JP4592161B2 - 酢酸ビニル系重合体の製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、酢酸ビニル系重合体の製造法に関し、更に詳しくは、透明性や溶解性に優れ、重合度のムラの少ない酢酸ビニル系重合体ケン化物を得るのに有用な酢酸ビニル系重合体の製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ポリ酢酸ビニルやエチレン−酢酸ビニル共重合体等の酢酸ビニル系重合体を得るに当たっては、酢酸ビニルモノマー或いは該モノマーとエチレン等の共重合可能なモノマーとを重合溶媒と共に、重合(反応)缶内で加圧下で溶液重合、団塊重合、懸濁重合等の方法により重合されており、これらの重合法において、より良好な酢酸ビニル系重合体を得ることが検討されている。
【0003】
例えば、特開平9−316110号公報には、未溶解物が少なく、透明性が向上し、臭気が少ないポリ酢酸ビニルケン化物を得る目的で、60℃における半減期が10〜110分の有機過酸化物を重合触媒として用い、重合液中にヒドロキシカルボン酸を共存させることが記載され、また、特開平9−71620号公報には、最終的に着色が少なく、成形時にゲル状ブツの少ないエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物を得る目的で60℃のメタノール中での半減期が5時間以下の重合触媒を用いて重合後に共役ポリエン化合物を添加することが記載されている。
【0004】
また、特公平2−52922号公報には、エチレン−酢酸ビニル共重合体を連続的に製造する方法が開示され、その中で重合触媒の仕込みについて、通常、重合触媒は重合槽内に仕込むべき溶剤の一部に溶解して仕込んで用いられる旨の記載がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の特開平9−316110号公報開示技術や特開平9−71620号公報開示技術では、長時間製造を行った時には得られる(共)重合体に重合度のムラが生じることもあり、また、最近の市場の更なる品質向上及び品質の安定要求に対しても充分なものでなく、長期間で高品質なものが安定して製造できる酢酸ビニル系重合体の製造法が望まれるところであり、また、特公平2−52922号公報開示技術についても本発明者が上記の重合触媒の仕込み方法について、詳細に検討した結果、必ずしも重合触媒の重合溶媒(炭素数1〜4個の低級脂肪族アルコール)への溶解性は良くなく、重合触媒が未溶解で仕込まれ、局部的に高濃度部分ができ、架橋物(ゲル)が生じやすくなってスケールの発生にもつながる恐れがあることが判明し、更なる改良が必要となった。
すなわち、本発明は、透明性や溶解性に優れ、重合度のムラの少ない酢酸ビニル系重合体ケン化物を得るのに有用な酢酸ビニル系重合体の製造法を目的とするものである。
【0006】
【問題を解決するための手段】
そこで、本発明者は上記の目的を達成するために重合触媒の仕込み方法について鋭意研究を重ねた結果、酢酸ビニルモノマーを単独重合又は共重合(エチレンと共重合する時のエチレンの共重合割合は10モル%未満)するにあたり、予め重合触媒が配合された酢酸ビニルモノマーを重合系に仕込み、ヒドロキシラクトン化合物を共存させて重合を行ったり、或いは酢酸ビニルモノマーを単独重合又は共重合するにあたり、重合触媒が配合された酢酸ビニルモノマーが重合溶媒に溶解させられてなる仕込み液を重合系に仕込み、ヒドロキシラクトン化合物を共存させて重合を行ったり、予め酢酸ビニルモノマーと重合溶媒が混合された仕込み液に重合触媒を配合した後に重合系に仕込み、ヒドロキシラクトン化合物を共存させて重合を行う時、上記の目的を達成することができることを見出して本発明を完成するに至った。
【0007】
更に、本発明においては、重合触媒が配合された酢酸ビニルモノマー或いは仕込み液の重合系への仕込み温度が下記の条件を満足すること、重合触媒が、60℃の半減期が5時間以下の有機過酸化物であることも好ましい実施態様である。(触媒の10時間半減期温度−80)/log(触媒の10時間半減期温度)≧仕込み温度
【0008】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。
通常、酢酸ビニル系重合体を製造するにあたっては、酢酸ビニルモノマーまたは酢酸ビニルモノマーと他のモノマー、重合溶媒及び重合触媒(重合開始剤)等を重合(反応)缶内に仕込んで重合を行うのであるが、この時の仕込み方法としては、酢酸ビニルモノマー、重合溶媒及び重合触媒(重合開始剤)等の混合液である重合溶液を重合缶に仕込むのが一般的であるが、本発明においては、かかる仕込み方法において、1)予め重合触媒が配合された酢酸ビニルモノマーを重合系(重合缶)に仕込むこと、2)重合触媒が配合された酢酸ビニルモノマーが重合溶媒に溶解させられてなる仕込み液を重合系に仕込むこと、或いは3)予め酢酸ビニルモノマーと重合溶媒が混合された仕込み液に重合触媒を配合した後に重合缶に仕込むことを最大の特徴とするもので、この仕込み方法を満足すれば、他の条件については、公知の方法を採用することができ、例えば、連続式、回分式のいずれであっても良く、各重合方式に応じて適宜、他の重合条件を設定すればよい。
【0009】
より具体的に説明すれば、重合時に用いる溶媒(重合溶媒)としては、炭素数4以下のアルコール又は炭素数4以下のアルコールを主とする混合溶媒が好適に用いられ、該アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール等が挙げられるが、中でもメタノールが好適に用いられ、該溶媒の量としては、酢酸ビニル100重量部に対して、1〜60重量部(更には1〜50重量部)が好ましく、かかる溶媒の量が1重量部未満では、重合液粘度が高く除熱が難しくなって重合の制御が困難となり、逆に60重量部を越えると、得られる酢酸ビニル系重合体は重合度が低く、物性的に脆くなって好ましくない。
【0010】
また、本発明で用いられる重合触媒としては、ラジカル開始剤であれば特に制限なく用いられるが、好ましくは2,2′−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビス−(2,4,4−トリメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス−(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーピバレ−ト等のアルキルパーエステル類、ビス−(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシ−ジ−カーボネート、ジ−シクロヘキシルパーオキシ−ジ−カーボネート、ビス(2−エチルヘキシル)ジ−sec−ブチルパーオキシ−ジ−カーボネート、ジ−イソプロピルパーオキシ−ジ−カーボネート等のパーオキシ−ジ−カーボネート類、アセチルパーオキシド、ジ−ラウロイルパーオキシド、ジ−デカノイルパーオキシド、ジ−オクタノイルパーオキシド、ジ−プロピルパーオキシド等のパーオキシド類などを挙げることができる。
【0011】
本発明においては、酢酸ビニル系重合体の製造(重合)時のスケール防止効果や得られる重合体のケン化物の溶融成形時の臭気等を考慮すれば、60℃の半減期が5時間以下の有機過酸化物が好適に用いられ、具体的には、t−ブチルパーオキシネオデカノエート[半減期1.8時間]、t−ブチルパーオキシピバレート[半減期5.0時間]、α,α’ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン[半減期0.5時間]、クミルパーオキシネオデカノエート[半減期0.5時間]、1,1,3,3,−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート[半減期0.7時間]、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート[半減期0.8時間]、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート[半減期1.4時間]、t−ヘキシルパーオキシピバレート[半減期4.2時間]等のパーオキシエステル類、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート[半減期0.7時間]、ジ−iso−プロピルパーオキシジカーボネート[半減期0.6時間]、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート[半減期0.7時間]、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート[半減期0.7時間]、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート[半減期0.9時間]、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート[半減期0.9時間]、ジメトキシブチルパーオキシジカーボネート[半減期1.6時間]、ジ(3−メチル−3−メトキシブチルパーオキシ)ジカーボネート[半減期1.9時間]等のパーオキシジカーボネート類、3,3,5−トリメチルヘキサノイルパーオキシド[半減期9.2時間]、ジイソブチリルパーオキシド[半減期0.3時間]等のジアシルパーオキシド類などを挙げることができる。
【0012】
本発明においては、1)予め重合触媒が配合された酢酸ビニルモノマーを重合缶に仕込むこと、2)重合触媒が配合された酢酸ビニルモノマーが重合溶媒に溶解させられてなる仕込み液を重合系に仕込むこと、或いは3)予め酢酸ビニルモノマーと重合溶媒が混合された仕込み液に重合触媒を配合した後に重合缶に仕込むことを特徴とするもので、先ず、1)の方法について、より具体的に説明する。
【0013】
1)の方法は、重合触媒を予め酢酸ビニルモノマーに溶解しておくこと(本発明では、重合触媒が溶解された酢酸ビニルモノマーをモノマー組成物と称することがある)が必要で、溶解させる重合触媒の量としては、酢酸ビニルモノマー100重量部に対して、10重量部以下(更には7重量部以下、特に5重量部以下)が好ましく、10重量部を越えると、ゲルが発生しやすくなって好ましくない。
【0014】
尚、上記の重合触媒は、必ずしも使用する酢酸ビニルモノマーの全量に溶解させる必要はなく、上記の溶解量の範囲において、一部の酢酸ビニルモノマーに溶解させればよい。その際、溶解に使用しなかった酢酸ビニルモノマーは、単独又は重合触媒と合わせて仕込めば良い。
また、重合触媒を酢酸ビニルモノマーに溶解させるにあたっては、特に限定されないが、仕込み時の液温以下で溶解させることが好ましい。
【0015】
次に、2)の方法について説明する。
2)の方法は、上記の1)の方法において、モノマー組成物に重合溶媒を配合して仕込み液とした後に、重合系に仕込むことにより行うことができる。
モノマー組成物中の重合触媒の量は、酢酸ビニルモノマー100重量部に対して20重量部以下(更には15重量部以下、特に10重量部以下)が好ましく、かかる量が20重量部を越えるとゲルが発生し易くなって好ましくない。
1)の方法と同様に、重合触媒は、必ずしも使用する酢酸ビニルモノマー全量に溶解させる必要はなく、上記の溶解量の範囲において、一部の酢酸ビニルモノマーに溶解させても良い。
【0016】
また、上記のモノマー組成物も、必ずしも使用する重合溶媒の全量を配合する必要はなく、重合溶媒の一部を配合することも可能である。その際、重合触媒の溶解に使用しなかった酢酸ビニルモノマーとモノマー組成物に配合しなかった重合溶媒は、それぞれ単独若しくは混合して仕込めばよい。
【0017】
更に、3)の方法について説明する。
3)の方法は、予め酢酸ビニルモノマーと重合溶媒が混合された仕込み液に重合触媒を配合することが必要で、酢酸ビニルモノマーと重合溶媒の混合割合は、特に限定されない。
【0018】
得られた仕込み液に配合される重合触媒の量は、上記の2)の量と同じでよい。尚、必ずしも酢酸ビニルモノマーと重合溶媒が全量混合された仕込み液に重合触媒を配合する必要はなく、重合触媒の溶解量の範囲内であれば、酢酸ビニルモノマーを全量混合する必要はない。又は、重合溶媒も任意の量を混合すれば良い。
本発明においては、上記の1)〜3)のいずれかの方法により、酢酸ビニルモノマーと重合触媒が配合された仕込み液を調製しておき、かかる仕込み液を重合系に供給して重合を開始するものである。
【0019】
重合にあたっては、上記の1)の方法においては、仕込み液(酢酸ビニルモノマーと重合触媒)と重合溶媒を重合系に仕込めば良く、仕込む順序については特に限定されないが、上記の2)の方法を採用することが好ましい。
即ち、モノマー組成物と重合溶媒を予め混合して仕込み液として重合系に仕込むことが好ましい。
【0020】
また、3)の方法については、仕込み液(酢酸ビニルモノマー+重合溶媒+重合触媒)をそのまま重合系に仕込めばよい。
尚、場合によっては、いずれの方法においても、酢酸ビニルモノマー、重合溶媒の一部を追加仕込みすることも可能である。
【0021】
本発明においては、上記のいずれの方法においても、仕込み液の仕込み温度が下記の条件を満足するように調整することが好ましい。
(触媒の10時間半減期温度−80)/log(触媒の10時間半減期温度)≧仕込み温度
【0022】
かくして、重合缶内に酢酸ビニルモノマー、重合触媒及び重合溶媒が仕込まれて重合が始まるわけであるが、本発明においては、この重合時にヒドロキシラクトン化合物を共存させるもので、該化合物としては、分子内にラクトン環と水酸基を有する化合物であれば特に限定されず、例えば、L−アスコルビン酸、エリソルビン酸、グルコノデルタラクトン等を挙げることができ、好適にはL−アスコルビン酸、エリソルビン酸等が用いられる。
【0023】
かかるヒドロキシラクトン系化合物の使用量は、回分式及び連続式いずれの場合でも、酢酸ビニルモノマー100重量部に対して0.0001〜0.1重量部(更には0.0005〜0.05重量部、特には0.001〜0.03重量部)が好ましく、かかる使用量が0.0001重量部未満では、得られる酢酸ビニル系重合体ケン化物の色調が悪くなることがあり、逆に0.1重量部を越えると酢酸ビニルの重合を阻害する結果となって好ましくない。かかる化合物を重合系に仕込むにあたっては、特に限定はされないが、通常は低級脂肪族アルコールや酢酸ビニルモノマーを含む脂肪族エステルや水等の溶媒又はこれらの混合溶媒で希釈されて重合反応系に仕込まれる。
【0024】
重合時の重合温度は特に限定されないが、通常は40〜80℃(更には55〜80℃)が好ましく、かかる温度が40℃未満では重合に長時間を要し、重合時間を短縮しようとすると触媒量が多量に必要となり、逆に80℃を越えると重合制御が困難となり好ましくない。
【0025】
また、重合時間は、回分式の場合、4〜10時間(更には6〜9時間)が好ましく、該重合時間が4時間未満では重合温度を高くしたり、触媒量を多く設定しなければならず、逆に10時間を越えると生産性の面で問題があり好ましくない。連続式の場合、重合缶内での平均滞留時間は2〜8時間(更には2〜6時間)が好ましく、該滞留時間が2時間未満では重合温度を高くしたり、触媒量を多く設定しなければならず、8時間を越えると生産性の面で問題があり好ましくない。
【0026】
重合率(酢酸ビニル)は生産性の面から重合制御が可能な範囲でできるだけ高く設定され、好ましくは20〜90%である。該重合率が20%未満では、生産性も面や未重合の酢酸ビニルモノマーが多量に存在する等の問題があり、逆に90%越えると重合制御が困難となり好ましくない。
【0027】
また、本発明の製造法においては、酢酸ビニルモノマー以外に、これらと共重合可能なエチレン性不飽和単量体を共重合成分として共重合させることも可能で、かかる単量体としては、例えばエチレン、プロピレン、イソブチレン、α−オクテン、α−ドデセン、α−オクタデセン等のオレフィン類、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸等の不飽和酸類あるいはその塩あるいはモノ又はジアルキルエステル等、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル類、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド類、エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸あるいはその塩、アルキルビニルエーテル類、N−アクリルアミドメチルトリメチルアンモニウムクロライド、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアリルビニルケトン、N−ビニルピロリドン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ポリオキシエチレン(メタ)アリルエーテル、ポリオキシプロピレン(メタ)アリルエーテルなどのポリオキシアルキレン(メタ)アリルエーテル、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレン(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレン(メタ)アクリルアミド、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリルアミド等のポリオキシアルキレン(メタ)アクリルアミド、ポリオキシエチレン(1−(メタ)アクリルアミド−1,1−ジメチルプロピル)エステル、ポリオキシエチレンビニルエーテル、ポリオキシプロピレンビニルエーテル、ポリオキシエチレンアリルアミン、ポリオキシプロピレンアリルアミン、ポリオキシエチレンビニルアミン、ポリオキシプロピレンビニルアミン等が挙げられる。
【0028】
かくして本発明の製造法で、透明性や溶解性に優れ、重合度のムラの少ない酢酸ビニル系重合体ケン化物を得るのに有用な酢酸ビニル系重合体が得られるわけであるが、かかる酢酸ビニル系重合体は、接着剤、粘着剤、塗料、繊維・織物の加工剤、紙・皮革の加工剤、各種材料のバインダー、セメント・モルタルの混和液等にも利用することができる。
かかる酢酸ビニル系重合体のケン化物を得るに当たっては、公知の方法を採用することができる。
【0029】
一例を挙げれば、得られた酢酸ビニル系重合体にケン化触媒を添加して、ケン化を行えばよい。
かかるケン化触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、カリウムメチラート等のアルカリ金属の水酸化物やアルコラートの如きアルカリ触媒や硫酸、p−トルエンスルホン酸、塩酸等の酸触媒を挙げることができ、好適には水酸化ナトリウムが用いられる。
【0030】
ケン化触媒の使用量は、該酢酸ビニル系重合体のビニルエステル単位に対して2〜20ミリモル%程度の範囲から選択すればよい。
ケン化温度は、通常は10〜70℃の範囲から選ぶことが好ましく、ケン化反応は、通常0.5〜3時間にわたって行なわれる。
【0031】
上記の如きケン化を行うに当たっては、連続式でもバッチ式でも行うことができ、かかるバッチ式のケン化度装置としては、ニーダー、リボンブレンダー等を挙げることができる。
かくして、透明性や溶解性に優れ、重合度のムラの少ない酢酸ビニル系重合体ケン化物が得られるのである。
【0032】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。尚、実施例中、「部」、「%」とあるのは、特に断りのない限り重量基準である。
【0033】
比較例2
酢酸ビニルモノマー100部に対して、予め重合触媒(ジ−iso−プロピルパーオキシジカーボネート[半減期0.6時間])0.012部を配合した仕込み液を調製して、かかる仕込み液の温度を−30℃にして、容量10lの撹拌機付き重合缶に仕込んで、重合溶媒としてメタノールを同時に仕込んで下記の要領で連続重合を行った。
【0034】
仕込み液の供給量 480g/hr
仕込み液の仕込み温度 −30℃
重合溶媒(メタノール)の供給量 60g/hr
重合温度 55℃
平均滞留時間 5hr
得られたポリ酢酸ビニルの重合率は40%であった。
【0035】
得られたポリ酢酸ビニルを定法でケン化を行って、ポリビニルアルコールを得て、かかるポリビニルアルコールの透明性、溶解性及び重合ムラを下記の要領で評価した。
【0036】
(透明性)
得られたポリビニルアルコールを4%の水溶液とし、分光光度計を用いて30℃で波長430nmにおける透過率A(%)を測定し、別途、該水溶液に用いた純水の透過率B(%)を同様に測定して、下記の式より透明度(%)を算出して透明性の評価を行った。
透明度(%)=透過率A+(100−透過率B)
尚、評価基準は以下に示す通りである。
◎・・・97%以上
○・・・94%以上で97%未満
△・・・90%以上で94%未満
×・・・90%未満
【0037】
(溶解性)
得られたポリビニルアルコールを5%の水溶液とし、90℃で1時間攪拌した後、目開きが45μmの金網で濾過して金網上に残った未溶解物の重量を測定して、該ポリビニルアルコール中に対する未溶解物の量(ppm)を算出して、溶解性の評価を行った。
尚、評価基準は以下に示す通りである。
◎・・・100ppm未満
○・・・100ppm以上で250ppm未満
△・・・250ppm以上で500ppm未満
×・・・500ppm以上
【0038】
(重合度ムラ)
得られたポリビニルアルコールの重合度を測定して、そのバラツキを調べた。
具体的には、連続重合で得られた酢酸ビニル系重合体に関しては、重合開始5時間目、15時間目、25時間目のそれぞれの酢酸ビニル系重合体をサンプリングし、それをそれぞれケン化してポリビニルアルコールとし、かかるポリビニルアルコールの重合度をそれぞれ測定して、重合開始5時間目の酢酸ビニル系重合体から得られたポリビニルアルコールの重合度を基準にして、15時間目及び25時間目の酢酸ビニル系重合体から得られたポリビニルアルコールの重合度のバラツキを調べて重合度ムラの評価を行った。また、バッチ重合で得られた酢酸ビニル系重合体に関しては、上記と同様に1バッチ目、5バッチ目、10バッチ目のそれぞれの酢酸ビニル系重合体をサンプリングし、それをそれぞれケン化してポリビニルアルコールとし、かかるポリビニルアルコールの重合度をそれぞれ測定して、1バッチ目の酢酸ビニル系重合体から得られたポリビニルアルコールの重合度を基準にして、5バッチ目及び10バッチ目の酢酸ビニル系重合体から得られたポリビニルアルコールの重合度のバラツキを調べて重合度ムラの評価を行った。かかる重合度の測定に当たっては、オストワルド粘度計で、0.8%水溶液の相対粘度より求めた。
尚、評価基準は以下に示す通りである。
◎・・・±5%未満
○・・・±5%以上で±10%未満
△・・・±10%以上で±15%未満
×・・・±15%以上
【0039】
実施例2
比較例2において、重合時にL−アスコルビン酸を共存させた以外は同様に重合を行って、同様に評価を行った。
尚、L−アスコルビン酸の共存量は、酢酸ビニルモノマー100部に対して0.004部となるように供給した。
【0040】
比較例3
比較例2において、エチレン圧力を8MPaにした以外は同様に重合を行って、同様に評価を行った。
【0041】
実施例4
実施例2において、エチレン圧力を8MPaにした以外は同様に重合を行って、同様に評価を行った。
【0042】
比較例4
比較例2の仕込み液を容量10lの撹拌機付き重合缶で、以下の条件でバッチ重合した。
仕込み液の仕込み量 3000g
仕込み液の仕込み温度 −30℃
重合溶媒(メタノール)の仕込み量 250g
重合温度 60℃
重合時間 6hr
得られたポリ酢酸ビニルの重合率は50%であった。
得られたポリ酢酸ビニルを比較例2と同様に評価を行った。
【0043】
実施例6
比較例4において、重合時にL−アスコルビン酸を共存させた以外は同様に重合を行って、同様に評価を行った。
尚、L−アスコルビン酸の共存量は酢酸ビニルモノマー100部に対して0.004部となるように供給した。
【0044】
比較例5
酢酸ビニルモノマー100部に対して、予め重合触媒(ジ−iso−プロピルパーオキシジカーボネート[半減期0.6時間])0.012部及び重合溶媒(メタノール)12.5部を配合した仕込み液を調製して、かかる仕込み液を用いて、比較例2と同じ要領で連続重合を行って、同様に評価を行った。
【0045】
実施例8
酢酸ビニルモノマー100部に対して、予め重合触媒(ジ−iso−プロピルパーオキシジカーボネート[半減期0.6時間])0.012部及び重合溶媒(メタノール)12.5部を配合した仕込み液を調製して、かかる仕込み液を用いて、実施例2と同じ要領で連続重合を行って、同様に評価を行った。
【0046】
比較例6
酢酸ビニルモノマー100部に対して、予め重合触媒(ジ−iso−プロピルパーオキシジカーボネート[半減期0.6時間])0.012部及び重合溶媒(メタノール)8.3部を配合した仕込み液を調製して、かかる仕込み液を用いて、比較例4と同じ要領でバッチ重合を行って、同様に評価を行った。
【0047】
比較例1
重合溶媒(メタノール)12.5部と重合触媒(ジ−iso−プロピルパーオキシジカーボネート[半減期0.6時間])0.012部を重合系に仕込むと同時に酢酸ビニルモノマー100部を仕込んで比較例2と同じ要領で連続重合を行って、同様に評価を行った。
実施例及び比較例の評価結果を表1に示す。
【0048】
〔表1〕
【0049】
【発明の効果】
本発明では、酢酸ビニルモノマーを単独重合又は共重合するにあたり、予め重合触媒が配合された酢酸ビニルモノマーを重合系に仕込み、ヒドロキシラクトンを共存させて重合を行ったり、或いは予め酢酸ビニルモノマーと重合溶媒が混合された仕込み液に重合触媒を配合した後に重合系に仕込み、ヒドロキシラクトンを共存させて重合を行っているため、透明性や溶解性に優れ、重合度のムラの少ない酢酸ビニル系重合体ケン化物を得るのに有用な酢酸ビニル系重合体を得ることができる。
Claims (5)
- 酢酸ビニルモノマーを単独重合又は共重合(エチレンと共重合する時のエチレンの共重合割合は10モル%未満)するにあたり、予め重合触媒が配合された酢酸ビニルモノマーを重合系に仕込み、ヒドロキシラクトン化合物を共存させて重合を行うことを特徴とする酢酸ビニル系重合体の製造法。
- 酢酸ビニルモノマーを単独重合又は共重合するにあたり、重合触媒が配合された酢酸ビニルモノマーが重合溶媒に溶解させられてなる仕込み液を重合系に仕込み、ヒドロキシラクトン化合物を共存させて重合を行うことを特徴とする酢酸ビニル系重合体の製造法。
- 酢酸ビニルモノマーを単独重合又は共重合するにあたり、予め酢酸ビニルモノマーと重合溶媒が混合された仕込み液に重合触媒を配合した後に重合系に仕込み、ヒドロキシラクトン化合物を共存させて重合を行うことを特徴とする酢酸ビニル系重合体の製造法。
- 重合触媒が配合された酢酸ビニルモノマー或いは仕込み液の重合系への仕込み温度が下記の条件を満足することを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の酢酸ビニル系重合体の製造法。
(触媒の10時間半減期温度−80)/log(触媒の10時間半減期温度)≧仕込み温度 - 重合触媒が、60℃の半減期が5時間以下の有機過酸化物であることを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の酢酸ビニル系重合体の製造法。
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