JP5052078B2 - ポリビニルアルコール系樹脂の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は側鎖に1,2−ジオール構造を有するポリビニルアルコール系樹脂の製造方法に関し、さらに詳しくは、重合反応後の移送配管や脱モノマーのための蒸留塔の汚染がなく、生産性と品質に優れた、1,2−ジオール構造単位を含有する新規ポリビニルアルコール系樹脂の製造方法に関する。
ポリビニルアルコール系樹脂(以下、PVA系樹脂と略記する。)は、ビニルエステル系モノマーを重合し、得られた重合体をケン化して得られる樹脂である。従来その膜特性(造膜性、耐油性、強度等)、水溶性、界面活性、接着性等を活かし、乳化剤、懸濁剤、界面活性剤、繊維加工材、各種バインダー、紙加工剤、フィルム、接着剤等として広く使用されており、それぞれの用途に対し最適なケン化度、重合度等を選択し、また、側鎖に変性基を導入し、その種類や含有量等を最適化して適用されている。近年では各種製品の高機能化に伴いPVA系樹脂に求められる機能も高度化、多様化し、例えば水溶性と低温時の溶液安定性が優れたPVAの要望に対しては側鎖に1,2−ジオール構造を有する新規PVA系樹脂が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。中でも、特許文献1では、グリセリンモノアリルエーテルとビニルエステルモノマーとを共重合させ、ケン化することにより、側鎖に1,2−ジオール構造を有する新規PVA系樹脂を得ており、かかる樹脂は耐ブロッキング性、柔軟性、高速塗工性等の点で優れている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1記載の、側鎖に1,2−ジオールを有するPVA系樹脂は、下記一般式(2)で表される構造を有し、残る部分は通常のPVA系樹脂と同様、ケン化度相当量のビニルアルコール構造単位と、それ以外のビニルエステル構造単位からなる。
Figure 0005052078

[式中、R1、R2およびR3はそれぞれ独立して水素原子を示し、R4はCH2を示し、R5はCH2を示し、R6、R7およびR8は水素原子を示す。]
特開平9−208626号公報 特開2002−284818号公報
しかしながら、グリセリンモノアリルエーテルをコモノマーとして得られる、上記一般式(2)で表される構造を有するPVA系樹脂は、上記一般式(2)で表される構造の含有量が3モル%以上のPVA系樹脂の製造において、ビニルエステルと共重合反応中、反応混合物が不均一になり、生成したポリマーにおける上記一般式(2)で表される構造単位の含有量が、目的とした値よりも少なくなるという問題があった。これは、グリセリンモノアリルエーテルがビニルエステルモノマーに対して3モル%以上仕込まれる系では、ビニルエステルモノマーおよび/または溶媒に対してグリセリンモノアリルエーテルが溶解しにくいためと推測される。
さらに、一般的なPVA系樹脂の製造ライン(重合→脱モノマー→ケン化→固液分離→乾燥)における重合から脱モノマーまでの過程において、重合反応後の移送配管や脱モノマーのための蒸留塔が汚染されるため、汚染物が製品に混入することによる製品品質の低下や、同じ構造で続けて他品種のPVA系樹脂を製造する際のコンタミの原因となる。また、仕込まれたグリセリンモノアリルエーテルの反応率も低くなってしまい、生産性の上で好ましくない。また、掃除のためには製造ラインを止めなければならず、人手やコストがかかり、生産性や経済性が低下するという問題があった。すなわち、上記一般式(2)で表される構造を有するPVA系樹脂の製造において、上記一般式(2)で表される構造単位の含有量の低下、重合反応後の移送配管や脱モノマーのための蒸留塔の汚染や、汚染物の混入による製品品質の低下、同じ構造で続けて他品種のPVA系樹脂を製造する際のコンタミ等の問題がない製造法が望まれるところであった。
本発明者は、この解決法として、前記したグリセリンモノアリルエーテルを用いるのではなく、下記一般式(1)で表される化合物(A)のような、対応するエステル化されたモノマーを用いて、ビニルエステル系モノマー(B)に対して0.1〜15モル%の共重合割合で共重合した後、かかる共重合体の(A)成分と(B)成分の両者をケン化(加水分解)する方法を採用すると、上記問題点が改善され、かつ最終的に得られるポリマーの品質も良好であることを見出し、本発明を完成した。
Figure 0005052078
[式中、R およびR10は炭化水素基を示す。]
すなわち本発明の要旨は、上記一般式(1)で表される化合物(A)ビニルエステル系モノマー(B)に対して0.1〜15モル%の共重合割合で共重合させ、次いで得られた共重合体をケン化することを特徴とする、側鎖に1,2−ジオール構造を有するポリビニルアルコール系樹脂の製造方法に存する。
本発明のポリビニルアルコール系樹脂の製造方法は、重合反応中、反応溶液が均一であり、反応効率に優れるため、1,2−ジオール構造単位となるモノマーの仕込み量が3モル%以上であっても、かかる構造単位の含有量が目的量よりも低下することなく、さらに工業的な製造においても、重合反応後の移送配管および脱モノマーのための蒸留塔の汚染がないために、汚染物の製品への混入や、同じ構造で続けて他品種のPVA系樹脂を製造する際のコンタミを起こすことがなく、品質が良好なPVA系樹脂を生産性、経済性良く得ることが出来る。
本発明において、上記効果が得られる理由としては、上記一般式(1)に示すようにエステル化したモノマーを用いることで、かかる部位が適度な極性を有し、各モノマーや溶媒等との相溶性が向上したためであると推測される。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、これらの内容に特定されるものではない。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の製造方法で用いられる1,2−ジオール構造を有するモノマーは、下記一般式(1)で表される化合物(A)である。
Figure 0005052078
[式中、R およびR10は炭化水素基を示す。]
本発明に用いられる、上記一般式(1)で表される化合物は、R9COO−およびR10COO−で示されるようなアシロキシ基を有することが最大の特徴であり、かかる部位が適度な極性を有するため、各モノマーや溶媒等との相溶性が向上するものと推測される。R9およびR10は炭化水素基(脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基)であり、通常炭素数1〜10、さらには炭素数1〜5、特には炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基が好ましく、生産時の副生成物を除く過程が簡便になる点から、殊にはCH3であることが好ましい。また、ケン化による副生物が、ビニルエステルモノマー単位のケン化時の副生物と同じものになるように選択することが好ましい。
かかる一般式(1)で表される化合物(A)の具体例としては、例えば、2,3−ジアセトキシ−1−アリルオキシプロパン、1−アリルオキシ−2,3−ジプロピオニルオキシ−プロパン、2−アセトキシ−1−アリルオキシ−3−プロピオニルオキシプロパン、1−アリルオキシ−3−アセトキシ−2−プロピオニルオキシプロパン等のグリセリンモノアリルエーテルのジエステル類等が挙げられる。中でも、共重合反応性および工業的な取り扱いにおいて優れるという点で、2,3−ジアセトキシ−1−アリルオキシプロパンが最も好ましい。
上記モノマーは、それぞれを単独で、もしくは複数種を同時に用いてもよい。さらに、本発明の効果を阻害しない範囲にて、グリセリンモノアリルエーテル類のモノメチルエステル、モノエチルエステル等のモノアルキルエステル類を単独で、もしくは複数種が同時に存在していてもよい。
本発明で用いられる一般式(1)で表される化合物の製造法は、特に限定しないが、例えば下記一般式(3)で表される化合物を公知の方法に従ってエステル化することにより得ることができる。
Figure 0005052078
例えば、このエステル化反応は、グリセリンモノアリルエーテルを、酸触媒存在下において、生成する水を除去しながらエステル化すべきカルボン酸(例えば酢酸等)を反応させる方法や、塩基または酸触媒存在下においてエステル化すべき酸の無水物およびハロゲン化物を反応させる方法にて目的の対応するエステルを得ることができる。
ビニルエステル系モノマー(B)としては、例えばギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル等の脂肪族炭化水素ビニルエステル、安息香酸ビニル等の芳香族炭化水素ビニルエステル、バーサチック酸ビニル等が挙げられ、経済的な点から、通常炭素数3〜15、さらには3〜10が好ましく、特には4〜6が好ましく、殊には炭素数4の酢酸ビニルが好ましく用いられる。これらは単独で、もしくは複数種を同時に用いてもよい。
また、本発明においては、上記成分以外にも、共重合可能な不飽和モノマーをビニルエステル系モノマーに対して0.5〜10モル%の割合で共重合していてもよく、例えばエチレン、プロピレン、イソブチレン、α−オクテン、α−ドデセン、α−オクタデセン等のオレフィン類、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸等の不飽和酸類あるいはその塩、あるいはモノアルキルエステル類またはジアルキルエステル類、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のシアン化ビニル類、、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアクリルアミド類、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド等のモノあるいはジアルキル置換アクリルアミド類、アクリルアミドアルカンスルホン酸類あるいはその塩、2−メタクリルアミドアルカンスルホン酸類あるいはその塩、アクリルアミドアルキルアミン類、メタクリルアミドアルキルアミン類のあるいはその酸塩あるいはN−アクリルアミドメチルトリメチルアンモニウムクロライド、N−アクリルアミドエチルトリメチルアンモニウムクロライド、N−アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、2−アクリロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、2−メタクリロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、メタアリルトリメチルアンモニウムクロライド、3−ブテントリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルジアリルアンモニウムクロリド、ジエチルジアリルアンモニウムクロライド等その4級塩類またはカチオン基含有不飽和化合物類などのアクリルアミド誘導体またはメタクリルアミド誘導体、N−ビニルピロリドン等の環状ビニルアミド類、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド等のN−ビニルアミド類、エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸類あるいはその塩、アルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、アルコキシアルキルビニルエーテル等のビニルエーテル類、ジメチルアリルビニルケトン、酢酸アリル、塩化アリル、アリルアルコール、ジメチルアリルアルコール等のアリル化合物類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル類、ポリオキシエチレンビニルエーテル、ポリオキシプロピレンビニルエーテル等のポリオキシエチレンビニルエーテル類、ポリオキシエチレン(メタ)アリルエーテル、ポリオキシプロピレン(メタ)アリルエーテル等のポリオキシアルキレン(メタ)アリルエーテル類、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレン(メタ)アクリレート類、ポリオキシエチレン(メタ)アクリルアミド、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリルアミド等のポリオキシアルキレン(メタ)アクリルアミド類、またはポリオキシエチレン(1−(メタ)アクリルアミド−1,1−ジメチルプロピル)エステル等これらのエステル類、ポリオキシエチレンビニルアミン、ポリオキシプロピレンビニルアミン当のポリオキシアルキレンビニルアミン類、ポリオキシエチレンアリルアミン、ポリオキシプロピレンアリルアミン、等のポリオキシアルキレンアリルアミン類、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、メタアリルトリメチルアンモニウムクロライド等のカチオン基含有不飽和化合物類、ビニルトリメトキシシラン、ビニルジメトキシラウリロキシシラン等のケイ素含有不飽和化合物類、3,4−ジアシロキシ−1−ブテン等のアセトアセチル基含有不飽和化合物類、ビニルエチレンカーボネート等の不飽和カーボネート類、2,2−ジアルキル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン等のヘテロ元素含有不飽和環状化合物等が挙げられ、これらを単独で、もしくは複数種を同時に用いても良い。これらは生産効率および生成物の安定性の点から、通常炭素数2〜30であり、さらには炭素数2〜15が好ましく、特には2〜10が好ましい。
本発明において、ビニルエステル系モノマー(B)に対する一般式(1)で表される化合物(A)の共重合割合は0.1〜15モル%であり、さらには1〜12モル%、特には2〜10モル%、殊には3〜8モル%が好ましい。かかる割合が少なすぎた場合には、式(2)の構造単位を有するPVA系樹脂の水溶性、水溶液の粘度安定性、高速塗工性、フィルムとしたときの延伸性、ガスバリア性、各種架橋剤との反応性、水性エマルジョン重合用の乳化剤として用いたときのエマルジョンの重合安定性や保存安定性が得られないという傾向がある。多すぎた場合には共重合体の目的とする重合度が得られない場合やケン化工程で生産性が低下するという問題が発生する場合があるが、敢えて低重合度のPVA系樹脂を製造するという点では好ましい。
一般式(1)で表される化合物(A)と上記のビニルエステル系モノマー(B)、さらには他のモノマーを共重合するに当たっては特に制限はなく、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、分散重合、または乳化重合等の公知の方法を採用することができるが、通常は溶液重合が行われる。
かかる共重合で用いられる溶媒としては、通常、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロパノール、ブタノール等の炭素数1〜4の脂肪族アルコールやアセトン、メチルエチルケトン等のケトン類等が挙げられ、工業的にはメタノールが好適に使用される。
かかる溶媒の使用量は目的とする共重合体の重合度に合わせて溶媒の連鎖移動定数を考慮して適宜選択すればよく、例えば、溶媒がメタノールの時はS(溶媒)/M(モノマー)=0〜10(重量比)、好ましくは0.01〜3(重量比)、さらには0.04〜1.5程度の範囲から選択される。溶媒の重量比が高くなりすぎた場合には共重合体の目的とする重合度が得られがたくなったり、生産性が低下したりする傾向がある。
また、共重合に当たっては重合触媒が用いられ、かかる重合触媒としては、例えば2,2′−アゾビス−(2,4,4−トリメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、等のアゾ化合物類、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーピバレ−ト等のアルキルパーエステル類、ビス−(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシ−ジ−カーボネート、ジ−シクロヘキシルパーオキシ−ジ−カーボネート、ビス(2−エチルヘキシル)ジ−sec−ブチルパーオキシ−ジ−カーボネート、ジ−イソプロピルパーオキシ−ジ−カーボネート等のパーオキシ−ジ−カーボネート類、アセチルパーオキシド、ジ−ラウロイルパーオキシド、ジ−デカノイルパーオキシド、ジ−オクタノイルパーオキシド、ジ−プロピルパーオキシド、ジ−ベンゾイルパーオキシド等のパーオキシド類等の、公知のラジカル重合触媒が挙げられる。また、2,2′−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビス−(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等の低温活性ラジカル重合触媒等のラジカル開始剤を挙げることができる。これら重合触媒は単独で、または2種以上を同時に用いることができる。
また、重合触媒の使用量は触媒の種類により異なり一概には決められないが、重合速度に応じて任意に選択されるが、ビニルエステル系モノマーに対して通常0.01〜0.7モル%が好ましく、特には0.05〜0.5モル%が好ましい。
本発明における重合温度は、通常、30〜200℃、好ましくは35〜150℃、特には40〜80℃の範囲で行われ、かかる温度が低すぎる場合には重合が良好に進行せず、一方、高すぎる場合には重合度が上がりにくい傾向がある。用いる溶媒の沸点で反応を行うことも、重合反応熱を気化熱で適度に除きながら反応を行うことが出来るため好ましい。重合温度は重合終了まで必ずしも一定に保つ必要はなく、重合の進行とともに変動してもかまわない。
重合圧力は、通常、常圧で行われるが、加圧下で行っても良い。重合時間は、重合方式や重合条件により異なるが、通常10分〜40時間、好ましくは1時間〜30時間程度である。重合率は、通常1〜99%、好ましくは20〜95%、特には30〜90%の範囲で行われ、かかる重合率が高すぎた場合には、反応系の粘度が上がりすぎ、その後の処理が困難となる傾向があり、低すぎた場合には反応効率が低下する傾向がある。
重合方式は公知の方法のいずれでもよく、例えば、[1]重合缶に一般式(1)で表される化合物(A)およびビニルエステル系モノマー(B)、重合触媒および溶媒を仕込みこれを昇温させて重合を行う方法(一括仕込み法)、[2]重合缶に両モノマーおよび溶媒を仕込み、重合温度に昇温した後、これに重合触媒を供給し重合を行う方法(一括仕込み法)、[3]重合缶に重合触媒および溶媒を仕込み、これに重合条件下、両モノマーを別々または一緒に(滴下)供給して重合を行う方法(分割供給法)、[4]重合缶に溶媒と重合触媒および一方のモノマーを仕込み、重合条件下、これに他方のモノマーを滴下供給して重合する方法、または、この際、溶媒の一部および/または重合触媒を他方のモノマーと一緒に供給する方法(分割供給法)が挙げられる。
得られた共重合体は次いでケン化されるのであるが、このケン化反応により、(A)成分と(B)成分のエステルの両方が加水分解され、(A)成分は前記一般式(2)で示されるような1,2−グリコール構造をとる。かかるケン化にあたっては上記で得られた共重合体をアルコールまたは含水アルコールに溶解し、アルカリ触媒または酸触媒を用いて行われる。アルコールとしてはメタノール、エタノール、プロパノール、tert−ブタノール等の炭素数1〜4の脂肪族アルコール類が挙げられるが、中でもメタノールが特に好ましく用いられる。アルコール中の共重合体の濃度は系の粘度により適宜選択されるが、通常は10〜70重量%の範囲から選ばれる。ケン化に使用される触媒としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、カリウムメチラート、リチウムメチラート等のアルカリ金属の水酸化物やアルコラートの如きアルコキシド類、およびこれらのアルカリ触媒や、硫酸、塩酸、硝酸、メタスルフォン酸、ゼオライト、カチオン交換樹脂等の酸触媒が挙げられ、中でも水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物が好ましい。
かかるケン化触媒の使用量については、ケン化方法、目標とするケン化度等により適宜選択されるが、通常、一般式(1)で表される化合物(A)およびビニルエステル系モノマー(B)1モルに対して通常0.1〜100ミリモル、好ましくは1〜50ミリモル、特には2〜20ミリモルの割合が適当である。ケン化温度は特に制限されず、通常は10〜60℃、更には20〜50℃の範囲から選ぶのが好ましい。
ケン化反応後の混合物は、通常、常法に従って、目的の共重合体を固液分離し、次いで乾燥することにより回収される。
本発明において製造されるPVA系樹脂における上記一般式(2)で示される1,2−ジオール構造単位の含有量は、使用目的により適宜選択されるが、仕込み量に対応し、通常0.1〜15モル%であり、さらには1〜12モル%、特には2〜10モル%、殊には3〜8モル%である。かかる1,2−ジオール構造単位の含有量が少なすぎた場合には、水溶性、水溶液の粘度安定性、高速塗工性、フィルムとしたときの延伸性、ガスバリア性、各種架橋剤との反応性、水性エマルジョン重合用の乳化剤として用いたときのエマルジョンの重合安定性や保存安定性等の効果が発揮されない傾向があり、多すぎた場合にはPVA系樹脂の重合度が低くなりすぎ、その結果としてケン化工程での生産性が低下する傾向にある。
また、平均重合度(JIS K6726に準拠して測定)は使用目的により適宜選択されるが、通常100〜3000、さらには150〜2600、特には200〜2200である。かかる平均重合度が低すぎた場合には、塗膜やフィルムとした場合の強度が低くなる傾向があり、高すぎた場合には上記一般式(2)で示される構造単位を多く導入することが困難となる傾向がある。
ケン化度(JISK6726に準拠して測定。残存酢酸ビニルおよび残存する一般式(1)で表される化合物(A)の加水分解に要するアルカリ消費量で分析される)は使用目的により適宜選択されるが、通常は60モル%以上、さらには70モル%以上、特には80モル%以上が好ましく、かかるケン化度が低すぎた場合には水溶性が低下し、取り扱い性が低下する傾向がある。
かくして本発明の製造方法により、1,2−ジオール構造単位を含有するPVA系樹脂が得られるのであるが、かかる樹脂は公知の方法にてヒドロキシアルキルエーテル化、ホルマール化、アセタール化、ブチラール化、ウレタン化、アセト酢酸エステル化、スルホン化、カルボキシル化等の後反応を行っても良く、いずれも従来技術で得られるPVA系樹脂に比べ、高い反応性を示すと期待できる。
本発明では、任意のタイミングで1,2−ジオール構造単位を含有するPVA系樹脂に添加剤を含有させても良い。添加剤としては、着色剤、染料、消泡剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、界面活性剤等があり、また、ステアリン酸アミド等の飽和脂肪族アミド、オレイン酸アミド等の不飽和脂肪酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド等のビス脂肪酸アミド、低分子量ポリオレフィン等の公知の滑剤、離型剤、エチレングリコール、グリセリン、ヘキサンジオール等の多価アルコール、特には脂肪族多価アルコール等の公知の可塑剤、酢酸、リン酸等の酸類およびそのアルカリ金属、アルカリ土類金属等の金属塩、また、金属酸化物および水酸化物等の金属化合物、ホウ酸またはその金属塩等のホウ素化合物など、公知の熱安定剤を含有させてもよい。
かかる樹脂は、水溶性と低温時の溶液安定性に優れるという特性を有するが、さらに本発明においては、1,2−ジオール構造単位含有率の高い樹脂でも効率よく得ることができることから、架橋剤等の効果をより顕著に得ることが出来るという新たな特性が期待できるものである。かかる樹脂は、乳化剤、懸濁剤、界面活性剤、繊維加工材、各種バインダー、紙加工剤、フィルム、接着剤等に有用である。
本発明における1,2−ジオール構造単位を含有するPVA系樹脂の製造法は、重合反応中、反応溶液が均一となり、モノマーの反応効率に優れるため、1,2−ジオール構造単位含有率の高い樹脂でもモノマーのロスが少なく、効率よく得ることができ、さらに工業的な製造においても重合反応後の移送配管および脱モノマーのための蒸留塔の汚染がないため、汚染物の製品への混入や、同じ構造で続けて他品種のPVA系樹脂を製造する際のコンタミを起こすことがなく、品質の良好なポリマーを生産性、経済性よく得ることが出来る。
以下に、本発明を実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、実施例の記載に限定されるものではない。
なお、例中「部」「%」とあるのは、断りのない限り重量基準を意味する。
実施例1
グリセリンモノアリルエーテルのアセチル化
還流冷却器を備えた反応缶にグリセリンモノアリルエーテル80部、無水酢酸310部(グリセリンモノアリルエーテルに対し5倍モル)を仕込み、120℃で5時間反応を行った。反応混合液にメタノールを100部加え、エバポレーター減圧ポンプを用いて減圧濃縮し、減圧度12mmHg、内温130℃の減圧蒸留により、2,3−ジアセトキシ−1−アリルオキシプロパン(グリセリンモノアリルエーテルの酢酸ジエステル)110部を得た。
酢酸ビニルと2,3−ジアセトキシ−1−アリルオキシプロパンの共重合
還流冷却器、滴下漏斗、撹拌機を備えた反応缶に、酢酸ビニル1200部、メタノール300部、2,3−ジアセトキシ−1−アリルオキシプロパン90.4部(酢酸ビニルに対して3モル%)を仕込み、2,2′−アゾビスイソブチロニトリルを0.15モル%(対仕込み酢酸ビニル)投入し、撹拌しながら窒素気流下で温度を70℃まで上昇させて重合を開始した。2.8時間後、5時間後、6.9時間後にそれぞれ酢酸ビニルに対して0.1モル%のアゾビスイソブチロニトリルを追加投入し、酢酸ビニルの重合率が84.3%となった時点で、m−ジニトロベンゼンおよび希釈・冷却用メタノールを添加して重合を終了した。このときの共重合液体は透明であり、反応器具内壁に汚れ(ゲル状物の付着等)は見られなかった。
続いて、メタノール蒸気を吹き込む方法により未反応の酢酸ビニルモノマーを系外に除去し共重合体のメタノール溶液を得た。このとき、液体は透明であり、反応器具内壁および蒸留塔内に汚れ(ゲル状物の付着等)は見られなかった。
次いで、該溶液をメタノールで希釈して濃度40%に調整してニーダーに仕込み、溶液温度を40℃に保ちながら、水酸化ナトリウムの2%メタノール溶液を共重合体中の酢酸ビニル構造単位1モルに対して8ミリモルとなる割合で加えてケン化を行った。ケン化が進行すると共にケン化物が析出し、粒子状となった時点で、濾別し、メタノールでよく洗浄して熱風乾燥機中で乾燥し、PVA系樹脂を得た。
得られたPVA系樹脂の平均重合度は、JIS K6726に準して分析を行ったところ650であり、ケン化度は、残存酢酸ビニルの加水分解に要するアルカリ消費量で分析を行ったところ99.7モル%であった。また、1,2−ジオール構造単位の含有量は完全ケン化した後1H−NMRで測定し、算出したところ3.0モル%であった。
なお、NMR測定には日本ブルカー社製「AVANCE DPX400」を用い、内部標準はテトラメチルシランを用いた。
比較例1
実施例1において、2,3−ジアセトキシ−1−アリルオキシプロパンにかえてグリセリンモノアリルエーテルを55.3部(酢酸ビニルに対して3モル%)用い、酢酸ビニルの重合度が80.6%となった時点でm−ジニトロベンゼンおよび希釈・冷却用メタノールを添加して重合を終了した以外は、実施例1と同様にしてPVA系樹脂を得た。
重合終了後の共重合液体は白濁していた。
続いて、メタノール蒸気を吹き込む方法により未反応の酢酸ビニルモノマーを系外に除去した。その後の共重合体のメタノール溶液は透明であったが、反応器具内壁および蒸留塔内にゲル状物の付着が見られた。
得られたPVA系樹脂の平均重合度は、JIS K6726に準して分析を行ったところ630であり、ケン化度は、残存酢酸ビニルの加水分解に要するアルカリ消費量で分析を行ったところ99.5モル%であった。また、1,2−ジオール構造単位の含有量は完全ケン化した後1H−NMRで測定し、算出したところ2.6モル%であった。
なお、NMR測定には日本ブルカー社製「AVANCE DPX400」を用い、内部標準はテトラメチルシランを用いた。
本発明の新規ビニルアルコール系樹脂の製造方法は、重合反応中、反応溶液が均一となり、モノマーの反応効率に優れるため、1,2−ジオール構造単位含有率の高い樹脂でもモノマーのロスが少なく、効率よく得ることができ、さらに工業的な製造においても重合反応後の移送配管および脱モノマーのための蒸留塔の汚染がなく、汚染物の製品への混入や、同じ構造で続けて他品種のPVA系樹脂を製造する際のコンタミを起こさず、品質の良好なポリマーを生産性、経済性良く得ることが出来る。

Claims (1)

  1. 下記一般式(1)で表される化合物(A)ビニルエステル系モノマー(B)に対して0.1〜15モル%の共重合割合で共重合させ、次いで得られた共重合体をケン化することを特徴とする、側鎖に1,2−ジオール構造を有するポリビニルアルコール系樹脂の製造方法。
    Figure 0005052078
    [式中、R およびR10は炭化水素基を示す。]
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