JP6203038B2 - 成形品及びその製造方法 - Google Patents
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Description
しかしながら、PVA系樹脂は水溶性であるがために、これから得られた皮膜等の成形品は、湿気などの水分に弱く、高湿度下で使用される用途に適用しづらいという難点があった。
しかしながら、AA−PVA系樹脂等の一般的なPVA系樹脂は、融点と熱分解温度が近接しているので、溶融成形が困難な樹脂であり、その制約がPVA系樹脂の更なる用途展開の大きな障害となっていた。
しかしながら、1,2−ジオールPVA系樹脂は、一般のPVA系樹脂よりも親水性が高く、水溶性に優れるため、耐水化が困難であり、耐水性が要求される用途には使用できないものであった。
本発明に用いられる1,2−ジオールPVA系樹脂(A)は、下記一般式(1)で表わされる1,2−ジオール構造単位を有するPVA系樹脂であり、一般式(1)において、R1、R2、R3、R4、R5及びR6はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を示し、Xは単結合又は結合鎖を示す。
(ii)ビニルエステル系モノマーと下記一般式(3)で示される化合物との共重合体をケン化及び脱炭酸する方法や、
(iii)ビニルエステル系モノマーと下記一般式(4)で示される化合物との共重合体をケン化及び脱ケタール化する方法を用いてもよい。
以下、かかる(i)、(ii)、及び(iii)の方法について説明する。
(i)の方法は、ビニルエステル系モノマーと上記一般式(2)で示される化合物とを共重合したのちケン化して、上記一般式(1)で表わされる1,2−ジオール構造単位を有するPVA系樹脂(A)を製造する方法である。
かかる上記一般式(2)で示される化合物において、R1〜R6及びXは上記一般式(1)と同様のものが挙げられ、R7及びR8は、それぞれ独立して水素原子又はR9−CO−(式中、R9は、アルキル基、好ましくはメチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基又はオクチル基であり、かかるアルキル基は共重合反応性やそれに続く工程において悪影響を及ぼさない範囲で、ハロゲン基、水酸基、エステル基、カルボン酸基、スルホン酸基等の置換基を有していてもよい。)である。
また、特開平10−212264号公報等に記載の1,4−ジアセトキシ−2−ブテンを3,4−ジアセトキシ−1−ブテンに変換する方法や、国際公開第00/24702号に記載の1,3−ブタジエンからモノエポキシドを経て3,4−ジアセトキシブテンを得る方法等、公知の技術を利用して得ることもできる。
共重合時のモノマー成分の仕込み方法としては特に制限されず、一括仕込み、分割仕込み、連続仕込み等任意の方法が採用されるが、一般式(2)で示される化合物に由来する1,2−ジオール構造単位がポリビニルエステル系ポリマーの分子鎖中に均一に分布させられる点から滴下重合が好ましく、特には前述の酢酸ビニルとの反応性比を用いたHANNA法に基づく重合方法が好ましい。
なお、滴下重合とは、共重合の際に反応系内のモノマー比率を一定範囲に保つために、いずれか一方あるいは両方のモノマーを連続的あるいは非連続的に滴下しながら重合させる方法であり、特に、両モノマーの反応性比に基づいて計算されたモノマー消費速度に見合う速度でモノマー滴下を行い、系内のモノマー比率をほぼ一定に保つようにしたのがHANNA法による滴下重合である。
溶媒の使用量は、目的とする共重合体の重合度に合わせて、溶媒の連鎖移動定数を考慮して適宜選択すればよく、例えば、溶媒がメタノールの時は、S(溶媒)/M(モノマー)=0.01〜10(重量比)、好ましくは0.04〜3(重量比)程度の範囲から選択される。
また、共重合反応の反応温度は、使用する溶媒や圧力により30℃〜沸点程度で行われ、より具体的には、35〜90℃、好ましくは40〜75℃の範囲で行われる。
また、ケン化反応の反応温度は特に限定されないが、10〜60℃が好ましく、より好ましくは20〜50℃である。
(ii)の方法は、ビニルエステル系モノマーと上記一般式(3)で示される化合物とを共重合したのちケン化、脱炭酸して、上記一般式(1)で表わされる1,2−ジオール構造単位を有するPVA系樹脂を製造する方法である。
本発明で用いられる上記一般式(3)で示される化合物において、R1〜R6及びXは上記一般式(1)と同様のものが挙げられる。中でも入手の容易さ、良好な共重合性を有する点で、R1、R2、R3、R4、R5、R6が水素原子であり、Xが単結合であるビニルエチレンカーボネートが好適に用いられる。
なお、脱炭酸については、特別な処理を施すことなく、ケン化とともに脱炭酸が行われ、エチレンカーボネート環が開環することで1,2−ジオール構造に変換される。
また、一定圧力下(常圧〜1×107Pa)で且つ高温下(50〜200℃)でビニルエステル部分をケン化することなく、脱炭酸を行うことも可能であり、かかる場合、脱炭酸を行った後、上記ケン化を行うこともできる。
(iii)の方法は、ビニルエステル系モノマーと上記一般式(4)で示される化合物とを共重合したのちケン化、脱ケタール化して、上記一般式(1)で表わされる1,2−ジオール構造単位を有するPVA系樹脂を製造する方法である。
本発明で用いられる上記一般式(4)で示される化合物において、R1〜R6及びXは上記一般式(1)と同様のものが挙げられ、R10、R11はそれぞれ独立して水素原子又はアルキル基である。該アルキル基としては特に限定されないが、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。かかるアルキル基は共重合反応性等を阻害しない範囲内において、ハロゲン基、水酸基、エステル基、カルボン酸基、スルホン酸基等の置換基を有していてもよい。中でも入手の容易さ、良好な共重合性を有する点で、R1、R2、R3、R4、R5、R6が水素であり、R10、R11がメチル基である2,2−ジメチル−4−ビニル−1,3−ジオキソランが好適である。
なお、脱ケタール化については、ケン化反応がアルカリ触媒を用いて行われる場合は、ケン化後、更に酸触媒を用いて水系溶媒(水、水/アセトン、水/メタノール等の低級アルコール混合溶媒等)中で脱ケタール化が行われ、1,2−ジオール構造に変換される。その場合の酸触媒としては、酢酸、塩酸、硫酸、硝酸、メタスルフォン酸、ゼオライト、カチオン交換樹脂等が挙げられる。
また、ケン化反応が酸触媒を用いて行われる場合は、特別な処理を施すことなく、ケン化とともに脱ケタール化が行われ、1,2−ジオール構造に変換される。
かかる不飽和モノマーとしては、例えばエチレンやプロピレン、イソブチレン、α−オクテン、α−ドデセン、α−オクタデセン等のオレフィン類、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸等の不飽和酸類、その塩、モノエステル、あるいはジアルキルエステル、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のニトリル類、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド類、エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸類あるいはその塩、アルキルビニルエーテル類、ジメチルアリルビニルケトン、N−ビニルピロリドン、塩化ビニル等のビニル化合物、酢酸イソプロペニル、1−メトキシビニルアセテート等の置換酢酸ビニル類、塩化ビニリデン、1,4−ジアセトキシ−2−ブテン、ビニレンカーボネート、アセトアセチル基含有モノマー等が挙げられる。
また、重合温度を100℃以上にすることにより、PVA主鎖中に1,2−ジオール結合を1.6〜3.5モル%程度導入したものを使用することが可能である。
なお、本明細書において1,2−ジオールPVA系樹脂(A)の粘度は、JIS K 6726に準拠して測定した20℃における4重量%水溶液の粘度である。
本発明に用いられるAA−PVA系樹脂(B)は、側鎖にアセトアセチル基を有するPVA系樹脂であり、例えば下記一般式(5)で示される構造単位を有するものである。
なお、かかる共重合モノマーの導入量はモノマーの種類によって異なるため一概にはいえないが、通常は全構造単位の10モル%未満、特には5モル%未満であり、多すぎると水溶性が損なわれたり、架橋剤との相溶性が低下する傾向がある。
なお、本明細書においてAA−PVA系樹脂(B)の粘度は、JIS K 6726に準拠して測定した20℃における4重量%水溶液の粘度である。
本発明で用いられるPVA系樹脂組成物は、1,2−ジオールPVA系樹脂(A)とAA−PVA系樹脂(B)とを含有する。
なお、ケン化度はJIS K 6726に準拠して測定することができる。
上述のPVA系樹脂や他の重合体の含有量としては、本発明の樹脂組成物に対して、10重量%未満、特には5重量%未満が好ましい。
なお、かかるペレット形状への成形は公知の方法を用いることができるが、押出機からストランド状に押出し、冷却後所定の長さに切断し、円柱状のペレットとする方法が効率的である。
また、かかる円柱状のペレットの大きさとしては、長さは通常1〜4mm、好ましくは2〜3mm、直径は通常1〜4mm、好ましくは2〜3mmである。
本発明で用いられるPVA系樹脂組成物は、成形性、特に溶融成形性に優れていることから、成形材料として有用である。溶融成形方法としては、押出成形、インフレーション成形、射出成形、ブロー成形、真空成形、圧空成形、圧縮成形、カレンダー成形、など公知の成形法を用いることができ、PVA系樹脂組成物を溶融温度100〜250℃、好ましくは150〜230℃、特に好ましくは160〜220℃で溶融成形することによって本発明の成形品を製造することができる。
また、本発明の成形品としては、フィルム、シート、パイプ、円板、リング、袋状物、ボトル状物、繊維状物など、多種多用の形状のものを挙げることができる。
例えば、フィルムとして用いる場合の厚さは、通常5〜90μm、好ましくは15〜70μmである。
本発明の成形品の用途例としては、飲食品用包装材、容器、バッグインボックス用内袋、容器用パッキング、医療用輸液バッグ、有機液体用容器、有機液体輸送用パイプ、各種ガスの容器、チューブ、ホースなどが挙げられる。また、各種電気部品、自動車部品、工業用部品、レジャー用品、スポーツ用品、日用品、玩具、医療器具、衛生用品などに用いることも可能である。
(1)1,2−ジオールPVA系樹脂(A)の製造
還流冷却器、滴下漏斗、撹拌機を備えた反応缶に、酢酸ビニル1000g、メタノール50g、及び3,4−ジアセトキシ−1−ブテン60g(3モル%対仕込み酢酸ビニル)を仕込み、アゾビスイソブチロニトリルを0.003モル%(対仕込み酢酸ビニル)投入し、撹拌しながら窒素気流下で温度を上昇させ、重合を開始した。さらに、重合開始3時間後にアゾビスイソブチロニトリルを0.002モル%追加し、酢酸ビニルの重合率が40%となった時点で、m−ジニトロベンゼンを所定量添加して重合を終了し、続いて、メタノール蒸気を吹き込みつつ蒸留することで未反応の酢酸ビニルモノマーを系外に除去し共重合体のメタノール溶液を得た。
還流冷却機、滴下漏斗、攪拌機を備えた反応缶に、酢酸ビニル1000部、メタノール300部、及びアゾビスイソブチロニトリル0.05モル%(対仕込み酢酸ビニル)を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら温度を上昇させ、沸点下で5時間重合を行った。酢酸ビニルの重合率が70%となった時点で、m−ジニトロベンゼンを添加して重合を終了し、続いて、メタノール蒸気を吹き込む方法により未反応の酢酸ビニルモノマーを系外に除去し、重合体のメタノール溶液(樹脂分41%)を得た。
続いて、該溶液を酢酸メチルで希釈し、濃度29.5%に調整してニーダーに仕込み、溶液温度を35℃に保ちながら、水酸化ナトリウムを加えて中和した。これに更に水酸化ナトリウムをポリマー中の酢酸ビニル単位1モルに対して28ミリモル加えてケン化し、析出物をろ別し、メタノールでよく洗浄して熱風乾燥機中で乾燥し、さらに80℃で60分間熱処理してPVA系樹脂を得た。
該PVA系樹脂を、ニーダーに3600部仕込み、これに酢酸540部を入れ、膨潤させ、回転数20rpmで攪拌しながら、60℃に昇温後、ジケテン290部を3時間かけて滴下し、更に1時間反応させた。反応終了後、メタノールで洗浄した後、70℃で6時間乾燥してAA−PVA系樹脂(B)を得た。かかるAA−PVA系樹脂(B)のAA化度は5.8モル%であり、ケン化度及び平均重合度は用いたPVA系樹脂のとおりである。
上記1,2−ジオールPVA系樹脂(A)45部と、上記AA−PVA系樹脂(B)30部をドライブレンドした後、可塑剤としてグリセリン25部を液注入しながら、これを二軸押出機にて下記条件で溶融混練し、ストランド状に押出してペレタイザーでカットし、円柱形ペレットの樹脂組成物を得た。
直径(D)15mm、L/D=60
スクリュー回転数:200rpm
設定温度:C1/C2/C3/C4/C5/C6/C7/C8/D=120/180/190/195/120/120/120/120/120℃
スクリューパターン:3箇所練りスクリュー
スクリーンメッシュ:90/90mesh
吐出量:1.5kg/hr
得られたペレットを二軸押出機にて下記条件で製膜し、厚さ約30μmの単層のPVAフィルムを製造し、下記の評価を行った。結果を表1に示す。
直径(D)15mm、L/D=60
スクリュー回転数 :200rpm
設定温度:C1/C2/C3/C4/C5/C6/C7/C8/D=110/150/160/160/160/170/170/170/170℃
吐出量:1.5kg/hr
スクリーンメッシュ:90/90mesh
ダイ:幅300mm、コートハンガータイプ
引取速度:2.6m/min
ロール温度:50℃
エアーギャップ:1cm
(耐水性)
40℃の水2LにPVAフィルム(2.5×5.0×0.03mm)が完全に溶解するか否かを目視で観察した。その結果を表1に示す。
実施例1において、1,2−ジオールPVA系樹脂(A)としてケン化度99モル%、平均重合度450のものを用い、AA−PVA系樹脂(B)としてケン化度88モル%、AA化8.5モル%、平均重合度300のものを用いた以外は実施例1と同様にPVAフィルムを製造し、同様に評価を行なった。
実施例1において、1,2−ジオールPVA系樹脂(A)としてケン化度99モル%、平均重合度450のものを用い、AA−PVA系樹脂(B)としてケン化度99モル%、AA化8.5モル%、平均重合度300のものを用いた以外は実施例1と同様にPVAフィルムを製造し、同様に評価を行なった。
実施例1において、AA−PVA系樹脂(B)としてケン化度88モル%、AA化8.5モル%、平均重合度300のものを用い、上記(4)フィルムの製造工程における二軸押出機の設定温度を下記の通りに変更した以外は、実施例1と同様にPVAフィルムを製造し、同様に評価を行なった。
設定温度:C1/C2/C3/C4/C5/C6/C7/C8/D=90/110/120/120/120/120/120/120/120℃
実施例2において、AA−PVA系樹脂(B)を配合しなかった以外は実施例2と同様にPVAフィルムを製造し、同様に評価を行なった。
実施例1において、1,2−ジオールPVA系樹脂(A)を配合しなかった以外は実施例1と同様にPVAフィルムを製造し、同様に評価を行なった。
本発明の成形品に係る実施例1〜3のPVAフィルムでは、いずれも溶融成形性に優れており、また耐水性にも優れるものであった。
これに対して、1,2−ジオールPVA系樹脂(A)及びAA−PVA系樹脂(B)のいずれもケン化度が96モル%未満である比較例1のPVAフィルムでは、耐水性が低かった。また、1,2−ジオールPVA系樹脂(A)のみからなる比較例2のPVAフィルムでも耐水性が低かった。さらに、AA−PVA系樹脂(B)のみからなる比較例3では、樹脂組成物の溶融成形性が悪く、製膜することができなかったので、耐水性を評価することができなかった。
Claims (3)
- 1,2−ジオール構造単位を有するポリビニルアルコール系樹脂(A)とアセトアセチル基を含有するポリビニルアルコール系樹脂(B)との含有比(重量)が9/1〜1/9であることを特徴とする請求項1記載の成形品。
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