JP5641769B2 - 水溶性ポリビニルアルコール系樹脂組成物 - Google Patents

水溶性ポリビニルアルコール系樹脂組成物 Download PDF

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本発明は、水溶性ポリビニルアルコール系樹脂組成物に関し、さらに詳しくは、溶融成形による着色が少なく、溶融粘度の経時安定性が高い溶融成形用の水溶性ポリビニルアルコール系樹脂組成物に関する。なお、以下では、「水溶性ポリビニルアルコール系樹脂」を単に「ポリビニルアルコール系樹脂」または「PVOH系樹脂」とも表記する。
PVOH系樹脂は、水溶性、耐溶剤性、ガスバリア性、強度、透明性、親水性などに優れており、物品包装用などの各種用途に用いられている。通常、PVOH系樹脂は融点と熱分解温度が近接しており、溶融成形によって成形品、特にフィルム等を得ようとする場合は、分解温度の近傍の温度で成形せざるをえず、得られた成形物の外観(焦げや熱分解物に起因する異物の混入)やロングラン成形性に問題があった。
溶融成形が可能なPVOH系樹脂として、エチレン変性によって融点を下げたエチレン・ビニルアルコール共重合体が知られているが、水溶性ではなく、ガスバリア性の低下も避けられない。溶融成形が可能な他のPVOH系樹脂として、側鎖に1,2−ジオール成分を有するPVOH系樹脂が提案されている(特許文献1)。側鎖に1,2−ジオール成分を有するこのPVOH系樹脂は、水溶性やガスバリア性を保持したまま低融点化されたもので、低温での成形が可能なことから、溶融成形時の熱分解が抑制され、焦げやゲル、フィッシュアイの発生がない、良好な外観の成形物を得ることができる。
しかしながら、かかるPVOH系樹脂は、熱溶融成形が可能ではあるものの、溶融成形時、特に200℃以上の高温で成形を行うと成形物が着色しやすい、および溶融状態で樹脂粘度が経時増大するという課題があり、さらなる改善の余地があった。
特開2006−89538号公報
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、溶融成形が可能なPVOH系樹脂組成物であって、溶融成形による着色が少なく、溶融粘度の経時安定性が高いPVOH系樹脂組成物を提供することにある。
本発明者らは、上記の実情に鑑みて、まず着色の原因について鋭意研究したところ、PVOH系樹脂中に存在するカルボニル基が影響しているとの知見を得た。カルボニル基が着色に影響を与える理由は、明らかではないが、カルボニル基を有するPVOH系樹脂では、カルボニル基に隣接する水酸基が脱水されやすくなり、その結果、着色の原因となる−CO−(CH=CH)−からなる共役二重結合構造が形成されると考えられる。
また、本発明者らは、PVOH系樹脂中に存在するカルボニル基が溶融粘度の経時安定性にも影響しているとの知見を得た。カルボニル基が溶融粘度の経時安定性に影響を与える理由は、明らかではないが、例えば、PVOH系樹脂中の酸成分やアルカリ成分によって促進される、カルボニル基とPVOH系樹脂の水酸基とのアセタール化やケタール化等の架橋反応による溶融粘度の上昇や、末端カルボニル基を起点とした逆アルドール反応による分解を原因とする溶融粘度の低下などが考えられる。
そこで、本発明者らは、水溶液のPVOH系樹脂中に取り込まれたカルボニル基量の指標として、紫外線吸収スペクトルにおける280nmの吸光度を規定するとともに、カルボン酸と、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩のうち少なくとも1つとを用いて、水溶液のpHが所定範囲内となるように調整することによって、上記課題を解決するに至ったものである。なお、溶融粘度の経時安定性が向上する理由は、明らかではないが、カルボン酸と、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩のうち少なくとも1つとを用いて、水溶液のpHを調整することにより、溶融成形時に生じるPVOH分子の切断と、PVOH分子間の架橋反応とのバランスがとれて、見かけの分子量の変化が少なくなるので、溶融粘度の経時変化が少なくなると考えられる。
すなわち、本発明のPVOH系樹脂組成物は、下記一般式(1)で示される構造単位を有し、かつ4質量%水溶液としたときの紫外線吸収スペクトルにおける280nmの吸光度が0.1〜0.3である水溶性ポリビニルアルコール系樹脂と、カルボン酸と、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩のうち少なくとも1つとを含有し、水溶性ポリビニルアルコール系樹脂の含有量が4質量%となるように調製した水溶液の20℃におけるpHが5.5〜7であることを特徴とする。なお、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩を総括的に、以下では、アルカリ(土類)金属塩と表記することがある。
Figure 0005641769
〔式中、R1、R2及びR3はそれぞれ独立して水素原子または有機基を示し、Xは単結合または結合鎖を示し、R4、R5及びR6はそれぞれ独立して水素原子または有機基を示す。〕
さらに、本発明者らは、PVOH系樹脂中に存在するカルボニル基が、酢酸ビニルなどのビニルエステルの重合時に系に存在するアルデヒド化合物にビニルエステルの重合連鎖の末端が連鎖移動することによってポリマー中に導入されたり、高温での重合や乾燥の際、水酸基が酸化されて形成されるとの知見を得た。かかるアルデヒド化合物としては、例えば、酢酸ビニルと重合溶媒であるメタノールとのエステル交換反応によって生成したビニルアルコールに由来するアセトアルデヒドや、酢酸ビニルの重合に広く用いられ、かつ半減期が長く活性が高い重合開始剤(AIBN〔半減期32時間〕、アセチルパーオキサイド〔半減期32時間〕、ベンゾイルパーオキサイド〔半減期60時間〕など)によって、重合溶媒であるメタノールが酸化されて生成するホルムアルデヒドなどが推測される。
そこで、本発明者らは、本発明のPVOH系樹脂組成物において、一般式(1)で示される構造単位を有する水溶性ポリビニルアルコール系樹脂が、ビニルエステル系モノマーと下記一般式(2)で示される1,2−ジオール構造を有する化合物またはその誘導体とを、重合開始剤として60℃における半減期が10〜300分である有機過酸化物を用いて、共重合させた共重合物をケン化して得られたものであることが更に好適であることを見出した。
Figure 0005641769
〔式中、R1、R2及びR3はそれぞれ独立して水素原子または有機基を示し、Xは単結合または結合鎖を示し、R4、R5及びR6はそれぞれ独立して水素原子または有機基を示す。〕
また、本発明のPVOH系樹脂組成物は、上記の通り、従来のものに比して、特異な非着色性と溶融粘度の経時安定性を具備するものであるので、下記の通りに特定することもできる。すなわち、本発明のPVOH系樹脂組成物は、押出機を用いて、樹脂温度210℃、滞留時間3分間の条件で得られた押出し物のYI(Yellow Index)値が50以下であり、プラストグラフにて樹脂温度230℃で溶融混練したときの混練開始10分後のトルクに対する混練開始60分後のトルクの比が3以下であることを特徴とするものでもある。
本発明のPVOH系樹脂組成物は、溶融成形による着色が少なく、溶融粘度の経時安定性が高いので、溶融成形に好適に用いることができる。
以下に、本発明を詳細に述べる。
本発明のPVOH系樹脂組成物は、下記一般式(1)で示される構造単位を有し、かつ4質量%水溶液としたときの紫外線吸収スペクトルにおける280nmの吸光度が0.1〜0.3であるポリビニルアルコール系樹脂と、カルボン酸と、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩のうち少なくとも1つとを含有する。まず、本発明で用いるPVOH系樹脂について説明する。
本発明で用いるPVOH系樹脂は、下記一般式(1)で示される1,2−ジオール構造単位を有するもので、一般式(1)におけるR1、R2及びR3はそれぞれ独立して水素原子または有機基を示し、Xは単結合または結合鎖を示し、R4、R5及びR6はそれぞれ独立して水素原子または有機基を示す。
Figure 0005641769
一般式(1)で表わされる構造単位中のR1〜R3及びR4〜R6は、すべて水素原子であることが望ましく、下記一般式(1’)で表わされる構造単位を有するPVOH系樹脂が好適に用いられる。
Figure 0005641769
かかる一般式(1)で表わされる構造単位中のR1〜R3及びR4〜R6は、樹脂特性を大幅に損なわない程度の量であれば、有機基であってもよく、その有機基としては特に限定されないが、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、必要に応じて、これらアルキル基がハロゲン基、水酸基、エステル基、カルボン酸基、スルホン酸基等の置換基を有していてもよい。
また、一般式(1)で表わされる構造単位中のXは、熱安定性の点や高温下/酸性条件下での構造安定性の点で、単結合であることが最も好ましいが、本発明の効果を阻害しない範囲であれば結合鎖であってもよい。かかる結合鎖としては特に限定されないが、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、フェニレン、ナフチレン等の炭化水素基(これらの炭化水素基はフッ素、塩素、臭素等のハロゲン等を有していても良い)の他、−O−、−(CHO)−、−(OCH−、−(CHO)CH−、−CO−、−COCO−、−CO(CHCO−、−CO(C)CO−、−S−、−CS−、−SO−、−SO−、−NR−、−CONR−、−NRCO−、−CSNR−、−NRCS−、−NRNR−、−HPO−、−Si(OR)−、−OSi(OR)−、−OSi(OR)O−、−Ti(OR)−、−OTi(OR)−、−OTi(OR)O−、−Al(OR)−、−OAl(OR)−、−OAl(OR)O−等(Rは各々独立して任意の置換基であり、水素原子、アルキル基が好ましく、またmは自然数である)が挙げられる。中でも製造時あるいは使用時の安定性の点で炭素数6以下のアルキレン基、特にメチレン基、あるいは−CHOCH−が好ましい。
本発明で用いられるPVOH系樹脂は、上記一般式(1)で示される構造単位を通常1〜15モル%、好ましくは2〜10モル%、さらに好ましくは3〜9モル%を含有する。上記一般式(1)で示される構造単位のモル分率を過度に高くすると、所望の重合度のPVOH系樹脂を得ることが困難となる傾向がある。一方、モル分率が低すぎると、融点が高くなり、熱分解温度に近くなるので、溶融成形時の熱分解による焦げやゲル、フィッシュアイができ易くなる傾向がある。
PVOH系樹脂中、一般式(1)で示される1,2−ジオール構造単位の含有率(モル分率)は、PVOH系樹脂を完全にケン化したものの1H−NMRスペクトル(溶媒:DMSO−d6、内部標準:テトラメチルシラン)から求めることができ、具体的には1,2−ジオール単位中の水酸基プロトン、メチンプロトン、およびメチレンプロトン、主鎖のメチレンプロトン、主鎖に連結する水酸基のプロトンなどに由来するピーク面積から算出することができる。
本発明で用いられるPVOH系樹脂のケン化度(JIS K6726に準拠して測定)は、通常80〜100モル%であり、特に85〜99.9モル%、さらに88〜99.5モル%が好ましい。ケン化度が低すぎると、溶融成形時に、溶融粘度の安定性が不充分となる傾向があり、また、酢酸ビニル構造単位部分の分解によって生じる酢酸の臭気が著しくなる傾向がある。
また、PVOH系樹脂の平均重合度(JIS K6726に準拠して測定)は、通常200〜1800であり、特に300〜1500、さらに300〜1000が好ましい。平均重合度が高すぎると、溶融粘度が高くなり、成形性が低下する傾向がある。一方、平均重合度が低すぎると、成形物の機械的強度が不足する傾向がある。
本発明で用いられるPVOH系樹脂は、4質量%水溶液としたときの紫外線吸収スペクトルにおける280nmの吸光度が通常0.1〜0.3であり、特に0.1〜0.28、さらに0.1〜0.25であることが好ましい。280nmの吸収は、PVOH系樹脂に含まれる−CO−(CH=CH)−構造中のn=0の場合の孤立カルボニル基とn=2の場合の共役カルボニル基による。かかる吸光度が大きすぎると、共役系が長波長側に伸び、着色しやすくなり、熱安定性が低下する傾向がある。一方、一般的な工業的製造方法では吸光度が0.1を下回るものは得られず、吸光度が小さいPVOH系樹脂は、極低温重合などの生産効率の悪い製造方法を採用する必要があるため、かかるPVOH系樹脂は生産性、およびコスト面で好ましくない。なお、吸光度は、PVOH系樹脂の4質量%水溶液を調製し、UV分光光度計を用いて測定することができるが、カルボン酸およびアルカリ(土類)金属塩をさらに含有するPVOH系樹脂組成物を用いて、PVOH系樹脂の含有量が4質量%となるように水溶液を調製し、UV分光光度計を用いて測定しても良い。
PVOH系樹脂水溶液の上記吸光度を本発明の規定範囲にする方法としては、特に限定されないが、例えば、a)酒石酸やクエン酸などのヒドロキシカルボン酸、あるいは多価カルボン酸、L−スコルビン酸、D−アラボアスコルビン酸、D−グルコノ−1,5−ラクトンなどのヒドロキシラクトン、D−ソルビトール、D−キシロースなどの多価アルコール、テトラメチルエチレンジアミンなどの多価アミンなどのキレート剤の存在下で重合を行うことで、重合系中のアルデヒド化合物量を低減する方法、b)半減期が短い重合開始剤を使用する方法、c)低温活性な重合開始剤を用いて、低温で重合する方法、d)酸化力が弱い重合開始剤を使用する方法、e)回収された酢酸ビニルなどのビニルエステルモノマーを使用しない、あるいは使用する場合には蒸留等によりアルデヒド化合物の含有量を極力低減させる方法、f)重合禁止剤として、p−メトキシフェノールやα−メチルスチレン2量体などのPVOH系樹脂末端の共役系の長波長側への伸びを促進させないものを使用する、あるいは禁止剤の使用量を極力少なくする方法などが挙げられる。中でも、生産性に優れ、他の樹脂物性に与える影響が小さい点などから、b)の方法が好ましく用いられる。
次に、一般式(1)で示される構造単位を有するPVOH系樹脂の製造方法について説明する。かかるPVOH系樹脂の製造方法は、特に限定されないが、例えば、ビニルエステル系モノマーと下記一般式(2)で示される1,2−ジオール構造を有する化合物またはその誘導体とを共重合させた共重合物をケン化する方法が挙げられる。なお、2種以上のビニルエステル系モノマーと2種以上の一般式(2)の化合物またはその誘導体とを共重合させても良い。
Figure 0005641769
一般式(2)で表わされる構造単位中のR1、R2、R3、X、R4、R5、R6は、いずれも一般式(1)の場合と同様である。
PVOH系樹脂の製造に用いられるビニルエステル系モノマーとしては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、バーサチック酸ビニル、トリフロロ酢酸ビニル等が挙げられるが、経済的にみて、中でも酢酸ビニルが好ましく用いられる。
一般式(2)で示される1,2−ジオール構造を有する化合物またはその誘導体とビニルエステル系モノマーとからPVOH系樹脂を製造する方法としては、特に限定されないが、(i)ビニルエステル系モノマーと下記一般式(3)で示される化合物との共重合物をケン化する方法や、(ii)ビニルエステル系モノマーと下記一般式(4)で示される化合物との共重合物をケン化及び脱炭酸する方法や、(iii)ビニルエステル系モノマーと下記一般式(5)で示される化合物との共重合物をケン化及び脱ケタール化する方法が好ましく用いられる。なお、(i)、(ii)、及び(iii)の方法については、例えば、特開2006−95825号公報に説明されている方法を採用できる。
Figure 0005641769
Figure 0005641769
Figure 0005641769
上記一般式(3)、(4)、(5)中のR1、R2、R3、X、R4、R5、R6は、いずれも一般式(1)の場合と同様である。R7及びR8はそれぞれ独立して水素原子またはR9−CO−(式中、R9はアルキル基である)である。R10及びR11はそれぞれ独立して水素原子またはR1〜R6と同様の有機基である。
一般式(3)で示される化合物としては、3,4−ジヒドロキシ−1−ブテン、3,4−ジアシロキシ−1−ブテン、3−アシロキシ−4−ヒドロキシ−1−ブテン、4−アシロキシ−3−ヒドロキシ−1−ブテン、3,4−ジアシロキシ−2−メチル−1−ブテン、4,5−ジヒドロキシ−1−ペンテン、4,5−ジアシロキシ−1−ペンテン、4,5−ジヒドロキシ−3−メチル−1−ペンテン、4,5−ジアシロキシ−3−メチル−1−ペンテン、5,6−ジヒドロキシ−1−ヘキセン、5,6−ジアシロキシ−1−ヘキセン、グリセリンモノアリルエーテルなどが挙げられる。なかでも、共重合反応性および工業的な取り扱い性に優れるという点から、上記一般式(3)においてR1〜R6が水素、Xが単結合、R7〜R8がR9−CO−であり、R9がアルキル基である3,4−ジアシロキシ−1−ブテンが好ましく、さらにそのなかでも特にR9がメチル基である3,4−ジアセトキシ−1−ブテンが好ましく用いられる。
上記(i)の方法において、ビニルエステル系モノマーとして酢酸ビニルを用い、これと3,4−ジアセトキシ−1−ブテンを共重合させた際の各モノマーの反応性比は、r(酢酸ビニル)=0.710、r(3,4−ジアセトキシ−1−ブテン)=0.701であり、これは(ii)の方法で用いられる一般式(4)で表される化合物であるビニルエチレンカーボネートの場合の、r(酢酸ビニル)=0.85、r(ビニルエチレンカーボネート)=5.4と比較して、3,4−ジアセトキシ−1−ブテンが酢酸ビニルとの共重合反応性に優れることを示すものである。
また、酢酸ビニルとの共重合時の3,4−ジアセトキシ−1−ブテンの連鎖移動定数は、Cx(3,4−ジアセトキシ−1−ブテン)=0.003(65℃)であり、これはビニルエチレンカーボネートの場合の、Cx(ビニルエチレンカーボネート)=0.005(65℃)や、(iii)の方法で用いられる一般式(5)で表される化合物である2,2−ジメチル−4−ビニル−1,3−ジオキソランの場合のCx(2,2−ジメチル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン)=0.023(65℃)と比較して、重合度が上がりにくくなったり、重合速度が低下したりする原因となり難いことを示すものである。
かかる3,4−ジアセトキシ−1−ブテンは、その共重合物をケン化する際に発生する副生物が、ビニルエステル系モノマーとして多用される酢酸ビニルに由来する構造単位からケン化時に副生する化合物と同一であり、その後処理や溶剤回収系に敢えて特別な装置や工程を設ける必要がなく、従来からの設備を利用出来るという点も、工業的に大きな利点である。
なお、上記3,4−ジアセトキシ−1−ブテンは、例えば、国際公開第00/24702号に記載の1,3−ブタジエンを出発物質とした合成ルートで製造された製品や、USP5623086、USP6072079に記載の技術によるエポキシブテン誘導体を中間体として製造された製品を入手することができ、また試薬レベルではアクロス社の製品をそれぞれ市場から入手することができる。また、1,4−ブタンジオール製造工程中の副生成物として得られる粗3,4−ジアセトキシ−1−ブテンを精製して利用することもできる。
また、1,4−ブタンジオール製造工程の中間生成物である1,4−ジアセトキシ−1−ブテンを、塩化パラジウムなどの金属触媒を用いた公知の異性化反応で異性化することによって、3,4−ジアセトキシ−1−ブテンに変換して用いることもできる。また、国際公開第00/24702号に記載の有機ジエステルの製造方法に準じて製造することも可能である。
上記(ii)や(iii)の方法によって得られたPVOH系樹脂は、ケン化度が低い場合や、脱炭酸あるいは脱アセタール化が不充分な場合には、側鎖にカーボネート環あるいはアセタール環が残存する場合があり、その結果、かかるPVOH系樹脂を溶融成形に用いた場合に、ゲルや架橋による異物が発生する傾向があり、これらの点からも、(i)の方法によって得られたPVOH系樹脂が好適である。
また上述のモノマー(ビニルエステル系モノマー、一般式(2)〜(5)で示される化合物)の他に、樹脂物性に大幅な影響を及ぼさない範囲であれば、共重合成分として、エチレンやプロピレン等のαーオレフィン;3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1,2−ジオール等のヒドロキシ基含有α−オレフィン類、およびそのアシル化物などの誘導体;イタコン酸、マレイン酸、アクリル酸等の不飽和酸類あるいはその塩あるいはモノ又はジアルキルエステル;アクリロニトリル等のニトリル類;メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等のアミド類;エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸、AMPS(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)等のオレフィンスルホン酸あるいはその塩などの化合物、エチレンオキサイドモノアリルエーテルなどのアリル化合物類などが共重合されていてもよい。
また、ビニレンカーボネートとの共重合や、重合時の温度条件を高温にすることで、主鎖の1,2−グリコール結合量を1.5〜3モル%としたものを使用することもできる。
上記のモノマーを共重合する方法としては、特に制限はなく、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、分散重合、またはエマルジョン重合等の公知の方法を採用することができるが、直鎖状ポリマーが得られやすいという点から、通常は溶液重合が行われる。共重合時のモノマー成分の仕込み方法としては、特に制限されず、一括仕込み、分割仕込み、連続仕込み等の任意の方法が採用されるが、一般式(2)〜(5)で示される化合物をポリビニルエステル系ポリマーの分子鎖中に均一に分布させられる点から滴下重合が好ましく、特にはHANNA法に基づく重合方法が好ましい。
かかる共重合で用いられる溶媒としては、通常、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロパノール、ブタノール等の低級アルコール、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、またはこれらの混合溶媒が挙げられ、工業的には、メタノールが好適に使用される。溶媒の使用量は、目的とする共重合物の重合度に合わせて、溶媒の連鎖移動定数を考慮して適宜選択すればよく、例えば、溶媒がメタノールの時は、S(溶媒)/M(モノマー)=0.01〜10(重量比)、好ましくは0.05〜3(重量比)程度の範囲から選択される。
共重合に際しては、通常、重合開始剤が用いられる。重合開始剤としては、特に限定されず、例えばアゾビスイソブチロニトリル、過酸化アセチル、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウリル等の公知のラジカル重合開始剤やアゾビスジメチルバレロニトリル、アゾビスメトキシジメチルバレロニトリル等の低温活性ラジカル重合開始剤等が挙げられる。しかし、PVOH系樹脂中のカルボニル基の含有量を低減し、本発明で規定する吸光度に調整するために、半減期の短い重合開始剤を用いることが好ましい。具体的には、60℃における半減期が通常10〜300分であり、特に15〜250分、さらに20〜200分である有機過酸化物を用いることが好ましい。重合開始剤の半減期が長すぎると、製造されたPVOH系樹脂のYI値が高くなる傾向があり、半減期が短すぎると、重合のコントロールが難しくなる傾向がある。なお、ここで言う半減期とは、60℃のトルエン(アゾ化合物)またはベンゼン(他の重合開始剤)等の中で測定されるものである。
60℃における半減期が10〜300分である有機過酸化物の具体例としては、2,2′−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)〔半減期150分〕、2,2′−アゾビス−(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)〔半減期11分〕等のアゾ化合物、t−ブチルパーオキシネオデカノエート〔半減期102分時間〕、t−ブチルパーオキシピバレート〔半減期288分〕、t−ヘキシルパーオキシピバレート〔半減期222分〕等のパーオキシエステル類、ビス−(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシ−ジ−カーボネート〔半減期40分〕、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシ−ジ−カーボネート〔半減期50分〕、ジ−イソプロピルパーオキシ−ジ−カーボネート〔半減期36分〕、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート〔半減期42分〕等のパーオキシ−ジ−カーボネート類、イソブチラルパーオキサイド〔半減期16分〕等のジアシルパーオキシド類が挙げられる。
重合開始剤の使用量は、重合開始剤の種類により異なり一概には決められないが、重合速度に応じて任意に選択される。例えば、60℃における半減期が10〜300分である有機過酸化物を用いる場合、ビニルエステル系モノマーに対して、通常1×10-7〜1×10-2モル%、好ましくは1×10-6〜1×10-3モル%である。重合開始剤の使用量が多すぎると、重合速度や発熱量などのコントロールが難しくなる傾向があり、少なすぎると、重合に長時間を要し、生産性が低下する傾向がある。重合反応の反応温度は、使用する溶媒や圧力、重合缶の除熱能力により異なり一概には決められないが、通常50〜130℃、特に常圧下での55℃〜沸点が好ましい。反応温度が高すぎると、重合のコントロールが難しくなる傾向があり、低すぎると、重合が進行し難くなる傾向がある。なお、半減期の異なる2種以上の重合開始剤を用いても良く、2種以上の重合開始剤を順次または同時に仕込むことができる。
共重合により得られた共重合物は、次いでケン化される。かかるケン化は、上記で得られた共重合物をアルコール又は含水アルコールに溶解し、アルカリ触媒又は酸触媒を用いて行われる。アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、tert−ブタノール、メタノール/酢酸メチルやメタノール/ベンゼンなどの混合溶媒等が挙げられるが、メタノールが特に好ましく用いられる。アルコール中の共重合物の濃度は系の粘度により適宜選択されるが、通常は10〜60重量%の範囲から選ばれる。ケン化に使用される触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、カリウムメチラート、リチウムメチラート等のアルカリ金属の水酸化物やアルコラートの如きアルカリ触媒、硫酸、塩酸、硝酸、メタスルフォン酸、ゼオライト、カチオン交換樹脂等の酸触媒が挙げられる。
かかるケン化反応に用いられる装置としては、ニーダーやベルト状の連続ケン化装置、2軸押出機等を挙げることができる。
かかるケン化触媒の使用量については、ケン化方法、目標とするケン化度等により適宜選択されるが、アルカリ触媒を使用する場合は通常、ビニルエステル系モノマー及び一般式(2)〜(5)で示される化合物の合計量1モルに対して0.1〜30ミリモル、好ましくは2〜17ミリモルが適当である。また、ケン化反応の反応温度は、特に限定されないが、10〜60℃が好ましく、より好ましくは20〜50℃である。
本発明のPVOH系樹脂組成物は、上記PVOH系樹脂とともに、カルボン酸と、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩のうち少なくとも1つとを含有する。
カルボン酸としては、脂肪族カルボン酸や芳香族カルボン酸などが挙げられ、中でも脂肪族カルボン酸が好ましく用いられ、またモノカルボン酸やジカルボン酸が挙げられ、好ましくはモノカルボン酸が用いられる。また、その炭素数は通常2〜18であり、好ましくは2〜10、さらに好ましくは2〜5であるものが用いられ、特に水溶性であるものが好ましく用いられる。具体的には、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸が例示され、中でも酢酸が好適に用いられる。
カルボン酸の含有量は、PVOH系樹脂100質量部に対して、通常0.001〜0.2質量部であり、特に0.002〜0.15質量部、さらに0.002〜0.1質量部が好ましい。カルボン酸を含有させる方法は、特に限定されないが、PVOH系樹脂の製造工程において添加することが効率的であり、特に、アルカリ触媒を用いて上記共重合物をケン化した後にカルボン酸を添加する場合には、中和による消費分を適宜調整して含有させる。なお、2種以上のカルボン酸を含有させても良い。
アルカリ(土類)金属塩は、アルカリ金属の有機酸塩及び無機酸塩、ならびにアルカリ土類金属の有機酸塩及び無機酸塩であり、本発明においては、これらの塩のうち少なくとも1つが用いられる。アルカリ金属としては、カリウム、ナトリウム等が挙げられ、アルカリ土類金属としては、カルシウム、マグネシウム等が挙げられる。中でも、使用量に対する効果が大きい点からアルカリ金属が好ましく、特にナトリウム塩が好適に用いられる。
有機酸塩としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ラウリル酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸等のカルボン酸塩が挙げられ、無機酸塩としては、硫酸、亜硫酸、炭酸、リン酸等の塩が挙げられる。
アルカリ(土類)金属塩の含有量は、PVOH系樹脂に対して金属換算で、通常0.0002〜1モル%であり、特に0.001〜0.6モル%、さらに0.002〜0.2モル%が好ましい。なお、アルカリ(土類)金属塩のうち2つ以上を含有させる場合には、上記含有量は、2つ以上の塩の合計量を表す。
アルカリ(土類)金属塩を含有させる方法は、特に限定されず、例えば、PVOH系樹脂の製造(ケン化)時にケン化触媒としてアルカリ金属を含有するアルカリ性物質を使用し、ケン化後のPVOH系樹脂を洗浄、および酸によって中和して該樹脂中に含まれるアルカリ金属塩の量を制御する方法、PVOH系樹脂の製造における乾燥工程前に金属塩水溶液をPVOH系樹脂に混合する方法、溶融状態のPVOH系樹脂に金属塩を混合する方法等が挙げられる。中でも、ケン化触媒としてアルカリ金属を含有するアルカリ性物質を使用して、これを酸によって中和する際にカルボン酸を用いる方法は、樹脂組成物のカルボン酸及びアルカリ(土類)金属塩の各含有量を同時に制御できることから、本発明の樹脂組成物の製造法として好適である。
なお、PVOH系樹脂中のアルカリ(土類)金属塩の含有量は、原子吸光分析法で求めることができる。
本発明のPVOH系樹脂組成物は、PVOH系樹脂の含有量が4質量%となるように調製した水溶液の20℃におけるpHが通常5.5〜7であり、特に6〜7、殊に6.2〜6.8が好ましい。水溶液のpHが高すぎると、溶融粘度の安定性が不充分になったり、着色し易くなる傾向があり、pHが低すぎると、溶融粘度の安定性が不充分になる傾向がある。水溶液のpHは、例えば、上記カルボン酸とアルカリ(土類)金属塩との含有量比を制御することにより調整することができる。なお、水溶液のpHは、上記カルボン酸及びアルカリ(土類)金属塩を含有するPVOH系樹脂組成物を用いて、PVOH系樹脂の含有量が4質量%となるように調製された水溶液にて測定される。
本発明のPVOH系樹脂組成物は、可塑剤を配合しなくても良好な溶融成形性を得ることができるが、別段必要に応じて、可塑剤を配合することも可能である。かかる可塑剤としては、脂肪族多価アルコール(例えば、エチレングリコール、ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジグリセリン等)、グリセリン等の多価アルコールへエチレンオキサイドを付加した化合物、各種アルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの混合付加体等)、糖類(例えば、ソルビトール、マンニトール、ペンタエリスリトール、キシロール、アラビノース、リブロース等)、ビスフェノールAやビスフェノールS等のフェノール誘導体、N−メチルピロリドン等のアミド化合物、α−メチル−D−グルコシド等のグルコシド類、水等が挙げられる。なお、その配合量としては、PVOH系樹脂100質量部に対して、100質量部以下、さらには20質量部以下、特には10質量部以下とすることが好ましい。
また、熱可塑性樹脂(例えば、相溶化剤存在下でポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル)、香料、発泡剤、消臭剤、増量剤、充填剤(タルク、クレー、モンモリロナイト、炭酸カルシウム、ガラスビーズ、ガラス繊維、シリカ、マイカ、アルミナ、ハイドロタルサイト、酸化チタン、酸化ジルコニウム、窒化硼素、窒化アルミニウム等の無機充填剤、メラミンーホルマリン系樹脂等の有機充填材)、剥離剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、加工安定剤、耐候性安定剤、防かび剤、防腐剤等の添加剤を適宜配合することができる。なお、充填材は、PVOH系樹脂の水解性や生分解性の速度を調整したり、該樹脂にブロッキング防止性や印刷適性の具備させる目的に好適に使用される。
上記の如くして得られたPVOH系樹脂組成物は、そのまま溶融成形に供することも可能であるが、溶融成形時の作業性や吐出安定性を考慮すれば、一度溶融状態で混練した後、冷却固化させてペレット状等にすることが好ましい。
かかる手段としては、たとえば、ニーダールーダー、押出機、ミキシングロール、バンバリーミキサー、ブラストミルなどの公知の混練装置を用いて行うことができるが、通常は、単軸または二軸押出機を用いることが工業的に好ましく、また、必要に応じて、ベント吸引装置、ギヤポンプ装置、スクリーン装置、ストランド支持用ベルト、ドライフォッグ発生器等を設けることも好ましい。特に、水分や副生成物(熱分解低分子量物等)を除去するために、押出機に1個以上のベント孔を設けて減圧下に吸引したり、押出機中への酸素の混入を防止するためにホッパー内に窒素等の不活性ガスを連続的に供給したりすることにより、熱着色や熱劣化が軽減された品質に優れたPVOH系樹脂組成物のペレットを得ることができる。
本発明のPVOH系樹脂組成物は、特異な非着色性と溶融粘度の経時安定性を具備する。具体的には、押出機を用いて、樹脂温度210℃、滞留時間3分間の条件で得られた押出し物(溶融押出しペレット)のYI(Yellow Index)値が50以下、好ましくは5〜48、特に好ましくは10〜45である。なお、YI値は分光色差計を用いて測定することができる。
また、本発明のPVOH系樹脂組成物は、プラストグラフにて樹脂温度230℃で溶融混練したときの混練開始10分後のトルクに対する混練開始60分後のトルクの比(60分後のトルク/10分後のトルク)が3以下、好ましくは0.3〜3、特に好ましくは1〜2.8である。
本発明のPVOH系樹脂組成物は溶融成形に好適に使用できる。本発明のPVOH系樹脂組成物を用いた溶融成形品としては 特に制限されることなく、フィルム、シート、ボトル、パイプ、チューブ、射出成形物、異型断面押出物等や溶融紡糸法による繊維及び不織布が例示される。かかる溶融成形品を得るための溶融成形方法としては、圧縮成型法、トランスファー成形法、押出し成型法、射出成形法、インフレーション成形法、中空成形法、ブロー成形法、カレンダー成形法、発泡成形法、真空成形法等が主として採用され、溶融温度としては、通常150〜250℃の範囲から選ぶことが多いが、本発明のPVOH系樹脂組成物においては、150〜220℃(さらには185〜210℃)の低温で溶融成形することが可能であり、さらにPVOH系樹脂のケン化度を下げれば、より低温での成形が可能である。
本発明のPVOH系樹脂組成物を用いて得られる溶融成形品の具体例としては、繊維、ガスバリア性フィルム、易水溶性フィルム(特に農薬、洗剤、洗濯用衣類、土木用添加材剤、殺菌剤、染料、顔料などの物品包装用の易水溶性フィルム)、農業用フィルム、シート、パイプ、チューブ、防漏膜、暫定皮膜、ケミカルレース用水溶性繊維、食品包装用PVDC(ポリ塩化ビニリデン)代替フィルムなどが例示される。また、溶融成形品としてのシートやフィルムは、一軸又は二軸に延伸しても良く、更に必要に応じて、冷却処理、圧延処理、印刷処理、ドライラミネート処理、溶液又は溶融コート処理、製袋加工、深絞り加工、箱加工、チューブ加工、スプリット加工、切削加工等を行なっても良い。
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下「%」とあるのは、特にことわりのない限り、質量基準を意味する。
(実施例1)
〔PVOH系樹脂の製造〕
還流冷却器、滴下漏斗、撹拌機を備えた反応缶に、酢酸ビニル321.4g、メタノール241.1g、3,4−ジアセトキシ−1−ブテン38.6gを仕込み、撹拌しながら窒素気流下で温度を上昇させ、t−ブチルパーオキシネオデカノエート(半減期102分)の4%メタノール溶液37.8gを610分かけて添加して重合を行った。また、重合開始から35分経過した時点で酢酸ビニル571.4g、3,4−ジアセトキシ−1−ブテン68.6gを480分かけて添加し、さらに105分重合を行った。酢酸ビニルの重合率が89.5%となった時点で、重合禁止剤としてp−メトキシフェノール38ppm(対仕込み酢酸ビニル)を加え、重合を終了した。続いて、メタノール蒸気を吹き込む方法により未反応の酢酸ビニルモノマーを系外に除去し共重合物のメタノール溶液を得た。
次いで、該溶液をメタノールで希釈して共重合物の濃度66%に調整してニーダーに仕込み、溶液温度を40℃に保ちながら、水酸化ナトリウムの2%メタノール溶液を共重合物中の酢酸ビニル及び3,4−ジアセトキシ−1−ブテンの合計量1モルに対して12ミリモルとなる割合で加えてケン化を行った。ケン化が進行すると共にケン化物が粒子状に析出してスラリーとなった後、添加水酸化ナトリウム量に対して酢酸を0.35当量となるように加えて、さらにスラリー中の樹脂濃度が9%となるようにメタノールを添加して、15分間ニーダー内で攪拌し、濾別して熱風乾燥機中で乾燥し、酢酸および酢酸ナトリウムを含有するPVOH系樹脂組成物(ペレット)を得た。
得られたPVOH系樹脂組成物中のPVOH系樹脂のケン化度は、残存酢酸ビニル及び残存3,4−ジアセトキシ−1−ブテンの加水分解に要するアルカリ消費量で分析を行ったところ、99.2モル%であり、平均重合度はJIS K6726に準じて分析を行ったところ450であった。また、1,2−ジオール構造を含有する側鎖の導入量は、1H−NMRスペクトル(溶媒:DMSO−d6、内部標準:テトラメチルシラン)で測定して算出したところ6モル%であった。また、PVOH系樹脂の含有量が4%となるように調製したPVOH系樹脂組成物の水溶液(以下、4質量%水溶液ともいう。)の紫外線吸収スペクトルにおける280nmの吸光度は0.18であり、該水溶液の20℃におけるpHは6.2であった。かかるpHは、ガラス電極式pHメーター(堀場製作所社製、F−22)、および低導電率用pH電極(堀場製作所社製、6377−10D)を用いて測定したものである。
さらに、PVOH系樹脂組成物のYI値、トルク比を下記の測定法により測定した。以上の物性値を表1にまとめる。
〔YI値測定法〕
押出機を用いて下記の条件で得られた押出し物(溶融押出しペレット)のYI値を下記条件にて測定した。
押出機:テクノベル社製二軸押出機,KZW−15−60MG,スクリュー径15mm,L/D=60、
スクリュー:送りセグメントのみ(混練部なし)、
樹脂温度:210℃、
滞留時間:3分間、
測定機器:日本電色工業社製,分光色差計 Σ90、
測定条件:ホッパー部は窒素シールされている。
〔トルク比測定法〕
プラストグラフにてPVOH系樹脂組成物のトルク比(混練開始60分後のトルク/混練開始10分後のトルク)を下記条件にて測定した。
プラストグラフ:ブラベンダー社製,プラストグラフ EC plus,ローラミキサーR60B(チャンバ容量60mL)、
樹脂投入量:55g、
予熱時間:3分間、
樹脂温度:230℃、
混練条件:50rpm。
(実施例2、3、4)
実施例1において、酢酸/酢酸ナトリウムの含有量比を変更することにより、4質量%水溶液(20℃)のpHが6.8(実施例2)、6.2(実施例3)、又は5.8(実施例4)のPVOH系樹脂組成物をそれぞれ得た。各物性値を表1にまとめる。
(比較例1)
実施例1において、重合開始剤をアセチルパーオキサイド(半減期1920分)に変更する以外は同様にしてPVOH系樹脂組成物を得た。各物性値を表1にまとめる。
(比較例2、3)
実施例1において、酢酸/酢酸ナトリウムの含有量比を変更することにより、4質量%水溶液(20℃)のpHが5.3(比較例2)、又は7.2(比較例3)のPVOH系樹脂組成物をそれぞれ得た。各物性値を表1にまとめる。
Figure 0005641769
表1に示すように、4質量%水溶液の紫外線吸収スペクトルにおける280nmの吸光度が0.1〜0.3であり、かつ該水溶液の20℃におけるpHが5.5〜7である実施例1〜4のPVOH系樹脂組成物は、YI値が50以下と小さく、またトルク比が3以下の低い値である。すなわち、実施例1〜4のPVOH系樹脂組成物は、いずれも成形物の着色(黄変)が少なく、溶融粘度の経時安定性が高いので、溶融成形用に適している。
一方、比較例1のPVOH系樹脂組成物は、4質量%水溶液の紫外線吸収スペクトルにおける280nmの吸光度が0.3よりも高く、YI値が50を超えている。また、比較例2のPVOH系樹脂組成物は、4質量%水溶液の20℃におけるpHが5.5よりも小さく、トルク比が3を超えている。さらに、比較例3のPVOH系樹脂組成物は、4質量%水溶液の20℃におけるpHが7よりも高く、YI値が50を超えている。したがって、比較例1〜3のPVOH系樹脂組成物は、いずれも成形物が着色し易く、溶融状態で樹脂粘度が経時増大するという課題があり、溶融成形用に適しているとは言えない。

Claims (3)

  1. 下記一般式(1)で示される構造単位を有し、かつ4質量%水溶液としたときの紫外線吸収スペクトルにおける280nmの吸光度が0.1〜0.3である水溶性ポリビニルアルコール系樹脂と、カルボン酸と、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩のうち少なくとも1つとを含有し、水溶性ポリビニルアルコール系樹脂の含有量が4質量%となるように調製した水溶液の20℃におけるpHが5.5〜7であることを特徴とする水溶性ポリビニルアルコール系樹脂組成物。
    Figure 0005641769
    〔式中、R、R及びRはそれぞれ独立して水素原子または有機基を示し、Xは単結合または結合鎖を示し、R、R及びRはそれぞれ独立して水素原子または有機基を示す。〕
  2. 一般式(1)で示される構造単位を有する水溶性ポリビニルアルコール系樹脂が、ビニルエステル系モノマーと下記一般式(2)で示される1,2−ジオール構造を有する化合物またはその誘導体とを、重合開始剤として60℃における半減期が10〜300分である有機過酸化物を用いて、共重合させた共重合物をケン化して得られたものであることを特徴とする請求項1記載の水溶性ポリビニルアルコール系樹脂組成物。
    Figure 0005641769
    〔式中、R、R及びRはそれぞれ独立して水素原子または有機基を示し、Xは単結合または結合鎖を示し、R、R及びRはそれぞれ独立して水素原子または有機基を示す。〕
  3. 押出機を用いて、樹脂温度210℃、滞留時間3分間の条件で得られた押出し物のYI値が50以下であり、プラストグラフにて樹脂温度230℃で溶融混練したときの混練開始10分後のトルクに対する混練開始60分後のトルクの比が3以下であることを特徴とする水溶性ポリビニルアルコール系樹脂組成物。
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