第1の実施の形態
図1乃至図7を用いて、本発明の第1の実施の形態におけるサスペンション用基板、サスペンション、ヘッド付サスペンション、ハードディスクドライブおよびサスペンション用基板の製造方法について説明する。
図1に示すように、サスペンション用基板1は、複数の配線13が延びている基板本体領域2と、一対のピエゾ素子(アクチュエータ素子、図3参照)44に導電性接着剤を介して接続可能な接続構造領域3と、を有している。このうち基板本体領域2には、後述のスライダ52(図5参照)に接続されるヘッド端子5と、図示しない外部機器に接続される外部機器接続端子6とが設けられており、ヘッド端子5と外部機器接続端子6とは、配線13によって接続されている。また、一対の接続構造領域3は、基板本体領域2の両側方に配置されており、連結領域4を介して基板本体領域2に連結されている。
図1および図4に示すように、サスペンション用基板1は、絶縁層10と、絶縁層10のピエゾ素子44の側の面(一方の面)に設けられた金属支持層11と、絶縁層10の他方の面に設けられた複数の配線13を有する配線層12と、を備えている。このうち、配線層12は、各接続構造領域3に設けられ、ピエゾ素子44に導電性接着剤(例えば、銀ペースト)を介して電気的に接続される配線接続部16を有している。各配線接続部16は、各配線13と同一材料により形成されている。また、複数の配線13のうち対応する一対の配線13は、外部機器接続端子6から連結領域4を介して接続構造領域3に延び、配線接続部16を介してピエゾ素子44に電気的に接続されるようになっている。なお、図示しないが、絶縁層10と配線層12との間に、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、銅(Cu)からなり、約300nm厚さを有するシード層が介在されており、絶縁層10と配線層12との密着性を向上させている。
接続構造領域3において、金属支持層11を貫通する金属支持層貫通孔31と、絶縁層10を貫通する絶縁層貫通孔32と、を有し、配線接続部16のピエゾ素子44の側の面を露出させ、導電性接着剤が注入される注入孔30が設けられている。また、金属支持層11は、各接続構造領域3に設けられ、金属支持層貫通孔31を含む、リング状の枠体部17を有している。各枠体部17は、基板本体領域2における金属支持層11と分離されて、電気的に絶縁されている。
図4に示すように、絶縁層貫通孔32の外縁32aは、金属支持層貫通孔31の外縁31aより外方の位置に配置されている。本実施の形態においては、金属支持層貫通孔31および絶縁層貫通孔32は、いずれも円形状の孔であって、同心状に形成されており、絶縁層貫通孔32の直径d2は、金属支持層貫通孔31の直径d1より大きくなっており、絶縁層貫通孔32の外縁32aは、全周にわたって、金属支持層貫通孔31の外縁31aより外方の位置に配置されている。
注入孔30内においては、配線接続部16に、ニッケル(Ni)めっきおよび金(Au)めっきが順次施されて、めっき層15が形成されている。このめっき層15は、ニッケルめっきが施されて形成されたニッケルめっき層15a(図8参照)と、金めっきが施されて形成された金めっき層15bと、を有している。このことにより、露出されている配線接続部16のピエゾ素子44の側の面が腐食することを防止している。このめっき層15の厚さは、0.5μm〜4.0μmであることが好ましい。
絶縁層10上には、配線層12を覆う保護層20が設けられている。なお、図1、図2および図4においては、図面を明瞭にするために、保護層20は省略している。また、図1に示すように、基板本体領域2において、金属支持層11および絶縁層10に貫通して、後述のロードビーム43との位置合わせを行うための2つの治具孔25が設けられている。各治具孔25は、サスペンション用基板1の長手方向軸線(X)上に配置されている。
次に、各構成部材について詳細に述べる。
絶縁層10の材料としては、所望の絶縁性を有する材料であれば特に限定されることはないが、例えば、ポリイミド(PI)を用いることが好適である。なお、絶縁層10の材料は、感光性材料であっても非感光性材料であっても用いることができる。また、絶縁層10の厚さは、5μm〜30μm、とりわけ5μm〜15μmであることが好ましい。このことにより、金属支持層11と各配線13との間の絶縁性能を確保するとともに、サスペンション用基板1全体としての剛性が喪失されることを防止することができる。
各配線13は、電気信号を伝送するための導体として構成されており、各配線13の材料としては、所望の導電性を有する材料であれば特に限定されることはないが、銅(Cu)を用いることが好適である。銅以外にも、純銅に準ずる電気特性を有する材料であれば用いることもできる。ここで、各配線13の厚さは、例えば1μm〜18μm、とりわけ5μm〜12μmであることが好ましい。このことにより、各配線13の伝送特性を確保するとともに、サスペンション用基板1全体としての柔軟性が喪失されることを防止することができる。なお、配線接続部16は、各配線13と同一の材料、同一の厚みからなっている。
金属支持層11の材料としては、所望の導電性、弾力性、および強度を有するものであれば特に限定されることはないが、例えば、ステンレス、アルミニウム、ベリリウム銅、またはその他の銅合金を用いることができ、好ましくはステンレスを用いることが好適である。なお、金属支持層11の厚さは、配線13の厚さよりも大きいことが好ましい。また、金属支持層11の厚さは、一例として、10μm〜30μm、とりわけ15μm〜25μmとすることができる。
保護層20の材料としては、樹脂材料、例えば、ポリイミドを用いることが好適である。なお、保護層20の材料は、感光性材料であっても非感光性材料であっても用いることができる。保護層20の厚さは、2μm〜30μmであることが好ましい。
次に、図2乃至図4を用いて、本実施の形態におけるサスペンション41について説明する。図2に示すサスペンション41は、ベースプレート42と、ベースプレート42上に取り付けられ、サスペンション用基板1の金属支持層11を保持するロードビーム43と、上述のサスペンション用基板1と、ベースプレート42およびロードビーム43の少なくとも一方に接合されると共に、サスペンション用基板1の接続構造領域3に接続されたピエゾ素子44と、を有している。なお、本実施の形態においては、ピエゾ素子44は、ベースプレート42に接合されるようになっている。また、ベースプレート42およびロードビーム43は、ステンレスからなっている。
ピエゾ素子44は、電圧が印加されることにより伸縮する圧電素子として構成されている。各ピエゾ素子44は、図3に示すように、互いに対向する一対の電極44aと、一対の電極44a間に介在され、例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等の圧電セラミックスからなる圧電材料部44bと、を有している。一対のピエゾ素子44の圧電材料部44bは、互いに180°異なる分極方向となるように形成されており、所定の電圧が印加されると、一方のピエゾ素子44が収縮すると共に、他方のピエゾ素子44が伸長するようになっている。このようなピエゾ素子44は、図2に示すように、長手方向軸線(X)に対して互いに線対称に配置されている。このようにして、スライダ52のスウェイ方向への変位に対して、各ピエゾ素子44の伸縮の影響を均等にすることができ、スライダ52のスウェイ方向の変位を容易に調整することができ、アクチュエータ素子として機能するようになっている。また、本実施の形態においては、ピエゾ素子44に接続される接続構造領域3が、基板本体領域2の両側方に配置されているため、ピエゾ素子44の伸縮を効果的にスライダ52の変位に利用することができるようになっている。
このようなピエゾ素子44は、非導電性接着剤によりベースプレート42に接合されている。また、図示しないが、ピエゾ素子44の一方(サスペンション用基板1とは反対側)の電極44aは、導電性接着剤を用いて、ベースプレート42に電気的に接続されている。
一方、ピエゾ素子44の他方(サスペンション用基板1の側)の電極44aは、導電性接着剤を用いて、接続構造領域3に接合されると共に電気的に接続されている。すなわち、図4に示すように、接続構造領域3における注入孔30(絶縁層貫通孔32および金属支持層貫通孔31)に、導電性接着剤が注入されて導電性接着部48が形成され、ピエゾ素子44が、導電性接着部48を介して、接続構造領域3に接合されると共に、ピエゾ素子44の電極44aが、導電性接着部48を介して、配線接続部16に電気的に接続されている。
ロードビーム43には、サスペンション用基板1の各治具孔25に対応して、ビーム治具孔(図示せず)が設けられており、サスペンション用基板1の基板本体領域2の金属支持層11にロードビーム43を実装する際に、サスペンション用基板1とロードビーム43との位置合わせを行うことができるようになっている。
次に、図5により、本実施の形態におけるヘッド付サスペンション51について説明する。図5に示すヘッド付サスペンション51は、上述したサスペンション41と、サスペンション用基板1のヘッド端子5に接続されたスライダ52と、を有している。
続いて、図6により、本実施の形態におけるハードディスクドライブ61について説明する。図6に示すハードディスクドライブ61は、ケース62と、このケース62に回転自在に取り付けられ、データが記憶されるディスク63と、このディスク63を回転させるスピンドルモータ64と、ディスク63に所望のフライングハイトを保って近接するように設けられ、ディスク63に対してデータの書き込みおよび読み取りを行うスライダ52を含むヘッド付サスペンション51と、を有している。このうちヘッド付サスペンション51は、ケース62に対して移動自在に取り付けられており、ケース62にはヘッド付サスペンション51のスライダ52をディスク63上に沿って移動させるボイスコイルモータ65が取り付けられている。また、ヘッド付サスペンション51は、ボイスコイルモータ65にアーム66を介して取り付けられている。
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用、すなわち本実施の形態によるサスペンション用基板1の製造方法について説明する。ここでは、一例として、接続構造領域3の断面を示す図7を用いて、サブトラクティブ法によりサスペンション用基板1を製造する方法について説明する。
まず、絶縁層10と、絶縁層10のピエゾ素子44側の面に設けられた金属支持層11と、絶縁層10の他方の面に設けられた配線層12と、を有する積層体35を準備する(図7(a)参照)。この場合、まず、金属支持層11を準備し、この金属支持層11上に、非感光性ポリイミドを用いた塗工方法により絶縁層10が形成される。続いて、絶縁層10上に、ニッケル、クロム、および銅がスパッタ工法により順次コーティングされ、シード層(図示せず)が形成される。その後、このシード層を導通媒体として、銅めっきにより配線層12が形成される。このようにして、絶縁層10と、金属支持層11と、配線層12と、を有する積層体35が得られる。
続いて、配線層12において、複数の配線13と配線接続部16とが形成されると共に、金属支持層11において、金属支持層貫通孔31が形成される(図7(b)参照)。この場合、まず、配線層12の上面および金属支持層11の下面に、フォトファブリケーションの手法により、ドライフィルムを用いて、パターン状のレジスト(図示せず)が形成される。次に、配線層12および金属支持層11のうちレジストから露出された部分がエッチングされる。ここで、配線層12および金属支持層11をエッチングする方法は、特に限定されるものではないが、ウェットエッチングを行うことが好ましい。とりわけ、エッチング液は、金属支持層11の材料の種類に応じて適宜選択することが好ましいが、例えば、金属支持層11がステンレスからなる場合には、塩化第二鉄水溶液等の塩化鉄系エッチング液を用いることができる。エッチングが行われた後、レジストは除去される。
次に、絶縁層10上に、配線層12の各配線13および配線接続部16を覆う保護層20が形成される(図7(c)参照)。この場合、非感光性ポリイミドが、ダイコータを用いて、絶縁層10上にコーティングされて、これを乾燥後、部分的に除去し、イミド化させることにより、保護層20が形成される。
保護層20が形成された後、絶縁層10において、絶縁層10を貫通する絶縁層貫通孔32が形成される(図7(d)〜(f)参照)。この場合、まず、金属支持層11のピエゾ素子44側の面に、パターン状のレジスト90が形成される(図7(d)参照)。このレジスト90は、金属支持層11のうち金属支持層貫通孔31の近傍の部分が露出されるように、金属支持層貫通孔31の直径d1より大きい直径からなる開口部90aを有している。続いて、金属支持層貫通孔31において露出された絶縁層10がエッチングされて、絶縁層貫通孔32が形成される(図7(e)参照)。この際、絶縁層10は、金属支持層11をレジストとしてエッチングされる。このことにより、絶縁層貫通孔32の直径d2を、金属支持層貫通孔31の直径d1と同等か、これより大きくすることができる。このようにして、金属支持層貫通孔31と絶縁層貫通孔32とにより構成される注入孔30が形成され、配線接続部16が注入孔30内に露出される。ここで、絶縁層10をエッチングする方法は、特に限定されるものではないが、ウェットエッチングを行うことが好ましい。とりわけ、エッチング液は、絶縁層10の材料の種類に応じて適宜選択することが好ましいが、例えば、絶縁層10がポリイミド樹脂からなる場合には、有機アルカリエッチング液等のアルカリ系エッチング液を用いることができる。エッチングが行われた後、レジスト90は除去される(図7(f)参照)。
次に、注入孔30において、配線接続部16のピエゾ素子44の側の面に、めっき層15が形成される(図7(g)参照)。すなわち、配線接続部16のピエゾ素子44の側の面が、酸洗浄されて、電解めっき法によりニッケルめっきおよび金めっきが施されて、ニッケルめっき層15aおよび金めっき層15bが順次形成され、0.5μm〜4.0μmの厚さを有するめっき層15が形成される。この場合、スライダ52に接続されるヘッド端子5と、外部機器接続端子6にも、同様にしてめっきが施される。めっきの種類としては、ニッケルめっき、金めっきに限定されるものではなく、銀(Ag)めっき、パラジウム(Pd)めっきを施すようにしても良い。また、本実施の形態においては、めっき用の給電が配線接続部16に接続された配線13を通して行われるようになっており、配線接続部16と電気的に接続されていない金属支持層11には、めっきは析出されないようになっている。
めっき層15が形成された後、金属支持層11が外形加工されて、枠体部17が形成される(図7(g)参照)。この場合、まず、金属支持層11の下面に、ドライフィルムを用いて、パターン状のレジスト(図示せず)が形成される。次に、例えば、塩化鉄系エッチング液により、金属支持層11のうちレジストから露出された部分がエッチングされ、枠体部17が形成されると共に金属支持層11が外形加工される。この枠体部17は、基板本体領域2における金属支持層11の部分と分離される。その後、レジストは除去され、本実施の形態によるサスペンション用基板1が得られる。
次に、このようにして得られたサスペンション用基板1を用いたサスペンションの製造方法について説明する。
まず、サスペンション用基板1が、ロードビーム43(図2参照)を介して、ベースプレート42に、溶接により取り付けられる。この場合、ロードビーム43に設けられたビーム治具孔(図示せず)と、サスペンション用基板1に設けられた治具孔25(図1参照)とにより、ロードビーム43とサスペンション用基板1とのアライメントが行われて、溶接により固定される。
続いて、ピエゾ素子44が、非導電性接着剤を用いてベースプレート42に接合されると共に、導電性接着剤を用いて、ピエゾ素子44の一方の電極44aが、ベースプレート42に電気的に接続される。
また、金属支持層11の枠体部17とピエゾ素子44の電極44aとの間の隙間から、注入孔30に導電性接着剤が注入されて導電性接着部48(図4参照)が形成され、ピエゾ素子44の他方の電極44aは、導電性接着部48を介して、サスペンション用基板1の接続構造領域3に接合されると共に電気的に接続される。
このようにして、サスペンション用基板1の接続構造領域3に接続されたピエゾ素子44を含むサスペンション41が得られる。
このサスペンション41のヘッド端子5に、スライダ52が接続されて図5に示すヘッド付サスペンション51が得られる。さらに、このヘッド付サスペンション51がハードディスクドライブ61のケース62に取り付けられて、図6に示すハードディスクドライブ61が得られる。
図6に示すハードディスクドライブ61においてデータの書き込みおよび読み取りを行う際、ボイスコイルモータ65によりヘッド付サスペンション51のスライダ52がディスク63上に沿って移動し、スピンドルモータ64により回転しているディスク63に所望のフライングハイトを保って近接する。このことにより、スライダ52とディスク63との間で、データの受け渡しが行われる。この間、サスペンション用基板1のヘッド端子5(図1参照)と外部機器接続端子6との間を延びる各配線13により電気信号が伝送される。
スライダ52を移動させる際、ボイスコイルモータ65が、スライダ52の位置を大まかに調整し、ピエゾ素子44が、スライダ52の位置を微小調整する。すなわち、サスペンション用基板1の一対の接続構造領域3の側のピエゾ素子44の電極44aに所定の電圧を印加することにより、一方のピエゾ素子44が長手方向に収縮すると共に、他方のピエゾ素子44が伸長する(図2参照)。この場合、ベースプレート42とロードビーム43の一部が弾性変形し、ロードビーム43の先端側に位置するスライダ52がスウェイ方向(旋回方向)に移動することができる。このようにして、スライダ52を、ディスク63の所望のトラックに、迅速に、かつ精度良く位置合わせすることができる。
このように本実施の形態によれば、導電性接着剤が注入される注入孔30において、配線接続部16のピエゾ素子44の側の面が露出し、絶縁層貫通孔32の外縁32aが、金属支持層貫通孔31の外縁31aより外方の位置に配置されている。このことにより、導電性接着剤と配線接続部16との接触面積を増大させることができ、導電性接着剤と配線接続部16との間の導通抵抗を低減させることができる。このため、ピエゾ素子44を接続するための導電性接着剤と配線接続部16との電気接続の信頼性を向上させることができる。
また、本実施の形態によれば、絶縁層貫通孔32の直径d2が、金属支持層貫通孔31の直径d1より大きくなっている。このため、注入孔30に注入された導電性接着剤が、金属支持層貫通孔31を越えて絶縁層貫通孔32内に入り込むことによって導電性接着剤のアンカー効果が発揮され、サスペンション用基板1の接続構造領域3と導電性接着剤との接合強度を向上させることができる。
また、本実施の形態によれば、絶縁層10が、金属支持層11をレジストとしてエッチングされて、絶縁層10を貫通する絶縁層貫通孔32が形成される。このことにより、絶縁層貫通孔32の直径d2を、金属支持層貫通孔31の直径d1より大きくすることができる。すなわち、絶縁層貫通孔32を形成することを目的として接続構造領域3における絶縁層10にレジストの開口(図示せず)を形成する場合には、当該レジストの金属支持層貫通孔に対する相対的位置ズレを考慮すると、絶縁層貫通孔32の直径d2は、金属支持層貫通孔31の直径d1より小さくせざるを得ないが、上述したように金属支持層11をレジストとすることにより、絶縁層貫通孔32の直径d2を、金属支持層貫通孔31の直径d1と同等か、これより大きくすることが可能となる。なお、絶縁層貫通孔32を形成する際、エッチング時間を調整することにより、絶縁層貫通孔32の直径d2を所望の値にすることもできる。さらに、絶縁層10のエッチング時のレジスト90(図7(d)、(e)参照)の開口部90aを、金属支持層31の直径d1よりも大きくして、絶縁層10が金属支持層11をレジストとしてエッチングされることにより、レジスト90の位置ずれを、ある程度許容することができる。
さらに、本実施の形態によれば、上述したように、絶縁層10が、金属支持層11をレジストとしてエッチングされて、絶縁層貫通孔32が形成される。ここで、絶縁層10と金属支持層11との密着性は、絶縁層10とレジストとの密着性よりも良いため、エッチング時に、エッチング液が絶縁層10とレジストとの隙間に染み込むことを防止することができる。このため、絶縁層貫通孔32の形状および寸法の精度を向上させることができる。
なお、本実施の形態においては、注入孔30において、絶縁層貫通孔32の外縁32aが、金属支持層貫通孔31の外縁31aより外方の位置に配置されている例、すなわち、絶縁層貫通孔32の直径d2が、金属支持層貫通孔31の直径d1より大きい例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、絶縁層貫通孔32の外縁32aが、金属支持層貫通孔31の外縁31aに対応する位置(とりわけ、一致する位置)に配置されていても良い。言い換えると、絶縁層貫通孔32の直径d2と金属支持層貫通孔31の直径d1とが同一であっても良い。この場合においても、導電性接着剤と配線接続部16との接触面積を増大させることができ、導電性接着剤と配線接続部16との間の導通抵抗を低減させることができる。
また、本実施の形態においては、金属支持層貫通孔31および絶縁層貫通孔32が、円形状の孔である例について説明したが、このことに限られることはなく、任意の形状の孔とすることもできる。
さらに、上述した本実施の形態においては、めっき層15の表面(ピエゾ素子44の側の面)が、粗面化されていてもよい。すなわち、図8(a)に示すように、めっき層15は、ニッケルめっきが施されて形成されたニッケルめっき層15aと、金めっきが施されて形成された金めっき層15bと、を有しており、このうち金めっき層15bのみが粗面化されていてもよい。ここで、粗面化とは、表面が、通常その材料が有している表面粗さよりも大きくなるように、表面の粗さを意識的に大きくすることを意味しており、図8および図9に示す形態においては、めっき層15の表面の表面粗さを、Ra=0.1μm〜0.6μmとすることが好ましい。なお、Raとは、JIS B0601−1994における算術平均粗さを表しており、Raの測定には、例えば、光波干渉式表面粗さ計(ZYGO社製、New view 5032)、レーザマイクロスコープ(キーエンス社製、VK−9500)などを用いることが好適である。
図8(a)に示すようなめっき層15は、形成された金めっき層15bに、例えば、レーザ光を照射、または、プラズマを照射することにより、粗面化することができる。この場合、金めっき層15bの表面の表面粗さを大きく(Ra=0.2μm〜0.6μm)することができる。このことにより、図8(b)に示すように、導電性接着剤を構成する銀ペーストの銀フィラー48aが、金めっき層15bの表面の微小凹凸内に入り込むことができ、導電性接着剤と金めっき層15bとの間の導通抵抗を低減させることができ、ピエゾ素子44を接続するための導電性接着剤と配線接続部16との電気接続の信頼性を向上させることができる。
また、この場合、粗面化された金めっき層15bの表面の微小凹凸内に、銀ペーストの樹脂48bが入り込むことができる。このため、導電性接着剤とめっき層15との接着面積を増大させることができると共に、導電性接着剤のアンカー効果を発揮させることができる。このため、サスペンション用基板1の接続構造領域3と導電性接着剤との接合強度を向上させることができる。
なお、めっき層15の表面を粗面化する方法としては、レーザ光またはプラズマを照射することに限られることはなく、金めっき層15bを形成する際、めっき用の給電の電流密度を通常よりも低くする(例えば、0.5A/cm2〜1.0A/cm2)ことにより、金めっき層15bの表面を粗面化してもよい。また、金めっき層15bの厚さを厚くする(例えば、1.0μm〜2.5μm)ことによっても、めっき層15の表面を粗面化することができる。このようにして金めっき層15bの表面を粗面化する場合には、金めっき層15bの形成と粗面化とを同時に行うことができ、製造工程が増えることを防止することができる。
また、金めっき層15bの表面を粗面化することを目的として、図9(a)に示すように、金めっき層15bの表面の粗面化に対応するように、ニッケルめっき層15aの表面(ピエゾ素子44の側の面)が粗面化されていてもよい。この場合、ニッケルめっき層15aと金めっき層15bとの接合面積を増大させ、密着性を向上させることができる。このようなニッケルめっき層15aは、ニッケルめっき層15aを形成する際、めっき用の給電の電流密度を通常よりも低くする(例えば、1.5A/cm2〜3.0A/cm2)ことにより得られる。この場合、ニッケルめっき層15aの形成と粗面化とを同時に行うことができ、製造工程が増えることを防止することができる。このようにして、粗面化されたニッケルめっき層15aに、金めっき層15bを形成することで、ニッケルめっき層15aの表面の粗面化に対応させて、金めっき層15bの表面を粗面化することができる。
また、図9(b)に示すように、金めっき層15bの表面の粗面化に対応するように、ニッケルめっき層15aの表面および配線接続部16の表面(ピエゾ素子44の側の面)が、粗面化されていてもよい。この場合、配線接続部16とニッケルめっき層15aの接合面積、および、ニッケルめっき層15aと金めっき層15bの接合面積を増大させ、密着性を向上させることができる。このような配線接続部16は、形成された当該配線接続部16を部分的にエッチングすることにより得られる。このようにして、粗面化された配線接続部16に、ニッケルめっき層15aおよび金めっき層15bを順次形成することで、配線接続部16の表面の粗面化に対応させて、金めっき層15bの表面を粗面化することができる。
第2の実施の形態
次に、図10および図11により、本発明の第2の実施の形態におけるサスペンション用基板、サスペンション、ヘッド付サスペンション、ハードディスクドライブおよびサスペンション用基板の製造方法について説明する。
図10および図11に示す第2の実施の形態においては、枠体部と配線接続部とが導電接続部によって電気的に接続され、注入孔における金属支持層に第2のめっき層が設けられている点が主に異なり、他の構成は、図1乃至図7に示す第1の実施の形態と略同一である。なお、図10および図11において、図1乃至図7に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
図10に示すように、接続構造領域3において、絶縁層10を貫通し、金属支持層11の枠体部17と、配線接続部16とを電気的に接続する導電接続部(ビア)70が設けられている。この導電接続部70は、絶縁層10を貫通する絶縁層導電接続孔71、配線接続部16を貫通する配線層導電接続孔72、および、保護層20を貫通する保護層導電接続孔73に、ニッケルめっきを施すことにより形成されている。
注入孔30において、配線接続部16には、ニッケルめっきおよび金めっきが順次施されためっき層15が形成されている。また、注入孔30において、金属支持層11の枠体部17には、ニッケルめっきおよび金めっきが順次施された第2のめっき層75が設けられている。第2のめっき層75は、めっき層15と同様の方法により形成することができ、めっき層15および第2のめっき層75の厚さは、それぞれ、0.5μm〜4.0μmであることが好ましい。なお、本実施の形態においては、第2のめっき層75は、枠体部17の内縁から、露出されている枠体部17の上面および下面の一部に延びている。
次に、図11を用いて、本実施の形態によるサスペンション用基板1の製造方法について説明する。ここでは、一例として、接続構造領域3の断面を示す図11を用いて、サブトラクティブ法によりサスペンション用基板1を製造する方法について説明する。
まず、絶縁層10と、絶縁層10のピエゾ素子44の側の面に設けられた金属支持層11と、絶縁層10の他方の面に設けられた配線層12とを有する積層体35を準備する(図11(a)参照)。
続いて、配線層12において、複数の配線13と、配線接続部16とが形成されると共に、金属支持層11において、金属支持層貫通孔31が形成される(図11(b)参照)。この際、配線接続部16に、配線層導電接続孔72が形成される。
次に、絶縁層10上に、配線層12の各配線13および配線接続部16を覆う保護層20が形成される(図11(c)参照)。この際、保護層20に、配線層導電接続孔72に対応するように保護層導電接続孔73が形成される。
保護層20が形成された後、絶縁層10において、絶縁層10を貫通する絶縁層貫通孔32が形成される(図11(d)〜(f)参照)。この際、絶縁層10に、配線層導電接続孔72に対応するように絶縁層導電接続孔71が形成される。
次に、絶縁層導電接続孔71、配線層導電接続孔72および保護層導電接続孔73に、ニッケルめっきが施されて、導電接続部70が形成される(図11(g)参照)。この場合、保護層20上に、ドライフィルムを用いて、保護層導電接続孔73が露出するようなパターン状のレジスト(図示せず)が形成されて、電解めっき法によりニッケルめっきが施される。この際、めっき浴には、標準的なスルファミン酸ニッケルめっき浴を用い、電解浸漬めっき(0.2A、14分)を行う。導電接続部70が形成された後、レジストは除去される。
その後、注入孔30において、配線接続部16のピエゾ素子44の側の面に、めっき層15が形成されると共に、金属支持層11に、第2のめっき層75が形成される(図11(h)〜(j)参照)。
この場合、配線接続部16と金属支持層11が電気的に接続されているため、金属支持層11の全面にめっきが析出することになる。そこで、配線接続部16のピエゾ素子44の側の面の全面にめっき層15を形成し、かつ金属支持層11の第2めっき層75以外の部分にはめっきが付かないようにするためには、金属支持層を11レジストで覆う必要がある。具体的には、まず、金属支持層11の下面に、ドライフィルムを用いて、パターン状のレジスト91が形成される(図11(h)参照)。このレジスト91は、位置ずれした場合であっても、金属支持層貫通孔31内にレジスト91が形成されることを防止するために、金属支持層貫通孔31の直径d1よりも大きな直径からなる開口部91aを有している。
続いて、配線接続部16のピエゾ素子44の側の面、および、金属支持層11のうちレジスト91から露出されている面が、酸洗浄されて、ストライクめっきが施される。この場合、例えば、塩酸系のめっき浴を用いて、ストライクめっきをすることができる。このようにして、ストライクめっきが施されることにより、とりわけ金属支持層11の表面に形成されていた不動態膜を除去して、めっきの密着性を向上させることができる。なお、ストライクめっきを行う前に酸洗浄の代わりとして、アルカリ洗浄若しくは塩酸浸漬させて、または、両方を併用して、めっきが施される面を洗浄してもよい。なお、本実施の形態においては、めっき用の給電が金属支持層11を通して行われ、金属支持層11と配線接続部16とが、導電接続部70によって電気的に接続されているため、金属支持層11および配線接続部16に、めっきが析出されるようになっている。
次に、配線接続部16のピエゾ素子44の側の面、および、金属支持層11の露出されている面に、電解めっき法によりニッケルめっきおよび金めっきが順次施されて、0.5μm〜4.0μmの厚さを有するめっき層15および第2のめっき層75がそれぞれ形成される(図11(i)参照)。この場合、スライダ52に接続されるヘッド端子5と、外部機器接続端子6にも、同様にしてめっきが施される。めっきの種類としては、ニッケルめっき、金めっきに限定されるものではなく、銀(Ag)めっき、パラジウム(Pd)めっきを施すようにしても良い。
その後、レジスト91が除去されて、金属支持層11が外形加工されて、枠体部17が形成される(図11(j)参照)。このようにして、本実施の形態におけるサスペンション用基板1が得られる。
このように本実施の形態によれば、導電性接着剤が注入される注入孔30において、配線接続部16のピエゾ素子44の側の面が露出し、絶縁層貫通孔32の外縁32aが、金属支持層貫通孔31の外縁31aより外方の位置に配置されている。このことにより、導電性接着剤と配線接続部16との接触面積を増大させることができ、導電性接着剤と配線接続部16との間の導通抵抗を低減させることができる。とりわけ、本実施の形態においては、配線接続部16と枠体部17とが導電接続部70によって電気的に接続され、枠体部17に第2のめっき層75が形成されている。このことにより、導電性接着剤と配線接続部16との接着面積をより一層増大させることができ、導電性接着剤と配線接続部16との間の導通抵抗をより一層低減させることができる。このため、ピエゾ素子44を接続するための導電性接着剤と配線接続部16との電気接続の信頼性を向上させることができる。
また、本実施の形態によれば、絶縁層貫通孔32の直径d2が、金属支持層貫通孔31の直径d1より大きくなっている。このため、注入孔30に注入された導電性接着剤が、金属支持層貫通孔31を越えて絶縁層貫通孔32内に入り込むことによってアンカー効果が発揮され、サスペンション用基板1の接続構造領域3と導電性接着剤との接合強度を向上させることができる。とりわけ、本実施の形態においては、枠体部17に、第2のめっき層75が形成されているため、導電性接着剤のアンカー効果を増大させることができる。また、絶縁層貫通孔31の外縁31aが、金属支持層貫通孔31の外縁31aに対応する位置に配置されている場合(すなわち、絶縁層貫通孔32の直径d2と金属支持層貫通孔31の直径d1とが同一である場合)であっても、導電性接着剤のアンカー効果を発揮させることができる。この結果、サスペンション用基板1の接続構造領域3と導電性接着剤との接合強度をより一層向上させることができる。
なお、本実施の形態においては、第2のめっき層75が、枠体部17の内縁から、露出されている枠体部17の上面および下面の一部に延びている例について説明したが、このことに限られることはなく、第2のめっき層75は、枠体部17の内縁のみに形成されていてもよい。
また、金属支持層11の枠体部17に形成された第2のめっき層75の表面を、粗面化してもよい。この場合、例えば、図8および図9を用いて説明したように、第2のめっき層75の金めっき層(図示せず)を形成する際、めっき用の給電の電流密度を、通常よりも低くすることにより、当該金めっき層の表面を粗面化してもよい。あるいは、第2のめっき層75のニッケルめっき層(図示せず)を形成する際、めっき用の給電の電流密度を、通常よりも低くすることにより、当該ニッケルめっき層の表面を粗面化してもよい。このようにして第2のめっき層75を粗面化した場合、導電性接着剤と配線接続部16との接着面積を増大させて、導通抵抗をより一層低減させることができると共に、サスペンション用基板1の接続構造領域3と導電性接着剤との接合強度をより一層向上させることができる。
第3の実施の形態
次に、図12および図13により、本発明の第3の実施の形態におけるサスペンション用基板、サスペンション、ヘッド付サスペンション、ハードディスクドライブおよびサスペンション用基板の製造方法について説明する。
図12および図13に示す第3の実施の形態においては、配線接続部が、絶縁層貫通孔内の全体にわたって入り込み、枠体部に接している点が主に異なり、他の構成は、図10および図11に示す第2の実施の形態と略同一である。なお、図12および図13において、図10および図11に示す第2の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
図12に示すように、配線層12の配線接続部16は、絶縁層貫通孔32内に入り込んでいる。ここでは、配線接続部16は、絶縁層貫通孔32の全体にわたって入り込むように形成されて、金属支持層11の枠体部17に接している。このようにして、本実施の形態においては、導電性接着剤は、注入孔30を構成する金属支持層貫通孔31のみに注入されるようになっている。
次に、図13を用いて、本実施の形態によるサスペンション用基板1の製造方法について説明する。ここでは、配線接続構造領域3の断面を示す図13を用いて、一例として、アディティブ法によりサスペンション用基板1を製造する方法について説明する。
まず、金属支持層11を準備する(図13(a)参照)。
続いて、金属支持層11上に、非感光性材料からなる絶縁層10が形成されると共に、絶縁層10を貫通する絶縁層貫通孔32が形成される。この場合、まず、金属支持層11上に、非感光性ポリイミドを用いた塗工方法により絶縁層10が形成される(図13(b)参照)。続いて、絶縁層10上に、パターン状のレジスト(図示せず)が形成され、絶縁層10のうちレジストから露出された部分がエッチングされて絶縁層貫通孔32が形成される(図13(c)参照)。本実施の形態においては、絶縁層貫通孔32は、円錐状に形成される。なお、絶縁層10は、感光性材料を用いて形成してもよい。
次に、絶縁層10上に、シード層(図示せず)が形成される。この場合、絶縁層貫通孔32内にも、シード層が形成される。
その後、絶縁層10上に、複数の配線13と、絶縁層貫通孔32内に入り込み、ピエゾ素子44に導電性接着剤を介して電気的に接続される配線接続部16と、を有する配線層12が形成される(図13(d)参照)。この場合、まず、絶縁層10上に、パターン状のレジスト(図示せず)が形成され、レジストの開口部に、電解銅めっき法により、配線13および配線接続部16が形成される。その後、レジストは除去される。
配線層12が形成された後、絶縁層10上に、各配線13および配線接続部16を覆う保護層20が形成される(図13(e)参照)。
続いて、金属支持層11において、金属支持層11を貫通する金属支持層貫通孔31が形成される(図13(f)参照)。この場合、金属支持層11に、パターン状のレジスト(図示せず)が形成され、このレジストの開口部から、塩化第二鉄水溶液などの腐食液により金属支持層11がエッチングされる。このことにより、金属支持層11において、金属支持層貫通孔31が形成される。この際、金属支持層貫通孔31は、絶縁層貫通孔32の外縁32aが、金属支持層貫通孔31の外縁31aより外方の位置に配置されて、金属支持層11の枠体部17が配線接続部16に接するように、形成される。その後、レジストは除去される。
その後、図13(g)〜(i)に示すようにして、配線接続部16のピエゾ素子44の側の面にめっき層15が形成されると共に、注入孔30における金属支持層11に第2のめっき層75が形成される。なお、これら図13(g)〜(i)に示す工程は、第2の実施の形態において説明した図11(h)〜(j)に示す工程と略同一であるため、ここでは詳細な説明は省略する。その後、金属支持層11が外形加工されて枠体部17が形成される。
このように本実施の形態によれば、導電性接着剤が注入される注入孔30において、配線接続部16のピエゾ素子44の側の面が露出し、絶縁層貫通孔32の外縁32aが、金属支持層貫通孔31の外縁31aより外方の位置に配置されている。このことにより、導電性接着剤と配線接続部16との接触面積を増大させることができ、導電性接着剤と配線接続部16との間の導通抵抗を低減させることができる。とりわけ、本実施の形態においては、配線接続部16が絶縁層貫通孔32に入り込み、金属支持層11の枠体部17に接している。このことにより、導電性接着剤と配線接続部16との接触面積をより一層増大させることができ、導電性接着剤と配線接続部16との間の導通抵抗をより一層低減させることができる。このため、ピエゾ素子44を接続するための導電性接着剤と配線接続部16との電気接続の信頼性を向上させることができる。
なお、本実施の形態においては、めっき層15のピエゾ素子44の側の面および配線接続部16のめっき層15の側の面が、図14に示すように、粗面化されていてもよい。図14および図15に示す形態においては、粗面化された面には、1μm〜3μmの深さの凹凸が形成されていることが好ましい。このようにめっき層15および配線接続部16を粗面化する方法について、図15を用いて説明する。
まず、金属支持層11を準備し(図15(a)参照)、この金属支持層11上に、絶縁層10が形成される(図15(b)参照)。
続いて、絶縁層10上に、パターン状のレジスト(図示せず)が形成され、絶縁層10のうちレジストから露出された部分がエッチングされて絶縁層貫通孔32が形成される(図15(c)参照)。この際、絶縁層貫通孔32内において、金属支持層11上に、絶縁層10の厚さよりも小さい高さ(例えば、1μm〜3μm)を有し、配線接続部16のピエゾ素子44の側の面を粗面化するための粗面化形成部80が形成される。この粗面化形成部80は、例えば、平面視で、複数の島状に形成されてもよく、あるいは、格子状に形成されてもよく、その平面形状は限定されるものではない。なお、このような粗面化形成部80は、例えば、感光性ポリイミドを用いて形成された絶縁層10に、ハーフトーンマスクを用いて露光、現像、イミド化することによって形成することができる。
次に、絶縁層10上に、シード層(図示せず)を介して、複数の配線13と、絶縁層貫通孔32に入り込み、ピエゾ素子44に導電性接着剤を介して電気的に接続される配線接続部16と、を有する配線層12が形成される(図15(d)参照)。この際、配線接続部16は、粗面化形成部80上に形成される。
配線層12が形成された後、絶縁層10上に、各配線13および配線接続部16を覆う保護層20が形成され(図15(e)参照)、金属支持層11において、金属支持層11を貫通し、導電性接着剤が注入される注入孔30を構成する金属支持層貫通孔31が形成される(図15(f)参照)。
次に、粗面化形成部80が除去される(図15(g)参照)。この場合、有機アルカリエッチング液等のアルカリ系エッチング液を用いることにより、粗面化形成部80を除去することができる。このことにより、配線接続部16のピエゾ素子44の側の面が粗面化される。
その後、図15(h)〜(j)に示すようにして、配線接続部16のピエゾ素子44の側の面にめっき層15が形成されると共に、注入孔30における金属支持層11に第2のめっき層75が形成される。この場合、配線接続部16には、当該配線接続部16の粗面化に対応して粗面化されためっき層15が形成される。なお、これら図15(h)〜(j)に示す工程は、第2の実施の形態において説明した図11(h)〜(j)に示す工程と略同一であるため、ここでは詳細な説明は省略する。その後、金属支持層11が外形加工されて、枠体部17が形成される。
このように、配線接続部16のピエゾ素子44の側の面を粗面化することにより、めっき層15の表面を粗面化して、導電性接着剤とめっき層15との接触面積を増大させることができる。また、配線接続部16の粗面化の程度、すなわち、粗面化形成部80の微細度によっては、その表面の微小凹凸内に導電性接着剤を構成する銀ペーストの銀フィラー48aを入り込ませることができる。このことにより、導電性接着剤と金めっき層15bとの間の導通抵抗を低減させることができ、ピエゾ素子44を接続するための導電性接着剤と配線接続部16との電気接続の信頼性を向上させることができる。
また、この場合、粗面化された金めっき層15bの表面の微小凹凸内に、銀ペーストの樹脂48bが入り込むことができる。このため、導電性接着剤とめっき層15との接着面積を増大させることができると共に、導電性接着剤のアンカー効果を発揮させることができる。このため、サスペンション用基板1の接続構造領域3と導電性接着剤との接合強度を向上させることができる。
第4の実施の形態
次に、図16および図17により、本発明の第4の実施の形態におけるサスペンション用基板、サスペンション、ヘッド付サスペンション、ハードディスクドライブおよびサスペンション用基板の製造方法について説明する。
図16および図17に示す第4の実施の形態においては、配線接続部が、絶縁層貫通孔内の一部にわたって入り込んでいる点が主に異なり、他の構成は、図12および図13に示す第3の実施の形態と略同一である。なお、図16および図17において、図12および図13に示す第3の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
図16に示すように、配線層12の配線接続部16は、絶縁層貫通孔32内の一部、すなわち、中心部に入り込んでいる。なお、本実施の形態においては、配線接続部16は、金属支持層11の枠体部17には接していない。
次に、図17を用いて、本実施の形態によるサスペンション用基板1の製造方法について説明する。ここでは、配線接続構造領域3の断面を示す図17を用いて、一例として、アディティブ法によりサスペンション用基板1を製造する方法について説明する。なお、図17(a)〜(e)に示す工程は、第3の実施の形態において説明した図13(a)〜(e)に示す工程と略同一であるため、ここでは詳細な説明は省略する。
図17(e)に示すように保護層20が形成された後、金属支持層11を貫通する金属支持層貫通孔31が形成される(図17(f)参照)。この際、金属支持層貫通孔31は、その外縁31aが、絶縁層貫通孔32の外縁32aより外方の位置に配置されるように、形成される。
続いて、図17(c)において形成された絶縁層貫通孔32の直径d2を広げるように、絶縁層10がエッチングされる(図17(g)〜(i)参照)。この場合、第1の実施の形態において説明した図7(d)〜(f)と同様にして、金属支持層11に、開口部92aを有するパターン状のレジスト92が形成され(図17(g)参照)、金属支持層貫通孔31において露出された絶縁層10がエッチングされて、金属支持層貫通孔31の直径d1より大きな直径からなる絶縁層貫通孔32が得られる(図17(h)参照)。その後、レジスト92は除去される(図17(i)参照)。
次に、第1の実施の形態において説明した図7(g)と同様にして、注入孔30において、配線接続部16のピエゾ素子44の側の面に、めっき層15が形成される(図17(j)参照)。その後、金属支持層11が外形加工されて枠体部17が形成される。
このように本実施の形態によれば、導電性接着剤が注入される注入孔30において、配線接続部16のピエゾ素子44の側の面が露出し、絶縁層貫通孔32の外縁32aが、金属支持層貫通孔31の外縁31aより外方の位置に配置されている。このことにより、導電性接着剤と配線接続部16との接触面積を増大させることができ、導電性接着剤と配線接続部16との間の導通抵抗を低減させることができる。このため、ピエゾ素子44を接続するための導電性接着剤と配線接続部16との電気接続の信頼性を向上させることができる。
また、本実施の形態によれば、絶縁層貫通孔32の直径d2が、金属支持層貫通孔31の直径d1より大きくなっている。このため、注入孔30に注入された導電性接着剤が、金属支持層貫通孔31を越えて絶縁層貫通孔32内に入り込むことによって導電性接着剤のアンカー効果が発揮される。とりわけ、本実施の形態においては、配線接続部16が、絶縁層貫通孔32の中心部のみに入り込んでいるため、この入り込んだ部分が導電性接着剤により囲まれ、導電性接着剤のアンカー効果をより一層向上させることができる。このため、サスペンション用基板1の接続構造領域3と導電性接着剤との接合強度をより一層向上させることができる。
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明してきたが、本発明によるサスペンション用基板、サスペンション、ヘッド付サスペンション、ハードディスクドライブおよびサスペンション用基板の製造方法は、上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。また、当然のことながら、本発明の要旨の範囲内で、これらの実施の形態を、適宜組み合わせることも可能である。
また、上述した実施の形態においては、サスペンション用基板1は、一対のピエゾ素子44に接続可能なように、基板本体領域2の両側方に配置された一対の接続構造領域3を有している例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、一対のピエゾ素子44と同等の機能を有する一体化されたピエゾ素子(図示せず)に接続可能なように単一の接続構造領域を有するサスペンション用基板1に本発明を適用してもよい。