JP5634620B2 - 回転機の制御装置および回転機のインダクタンス測定方法 - Google Patents
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Description
従来の回転機のインダクタンス定数の測定には、回転機の回転子を拘束具などで固定した状態で、交流電力を印加してインダクタンス定数を測定していた。しかし、機械に接続されている回転機は、電気的定数測定のために回転機が回転すると、接続された機械が損傷するなどの問題があり、無回転で電気的定数を測定できる回転機の制御装置および電気的定数測定方法が求められていた。
また、特許文献2のインダクタンス比を用いてインダクタンスを算出する方法・装置では、Lq=K×Ldによってq軸インダクタンスを算出するため、インダクタンス比およびd軸インダクタンスが必要であり、インダクタンス比がインダクタンスの磁気飽和によって変化する回転機には適用できないという課題がある。
また、特許文献3の交流電流を用いたインダクタンスの演算装置・方法では、少なくとも交流電流を数周期にわたって回転機に流し続ける必要があり、測定時間中に回転機が微少に振動し、騒音が発生するという課題がある。さらに、インダクタンスの磁気飽和特性を測定するためには、交流電流の振幅を高くする必要があり、さらに大きな振動および騒音を引き起こす要因となる課題もある。
以下、本願発明の実施の形態1について、図に基づいて説明する。
図1は、この発明の実施の形態1に係る回転機の制御装置2を適用する回転機制御システム1の構成図、図2はインダクタンス演算部6の構成図、図3はインダクタンス測定処理手順図、図4はインダクタンス測定動作例を示す図、図5はインダクタンスの磁気飽和特性の測定結果を示す図である。
図1において、回転機の制御装置2を適用する回転機制御システム1は、回転機の制御装置2、回転機3および回転機3の電流を検出する電流検出部4から構成される。
回転機3は同期機であって、この実施の形態1では、永久磁石を用いた同期機を例として説明する。
回転機の制御装置2は、回転機3に制御用電圧を印加するインバータ等の電力変換器が相当する電圧印加部5、回転機3のインダクタンスを演算するインダクタンス演算部6、および回転機3駆動用およびインダクタンス測定用の電圧指令を生成する電圧指令生成部7から構成される。
電圧指令生成部7によって生成される電圧指令は回転二軸座標(以降dq軸と称する)上の電圧指令Vd*とVq*で構成し、電圧印加部5は、電圧指令生成部7が生成する電圧指令を元に、式(1)によって三相電圧指令(Vu*,Vv*,Vw*)を生成し、この電圧指令に基づき回転機3に電圧を印加する。なお、dq軸の同定には回転機3の回転子位置θが必要である。θは磁極位置検出器を備えた回転機3であれば、磁極位置検出器からの検出値を用いればよく、位置検出器を備えていない回転機3には特許文献[特許第4271397号]のように初期磁極の検出方法を用いることもできる。
インダクタンス演算器9は、dq軸上の電流Id,Iqおよび電圧指令Vd*,Vq*を用い、後述する演算方法に基づいてインダクタンスの演算を行う。
回転機3のインダクタンス測定処理が開始されると、ステップS101において、電圧指令生成部7が電圧指令を生成する。次にステップS102において、電圧指令が測定用電圧指令か決定し、測定用電圧指令であれば、ステップS103において回転機3の電流を検出する。次にステップS104において、電圧印加部5は電圧指令に基づく電圧を回転機3に印加する。電圧指令の印加終了後、ステップS105において、回転機3の電流を検出する。次にステップS106において、ステップS103とS105で検出した回転機電流に基づき、インダクタンス演算部6が回転機3のインダクタンスの演算を行う。
ステップS108において、最初に設定したn個の電圧指令の印加が終了したか確認し、終了していれば、インダクタンス測定処理を終了する。終了していなければ、ステップS101に戻る。
ステップS102において、電圧指令が測定用電圧指令でない場合は、ステップS107へ進み、回転機電流の検出を行わず、電圧指令の印加のみを行い、ステップS108へ進む。
インダクタンス演算部6は、生成した電圧指令のうち、インダクタンスの測定用として任意の電圧指令を選択し(以下、測定用電圧指令と称する)、測定用電圧指令の電圧が印加される前後の回転機電流値を用いて、インダクタンスの演算を行う。測定用電圧指令は、一つである必要はなく、n個の電圧指令から測定用電圧指令を複数個選択して、夫々についてインダクタンスを演算することもできる。
ここで、V*およびI1、I2は前述のとおり、dq軸にて表される。図4では、点I1に対応するd軸電流値をid1、点I2に対応するd軸電流値をid2と表している。
実施の形態1では、夫々d軸上に流すため、それぞれId1、Id2、Vd*と表す。
実施の形態1において、回転機3は、永久磁石を用いた同期機であり、dq軸上の電圧方程式として一般的に次の式(3)、(4)が成り立つ。
vd=R×id+PLd×id−ωr×Lq×iq (3)
vq=R×iq+PLq×iq+ωr×(Ld×id+φf) (4)
但し、
vd:回転機3の電圧のd軸成分
vq:回転機3の電圧のq軸成分
R:回転機3の巻線抵抗
Ld:回転機3のd軸インダクタンス
Lq:回転機3のq軸インダクタンス
φf:回転機3の回転子磁束振幅
P:微分演算子
ωr:回転機3の回転子角速度
vd=R×id+PLd×id (5)
vq=R×iq+PLq×iq (6)
vd=R×id+L′d(id)×(did/dt) (8)
vq=R×iq+L′q(iq)×(diq/dt) (9)
但し、
L′d(id)=∫(vd−R×id)×(Δt/Δid) (12)
L′q(iq)=∫(vq−R×iq)×(Δt/Δiq) (13)
L′d(id)=∫vd×(Δt/Δid) (14)
L′q(iq)=∫vq×(Δt/Δiq) (15)
例えば、L(i)を電流に関する一次関数で表現すると、L(i)=a×i+b(a、bは任意の整数)で表すことができる。L′(i)は,式(10)から
L′(i)=a×i+b+a×i=2×a×i+bとなり、L(i)は、L′(i)の一次関数の傾きaを1/2倍にすることで表現できる。
L′(i)を求めるには、例えば、図5の複数の電流点で求めた電流−インダクタンスの測定結果を用いて、最小二乗法などを用いて近似関数で計算することができる。もちろん、近似する関数式は一次関数に限らずとも上述の方法でL(i)を二次関数、三次関数として演算することができる。
以下、本願発明の実施の形態2について、図に基づいて説明する。図6はインダクタンス測定処理手順図、図7はインダクタンス測定動作例を示す図である。
実施の形態2に係る回転機の制御装置2の構成は、実施の形態1と同様であり、インダクタンス演算部6と電圧指令生成部7の処理が異なる。
実施の形態2では、回転機3のq軸に電圧を印加し、q軸のインダクタンスを測定する。実施の形態1で説明した要領でq軸に電圧を印加すると、トルク軸であるq軸に長時間電流が流れるため、回転子に回転トルクがかかり、振動および騒音が発生する恐れがある。そこで、実施の形態1において生成する電圧指令の数をn=2として、電圧印加時間を短縮し、回転トルクによる長時間の振動および騒音の発生を抑制する。
これにより、実施の形態1に対して、回転機3に電流が流れる時間を最短にできることから、回転トルクによる振動および騒音の発生を最小限に抑制することができる。
回転機3のインダクタンス測定処理が開始されると、ステップS201において、電圧指令生成部7が生成したインダクタンス測定準備用の第一の電圧指令に基づく電圧を電圧印加部5は回転機3に印加する。次にステップS202において、回転機3の電流を検出する。次にステップS203において、電圧印加部5は測定用の第二の電圧指令に基づく電圧を回転機3に印加する。次にステップS204において、電流検出部4は回転機3の電流を検出する。次にステップS205において、後述する回転機3の電流の環流を行う。次にステップS206において、ステップS202とS204で検出した回転機電流に基づき、インダクタンス演算部6が回転機3のインダクタンスの演算を行い、インダクタンス測定処理を終了する。
実施の形態2においては、インダクタンス測定準備用と測定用の2つの電圧指令に基づく電圧を印加し、印加後に環流して回転機3の電流値を0としている。回転機3の回転トルクは電流に比例して発生するため、電流の流れる時間を最短にして、不要なトルクが回転子に長時間かかることをさけ、振動や騒音の発生を抑制する。
また、実施の形態2において、電圧をq軸に印加することで説明したが、電圧を印加する軸はq軸に限らない。
以下、本願発明の実施の形態3について、図に基づいて説明する。 図8はインダクタンス測定処理手順図、図9はインダクタンス測定動作例を示す図である。
実施の形態3に係る回転機の制御装置2の構成は、実施の形態1と同様であり、インダクタンス演算部6と電圧指令生成部7の処理が異なる。
また、電圧指令生成部7が生成した電圧指令のベクトルと逆方向に電圧指令のベクトルを印加し、インダクタンスの測定のために回転子にかかったトルクを打ち消し、回転子の回転を抑制する。
これにより、実施の形態2に対して、さらに回転機3の回転を抑えて、インダクタンスを測定することができる。
回転機3のインダクタンス測定処理が開始されると、ステップS301において、d軸に一定の直流電圧を印加する。これにより、回転機3の回転子を引き込んで停止させることができる。この一定の直流電圧はインダクタンス測定処理終了まで印加するが、ステップS306とS308における回転機電流の環流中は印加を停止する。
次に、ステップS302において、電圧指令生成部7が生成したインダクタンス測定準備用の第一の電圧指令に基づく電圧を電圧印加部5が回転機3に印加する。次にステップS303において、電流検出部4は回転機3の電流を検出する。次にステップS304において、測定用の第二の電圧指令に基づく電圧を電圧印加部5が回転機3に印加する。次にステップS305において、回転機3の電流を検出する。次にステップS306において、回転機3の電流の環流を行う。次にステップS307において、逆方向電圧指令(vq・inv)に基づき電圧を電圧印加部5が回転機3に印加する。次にステップS308において、回転機3の電流の環流を行う。次にステップS309において、ステップS303とS305で検出した回転機電流に基づき、インダクタンス演算部6が回転機3のインダクタンスの演算を行い、インダクタンス測定処理を終了する。
vq・inv=−vq1−vq2 (16)
となる。
ステップS307において、式(16)の電圧指令に基づく電圧を印加し、その後、ステップS308において環流操作によって回転機3の電流を0にする。
なお、ステップS301のd軸に一定の直流電圧の印加、およびステップS307の逆電圧指令(vq・inv)に基づく電圧の印加は、どちらか一方でもよい。
q軸電流を流して、インダクタンスを測定した後、逆方向に同等の電圧を印加することにより、インダクタンスの測定時に流れた電流と同等の電流を逆方向に流すことができ、回転子にかかる回転トルクを相殺することができ、回転子の回転を抑制することができる。
以下、本願発明の実施の形態4について、図に基づいて説明する。図10は、この発明の実施の形態4に係る回転機3のインダクタンス測定方法のフロー図である。
実施の形態4の説明では、実施の形態1の回転機の制御装置2に適用して 、回転機3のインダクタンスを測定する方法を説明するが、適用する回転機の制御装置はこれに限られない。
例えば実施の形態1の図1における回転機の制御装置2において、電圧印加部5、インダクタンス演算部6および電圧指令生成部7の内、専用ハードウエアとした方がソフトウエアの処理が簡素化できる部分を残して、電圧、電流信号用入出力回路を備えた計算機に置き換えた構成が考えられる。
回転機3のインダクタンス測定処理は、以下のステップで行われる。
ステップS401において、電圧指令生成部7がインダクタンス測定準備用および測定用の電圧指令を生成する。
次にステップS402において、電圧印加部5は電圧指令生成部7が生成したインダクタンス測定準備用の第一の電圧指令に基づく電圧を回転機3に印加する。
次にステップS403において、電流検出部4が回転機3の電流を検出し、インダクタンス演算部6はこの値を入力する。
次にステップS404において、電圧印加部5は電圧指令生成部7が生成した測定用の第二の電圧指令に基づく電圧を回転機3に印加する。
次にステップS405において、ステップS404と同様に回転機3の電流を検出し、インダクタンス演算部6はこの値を入力する。
次にステップS406において、ステップS403とS405で検出した回転機電流および電圧指令生成部7からの電圧指令に基づき、インダクタンス演算部6が回転機3のインダクタンスの演算を行う。
Claims (7)
- 電圧指令を生成する電圧指令生成部と、前記電圧指令に基づいて回転機に電圧を印加する電圧印加部と、前記回転機の回転機電流を検出する電流検出部と、前記電圧指令と前記回転機電流から前記回転機のインダクタンスを演算するインダクタンス演算部とを備え、
前記電圧指令生成部は一定の直流電圧の電圧指令としてインダクタンス測定準備用電圧指令である第一の電圧指令と測定用電圧指令である第二の電圧指令を生成し、前記電圧印加部は前記第一の電圧指令および前記第二の電圧指令に基づき前記回転機に電圧を順次印加し、前記インダクタンス演算部は前記測定用電圧指令と前記測定用電圧指令印加前後の前記電流検出部で検出した前記回転機電流からインダクタンスを演算する回転機の制御装置。 - 前記インダクタンス演算部は、前記回転機の巻線抵抗を用いてインダクタンスを演算する請求項1に記載の回転機の制御装置。
- 前記電圧指令生成部は前記電圧指令を出力した後、この電圧指令と逆の方向に同じ大きさの電圧指令を出力し、前記回転機の回転子の回転トルクの発生を抑制する請求項1または請求項2に記載の回転機の制御装置。
- 前記電圧指令生成部は、前記電圧指令に加えて、前記回転機のd軸方向に一定の直流電圧の電圧指令を重畳する請求項1または請求項2に記載の回転機の制御装置。
- 前記電圧指令生成部が生成した前記電圧指令に基づく電圧を前記電圧印加部は前記回転機のd軸またはq軸方向に印加し、前記インダクタンス演算部はd軸またはq軸のインダクタンスを演算する請求項1または請求項2に記載の回転機の制御装置。
- 前記電圧指令生成部が生成した前記電圧指令に基づく電圧を前記電圧印加部は前記回転機のd軸またはq軸方向に順次与え、前記インダクタンス演算部はd軸およびq軸インダクタンスを順次演算する請求項1または請求項2に記載の回転機の制御装置。
- 電圧指令を生成する電圧指令生成部と、前記電圧指令に基づいて回転機に電圧を印加する電圧印加部と、前記回転機の回転機電流を検出する電流検出部と、前記電圧指令と前記回転機電流から前記回転機のインダクタンスを演算するインダクタンス演算部とを備えた回転機の制御装置を用い、
前記電圧指令生成部が一定の直流電圧の電圧指令としてインダクタンス測定準備用電圧指令である第一の電圧指令と測定用電圧指令である第二の電圧指令を生成するステップと、前記電圧印加部が前記第一の電圧指令と前記第二の電圧指令に基づき前記回転機に電圧を順次印加するステップと、前記電流検出部で前記回転機電流を検出するステップと、前記インダクタンス演算部が前記測定用電圧指令と前記測定用電圧指令印加前後の前記電流検出部で検出した前記回転機電流からインダクタンスを演算するステップからなる回転機のインダクタンス測定方法。
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