第1の実施の形態
図1乃至図10を用いて、本発明の第1の実施の形態におけるサスペンション用基板、サスペンション、ヘッド付サスペンション、およびハードディスクドライブについて説明する。
図1に示すように、サスペンション用基板1は、後述の配線13が延びている基板本体領域2と、後述のピエゾ素子(アクチュエータ素子、図3参照)44に接続可能な接続構造領域3とを有している。このうち基板本体領域2には、後述のスライダ52(図7参照)に接続されるヘッド端子5と、図示しない外部機器に接続される外部機器接続端子6とが設けられており、ヘッド端子5と外部機器接続端子6との間には、後述する配線13が接続されている。
図1および図2(a)、(b)に示すように、サスペンション用基板1は、絶縁層10と、絶縁層10のピエゾ素子44の側の面(一方の面)に設けられた金属支持層11と、絶縁層10の他方の面に設けられた複数の配線13を有する配線層12とを備えている。
このうち、配線層12は、接続構造領域3に配置され、ピエゾ素子44に導電性接着剤(例えば、銀ペースト)を介して電気的に接続される配線接続部16を有している。この配線接続部16は、各配線13と同一材料から形成されている。また、複数の配線13のうち1つの配線13は、外部機器接続端子6から接続構造領域3に延びて、配線接続部16を介してピエゾ素子44に電気的に接続されている。
なお、図示しないが、絶縁層10と配線層12との間に、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、銅(Cu)からなり、約300nm厚さを有するシード層が介在されている。このことにより、絶縁層10と配線層12との密着性を向上させることができる。
図1および図2(a)、(b)に示すように、金属支持層11は、接続構造領域3に設けられ、導電性接着剤が注入される金属支持層注入孔32を含む枠体部17を有している。この枠体部17は、リング状に形成されて、枠体部17の外縁17aが、絶縁層10の外縁10aより内方に位置している。また、枠体部17に、金属支持層注入孔32を枠体部17の外方に連通する枠体切欠部18が設けられている。なお、この金属支持層11の枠体部17は、基板本体領域2における金属支持層11の部分と分離されている。
絶縁層10の金属支持層注入孔32に対応する位置に、絶縁層10を貫通する絶縁層注入孔33が設けられている。このようにして、配線層12の配線接続部16が、金属支持層11の側に露出されるようになっている。
この絶縁層注入孔33において、配線層12の配線接続部16は、金属支持層11の側に露出され、この露出された部分に、ニッケル(Ni)めっきおよび金(Au)めっきが順次施されて、注入孔めっき層15が形成されている。このことにより、配線層12の配線接続部16の露出された部分が腐食することを防止している。この注入孔めっき層15の厚さは、0.1μm〜4.0μmであることが好ましい。
図2(b)に示すように、絶縁層10上には、配線層12を覆う保護層20が設けられている。なお、図1においては、図面を明瞭にするために、保護層20は省略している。
絶縁層10および保護層20に、これらを貫通して延びるように、金属支持層注入孔32に導電性接着剤を注入する際に、ピエゾ素子44と金属支持層11の枠体部17との間の導電性接着剤の状態を外方から観察可能な観察孔30が設けられている。この観察孔30は、図2(a)に示すように、枠体部17に設けられた枠体切欠部18の外方に配置されている。また、観察孔30は、リング状の枠体部17と同心円状となるような三日月状に形成されており、絶縁層10に形成された絶縁層観察孔30aと、保護層20に形成され、絶縁層観察孔30aに連通した保護層観察孔30bとにより構成されている。
また、図1に示すように、基板本体領域2において、金属支持層11および絶縁層10に貫通して、後述のロードビーム43との位置合わせを行うための2つの治具孔25が設けられている。
次に、各構成部材について詳細に述べる。
絶縁層10の材料としては、所望の絶縁性を有する材料であれば特に限定されることはないが、例えば、ポリイミド(PI)を用いることが好適である。なお、絶縁層10の材料は、感光性材料であっても非感光性材料であっても用いることができる。また、絶縁層10の厚さは、5μm〜30μm、とりわけ8μm〜10μmであることが好ましい。このことにより、金属支持層11と各配線13との間の絶縁性能を確保するとともに、サスペンション用基板1全体としての剛性が喪失されることを防止することができる。
各配線13は、電気信号を伝送するための導体として構成されており、各配線13の材料としては、所望の導電性を有する材料であれば特に限定されることはないが、銅(Cu)を用いることが好適である。銅以外にも、純銅に準ずる電気特性を有する材料であれば用いることもできる。ここで、各配線13の厚さは、例えば1μm〜18μm、とりわけ9μm〜12μmであることが好ましい。このことにより、各配線13の伝送特性を確保するとともに、サスペンション用基板1全体としての柔軟性が喪失されることを防止することができる。なお、配線接続部16は、各配線13と同一の材料、同一の厚みからなっている。
金属支持層11の材料としては、所望の導電性、弾力性、および強度を有するものであれば特に限定されることはないが、例えば、ステンレス、アルミニウム、ベリリウム銅、またはその他の銅合金を用いることができ、好ましくはステンレスを用いることが好適である。金属支持層11の厚さは、10μm〜30μm、とりわけ15μm〜20μmであることが好ましい。このことにより、金属支持層11の導電性、剛性、および弾力性を確保することができる。
保護層20の材料としては、樹脂材料、例えば、ポリイミドを用いることが好適である。なお、保護層20の材料は、感光性材料であっても非感光性材料であっても用いることができる。
次に、図3乃至図6を用いて、本実施の形態におけるサスペンション41について説明する。図3に示すサスペンション41は、ベースプレート42と、ベースプレート42上に取り付けられ、サスペンション用基板1の金属支持層11を保持するロードビーム43と、上述のサスペンション用基板1と、ベースプレート42およびロードビーム43の少なくとも一方に接合されると共に、サスペンション用基板1の接続構造領域3に接続されたピエゾ素子44とを有している。なお、本実施の形態においては、ピエゾ素子44は、ベースプレート42に接合されるようになっている。ベースプレート42およびロードビーム43は、ステンレスからなっており、このうちベースプレート42は、ピエゾ素子44を収容する開口部42aと、一対の可撓部42bとを有している。
ピエゾ素子44は、電圧が印加されることにより伸縮する圧電素子として構成されている。ピエゾ素子44は、図4に示すように、互いに隔離された第1電極44aおよび第2電極44bと、第1電極44aおよび第2電極44bに対向する一つの共有電極44cと、第1電極44aと共有電極44cとの間に介在された第1圧電材料部44dと、第2電極44bと共有電極44cとの間に介在された第2圧電材料部44eとを有している。このうち第1圧電材料部44dは、第1電極44aと共有電極44cとの間に印加される電圧に応じて変形し、第2圧電材料部44eは、第2電極44bと共有電極44cとの間に印加される電圧に応じて変形するようになっている。また、第1圧電材料部44dおよび第2圧電材料部44eは、例えば、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等の圧電セラミックスからなり、互いに180°異なる分極方向となるように形成されている。第1電極44aおよび第2電極44b、並びに共有電極44cのいずれか一方を接地すると共に、他方に所定の電圧を印加すると、第1圧電材料部44dおよび第2圧電材料部44eの一方が収縮すると共に、他方が伸長する。このことにより、ピエゾ素子44は、全体として略台形形状に歪み、ロードビーム43を介して、スライダ52を移動させるようになっている。
このようなピエゾ素子44は、図3および図5に示すように、ベースプレート42の開口部42aに収容されて、非導電性接着剤によりベースプレート42に接合されている。
図5に示すように、ピエゾ素子44の一方(サスペンション用基板1とは反対側)の第1電極44aおよび第2電極44bは、導電性接着剤からなる第1の導電接着部45を介して、ベースプレート42に、それぞれ電気的に接続されている。
一方、ピエゾ素子44の他方(サスペンション用基板1の側)の共有電極44cは、導電性接着剤を用いて、接続構造領域3に接合されると共に電気的に接続されている。すなわち、図6に示すように、接続構造領域3における絶縁層注入孔33および金属支持層注入孔32に、導電性接着剤からなる第2の導電接着部48が形成され、ピエゾ素子44が、第2の導電接着部48を介して、接続構造領域3に接合されると共に、ピエゾ素子44の共有電極44cが、第2の導電接着部48を介して、配線層12の配線接続部16に電気的に接続されている。また、第2の導電接着部48は、金属支持層11の枠体部17とピエゾ素子44との間に形成された微小な隙間に延びると共に、枠体部17に設けられた枠体切欠部18を通って観察孔30の下方に延びている。
また、ロードビーム43には、サスペンション用基板1の各治具孔25に対応して、ビーム治具孔47が設けられており、サスペンション用基板1の基板本体領域2の金属支持層11にロードビーム43を実装する際に、サスペンション用基板1とロードビーム43との位置合わせを行うことができるようになっている。
次に、図7により、本実施の形態におけるヘッド付サスペンション51について説明する。図7に示すヘッド付サスペンション51は、上述したサスペンション41と、サスペンション用基板1のヘッド端子5に接続されたスライダ52とを有している。
次に、図8により、本実施の形態におけるハードディスクドライブ61について説明する。図8に示すハードディスクドライブ61は、ケース62と、このケース62に回転自在に取り付けられ、データが記憶されるディスク63と、このディスク63を回転させるスピンドルモータ64と、ディスク63に所望のフライングハイトを保って近接するように設けられ、ディスク63に対してデータの書き込みおよび読み取りを行うスライダ52を含むヘッド付サスペンション51とを有している。このうちヘッド付サスペンション51は、ケース62に対して移動自在に取り付けられており、ケース62にはヘッド付サスペンション51のスライダ52をディスク63上に沿って移動させるボイスコイルモータ65が取り付けられている。また、ヘッド付サスペンション51は、ボイスコイルモータ65にアーム66を介して取り付けられている。
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用、すなわち本実施の形態によるサスペンション用基板1の製造方法について説明する。ここでは、一例として、サブトラクティブ法によりサスペンション用基板1(とりわけ、接続構造領域3)を製造する方法について説明する。
まず、絶縁層10と、絶縁層10の一方の面に設けられた金属支持層11と、絶縁層10の他方の面に設けられた配線層12とを有する積層体35を準備する(図9(a)参照)。
この場合、まず、金属支持層11を準備し、この金属支持層11上に、非感光性ポリイミドを用いた塗工方法により絶縁層10が形成される。続いて、絶縁層10上に、ニッケル、クロム、および銅がスパッタ工法により順次コーティングされ、シード層(図示せず)が形成される。その後、このシード層を導通媒体として、銅めっきにより配線層12が形成される。このようにして、絶縁層10と、金属支持層11と、配線層12とを有する積層体35が得られる。
次に、配線層12において、複数の配線13と、配線接続部16とが形成されると共に、金属支持層11において、金属支持層注入孔32および枠体切欠部18が形成される(図9(b)参照)。この場合、まず、配線層12の上面および金属支持層11の下面に、フォトファブリケーションの手法により、ドライフィルムを用いて、パターン状のレジスト(図示せず)が形成される。ここでは、配線層12において、複数の配線13、配線接続部16を形成すると共に、金属支持層11に金属支持層注入孔32および枠体切欠部18を形成するように、パターン状のレジストが形成される。次に、配線層12および金属支持層11のうちレジストから露出された部分がエッチングされる。ここで、配線層12および金属支持層11をエッチングする方法は、特に限定されるものではないが、ウェットエッチングを行うことが好ましい。とりわけ、エッチング液は、金属支持層11の材料の種類に応じて適宜選択することが好ましいが、例えば、金属支持層11がステンレスからなる場合には、塩化第二鉄水溶液等の塩化鉄系エッチング液を用いることができる。エッチングが行われた後、レジストは剥離される。
次に、絶縁層10上に、配線層12の各配線13および配線接続部16を覆う保護層20が設けられると共に、保護層20に保護層観察孔30bが形成される(図9(c)参照)。この場合、まず、非感光性ポリイミドが、ダイコータを用いて、絶縁層10上にコーティングされる。続いて、コーティングされた非感光性ポリイミドを乾燥させて、保護層20が形成される。次に、形成された保護層20上に、保護層観察孔30bを形成するようにパターン状のレジスト(図示せず)が形成される。続いて、保護層20が現像されてエッチングされ、エッチングされた保護層20を硬化して、所望の形状の保護層20が得られる。その後、レジストは剥離される。
次に、絶縁層10において、絶縁層10を貫通する絶縁層観察孔30aおよび絶縁層注入孔33が形成されると共に、所望の形状に外形加工される(図9(d)参照)。この場合、まず、絶縁層10上に、パターン状のレジストが形成され、絶縁層10のうちレジストから露出された部分がエッチングされて、絶縁層10に絶縁層観察孔30aおよび絶縁層注入孔33が形成されると共に、絶縁層10が外形加工される。ここで、絶縁層10をエッチングする方法は、特に限定されるものではないが、ウェットエッチングを行うことが好ましい。とりわけ、エッチング液は、絶縁層10の材料の種類に応じて適宜選択することが好ましいが、例えば、絶縁層10がポリイミド樹脂からなる場合には、有機アルカリエッチング液等のアルカリ系エッチング液を用いることができる。エッチングが行われた後、レジストは剥離される。
次に、配線層12の配線接続部16のうち絶縁層注入孔33において露出された部分に、金めっきが施される(図9(e)参照)。すなわち、配線接続部16の露出された部分が、酸洗浄されて、電解めっき法によりニッケルめっきおよび金めっきが順次施されて、0.1μm〜4.0μmの厚さを有する注入孔めっき層15が形成される。この場合、スライダ52に接続されるヘッド端子5と、外部機器接続端子6にも、同様にしてめっきが施される。なお、めっきを施す方法として、電解めっき法ではなく、治具めっき法を用いても良い。また、めっきの種類としては、ニッケルめっき、金めっきに限定されるものではなく、銀(Ag)めっき、銅(Cu)めっきを施すようにしても良い。
その後、金属支持層11において、枠体部17が形成されると共に、所望の形状に金属支持層11の外形加工が行われる(図9(f)参照)。この場合、まず、金属支持層11の下面に、ドライフィルムを用いて、パターン状のレジスト(図示せず)が形成される。
ここでは、金属支持層11において、枠体部17を形成するように、パターン状のレジストが形成される。次に、塩化鉄系エッチング液等により、金属支持層11のうちレジストから露出された部分がエッチングされ、枠体部17が形成されると共に、金属支持層11が外形加工される。この場合、枠体部17は、基板本体領域2における金属支持層11の部分と分離される。その後、レジストは剥離される。
このようにして、サスペンション用基板1が得られる。
次に、図10を用いて、本実施の形態におけるサスペンションの製造方法について説明する。
まず、ベースプレート42およびロードビーム43を準備すると共に、上述のようにしてサスペンション用基板1を準備する。
次に、図10に示すように、ベースプレート42に、ロードビーム43を介して、サスペンション用基板1が、溶接により取り付けられる。この場合、まず、ベースプレート42にロードビーム43が溶接により固定され、続いて、ロードビーム43に設けられたビーム治具孔47と、サスペンション用基板1に設けられた治具孔25とにより、ロードビーム43とサスペンション用基板1とのアライメントが行われる。その後、溶接により、ロードビーム43とサスペンション用基板1が互いに接合されて固定される。
次に、サスペンション用基板1に対して、ピエゾ素子44が位置合わせされてベースプレート42の開口部42aに収容され、接着剤を用いてベースプレート42に接合されると共に、サスペンション用基板1の接続構造領域3に接続される。すなわち、ピエゾ素子44は、非導電性接着剤を用いてベースプレート42に接合されると共に、導電性接着剤からなる第1の導電接着部45が形成されて、ピエゾ素子44の第1電極44aおよび第2電極44bは、ベースプレート42に第1の導電接着部45を介してそれぞれ電気的に接続される。
また、ピエゾ素子44の共有電極44cは、導電性接着剤を用いて、サスペンション用基板1の接続構造領域3に接合されると共に電気的に接続される。この場合、金属支持層11の枠体部17とピエゾ素子44の共有電極44cとの間の隙間から、絶縁層注入孔33および金属支持層注入孔32に導電性接着剤が注入されて第2の導電接着部48が形成される。このようにして、ピエゾ素子44がサスペンション用基板1の接続構造領域3に接合されると共に、ピエゾ素子44の共有電極44cが配線層12の配線接続部16に電気的に接続される。この際、金属支持層11とピエゾ素子44との間の隙間にも、導電性接着剤が充填される(図6参照)。
導電性接着剤を注入する際、図6に示すように、サスペンション用基板1に設けられた観察孔30を介して、ピエゾ素子44と枠体部17との間の導電性接着剤の状態を確認することができる。このことにより、金属支持層11の枠体部17に設けられた枠体切欠部18から導電性接着剤がはみ出す状態を見ながら、導電性接着剤の注入作業を行うことができる。このため、導電性接着剤の注入量を適量に調整することができ、導電性接着剤が、枠体部17から大きくはみ出すことを防止することができる。
このようにして、サスペンション用基板1の接続構造領域3に接続されたピエゾ素子44を含むサスペンション41が得られる。
このサスペンション41のヘッド端子5に、スライダ52が接続されて図7に示すヘッド付サスペンション51が得られる。さらに、このヘッド付サスペンション51がハードディスクドライブ61のケース62に取り付けられて、図8に示すハードディスクドライブ61が得られる。
図8に示すハードディスクドライブ61においてデータの書き込みおよび読み取りを行う際、ボイスコイルモータ65によりヘッド付サスペンション51のスライダ52がディスク63上に沿って移動し、スピンドルモータ64により回転しているディスク63に所望のフライングハイトを保って近接する。このことにより、スライダ52とディスク63との間で、データの受け渡しが行われる。この間、サスペンション用基板1のヘッド端子5と外部機器接続端子6との間を延びる各配線13により電気信号が伝送される。
スライダ52を移動させる際、ボイスコイルモータ65が、スライダ52の位置を大まかに調整し、ピエゾ素子44が、スライダ52の位置を微小調整する。すなわち、サスペンション用基板1の接続構造領域3の側のピエゾ素子44の第1電極44aおよび第2電極44bに所定の電圧を印加することにより、ピエゾ素子44の一方の圧電材料部がロードビーム43の軸線方向に収縮すると共に、他方の圧電材料部が伸長する。この場合、ベースプレート42の可撓部42bが弾性変形し、ロードビーム43の先端側に位置するスライダ52がスウェイ方向(旋回方向)に移動することができる。このようにして、スライダ52を、ディスク63の所望のトラックに、迅速に、かつ精度良く位置合わせすることができる。
このように本実施の形態によれば、金属支持層注入孔32に導電性接着剤を注入する際に、ピエゾ素子44と金属支持層11の枠体部17との間の導電性接着剤の状態を、絶縁層10に設けられた観察孔30を介して外方から観察することができる。このことにより、サスペンション用基板1とピエゾ素子44との導電性接着剤による接続作業性を向上させることができ、導電性接着剤の注入量を適量に調整することができる。このため、導電性接着剤が、枠体部17から大きくはみ出して、接続構造領域3の周辺に存在する他の金属構造物(例えば、ベースプレート42)に達することを防止することができる。この結果、ピエゾ素子44の第1電極44aおよび第2電極44bと、共有電極44cとの間が、導電性接着剤により短絡することを防止することができる。
また、本実施の形態によれば、観察孔30を介して、導電性接着剤の注入量を適量に調整することができるため、ピエゾ素子44上に広がる導電性接着剤の量を抑制することができる。また、導電性接着剤は、枠体部17に設けられた枠体切欠部18を通って枠体部17の外方にはみ出されるため、導電性接着剤のはみ出し方向を規制し、導電性接着剤を所望の方向にはみ出させることができる。このため、サスペンション41としての振動特性が悪化することを防止することができる。
さらに、本実施の形態によれば、上述のように、ピエゾ素子44上に広がる導電性接着剤の量を抑制することができるため、ピエゾ素子44の圧電材料部44d、44eへの導電性接着剤の浸透量を抑制することができ、圧電材料部44d、44eを構成する材料が劣化することを防止することができる。
なお、本実施の形態においては、サブトラクティブ法により、サスペンション用基板1を製造する例について説明したが、アディティブ法により、サスペンション用基板1を製造しても良い。
また、本実施の形態においては、ピエゾ素子44は、ベースプレート42に接合されている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、ピエゾ素子44が、任意の位置で、ロードビーム43のみに接合されるようにしても良く、あるいは、ベースプレート42およびロードビーム43の両方に接合されるようにしても良い。さらには、ロードビーム43の先端部に、スライダ52を保持するスライダ保持プレート(図示せず)が設けられ、ロードビーム43とスライダ保持プレートとの間にピエゾ素子44が接合されるようにしても良い。
また、本実施の形態において、図11に示すように、絶縁層10を貫通して、金属支持層11の枠体部17と配線層12の配線接続部16とを接続する導電接続部(ビア)70を設けるようにしても良い。この場合、配線層12において複数の配線13および配線接続部16を形成する際、配線接続部16を貫通する配線層導電接続孔71が形成され、保護層20を形成する際、保護層20を貫通する保護層導電接続孔72が形成され、絶縁層10において絶縁層観察孔30aを形成する際、絶縁層10を貫通する絶縁層導電接続孔73が形成され、配線層導電接続孔71、保護層導電接続孔72、および絶縁層導電接続孔73にニッケルめっきが施されて、導電接続部70を形成することができる。ニッケルめっきは、電解めっき法により行われ、めっき浴には、標準的なスルファミン酸ニッケルめっき浴を用い、電解浸漬めっき(0.2A、14分)を行う。このことにより、枠体部17に、導電接続部70を介して、配線接続部16を接続することができる。この場合、枠体部17および導電接続部70を介して、配線接続部16をピエゾ素子44に電気的に接続することができ、ピエゾ素子44との電気的な接続の信頼性を向上させることができる。なお、導電接続部70と配線接続部16との間に、ニッケルめっきおよび金めっきが介在されていても良い。
さらに、本実施の形態において、図12に示すように、保護層20を貫通し、配線層12の配線接続部16を露出させる検査用貫通孔74を設けるようにしても良い。この場合、この検査用貫通孔74において、配線接続部16の露出された部分には、ニッケルめっき、および金めっきが順次施されて、検査用めっき層75が形成されていることが好ましい。このような検査用めっき層75は、保護層20に保護層観察孔30bを形成する際に検査用貫通孔74を形成して、この検査用貫通孔74において露出された配線接続部16の部分に、注入孔注入孔めっき層15と同様にして形成することができる。このように、配線接続部16を保護層20側において外方に露出させることにより、プローブ等の導通検査器(図示せず)を用いることにより、配線接続部16の上面から配線接続部16とピエゾ素子44との間の導通検査を行うことができる。また、この場合、配線接続部16の露出された部分に金めっきが施されているため、配線接続部16の上面に導通検査器の先端を押し当てた場合においても、配線接続部16の上面が変形することを防止することができると共に、配線層12の配線接続部16の露出された部分が腐食することを防止することができる。
第2の実施の形態
次に、図13および図14により、本発明の第2の実施の形態におけるサスペンション用基板、サスペンション、ヘッド付サスペンション、ハードディスクドライブ、サスペンション用基板の製造方法、およびサスペンションの製造方法について説明する。
図13および図14に示す第2の実施の形態においては、金属支持層が、枠体部の金属支持層注入孔に、枠体切欠部を介して連通した第2の金属支持層注入孔を含む第2の枠体部を更に有している点が主に異なり、他の構成は、図1乃至図10に示す第1の実施の形態と略同一である。なお、図13および図14において、図1乃至図10に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
図13(a)、(b)に示すように、金属支持層11は、枠体部17の金属支持層注入孔32に、枠体切欠部18を介して連通した第2の金属支持層注入孔81を含む第2の枠体部80を有している。この第2の枠体部80は、枠体部17に連結されており、枠体部17と同様にリング状に形成され、第2の枠体部80の外縁80aが、絶縁層10の外縁10aより内方に位置している。なお、第2の枠体部80は、枠体部17および枠体切欠部18を形成する際に形成することができる。
また、観察孔30は、第2の金属支持層注入孔81に対応する位置に配置され、第2の金属支持層注入孔81に連通している。また、観察孔30は、リング状の第2の枠体部80と同心円状に、円形状に形成されている。また、観察孔30は、絶縁層10に形成された絶縁層観察孔30aと、保護層20に形成され、絶縁層観察孔30aに連通した保護層観察孔30bとにより構成されている。
本実施の形態において、絶縁層注入孔33および金属支持層注入孔32に導電性接着剤を注入する際、図14に示すように、サスペンション用基板1に設けられた観察孔30を介して、ピエゾ素子44と枠体部17との間の導電性接着剤の状態を確認することができる。このことにより、金属支持層11の枠体部17に設けられた枠体切欠部18を通って第2の金属支持層注入孔81に導電性接着剤がはみ出す状態を見ながら、導電性接着剤の注入作業を行うことができる。このため、導電性接着剤の注入量を適量に調整することができ、導電性接着剤が、枠体部17から大きくはみ出すことを防止することができる。
このように本実施の形態によれば、金属支持層注入孔32に導電性接着剤を注入する際に、ピエゾ素子44と金属支持層11の枠体部17との間の導電性接着剤の状態を、絶縁層10に設けられた観察孔30を介して外方から観察することができる。このことにより、サスペンション用基板1とピエゾ素子44との導電性接着剤による接続作業性を向上させることができ、導電性接着剤の注入量を適量に調整することができる。また、枠体部17に設けられた枠体切欠部18を通ってはみ出した導電性接着剤は、第2の金属支持層注入孔81に留められる。このため、導電性接着剤が、枠体部17から大きくはみ出して、接続構造領域3の周辺に存在する他の金属構造物(例えば、ベースプレート42)に達することを防止することができる。この結果、ピエゾ素子44の第1電極44aおよび第2電極44bと、共有電極44cとの間が、導電性接着剤により短絡することを防止することができる。
また、本実施の形態によれば、観察孔30を介して、導電性接着剤の注入量を適量に調整することができるため、ピエゾ素子44上に広がる導電性接着剤の量を抑制することができる。また、枠体部17に設けられた枠体切欠部18を通ってはみ出した導電性接着剤は、第2の金属支持層注入孔81に留められる。このため、サスペンション41としての振動特性が悪化することを防止することができる。
さらに、本実施の形態によれば、上述のように、ピエゾ素子44上に広がる導電性接着剤の量を抑制することができるため、ピエゾ素子44の圧電材料部44d、44eへの導電性接着剤の浸透量を抑制することができ、圧電材料部44d、44eを構成する材料が劣化することを防止することができる。
第3の実施の形態
次に、図15および図16により、本発明の第3の実施の形態におけるサスペンション用基板、サスペンション、ヘッド付サスペンション、ハードディスクドライブ、サスペンション用基板の製造方法、およびサスペンションの製造方法について説明する。
図15および図16に示す第3の実施の形態においては、観察孔は、金属支持層注入孔に対応する位置に配置されると共に、配線層の配線接続部を貫通して延びている点が主に異なり、他の構成は、図1乃至図10に示す第1の実施の形態と略同一である。なお、図15および図16において、図1乃至図10に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
図15(a)、(b)に示す本実施の形態においては、絶縁層注入孔33と絶縁層観察孔30aとが兼用され、この絶縁層注入孔33に対応する位置に保護層観察孔30bが設けられている。また、配線層12の配線接続部16のうち絶縁層注入孔33に対応する位置に、配線接続部16を貫通する配線層観察孔82が形成されている。すなわち、本実施の形態における観察孔30は、互いに連通した絶縁層観察孔30a(絶縁層注入孔33)と配線層観察孔82と保護層観察孔30bとにより構成されており、金属支持層注入孔32に対応する位置に配置されると共に、配線層12の配線接続部16および保護層20を貫通して延びている。なお、本実施の形態においては、枠体部17は、枠体切欠部18(図2参照)は設けられていない。また、配線層観察孔82は、配線層12において複数の配線13および配線接続部16を形成する際に形成することができる。
配線層12の配線接続部16は、観察孔30の内方に延びている。すなわち、絶縁層観察孔30a、配線層観察孔82、および保護層観察孔30bは、円形状に形成されており、配線層観察孔82の直径は、絶縁層観察孔30a、および保護層観察孔30bの直径より小さくなっている。
観察孔30において配線層12の配線接続部16の露出された部分には、ニッケルめっきおよび金めっきが順次施されて、観察孔めっき層83が形成されている。このような観察孔めっき層83は、注入孔めっき層15(図2参照)と同様に形成することができる。
このように配線接続部16の露出された部分に金めっきが施されることにより、配線層12の配線接続部16の露出された部分が腐食することを防止している。
本実施の形態において、絶縁層注入孔(絶縁層観察孔30a)33および金属支持層注入孔32に導電性接着剤を注入する間、図16に示すように、サスペンション用基板1に設けられた観察孔30を介して、ピエゾ素子44と枠体部17との間の導電性接着剤の状態を確認することができる。すなわち、図16に示す観察孔30により、金属支持層注入孔32に注入された導電性接着剤が、絶縁層注入孔33(絶縁層観察孔30a)に充填されて、配線層観察孔82に達したことを確認することができる。その後、導電性接着剤の注入を止めることにより、導電性接着剤の注入量を適量に調整することができ、導電性接着剤が枠体部17から大きくはみ出すことを防止することができる。
このように本実施の形態によれば、金属支持層注入孔32に導電性接着剤を注入する際に、ピエゾ素子44と金属支持層11の枠体部17との間の導電性接着剤の状態を、絶縁層10、配線層12の配線接続部16、および保護層20を貫通して設けられた観察孔30を介して外方から観察することができる。このことにより、導電性接着剤が配線接続部16に達した後に導電性接着剤の注入を止めることができ、導電性接着剤の注入量を適量に調整することができる。このため、枠体部17から導電性接着剤が大きくはみ出して、接続構造領域3の周辺に存在する他の金属構造物(例えば、ベースプレート42)に達することを防止することができる。この結果、ピエゾ素子44の第1電極44aおよび第2電極44bと、共有電極44cとの間が、導電性接着剤により短絡することを防止することができる。
また、本実施の形態によれば、観察孔30を介して、導電性接着剤の注入量を適量に調整することができるため、ピエゾ素子44上に広がる導電性接着剤の量を抑制することができる。このため、サスペンション41としての振動特性が悪化することを防止することができる。
また、本実施の形態によれば、上述のように、ピエゾ素子44上に広がる導電性接着剤の量を抑制することができるため、ピエゾ素子44の圧電材料部44d、44eへの導電性接着剤の浸透量を抑制することができ、圧電材料部44d、44eを構成する材料が劣化することを防止することができる。
第4の実施の形態
次に、図17により、本発明の第4の実施の形態におけるサスペンション用基板、サスペンション、ヘッド付サスペンション、ハードディスクドライブ、サスペンション用基板の製造方法、およびサスペンションの製造方法について説明する。
図17に示す第4の実施の形態においては、導電性接着剤は、観察孔内の保護層の部分まで注入されている点が主に異なり、他の構成は、図15および図16に示す第3の実施の形態と略同一である。なお、図17において、図15および図16に示す第3の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
図17に示すように、本実施の形態における導電性接着剤は、観察孔30内の保護層20の部分(保護層観察孔30b)まで注入されている。すなわち、導電性接着剤からなる第2の導電接着部48が、ピエゾ素子44から、絶縁層観察孔30aおよび配線層観察孔82を通って、保護層観察孔30bに延び、観察孔30において配線接続部16が露出された部分が、全域にわたって、第2の導電接着部48と接続されている。このような第2の導電接着部48は、図17に示す観察孔30により、金属支持層注入孔32に注入された導電性接着剤が、絶縁層注入孔33(絶縁層観察孔30a)に充填されて、配線層観察孔82を越えて保護層観察孔30bに達したことを確認することができる。このことにより、導電性接着剤を保護層観察孔30bまで確実に注入することができる。その後、導電性接着剤の注入を止めることにより、導電性接着剤の注入量を適量に調整し、導電性接着剤が枠体部17から大きくはみ出すことを防止することができる。
図17に示すように、保護層観察孔30bにおいて、導電性接着剤が露出された部分は、被覆部材(飛散防止部材)90で覆われている。被覆部材90は、例えば、保護層観察孔30bにおいて第2の導電接着部48が露出された部分に、例えばエポキシ樹脂を塗布することにより、形成することができる。なお、このような被覆部材90は、ピエゾ素子44の一方の第1電極44aおよび第2電極44bをベースプレート42に電気的に接続する第1の導電接着部45(図5参照)にも設けられている。
このように本実施の形態によれば、導電性接着剤の注入状態を、絶縁層10、配線層12の配線接続部16、および保護層20を貫通して設けられた観察孔30を介して外方から確認することができる。このことにより、導電性接着剤が保護層観察孔30bに達した後に導電性接着剤の注入を止めることができ、導電性接着剤の注入量を適量に調整することができる。このため、枠体部17から導電性接着剤が大きくはみ出して、接続構造領域3の周辺に存在する他の金属構造物(例えば、ベースプレート42)に達することを防止することができる。この結果、ピエゾ素子44の第1電極44aおよび第2電極44bと、共有電極44cとの間が、導電性接着剤により短絡することを防止することができる。
また、本実施の形態によれば、観察孔30を介して、導電性接着剤の注入量を適量に調整することができるため、ピエゾ素子44上に広がる導電性接着剤の量を抑制することができる。このため、サスペンション41としての振動特性が悪化することを防止することができる。
また、本実施の形態によれば、上述のように、ピエゾ素子44上に広がる導電性接着剤の量を抑制することができるため、ピエゾ素子44の圧電材料部44d、44eへの導電性接着剤の浸透量を抑制することができ、圧電材料部44d、44eを構成する材料が劣化することを防止することができる。
また、本実施の形態によれば、第2の導電接着部48が、保護層観察孔30bまで延びているため、第2の導電接着部48と配線層12の配線接続部16との間の接着面積を増大させて接続抵抗を低減させることができる。とりわけ、配線層観察孔82の直径は、絶縁層観察孔30aの直径および保護層観察孔30bの直径よりも小さく、配線接続部16が絶縁層10および保護層20より観察孔30の内方に延びているため、第2の導電接着部48と配線接続部16との間の接着面積をより一層増大させることができる。このことにより、配線接続部16とピエゾ素子44との電気的な接続の信頼性を向上させることができる。
また、本実施の形態によれば、第2の導電接着部48は、配線層貫通孔82より直径が大きい保護層観察孔30に達している。このため、導電性接着剤を注入している間、配線層貫通孔82を越えた導電性接着剤が、保護層観察孔30bにより堰き止められ、導電性接着剤が、保護層20から外方(図17における上方)に流れ出すことを防止することができる。
さらに、本実施の形態によれば、保護層観察孔30bにおける第2の導電接着部48が被覆部材90で覆われている。このことにより、銀ペーストからなる第2の導電接着部48の表面から、銀などのパーティクルが飛散することを防止することができる。
なお、本実施の形態においては、第3の実施の形態と同様に、枠体部17には枠体切欠部18(図2参照)が設けられていない例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、図18に示すように、枠体部17に枠体切欠部18を設けて、この枠体切欠部18の外方に、絶縁層10および保護層20を貫通し、金属支持層注入孔32に導電性接着剤を注入する際に導電性接着剤の状態を外方から観察可能な第2の観察孔91を設けて、枠体切欠部18の外方に配置させるようにしてもよい。この場合、第2の観察孔91は、第1の実施の形態における観察孔30(図2等参照)と同様に形成することが好ましい。
すなわち、金属支持層11において枠体部17を形成する際、枠体部17に、金属支持層注入孔32を枠体部17の外方に連通する枠体切欠部18が形成され、絶縁層10において絶縁層観察孔30aを形成する際、絶縁層10を貫通し、金属支持層注入孔32に導電性接着剤を注入する場合に導電性接着剤の状態を外方から観察可能な第2の絶縁層観察孔91aが、枠体切欠部18の外方に形成され、保護層20を形成する際、第2の絶縁層観察孔91aに連通する第2の保護層観察孔91bが形成されるようにしてもよい。このことにより、第2の絶縁層観察孔91aと第2の保護層観察孔91bとにより構成された第2の観察孔91を得ることができる。
図18に示す変形例においては、ピエゾ素子44と金属支持層11の枠体部17との間の導電性接着剤の状態を、第2の観察孔91からも観察することができ、サスペンション用基板1とピエゾ素子44との導電性接着剤による接続作業性を向上させて、導電性接着剤の注入量を適量に調整することができる。また、この場合、導電性接着剤は、枠体部17に設けられた枠体切欠部18を通って枠体部17の外方にはみ出されるため、導電性接着剤のはみ出し方向を規制し、導電性接着剤を所望の方向にはみ出させることができる。さらに、上述のように、ピエゾ素子44上に広がる導電性接着剤の量を抑制することができるため、ピエゾ素子44の圧電材料部44d、44eへの導電性接着剤の浸透量を抑制することができ、圧電材料部44d、44eを構成する材料が劣化することを防止することができる。
さらに、図示しないが、第2の実施の形態と同様にして、枠体部17に第2の枠体部80が連結され、第2の枠体部80の第2の金属支持層注入孔81を、枠体部17の金属支持層注入孔32に、枠体切欠部18を介して連通させるようにしてもよい。
第5の実施の形態
次に、図19および図20により、本発明の第5の実施の形態におけるサスペンション用基板、サスペンション、ヘッド付サスペンション、ハードディスクドライブ、サスペンション用基板の製造方法、およびサスペンションの製造方法について説明する。
図19および図20に示す第5の実施の形態においては、金属支持層のうち接続構造領域の部分が切り欠かれている点が主に異なり、他の構成は、図15および図16に示す第3の実施の形態と略同一である。なお、図19および図20において、図15および図16に示す第3の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
図19および図20に示すように、金属支持層11に、金属支持層11のうち接続構造領域3の部分を切り欠く金属支持層切欠部95が設けられている。このようにして、接続構造領域3において、絶縁層10のピエゾ素子44の側の面が露出されている。このような金属支持層切欠部95は、配線接続部16を形成する工程において(図9(b)参照)、金属支持層11のうち接続構造領域3における部分をエッチングして除去することにより、得られる。この場合、接続構造領域3の柔軟性を向上させることができる。なお、金属支持層切欠部95は、図19に示すように、少なくとも配線接続部16に対応する接続構造領域3が切り欠かれるようになっていればよく、接続構造領域3の周囲を含めて切り欠かれていてもよい。また、金属支持層切欠部95の形状は、平面視で円形状であってもよく、あるいは、矩形形状等、任意の形状とすることができる。
配線接続部16に、配線接続部16とピエゾ素子44との間に導電性接着剤を注入する際に導電性接着剤の状態を外方から観察可能な観察孔30、すなわち配線層観察孔82が設けられている。また、接続構造領域3において、絶縁層10に、配線層観察孔82に連通する絶縁層観察孔30aが設けられており、観察孔30が絶縁層10に延びるように形成されている。
配線層12の配線接続部16は、絶縁層10および保護層20より観察孔30の内方に延びている。このことにより、第2の導電接着部48と配線接続部16との間の接着面積をより一層増大させることができる。
本実施の形態においては、保護層20は、配線接続部16の少なくとも一部を覆っている。また、観察孔30は、保護層20を貫通して延びている。すなわち、保護層20に、保護層20を貫通し、絶縁層観察孔30aおよび配線層観察孔82に連通する保護層観察孔30bが設けられている。
図20に示すように、本実施の形態における導電性接着剤は、観察孔30内の保護層20の部分(保護層観察孔30b)まで注入されている。
このように本実施の形態によれば、配線接続部16とピエゾ素子44との間に導電性接着剤を注入する際に、導電性接着剤の状態を、絶縁層10、配線層12の配線接続部16、および保護層20を貫通して設けられた観察孔30を介して外方から観察することができる。このことにより、導電性接着剤が配線接続部16に達した後に導電性接着剤の注入を止めることができ、導電性接着剤の注入量を適量に調整することができる。このため、枠体部17から導電性接着剤が大きくはみ出して、接続構造領域3の周辺に存在する他の金属構造物(例えば、ベースプレート42)に達することを防止することができる。この結果、ピエゾ素子44の第1電極44aおよび第2電極44bと、共有電極44cとの間が、導電性接着剤により短絡することを防止することができる。また、ピエゾ素子44上に広がる導電性接着剤の量を抑制することができ、サスペンション41としての振動特性が悪化することを防止することができる。さらに、ピエゾ素子44の圧電材料部44d、44eへの導電性接着剤の浸透量を抑制することができ、圧電材料部44d、44eを構成する材料が劣化することを防止することができる。
なお、本実施の形態においては、図21(a)に示すように、保護層20に、保護層20のうち接続構造領域3の部分を切り欠く保護層切欠部96が設けられ、接続構造領域3において、絶縁層10のピエゾ素子44の側の面と共に、ピエゾ素子44とは反対側の面(すなわち、配線接続部16以外の保護層20の側の面)が露出されていてもよい。この場合、接続構造領域3には、金属支持層11および保護層20は形成されていない。このようなサスペンション用基板1は、保護層20を形成する工程において(図9(c)参照)、保護層20のうち接続構造領域3における部分をエッチングして除去することにより、得られる。この場合、接続構造領域3の柔軟性をより一層向上させることができる。なお、保護層切欠部96の形状は、金属支持層切欠部95と同様に、任意の形状とすることができる。
あるいは、他の形態として、図21(b)に示すように、絶縁層10に、絶縁層10のうち接続構造領域3の部分を切り欠く絶縁層切欠部97が設けられ、保護層20に、保護層20のうち接続構造領域3の部分を切り欠く保護層切欠部96が設けられて、配線接続部16の全体が露出されていてもよい。この場合、接続構造領域3には、金属支持層11、絶縁層10および保護層20は形成されていない。このようなサスペンション用基板1は、保護層20を形成する工程において(図9(c)参照)、保護層20のうち接続構造領域3における部分をエッチングして除去し、その後、絶縁層10のうち接続構造領域3における部分をエッチングして除去することにより、得られる。この場合、配線接続部16を全体にわたって露出させることができるため、導電性接着剤と、配線接続部16との接触面積をより一層増大させることができ、導電性接着剤と配線接続部16との間の導通抵抗をより一層低減させることができる。また、この場合、接続構造領域3の柔軟性をより一層向上させることができる。なお、絶縁層切欠部97の形状は、金属支持層切欠部95と同様に、任意の形状とすることができる。
第6の実施の形態
次に、図22により、本発明の第6の実施の形態におけるサスペンション用基板、サスペンション、ヘッド付サスペンション、ハードディスクドライブ、サスペンション用基板の製造方法およびサスペンションの製造方法について説明する。
図22に示す第6の実施の形態においては、配線層観察孔が複数形成されている点が主に異なり、他の構成は、図15および図16に示す第3の実施の形態と略同一である。なお、図22において、図15および図16に示す第3の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
図22に示すように、配線層観察孔82が、配線接続部16に複数設けられるようにしてもよい。すなわち、配線接続部16に、図22(a)に示すように、3つの配線層観察孔82を設けてもよく、図22(b)に示すように、4つの配線層観察孔82を設けてもよく、あるいは、図22(c)に示すように、5つの配線層観察孔82を設けてもよい。なお、配線接続部16に設けられる配線層観察孔82の個数は、3〜5個に限られることはなく、任意とすることができる。
このように本実施の形態によれば、導電性接着剤を、複数の配線層観察孔82に注入させることができる。このことにより、導電性接着剤と配線接続部16との間の接触面積をより一層増大させることができ、導電性接着剤と配線接続部16との間の導通抵抗を低減させることができる。また、導電性接着剤のアンカー効果をより一層発揮させることができ、導電性接着剤と配線接続部16との接着性をより一層向上させることができる。このため、ピエゾ素子44を接続するための導電性接着剤との導電性および接着性をより一層向上させることができる。
第7の実施の形態
次に、図23乃至図30を用いて、本発明の第7の実施の形態におけるサスペンション用基板、サスペンション、ヘッド付サスペンション、ハードディスクドライブ、サスペンション用基板の製造方法およびサスペンションの製造方法について説明する。
図23乃至図30に示す第7の実施の形態においては、サスペンション用基板が、一対のピエゾ素子に接続可能なように、基板本体領域の両側方に配置された一対の接続構造領域を有している点が主に異なり、他の構成は、図1乃至図10に示す第1の実施の形態と略同一である。なお、図23乃至図30において、図1乃至図10に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
図23に示すように、サスペンション用基板1は、複数の配線13が延びている基板本体領域2と、一対のピエゾ素子(アクチュエータ素子、図27参照)44に導電性接着剤を介して接続可能な接続構造領域3と、を有している。このうち基板本体領域2には、後述のスライダ52(図29参照)に接続されるヘッド端子5と、図示しない外部機器に接続される外部機器接続端子6とが設けられており、ヘッド端子5と外部機器接続端子6とは、配線13によって接続されている。また、一対の接続構造領域3は、基板本体領域2の両側方に配置されており、連結領域4を介して基板本体領域2に連結されている。
図23および図25に示すように、サスペンション用基板1は、絶縁層10と、絶縁層10のピエゾ素子144の側の面(一方の面)に設けられた金属支持層11と、絶縁層10の他方の面に設けられた複数の配線13を有する配線層12と、を備えている。このうち、配線層12は、各接続構造領域3に設けられ、ピエゾ素子144に導電性接着剤(例えば、銀ペースト)を介して電気的に接続される配線接続部16を有している。各配線接続部16は、各配線13と同一材料により形成されている。また、複数の配線13のうち対応する一対の配線13は、外部機器接続端子6から連結領域4を介して接続構造領域3に延び、配線接続部16を介してピエゾ素子144に電気的に接続されるようになっている。なお、図示しないが、絶縁層10と配線層12との間に、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、銅(Cu)からなり、約300nm厚さを有するシード層が介在されており、絶縁層10と配線層12との密着性を向上させている。
図24および図25に示すように、接続構造領域3に位置する配線接続部16には、導電性接着剤が注入される配線層貫通孔133が設けられている。本実施の形態においては、配線層貫通孔133は、配線接続部16の中央部に1つだけ設けられ、円形状の孔となっている。
絶縁層10には、配線層貫通孔133に連通する絶縁層貫通孔132が設けられており、金属支持層11には、配線層貫通孔133および絶縁層貫通孔132に連通する金属支持層貫通孔131が設けられており、絶縁層貫通孔132および金属支持層貫通孔131に、導電性接着剤が注入されるようになっている。また、配線層貫通孔133の外縁133aは、絶縁層貫通孔132の外縁132a、金属支持層貫通孔131の外縁131aおよび保護層貫通孔134の外縁134aより内方に位置し、配線接続部16の一部が露出されるようになっている。なお、本実施の形態においては、絶縁層貫通孔132の外縁132aは、金属支持層貫通孔131の外縁131aより内方に位置しており、配線接続部16を支持して配線接続部16の変形を防止している。
図24および図25に示すように、金属支持層11は、各接続構造領域3に設けられ、内部に金属支持層貫通孔131を形成する枠体部17を有している。連結領域4においては、金属支持層11はエッチングで除去されており、各枠体部17は、基板本体領域2における金属支持層11と分離されて、電気的に絶縁されている。また、各枠体部17の外縁17aは、接続構造領域3における絶縁層10の外縁10aより外方に位置している。なお、本実施の形態においては、各枠体部17、および、絶縁層10の接続構造領域における部分は、リング状に形成されており、各枠体部17の外径は、絶縁層10の当該部分の外径より大きくなっている。
図25に示すように、絶縁層10上には、配線層12の各配線13を覆う保護層20が設けられている。接続構造領域3において、保護層20に、配線層貫通孔133に連通する保護層貫通孔134が設けられている。なお、図23および図24においては、図面を明瞭にするために、保護層20は省略している。
配線接続部16の露出された部分に、ニッケル(Ni)めっきおよび金(Au)めっきが順次施されて、めっき層115が形成されている。このことにより、配線層16の露出された部分が腐食することを防止している。このめっき層115の厚さは、0.5μm〜4.0μmであることが好ましい。
次に、各構成部材について詳細に述べる。
絶縁層10の材料としては、所望の絶縁性を有する材料であれば特に限定されることはないが、例えば、ポリイミド(PI)を用いることが好適である。なお、絶縁層10の材料は、感光性材料であっても非感光性材料であっても用いることができる。また、絶縁層10の厚さは、5μm〜30μm、とりわけ8μm〜10μmであることが好ましい。このことにより、金属支持層11と各配線13との間の絶縁性能を確保するとともに、サスペンション用基板1全体としての剛性が喪失されることを防止することができる。
各配線13は、電気信号を伝送するための導体として構成されており、各配線13の材料としては、所望の導電性を有する材料であれば特に限定されることはないが、銅(Cu)を用いることが好適である。銅以外にも、純銅に準ずる電気特性を有する材料であれば用いることもできる。ここで、各配線13の厚さは、例えば1μm〜18μm、とりわけ9μm〜12μmであることが好ましい。このことにより、各配線13の伝送特性を確保するとともに、サスペンション用基板1全体としての柔軟性が喪失されることを防止することができる。なお、配線接続部16は、各配線13と同一の材料、同一の厚みからなっている。
金属支持層11の材料としては、所望の導電性、弾力性、および強度を有するものであれば特に限定されることはないが、例えば、ステンレス、アルミニウム、ベリリウム銅、またはその他の銅合金を用いることができ、好ましくはステンレスを用いることが好適である。なお、金属支持層11の厚さは、配線13の厚さよりも大きいことが好ましい。また、金属支持層11の厚さは、一例として、10μm〜30μm、とりわけ15μm〜20μmとすることができる。このことにより、金属支持層11の導電性、剛性、および弾力性を確保することができる。
保護層20の材料としては、樹脂材料、例えば、ポリイミドを用いることが好適である。なお、保護層20の材料は、感光性材料であっても非感光性材料であっても用いることができる。保護層20の厚さは、2μm〜30μmであることが好ましい。
次に、図26乃至図28を用いて、本実施の形態におけるサスペンション41について説明する。図26に示すサスペンション41は、ベースプレート42と、ベースプレート42上に取り付けられ、サスペンション用基板1の金属支持層11を保持するロードビーム43と、上述のサスペンション用基板1と、ベースプレート42およびロードビーム43の少なくとも一方に接合されると共に、サスペンション用基板1の接続構造領域3に接続されたピエゾ素子144と、を有している。なお、本実施の形態においては、ピエゾ素子144は、ベースプレート42に接合されるようになっている。また、ベースプレート42およびロードビーム43は、ステンレスからなっている。
ピエゾ素子144は、電圧が印加されることにより伸縮する圧電素子として構成されている。各ピエゾ素子144は、図27に示すように、互いに対向する一対の電極144aと、一対の電極144a間に介在され、例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等の圧電セラミックスからなる圧電材料部144bと、を有している。一対のピエゾ素子144の圧電材料部144bは、互いに180°異なる分極方向となるように形成されており、所定の電圧が印加されると、一方のピエゾ素子144が収縮すると共に、他方のピエゾ素子144が伸長するようになっている。このようなピエゾ素子144は、図示しないが、スライダ52の中心を通る長手方向軸線に対して互いに線対称に配置されていることが好ましい。このようにして、スライダ52のスウェイ方向への変位に対して、各ピエゾ素子144の伸縮の影響を均等にすることができ、スライダ52のスウェイ方向の変位を容易に調整することができ、アクチュエータ素子として機能するようになっている。また、本実施の形態においては、ピエゾ素子144に接続される接続構造領域3が、基板本体領域2の両側方に配置されているため、ピエゾ素子144の伸縮を効果的にスライダ52の変位に利用することができるようになっている。
このようなピエゾ素子144は、非導電性接着剤によりベースプレート42に接合されている。また、図示しないが、ピエゾ素子144の一方(サスペンション用基板1とは反対側)の電極144aは、導電性接着剤を用いて、ベースプレート42に電気的に接続されている。
一方、ピエゾ素子144の他方(サスペンション用基板1の側)の電極144aは、導電性接着剤を用いて、接続構造領域3に接合されると共に電気的に接続されている。すなわち、図28に示すように、接続構造領域3における金属支持層貫通孔131、絶縁層貫通孔132および配線層貫通孔133に、導電性接着剤が注入されて導電性接着部148が形成され、ピエゾ素子144が、導電性接着部148を介して、接続構造領域3に接合されると共に、ピエゾ素子144の電極144aが、導電性接着部148を介して、配線接続部16に電気的に接続されている。この注入された導電性接着剤は、配線層貫通孔133から突出し、導電性接着部148は、保護層貫通孔134内にまで延びている。
次に、図29により、本実施の形態におけるヘッド付サスペンション51について説明する。図29に示すヘッド付サスペンション51は、上述したサスペンション41と、サスペンション用基板1のヘッド端子5に接続されたスライダ52とを有している。なお、本実施の形態におけるハードディスクドライブ61は、図8に示す形態と同様となっているため、ここでは詳細な説明は省略する。
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用、すなわち本実施の形態によるサスペンション用基板1の製造方法について説明する。ここでは、一例として、接続構造領域3の断面を示す図30を用いて、サブトラクティブ法によりサスペンション用基板1を製造する方法について説明する。
まず、絶縁層10と、絶縁層10のピエゾ素子144側の面に設けられた金属支持層11と、絶縁層10の他方の面に設けられた配線層12と、を有する積層体35を準備する(図30(a)参照)。この場合、まず、金属支持層11を準備し、この金属支持層11上に、非感光性ポリイミドを用いた塗工方法により絶縁層10が形成される。続いて、絶縁層10上に、ニッケル、クロム、および銅がスパッタ工法により順次コーティングされ、シード層(図示せず)が形成される。その後、このシード層を導通媒体として、銅めっきにより配線層12が形成される。このようにして、絶縁層10と、金属支持層11と、配線層12と、を有する積層体35が得られる。
続いて、配線層12において、複数の配線13と配線接続部16とが形成されると共に、配線接続部16に配線層貫通孔133が形成され、金属支持層11において金属支持層貫通孔131が形成される(図30(b)参照)。この場合、まず、配線層12の上面および金属支持層11の下面に、フォトファブリケーションの手法により、ドライフィルムを用いて、パターン状のレジスト(図示せず)が形成される。次に、配線層12および金属支持層11のうちレジストから露出された部分がエッチングされる。ここで、配線層12および金属支持層11をエッチングする方法は、特に限定されるものではないが、ウェットエッチングを行うことが好ましい。とりわけ、エッチング液は、金属支持層11の材料の種類に応じて適宜選択することが好ましいが、例えば、金属支持層11がステンレスからなる場合には、塩化第二鉄水溶液等の塩化鉄系エッチング液を用いることができる。エッチングが行われた後、レジストは除去される。
次に、絶縁層10上に、配線層12の各配線13および配線接続部16を覆う保護層20が形成されると共に、当該保護層20に、保護層貫通孔134が形成される(図30(c)参照)。この場合、非感光性ポリイミドが、ダイコータを用いて、絶縁層10上にコーティングされ、これを乾燥させて、保護層20が形成される。続いて、形成された保護層20上に、パターン状のレジスト(図示せず)が形成され、保護層20のうち露出された部分がエッチングされ、保護層20を硬化させる。このようにして、保護層貫通孔134が得られ、これにより、配線接続部16のピエゾ素子144とは反対側の面が露出される。その後、レジストが除去される。
その後、絶縁層10において、絶縁層10を貫通する絶縁層貫通孔132が形成される(図30(d)参照)。この場合、まず、パターン状のレジスト(図示せず)が形成され、絶縁層10の露出された部分がエッチングされて、絶縁層貫通孔132が形成されると共に絶縁層10が外形加工される。このようにして、絶縁層貫通孔132が得られ、これにより、配線接続部16のピエゾ素子144の側の面が露出する。ここで、絶縁層10をエッチングする方法は、特に限定されるものではないが、ウェットエッチングを行うことが好ましい。とりわけ、エッチング液は、絶縁層10の材料の種類に応じて適宜選択することが好ましいが、例えば、絶縁層10がポリイミド樹脂からなる場合には、有機アルカリエッチング液等のアルカリ系エッチング液を用いることができる。エッチングが行われた後、レジストは除去される。
次に、配線接続部16の露出された部分に、めっきが施されて、めっき層115が形成される(図30(e)参照)。すなわち、配線接続部16の露出された部分が、酸洗浄されて、電解めっき法によりニッケルめっきおよび金めっきが順次施されて、0.5μm〜4.0μmの厚さを有するめっき層115が形成される。この場合、スライダ52に接続されるヘッド端子5と、外部機器接続端子6にも、同様にしてめっきが施される。なお、めっきの種類としては、ニッケルめっき、金めっきに限定されるものではなく、銀(Ag)めっき、パラジウム(Pd)めっきを施すようにしても良い。
めっき層115が形成された後、金属支持層11が外形加工されて、枠体部17が形成される(図30(e)参照)。この場合、まず、金属支持層11の下面に、ドライフィルムを用いて、パターン状のレジスト(図示せず)が形成される。次に、例えば、塩化鉄系エッチング液により、金属支持層11のうちレジストから露出された部分がエッチングされ、枠体部17が形成されると共に金属支持層11が外形加工される。この枠体部17は、その外縁17aが、絶縁層10の外縁10aより外方に位置するように形成され、基板本体領域2における金属支持層11の部分と分離される。その後、レジストは除去され、本実施の形態によるサスペンション用基板1が得られる。
次に、図10を用いて、このようにして得られたサスペンション用基板1を用いたサスペンションの製造方法について説明する。
まず、ベースプレート42およびロードビーム43を準備すると共に、上述のようにしてサスペンション用基板1を準備する。
次に、サスペンション用基板1が、ロードビーム43(図26参照)を介して、ベースプレート42に、溶接により取り付けられる。この場合、ロードビーム43に設けられたビーム治具孔(図示せず)と、サスペンション用基板1に設けられた治具孔(図示せず)とにより、ロードビーム43とサスペンション用基板1とのアライメントが行われて、溶接により固定される。
続いて、ピエゾ素子144が、非導電性接着剤を用いてベースプレート42に接合されると共に、導電性接着剤を用いて、ピエゾ素子144の一方の電極144aが、ベースプレート42に電気的に接続される。
また、金属支持層11の枠体部17とピエゾ素子144の電極144aとの間の隙間から、金属支持層貫通孔131、絶縁層貫通孔132および配線層貫通孔133に導電性接着剤が注入されて導電性接着部148(図28参照)が形成される。この場合、導電性接着剤は、配線層貫通孔133から突出するように注入され、導電性接着部148が保護層貫通孔134内に延びるようになる。このようにして、ピエゾ素子144の他方の電極144aは、導電性接着部148を介して、サスペンション用基板1の接続構造領域3に接合されると共に電気的に接続される。
このようにして、サスペンション用基板1の接続構造領域3に接続されたピエゾ素子144を含むサスペンション41が得られる。
このサスペンション41のヘッド端子5に、スライダ52が接続されて図29に示すヘッド付サスペンション51が得られる。さらに、このヘッド付サスペンション51がハードディスクドライブ61のケース62に取り付けられて、図8に示すハードディスクドライブ61が得られる。
スライダ52を移動させる際、ボイスコイルモータ65が、スライダ52の位置を大まかに調整し、ピエゾ素子144が、スライダ52の位置を微小調整する。すなわち、サスペンション用基板1の一対の接続構造領域3の側のピエゾ素子144の電極144aに所定の電圧を印加することにより、一方のピエゾ素子144が長手方向に収縮すると共に、他方のピエゾ素子144が伸長する(図24参照)。この場合、ベースプレート42とロードビーム43の一部が弾性変形し、ロードビーム43の先端側に位置するスライダ52がスウェイ方向(旋回方向)に移動することができる。このようにして、スライダ52を、ディスク63の所望のトラックに、迅速に、かつ精度良く位置合わせすることができる。
このように本実施の形態によれば、ピエゾ素子144に導電性接着剤を介して接続される配線接続部16に、導電性接着剤が注入される配線層貫通孔133が設けられている。このことにより、配線層貫通孔133内に導電性接着剤を注入させて、導電性接着剤と配線接続部16との接触面積を増大させることができ、導電性接着剤と配線接続部16との間の導通抵抗を低減させることができる。また、導電性接着剤を配線層貫通孔133内に注入させるため、導電性接着剤のアンカー効果を発揮させ、導電性接着剤と配線接続部16との接着性を向上させることができる。とりわけ、導電性接着剤を配線層貫通孔133から突出させて、導電性接着剤を配線接続部16の保護層20の側の面に接触させることができ、導電性接着剤と配線接続部16との間の接触面積をより一層増大させて、アンカー効果をより一層発揮させることができる。このため、ピエゾ素子144を接続するための導電性接着剤との導電性および接着性を向上させることができる。
ところで、サスペンション用基板の端子部と圧電素子とを接合するための導電性接着剤には、以下のような理由から、銀ペーストを用いることが主流になっている。すなわち、圧電素子の電極としては、一般的に、銀または金が用いられているが、このような金属は、半田に含まれている錫に対して可溶性を有している。このため、半田付けの作業時間が長くなると、電極の銀または金は、半田の中に溶け込み、圧電素子の電極が消失される。電極の消失を防止するためには、数%の金または銀を半田に含有させることが挙げられるが、電極の消失を完全に防ぐことは困難である。また、この場合、半田付け作業時の温度上昇により、消極(Depolarization)を引き起こす可能性がある。このような観点から、錫に対して可溶性ではなく、かつ、接着温度が低い銀ペーストが用いられている。銀ペーストには、接着性が要求されることはもちろんのこと、消極の防止を目的として低いガラス転移温度が要求されると共に、圧電素子の収縮に対して効果的にスライダを変位させることを目的として低い弾性率が要求される。そこで、銀ペーストの導電性を向上させるためには銀フィラーの含有量を増大させることが有効と考えられるが、銀フィラーの含有量を増大させた場合、銀ペーストのガラス転移温度が高くなるという問題がある。また、銀ペーストの接着性を向上させるためには銀フィラーを微細化することが有効と考えられるが、銀フィラーを微細化した場合、銀ペーストの弾性率が高くなるという問題がある。このことから、銀ペーストとサスペンション用基板の端子部との導電性および接着性を向上させることが困難になっている。しかしながら、本実施の形態によれば、上述したように、ピエゾ素子144に導電性接着剤を介して接続される配線接続部16に、導電性接着剤が注入される配線層貫通孔133が設けられているため、ピエゾ素子144を接続するための導電性接着剤との導電性および接着性を向上させることができる。
また、本実施の形態によれば、一対の接続構造領域3が、基板本体領域2の両側方に設けられ、金属支持層11の各枠体部17の外縁17aが、絶縁層10の接続構造領域3における部分の外縁10aより外方に位置している。このことにより、導電性接着剤を注入する際、枠体部17から外方にはみだす導電性接着剤を容易に確認することができる。このため、導電性接着剤の注入量を適量に調整することができ、導電性接着剤が枠体部17から大きくはみ出して、接続構造領域3の周辺に存在する他の金属構造物(例えば、ベースプレート42)に達することを防止することができる。この結果、ピエゾ素子144がベースプレート42等に導電性接着剤を介して短絡することを防止することができる。
さらに、本実施の形態によれば、上述のように、ピエゾ素子144上に広がる導電性接着剤の量を抑制することができるため、ピエゾ素子144の電極144aへの導電性接着剤の浸透量を抑制することができ、圧電材料部144bを構成する材料が劣化することを防止することができる。
なお、本実施の形態においては、サブトラクティブ法により、サスペンション用基板1を製造する例について説明したが、アディティブ法により、サスペンション用基板1を製造しても良い。
また、本実施の形態においては、ピエゾ素子144は、ベースプレート42に接合されている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、ピエゾ素子144が、任意の位置で、ロードビーム43のみに接合されるようにしても良く、あるいは、ベースプレート42およびロードビーム43の両方に接合されるようにしても良い。さらには、ロードビーム43の先端部に、スライダ52を保持するスライダ保持プレート(図示せず)が設けられ、ロードビーム43とスライダ保持プレートとの間にピエゾ素子144が接合されるようにしても良い。
また、本実施の形態においては、図28に示すように、配線層貫通孔133に注入された導電性接着剤が、当該配線層貫通孔133から突出し、導電性接着部148が、保護層貫通孔134内に延びている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、図31に示すように、配線層貫通孔133から突出される導電性接着剤の量を増大させて、導電性接着部148が保護層貫通孔134の外縁134aに達するようにしてもよい。このことにより、導電性接着剤と、配線接続部16との接触面積をより一層増大させることができ、導電性接着剤と配線接続部16との間の導通抵抗をより一層低減させることができる。また、この場合、接続構造領域3における保護層20を、導電性接着剤のための液止め部として機能させることができ、導電性接着剤の注入量を適量に調整することができると共に、保護層20から導電性接着剤が接続構造領域3の周辺にはみ出すことを防止することができる。
また、本実施の形態においては、図32に示すように、接続構造領域3において、絶縁層10のピエゾ素子144の側の面が露出されていてもよい。この場合、接続構造領域3には、金属支持層11が形成されていない。このようなサスペンション用基板1は、金属支持層11を外形加工する工程において(図30(e)参照)、金属支持層11のうち接続構造領域3における部分をエッチングして除去することにより、得られる。この場合、接続構造領域3の柔軟性を向上させることができる。
あるいは、図33に示すように、接続構造領域3において、絶縁層10のピエゾ素子144の側の面と共に、ピエゾ素子144とは反対側の面(すなわち、配線接続部16以外の保護層20の側の面)が露出されていてもよい。この場合、接続構造領域3には、金属支持層11および保護層20は形成されていない。このようなサスペンション用基板1は、保護層20を形成する工程において(図30(c)参照)、保護層20のうち接続構造領域3における部分をエッチングして除去し、金属支持層11を外形加工する工程において(図30(e)参照)、金属支持層11のうち接続構造領域3における部分をエッチングして除去することにより、得られる。この場合、接続構造領域3の柔軟性をより一層向上させることができる。
さらには、他の形態として、図34(a)に示すように、配線接続部16の全体が露出されていてもよい。この場合、接続構造領域3には、金属支持層11、絶縁層10および保護層20は形成されていない。このようなサスペンション用基板1は、保護層20を形成する工程において(図30(c)参照)、保護層20のうち接続構造領域3における部分をエッチングして除去し、金属支持層11を外形加工する工程において(図30(e)参照)、金属支持層11のうち接続構造領域3における部分をエッチングして除去し、その後、絶縁層10のうち接続構造領域3における部分をエッチングして除去することにより、得られる。この場合、配線接続部16を全体にわたって露出させることができるため、導電性接着剤と、配線接続部16との接触面積をより一層増大させることができ、導電性接着剤と配線接続部16との間の導通抵抗をより一層低減させることができる。例えば、図34(b)に示すように、配線接続部16を導電性接着剤で覆うこともでき、導電性接着剤と配線接続部16との接触面積をより一層増大させることができる。また、この場合、接続構造領域3の柔軟性をより一層向上させることがもできる。
第8の実施の形態
次に、図35により、本発明の第8の実施の形態におけるサスペンション用基板、サスペンション、ヘッド付サスペンション、ハードディスクドライブ、サスペンション用基板の製造方法およびサスペンションの製造方法について説明する。
図35に示す第8の実施の形態においては、配線接続部に複数の配線層貫通孔が設けられている点が主に異なり、他の構成は、図23乃至図30に示す第7の実施の形態と略同一である。なお、図35において、図23乃至図30に示す第7の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
図35に示すように、配線層貫通孔133が、配線接続部16に複数設けられるようにしてもよい。すなわち、配線接続部16に、図35(a)に示すように、3つの配線層貫通孔133を設けてもよく、図35(b)に示すように、4つの配線層貫通孔133を設けてもよく、あるいは、図35(c)に示すように、5つの配線層貫通孔133を設けてもよい。なお、配線接続部16に設けられる配線層貫通孔133の個数は、3〜5個に限られることはなく、任意とすることができる。
このように本実施の形態によれば、導電性接着剤を、複数の配線層貫通孔133に注入させることができる。このことにより、導電性接着剤と配線接続部16との間の接触面積をより一層増大させることができ、導電性接着剤と配線接続部16との間の導通抵抗を低減させることができる。また、導電性接着剤のアンカー効果をより一層発揮させることができ、導電性接着剤と配線接続部16との接着性をより一層向上させることができる。このため、ピエゾ素子144を接続するための導電性接着剤との導電性および接着性をより一層向上させることができる。
第9の実施の形態
次に、図36乃至図38により、本発明の第9の実施の形態におけるサスペンション用基板、サスペンション、ヘッド付サスペンション、ハードディスクドライブ、サスペンション用基板の製造方法およびサスペンションの製造方法について説明する。
図36乃至図38に示す第9の実施の形態においては、接続構造領域において、金属支持層に連通切欠部が設けられると共に、絶縁層に第2の連通切欠部が設けられている点が主に異なり、他の構成は、図23乃至図30に示す第7の実施の形態と略同一である。なお、図36乃至図38において、図23乃至図30に示す第7の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
図36および図37に示すように、金属支持層11の各枠体部17に、金属支持層貫通孔131を枠体部17の外方に連通する連通切欠部171が設けられている。絶縁層10には、連通切欠部171に対応するように、絶縁層貫通孔132を接続構造領域3における絶縁層10の外方に連通する第2の連通切欠部172が設けられている。
本実施の形態におけるサスペンション41においては、図38に示すように、導電性接着剤は、金属支持層貫通孔131、絶縁層貫通孔132および配線層貫通孔133だけでなく、連通切欠部171および第2の連通切欠部172にも注入されて、導電性接着部148が形成されている。
図36乃至図38に示すサスペンション用基板1は、枠体部17を形成する工程において(図30(f)参照)、エッチングにより枠体部17に連通切欠部171が形成され、連通切欠部171を形成した後、上述した絶縁層10のエッチングと同様にして、連通切欠部171に対応するように第2の連通切欠部172を形成することにより、得られる。
このように本実施の形態によれば、金属支持層貫通孔131および絶縁層貫通孔132に注入された導電性接着剤は、連通切欠部171および第2の連通切欠部172を通って、接続構造領域3の外方にはみ出させることができる。このため、導電性接着剤のはみ出し方向を規制し、導電性接着剤を所望の方向にはみ出させることができ、サスペンション41としての振動特性が悪化することを防止することができる。
また、本実施の形態によれば、接続構造領域3において、絶縁層10に第2の連通切欠部172が設けられているため、第2の連通切欠部172において、配線接続部16のピエゾ素子144の側の面を露出させることができる。このことにより、導電性接着剤と配線接続部16との接触面積をより一層増大させることができ、導電性接着剤と配線接続部16との間の導通抵抗をより一層低減させることができる。
第10の実施の形態
次に、図39および図40により、本発明の第10の実施の形態におけるサスペンション用基板、サスペンション、ヘッド付サスペンション、ハードディスクドライブ、サスペンション用基板の製造方法およびサスペンションの製造方法について説明する。
図39および図40に示す第10の実施の形態においては、めっき層のアクチュエータ素子側の面が粗面化されている点が主に異なり、他の構成は、図23乃至図30に示す第7の実施の形態と略同一である。なお、図39および図40において、図23乃至図30に示す第7の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
図39に示すように、配線接続部16は、絶縁層10を貫通する絶縁層貫通孔132内に入り込んでいる。ここでは、絶縁層貫通孔132は、円錐状に形成され、配線接続部16は、絶縁層貫通孔132の全体にわたって入り込むように形成されている。このようにして、本実施の形態においては、導電性接着剤は、金属支持層貫通孔131および配線層貫通孔133に注入されるようになっている。
配線接続部16のピエゾ素子144の側の面は、粗面化され、配線接続部16の粗面化された面に、当該配線接続部16の粗面化に対応するように粗面化された表面を有するめっき層115が設けられている。ここで、図39に示す形態においては、粗面化された面には、1μm〜3μmの深さの凹凸が形成されていることが好ましい。
また、絶縁層10には、ピエゾ素子144の側に開口し、金属支持層貫通孔131に連通する絶縁層開口部181が形成されている。この絶縁層開口部181は、後述するように絶縁層10をハーフエッチングすることにより形成されるものであり、絶縁層10の厚さの略半分の深さを有し、金属支持層貫通孔131の孔径よりも大きい孔径を有している。
図39に示すサスペンション用基板1は、以下のようにして作製することができる。
まず、金属支持層11を準備する(図40(a)参照)。
続いて、金属支持層11上に、絶縁層10が形成されると共に、当該絶縁層10を貫通する絶縁層貫通孔132が形成される。この場合、まず、金属支持層11上に絶縁層10が形成される(図40(b)参照)。続いて、絶縁層10上に、パターン状のレジスト(図示せず)が形成され、絶縁層10のうちレジストから露出された部分がエッチングされて絶縁層貫通孔132が形成される(図40(c)参照)。この際、絶縁層貫通孔132内において、金属支持層11上に、絶縁層10の厚さよりも小さい高さ(例えば、1μm〜3μm)を有し、配線接続部16のピエゾ素子144の側の面を粗面化するための粗面化形成部180が形成される。この粗面化形成部180は、例えば、平面視で、複数の島状に形成されてもよく、あるいは、格子状に形成されてもよく、その平面形状は限定されるものではない。なお、このような粗面化形成部180は、例えば、感光性ポリイミドを用いて形成された絶縁層10に、ハーフトーンマスクを用いて露光、現像、イミド化することによって形成することができる。
次に、絶縁層10上に、シード層(図示せず)を介して、複数の配線13と、絶縁層貫通孔132に入り込み、ピエゾ素子144に導電性接着剤を介して電気的に接続される配線接続部16と、を有する配線層12が形成される(図40(d)参照)。この際、配線接続部16の一部は、粗面化形成部180上に形成される。
配線層12が形成された後、絶縁層10上に、各配線13および配線接続部16を覆う保護層20が形成される(図40(e)参照)。続いて、金属支持層11において、金属支持層11を貫通し、導電性接着剤が注入される金属支持層貫通孔131が形成される(図40(f)参照)。
次に、絶縁層10に、絶縁層開口部181が形成されると共に、粗面化形成部180が除去される(図40(g)参照)。この場合、金属支持層11をレジストとして、有機アルカリエッチング液等のアルカリ系エッチング液を用いて、金属支持層貫通孔131から絶縁層10がハーフエッチングされる。このことにより、絶縁層開口部181の孔径を、金属支持層貫通孔131の孔径より大きくすることができる(あるいは、同等とすることもできる)。このようにして、絶縁層開口部181が形成されると共に、粗面化形成部180が除去され、配線接続部16のピエゾ素子144の側の面が粗面化される。
その後、図40(h)に示すように、配線接続部16のピエゾ素子144の側の面にめっき層115が形成される。この場合、配線接続部16には、当該配線接続部16の粗面化に対応して粗面化されためっき層115が形成される。その後、金属支持層11が外形加工されて、枠体部17が形成される。
このように本実施の形態によれば、配線接続部16のピエゾ素子144の側の面を粗面化することにより、めっき層115の表面を粗面化して、導電性接着剤とめっき層115との接触面積をより一層増大させることができる。また、配線接続部16の粗面化の程度、すなわち、粗面化形成部180の微細度によっては、その表面の微小凹凸内に導電性接着剤を構成する銀ペーストの銀フィラーを入り込ませることができる。このことにより、導電性接着剤とめっき層との間の導通抵抗を低減させることができる。このため、ピエゾ素子144を接続するための導電性接着剤との導電性をより一層向上させることができる。
また、本実施の形態によれば、粗面化されためっき層の表面の微小凹凸内に、銀ペーストの樹脂が入り込むことができる。このため、導電性接着剤とめっき層115との接着面積をより一層増大させることができると共に、導電性接着剤のアンカー効果をより一層発揮させることができる。このため、ピエゾ素子144を接続するための導電性接着剤との接着性をより一層向上させることができる。
なお、図39に示す形態においては、配線接続部16に配線層貫通孔133が設けられ、保護層20に保護層貫通孔134が設けられている。しかしながら、図41に示すように、配線層貫通孔133および保護層貫通孔134を設けなくてもよい。この場合においても、めっき層115の表面が粗面化されるため、導電性接着剤とめっき層115との接触面積を増大させて、導電性接着剤とめっき層115との間の導通抵抗を低減させることができ、ピエゾ素子144を接続するための導電性接着剤との導電性を向上させることができる。
第11の実施の形態
次に、図42により、本発明の第11の実施の形態におけるサスペンション用基板、サスペンション、ヘッド付サスペンション、ハードディスクドライブ、サスペンション用基板の製造方法およびサスペンションの製造方法について説明する。
図42に示す第11の実施の形態においては、導電性接着剤のうち配線層貫通孔から突出した部分が、被覆部材で覆われている点が主に異なり、他の構成は、図23乃至図30に示す第7の実施の形態と略同一である。なお、図42において、図23乃至図30に示す第7の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
図42に示すように、保護層貫通孔134において、導電性接着剤が露出された部分は、被覆部材(飛散防止部材)90で覆われている。被覆部材90は、例えば、保護層貫通孔134において導電性接着部148が露出された部分に、例えばエポキシ樹脂を塗布することにより、形成することができる。なお、このような被覆部材90は、ピエゾ素子144のサスペンション用基板1とは反対側の電極144aをベースプレート42に電気的に接続する導電性接着部(図示せず)にも設けられていることが好ましい。
このように本実施の形態によれば、保護層貫通孔134における導電性接着部148が被覆部材90で覆われている。このことにより、銀ペーストからなる導電性接着部148の表面から、銀フィラーなどのパーティクルが飛散することを防止することができる。
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明してきたが、本発明によるサスペンション用基板、サスペンション、ヘッド付サスペンション、ハードディスクドライブ、サスペンション用基板の製造方法、およびサスペンションの製造方法は、上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。また、当然のことながら、本発明の要旨の範囲内で、これらの実施の形態を、適宜組み合わせることも可能である。
また、上述した第7の実施の形態乃至第11の実施の形態においては、サスペンション用基板1は、一対のピエゾ素子144に接続可能なように、基板本体領域2の両側方に配置された一対の接続構造領域3を有している例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、一対のピエゾ素子144と同等の機能を有する一体化されたピエゾ素子(図示せず)に接続可能なように単一の接続構造領域3を有するサスペンション用基板1に本発明を適用してもよい。例えば、図43に示すように、基板本体領域2の一側方に連結領域4を介して接続構造領域3が設けられたサスペンション用基板1に本発明を適用することができる。あるいは、図示しないが、単一の接続構造領域3が、図43に示すような連結領域4を形成することなく、基板本体領域2と一体的に設けられているサスペンション用基板1にも本発明を適用することができる。