図1乃至図15を用いて、本発明の実施の形態におけるサスペンション用基板、サスペンション、ヘッド付サスペンションおよびハードディスクドライブについて説明する。なお、本明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
図1に示すように、サスペンション用基板1は、基板本体領域2と、一対のピエゾ素子(アクチュエータ素子、図11参照)104に導電性接着剤(例えば、銀ペースト)を介して接続可能な接続構造領域3と、を有している。このうち基板本体領域2は、後述のヘッドスライダ112(図13参照)が実装されるヘッド領域(ジンバル領域)2aと、FPC基板(外部接続基板、図13参照)131が接続されるテール領域2bと、を有している。ヘッド領域2aには、ヘッドスライダ112に接続される複数のヘッド端子42が設けられ、テール領域2bには、FPC基板131に接続される複数のテール端子(外部端子)43が設けられており、ヘッド端子42とテール端子43とが、後述する信号配線41aを介してそれぞれ接続されている。また、一対の接続構造領域3は、基板本体領域2の両側方に配置されており、連結領域4を介して基板本体領域2に連結されている。
図1および図6に示すように、サスペンション用基板1は、金属支持層20と、金属支持層20上に設けられた絶縁層10と、絶縁層10上に設けられた、複数の配線41a、41b、41cを有する配線層40と、を備えている。なお、図示しないが、絶縁層10と配線層40との間に、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、銅(Cu)からなり、約300nmの厚さを有するシード層が介在されており、絶縁層10と配線層40との密着性を向上させている。また、絶縁層10上には、配線層40の各配線41a、41b、41cを覆う保護層50が設けられている。なお、図1においては、図面を明瞭にするために、保護層50は省略している。
図1に示すように、複数の配線は、一対の読取配線と一対の書込配線とを含む信号配線41aと、ピエゾ素子104に接続される一対の素子配線41bと、を含んでいる。このうち一対の素子配線41bは、金属支持層20の金属支持配線部分21bを介して、互いに電気的に接続されている。この金属支持層20の金属支持配線部分21bは、金属支持層20の本体部分21aから分離されて島状に形成されており、当該本体部分21aとは電気的に絶縁されるようになっている。また、金属支持層20の金属支持配線部分21bと素子配線41bとは、絶縁層10を貫通する配線ビア60によって互いに電気的に接続されている。このようにして、ピエゾ素子104から延びる2つの素子配線41bは、基板本体領域2にて合流し、テール領域2bに設けられた対応する一のテール端子43に接続されるようになっている。このことにより、一対のピエゾ素子104に印加される電圧を均等にして、各ピエゾ素子104の伸縮量の精度を向上させている。
また、ヘッド領域2aには、接地用のヘッド端子42の接地をとるための接地ビア61が設けられている。この接地ビア61は、接地配線41cを介して接地用のヘッド端子42に接続されており、絶縁層10を貫通して、接地用のヘッド端子42と金属支持層20の本体部分21aとを電気的に接続している。
また、図1に示すように、基板本体領域2において、金属支持層20および絶縁層10を貫通して、後述のロードビーム103との位置合わせを行うための2つの治具孔62が設けられている。各治具孔62は、サスペンション用基板1のヘッド領域2aの長手方向軸線(X)(後述するロードビーム103の長手方向軸線にも相当)上に配置されている。すなわち、当該長手方向軸線(X)は、各治具孔62を通っている。
次に、図2を用いて、サスペンション用基板1のヘッド領域2aの詳細について説明する。金属支持層20は、接着剤を用いてヘッドスライダ112が取り付けられるタング部23と、タング部23に離間し、後述するロードビーム103に固定される外枠部25と、を有している。このうち、外枠部25は、平面視でタング部23に信号配線41aを介在させて配置された一対のアウトリガー部27と、各アウトリガー部27の先端部を互いに連結する先端アーム26と、を含んでいる。ここで、平面視とは、金属支持層20と絶縁層10と配線層40とが積層された積層方向から見た状態、より具体的には、図2に示された状態を意味する。
先端アーム26は、後述するロードビーム103に溶接によって固定されるようになっている。各アウトリガー部27は、タング部23の外側に配置され、長手方向軸線(X)に沿って延びている。また、各アウトリガー部27は、タング部23に第1支持アーム31を介して連結されると共に、当該タング部23よりヘッド端子42とは反対側(テール領域2bの側)に配置された第2支持アーム32によって、互いに連結されている。このようにして、外枠部25は、タング部23のピボット運動が阻害されないように、タング部23を柔軟に支持している。
タング部23と外枠部25との間には、金属支持層20が除去された第1ジンバル開口部33および第2ジンバル開口部34が形成されている。また、タング部23上には、絶縁層10を介してヘッド端子42が設けられている。ヘッド端子42の下面は、金属支持層20が除去された端子開口部35を介して露出されるようになっている。
図2に示すように、絶縁層10は、タング部23と外枠部25のアウトリガー部27とを連結する細線状のリミッタ部11を有している。このリミッタ部11は、絶縁層10の配線支持部分12(後述)とは別体に設けられ、ヘッド領域2aに衝撃力などが負荷された場合に、ヘッド領域2aが塑性変形することを防止するためのものである。一方で、リミッタ部11は、所定のピボット運動が阻害されることを防止する機能をも必要とされている。このため、リミッタ部11は、柔軟性を持たせるために細線状に形成されている。なお、図2においては、直線状に形成されているリミッタ部11を概略的に示しているが、柔軟性をより一層向上させるために、波形状に形成されていてもよい。また、図2においては、リミッタ部11は、長手方向軸線(X)に対して横方向(直交する方向)に延びるように形成されてタング部23とアウトリガー部27とを連結している例を示しているが、これに限られることはなく、長手方向軸線(X)に沿って延びるように形成されて、タング部23と先端フレーム26とを連結するようにしてもよい。
絶縁層10は、平面視でタング部23とアウトリガー部27との間に配置された信号配線41aを支持する配線支持部分12と、配線支持部分12からアウトリガー部27に延びるトレースサポートタブ部13と、を有している。この場合、トレースサポートタブ部13によって、タング部23とアウトリガー部27との間で延びる信号配線41aを支持すると共に、当該信号配線41aの下方に金属支持層20が形成されることを回避してインピーダンスなどの信号配線41aの電気特性を向上させている。トレースサポートタブ部13は、直線状に形成されているが、その長手方向の長さは短く、微小に形成されている。
絶縁層10は、タング部23上に設けられた、ヘッドスライダ112を支持する2つのスペーサ部(第1スペーサ部14および第2スペーサ部15)を有している。このうち、第1スペーサ部14(マクラ)は、第2スペーサ部15に対してヘッド端子42の側に配置されている。第1スペーサ部14は、直線状に形成されているが、その長手方向の長さは短く、微小に形成されている。第2スペーサ部15は、第1スペーサ部14に対してヘッド端子42とは反対側(テール領域2bの側)に配置されており、U字状に形成されている。これら第1スペーサ部14および第2スペーサ部15によって囲まれるタング部23上の領域が、ヘッドスライダ112を接着するための接着剤93(図19参照)が塗布される領域となっている。
ところで、本実施の形態においては、絶縁層10は、金属支持層20の上方(金属支持層20と平面視で重なる位置)に配置された絶縁縁部を含み、金属支持層20の絶縁層10の側の面に、当該絶縁縁部を覆う上側金属補強部が設けられている。このことにより、絶縁層10が補強され、絶縁層10に亀裂が発生することを防止すると共に絶縁層10が金属支持層20から剥離されることを防止している。また、金属支持層20は、絶縁層10の下方(絶縁層10と平面視で重なる位置)に配置された金属支持縁部を含み、絶縁層10の金属支持層20の側の面に、当該金属支持縁部を覆う下側金属補強部が設けられている。このことにより、絶縁層10が補強され、絶縁層10に亀裂が発生することを防止すると共に絶縁層10が金属支持層20から剥離されることを防止している。このような上側金属補強部および下側金属補強部は、サスペンション用基板1に設けられている任意の絶縁縁部または任意の金属支持縁部に形成することができる。
ここで、絶縁縁部とは、絶縁層10の縁とその近傍の部分とを含む領域を示すものであって、例えば、後述するように、細線状に形成されたリミッタ部11の一対のリミッタ端部11a、11bと、直線状に形成されたトレースサポートタブ部13のタブ端部13aと、直線状に形成された第1スペーサ部14の一対のスペーサ端部14a、14bと、接続構造領域3においてリング状に形成された絶縁枠体部16の絶縁枠体縁部16aと、を含む概念として用いている。また、金属支持縁部とは、金属支持層20の縁と、その近傍の部分とを含む領域であって、かつ、絶縁層10の下方に形成されている部分の領域を示すものであり、例えば、リミッタ部11の下方に配置されたタング縁部23aおよびアウトリガー縁部(外枠縁部)27aと、トレースサポートタブ部13の下方に配置されたアウトリガー縁部(外枠縁部)27bと、絶縁枠体部16の下方に配置された金属枠体縁部38aと、を含む概念として用いている。
以下に、上側補強部および下側補強部が適用される代表的な例として、リミッタ部11、トレースサポートタブ部13、第1スペーサ部14、接続構造領域3の絶縁枠体部16に上側金属補強部70a、70bおよび下側金属補強部71a、71bが形成される例について説明する。まず、図3および図4を用いて、リミッタ部11を上側金属補強部70a、70bおよび下側金属補強部71a、71bによって補強する例について説明する。
図3(a)および図4に示すように、リミッタ部11は、金属支持層20のタング部23およびアウトリガー部27の上方にそれぞれ配置された一対のリミッタ端部(絶縁縁部)11a、11bを含んでいる。各リミッタ端部11a、11bは、互いに別体の上側金属補強部70a、70bによってそれぞれ覆われている。すなわち、一方の上側金属補強部70aは、タング部23のリミッタ部11の側の面に設けられると共に、当該リミッタ端部11aを覆うように形成されている。同様に、他方の上側金属補強部70bは、アウトリガー部27のリミッタ部11の側の面に設けられると共に、当該リミッタ端部11bを覆うように形成されている。
図3(b)および図4に示すように、タング部23は、リミッタ部11の下方に配置されたタング縁部(金属支持縁部)23aを含んでいる。また、アウトリガー部27は、リミッタ部11の下方に配置されたアウトリガー縁部(金属支持縁部)27aを含んでいる。タング縁部23aおよびアウトリガー縁部27aの各々は、互いに別体の下側金属補強部71a、71bによってそれぞれ覆われている。すなわち、一方の下側金属補強部71aは、リミッタ部11のタング部23の側の面に設けられると共に、当該タング縁部23aを覆うように形成されている。同様に、他方の下側金属補強部71bは、リミッタ部11のアウトリガー部27の側の面に設けられると共に、当該アウトリガー縁部27aを覆うように形成されている。
各上側金属補強部70a、70bとこれに対応する下側金属補強部71a、71bとは、リミッタ部11の側方において互いに連結されている。すなわち、図4(b)および(c)に示されているように、タング部23の側の上側金属補強部70aは、タング縁部23aから、対応するリミッタ端部11aとは反対側のリミッタ端部11bに向かってリミッタ部11に沿って延び、タング部23の側の下側金属補強部71aに、リミッタ部11の側方において連結されている。同様に、アウトリガー部27の側の上側金属補強部70bは、アウトリガー縁部27aから、対応するリミッタ部11bとは反対側のリミッタ端部11aに向かってリミッタ部11に沿って延び、アウトリガー部27の側の下側金属補強部71bに、リミッタ部11の側方において連結されている。このようにして、リミッタ部11は、タング縁部23aの近傍およびアウトリガー縁部27aの近傍において上側金属補強部70a、70bおよび下側金属補強部71a、71bによってそれぞれ囲まれている。なお、図4(c)、(d)は、アウトリガー部27の側の上側金属補強部70bおよび下側金属補強部71bを示しているが、タング部23の側の上側金属補強部70aおよび下側金属補強部71aも同様の形状とすることができる。
続いて、図5および図6を用いて、トレースサポートタブ部13が上側金属補強部72および下側金属補強部73によって補強される例について説明する。
図5および図6に示すように、絶縁層10のトレースサポートタブ部13は、アウトリガー部27の上方に配置されたタブ端部(絶縁縁部)13aを含んでいる。このタブ端部13aは、上側金属補強部72によって覆われている。すなわち、上側金属補強部72は、アウトリガー部27のトレースサポートタブ部13の側の面に設けられると共に、タブ端部13aを覆うように形成されている。
また、アウトリガー部27は、トレースサポートタブ部13の下方に配置されたアウトリガー縁部(金属支持縁部)27bを含んでいる。このアウトリガー縁部27bは、下側金属補強部73によって覆われている。すなわち、下側金属補強部73は、トレースサポートタブ部13のアウトリガー部27の側の面に設けられると共に、当該アウトリガー縁部27bを覆うように形成されている。
上側金属補強部72と下側金属補強部73とは、トレースサポートタブ部13の側方において互いに連結されている。すなわち、上側金属補強部72は、上側金属補強部70a、70bおよび下側金属補強部71a、71bと同様に、アウトリガー縁部27bからアウトリガー部27の外方(信号配線41aの側)にトレースサポートタブ部13に沿って延び、下側金属補強部73に、トレースサポートタブ部13の側方において連結されている。このようにして、トレースサポートタブ部13は、アウトリガー縁部27bの近傍において、上側金属補強部72および下側金属補強部73によって囲まれている。
次に、図7および図8を用いて、タング部23上の第1スペーサ部14が上側金属補強部74a、74bによって補強される例について説明する。
図7および図8に示すように、絶縁層10の第1スペーサ部14は、タング部23の上方に配置された一対のスペーサ端部14a、14bを含んでいる。各スペーサ端部14a、14bは、互いに別体の上側金属補強部(金属補強部)74a、74bによって覆われている。すなわち、上側金属補強部74a、74bは、タング部23の第1スペーサ部14の側の面に、対応するスペーサ端部14a、14bを覆うように形成されている。なお、上側金属補強部74a、74bは別体で形成されることに限られることはなく、一対のスペーサ端部14a、14bを覆うことが可能であれば、ヘッドスライダ112の保持の安定性向上のために一体に形成してもよい。
次に、図9および図10を用いて、接続構造領域3の絶縁枠体部16が上側金属補強部76および下側金属補強部77によって補強される例について説明する。ここでは、まず、接続構造領域3の構成について説明する。
図9および図10に示すように、配線層40は、各接続構造領域3に設けられた配線接続部44を有している。各配線接続部44は、対応する素子配線41bに接続されると共に、ピエゾ素子104に導電性接着剤を介して電気的に接続されるようになっている(図12参照)。
金属支持層20は、接続構造領域3に設けられたリング状の金属枠体部38を有している。金属枠体部38は、図1に示すように、島状に形成されており、基板本体領域2における金属支持層20の本体部分21aとは分離されて電気的に絶縁されている。また、絶縁層10は、接続構造領域3に設けられたリング状の絶縁枠体部16を有している。なお、絶縁枠体部16は、基板本体領域2および連結領域4における絶縁層10の部分と一体に形成されている。
金属支持層20の金属枠体部38は、当該金属枠体部38を貫通する金属支持層貫通孔66を形成している。また、絶縁層10の絶縁枠体部16は、金属支持層貫通孔66に対応して、当該絶縁枠体部16を貫通する絶縁層貫通孔67を形成している。このようにして、配線層40の配線接続部44のピエゾ素子104の側の面が、金属支持層貫通孔66および絶縁層貫通孔67により露出されるようになっている。すなわち、金属支持層貫通孔66および絶縁層貫通孔67により、配線接続部44のピエゾ素子104の側の面を露出させる注入孔65が構成されている。そして、本実施の形態においては、配線接続部44は、絶縁層貫通孔67上に設けられており、注入孔65の金属支持層貫通孔66および絶縁層貫通孔67に、導電性接着剤が注入されるようになっている(図12参照)。
なお、図10に示す接続構造領域3の断面構成は、後述するサブトラクティブ法によって形成することができるが、アディティブ法によって形成することもできる。この場合、図示しないが、配線接続部44の一部が絶縁層貫通孔67内に埋設される。このことにより、金属支持層貫通孔66によって配線接続部44が露出され、導電性接着剤は、絶縁層貫通孔67内に注入されることはなく、金属支持層貫通孔66内に注入される。すなわち、導電性接着剤は、金属支持層貫通孔66および絶縁層貫通孔67により構成される注入孔65の一部(金属支持層貫通孔66)に注入される。この場合、導電性接着剤の使用量を低減することができ、導電性接着剤が接続構造領域3の周囲にはみ出すことを抑制できる。
配線接続部44の絶縁層貫通孔67において露出された面に、ニッケル(Ni)めっきおよび金(Au)めっきが順次施されて、めっき層68が形成されている。このことにより、配線接続部44の露出された面が腐食することを防止すると共に、接触抵抗を低減している。なお、このめっき層68の厚さは、0.1μm〜10.0μmであることが好ましい。
また、絶縁層10上に設けられた保護層50には、配線接続部44の保護層50の側の面の一部を露出させる検査用貫通孔51が設けられている。この検査用貫通孔51において配線接続部44の露出された面にもめっき層68が形成されている。この検査用貫通孔51において配線接続部44が露出されているため、プローブ等の導通検査器を用いることにより、配線接続部44の上面から配線接続部44とピエゾ素子104との間の導通検査を行うことができるようになっている。
続いて、図9および図10を用いて、接続構造領域3の絶縁枠体部16が上側金属補強部76および下側金属補強部77によって補強される例について説明する。
図9および図10に示すように、絶縁層10の絶縁枠体部16は、接続構造領域3において金属支持層20の金属枠体部38の上方に配置された絶縁枠体縁部(絶縁縁部)16aを含んでいる。なお、接続構造領域3における絶縁枠体縁部16aとは、リング状に形成された絶縁枠体部16の外縁とその近傍の部分とを含む領域を意味している。このような絶縁枠体部16は、上側金属補強部76によって覆われている。すなわち、上側金属補強部76は、金属枠体部38の絶縁枠体部16の側の面に設けられると共に、当該絶縁枠体縁部16aを覆うように形成されている。本実施の形態においては、図9に示すように絶縁枠体縁部16aは円弧状に形成されており、上側金属補強部76は、絶縁枠体縁部16aに対応するように、平面視で円弧状またはC字状に形成されている。なお、図9においては、上側金属補強部76は、円弧状の絶縁枠体縁部16aの全体を覆うように形成されている例を示しているが、これに限らず、上側金属補強部76は、円弧状の絶縁枠体縁部16aの一部を覆うように形成してもよい。
また、金属支持層20の金属枠体部38は、接続構造領域3において絶縁層10の絶縁枠体部16の下方に配置された金属枠体縁部(金属支持縁部)38aを含んでいる。なお、接続構造領域3における金属枠体縁部38aとは、リング状に形成された金属枠体部38の内縁(金属支持層貫通孔66の外縁)とその近傍の部分とを含む領域を意味している。このような金属枠体縁部38aは、下側金属補強部77によって覆われている。すなわち、下側金属補強部77は、絶縁枠体部16の金属枠体部38の側の面に設けられると共に、金属枠体縁部38aを覆うように形成されている。なお、下側金属補強部77は、円弧状の金属枠体縁部38aの全体を覆うように形成されていてもよく、あるいは、当該金属枠体縁部38aの一部を覆うように形成されていてもよい。
次に、各構成部材について詳細に述べる。
絶縁層10の材料としては、所望の絶縁性を有する材料であれば特に限定されることはないが、例えば、ポリイミド(PI)を用いることが好適である。なお、絶縁層10の材料は、感光性材料であっても非感光性材料であっても用いることができる。また、絶縁層10の厚さは、5μm〜10μmであることが好ましい。このことにより、金属支持層20と各配線41a、41b、41cとの間の絶縁性能を確保するとともに、サスペンション用基板1全体としての剛性が喪失されることを防止することができる。
各配線41a、41b、41cは、電気信号を伝送するための導体として構成されており、各配線41a、41b、41cの材料としては、所望の導電性を有する材料であれば特に限定されることはないが、銅(Cu)を用いることが好適である。銅以外にも、純銅に準ずる電気特性を有する材料であれば用いることもできる。ここで、各配線41a、41b、41cの厚さは、例えば5μm〜18μmであることが好ましい。このことにより、各配線41a、41b、41cの伝送特性を確保するとともに、サスペンション用基板1全体としての柔軟性が喪失されることを防止することができる。なお、ヘッド端子42、テール端子43および配線接続部44は、各配線41a、41b、41cと同一の材料、同一の厚みで形成されており、各配線41a、41b、41cと共に配線層40を構成している。
金属支持層20は、ステンレスまたは42アロイにより形成されている。このことにより、金属支持層20に、所望の導電性、弾力性、および強度を持たせている。なお、金属支持層20の厚さは、配線41a、41b、41cの厚さよりも大きいことが好ましい。また、金属支持層20の厚さは、一例として、15μm〜20μmとすることができる。このことにより、金属支持層20の導電性、剛性、および弾力性を確保することができる。
保護層50の材料としては、樹脂材料、例えば、ポリイミドを用いることが好適である。なお、保護層50の材料は、感光性材料であっても非感光性材料であっても用いることができる。保護層50の厚さは、3μm〜10μmであることが好ましい。
上側金属補強部70a、70b、72、74a、74b、76および下側金属補強部71a、71b、73、77は、金属材料により形成されている。具体的には、ニッケルまたは銅により形成され得るが、とりわけニッケルにより形成されていることが好ましい。この場合、製造工程上有利である。すなわち、上述した配線ビア60および接地ビア61はニッケルにより形成されるため、これら配線ビア60および接地ビア61を形成する工程において、上側金属補強部70a、70b、72、74a、74b、76および下側金属補強部71a、71b、73、77を形成することができ、製造工程の煩雑化を防止できる。また、上側金属補強部70a、70b、72、74a、74b、76および下側金属補強部71a、71b、73、77を銅で形成する場合、配線層40と同様にして形成することが可能となり、製造工程の煩雑化を防止できる。
また、上側金属補強部70a、70b、72、74a、74b、76および下側金属補強部71a、71b、73、77の厚さは、5〜40μmであることが好適である。ここで、上側金属補強部70a、70b、72、74a、74b、76の厚さは、タング部23などの金属支持層20の絶縁層10の側の面からの厚さを意味しており、下側金属補強部71a、71b、73、77の厚さは、タング部23などの金属支持層20の絶縁層10とは反対側の面からの厚さを意味している。
次に、図11および図12を用いて、本実施の形態におけるサスペンション101について説明する。図11および図12に示すサスペンション101は、ベースプレート102と、ベースプレート102上に取り付けられ、サスペンション用基板1の金属支持層20を保持するロードビーム103と、上述のサスペンション用基板1と、ベースプレート102およびロードビーム103の少なくとも一方に接合されると共に、サスペンション用基板1の接続構造領域3に接続されたピエゾ素子104と、を有している。このうち、ベースプレート102およびロードビーム103は、ステンレスにより形成されており、ベースプレート102は、ピエゾ素子104を収容する収容開口部102aを有している。また、ロードビーム103は、ピエゾ素子104の接続構造領域3の側の面を露出させる露出開口部103aを有している。
なお、ロードビーム103には、サスペンション用基板1の各治具孔62に対応して、ビーム治具孔(図示せず)が設けられており、サスペンション用基板1にロードビーム103を取り付ける際に、サスペンション用基板1とロードビーム103との位置合わせを行うことができるようになっている。このロードビーム103の治具孔は、長手方向軸線(X)上に配置されている。そして、ロードビーム103とサスペンション用基板1とが溶接により固定されるようになっている。
ピエゾ素子104は、図12に示すように、ベースプレート102の収容開口部102aに収容されて、ベースプレート102に接合されると共に、ロードビーム103のベースプレート102の側の面に接合されている。また、ピエゾ素子104は、ロードビーム103の露出開口部103aを介して、サスペンション用基板1の接続構造領域3に接続されている。
ピエゾ素子104は、電圧が印加されることにより、図11、図13の矢印P方向に伸縮する直方体状の圧電素子として構成されており、ヘッドスライダ112をスウェイ方向(旋回方向、図11、図13の矢印Q方向)に移動させるためのものである。各ピエゾ素子104は、図12に示すように、互いに対向する一対の電極104aと、一対の電極104a間に介在され、例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等の圧電セラミックスにより形成された圧電材料部104bと、を有している。一対のピエゾ素子104の圧電材料部104bは、互いに180°異なる分極方向となるように形成されており、所定の電圧が印加されると、一方のピエゾ素子104が収縮すると共に、他方のピエゾ素子104が伸長するようになっている。このようなピエゾ素子104は、図11に示すように、長手方向軸線(X)に沿って配置されており、その伸縮方向が、当該長手方向軸線(X)に平行になっている。また、ピエゾ素子104は、長手方向軸線(X)に対して互いに線対称に配置されており、各ピエゾ素子104の伸縮が、ヘッドスライダ112に均等に伝達されるようになっている。また、本実施の形態においては、ピエゾ素子104に接続される接続構造領域3が、基板本体領域2の両側方に配置されており、ピエゾ素子104の伸縮を効果的にヘッドスライダ112の変位に利用することができるようになっている。
図12に示すように、各ピエゾ素子104は、非導電性接着剤からなる非導電性接着部106を介してベースプレート102およびロードビーム103に接合されている。また、ピエゾ素子104の一方(サスペンション用基板1とは反対側)の電極104aは、導電性接着剤からなる第1導電性接着部107を介してベースプレート102に電気的に接続されている。さらに、ピエゾ素子104の他方(サスペンション用基板1の側)の電極104aは、導電性接着剤からなる第2導電性接着部108を介して配線接続部44に接合されると共に電気的に接続されている。すなわち、配線接続部44とピエゾ素子104との間に導電性接着剤からなる第2導電性接着部108が形成され、ピエゾ素子104が第2導電性接着部108を介して配線接続部44に接合されると共に、ピエゾ素子104の当該他方の電極104aが、第2導電性接着部108を介して配線接続部44に電気的に接続されている。図12に示す形態においては、金属枠体部38の内縁(金属枠体縁部38a)が下側金属補強部77により覆われているため、下側金属補強部77によって形成された貫通孔78内に導電性接着剤が注入されている。この場合、貫通孔78の孔径を金属支持層貫通孔66の孔径より小さくすることができ、導電性接着剤108の使用量を減らすことができる。なお、図12は、一例として、接続構造領域3の長手方向軸線(X)に沿った断面を示している。
次に、図13により、本実施の形態におけるヘッド付サスペンション111について説明する。図13に示すヘッド付サスペンション111は、上述したサスペンション101と、サスペンション用基板1に実装され、そのヘッド端子42に接続されたヘッドスライダ112と、を有している。
続いて、図14により、本実施の形態におけるハードディスクドライブ121について説明する。図14に示すハードディスクドライブ121は、ケース122と、このケース122に回転自在に取り付けられ、データが記憶されるディスク123と、このディスク123を回転させるスピンドルモータ124と、ディスク123に所望のフライングハイトを保って近接するように設けられ、ディスク123に対してデータの書き込みおよび読み取りを行うヘッドスライダ112を含むヘッド付サスペンション111と、を有している。このうちヘッド付サスペンション111は、ケース122に対して移動自在に取り付けられており、ケース122にはヘッド付サスペンション111のヘッドスライダ112をディスク123上に沿って移動させるボイスコイルモータ125が取り付けられている。また、ヘッド付サスペンション111は、ボイスコイルモータ125にアーム126を介して取り付けられると共に、ハードディスクドライブ121を制御する制御部(図示せず)に接続されたFPC基板131(図13参照)に接続されている。このようにして、電気信号が、サスペンション用基板1とFPC基板131を介して、制御部とヘッドスライダ112との間で伝送されるようになっている。
次に、本実施の形態によるサスペンション用基板1の製造方法について説明する。ここでは、一例として、上述したリミッタ部11、トレースサポートタブ部13、第1スペーサ部14、絶縁枠体部16の断面を概略的に示す図15を用いて、サブトラクティブ法によりサスペンション用基板1を製造する方法について説明する。
まず、金属支持層20と、金属支持層20上に設けられた絶縁層10と、絶縁層10上に設けられた配線層40と、を有する積層体80を準備する(図15(a)参照)。この場合、まず、金属支持層20を準備し、この金属支持層20上に、非感光性ポリイミドを用いた塗工方法により絶縁層10が形成される。続いて、絶縁層10上に、ニッケル、クロムおよび銅がスパッタ工法により順次成膜され、シード層(図示せず)が形成される。その後、このシード層を導通媒体として、銅めっきにより配線層40が形成される。このようにして、絶縁層10と金属支持層20と配線層40とを有する積層体80が得られる。
続いて、配線層40および金属支持層20がエッチング加工される(図15(b)参照)。この場合、フォトファブリケーションの手法により、ドライフィルムを用いてパターン状のレジスト(図示せず)が形成され、配線層40および金属支持層20のうち露出された部分が、塩化第二鉄水溶液などの腐食液によりエッチングされる。このようにして、所望の形状を有する配線層40および金属支持層20が形成される。すなわち、配線層40において、各配線41a、41b、41c、配線接続部44、ヘッド端子42およびテール端子43が形成される。また、金属支持層20においては、接続構造領域3に金属支持層貫通孔66が形成されると共に、ヘッド領域2aに第1ジンバル開口部33および端子開口部35がそれぞれ形成される。その後、レジストは除去される。
配線層40および金属支持層20のエッチング加工の後、絶縁層10上に、配線層40の各配線41a、41b、41cおよび配線接続部44を覆う所望の形状の保護層50が形成される(図15(c)参照)。この場合、非感光性ポリイミドが、ダイコータを用いて、絶縁層10上に成膜され、これを乾燥させて、保護層50が形成される。続いて、パターン状のレジスト(図示せず)が形成され、保護層50のうち露出された部分がエッチングされ、保護層50を熱硬化させる。このようにして、所望の形状の保護層50が得られる。この際、保護層50には、検査用貫通孔51が形成される。なお、保護層50をエッチングする方法は、特に限定されるものではないが、ウェットエッチングを行うことが好ましい。とりわけ、エッチング液は、保護層50の材料の種類に応じて適宜選択されることが好ましいが、例えば、保護層50がポリイミド樹脂により形成される場合には、有機アルカリエッチング液等のアルカリ系エッチング液を用いることができる。その後、レジストが除去される。
保護層50が得られた後、絶縁層10が所望の形状にエッチング加工されて、リミッタ部11、トレースサポートタブ部13、第1スペーサ部14および絶縁枠体部16が形成される(図15(d)参照)。この場合、まず、パターン状のレジスト(図示せず)が形成され、絶縁層10の露出された部分がエッチングされて、絶縁層10が外形加工される。ここで、絶縁層10をエッチングする方法は、保護層50をエッチングする方法と同様に、特に限定されるものではないが、ウェットエッチングを行うことが好ましい。とりわけ、エッチング液は、絶縁層10の材料の種類に応じて適宜選択されることが好ましいが、例えば、絶縁層10がポリイミド樹脂により形成される場合には、有機アルカリエッチング液等のアルカリ系エッチング液を用いることができる。エッチングが行われた後、レジストは除去される。
絶縁層10のエッチング加工の後、上側金属補強部70a、70b、72、74a、74b、76および下側金属補強部71a、71bが形成される(図15(e)参照)。この場合、まず、パターン状のレジスト(図示せず)が形成される。続いて、レジストから露出された部分が酸洗浄されて、当該部分に電解めっき法によりニッケルめっきが施され、上側金属補強部70a、70b、72、74a、74b、76および下側金属補強部71a、71bが形成される。ここでは、上述した金属支持層20のエッチング加工によって既に形成されている第1ジンバル開口部33に、下側金属補強部71a、71bが形成される例を示している。また、上側金属補強部70a、70b、72、74a、74b、76および下側金属補強部71a、71bが形成される際、基板本体領域2においては、配線ビア60(図1参照)および接地ビア61が形成される。その後、レジストが除去される。
上側金属補強部70a、70b、72、74a、74b、76および下側金属補強部71a、71bが形成された後、配線接続部44にめっき層68が形成される(図15(f)参照)。この場合、まず、パターン状のレジスト(図示せず)が形成される。続いて、レジストから露出された部分が酸洗浄されて、当該部分に電解めっき法によりニッケルめっきおよび金めっきが順次施される。この際、ヘッド端子42およびテール端子43(図1参照)にも同様にしてめっき層68が形成される。なお、めっきを施す方法としては、電解めっき法に限られることはなく、浸漬めっき法、治具めっき法などを用いることもできる。その後、レジストは除去される。
めっき層68が形成された後、金属支持層20がエッチング加工される(図15(g)参照)。この場合、まず、パターン状のレジスト(図示せず)が形成される。続いて、例えば、塩化鉄系エッチング液により、金属支持層20のうちレジストから露出された部分がエッチングされて、金属支持層20が所望の形状に外形加工される。すなわち、タング部23、外枠部25(先端フレーム26およびアウトリガー部27)、金属枠体部38、第2ジンバル開口部34などが形成される。その後、レジストは除去され、本実施の形態によるサスペンション用基板1が得られる。
次に、このようにして得られたサスペンション用基板1を用いたサスペンションの製造方法について説明する。
まず、ベースプレート102に、ロードビーム103を介して、上述のようにして得られたサスペンション用基板1が、溶接により取り付けられる。この場合、まず、ベースプレート102にロードビーム103が溶接により固定され、続いて、ロードビーム103に設けられたビーム治具孔(図示せず)と、サスペンション用基板1に設けられた治具孔62とにより、ロードビーム103とサスペンション用基板1とのアライメントが行われる。その後、サスペンション用基板1の金属支持層20に溶接が施されて、ロードビーム103とサスペンション用基板1が互いに接合されて固定される。
次に、ピエゾ素子104が、接着剤を用いてベースプレート102およびロードビーム103に接合されると共に、サスペンション用基板1の接続構造領域3にそれぞれ接続される。この場合、まず、ピエゾ素子104が非導電性接着部106を介してベースプレート102およびロードビーム103に接合される。次いで、導電性接着剤が塗布されて第1導電性接着部107が形成され、第1導電性接着部107を介してピエゾ素子104の一方(サスペンション用基板1とは反対側)の電極104aが、ベースプレート102に導電性接着剤を介して電気的に接続される。
また、ピエゾ素子104の他方(サスペンション用基板1の側)の電極104aは、第2導電性接着部108を介してサスペンション用基板1の接続構造領域3に接合されると共に電気的に接続される(図12参照)。この場合、サスペンション用基板1の注入孔65に導電性接着剤が予め注入されており、ピエゾ素子104をベースプレート102およびロードビーム103に接合した際、接続構造領域3は、ピエゾ素子104の一方の電極104aに接合されると共に電気的に接続される。
このようにして、本実施の形態によるサスペンション101が得られる。
このサスペンション101のタング部23にヘッドスライダ112が接着されると共に、ヘッド端子42にヘッドスライダ112が接続されて、図13に示すヘッド付サスペンション111が得られる。さらに、このヘッド付サスペンション111がハードディスクドライブ121のアーム126に取り付けられると共に、サスペンション用基板1のテール端子43にFPC基板131が接続されて、図14に示すハードディスクドライブ121が得られる。
図14に示すハードディスクドライブ121においてデータの書き込みおよび読み取りを行う際、スピンドルモータ124によってディスク123が回転し、ボイスコイルモータ125によってヘッド付サスペンション111のヘッドスライダ112がディスク123に沿って移動する。この際、ヘッドスライダ112は、ディスク123の回転により生じた気流の影響を受けて、タング部23と共にピボット運動を行いながら、ディスク123に所望のフライングハイトを保って浮上する。この状態で、ヘッドスライダ112とディスク123との間で、データの受け渡しが行われる。この間、サスペンション用基板1とFPC基板131を介して、FPC基板131に接続されている制御部(図示せず)とヘッドスライダ112との間で電気信号が伝送される。このような電気信号は、サスペンション用基板1においては、各信号配線41aによって、ヘッド端子42(図1参照)とテール端子43との間で伝送される。
ヘッドスライダ112を移動させる際、ボイスコイルモータ125が、ヘッドスライダ112の位置を大まかに調整し、ピエゾ素子104が、ヘッドスライダ112の位置を微小調整する。すなわち、サスペンション用基板1の接続構造領域3の側のピエゾ素子104の電極104aに所定の電圧を印加することにより、長手方向軸線(X)に沿った方向(図11、13の矢印P方向)に、一方のピエゾ素子104が収縮すると共に他方のピエゾ素子104が伸長する。この場合、ベースプレート102の可撓部とロードビーム103の可撓部とが弾性変形し、ロードビーム103の先端側に位置するヘッドスライダ112がスウェイ方向(旋回方向Q)に移動することができる。なお、ピエゾ素子104の電極104aに印加される電圧は、素子配線41b、配線接続部44および第2導電性接着部108を介して当該電極104aに入力される。このようにして、ヘッドスライダ112を、ディスク123の所望のトラックに、迅速に、かつ精度良く位置合わせすることができる。
このように本実施の形態によれば、金属支持層20の上方に配置されたリミッタ端部11a、11bなどの絶縁縁部が、金属支持層20の絶縁層10の側の面に設けられた上側金属補強部70a、70b、72、74a、74b、76によって覆われている。また、絶縁層10の下方に配置されたタング縁部23aなどの金属支持縁部が、絶縁層10の金属支持層20の側の面に設けられた下側金属補強部71a、71b、73、77によって覆われている。このことにより、絶縁層10を補強して、絶縁層10に応力が集中して負荷されることを抑制できる。このため、絶縁層10に亀裂が発生することを防止できると共に、絶縁層10が金属支持層20から剥離されることを防止できる。この結果、絶縁層10の変形および破損を防止することができる。なお、金属支持層20のエッチング加工によって、金属支持層20の端面のうち絶縁層10に接する側のエッジが鋭くなっている場合であっても、下側金属補強部71a、71b、73、77によって絶縁層10を補強することにより、金属支持縁部を絶縁層10に確実に固定することができ、絶縁層10への亀裂の発生および剥離の発生を防止することができる。また、上側金属補強部70a、70b、72、74a、74b、76および下側金属補強部71a、71b、73、77は、めっきにより形成されるため、これらの金属補強部の端面のうち絶縁層10に接する側のエッジが鋭くなることを防止でき、絶縁層10への亀裂の発生および剥離の発生を防止することができる。
また、本実施の形態によれば、上側金属補強部70a、70b、72、74a、74b、76と下側金属補強部71a、71b、73、77とによって、絶縁縁部と金属支持層20とを挟持することができる。このことにより、絶縁層10をより一層補強することができる。とりわけ、本実施の形態によれば、上側金属補強部70a、70b、72、74a、74b、76と下側金属補強部71a、71b、73、77とは互いに連結されている。このため、絶縁層10をより一層確実に補強することができ、絶縁層10に応力が集中して負荷されることをより一層抑制できる。この結果、絶縁層10の変形および破損を防止することができる。
また、本実施の形態によれば、タング部23と外枠部25のアウトリガー部27とを連結するリミッタ部11の一対のリミッタ端部11a、11bが、タング部23およびアウトリガー部27のリミッタ部11の側の面に設けられた上側金属補強部70a、70bによりそれぞれ覆われている。また、リミッタ部11の下方に配置されたタング縁部23aが、リミッタ部11のタング部23の側の面に設けられた下側金属補強部71aにより覆われると共に、リミッタ部11の下方に配置されたアウトリガー縁部27aが、リミッタ部11のアウトリガー部27の側の面に設けられた下側金属補強部71bにより覆われている。このことにより、リミッタ部11を補強して、リミッタ部11に応力が集中して負荷されることを抑制できる。このため、リミッタ部11に亀裂が発生することを防止できると共に、リミッタ部11がタング部23またはアウトリガー部27から剥離されることを防止できる。この場合、リミッタ部11自体を、機械的強度を増大させることを目的として、幅を大きくしたり、あるいは、厚さを厚くしたりすることが不要となる。このことにより、リミッタ部11に、ピボット運動を阻害させない程度の柔軟性を持たせることができる。なお、上側金属補強部70a、70bは別体に形成されているため、リミッタ部11のうちリミッタ端部11a、11b以外の部分に上側金属補強部が形成されることを防止し、リミッタ部11の柔軟性が低下することを抑制することができる。また、この場合、上側金属補強部70a、70bを形成するための材料の使用量を低減することができ、サスペンション用基板1の重量増大を抑制することができる。同様に、下側金属補強部71a、71bは別体に形成されていることから、リミッタ部11の柔軟性の低下を抑制し、下側金属補強部71a、71bを形成するための材料の使用量を低減すると共にサスペンション用基板1の重量増大を抑制することができる。
また、本実施の形態によれば、リミッタ部11の各リミッタ端部11a、11bが、上側金属補強部70a、70bと下側金属補強部71a、71bとによって挟持されるため、リミッタ部11をより一層補強することができる。とりわけ、本実施の形態によれば、上側金属補強部70a、70bと下側金属補強部71a、71bとは互いにそれぞれ連結されていることから、リミッタ部11をより一層確実に補強することができる。
また、本実施の形態によれば、タング部23とアウトリガー部27との間で延びる信号配線41aを支持するトレースサポートタブ部13のタブ端部13aが、アウトリガー部27のトレースサポートタブ部13の側の面に設けられた上側金属補強部72により覆われている。また、トレースサポートタブ部13の下方に配置されたアウトリガー縁部27bが、トレースサポートタブ部13のアウトリガー部27の側の面に設けられた下側金属補強部73により覆われている。このことにより、トレースサポートタブ部13を補強して、トレースサポートタブ部13に応力が集中して負荷されることを抑制できる。このため、トレースサポートタブ部13に亀裂が発生することを防止できると共に、トレースサポートタブ部13がアウトリガー部27から剥離されることを防止できる。この場合、トレースサポートタブ部13自体を、機械的強度を増大させることを目的として、幅を大きくしたり、あるいは、厚さを厚くしたりすることが不要となる。
また、本実施の形態によれば、トレースサポートタブ部13のタブ端部13aが、上側金属補強部72と下側金属補強部73とによって挟持されるため、トレースサポートタブ部13をより一層補強することができる。とりわけ、本実施の形態によれば、上側金属補強部72と下側金属補強部73とは互いに連結されていることから、トレースサポートタブ部13をより一層確実に補強することができる。
また、本実施の形態によれば、タング部23上に設けられ、ヘッドスライダ112を支持する第1スペーサ部14の一対のスペーサ端部14a、14bが、タング部23の第1スペーサ部14の側の面に設けられた上側金属補強部74a、74bによりそれぞれ覆われている。このことにより、第1スペーサ部14を補強して、第1スペーサ部14がタング部23から剥離されることを防止できる。この場合、第1スペーサ部14自体を、剥離防止を目的として、その平面形状を大きくすることが不要となり、このことにより、第1スペーサ部14の形状を微小な形状に維持して、接着剤93(図19参照)の塗布領域を確保することが可能となる。なお、上側金属補強部74a、74bは別体に形成されているため、第1スペーサ部14のうちスペーサ端部14a、14b以外の部分に上側金属補強部が形成されることを防止し、タング部23の柔軟性が低下することを抑制することができる。また、この場合、上側金属補強部74a、74bを形成するための材料の使用量を低減することができ、サスペンション用基板の重量増大を抑制することができる。
また、本実施の形態によれば、接続構造領域3における絶縁枠体部16の絶縁枠体縁部16aが、金属枠体部38の絶縁枠体部16の側の面に設けられた上側金属補強部76により覆われている。また、絶縁枠体部16の下方に配置された金属枠体縁部38aが、絶縁枠体部16の金属枠体部38の側の面に設けられた下側金属補強部77により覆われている。このことにより、絶縁枠体部16を補強して、絶縁枠体部16が金属枠体部38から剥離されることを防止できる。この場合、絶縁枠体部16自体を、剥離防止を目的として、その平面形状を大きくすることが不要となる。とりわけ、本実施の形態によれば、絶縁枠体部16の絶縁枠体縁部16aが、上側金属補強部76と下側金属補強部77とによって挟持されるため、絶縁枠体部16をより一層補強することができる。
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明してきたが、本発明によるサスペンション用基板、サスペンション、ヘッド付サスペンションおよびハードディスクドライブは、上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であり、以下に示す各変形例を適宜組み合わせることも可能である。
以下、本発明の実施の形態の変形例について、図16乃至図18を用いて説明する。図16乃至図18においては、図1乃至図15に示す実施の形態と同一部分には同一の符号を付して、詳細な説明は省略する。なお、図16乃至図18においては、アウトリガー部27の側の上側金属補強部70bおよび下側金属補強部71bを示しているが、タング部23の側の上側金属補強部70aおよび下側金属補強部71aも同様に変形することは可能である。
(変形例1)
上述した本実施の形態において、図16(a)、(b)に示すように、リミッタ部11の各リミッタ端部11a、11bに、当該リミッタ部11を貫通する貫通孔90が設けられ、上側金属補強部70a、70bの一部が、当該貫通孔90内に埋設されるようにしてもよい。この場合、上側金属補強部70a、70bとリミッタ端部11a、11bとの密着性を向上させることができ、リミッタ部11の補強を強化することができる。このような貫通孔90は、トレースサポートタブ部13のタブ端部13a、第1スペーサ部14の各スペーサ端部14a、14bにも同様に設けることが可能である。
(変形例2)
また、上述した本実施の形態において、図17(a)、(b)に示すように、配線層40が、リミッタ端部11a、11b上に設けられると共に信号配線41aとは離間した配線島状部分91を有し、上側金属補強部70a、70bが、配線島状部分91を覆うようにしてもよい。この場合、配線島状部分91は、図15(b)に示す配線層40のエッチング工程において形成される。そして、図15(e)に示すニッケルめっき工程において、金属支持層20だけでなく配線島状部分91を導通媒体として上側金属補強部70a、70bを形成することができる。このことにより、上側金属補強部70a、70bを形成するためのめっき時間を短縮することが可能となる。また、この場合、配線島状部分91は上側金属補強部70a、70bにより覆われるため、上側金属補強部70a、70bがニッケルにより形成される場合には、配線島状部分91の腐食を防止することができる。このような配線島状部分91は、トレースサポートタブ部13のタブ端部13a、第1スペーサ部14の各スペーサ端部14a、14bにも同様に設けることが可能である。
(変形例3)
また、上述した本実施の形態においては、サブトラクティブ法によりサスペンション用基板1が作製されている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、アディティブ法によりサスペンション用基板1を作製してもよい。この場合、図18(a)、(b)に示すように、上側金属補強部70a、70bは、配線層40と同一の材料(例えば、銅)により形成することができる。すなわち、アディティブ法では、まず、金属支持層20を準備し、続いて、金属支持層20上に所望の形状を有する絶縁層10が形成される。その後、絶縁層10上に所望の形状を有する配線層40が形成される。この配線層40が形成される工程において、上側金属補強部70a、70bが形成される。このことにより、配線層40と同一の材料で、上側金属補強部70a、70bを、タング部23およびアウトリガー部27に、リミッタ端部11a、11bを覆うように形成することができる。このため、製造工程の煩雑化を防止できる。このような上側金属補強部70a、70bは、トレースサポートタブ部13のタブ端部13a、第1スペーサ部14の各スペーサ端部14a、14bおよび絶縁枠体部16の絶縁枠体縁部16aにも同様に設けることができる。
(変形例4)
また、上述した本実施の形態における図7および図8においては、上側金属補強部74a、74bが、第1スペーサ部14の各スペーサ端部14a、14bを覆っている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、図19に示すように、上側金属補強部は、第1スペーサ部14と、当該第1スペーサ部14上に設けられた配線層40の第2配線島状部分92と、を覆うように設けられていてもよい。ここで、図19は、ヘッド領域2aにおける、サスペンション用基板1の長手方向軸線(X)に沿った断面を示している。
本変形例においては、第1スペーサ部14上に、配線層40の信号配線41aとは離間した第2の配線島状部分92が設けられ、タング部23の第1スペーサ14の側の面に、上側金属補強部79が形成されている。当該上側金属補強部79は、スペーサ端部14a、14bを含む第1スペーサ部14および第2の配線島状部分92を覆っている(図19に示す上側金属補強部79は、上側金属補強部74aと上側金属補強部74bとが一体に形成されている形態に相当している)。このような上側金属補強部79は、保護層50によって覆われている。これにより、ヘッドスライダ112は、接着剤93を介してタング部23および上側金属補強部79上の保護層50の部分に接着されるようになっている。
上側金属補強部79上の保護層50の部分は、配線層40の信号配線41aを覆う保護層50の部分と、高さ位置が異なっており、これらの部分の間には、図19に示すようなギャップgが形成されている。このことは、ヘッドスライダ112が、信号配線41aと平面視で重なる場合に効果的である。すなわち、ヘッドスライダ112が、信号配線41aを覆う保護層50の部分よりも高い位置に実装されるため、当該保護層50の部分に接触することを防止し、ピエゾ素子104の伸縮によるヘッドスライダ112の変位が阻害されることを防止できる。すなわち、第1スペーサ部14a上に第2の配線島状部分92を設け、当該第1スペーサ部14aおよび第2の配線島状部分92を覆う上側金属補強部79を設けることにより、ヘッドスライダ112のピエゾ素子104による変位が阻害されることを防止することができる。
なお、図19に示す符号94は、ヘッド端子42とヘッドスライダ112のスライダ端子112aとを電気的に接続する半田94を示している。また、ヘッド端子42の表面には金めっき層95が設けられており、ヘッド端子42は金めっき層95を介して半田94に電気的に接続されている。
また、上述した本実施の形態においては、タング部23の側の上側金属補強部70aが、タング縁部23aからリミッタ部11に沿って延び、タング部23の側の下側金属補強部71aに、リミッタ部11の側方において連結されている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、当該上側金属補強部70aは、タング端部11aの少なくとも一部を覆うように形成されていれば、対応する下側金属補強部71aに連結されていなくてもよい。この場合においても、上側金属補強部70aおよび下側金属補強部71aによって、リミッタ部11を補強することができる。このことは、アウトリガー部27の側の上側金属補強部70bおよび下側金属補強部71bについても同様であり、さらに、トレースサポートタブ部13に適用された上側金属補強部72および下側金属補強部73についても同様である。
また、上述した本実施の形態においては、リミッタ部11は、絶縁層10をエッチング加工することにより形成されて、絶縁材料からなる単一の層により形成されている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、図示しないが、リミッタ部11は、絶縁材料からなる層が複数積層されることにより構成されていてもよい。
また、上述した本実施の形態においては、リミッタ部11が上側金属補強部70a、70bおよび下側金属補強部71a、71bにより補強される例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、リミッタ部11が、上側金属補強部70a、70bのみにより補強されるようにしてもよく、または、下側金属補強部71a、71bのみにより補強されるようにしてもよい。いずれの場合においても、リミッタ部11を補強し、リミッタ部11に応力が集中して負荷されることを抑制でき、リミッタ部11の変形および破損を防止することができる。トレースサポートタブ部13、絶縁枠体部16についても同様である。
また、上述した本実施の形態においては、リミッタ部11の各リミッタ端部11a、11bに、上側金属補強部70a、70bおよび下側金属補強部71a、71bが適用される例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、リミッタ端部11a、11bの一方のみに、上側金属補強部および下側金属補強部を適用するようにしてもよい。この場合においても、リミッタ部11を補強し、リミッタ部11に応力が集中して負荷されることを抑制でき、リミッタ部11の変形および破損を防止することができる。トレースサポートタブ部13、絶縁枠体部16についても同様である。
さらに、上述した本実施の形態においては、ピエゾ素子104に接続される接続構造領域3を有するサスペンション用基板1を例として用いているが、このような接続構造領域3を有していないサスペンション用基板1にも、本発明を適用することができる。この場合、例えば、リミッタ部11、トレースサポートタブ部13、第1スペーサ部14などに上側金属補強部または下側金属補強部を適用することができる。