結アーム204は、略長尺矩形板状に形成されて、車幅方向を板厚方向にて配置されている。そして、フード10の閉止位置では、第1連結アーム204が前後方向を長手方向にして配置されて、第1連結アーム204の後端部が、車幅方向を軸方向とする第1ピン206によって、車体に固定されたブラケット208に回動可能に支持されている。また、第1連結アーム204の前端部には、下側へ張出された張出部204Aが一体に形成されている。
第2連結アーム210は、略長尺矩形板状に形成されて、車幅方向を板厚方向にして、第1連結アーム204の車幅方向内側に配置されている。また、フード10の閉止位置では、第2連結アーム210は、側面視で後側へ向かうに従い上側へ傾斜されている(図10の2点鎖線で示される状態を参照)。そして、第2連結アーム210の下端部が、車幅方向を軸方向とされた第2ピン212によって第1連結アーム204の前端部に回動可能に支持されている。
また、第2ピン212は、第2の実施の形態の第2ヒンジピン118と同様に構成されている。すなわち、第2ピン212は、第1連結アーム204に回動可能に支持されると共に、第2連結アーム210と一体回動可能に第2連結アーム210に固定されている。これにより、第2連結アーム210及び第2ピン212が、第2ピン212の軸回りに第1連結アーム204に対して相対回動可能に構成されている。また、第2連結アーム210の上端部は、フード10の膨出部10Aにおける車幅方向中間部にブラケット216を介して第3ピン214によって回動可能に連結されている。
ロック機構150では、第2の実施の形態と同様に、カムプレート152が、第2ピン212の車幅方向内側端部に一体に設けられると共に、第2ピン212と同軸上に配置されている。また、カムプレート152に形成されたロック溝152B及び仮ロック溝152Cは、第2の実施の形態よりも、固定溝152Aに対して第2ピン212の軸回り他方側に配置されている。
また、ロック機構150のロックパウル154は、第1連結アーム204の張出部204Aに連結ピン156によって回動可能に支持されて、カムプレート152の下側に配置されている。そして、図示は省略するが、ロック機構150のトーションスプリング158の一端部がロックパウル154に係止されて、トーションスプリング158の他端部が第1連結アーム204に係止されており、トーションスプリング158によってロックパウル154がカムプレート152側へ付勢されている。
また、第3の実施の形態では、第2の実施の形態と異なり、アクチュエータ140がフードヒンジ102の第2アーム130を持上位置まで持上げるようになっている。さらに、第3の実施の形態では、フード10の持上時に生じる振動によってフード10の車幅方向中央部が上死点に到達したときに、ロックパウル154のロック歯154Aが仮ロック溝152Cに係合されるように設定されている(図10において実線で示された状態を参照)。
そして、フード10の閉止位置では、第2の実施の形態と同様に、ロックパウル154のロック歯154Aが、カムプレート152の当接部152Dにおける固定溝152A側の端部に当接されている(図10において2点鎖線で示された状態を参照)。この状態からアクチュエータ140(フードヒンジ102)によってフード10を持上げると、第2の実施の形態と同様に、フード10の車幅方向中央部が腹となり、フード10の車幅方向両端部が節となるように、フード10が単振動しようとする。
一方、フード10の車幅方向中央部は、規制機構202によって車体に連結されている。このため、フード10の持上時では、規制機構202の第2連結アーム210が第1連結アーム204に対して相対回動しながらフード10と共に上側へ移動される。このとき、カムプレート152が、第2ピン212の軸回りの一方側に第1連結アーム204(ロックパウル154)に対して相対回動される。そして、フード10に生じる振動によってフード10の車幅方向中央部が上死点に到達すると、カムプレート152は仮ロック位置に回動される。このため、ロックパウル154がトーションスプリング158の付勢力によってカムプレート152の径方向内側へ回動されて、ロックパウル154のロック歯154Aがカムプレート152の仮ロック溝152Cに係合される(図10において実線で示された状態を参照)。その結果、フード10の車幅方向中央部が上死点に到達した位置においてフード10がロック機構150によって仮保持される。
そして、反動によってフード10の車幅方向中央部が上死点から下側へ変位すると、ロック機構150よるフード10に対する仮保持状態が解除されて、カムプレート152が第1アーム120(ロックパウル154)に対して第2ピン212の軸回り他方側に相対回動する。つまり、ロックパウル154のロック歯154Aがカムプレート152の外周部に当接した状態で、カムプレート152が仮ロック位置からロック位置に回動される。そして、図示は省略するが、カムプレート152がロック位置に到達すると、ロックパウル154のロック歯154Aがカムプレート152のロック溝152Bに係合されて、カムプレート152のロックパウル154に対する回動が阻止される。これにより、第2連結アーム210の第1連結アーム204に対する相対回動が阻止されて、フード10が持上位置に保持される。
ここで、第3の実施の形態では、ロック機構150が規制機構202の外部に設けられており、ロック機構150のロックパウル154が第1連結アーム204の車幅方向内側において手動操作可能に露出されている。これにより、第3の実施の形態においても第2の実施の形態と同様に、持上位置に持上げられたフード10の保持状態を容易に解除して、当該フード10を閉止位置に戻すことができる。
また、第3の実施の形態では、フード10の車幅方向中央部に規制機構202が連結されており、規制機構202にロック機構150が設けられている。そして、上述したように、フード10が持上げられたときには、フード10の車幅方向中央部が腹となり、フード10の車幅方向両端部が節となるようにフード10が単振動しようとする。そして、フード10の車幅方向中央部が上死点に到達したときはロック機構150によってフード10が仮保持されて、フード10の車幅方向中央部が持上位置に到達したときにフード10がロック機構150によって保持される。これにより、フード10の振動時に大きく振れるフード10の車幅方向中央部を仮保持位置に仮保持させた後に保持位置において保持するため、フード10の生じる振動を効果的に抑制することができる。
なお、第3の実施の形態では、フード10の車幅方向中央部が上死点まで変位できるように構成されているが、フード10の車幅方向中央部を持上位置まで変位可能に構成してもよい。すなわち、ロック機構150のカムプレート152において、仮ロック溝152Cを省略して、フード10の車幅方向中央部がフード10の車幅方向両端部に比べて遅れて持上位置に到達したときに、ロック機構150によってフード10の車幅方向中央部を持上位置に保持させてもよい。
(第4の実施の形態)
以下、図11〜図14を用いて第4の実施の形態の車両用ポップアップフード装置300(以下、PUフード装置300という)について説明する。図11に示されるように、第4の実施の形態では、第2の実施の形態と同様に、PUフード装置300によってフード10の後端部を持上げるようになっている。また、PUフード装置300は、第2の実施の形態と同様に、フード10を開閉可能に支持するフードヒンジ302と、アクチュエータ310と、を含んで構成されている。さらに、PUフード装置300は、アクチュエータ310の外部に設けられたロック機構320を有している。以下、上記各構成について説明する。なお、図11では、フード10が閉止位置に配置された状態が2点鎖線にて示されており、フード10が持上げられた状態が実線にて示されている。
(フードヒンジ302について)
図11に示されるように、フードヒンジ302は、第2の実施の形態のフードヒンジ102と比べて、第2の実施の形態の第2アーム130が省略されたタイプのフードヒンジとされている。すなわち、フードヒンジ302は、カウルトップサイド14に固定されたヒンジベース304と、ヒンジベース304の側壁部304Aにヒンジピン306によって回動可能に支持されたヒンジアーム308と、を含んで構成されている。そして、ヒンジアーム308の前端部がフード10の膨出部10Aに固定されている。
また、ヒンジアーム308の後端部には、ストッパ部308Aが形成されており、後述するように、フード10が仮保持位置に持上げられたときには、ヒンジアーム308がヒンジベース304に対して相対回動されて、ストッパ部308Aがヒンジベース304の上端部に当接されるようになっている。また、ヒンジアーム308の前側部分には、フード10を仮保持位置に持上げたときに、ヒンジアーム308の折れの起点となる低剛性部308Bが形成されている。
(アクチュエータ310について)
アクチュエータ310は、全体として略円柱状に形成されて、軸方向を上下方向にして配置されている。また、アクチュエータ310は、略円筒状に形成されたアクチュエータ本体312と、アクチュエータ本体312から伸長される「移動部材」及び「伸長部材」としてのピストンロッド314と、を含んで構成されている。そして、アクチュエータ本体312が、図示しないブラケットによってカウルトップサイド14に固定されている。また、アクチュエータ本体312の内部には、下端側において、第2の実施の形態と同様にガス発生装置が嵌入されており、ガス発生装置はECU60(図11では不図示)に電気的に接続されている。
ピストンロッド314は、その下端部がアクチュエータ本体312内にシールされた状態で挿入されている。そして、ガス発生装置が作動することで、アクチュエータ本体312からピストンロッド314が上側へ伸長されるように構成されている。また、フード10が閉止位置(図11の2点鎖線にて示された位置)に配置された状態では、ピストンロッド314の上端部が、ヒンジアーム308の前端部の下側に僅かに離間して配置されている。そして、アクチュエータ310が作動すると、ピストンロッド314によってフード10が仮保持位置(図11の実線にて示された位置)に持上げられるようになっている。
また、アクチュエータ本体312の下端部には、後述するロック機構320を連結するための下側連結軸312Aが一体に設けられており、下側連結軸312Aは略円柱状に形成されて、アクチュエータ本体312から後側へ突出されている。一方、ピストンロッド314の上端部には、後述するロック機構320を連結するための上側連結軸314Aが一体に設けられており、上側連結軸314Aは略円柱状に形成されて、ピストンロッド314から後側へ突出されている。
(ロック機構320について)
図12〜図14に示されるように、ロック機構320は、ロックベース322と、ロックベース322に収容されたストッパ324(広義には「阻止部材」として把握される要素である)と、圧縮コイルスプリング326(広義には「付勢部材」として把握される要素であり、図12及び図14参照)と、ロックベース322にスライド可能に連結されたスライダ328と、を含んで構成されている。
ロックベース322は、所定の厚みを有する略長尺板状に形成されている。また、ロックベース322は、前後方向を厚み方向とし、且つ上下方向を長手方向として、アクチュエータ本体312の後側に配置されている。このロックベース322の下端部には、ベース側連結孔322A(図12及び図13参照)が形成されている。そして、ベース側連結孔322Aにアクチュエータ本体312の下側連結軸312A(図12参照)が挿通されて、ロックベース322の下端部がアクチュエータ本体312に連結されている。また、ロックベース322の上端部は、図示しないホルダによってアクチュエータ本体312の上端部に連結されている。
さらに、ロックベース322の上端部には、後述するストッパ324を収容する収容凹部322B(図12及び図14参照)が形成されており、収容凹部322Bは、後側へ開放された断面円形状に形成されている。
ストッパ324は、円柱状に形成されたストッパ本体部324Aを有している。このストッパ本体部324Aは、前後方向を軸方向として配置されて、ロックベース322の収容凹部322B内に収容されている(図14(B)に示される位置であり、以下この位置を「初期位置」という)。また、ストッパ324の外径寸法は、収容凹部322Bの内径寸法に比べて僅かに小さく設定されており、ストッパ324は収容凹部322B内において前後方向に移動可能に構成されている。
また、ストッパ324は、ストッパ本体部324Aに一体に形成された操作ピン324Bを有している。この操作ピン324Bは、略円柱状に形成されて、ストッパ本体部324Aから後側へ突出されると共に、ストッパ本体部324Aと同軸上に配置されている。
圧縮コイルスプリング326は、ストッパ324と共に、ロックベース322の収容凹部322B内に収容されている。具体的には、圧縮コイルスプリング326が、自然状態(圧縮変形されていない状態)から圧縮されて、ストッパ324の前端と収容凹部322Bの底面との間に配置されている。これにより、ストッパ324が圧縮コイルスプリング326によって後側へ付勢されている。なお、アクチュエータ310の非作動状態では、初期位置に配置されたストッパ324の後側への移動が、後述するスライダ328によって制限されている。
スライダ328は、ロックベース322と同様に、所定の厚みを有する略長尺板状に形成されている。そして、スライダ328は、前後方向を厚み方向とし、且つ上下方向を長手方向として、ロックベース322の後側に隣接して配置されている。
また、スライダ328の上端部には、スライダ側連結孔328A(図12及び図13(A)参照)が形成されている。そして、スライダ側連結孔328Aにアクチュエータ本体312の上側連結軸314A(図12参照)が挿通されて、スライダ328の上端部がピストンロッド314の上端部に連結されている。さらに、図示は省略するが、スライダ328は、ロックベース322に上下方向にスライド可能に連結されている。これにより、アクチュエータ310の作動時に、ピストンロッド314がアクチュエータ本体312に対して上側へ伸長されると、スライダ328がロックベース322に対して上側へスライドするように構成されている(図12の2点鎖線で示される状態を参照)。また、アクチュエータ310の非作動状態(図12の実線で示される状態)では、スライダ328がロックベース322に対して上側へずれて配置されている。
図13(A)〜(C)に示されるように、スライダ328の略中央部には、ガイド孔330が貫通形成されており、ガイド孔330はスライダ328の長手方向(上下方向)に沿って延びている。このガイド孔330内には、ストッパ324の操作ピン324Bが挿通されている。そして、アクチュエータ310の非作動状態では、操作ピン324Bがガイド孔330の上端部に配置されると共に(図13(A)参照)、操作ピン324Bの先端部がスライダ328よりも後側へ突出されている(図14(B)参照)。また、この状態では、ストッパ本体部324Aがスライダ328に当接されて、ストッパ324の後側への移動が制限されている。一方、アクチュエータ310の作動後(フード10の仮保持位置)では、スライダ328がロックベース322に対して上側へスライドして、操作ピン324Bがガイド孔330の下端部に配置されるように設定されている(図13(B)参照)。
また、スライダ328の下部には、前側(ロックベース322側)へ開放された嵌合凹部332が形成されており、嵌合凹部332はガイド孔330の下部に連通されている。この嵌合凹部332は、前側から見て上下方向を長手方向とする略トラック形状に形成されており、嵌合凹部332の幅寸法はストッパ本体部324Aの外径寸法よりも僅かに大きく設定されている。また、嵌合凹部332の幅方向の側面には、嵌合凹部332の長手方向中間部において、一対の突起部334が形成されており、突起部334は嵌合凹部332の幅方向内側へそれぞれ突出されている。この一対の突起部334の間の距離L(図13(A)参照)は、ストッパ本体部324Aの外径寸法と同じ或いは当該外径寸法よりも僅かに小さく設定されている。そして、嵌合凹部332における一対の突起部334よりも下側部分が仮ロック凹部332Aとされており、嵌合凹部332における一対の突起部334よりも上側部分がロック凹部332Bとされている。
そして、スライダ328がピストンロッド314と共に上側へスライドして、嵌合凹部332がストッパ324に対向する位置に配置されると、圧縮コイルスプリング326の付勢力によってストッパ324が後側(スライダ328側)へ移動してストッパ本体部324Aが嵌合凹部332内に嵌合されるようになっている。さらに、アクチュエータ310の作動後(フード10の仮保持位置)では、仮ロック凹部332Aがストッパ324と対向して配置されるように、スライダ328がピストンロッド314と共に上側へスライドするように設定されている(図13(B)参照)。このため、フード10の仮保持位置では、ストッパ本体部324Aが仮ロック凹部332A内に嵌合されるようになっている(以下、この位置を「仮ロック位置」という)。なお、ストッパ本体部324Aが嵌合凹部332に嵌合された状態では、ストッパ本体部324Aの前端部は、ロックベース322の収容凹部322B内に配置されている。すなわち、スライダ328(ピストンロッド314)のロックベース322(アクチュエータ本体312)に対する下側への相対移動(スライド)が制限されて、フード10が仮保持位置に仮保持されるようになっている。
また、詳細については後述するが、フード10(ピストンロッド314)が仮保持位置から下側へ変位したときには、スライダ328がロックベース322に対して下側へスライドして、ストッパ本体部324Aが、仮ロック凹部332Aからロック凹部332Bに収容されると共に、ストッパ本体部324Aの外周部がロック凹部332Bの上端部に係合(当接)されるように設定されている(図13(C)及び図14(A)参照)。これにより、スライダ328(ピストンロッド314)のロックベース322(アクチュエータ本体312)に対する下側への相対移動(スライド)が阻止されるようになっている。そして、このときのフード10の位置が持上位置とされている。
また、図14(A)に示されるように、フード10が持上位置に配置された状態では、ストッパ324の操作ピン324Bの先端部が手動操作可能にスライダ328から露出(突出)されている。具体的には、ストッパ324の操作ピン324Bを、圧縮コイルスプリング326の付勢力に抗して前側(初期位置側)へ移動させるように手動操作(押圧)して、ロックベース322の収容凹部322B内にストッパ324を収容させることで、ストッパ324(のストッパ本体部324A)とスライダ328(のロック凹部332B)との係合状態が解除されるようになっている。これにより、スライダ328(ピストンロッド314)をロックベース322(アクチュエータ本体312)に対して下側へ相対移動させて、フード10を閉止位置に戻すことができるようになっている。
次に第4の実施の形態の作用及び効果について説明する。
第2の実施の形態と同様に、ECU60がPUフード装置300を作動させるべきと判断すると、ECU60の制御によってアクチュエータ310が作動して、ピストンロッド314がアクチュエータ本体312に対して上側へ伸長される。これにより、ピストンロッド314の上端部がヒンジアーム308の前端部に当接して、ヒンジアーム308をヒンジピン306の軸回りに回動させる。その結果、フード10の後端部が仮保持位置に持上げられる。このとき、ヒンジアーム308は低剛性部308Bを起点として屈曲される。なお、仮保持位置では、ヒンジアーム308のストッパ部308Aがヒンジベース304に当接されるため、フード10の車幅方向両端部における上側への変位が制限されている。これにより、フード10は、第2の実施の形態と同様に、フード10の車幅方向中央部が腹となり、フード10の車幅方向両端部が節となるように、フード10が単振動しようとする。
一方、アクチュエータ310が作動すると、ピストンロッド314の上側への伸長に伴って、ロック機構320のスライダ328が、ロックベース322に対して上側へスライドする。そして、フード10の仮保持位置では、スライダ328の仮ロック凹部332Aがストッパ324と対向する位置に配置されるため、ストッパ本体部324Aが仮ロック溝152C内に嵌合される(図13(B)参照)。また、スライダ328の嵌合凹部332には、一対の突起部334が形成されているため、スライダ328の下側へのスライドが制限される。これにより、仮保持位置において、フード10(ピストンロッド314)の下側への移動が制限されてフード10が仮保持される。
そして、第2の実施の形態と同様に、フード10に生じる振動によってフード10の車幅方向中央部が上死点から下死点又は下死点付近に到達したときに、ロック機構320による仮保持状態が解除されて、フード10の車幅方向両端部が下側へ変位して持上位置に配置される。具体的には、スライダ328の一対の突起部334がストッパ本体部324Aの外周部を摺動しつつ、スライダ328が下側へスライドする。そして、ロック凹部332Bの上端(の内周面)が、ストッパ本体部324Aの外周部に当接(係合)されてスライダ328(ピストンロッド314)の下側へ移動が阻止される(図13(C)参照)。これにより、フード10が持上位置に保持される。
ここで、第4の実施の形態では、ロック機構320がアクチュエータ310の外部に設けられており、ロック機構320におけるストッパ324の操作ピン324Bが手動操作可能に露出されている。これにより、持上位置に持上げられたフード10の保持状態を容易に解除して、当該フード10を閉止位置に戻すことができる。具体的には、ストッパ324の操作ピン324Bを、圧縮コイルスプリング326の付勢力に抗して前側(初期位置側)へ移動させるように手動操作(押圧)して、ロックベース322の収容凹部322B内にストッパ324を収容させる。これにより、ストッパ324とスライダ328との係合状態が解除されるため、ロック機構320によるフード10の保持状態が解除される。したがって、第4の実施の形態においても、第2の実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
なお、第4の実施の形態では、フード10が持上位置よりも上側の仮保持位置まで持上げられるようになっている。これに代えて、フード10を閉止位置から持上位置まで持上げるように構成してもよい。すなわち、アクチュエータ310によってフード10を持上位置まで持上げるようにして、ロック機構320のスライダ328の嵌合凹部332において仮ロック凹部332Aを省略してもよい。
(第5の実施の形態)
以下、図15を用いて第5の実施の形態の車両用ポップアップフード装置400について説明する。第5の実施の形態では、ロック機構402を除いて第4の実施の形態と同様に構成されている。以下、ロック機構402について説明する。
ロック機構402は、ホルダ404と、ロックパウル410(広義には、「阻止部材」として把握される要素である)と、トーションスプリング412(広義には、「付勢部材」として把握される要素である)と、ピストンロッド314に形成された仮ロック溝416及びロック溝414と、を含んで構成されている。
ホルダ404は、一部開放された略円筒形状の筒部406と、筒部406の周方向両端から筒部406の径方向外側へ突出された一対の取付片408と、を含んで構成されている。取付片408は、互いに対向して配置されており、取付片408には、それぞれボルト挿通孔408Aが貫通形成されている。そして、アクチュエータ本体312の上端部が筒部406内に嵌入されている。また、ボルト挿通孔408A内に取付ボルトB3が挿通されて、取付ボルトB3の先端部に取付ナットNが螺合されることで、ホルダ404がアクチュエータ本体312の上端部に固定されている。
ロックパウル410は、所定の厚みを有する略S字形板状に形成されている。このロックパウル410の長手方向中間部には、パウル側挿通孔410Aが貫通形成されており、パウル側挿通孔410A内に取付ボルトB3が挿通されて、ロックパウル410が取付ボルトB3に回動可能に支持されている。
また、ロックパウル410の長手方向一端部には、ロック歯410Bが形成されており、ロック歯410Bはピストンロッド314側へ突出されている。そして、ロックパウル410が回動することで、ロック歯410Bがピストンロッド314に対して接離するように構成されている。
トーションスプリング412は、取付ボルトB3によって支持されており、トーションスプリング412の一端部がロックパウル410に係止されて、トーションスプリング412の他端部がホルダ404の取付片408に係止されている。これにより、ロックパウル410のロック歯410Bがピストンロッド314に対して接近する方向にロックパウル410が付勢されている。
また、ピストンロッド314に形成された仮ロック溝416及びロック溝414は、それぞれピストンロッド314の周方向全周に亘って形成されており、ロックパウル410のロック歯410Bが仮ロック溝416及びロック溝414に係合可能に構成されている。そして、アクチュエータ50が作動して、ピストンロッド314が仮保持位置に上昇したときに、仮ロック溝416にロック歯410Bが係合して、ピストンロッド314(フード10)が仮保持位置に仮保持されるようになっている。そして、フード10に生じる振動によってフード10の車幅方向中央部が下死点又は下死点付近に到達したときに、ロック歯410Bと仮ロック溝416との係合状態が解除されて、フード10に対する仮保持状態が解除されるようになっている。また、ピストンロッド314が仮保持位置から下側へ移動して持上位置に到達したときには、ピストンロッド314のロック溝414にロック歯410Bが係合して、ピストンロッド314の下側への移動が阻止されるようになっている。これにより、フード10が持上位置に保持されるようになっている。
さらに、ロック機構402は、アクチュエータ310の外部に取り付けられており、ロック機構402のロックパウル410が手動操作可能に露出されている。具体的には、フード10が持上位置に保持された状態において、ロックパウル410をトーションスプリング412の付勢力に抗してピストンロッド314の径方向外側へ回動させることで、ロック機構402におけるロックパウル410とピストンロッド314との係合状態を解除することができる。以上により、第5の実施の形態においても第4の実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
なお、第5の実施の形態では、第4の実施の形態と同様にフード10が持上位置よりも上側の仮保持位置まで持上げられるようになっている。これに代えて、フード10を閉止位置から持上位置まで持上げるように構成してもよい。すなわち、アクチュエータ310によってフード10を持上位置まで持上げるようにして、ロック機構404の仮ロック溝416を省略してもよい。
(請求項の構成要素と実施形態の構成との対応関係について)
請求項3に記載の「前記ロック機構の一部」は第2の実施形態のカムプレート152に、「前記ロック機構の他の一部」は第2の実施形態のロックパウル154にそれぞれ対応している。
請求項4に記載の「前記ロック機構の一部」は第3の実施形態のカムプレート152に、「前記ロック機構の他の一部」は第3の実施形態のロックパウル154にそれぞれ対応している。
請求項5に記載の「前記ロック機構の一部」は第4の実施形態のスライダ328に、「前記ロック機構の他の一部」は第4の実施形態のストッパ324にそれぞれ対応している。
また、請求項5に記載の「前記ロック機構の一部」は第5の実施形態のロック溝414に、「前記ロック機構の他の一部」は第5の実施形態のロックパウル410にそれぞれ対応している。