JP5642432B2 - 無電解めっき処理材の製造方法及びオゾンガス処理装置 - Google Patents

無電解めっき処理材の製造方法及びオゾンガス処理装置 Download PDF

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Description

本発明は、オゾンガスを樹脂基材の基材表面を曝露することにより、基材表面にオゾンガス処理を行うオゾンガス処理方法及びその処理装置に係り、特に、処理後の基材表面に対して、無電解めっき処理を好適に行うことができるオゾンガス処理方法及びその処理装置に関する。
従来から、高分子樹脂からなる樹脂基材の表面(基材表面)に、導電性や光沢性を付与する方法として、無電解めっき処理が知られている。この無電解めっき処理とは、溶液中の金属イオンを化学的に基材表面に還元析出させ、この表面に金属被膜(めっき被膜)を被覆する方法である。
このような無電解めっき処理は、化学的な還元反応を利用しているので、電力によって電解析出させる電気めっきとは異なり、一般的に電気絶縁性を有する高分子樹脂の基材表面であっても、めっき被膜を形成することができる有効な方法である。
また、めっき被膜が形成された基材表面は、導電性を有することになるので、さらに、電解析出を利用した電気めっきをすることもできる。そのため、自動車部品、家電製品などの分野に用いられている樹脂製の基材表面に、金属光沢を付与して意匠性をも向上させることができる。
しかしながら、無電解めっき処理によって得られためっき被膜は、基材に対する付着性が十分でない場合がある。そこで、無電解めっき処理を行なう前処理として、基材表面にオゾン処理(オゾン水を用いた処理(例えば特許文献1参照)や、オゾンガスを用いた処理(例えば特許文献2、3等参照))を行って、基材表面を改質する処理が提案されている。このようなオゾン処理により、樹脂基材の基材表面を粗化することなく、金属めっきを付着させることができる。
特開2004−131804号公報 特開昭63−250468号公報 特開2005−113162号公報
しかしながら、例えば、特許文献1に示すように、基材表面にオゾン水処理を行った場合には、オゾンと水の反応により、ヒドロキシラジカル(・OH)が連続的に生成する。このヒドロキシラジカルは、酸化力が強いため、高分子樹脂が分子レベルで断裂し続ける。これにより、基材表面の改質ばかりでなく、基材表面及びその近傍の樹脂層が劣化して、その強度が低下してしまう。この結果として、基材表面にめっきしためっき被膜の密着性の低下を招くことがある。
この点を鑑みれば、ヒドロキシラジカル(・OH)が発生しない、例えば、特許文献2及び3に示すオゾンガス処理を行うことが有効な方法であると考えられる。しかしながら、発明者らのこれまでの実験によれば、オゾンガス処理において、特に、オゾン濃度が低い濃度場合(例えば50g/m以下の場合)、この処理条件で改質した基材表面にはめっきが析出せず、めっき被膜が形成されないことがあった。
従って、生産性を考慮した場合には、より高濃度のオゾンガスを生成する大型装置が必要である上に、オゾンガスが高濃度に達するまでには時間がかかり、製造コストの増加に繋がってしまう。
さらに、収容された樹脂基材にオゾンガスを晒す処理槽には、高濃度のオゾンガスが分解することを抑制するために、処理槽内の表面には、フッ素樹脂等を被覆する表面処理を施す必要がある。このため、従来に比べて装置コストが増大するおそれがある。
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、無電解めっき処理において確実にめっきを析出し、樹脂基材の基材表面にオゾンガス処理を短時間かつ安価に行うことができるオゾンガス処理方法及びその装置を提供することにある。
前記課題を解決すべく、発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、以下の知見を得た。具体的には、加湿したオゾンガスには、オゾンガス中の水が微粒子として存在するので、オゾン水に比べてごく微量のヒドロキシラジカルが、オゾンガス中を浮遊すると考えられる。そして、これを用いてオゾンガス処理を行えば、オゾンガス中の浮遊したヒドロキシラジカルにより、オゾン水処理よりもオゾンガス処理に近い樹脂表面の改質を行うことができると共に、これまでのオゾンガスよりも効率的に基材表面を改質し、この表面にめっきを析出することができる、という新たな知見を得た。
本発明は、発明者らの前記新たな知見に基づくものであり、本発明に係るオゾンガス処理方法は、樹脂基材の基材表面にオゾンガスを接触させることにより、前記基材表面にオゾンガス処理を行う方法であって、前記オゾンガスを生成するガス生成工程と、生成されたオゾンガスを加湿するガス加湿工程と、加湿されたオゾンガスに前記樹脂基材の基材表面を曝露するガス曝露工程と、を少なくとも含むことを特徴とするものである。
本発明によれば、生成したオゾンガスを加湿することにより、オゾンガス中に浮遊した水とオゾンとの一部からヒドロキシラジカルを生成し、このヒドロキシラジカルはオゾンガス中に混在する。すなわち、これまでのように、例えば水滴や浸漬液のような液体とオゾンが反応した場合、ヒドロキシラジカルは、連続的にかつ高濃度に生成されるが、加湿したオゾンガスの場合、ヒドロキシラジカルは、水に濃縮されずにオゾンガス中に分散して浮遊することになる。
このような結果、加湿されたオゾンガスに曝露された基材表面には、オゾン水に曝露されたものに比べて、ヒドロキシラジカルによる劣化がほとんど無く、これまでのオゾンガス処理に近い、オゾン水処理よりもマイルドな表面改質を行うことができる。
また、これまでの加湿していないオゾンガスの場合、ガス中にヒドロキシラジカルが浮遊していないので、オゾンガスの濃度を高めたり、処理時間を長くしたりする必要があった。しかしながら、加湿したオゾンガスを用いることにより、より低いオゾンガス濃度であっても、短時間で安価に基材表面を改質し、その後、基材表面にめっきを析出させることができる。
上述したオゾンガスの加湿において、オゾンガス中に浮遊する水がより微細な状態で存在することが好ましい。例えば、オゾンガス中に常温で気化した水(微粒子)を混合したり、フィルタに水分を含ませてこれに加熱したオゾンガスを通過させたり、水に超音波を作用させて水の微粒子をオゾンガスと共に混在させたりして、オゾンガスを加湿することができる。
しかしながら、より好ましい態様としては、本発明に係るオゾンガス処理方法では、前記ガス加湿工程において、前記生成したオゾンガスを、水中に通過させることにより、前記生成したオゾンガスを加湿する。
本発明によれば、オゾンガスを水中に通過させる際に、これまでのものに比べて、より微細な水粒子がオゾンガス中に含有される。この結果、オゾンガスと水により生成されるヒドロキシラジカルを、濃縮せずにオゾンガス中に均一分散して浮遊させることができる。また、水中に送り込むオゾンガスの流量、及びオゾンガスの通過時間に応じた水量等を設定すれば、より正確な湿度にオゾンガスを加湿することができる。
しかしながら、湿度を調整する際には、オゾンガスの通過時間に応じた水量となるように、水量を調整する作業が発生することがある。従って、本発明のより好ましい態様としては、前記ガス加湿工程は、前記生成したオゾンガスを所定の流量比となるように2つのオゾンガスに分流する分流工程と、分流した一方のオゾンガスを水中に通過させることにより、前記分流した一方のオゾンガスを加湿する分流ガス加湿工程と、該加湿した一方のオゾンガスと、分流した他方のオゾンガスとを合流させる合流工程とを少なくとも含むものである。
本発明によれば、分流工程で生成したオゾンガスの一部を分流し、分流ガス加湿工程で、その一部を加湿し、合流工程でこれらの分流したオゾンガスを合流させるので、容易にオゾンガスの湿度を調整することができる。
そして、このようにして、オゾンガス処理した樹脂基材の基材表面に、無電解めっき処理を行うことにより、基材表面に無電解めっき被膜を被覆すれば、密着強度の高い無電解めっき被膜を、安価に得ることができる。このような無電解めっき被膜が形成された無電解めっき処理材は、装飾めっき部品、ECU(エンジンコントロールユニット)用の回路基板に好適に用いることができる。
本願では、本発明として上述したオゾンガス処理方法を好適に実施することができるオゾンガス処理装置をも開示する。本発明に係るオゾンガス処理装置は、樹脂基材の基材表面にオゾンガスを接触させることにより、前記基材表面にオゾンガス処理を行う装置であって、前記オゾンガスを生成するガス生成部と、該生成されたオゾンガスを導入するように前記ガス生成部に連通し、前記導入されたオゾンガスを加湿するガス加湿部と、前記加湿したオゾンガスを導入するように前記ガス加湿部に連通し、前記樹脂基材を収容すると共に該樹脂基材を前記加湿したオゾンガスに曝露するガス曝露部と、を少なくとも備えることを特徴とするものである。
本発明によれば、ガス生成部でオゾンガスを生成し、ガス加湿部で生成されたオゾンガスを加湿し、さらに、ガス曝露部で加湿されたオゾンガスに樹脂基材の基材表面を曝露することができる。これにより、加湿されたオゾンガスに曝露された基材表面を、オゾン水に浸漬したものに比べて、よりマイルドに表面改質することができる。また、加湿したオゾンガスにより、これまでより低い濃度であっても、短時間で安価に基材表面を改質し、その後、基材表面にめっきを析出させることができる。
また、このようなガス加湿部は、例えばヒータを利用した加湿器、気体中への水の気化分散を利用した加湿器、超音波を利用した加湿器など、を挙げることができ、オゾンガス中に浮遊する水をより微細にできるものであれば特に限定されるものではない。
しかしながら、より好ましい態様としては、前記ガス加湿部は、前記生成したオゾンガスが水中を通過するように、前記生成したオゾンガスを加湿するための水を収容する収容体を少なくとも備える。本発明によれば、オゾンガスを収容体の水中に通過させることにより、これまでのものに比べて、より微細な水粒子をオゾンガス中に分散して、オゾンガスを加湿状態にすることができる。このようにして、オゾンガスと水により生成されるヒドロキシラジカルを、濃縮させずにオゾンガス中に分散して浮遊させることができる。
また別の態様としては、本発明に係るオゾンガス処理装置は、前記加湿部が、前記生成したオゾンガスを所定の流量比となるように2つのオゾンガスに分流するガス分流部と、分流した一方のオゾンガスを水中に通過するように、前記分流した一方のオゾンガスを加湿するための水を収容する収容体と、該加湿した一方のオゾンガスと、分流した他方のオゾンガスとを合流させる合流部とを少なくとも備えるものである。
本発明によれば、ガス分流部で、生成したオゾンガスを所定の流量比となるように2つのオゾンガスに分流することができる。次に、分流した一方のオゾンガスを収容体の水中に通過させることにより、これまでのものに比べて、より微細な水粒子をオゾンガス中に分散し、一方のオゾンガスを加湿状態にすることができる。さらに、合流部において、該加湿した一方のオゾンガスと、分流した他方の前記オゾンガスとを合流させて、オゾンガスの湿度を調整することができる。
また、上述した収容体は、収容体に水を収容し、これにオゾンガスを通過することができる構造であれば、特に限定されるものではない。しかしながら、より好ましい態様としては、前記収容体は、筒状の収容体であって、該収容体の軸方向と鉛直方向とが一致するように配置されており、前記オゾンガスを導入する導入口は、前記収容体の底部に形成され、前記オゾンガスを排出する排出口は、前記収容体の上部に形成されている。
このような収容体を用いることにより、収容体の底部からオゾンガスを導入し、収容された水に導入させたオゾンガスを、水とガスの比重差を利用して通過させ、収容体の上部に排出することができる。
本発明によれば、樹脂基材の基材表面にオゾンガス処理を最適な条件で行うことにより、無電解めっき処理において、めっきの析出を確実なものとし、さらには析出しためっき被膜が、安定した密着強度を有することができる。
本実施形態に係るオゾンガス処理装置を説明するための模式的概念図。 図1に示す収容体の模式的斜視図。 本実施形態に係るオゾンガス処理工程及び無電解めっき処理工程を説明するためのフロー図。 実施例1,2及び比較例1,2に係るオゾン処理後の樹脂表面、及び未処理の樹脂表面に応じて、FT−IR−ATR法により測定した、樹脂表面の二トリル結合に相当する積分強度と波長との関係を示した図。 実施例1,2及び比較例1,2に係るオゾン処理後の樹脂表面、及び未処理の樹脂表面における、FT−IR−ATR法により測定した、樹脂表面のC=0に相当する積分強度と波長との関係を示した図。
以下に、図面を参照して、本発明に係るオゾンガス処理方法を含む、樹脂基材へのめっき方法を実施形態に基づいて説明する。図1は、本実施形態に係るオゾンガス処理装置を説明するための模式的概念図であり、図2は、図1に示す収容体の模式的斜視図である。
図1に示すように、オゾンガス処理装置1は、樹脂基材Wを加湿したオゾンガスによりオゾンガス処理を行う装置であり、ガス生成部10、ガス加湿部20、及びガス曝露部40を少なくとも備えている。
ガス生成部10は、工業用酸素ガスボンベと工業用窒素ガスボンベにより混合された混合ガス(例えば、窒素ガス5体積%となる混合ガス)が充填された原料ガス供給源60に接続されている。そして、ガス生成部10は、原料ガス供給源からの原料ガスにより、所望のオゾンの濃度となるようにオゾンガスを発生させるように構成されている。なお、このガス生成部10は、一般的に汎用されているオゾンガス発生装置である。
ガス加湿部20は、生成されたオゾンガスが導入されるようにガス生成部10に連通している。具体的には、ガス加湿部20は、入口オゾンガス濃度計61を介して、オゾンガスの流れる上流側から、圧力計21、流量計22、及び流量調整弁23が配管に順次接続されている。
流量調整弁23からさらに下流において、オゾンガスを分流するように、2つの流路A,Bが設けられている。2つの流路A,Bに対して、生成したオゾンガスが所定の流量比で分流されるように、各流路A及びBには、流量調整弁27a,27bが配管に接続されている。また、各流量調整弁27a,27bの流量の調整代を確認すべく、その上流側には、流量計26a,26bが取り付けられている。なお、本発明でいうところの「分流部」は、本実施形態では、分岐した流路A及びBと、これを調整する流量調整弁27a及び27bを少なくとも備えた構成である。
流路Aには、一方向弁24を介して収容体25が接続されており、その下流側には、上述した流量計26a及び流量調整弁27aが配管に接続されている。この収容体25は、図2に示すように、流路Aに分流したオゾンガスを水中に通過するように、分流したオゾンガスを加湿するための水を収容するものである。
具体的には、収容体25は、筒状の収容体であって、収容体25の軸芯CLの方向(軸方向)と鉛直方向とが一致するように配置されている。収容体25の底部には、オゾンガスを導入する導入口25bが形成され、収容体25の上部には、オゾンガスを排出する排出口25cが形成されている。
さらに、収容体25の側壁の上方には、必要に応じて、収容体25の内部に水を供給するための水供給口25dと、収容体25の内部から水を排出するための水排出口25eとが設けられている。水供給口25d及び水排出口25eは、水の供給及び排出時以外は、バルブ又は栓体等により閉鎖されている。さらに、ガス加湿部20において、流路Aと流路Bとに分流したオゾンガスを合流させるための合流部28が設けられている。さらにその下流には、湿度計29が配置されている。
ガス曝露部40は、樹脂基材Wの表面を加湿したオゾンガスに曝露するための部分である。具体的には、湿度計29の下流において、開閉弁となる三方弁41,42が接続されており、三方弁41は、処理槽45を介した下流側に接続された三方弁46と共に、処理槽45を介さずにバイパス流路が形成できるように接続されている。また、三方弁42は、処理槽45に窒素ガスを送るように窒素ガス源に接続されている。
さらに、三方弁42の下流には、処理槽45が設けられている。処理槽45は、樹脂基材Wを収容すると共に、樹脂基材Wを前記加湿したオゾンガスに曝露できるような密閉可能な容器である。また、処理槽45には、オゾンガス処理時において、オゾンガスの温度を測定するための温度計43が取り付けられている。
さらに、ガス曝露部40の下流には、出口オゾンガス濃度計62と、オゾンガス分解装置63とが順次接続されている。ガス生成部10から、上述した系統とは別系統で、オゾンガスの流れる上流側から、圧力計51、流量計52、及び流量調整弁53が配管に順次接続されている。
以下に図1及び2に示すオゾンガス処理装置を用いたオゾンガス処理方法を説明する。図3は、本実施形態に係るオゾンガス処理工程及び無電解めっき処理工程を説明するためのフロー図である。
図3に示すように、ABS樹脂など、例えば不飽和結合を有する高分子樹脂から基材(樹脂基材)を成形する成形工程S11を行う。基材の成形方法は特に制限されず、圧縮成形、押出成形、ブロー成形、射出成形など各種成形方法を採用できる。
樹脂基材は、C=C結合、C=N結合、又はC≡C結合などの不飽和結合をもつ樹脂からなることが好ましい。たとえば、このような不飽和結合をもつ樹脂として、ABS樹脂、AS樹脂、PS樹脂、AN樹脂、エポキシ樹脂、PMMA樹脂、ポリイミド樹脂、ポリフェニルサルファイド樹脂、などから選定してもよい。
次に、オゾンガス生成工程S12〜オゾンガス曝露工程S14までの一連のオゾンガス処理工程を上述したオゾンガス処理装置1を用いて行う。まず、オゾンガス生成工程S12を行う。具体的には、図1に示すように、原料ガス供給源60に酸素ガスと窒素ガスを供給し、原料ガス供給源60で混合する。次に、混合した原料ガスをオゾンガス生成部10に供給し、オゾンガス生成部10で所望のオゾンの濃度、温度となるオゾンガスを発生させる。
次に、オゾンガス加湿工程S13を行う。三方弁41,46を調整して、これらの三方弁41,46が直接連通するように、バイパス流路を形成する。このような状態で、流量調整弁23,27a,27b,53を開弁し、流量計52,22,26a,26b,52及び圧力計21,51の値を計測するとともに、入口オゾンガス濃度計61で、供給オゾンガス濃度を計測する。これらの計測値の値を確認しながら、流量調整弁23,27a,27b,53の弁開度を調整して、供給されたオゾンガスが、流路A及びBのそれぞれに所望の流量で流れるよう、供給されたオゾンガスを分流する(分流工程)。
この際に、分流したガスのうち、流路Aを通過するオゾンガスは、一方向弁24を介して、導入口25bから収容体25に供給される。この際、収容体25には、水が収容されているので、導入されたオゾンガスは、気泡となって、水との比重差により上方に移動しながら、水中を通過して加湿される(図2参照)。加湿されたオゾンガスは、排出口25cを介して、排出される(分流ガス加湿工程)。なお、収容体25内部への水の供給及び排出は、オゾンガスを流す前後に、予め水供給口25d及び水排出口25eを介して行う。
このようにして、オゾンガスを水中に通過させる際に、これまでのものに比べて、より微細な水粒子がオゾンガス中に含有される。この結果、オゾンガスと水により生成されるヒドロキシラジカルを、濃縮せずにオゾンガス中に均一分散して浮遊させることができる。
その後、流路Aの加湿したオゾンガスと、流路Bのオゾンガスとを合流部28において合流させる(合流工程)。その後、湿度計29を用いて、合流したがオゾンガスの相対湿度を測定する。この際に、所望の相対湿度となるように、流量調整弁27a,27bを用いて、分流するオゾンガスの流量比をさらに調整してもよい。このようにして、水中に送り込むオゾンガスの流量を所定の流量に調整するので、正確な相対湿度にオゾンガスを加湿することができる。
次に、オゾンガス曝露工程S14を行う。被処理物である樹脂基材Wを処理槽45内に設置し、処理槽45をウオーターバス(図示せず)に浸漬し、処理槽内も目標のガス温度に調整する。
設定した目標のオゾンガス濃度、オゾンガス温度、相対湿度に調整し終えたら、三方弁41,46を回して、オゾンガスが処理槽45へ流れるようにする。なお、この時点のオゾンガスの処理時間を処理時間開始0分とする。この際に、設定した処理時間に達するまで、処理槽内の温度を温度計43で測定し、処理槽出口のオゾンガス濃度を、出口オゾンガス濃度計62で測定する。これにより、樹脂基材Wの表面に、加湿したオゾンガスを供給することができる。
その後、設定した処理時間に達したら、三方弁41,42を回し、窒素ガスを、処理槽45内に送る。そして、出口オゾンガス濃度計62により、処理槽45の出口のオゾンガス濃度が、ほぼ0g/Nmになったことを確認したら、処理槽45をあけて、樹脂基材を取り出す。このようにして、オゾンガス曝露工程S14を行うことができる。
このような結果、加湿されたオゾンガスに曝露された基材表面には、オゾン水に曝露されたものに比べて、ヒドロキシラジカルによる劣化がほとんど無く、これまでのオゾンガス処理に近い、オゾン水処理よりもマイルドな表面改質を行うことができる。
また、これまでの加湿していないオゾンガスの場合には、ガス中にヒドロキシラジカルが浮遊していないので、オゾンガスの濃度を高めたり、処理時間を長くしたりする必要があった。しかしながら、加湿したオゾンガスを用いることにより、より低いオゾンガス濃度であっても、短時間で安価に基材表面を改質し、その後、基材表面にめっきを析出させることができる。
次に、オゾンガス処理方法を行った後、樹脂基材の基材表面に以下の一連の工程S15〜S17により、無電解めっき処理を行ことにより、基材表面に無電解めっき被膜を被覆する。
まず、アルカリ処理工程S15を行う。このアルカリ処理工程S15において、オゾンガス処理後の基材表面に、界面活性剤を少なくとも含むアルカリ溶液を接触させる。界面活性剤は、後述するパラジウム触媒の吸着性を高めるためのものであり、ラウリル硫酸ナトリウムなどの陰イオン界面活性剤を挙げることができる。アルカリ溶液のアルカリ成分は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどを挙げることができ、樹脂基材の基材表面を分子レベルで溶解して脆化層を除去するとともに、ナトリウムなどのアルカリ金属を基材表面に付与する(オゾンガス処理後の基材表面のカルボニル基をカルボン酸塩に酸化させる)ことができる。
さらに、界面活性剤とアルカリ成分とを含む溶液の溶媒としては、極性溶媒を用いることが望ましく、水を代表的に用いることができるが、場合によってはアルコール系溶媒あるいは水−アルコール混合溶媒を用いてもよい。またアルカリ溶液を樹脂基材と接触させるには、樹脂基材を溶液中に浸漬する方法、スプレー等により表面に溶液を塗布する方法、などを挙げることができる。
次に、触媒吸着工程S16を行う。この触媒吸着工程S16において、アルカリ処理された基材表面を、塩酸水溶液に塩化パラジウム及び塩化錫が溶解した触媒溶液中(キャタライザー)に浸漬する。これにより、基材の基材表面にパラジウム触媒を吸着させる。そして、基材表面を酸性溶液に接触させて、パラジウム触媒の活性化を図る。
このような、高分子樹脂からなる樹脂基材の基材表面に吸着させる金属触媒としては、パラジウム、銀、コバルト、ニッケル、ルテニウム、セリウム、鉄、マンガン、ロジウムなどの金属触媒を挙げることができ、これらの組み合わせであってもよい。
次に、触媒が吸着された基材表面に、無電解めっき処理工程S17を行う。具体的には、無電解めっき工程S17において、該触媒吸着後の基材表面に、ニッケルめっき液を浸漬させて、ニッケルを表面に析出させて、触媒吸着処理を行った基材表面に、無電解ニッケルめっき被膜を形成する。このようにして、加湿したオゾンガスを用いてオゾンガス処理した樹脂基材Wの基材表面に、無電解めっき処理を行うことにより、基材表面に無電解めっき被膜を被覆すれば、密着強度の高い無電解めっき被膜が形成された無電解めっき処理材を得ることができる。
さらに、無電解ニッケルめっき被膜の表面に、電気めっき工程S18を行う。具体的には、硫酸銅系電気めっき浴等のめっき浴に浸漬し、電気めっきにより、銅めっきを析出させる。
以下に本発明を実施例に基づいて説明する。なお、以下に示す実施例は、本発明の一実施例であり、本発明を限定的に解釈するものではない。
[実施例1]
まず、樹脂基材として、ABS樹脂から成形されたテストピース(50mm×100mm×t3mm、取っ手付き(10mm×20mm×t3mm)を3枚準備し、以下に示すようにしてバッチでめっき処理まで行った。
<オゾンガス処理方法>
図1に示すオゾンガス処理装置と同様の装置を用いて、上記ABS樹脂基材をオゾンガスで曝露処理工程を実施した。工業用酸素ガスボンベと工業用窒素ガスボンベを用いて、酸素ガスと窒素ガスとを混合し、混合ガス(窒素ガスが5体積%となるように)を、オゾンガスの原料とした。
オゾン生成部に相当するオゾン発生器(住友精密工業(株)製GR−RD)を用いて、オゾンガスを生成した。なお、表1に示す水準の試験を行うために、混合ガスを調整してオゾンガスの濃度を、表1に示す10〜100g/Nmの範囲で生成した。生成したオゾンガスを加湿して処理槽に相当する反応容器(1Lのオールフッ素樹脂製円筒容器)へ流した。より具体的には、三方弁41,46をオゾン分解装置63へ流れるようにしておき、流量調整弁23,27bを開弁し、任意のオゾンガス濃度のオゾンガスを0.6NL/minの流量で発生させた。
次に、オゾンガスの湿度を調整するために、流路A及びBのガス流量の比率を調整する。具体的には、流路Aと流路Bとに流れるオゾンガスの流量が1:1となるように調整した。流路Aには、流量計26aと収容体25である透明の塩化ビニル製カラムとに、流路Bには、流量計26bに、分流したオゾンガスを流した。そして、合流部28に分流したオゾンガスを再合流させた。これにより、相対湿度50%に加湿したオゾンガスを得た。ここで、塩化ビニル製カラムは、内径φ120mm×高さ1000mmの収容体であり、この収容体に水深800mmとなるように水を供給した。
次に、樹脂基材を反応容器(処理槽)45へ設置し、反応容器45をウオーターバス(東京理化器械(株)製クールエースCA−1111型)に浸漬し、設定した温度に、反応容器内を調整した。なお、反応容器45内のオゾンガスの濃度を測定すべく、入口のオゾンガス濃度(供給オゾン濃度)と出口のオゾンガス濃度(槽内オゾン濃度)を各オゾン濃度計(入口及び出口:荏原実業(株)製EG−600)で測定した。
次に、出口オゾンガス濃度計62が所望の濃度になったことを確認し、三方弁41及び46を回して加湿したオゾンガスを処理槽45に導入する。この時点を処理開始時間とする。温度計43で反応容器45が一定温度であることを確認しながら処理時間が6分を達した後、三方弁42を回して、反応容器45に窒素ガスを約5NL/minで2分間パージした。出口オゾンガス濃度計で、処理槽出口のオゾンガスがほぼ0g/Nmになったことを確認した後、処理槽を開け、樹脂基材を取り出した。
なお、処理後のオゾンガスは、オゾンガス分解装置で分解処理した。このオゾンガス分解処理装置としては、オゾン分解触媒(品川化成株式会社:セカード)を、ステンレス製円筒カラム(SUS304:φ150mm×H400mm)に充填したものを使用した。
<めっき方法>
〔アルカリ処理工程〕
ラウリル硫酸ナトリウム(50g/L)と、NaOH(1g/L)とを含む混合水溶液を調製した。50℃に設定されたこの混合水溶液中にオゾンガス処理済みABSからなる樹脂基材を、2分間浸漬した。その後、水溶液から樹脂基材を取り出し、水洗を行った。
〔触媒吸着工程〕
触媒吸着処理工程として、塩酸水溶液(3N)に、塩化パラジウム(0.1質量%)および塩化スズ(5質量%)を溶解した触媒溶液に、処理温度40℃、浸漬時間4分の条件で、アルカリ処理後の樹脂基材を浸漬した。その後、パラジウムを活性化するために、塩酸水溶液(1N)中に、樹脂基材を2分間浸漬した。なお、塩酸水溶液の温度は、50℃に設定した。このようにして、ABSの樹脂基材の表面に触媒を吸着した。その後、樹脂基材を取り出して、水洗した。
〔無電解めっき処理工程〕
無電解めっき処理工程として、30℃に保温されたNi−P化学めっき浴(めっき液)中に、樹脂基材を10分間浸漬して、樹脂基材の表面にNi−Pめっき被膜を形成した。そして、このように処理した樹脂基材には均一なめっき析出が確認された。この時点において、形成されためっき被膜の厚みは、0.5μmであった。
〔電気めっき処理工程〕
電気めっき処理工程として、硫酸銅系電気めっき浴(25℃、40分間)において、無電解Ni−Pめっき被膜の表面に、更に、銅めっき被膜を形成して、無電解Ni−Pめっき被膜の上に更に、銅めっきのめっき被膜を被覆した。Ni−Pめっき被膜と銅めっき被膜とを合わせた被膜厚みは、約30μmであった。
[実施例2]
実施例1と同じようにして、オゾンガス処理方法及びめっき処理方法をおこなった。実施例1と相違する点は、表1に示すように、オゾンガスを分流せずに、流路Aのみにオゾンガスを流してオゾンガスを相対湿度95%とし、オゾン発生器の印加電圧を調整して、オゾンガス濃度を5〜100g/Nmの範囲として、オゾンガス処理方法を行った点である。
[比較例1]
実施例1と同じようにして、オゾンガス処理方法及びめっき処理方法をおこなった。実施例1と相違する点は、表1に示すように、オゾンガスを加湿せずに、オゾン発生器の印加電圧を調整して、オゾンガス濃度を10〜200g/Nmの範囲として、オゾンガス処理方法を行った点である。
[比較例2]
実施例1と同じようにして、試験体を作成した。実施例1と相違する点は、オゾンガスの代わりに、30ppmのオゾン水を用いて、樹脂基材を20℃、8分間、オゾン水に浸漬してオゾン水処理を行った点である。なお、比較例2は、後述するオゾン水処理による樹脂基材の表面の状態を測定するために、作製した試験体である。
<密着強度試験>
樹脂基材上の無電解めっき被膜の密着強度を評価するために、以下に示す条件の下、実施例1及び比較例2の引張り試験を行った。樹脂基材上のめっき被膜に、幅10mmの短冊上の切れ込みを入れ、その試験片を用いて、JIS H8630(密着性試験方法)に準じ、めっき被膜の密着強度(ピール強度)を測定した。この結果を、表1に示す。
Figure 0005642432
<オゾン処理前後の基材表面の状態確認>
実施例1のオゾンガスの湿度50%、実施例2のオゾンガスの湿度95%、比較例1のオゾンガスの湿度0%、比較例2のオゾン水で、オゾン処理を行った、ABS樹脂の樹脂基材の表面を、FT−IR―ATR法により測定した。具体的には、分析手法は、フーリエ変換赤外分光法で行い、測定方法は、ATR法により行った。ここで、ATR法の測定装置(Varian製 FT−IR)であり、光源:特殊セラミック、検知器:MCT(HgCdTe)、パージ:窒素ガス、分解能:4cm−1 積算回数:512回、測定法:減衰全反射法、付属装置:一回反射型ATR測定付属装置、Geプリズム、入射角45°で行った。この結果を、図4及び5に示す。
ここで、図4は、実施例1,2及び比較例1,2に係るオゾン処理後の樹脂表面、及び未処理の樹脂表面に応じて、FT−IR−ATR法により測定した、樹脂表面のC=N結合に相当する積分強度と波長との関係を示した図である。図5は、実施例1,2及び比較例1,2に係るオゾン処理後の樹脂表面、及び未処理の樹脂表面における、FT−IR−ATR法により測定した、樹脂表面のC=0に相当する積分強度と波長との関係を示した図である。
[結果1及び考察1]
表1に示すように、実施例1及び2の方が、比較例1に比べて、低いオゾン濃度で、めっきが析出した。さらに、表1に示すように、オゾンガスを加湿して湿潤することにより、めっき析出が可能となるオゾン濃度の限界値が小さくなることがわかる。また、実施例2の飽和水蒸気濃度に略近い、相対湿度95%RHでは、10g/Nmの濃度のオゾンガスで処理を行った場合、めっきの析出が可能となり、比較例1の乾燥したオゾンガスで処理を行った場合に比べて、1/10の使用量で、めっき析出された。また、めっき密着力を評価したところ、めっき析出可能なすべての条件において、1kgf/cm以上の値が確認され、良好なめっき被膜が得られたことを確認できた。
[結果2及び考察2]
図4及び5からも明らかなように、相対湿度が50%又は95%に加湿されたオゾンガスに曝露された基材表面(実施例1または2)は、相対湿度0%のオゾンガスに曝露された基材表面(比較例1)に近い状態であるといえる。また、オゾン水に曝露された基材表面(比較例2)は、他の基材表面よりも、積分強度が大きいため、より改質されているといえる。
このことから、実施例1または2の基材表面は、オゾン水に曝露されたものに比べて、ヒドロキシラジカルによる劣化がほとんど無く、これまでのオゾンガス処理に近い、オゾン水処理よりもマイルドな表面改質を行うことができると考えられる。
以上、本発明の一実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。
10:ガス生成部、20:ガス加湿部、21:圧力計、22:流量計、23:流量調整弁、24:一方向弁,25:収容体、25b:導入口,25c:排出口,25d:水供給口,25e:水排出口、26a,26b:流量計,27a,27b:流量調整弁,28:合流部、29:湿度計、40:ガス曝露部、41,42:三方弁,45:処理槽,43:温度計、46:三方弁、51:圧力計、52:流量計、53:流量調整弁、61:入口オゾンガス濃度計,62:出口オゾンガス濃度計,63:オゾンガス分解装置、A、B:流路

Claims (3)

  1. 樹脂基材の基材表面にオゾンガスを接触させることにより、前記基材表面にオゾンガス処理を行った後、前記樹脂基材の前記基材表面に無電解めっき処理を行うことにより、前記基材表面に無電解めっき被膜を被覆する無電解めっき処理材の製造方法であって、
    前記オゾンガスを生成するガス生成工程と、
    成された前記オゾンガスを加湿するガス加湿工程と、
    湿された前記オゾンガスに前記樹脂基材の前記基材表面を曝露するガス曝露工程と、を少なくとも含み、
    前記ガス加湿工程は、
    生成した前記オゾンガスを所定の流量比となるように2つのオゾンガスに分流する分流工程と、
    分流した一方のオゾンガスを水中に通過させることにより、前記分流した一方のオゾンガスを加湿する分流ガス加湿工程と、
    加湿した前記一方のオゾンガスと、分流した他方のオゾンガスとを合流させる合流工程とを少なくとも含むことを特徴とする無電解めっき処理材の製造方法
  2. 樹脂基材に無電解めっき被膜が被覆される基材表面に、無電解めっき処理を行う前にオゾンガスを接触させることにより、前記基材表面にオゾンガス処理を行う装置であって、
    前記オゾンガスを生成するガス生成部と、
    成された前記オゾンガスを導入するように前記ガス生成部に連通し、入された前記オゾンガスを加湿するガス加湿部と、
    湿した前記オゾンガスを導入するように前記ガス加湿部に連通し、前記樹脂基材を収容すると共に該樹脂基材を前記加湿したオゾンガスに曝露するガス曝露部と、を少なくとも備え
    前記ガス加湿部は、
    生成した前記オゾンガスを所定の流量比となるように2つのオゾンガスに分流するガス分流部と、
    分流した一方のオゾンガスを水中に通過するように、前記分流した一方のオゾンガスを加湿するための水を収容する収容体と、
    加湿した前記一方のオゾンガスと、分流した他方のオゾンガスとを合流させる合流部とを少なくとも備えることを特徴とするオゾンガス処理装置。
  3. 前記収容体は、筒状の収容体であって、該収容体の軸方向と鉛直方向とが一致するように配置されており、
    前記一方のオゾンガスを導入する導入口は、前記収容体の底部に形成され、前記一方のオゾンガスを排出する排出口は、前記収容体の上部に形成されていることを特徴とする請求項に記載のオゾンガス処理装置。
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